(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発電電力を電力系統に供給可能な発電設備を有する電力供給者と、電力消費設備と自家発電設備とを有し、前記電力消費設備による消費電力から前記自家発電設備による発電電力を減算して導出される不足電力を前記電力系統からの受電電力で賄う電力需要者との間での電力の需給を調整する電力需給調整装置であって、
前記自家発電設備の事故を検出する事故検出手段と、
前記事故検出手段が検出した事故により減少する、事故が発生した前記自家発電設備の発電電力を減少発電電力として導出する減少電力導出手段と、
前記減少発電電力を補給するために、前記電力供給者における前記発電設備による発電電力、及び、前記電力需要者における事故が未発生である前記自家発電設備による発電電力の両方を調整対象として、前記電力供給者における前記発電設備による発電電力の調整及び前記電力需要者における前記事故が未発生である前記自家発電設備による発電電力の調整の少なくとも何れか一方を行なわせる電力補給処理を行なう需給調整手段とを備え、
前記事故検出手段は、前記自家発電設備の発電電力が単位時間の間に予め設定された第1設定値以上減少し、且つ、当該自家発電設備が設けられている前記電力需要者の受電電力が同じ前記単位時間の間で予め設定された第2設定値以上増大したときは、当該自家発電設備で事故が発生したと判定する電力需給調整装置。
前記需給調整手段は、前記電力補給処理において、前記減少発電電力を補給するために前記電力供給者における前記発電設備及び前記電力需要者における前記事故が未発生である自家発電設備の発電電力を増大させるときのコスト増大量の合計が最小になるように、前記電力供給者における前記発電設備及び前記電力需要者における前記事故が未発生である自家発電設備の少なくとも何れか一方に対する発電電力の増大要求を決定して、当該発電電力の増大要求を、対応する前記電力供給者及び前記電力需要者に伝達する請求項1に記載の電力需給調整装置。
【背景技術】
【0002】
特定規模電気事業者などの電力供給者は、電力需要者へ電力を供給するために、自身が備える発電設備から電力を供給するか又は他者から電力を調達する必要がある。また、電力需要者は、自身が消費する電力を発電するための自家発電設備を設置することもできる。自家発電設備を設置した場合、電力需要者は、電力供給者から購入する電力を削減できるため、電力コストを低く抑えることができる。
【0003】
尚、電力需要者が備える自家発電設備が故障などの事故により計画外で運転停止した場合又は出力が減少した場合、電力需要者は、代わりの電力を電力供給者から購入することになる。つまり、電力供給者は、電力需要者の自家発電設備が事故により停止等した場合を想定して、通常は供給しない発電電力を予備力として備えておくことが必要である。加えて、電力供給者は、上述したような予備力のコストを電力需要者から回収するため、自家発電設備を備える電力需要者との間で自家発補給契約を結んでそのコストの少なくとも一部を電力需要者側へ転換することが一般的である。つまり、電力需要者側からすると、自家発電設備を設置することで電力コストを削減できるというメリットがあるものの、自家発補給契約の存在によってそのメリットが減じられることになっている。
【0004】
特許文献1には、電力供給者と電力需要者との間で自家発補給契約を結んだ上で、電力需要者の自家発補給契約によって発生するコストを最小化することを目的とした装置が記載されている。具体的には、特許文献1には、電力需要者が備える自家発電設備をメンテナンスのために計画的に運転停止する日として電力負荷の少ない日を選択すること、即ち、自家発補給契約に基づいて電力の補給を受ける必要のある日が電力負荷の少ない日となるようにすることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置は、あくまでも電力需要者側が自家発補給契約に基づいて補給を受ける電力を少なくしようと試みるものであり、電力供給者側で備える必要のある予備力の削減を可能とするものではない。例えば、特許文献1では、電力需要者の自家発電設備の計画的な運転停止時での補給電力のみが考慮されており、自家発電設備の事故などの計画外での運転停止に備えるためには、電力供給者側で備える必要のある予備力を削減することはできない。従って、特許文献1に記載の装置があったとしても、電力供給者は、これまで通りの予備力を備える必要があり、自家発電設備を備える電力需要者との間でこれまで通りの自家発補給契約を結ぶ必要があると想定される。
【0007】
以上のように、従来技術は、電力供給者側で備える必要のある予備力の削減を可能にするものではないため、電力需要者側からすると、これまで通りの自家発補給契約の存在によって、自家発電設備を設置することによるメリットが減じられるという問題は残る。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力供給者側で備える必要のある予備力の削減を可能にするような電力の需給調整を行なえる電力需給調整装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る電力需給調整装置の特徴構成は、発電電力を電力系統に供給可能な発電設備を有する電力供給者と、電力消費設備と自家発電設備とを有し、前記電力消費設備による消費電力から前記自家発電設備による発電電力を減算して導出される不足電力を前記電力系統からの受電電力で賄う電力需要者との間での電力の需給を調整する電力需給調整装置であって、
前記自家発電設備の事故を検出する事故検出手段と、
前記事故検出手段が検出した事故により減少する、事故が発生した前記自家発電設備の発電電力を減少発電電力として導出する減少電力導出手段と、
前記減少発電電力を補給するために、前記電力供給者における前記発電設備による発電電力、及び、前記電力需要者における事故が未発生である前記自家発電設備による発電電力の両方を調整対象として、前記電力供給者における前記発電設備によ
る発電電力の調整及び前記電力需要者における前記事故が未発生である
前記自家発電設備による発電電力の調整の少なくとも何れか一方を行なわせる電力補給処理を行なう需給調整手段とを備え、
前記事故検出手段は、前記自家発電設備の発電電力が単位時間の間に予め設定された第1設定値以上減少し、且つ、当該自家発電設備が設けられている前記電力需要者の受電電力が同じ前記単位時間の間で予め設定された第2設定値以上増大したときは、当該自家発電設備で事故が発生したと判定する点にある。
本願明細書で「自家発電設備の事故」とは、『意図しない計画外の運転停止又は出力減少が引き起こされる事象』のことであり、自家発電設備の検査や補修などに伴う計画された運転停止又は出力減少とは別である。
【0010】
上記特徴構成によれば、事故検出手段が自家発電設備の事故を検出し、減少電力導出手段が事故により減少するその自家発電設備の発電電力(即ち、減少発電電力)を導出することで、自家発電設備の事故によってどの程度の電力補給が必要になるのかを把握することができる。そして、需給調整手段が、その減少発電電力を補給するために、電力供給者における発電設備による発電電力及び電力需要者における事故が未発生の自家発電設備による発電電力の両方を調整対象として、電力供給者の発電設備による発電電力の調整及び電力需要者の自家発電設備による発電電力の調整の少なくとも何れか一方を行なわせる電力補給処理を行なう。つまり、需給調整手段は、その減少発電電力の補給を行なうために、電力供給者が予め確保している予備力だけを利用するのではなく、電力需要者における事故が未発生の自家発電設備をも予備力として利用できる。従って、電力供給者が予め確保しておくべき予備力を小さくできるので、電力需要者側に転換されるコストを小さくすることができ、結果として、電力需要者が自家発電設備を設置することで得られるメリットが相対的に増加することにもつながる。
加えて、事故検出手段が、自家発電設備の発電電力の時間的な変化、及び、電力需要者の受電電力の時間的な変化を監視するので、自家発電設備に事故が発生した場合に現れる、自家発電設備の発電電力の急減且つ電力需要者の受電電力の急増を検出できる。
【0011】
本発明に係る電力需給調整装置の別の特徴構成は、前記需給調整手段は、前記電力補給処理において、前記減少発電電力を補給するために前記電力供給者における前記発電設備及び前記電力需要者における前記事故が未発生である自家発電設備の発電電力を増大させるときのコスト増大量の合計が最小になるように、前記電力供給者における前記発電設備及び前記電力需要者における前記事故が未発生である自家発電設備の少なくとも何れか一方に対する発電電力の増大要求を決定して、当該発電電力の増大要求を、対応する前記電力供給者及び前記電力需要者に伝達する点にある。
【0012】
電力供給者の発電設備の発電電力を増大させることで電力系統への供給電力を増大させれば電力系統への電力の補給を行うことができ、及び、電力需要者における事故が未発生の自家発電設備の発電電力を増大させることで電力需要者による電力系統からの受電電力を減少させれば、本来は電力需要者が受電していたはずの電力が電力系統での余剰電力となり、見かけ上は電力需要者の自家発電設備がその余剰電力分を電力系統に補給したことになる。つまり、上記減少発電電力を補給するためには、電力供給者の発電設備の発電電力及び電力需要者の自家発電設備の発電電力を増大する方向に調整する必要があるため、発電設備及び自家発電設備での発電に伴うコストは増大する。
本特徴構成では、需給調整手段が、電力補給処理において、減少発電電力を補給するためのコスト増大量の合計が最小になるように電力供給者における発電設備及び電力需要者における事故が未発生の自家発電設備の少なくとも何れか一方に対する発電電力の増大要求を決定して、その発電電力の増大要求を、対応する電力供給者及び電力需要者に伝達するので、コストの増大を最小にしつつ減少発電電力を補給させることができる。
【0015】
本発明に係る電力需給調整装置の更に別の特徴構成は、前記需給調整手段は、前記電力補給処理において、少なくとも前記電力需要者における前記事故が未発生である自家発電設備による発電電力の調整を行なわせる点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、少なくとも電力需要者における事故が未発生である自家発電設備による発電電力の調整を利用して電力補給処理が行なわれるため、この電力補給処理を行なう際に利用される電力供給者の発電設備の発電電力を相対的に減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して第1実施形態の電力需給調整装置30A(30)の構成について説明する。電力需給調整装置30Aは、電力供給者10と電力需要者20との間での電力の需給を調整する装置である。
【0019】
図1は、第1実施形態の電力需給調整装置30Aと電力供給者10と2つの電力需要者20(20A、20B)とで構成される電力需給システムSの構成を説明する図である。
電力供給者10は、特定規模電気事業者等であり、発電電力を電力系統1に供給可能な発電設備11を有する。本実施形態において、電力供給者10は、発電設備11として、電力系統1に接続される発電所11Aと太陽光発電所11Bとを有する。発電所11Aは、例えば火力発電所など発電電力が可変の設備である。発電所11Aの発電電力を調整することで電力供給者10による電力系統1への供給電力を調整できる。また、太陽光発電所11Bは、発電電力を意図的に調整できず、気候に応じて発電電力が変化する設備としている。本実施形態では、これら発電所11Aと太陽光発電所11Bとを一体として電力供給者10の発電設備11とする。
【0020】
各電力需要者20A、20Bは、電力消費設備21と自家発電設備22とを有する。自家発電設備22は、例えばコージェネレーション装置など、発電電力が可変の設備である。また、本実施形態では、特定の電力需要者20において、自家発電設備22に対して、その発電電力が電力消費設備21の消費電力以下となるような運転制御が行なわれている。つまり、自家発電設備22は、電力消費設備21で消費される分の電力を発電でき、電力系統1に電力を供給することはできない。そして、電力需要者20は、電力消費設備21による消費電力から自家発電設備22による発電電力を減算して導出される不足電力を電力系統1からの受電電力で賄うことになる。従って、自家発電設備22の発電電力を調整することで電力需要者20による電力系統1からの受電電力を調整できる。
【0021】
電力需給調整装置30Aは、発電電力検出手段31と、減少電力導出手段33と、需給調整手段35とを備える。後述するように、この発電電力検出手段31は、本発明の「事故検出手段D」として機能する。また、
図1に示すように、本実施形態の電力需給調整装置30Aは、記憶手段34を更に備える。この電力需給調整装置30は、一般的なコンピュータによって実現できる。
図1は、電力需給調整装置30を実現するコンピュータが、通信回線などを介して電力供給者10及び電力需要者20と通信可能に接続されている形態を示している。
【0022】
発電電力検出手段31は、電力供給者10の発電所11Aの発電電力、並びに、電力需要者20A、20Bのそれぞれの自家発電設備22の発電電力を検出する装置である。発電電力検出手段31を用いて実現される事故検出手段Dは、メモリ装置(図示せず)などに、発電電力検出手段31で検出した電力需要者20の自家発電設備22の発電電力を継続的に記憶している。その結果、事故検出手段Dは、電力需要者20A、20Bのそれぞれの自家発電設備22の発電電力の時間的な変化を監視できる。そして、事故検出手段Dは、自家発電設備22の発電電力が単位時間の間に予め設定された設定値以上減少したときは、自家発電設備22で事故が発生したと判定する。このように、本実施形態において、事故検出手段Dが検出する事故とは、電力需要者20A、20Bのそれぞれの自家発電設備22で発生する、例えば不測の運転停止・出力減少のような発電電力の計画外の減少のことであり、電力需要者20A、20Bのそれぞれの自家発電設備22の検査や補修などの伴う啓作された運転停止・出力減少とは別である。事故検出手段Dは、電力需要者20A、20Bのそれぞれの自家発電設備22の発電電力の計画外の減少を検出する計画外減少検出手段と言い換えることもできる。
【0023】
減少電力導出手段33は、事故検出手段Dが検出した事故により減少する自家発電設備22の発電電力を減少発電電力として導出する。本実施形態では、減少電力導出手段33は、メモリ装置(図示せず)などに、発電電力検出手段31から伝達される電力需要者20の自家発電設備22の発電電力を継続的に記憶しており、事故検出手段Dが自家発電設備22に事故が発生したと判定する前の自家発電設備22の発電電力を特定できる。従って、減少電力導出手段33は、その事故前の発電電力が、事故により減少する自家発電設備22の発電電力(即ち、減少発電電力)であると導出できる。
【0024】
記憶手段34は、電力供給者10の発電所11A並びに電力需要者20A、20Bの自家発電設備22の最高発電電力及び発電コストに関する情報を記憶している。この発電コストに関する情報は、単位電力を発電するのに要するコストでもよく、或いは、商業的に単位電力を発電する対価として要求するコスト(即ち、売電単価)でもよい。この発電コストに関する情報は、電力供給者10及び電力需要者20A、20Bから予め提供を受けることで記憶手段34に記憶されている。
【0025】
需給調整手段35は、減少電力導出手段33が導出した減少発電電力を補給するために、電力供給者10の発電所11Aによる発電電力及び電力需要者20の自家発電設備22による発電電力の両方を調整対象として、電力供給者10の発電所11Aによる発電電力の調整及び電力需要者20の自家発電設備22による発電電力の調整の少なくとも何れか一方を行なわせる電力補給処理を行なう。
【0026】
具体的には、需給調整手段35は、電力補給処理において、減少電力導出手段33が導出した減少発電電力を補給するために電力供給者10における発電所11Aの発電電力、及び、電力需要者20における事故が未発生である自家発電設備22の発電電力を増大させるときのコスト増大量の合計が最小になるように、電力供給者10における発電所11A及び電力需要者20における事故が未発生である自家発電設備22の少なくとも何れか一方に対する発電電力の増大要求を決定して、その発電電力の増大要求を、対応する電力供給者10及び電力需要者20に伝達する。
【0027】
以下に、電力需要者20Bの自家発電設備22に事故が発生した場合を例示して需給調整手段35による電力補給処理の内容を説明する。
電力需要者20Bの自家発電設備22に事故が発生して、その自家発電設備22の発電電力が単位時間の間に予め設定された設定値以上した場合、その発電電力の減少は発電電力検出手段31によって検出される。例えば、自家発電設備22の発電電力は、自家発電設備22が事故により運転停止すればゼロに急減する。そして、発電電力検出手段31を用いて実現される事故検出手段Dは、電力需要者20Bの自家発電設備22に事故が発生したと判定する。
【0028】
次に、減少電力導出手段33は、事故検出手段Dが検出した事故により減少する電力需要者20Bの自家発電設備22の発電電力を減少発電電力として導出する。具体的には、減少電力導出手段33は、自己のメモリ装置(図示せず)に発電電力検出手段31から伝達される電力需要者20Bの自家発電設備22の発電電力を継続的に記憶しており、事故検出手段Dがその自家発電設備22に事故が発生したと判定する前の発電電力を特定できる。従って、減少電力導出手段33は、その事故前の発電電力が、事故により減少するその自家発電設備22の発電電力(即ち、減少発電電力)であると導出できる。
【0029】
このとき、電力需要者20Bの自家発電設備22に事故が発生しているため、その減少発電電力を補給するために発電電力を増加させることができるのは、残された電力供給者10における発電所11A及び電力需要者20Aにおける事故が未発生である自家発電設備22である。具体的には、電力供給者10の発電所11Aの発電電力を増大させることでその後の電力系統1への供給電力を増大させれば電力系統1への電力の補給を行うことができる。また、電力需要者20Aの自家発電設備22の発電電力を増大させることで電力需要者20Aによる電力系統1からの受電電力を減少させれば、本来は電力需要者20が受電していたはずの電力が電力系統1での余剰電力となり、見かけ上は電力需要者20Aの自家発電設備22がその余剰電力を電力系統1に補給したことになる。つまり、上記減少発電電力を補給するためには、電力供給者10の発電所11Aの発電電力及び電力需要者20Aの自家発電設備22の発電電力を増大する方向に調整する必要があるため、発電所11A及び自家発電設備22での発電に伴うコストは増大する。
【0030】
そこで、需給調整手段35は、減少電力導出手段33が導出した減少発電電力を補給するために電力供給者10における発電所11A及び電力需要者20Aにおける事故が未発生である自家発電設備22の発電電力を増大させるときのコスト増大量の合計が最小になるように、電力供給者10の発電所11A及び電力需要者20Aの自家発電設備22の少なくとも何れか一方に対する発電電力の増大要求を決定する。
【0031】
具体的には、需給調整手段35は、電力供給者10の発電所11A及び電力需要者20Aの自家発電設備22に関して、発電電力検出手段31の検出結果から得られる現在の発電電力と、記憶手段34が記憶している最高発電電力に関する情報とから、発電電力をどれだけ増大出来るかを示す増大可能電力値を導出できる。
そして、需給調整手段35は、導出した発電所11A及び自家発電設備22に関する増大可能電力値と、記憶手段34が記憶している発電所11A及び自家発電設備22の発電コストに関する情報とに基づいて、発電所11A及び自家発電設備22による発電電力の増大をどのように組み合わせて上記減少発電電力を分担させれば電力供給者10の発電所11A及び電力需要者20Aの自家発電設備22の発電電力を増大させるときのコスト増大量の合計が最小になるのかを決定する。つまり、需給調整手段35は、電力供給者10の発電所11A及び電力需要者20の自家発電設備22に要求する発電電力の増大値(即ち、発電電力の増大要求)を決定して、電力供給者10及び電力需要者20の少なくとも何れか一方に対して、発電電力の増大値を反映した発電電力の減少要求を伝達する。これら電力供給者10及び電力需要者20に対する発電電力の増大要求は、発電所11A及び自家発電設備22が直接制御される遠隔制御情報の形態で通信回線等を介して伝達できる。
【0032】
電力供給者10及び電力需要者20Aにおいて上述したような発電電力の増大要求に応じた発電電力の増大調整が行なわれると、電力供給者10による電力系統1への供給電力の増大、及び、電力需要者20Aによる電力系統1からの受電電力の減少に伴う電力系統1での余剰電力の発生が実現される。その結果、事故が発生した電力需要者20Bの自家発電設備22による減少発電電力が補給される。
【0033】
以上のように、事故検出手段Dが自家発電設備22の事故を検出し、減少電力導出手段33が事故により減少するその自家発電設備22の発電電力(即ち、減少発電電力)を導出することで、自家発電設備22の事故によってどの程度の電力補給が必要になるのかを把握することができる。そして、需給調整手段35が、その減少発電電力を補給するために、電力供給者10における発電所11Aによる発電電力及び電力需要者20における事故が未発生の自家発電設備22による発電電力の両方を調整対象として、電力供給者10の発電所11Aによる発電電力の調整及び電力需要者20の自家発電設備22による発電電力の調整の少なくとも何れか一方を行なわせる電力補給処理を行なう。つまり、需給調整手段35は、その減少発電電力の補給を行なうために、電力供給者10が予め確保している予備力だけを利用するのではなく、電力需要者20における事故が未発生の自家発電設備22をも予備力として利用できる。従って、電力供給者10が予め確保しておくべき予備力を小さくできるので、電力需要者20側に転換されるコストを小さくすることができ、結果として、電力需要者20が自家発電設備22を設置することで得られるメリットが相対的に増加することにもつながる。
【0034】
<第2実施形態>
第2実施形態の電力需給調整装置30B(30)は、事故検出手段Dの構成が第1実施形態と異なっている。つまり、どの電力需要者20の自家発電設備22で事故が発生したのかを判定する手法が、第1実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の電力需給調整装置30Bについて説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0035】
第2実施形態の電力需給調整装置30Bは、発電電力検出手段31と、受電電力検出手段32と、減少電力導出手段33と、需給調整手段35とを備える。本実施形態では、後述するように、この受電電力検出手段32が本発明の「事故検出手段D」として機能する。また、
図2に示すように、本実施形態の電力需給調整装置30Bは、記憶手段34を更に備える。
【0036】
受電電力検出手段32は、電力需要者20A、20Bのそれぞれによる電力系統1からの受電電力を検出する装置である。受電電力検出手段32を用いて実現される事故検出手段Dは、メモリ装置(図示せず)などに、受電電力検出手段32で検出した電力需要者20A、20Bによる電力系統1からの受電電力を継続的に記憶している。その結果、事故検出手段Dは、電力需要者20A、20Bのそれぞれの受電電力の時間的な変化を監視できる。この場合、電力需要者20A、20Bのそれぞれにおいて、例えば自家発電設備22が事故により停止して発電電力が急減すると、受電電力検出手段32で検出される受電電力が急増する。従って、事故検出手段Dは、電力需要者20A、20Bの受電電力が単位時間の間に予め設定された設定値以上増大したときは、自家発電設備22で事故が発生したと判定する。
【0037】
減少電力導出手段33は、事故検出手段Dが検出した事故により減少する自家発電設備22の発電電力を減少発電電力として導出する。減少電力導出手段33は、メモリ装置(図示せず)などに、発電電力検出手段31から伝達される電力需要者20A、20Bのそれぞれの自家発電設備22の発電電力を継続的に記憶しており、事故検出手段Dが特定の自家発電設備22に事故が発生したと判定する前のその特定の自家発電設備22の発電電力を知ることができる。従って、減少電力導出手段33は、その事故前の発電電力が、事故により減少する自家発電設備22の発電電力(即ち、減少発電電力)であると導出できる。
【0038】
このようにして、本実施形態の電力需給調整装置30Bは、特定の電力需要者20の自家発電設備22で事故が発生したこと、及び、その特定の自家発電設備22での事故による減少発電電力を特定することができる。
【0039】
<第3実施形態>
第3実施形態の電力需給調整装置30C(30)は、事故検出手段Dの構成が第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。つまり、どの電力需要者20の自家発電設備22で事故が発生したのかを判定する手法が、第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。以下に第3実施形態の電力需給調整装置30Cについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0040】
第3実施形態の電力需給調整装置30Cは、発電電力検出手段31と、受電電力検出手段32と、減少電力導出手段33と、需給調整手段35とを備える。本実施形態では、後述するように、発電電力検出手段31及び受電電力検出手段32が本発明の「事故検出手段D」として機能する。また、
図2に示すように、本実施形態の電力需給調整装置30Bは、記憶手段34を更に備える。
【0041】
電力需要者20において、自家発電設備22に対して、その発電電力が電力消費設備21の消費電力以下となるような運転制御(即ち、逆潮流を回避するような運転制御)が行なわれている場合、電力消費設備21の消費電力が減少すると、それに伴って自家発電設備22の発電電力も減少される。従って、自家発電設備22の発電電力が急減しても、それが電力消費設備21の消費電力の急減に伴って行なわれた正常な動作である可能性もある。但し、電力消費設備21の消費電力が急減していなければ、自家発電設備22の発電電力が急減するような制御が行なわれることはない。
そこで、本実施形態において、事故検出手段Dは、自家発電設備22の発電電力が単位時間の間に予め設定された第1設定値以上減少し、且つ、その自家発電設備22が設けられている電力需要者20の受電電力が同じ単位時間の間で予め設定された第2設定値以上増大したときは、その自家発電設備22で事故が発生したと判定する。
【0042】
減少電力導出手段33は、事故検出手段Dが検出した事故により減少する自家発電設備22の発電電力を減少発電電力として導出する。減少電力導出手段33は、メモリ装置(図示せず)などに、発電電力検出手段31から伝達される電力需要者20A、20Bのそれぞれの自家発電設備22の発電電力を継続的に記憶しており、事故検出手段Dが特定の自家発電設備22に事故が発生したと判定する前のその特定の自家発電設備22の発電電力を知ることができる。従って、減少電力導出手段33は、その事故前の発電電力が、事故により減少する自家発電設備22の発電電力(即ち、減少発電電力)であると導出できる。
【0043】
このようにして、本実施形態の電力需給調整装置30Cは、特定の電力需要者20の自家発電設備22で事故が発生したことを特定して、及び、その特定の自家発電設備22での事故による減少発電電力が補給されるような制御を行なうことができる。
【0044】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、電力需給調整装置30が、電力供給者10及び電力需要者20とは別に設置された構成の電力需給システムSを例示したが、電力需給システムSの構成は適宜変更可能である。例えば、電力需給調整装置30が電力供給者10と一体に設けられていてもよい。つまり、特定規模電気事業者等の電力供給者10自身が、上述したような電力補給処理を行ってもよい。
また、上記実施形態では、電力供給者10が発電設備11として1機の発電所11Aと1機の太陽光発電所11Bとを有し、電力需要者20が1機の電力消費設備21と1機の自家発電設備22とを有する例を説明したが、電力供給者10が有する発電設備11の構成内容及び電力需要者20が有する電力消費設備21と自家発電設備22との構成内容は適宜変更可能である。
更に、上記実施形態では、電力需給システムSが、一つの電力供給者10と二つの電力需要者20とを有する例を説明したが、電力供給者10及び電力需要者20の数は適宜変更可能である。例えば、電力需給システムSが、一つ又は複数の電力供給者10と一つ又は複数の電力需要者20と電力需給調整装置30とを有し、その電力需給調整装置30が、それら電力供給者10及び電力需要者20との間で上記電力補給処理を行なってもよい。
【0045】
<2>
上記実施形態では、記憶手段34が電力供給者10及び電力需要者20から発電コストに関する情報を予め記憶しておき、需給調整手段35が、記憶手段34に記憶されているその情報を参照して電力補給処理を行なう例を説明したが、発電コストに関する情報は必要に応じて電力需給調整装置30から電力供給者10及び電力需要者20へ問い合わせを行なって収集するように構成してもよい。
【0046】
<3>
上記実施形態では、需給調整手段35が、電力補給処理において、電力供給者10の発電設備11による発電電力の調整及び電力需要者20の自家発電設備22による発電電力の調整の少なくとも何れか一方を行なわせる例を説明したが、上記電力補給処理のために、少なくとも電力需要者20の自家発電設備22による発電電力の調整が利用されるようにしてもよい。この場合、少なくとも電力需要者20による受電電力量の調整を利用して上記電力補給処理が行なわれるため、この電力補給処理を行なう際に利用される電力供給者10の発電設備11の発電電力を相対的に減少させることができる。
【0047】
<4>
上記実施形態では、事故により自家発電設備22が運転停止されることでその発電電力がゼロになる場合を例示したが、自家発電設備22の発電電力が例えば最低発電電力にまで急減するような場合であっても構わない。