特許第5979834号(P5979834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979834
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02P 15/08 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   F02P15/08 302A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-193091(P2011-193091)
(22)【出願日】2011年9月5日
(65)【公開番号】特開2013-53586(P2013-53586A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 良胤
(72)【発明者】
【氏名】田中 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐古 孝弘
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−054655(JP,A)
【文献】 特開平04−183925(JP,A)
【文献】 特開昭57−148021(JP,A)
【文献】 特開昭54−123607(JP,A)
【文献】 特開2007−154827(JP,A)
【文献】 特開平05−059953(JP,A)
【文献】 特開昭57−146015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00 − 3/12
7/00 − 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを摺動自在に収容するシリンダと、そのシリンダ内面と前記ピストンの頂部とで形成される燃焼室と、その燃焼室の混合気を点火する複数の点火プラグとが備えられているエンジンであって、
複数の前記点火プラグは、前記ピストンの周方向に間隔を隔てて備えられ、前記ピストンの頂部は、その中央にシリンダヘッド側に突出する突出部と、前記ピストンの周方向において前記点火プラグの設置位置に対応して前記突出部の周囲を前記シリンダヘッド側から離れる側に窪めた窪み部とを備えて構成され、
前記窪み部は、前記ピストンの周方向の全周に亘って前記シリンダヘッド側から離れる側に窪めた前記ピストンの軸方向視で円環状に形成され、
複数の前記点火プラグの夫々は、その点火点が前記燃焼室に突出する状態で、且つシリンダブロックの上端部に支持され、
複数の前記点火点の夫々は、前記ピストンの軸方向視において、前記窪み部の円環と同心で、且つ前記窪み部の円環よりも大径の円環上に等間隔で配置され、
前記点火点と当該点火点に対向する前記窪み部の壁部位との距離は、複数の前記点火プラグ同士で、等しく設定され
前記突出部の中央には、前記シリンダヘッド側から離れる側に窪めた中央窪み部が備えられ、その中央窪み部の混合気を点火する中央点火プラグが前記シリンダヘッドに備えられているエンジン。
【請求項2】
前記突出部は、平面状に形成されており、前記シリンダヘッドの下部は、平面状に形成されている請求項1に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンを摺動自在に収容するシリンダと、そのシリンダ内面と前記ピストンの頂部とで形成される燃焼室と、その燃焼室の混合気を点火する複数の点火プラグとが備えられているエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなエンジンでは、例えば、シリンダブロックの内部を摺動自在にピストンが収容されており、シリンダヘッドとシリンダブロックとピストンの頂部とから燃焼室が形成されている。そして、燃焼期間の短縮化を図るために、複数の点火プラグが備えられており、複数の点火プラグにて燃焼室の混合気を点火するようにしている。このように、複数の点火プラグを備えるに当たり、複数の点火プラグの設置箇所として、燃焼室に面するシリンダヘッドが考えられる。しかしながら、シリンダヘッドには、冷却水流路、カム機構やバルブ等を配置する必要があることから、複数の点火プラグを設置できるだけのスペースを確保することが難しいものとなっている。そこで、従来、複数の点火プラグが、燃焼室の側周囲を囲むシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に支持されて、ピストンの周方向に間隔を隔てて分散配置されているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、ガスエンジンでは、一般的に、ピストンの頂部の中央に窪み部を備え、その窪み部も燃焼室として、ピストン側に燃焼室を形成するようにしている。したがって、ガスエンジンにおいて、上記特許文献1に記載のように、複数の点火プラグをピストンの周方向に分散配置するものを適用した場合には、その点火プラグからピストンの頂部の中央に備えられた窪み部の内部まで火炎が伝播し難く、燃焼が緩慢になるという問題があった。
そこで、燃焼室の全体に火炎が伝播し易くするために、特許文献2に記載のエンジンのように、ピストンの頂部に窪み部を備えずに、ピストンの頂部を平面状に形成することで、燃焼室の形状を扁平な円柱状の燃焼室とすることが考えられる。
【0004】
しかしながら、扁平な円柱状の燃焼室を形成した場合には、平面視において、特定の点火プラグで考えると、その燃焼室の一端部から他端部までのピストンの直径に相当する距離だけ火炎が伝播する必要があり、火炎伝播距離が長くなる。また、ピストンが上死点に位置する状態でのシリンダヘッドの下面とピストンの頂部との間の距離が短くて、その間の隙間が小さい。よって、点火プラグにて混合気を点火することで形成される火炎は、点火プラグから直進方向には伝播するものの、ピストンの周方向には、隙間が小さいことに起因してピストンやシリンダブロックで妨げられて、火炎伝播が行い難いものとなる。更に、燃焼室が扁平な形状であるので、ピストンの周囲から中央に向かう渦流、いわゆるスキッシュ流が弱くなるという問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3984636号
【特許文献2】特許第4698662号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、燃焼室の混合気を点火する点火プラグをピストンの周方向に間隔を隔てて複数備え、燃焼室の全体に亘って火炎伝播をいち早く行い、熱効率の向上を図ることができるエンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係るエンジンの特徴構成は、ピストンを摺動自在に収容するシリンダと、そのシリンダ内面と前記ピストンの頂部とで形成される燃焼室と、その燃焼室の混合気を点火する複数の点火プラグとが備えられているエンジンにおいて、
複数の前記点火プラグは、前記ピストンの周方向に間隔を隔てて備えられ、前記ピストンの頂部は、その中央にシリンダヘッド側に突出する突出部と、前記ピストンの周方向において前記点火プラグの設置位置に対応して前記突出部の周囲を前記シリンダヘッド側から離れる側に窪めた窪み部とを備えて構成され、
前記窪み部は、前記ピストンの周方向の全周に亘って前記シリンダヘッド側から離れる側に窪めた前記ピストンの軸方向視で円環状に形成され、
複数の前記点火プラグの夫々は、その点火点が前記燃焼室に突出する状態で、且つシリンダブロックの上端部に支持され、
複数の前記点火点の夫々は、前記ピストンの軸方向視において、前記窪み部の円環と同心で、且つ前記窪み部の円環よりも大径の円環上に等間隔で配置され、
前記点火点と当該点火点に対向する前記窪み部の壁部位との距離は、複数の前記点火プラグ同士で、等しく設定され
前記突出部の中央には、前記シリンダヘッド側から離れる側に窪めた中央窪み部が備えられ、その中央窪み部の混合気を点火する中央点火プラグが前記シリンダヘッドに備えられている点にある。
【0008】
本特徴構成によれば、ピストンの頂部では、その中央に突出部が備えられ、その突出部の周囲に窪み部が備えられるので、ピストンの中央の周囲に燃焼室を形成することができる。そして、複数の点火プラグが、ピストンの周方向に間隔を隔てて備えられているので、ピストンの中央の周囲に形成される燃焼室にだけ火炎伝播すればよく、その火炎伝播距離を短くすることができる。しかも、窪み部では、ピストンが上死点に位置する状態でのシリンダヘッドの下面とピストンの頂部との間の距離を大きくすることができ、点火プラグからの火炎伝播を、直進方向だけでなく、ピストンの周方向にも行い易いものとなる。更に、ピストンが上死点近傍に上昇する際に、シリンダヘッドの下面に対して、突出部と窪み部とで密度差が生じるので、その密度差によってピストンの中央から周囲に向かう渦流、いわゆるスキッシュ流を発生させて火炎伝播の促進を図ることができる。一方で、ピストンが上死点近傍から下降する場合も同様の効果がある。
更に、本特徴構成によれば、窪み部は、ピストンの周方向の全周に亘って窪めた形状に形成されているので、燃焼室として十分な容積を確保しながら、複数の点火プラグからのピストンの周方向への火炎伝播をいち早く且つ的確に行うことができる。
また、本特徴構成を有するエンジンにあっては、複数の点火プラグの夫々は、その点火点が燃焼室に突出する状態で、且つシリンダブロックの上端部に支持され、複数の点火点の夫々は、ピストンの軸方向視において、窪み部の円環と同心で、且つ窪み部の円環よりも大径の円環上に等間隔で配置され、点火点と当該点火点に対向する窪み部の壁部位との距離は、複数の点火プラグ同士で、等しく設定されている。
更に、本特徴構成によれば、中央窪み部をも燃焼室とすることができながら、その中央窪み部の混合気を中央点火プラグにて点火することができる。これにより、窪み部では、複数の点火プラグからの火炎伝播をいち早く行うことができながら、中央窪み部においても、中央点火プラグからの火炎伝播をいち早く行うことができ、燃焼室全体に亘って火炎伝播をいち早く且つ的確に行うことができる。
このようにして、本特徴構成によれば、燃焼室の混合気を点火する点火プラグをピストンの周方向に間隔を隔てて複数備え、燃焼室の全体に亘って火炎伝播をいち早く行い、熱効率の向上を図ることができるエンジンを実現できる。
【0012】
更に、本特徴構成によれば、例えば、窪み部の壁部位を、点火プラグの設置箇所に対して傾斜する直線状に形成する、或いは、点火プラグの設置箇所を中心とする円弧状に形成する等によって、窪み部を、点火プラグの設置箇所から窪み部の壁部位までの距離を等しくする形状に形成することができる。これにより、点火プラグからの火炎伝播を、窪み部の全体に亘って均等に行うことができ、窪み部全体に対する火炎伝播をいち早く且つ的確に行うことができる。
【0013】
本発明に係るエンジンの更なる特徴構成は、前記突出部は、平面状に形成されており、前記シリンダヘッドの下部は、平面状に形成されている点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、シリンダヘッドの下部が平面状に形成されており、そのシリンダヘッドの下面と対向するピストンの頂部の突出部も平面状に形成されているので、ピストンが上死点に上昇する際や上死点から下降する際に平面状のシリンダヘッドの下部に対して、突出部と窪み部とで密度差が生じて、ピストンの中央から周囲に向かう渦流、いわゆるスキッシュ流を的確に発生させることができる。よって、このスキッシュ流により点火プラグからの火炎伝播速度を増加させて、燃焼室全体に亘っていち早く火炎伝播させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1参考形態におけるエンジンの全体構成を示す断面図
図2参考形態におけるエンジンのピストンの軸方向視における断面図
図3】ピストンの形状を示す図
図4】クランクアングルと熱発生率との関係を示すグラフ
図5施形態におけるエンジンの全体構成を示す断面図
図6施形態におけるエンジンのピストンの軸方向視における断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るエンジンの実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下では、実施形態の説明に先立ち、参考形態について説明する。
参考形態〕
(エンジンの構成)
このエンジン100は、図1に示すように、シリンダブロック1とそのシリンダブロック1の上部に連結されたシリンダヘッド2とを有するシリンダ3を備え、そのシリンダ3には、ピストン4がシリンダブロック1の内部を摺動自在に収容されている。ちなみに、ピストン4は、シリンダブロック1の内部に備えられた円筒形状のシリンダライナ(図示省略)に摺動するように備えられている。そして、エンジン100は、図示は省略するが、ピストン4の往復作動力をクランク機構から出力軸に伝えて回転動力として出力する出力系と、その出力軸からの動力を吸気バルブ5と排気バルブ6とを開閉作動させるカムシャフト等に伝える駆動系とを備えている。
【0019】
燃焼室7は、ピストン4の頂部とシリンダブロック1の内面とシリンダヘッド2の下面とによって形成されている。燃焼室7には、吸気路8及び排気路9が連通接続されており、吸気路8を開閉する吸気バルブ5と排気路9を開閉する排気バルブ6とが備えられている。吸気路8には、吸気路8に吸気される空気Aに、燃料G(例えば都市ガス)を混合する燃料供給部10が備えられており、空気Aと燃料Gとの混合気M(例えば、希薄混合気)を生成するように構成されている。ちなみに、燃料供給部10は、空気Aの流れに伴ってベンチュリーによる吸引作用にて吸引力を発生させ、その吸引力により空気Aへ燃料Gを引き込んで、空気Aと燃料Gとの混合気Mを生成するベンチュリー式にて構成されている。そして、燃料供給部10への燃料供給量を調整自在な燃料供給量調整弁11が備えられており、この燃料供給量調整弁11の開度を調整して、エンジン100の運転状況(例えばエンジン負荷)に応じて空気Aと燃料Gとの混合割合を変更自在に構成されている。また、図示は省略するが、吸気路8には、エンジン100の運転状況に応じて燃焼室7への混合気Mの吸気量を調整するスロットルバルブ等も備えられている。
【0020】
燃焼室7の混合気Mを点火する複数の点火プラグ12が備えられている。複数の点火プ
ラグ12は、図1及び図2に示すように、例えば、その点火点を有する先端部が燃焼室7に突出する状態で燃焼室7の径方向に沿う姿勢でシリンダブロック1の上端部に支持されている。この参考形態では、8つの点火プラグ12が、燃焼室7の周方向(ピストン4の周方向)に等間隔に間隔を隔てる状態で備えられており、燃焼室7の周方向(ピストン4の周方向)に間隔を隔てて分散配置されている。
【0021】
上述の如く、燃焼室7は、ピストン4の頂部とシリンダブロック1の内面とシリンダヘッド2の下面とによって形成されている。燃焼室7の上面を形成するシリンダヘッド2の下面は平面状に形成されている。燃焼室7の下面を形成するピストン4の頂部は、図3に示すように、その中央にシリンダヘッド2側に突出する突出部13とその突出部13の周囲をシリンダヘッド2側から離れる側に窪めた窪み部14とを備えて構成されている。このように、ピストン4の頂部が山型形状に形成されている。突出部13は、平面状に形成されている。窪み部14は、燃焼室7の周方向の全周に亘ってシリンダヘッド2側から離れる側に窪めた燃焼室7の軸方向で環状に形成されている。また、窪み部14は、点火プラグ12の設置箇所から窪み部14の壁部位14aまでの距離を等しくする形状に形成されている。つまり、窪み部14の壁部位14aは、点火プラグ12の設置箇所に対して、傾斜する直線状に形成されている。
【0022】
このようにして、ピストン4の頂部では、その中央に平面状の突出部13が備えられ、その突出部13の周囲に窪み部14が備えられているので、ピストン4の中央の周囲に環状の燃焼室7を形成することができる。そして、複数の点火プラグ12が、燃焼室7の周方向(ピストン4の周方向)に間隔を隔てて均等に備えられているので、ピストン4の中央の周囲に形成される燃焼室7にだけ火炎伝播すればよく、その火炎伝播距離を短くすることができる。しかも、窪み部14では、ピストン4が上死点に位置する状態での平面状に形成されているシリンダヘッド2の下面とピストン4の頂部との間の距離を大きくすることができ、点火プラグ12からの火炎伝播を、直進方向だけでなく、燃焼室7の周方向にも行い易いものとなる。更に、ピストン4の頂部では、平面状に形成されているシリンダヘッド2の下面に対して、ピストンが上死点に上昇する際や上死点から下降する際に、その密度差によってピストン4の中央から周囲に向かう渦流、いわゆるスキッシュ流を発生させて火炎伝播の促進を図ることができる。その結果、燃焼室7の全体に亘って火炎伝播をいち早く行い、熱効率の向上を図ることができる。
【0023】
(エンジンの動作)
エンジン100は、吸気バルブ5を開動作させた状態でピストン4が上死点から下降することにより、燃焼室7に混合気Mを吸気する吸気行程が行われる。次に、吸気バルブ5を閉動作させた状態でピストン4が上昇することにより、燃焼室7の混合気Mを圧縮する圧縮行程が行われる。
エンジン100は、予め設定された所望の点火時期(例えば、ピストン4が上死点に達する直前)に、複数の点火プラグ12を作動させて火花点火して燃焼室7の混合気Mに点火させる。複数の点火プラグ12の夫々から火炎が伝播し、燃焼室7の混合気Mが燃焼されて膨張行程が行われる。次に、排気バルブ6を開動作させた状態でピストン4が上昇することにより、燃焼室7の排ガスを排気路9に排出する排気行程が行われる。
このようにして、エンジン100は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の順に各行程を行う一連の動作を繰り返し行うように構成されている。
【0024】
図4は、参考形態のエンジン100(図4中実線)と比較例のエンジン(図4中点線)とについて、上死点以降のクランクアングル(°ATDC)と熱発生率(dQ/dθ)との関係についての実験結果を示すグラフである。ここで、比較例のエンジンでは、参考形態と同様に、複数の点火プラグ12を燃焼室7の周方向に間隔を隔てて均等に備えているものの、燃焼室の形状については、特許文献2に記載の如く、シリンダヘッドの下面
及びピストンの頂部の双方を平面状に形成して、扁平な円柱状の燃焼室としている。また、参考形態のエンジンと比較例のエンジンでは、燃焼室の容積は同一としている。ちなみに、複数の点火プラグを作動させる点火タイミングについては、ピストンが上死点に達する前のクランクアングルで−15度付近の最も出力が出るタイミングとしている。
【0025】
図4に示すように、参考形態のエンジン100は、比較例のエンジンに対して、熱発生率の上昇が早く生じていることから、燃焼の立ち上がりが早くなっており、等容度を高めることができる。ここで、等容度とは、等容燃焼(圧縮圧力がピークとなる上死点において容積変化をしないで一気に行われる仮想の燃焼)での熱効率を100%としたときの、実際の図示熱効率の割合をいう。また、図4に示すように、参考形態のエンジン100は、比較例のエンジンに対して、熱発生が生じている領域の面積が大きくなっており、熱効率の向上を図ることができる。
【0026】
実施形態〕
当該実施形態は、上記参考形態において、図5及び図6に示すように、更に、シリンダヘッド2の中央にも中央点火プラグ15を備えるものである。その他の点については、上記参考形態と同様であるので、中央点火プラグ15を備える点を中心に説明する。
【0027】
上記参考形態にて述べた如く、ピストン4の頂部は、突出部13と窪み部14とを備えているが、この実施形態では、図5及び図6に示すように、突出部13の中央に、シリンダヘッド2側から離れる側に窪む中央窪み部16が備えられ、その中央窪み部16の混合気Mを点火する中央点火プラグ15がシリンダヘッド2に備えられている。これにより、中央窪み部16をも燃焼室7とすることができながら、その中央窪み部16の混合気を中央点火プラグ15にて点火することができ、中央窪み部16においても、中央点火プラグ15からの火炎伝播をいち早く行うことができる。
【0028】
上記参考形態び実施形態では、窪み部14を、燃焼室7の周方向の全周に亘ってシリンダヘッド2側から離れる側に窪めた燃焼室7の軸方向で環状に形成している。
【0029】
(2)上記参考形態び実施形態では、窪み部14の壁部位14aを、点火プラグ12の設置箇所に対して傾斜する直線状に形成することで、窪み部14を、点火プラグ12の設置箇所から窪み部14の壁部位14aまでの距離を等しくする形状に形成している。これに代えて、例えば、窪み部14の壁部位14aを、点火プラグ12の設置箇所を中心としる円弧状に形成することで、窪み部14を、点火プラグ12の設置箇所から窪み部14の壁部位14aまでの距離を等しくする形状に形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ピストンを摺動自在に収容するシリンダと、そのシリンダ内面と前記ピストンの頂部とで形成される燃焼室と、その燃焼室の混合気を点火する複数の点火プラグとが備えられ、燃焼室の混合気を点火する点火プラグをピストンの周方向に間隔を隔てて複数備え、燃焼室の全体に亘って火炎伝播をいち早く行い、熱効率の向上を図ることができる各種のエンジンに適応することができる。
【符号の説明】
【0031】
2 シリンダヘッド
3 シリンダ
4 ピストン
7 燃焼室
12 点火プラグ
13 突出部
14 窪み部
14a 壁部位
15 中央点火プラグ
16 中央窪み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6