【実施例】
【0071】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
先ず、ポリアミドの構成要素、物性の測定方法、及び特性の評価方法を下記に示す。
〔測定方法〕
<ポリアミドのイソフタル酸成分比率、イソフタル酸末端基、及び全カルボキシル末端基の定量>
ポリアミドを用いて、
1H−NMRにより求めた。
溶媒として重硫酸を用いた。
装置は日本電子製、「ECA400型」を用いた。
繰返時間は12秒、積算回数は64回で測定した。
各成分の特性シグナルの積分値より、イソフタル酸成分量、イソフタル酸末端基量、その他のカルボキシル末端基(例えばアジピン酸末端基)量を算出し、これらの値から、全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、及び上記式(1)のパラメータ(Y)をさらに算出した。
【0073】
<蟻酸溶液粘度>
ポリアミドを蟻酸に溶解し、JIS K6810に準じて測定した。
【0074】
<ハイサイクル成形時の外観安定性/グロス値の評価>
装置は、日精樹脂(株)製「FN3000」射出成形機と可塑化用スクリューの圧縮比が1.8で逆流防止リングとスクリューのクリアランスが5mmの長繊維用スクリューを用いた。
シリンダー温度を320℃、充填時間が約1秒になるよう射出圧力、射出速度を適宜調整し、金型温度はポリアミド樹脂組成物のガラス転移温度に応じて80〜120℃の範囲で適宜設定した。100ショットまで成形を行い、ISO試験片を得た。
得られた成形品(ISO試験片)の外観安定性は、堀場(株)製、ハンディ光沢度計「IG320」を用いてグロス値を測定し、下記方法により求めた。
外観安定性=(20〜30ショットISO試験片のグロス平均値)−(90〜100ショットISO試験片のグロス平均値)
上記の数値差が小さいほど、外観安定性に優れるものと判断した。
なお表1、2中、「(1)−(2)」とは、上記外観安定性の式により算出されるグロス値を示す。
【0075】
<衝撃特性:シャルピー衝撃強さの測定>
上記外観安定性試験で得られた20〜25ショットISO試験片を用いて、ISO 179に準じてシャルピー衝撃強さ測定した。
測定値はn=6の平均値とした。
【0076】
<高温剛性:23℃、80℃、120℃雰囲気下での曲げ強度、曲げ弾性率の測定>
上記外観安定性試験と同様の方法で得られたISO試験片を用いて、ISO178に準じて、周囲温度23℃、80℃、120℃雰囲気下で曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。また、23℃で測定した曲げ弾性率に対する120℃で測定した曲げ弾性率の割合(%)を剛性保持率とし、この値が大きければ大きいほど高温剛性に優れているものと判断した。
なお、下記表1、表2中、曲げ強度を「強度」、曲げ弾性率を「弾性率」と表記した。
【0077】
<成形品中の(B)繊維状強化材の重量平均繊維長の測定>
上記高温剛性評価試験で得られたISO試験片を、磁器るつぼに入れ、電気マッフル炉(ヤマト科学製FP−31型,設定温度600℃)を用いて試験片を燃焼させた。
燃焼後のガラス繊維をスライドガラス上に移し、光学顕微鏡下で観察し、画像解析装置を用いて、任意に選んだガラス繊維400本の長さを測定した値から、下記式(II)により算出した。
重量平均繊維長=ガラス繊維長さの2乗和/ガラス繊維長さの合計 ・・・(II)
【0078】
〔(A)ポリアミド〕
<製造例1:ポリアミド(A1)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110〜150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0079】
<製造例2:ポリアミド(A2)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1132g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368gを用いた。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0080】
<製造例3:ポリアミド(A3)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1044g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩456gを用いた。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0081】
<製造例4:ポリアミド(A4)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩816g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩684gを用いた。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0082】
<製造例5:ポリアミド(A5)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263gを用いた。全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を添加しなかった。
その他の条件は、製造例1の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0083】
<製造例6:ポリアミド(A6)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1044g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩456gを用いた。全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を添加しなかった。
その他の条件は、製造例1の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0084】
<製造例7:ポリアミド(A7)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1114g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩386g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110〜150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で400torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0085】
<製造例8:ポリアミド(A8)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1114g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110〜150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に20分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は270℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0086】
<製造例9:ポリアミド(A9)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1109g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368g、εカプロラクタム5g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110〜150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0087】
<製造例10:ポリアミド(A10)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500g、全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110〜150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0088】
<製造例11:ポリアミド(A11)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1455g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩45gを用いた。
その他の条件は、製造例10と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0089】
<製造例12:ポリアミド(A12)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110〜150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次にバルブを閉止し、ヒーターを切り、約8時間かけてオートクレーブの内部温度を常温まで冷却し、蟻酸溶液粘度7のポリアミドを得た。
得られたポリアミドを粉砕した後、内容積10Lのエバポレーターに入れ、窒素気流下、200℃で10時間固相重合した。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0090】
<製造例13:ポリアミド(A13)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩816g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩684gを用いた。
その他の条件は、製造例12と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0091】
<製造例14:ポリアミド(A14)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1220g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩280g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110〜150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま2時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、次にバルブを閉止し、ヒーターを切り、約8時間かけてオートクレーブの内部温度を常温まで冷却し、ポリアミドを得た。得られたポリアミドを粉砕した後、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0092】
<製造例15:ポリアミド(A15)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩570g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩930gを用いた。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0093】
<製造例16:ポリアミド(A16)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩570g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩930gを用いた。
全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を添加しなかった。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0094】
<製造例17:ポリアミド(A17)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110〜150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次にバルブを閉止し、ヒーターを切り、約8時間かけてオートクレーブの内部温度を常温まで冷却し、蟻酸溶液粘度7のポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0095】
〔(B)繊維状強化材〕
ポリアミド樹脂組成物に含有させる(B)繊維状強化材を示す。
(B1)ガラス繊維ロービング(商品名:ER4301H、重慶国際複合材料有限公司製、平均繊維径:17μm、TEX数:1200TEX)
(B2)ガラス繊維チョップドストランド(商品名:T275H、日本電気硝子(株)製、平均繊維径:10μm、繊維カット長3mm、断面形状は円形)
【0096】
〔実施例1〕
二軸押出機(Coperion社製ZSK25)を用い、ポリアミド(A1)をフィードホッパーより供給し、シリンダー設定温度:290℃、スクリュー回転数300rpmの条件で、押出機内で溶融混練した。
溶融したポリアミド樹脂を、長繊維強化樹脂製造装置((株)神戸製鋼所製KOSLFP−212)の含浸ダイに供給した。
この含浸ダイに3本のガラス繊維ロービング(B1)の束を導入し、ダイ内で樹脂溶融混練物が含浸したガラス繊維ロービング(B1)の束をダイノズルから連続的に引き抜いて、1本のストランド状にして、そのストランドを水冷バス中で冷却固化した後、ペレタイザーで切断することにより、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
ストランドの引取速度は30m/分であり、得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットの長さは10mm、前記ペレット中の繊維状強化材であるガラス繊維含有量は50質量%であった。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0097】
〔実施例2〕
ポリアミド(A2)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0098】
〔実施例3〕
ポリアミド(A3)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0099】
〔実施例4〕
ポリアミド(A4)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0100】
〔実施例5〕
ポリアミド(A5)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0101】
〔実施例6〕
ポリアミド(A6)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0102】
〔実施例7〕
ポリアミド(A7)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0103】
〔実施例8〕
ポリアミド(A8)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0104】
〔実施例9〕
ポリアミド(A9)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0105】
〔実施例10〕
含浸ダイノズル径を変更して、ポリアミド樹脂組成物ペレット中のガラス繊維ロービング(B1)の量を60質量%((A)ポリアミド100質量部に対して(B)繊維状強化材150質量部)にした以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0106】
〔実施例11〕
引取速度とペレタイザー回転数を変更して、ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さを20mmにした。その他の条件は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0107】
〔比較例1〕
ポリアミド(A10)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0108】
〔比較例2〕
ポリアミド(A11)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0109】
〔比較例3〕
ポリアミド(A12)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0110】
〔比較例4〕
ポリアミド(A13)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0111】
〔比較例5〕
ポリアミド(A14)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0112】
〔比較例6〕
ポリアミド(A15)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0113】
〔比較例7〕
ポリアミド(A16)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0114】
〔比較例8〕
ポリアミド(A17)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様に実施したが、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットが得られなかった。
【0115】
〔比較例9〕
二軸押出機(Coperion社製ZSK25)を用い、ポリアミド(A1)をトップフィード口より供給し、下流のサイドフィード口よりガラス繊維チョップドストランド(B2)をポリアミド(A1)50質量%に対して50質量%の割合でそれぞれ供給し、シリンダー設定温度:290℃、スクリュー回転数300rpmの条件で、押出機内で溶融混練した。
得られたガラス短繊維強化ポリアミド樹脂組成物をストランド状になるよう成形し、水冷バス中で冷却固化した後、ペレタイザーでペレタイズしてガラス短繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレットの長さは3mm、ペレット中のガラス繊維の重量平均繊維長は0.30mmであった。
得られたガラス短繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0116】
〔比較例10〕
ポリアミドとして、ポリアミド66(商品名:レオナ1200,旭化成ケミカルズ(株)製)を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
前記表1に示すように、実施例1〜11の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物の成形品は、いずれも極めて優れた外観安定性、衝撃特性、高温剛性を有することが確認された。
一方、(Y)が、−0.3≦(Y)≦0.8の範囲外である比較例3、4、5、8のポリアミド樹脂組成物の成形品、及び(x)が、0.05≦(x)≦0.5の範囲外である比較例1、2、6、7の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物の成形品は、表面外観の安定性、衝撃特性が大きく低下したことが確認された。
比較例9のようにガラス短繊維を用いると、成形品中のガラス繊維長が短くなるため、衝撃強度や剛性が低くなり、高温剛性が十分に得られなかった。
また比較例10のように、通常のポリアミド66を含むポリアミド樹脂組成物を用いた場合は、ハイサイクル成形での外観安定性が大幅に低下することが確認された。