(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、C/C複合材を抄造法で加工することにより炭素部品を製造する場合、比較的短い炭素繊維が使用されることが知られている(特許文献1で使用されている炭素繊維の長さは1mmから2mm)。このようなC/C複合材においては炭素繊維が母材から離脱し、強度不足が発現することがあり、強度の向上が望まれている。
【0007】
本発明は、強度を確保するとともに、様々な形状に加工可能なC/C複合材積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のC/C複合材積層体は、炭素質母材と、当該炭素質母材に分散した状態で存在する第1の炭素繊維とを含むコア材と、第2の炭素繊維の織布から構成され、前記コア材の少なくとも一面に積層された織布層と、を備える。
【0009】
上記構成のC/C複合材積層体において、コア材の少なくとも1面に織布層が積層されている。C/C複合材積層体は変形時に表面ほど変形量、応力とも大きくなるので、表面に長い炭素繊維を用いた織布層を形成することにより、織布層が変形を抑制し、より高強度のC/C複合材積層体を得ることができる。また、コア材には第1の炭素繊維がランダムな方向に分散した状態で存在しているので層間剥離しにくく、C/C複合材積層体は様々な形状への加工に対応可能である。コア材への織布層の積層方法としては、接着剤を用いて接着する方法のほか接着剤なしで、固着する方法も適用可能である。接着剤なしで、固着する際は、コア材の前駆体であるプリフォームに上に織布層を配置したのち、成形、硬化、脱脂及び焼成することで容易に強固な接着が可能である。
【0010】
前記織布層は互いに積層された複数の織布から構成され、前記複数の織布のうち少なくとも前記コア材に隣接した織布は、織り込まれた前記第2の炭素繊維間に形成された開口を有することが好ましい。
【0011】
上記構成のC/C複合材積層体において、コア材に隣接した織布は開口を有しているため、この開口が、応力解放領域となり、第1の炭素繊維の分散したコア材と、第2の炭素繊維が規則正しく配列した織布層との界面に発生する応力を緩和することができる。
【0012】
また、前記コア材に隣接した織布に比べて、前記コア材から遠い側に積層された織布は、織布の全面積に対する開口の面積の比率である開口比が小さいことが好ましい。
【0013】
上記構成のC/C複合材積層体において、コア材に近い側の織布よりも遠い側に積層された織布は開口比が小さい。このため、コア材に近い側に積層された織布層はコア材から遠い側に積層された織布層よりも弾性率が小さくなる。コア材に近い側に積層された織布層は伸縮しやすいので剥がれにくく、コア材から遠い側に積層された織布層は、繊維密度が高いので高弾性かつ高強度の織布である。したがって、C/C複合材積層体の強度を大きくしながらコア材と織布層を剥がれにくくすることができる。
【0014】
また、前記開口には前記コア材から突出した前記炭素質母材及び前記第1の炭素繊維が充填されていることが好ましい。
【0015】
上記構成のC/C複合材積層体において、開口に炭素質母材及び第1の炭素繊維が充填されているので、コア材と織布層が炭素繊維により接続されやすく、コア材と織布層とを強く接合することができる。ここでは第2の炭素繊維の開口に、炭素質母材及び第1の炭素繊維と固着して存在しているのが好ましい。
【0016】
また、前記開口には前記コア材から突出した前記炭素質母材及び前記第1の炭素繊維が存在していることが好ましい。
【0017】
上記構成のC/C複合材積層体において、開口に炭素質母材及び第1の炭素繊維が存在し、係合しているので、コア材と織布層とを強く接合することができる。ここでは開口に炭素質母材及び第1の炭素繊維が入り込んで存在しているものとする。
【0018】
また、前記開口には前記コア材が存在しなくてもよい。本構成においては、より複雑形状のC/C複合材積層体が得られる。
【0019】
また、前記織布層は前記コア材の両面に接着されていなくてもよい。本構成においては、より構造の簡単なC/C複合材積層体が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、様々な形状への加工に対応することができ、かつ、高強度のC/C複合材積層体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
本発明において開口比とは、織布の全面積に対する開口の面積の比率である。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るC/C複合材積層体より構成された鋳型100を示す。
図1(a)は鋳型100の斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)のA−A線に沿った断面図である。
【0024】
本実施形態の鋳型100は、溶融金属を成形して所定の金属部品を製造するのに用いられる。鋳型100の凹部50に溶融金属が流し込まれることにより金属塊が成形される。鋳型100を形成するC/C複合材積層体30は、コア材10と、このコア材10の相対向する2つの面に積層された織布層20とを備える。
【0025】
図2(a)および
図2(b)に、C/C複合材積層体30の要部断面図および要部拡大断面図を示すように、コア材10は、C/C複合材積層体30のおおよその形状を形作るものであり、炭素質母材12と、当該炭素質母材12に分散した状態で存在する第1の炭素繊維14とを含む。
【0026】
織布層20は、C/C複合材積層体30の表面を形成するものであり、
図2(a)および(b)に示すように第2の炭素繊維22の織布24a、織布24b1、24b2、織布24c1、織布24c2がコア材側から順次積層されて構成され、コア材10の相対向する2面にそれぞれ積層される。なおここでは織布層20を、コア材の2面に積層したが、少なくとも一面に貼着されていればよい。
なお織布層20は互いに積層された複数の織布24a、織布24b1、24b2、織布24c1、織布24c2が順次積層されて構成され、複数の織布のうち少なくともコア材10に隣接した織布24aは、織り込まれた第2の炭素繊維22間に形成された開口23を有している。
【0027】
尚、本発明の実施形態1のコア材の弾性率は例えば5〜20GPaであり、第2の炭素繊維の長さ方向の弾性率(引張り弾性)は例えば200〜1000GPaである。本実施形態の積層された織布の縦糸あるいは緯糸方向の弾性率は、概ね第2の炭素繊維の「弾性率/2」に「1−開口率」を乗じることにより、概算することができると考えられる。開口率0%の織布の縦糸あるいは緯糸方向の弾性率は100〜400GPaであり、コア材の弾性率よりも圧倒的に大きい。
上記C/C複合材積層体において、
図2(c)に示すように、コア材10に隣接した織布24aは開口23を有しているため、織布の弾性率をコア材に近づけることが出来、この開口23が、応力緩和領域となり、第1の炭素繊維14の分散したコア材10と、第2の炭素繊維22が規則正しく配列した織布24aとの界面に発生する応力を緩和することができる。
【0028】
そして、コア材10に隣接した織布24aに比べて、コア材10から遠い側に積層された織布24b1、24b2、織布24c1、織布24c2は、織布の全面積に対する開口23の面積の比率である開口比が順に小さくなるように形成されている。
このように、上記構成のC/C複合材積層体において、コア材10に近い側の織布24aよりも遠い側に積層された織布24c2は開口比が小さい。このため、コア材10に近い側に積層された織布層はコア材から遠い側に積層された織布層よりも弾性率が小さくなる。コア材10に近い側に積層された織布層は伸縮しやすいので剥がれにくく、コア材10から遠い側に積層された織布層は、繊維密度が高いので高弾性かつ高強度の織布である。したがって、C/C複合材積層体30の強度を大きくしながらコア材10と織布層20を剥がれにくくすることができる。
【0029】
再びコア材10の説明に戻る。コア材10の炭素質母材12としては、炭素質のものであれば特に限定されず、非晶質のガラス状炭素材、結晶性の炭素材、あるいはこれらの混合物も適用可能である。非晶質のガラス状炭素材は、たとえば炭素繊維(後述する第1の炭素繊維14に相当)にフェノール樹脂、フラン樹脂、コプナ樹脂等の樹脂を含浸し炭素化することによって得られる。結晶性の炭素材は、たとえばピッチ、タールなどを炭素繊維(後述する第1の炭素繊維14に相当)に含浸し炭素化することによって得られる。
【0030】
とりわけ、炭素質母材としては、非晶質のガラス状炭素材を形成するフェノール樹脂を使用することが好ましい。フェノール樹脂は炭化収率が高く、製造も容易であるため、コア材10を構成する炭素質母材として好適に使用することができる。
【0031】
特にコア材10を抄造法で製造する場合、炭素質母材12となるフェノール樹脂として、特に疎水性のフェノール樹脂が好ましく用いられる。疎水性のフェノール樹脂は水中に分散しても溶けることがないため、炭素繊維の短繊維とともに水中に分散させた後、一緒に凝集し、バインダ成分を含んだ凝集体が容易に得られるからである。疎水性は樹脂そのものが疎水性であっても、樹脂の被膜が疎水性被膜であってもよい(エアウォーター社製、ベルパール(登録商標)S890、S899など)。疎水性のフェノール樹脂は粉末状であることが好ましく、粒子直径が1μm以上かつ100μm以下の粉末であることが好ましい。粒子直径が1μm未満であるとフェノール樹脂粒子の表面積が多くなるために分散しにくくなる。粒子直径が100μmを超えると、フェノール樹脂粒子がまとまって存在することとなり、炭化した後にコア材10の中に大きな気孔が残留しやすく、大きな気孔の存在により強度が低下しやすくなる。
【0032】
第1の炭素繊維14は、どのようなものであってもよい。たとえはピッチ系、PAN(ポリアクリロニトリル;polyacrylonitrile)系、レーヨン系などが採用可能である。ピッチ系炭素繊維は高弾性(例えば引張り弾性500〜1000GPa)であるので、撓みにくいC/C複合材積層体を得ることができる。このため、変形が好ましくない支持材(支持プレート)などの用途に好適に利用できる。PAN系炭素繊維は低弾性(例えば引張り弾性200〜600GPa)であるので、変形に強く、特に熱応力の発生する用途に好適に利用できる。
【0033】
第1の炭素繊維14が炭素質母材12に分散した状態とは、第1の炭素繊維14の大部分が素線になるまで炭素質母材12によってほぐされ、ランダムに炭素質母材12中に分散するとともに、第1の炭素繊維が炭素質母材によって互いに結びつけられている状態である。第1の炭素繊維がランダムに分散した状態とは、炭素繊維が立体的にランダム配向していても良く、任意の面内で、平面的にランダム配向に配向していても良い。
【0034】
第1の炭素繊維14はどのようなものであってもよいが、いわゆる短繊維で構成されていることが好ましい。望ましい第1の炭素繊維14の長さは、0.1〜30mmである。更に望ましい第1の炭素繊維14の長さは0.5〜10mmである。長さが0.1mm以上であれば、炭素繊維の繊維径に対して個々の第1の炭素繊維14の表面積を大きくすることができる。このため、第1の炭素繊維14に繊維の長手方向の張力が加わったとき、第1の炭素繊維14をコア材10内に留めるだけの炭素繊維表面の接着力が得られるので、第1の炭素繊維14がコア材10から引き抜かれにくくなる。このため、織布層が形成されていない部分でも最低限の強度を得ることができる。また、第1の炭素繊維14の長さは30mm以下であることが好ましい。長さが30mmを越えると、コア材10を圧縮成形する前のプリフォーム段階の嵩密度が小さくなり、圧縮成形による圧縮率が大きくなる。圧縮率が大きいとコア材10の圧縮成形による変形量が大きくなるため、変形のコントロールがしにくく、目的の形状が得られにくいこととなる。
【0035】
コア材10は、第1の炭素繊維14と炭素質母材12のみで構成されている必要は無く、空隙あるいは他の成分が含まれていても良い。他の成分としては黒鉛、コークスをはじめその他セラミックス粒子からなる骨材などが挙げられるが特に限定はされない。
【0036】
織布層20が複数層の織布で構成される場合には、積層された織布は、それぞれ同一の種類の織布であっても良く、異なる種類の織布で構成されていても良い。織布層20が複数層の織布で構成されている場合には、
図2(b)に断面図を示すように、コア材10に隣接した織布24aより、コア材10から遠い側に積層された織布24c2の方が、開口比が小さい事が望ましい。
【0037】
開口比の小さい織布は、開口比の大きな織布に比べ、炭素繊維そのものの性質に近くなるために、高弾性かつ高強度となり、コア材10を接着したときにC/C複合材をより高強度化出来る。また、開口比の大きな織布は、コア材10に隣接して備えられることにより織布層20との弾性率、熱膨張係数の物性差を和らげる緩衝層として作用する。
【0038】
コア材10に隣接する織布24aは開口23を備えており、この開口23にはコア材10側から延びる第1の炭素繊維14及び第1の炭素繊維14が分散する炭素質母材12の一部が存在することが望ましい。開口23に第1の炭素繊維14が存在することにより、開口23内面に第1の炭素繊維14が接することもでき、第1の炭素繊維14と織布層20との接触面積を大きくすることができる。このため織布層20とコア材10との間で発生する熱膨張差、弾性率差により界面に剥離が生じるのを防止することができる。
【0039】
また、開口23には第1の炭素繊維14だけではなく、炭素質母材12が存在するのが好ましい。炭素質母材は、元となるバインダ樹脂が一旦溶融状態を経て、硬化、炭素化されるので、接着力が強く、開口部内面に炭素質母材が存在することにより強くコア材10と織布層20を固着することができる。
【0040】
つまり、開口23には、第1の炭素繊維14、炭素質母材12が充填されていることが望ましい。製造工程において、コア材10側から第1の炭素繊維14、炭素質母材12の前駆体であるバインダ樹脂(後述する)が供給され、開口23に充填され、更に硬化、炭素化することによりコア材10と織布層20との結合状態が得られる。このように、コア材10から開口23に向かって炭素繊維、炭素質母材の前駆体が流れ充填されているので、充填された第1の炭素繊維14及び炭素質母材12と、コア材10全体を構成する第1の炭素繊維14と炭素質母材12は連続的であり、かつ同質のものであるため、開口23に充填された第1の炭素繊維14及び炭素質母材12とコア材10が剥離しにくくなる。ここで充填とは、織布を構成する、第2の炭素繊維22の開口23に、炭素質母材12及び第1の炭素繊維14とが溶融して入り込み硬化することで、密着して存在しているものとする。従って焼成工程を経た完成時には、開口23にはコア材10から突出した炭素質母材12及び第1の炭素繊維14が存在している。
【0041】
織布層20はコア材10の片面あるいは両面に貼着されていても良く、片面に貼着されている場合にはどちら側に貼着されていても良い。コア材10の片面に織布層20が貼着された例を
図3(a)または(b)に示す。
図3(a)は、コア材10の内側面すなわち、凹部50の側に織布層20が貼着された例を示し、
図3(b)は、コア材10の外側面に織布層20が貼着された例を示す。いずれも有用であるが、コア材10の片面にのみ貼着された場合の方が、工程が簡略化され、製造が容易である。一方、織布層20をコア材10の両面に貼着することで、熱応力が両面から均等にかかることになり、より熱変形しにくくなる。
【0042】
織布を構成する第2の炭素繊維としては、ピッチ系、PAN系、レーヨン系のいずれかを用いればよい。コア材10への織布の貼着に際しては、接着剤なしで、加熱硬化させることもできるが、接着剤として、熱硬化性樹脂、ピッチあるいはCOPNA樹脂を用いて接着することも可能である。これらの接着材は、焼成し炭素化するので焼成した後も接着材として機能する。これにより、加熱工程における、織布の位置ずれや脱落を防止することができる。
織布の縦糸及び緯糸は、炭素繊維の素線を用いてもよいが、500〜10000本程度をまとめた束(ストランド)を用いてもよい。
【0043】
また、第2の炭素繊維の織布は格子の大きさが0.5〜50mmであることが好ましい。ここで格子の大きさとは、開口を形成する一単位の正方形の1辺の長さをいうものとする。格子の大きさが0.5mmより小さいと、織布を構成する第2の炭素繊維が互いに交わる炭素繊維を跨ぐ際に鋭く折れ曲がるため、繊維が折れやすくなる。格子の大きさが50mmを越えると織布の四隅の炭素繊維が解れやすく隅部分で充分な強度を発現することができない。
【0044】
織布層20の厚さはコア材10の0.5〜100%が好ましい。織布層20の厚さがコア材10の0.5%未満であると、十分な強度を発揮することができず、100%を越えるとコア材10との物性差で内部応力が発生し、剥がれたり反りやすくなる。
【0045】
なお、前記実施の形態においては、織布層20は5層構造で構成したが、5層構造に限定されるものではなく、第2の炭素繊維の織布とは、単層あるいは複数層重なって織布層20を構成する。それぞれの織布は、どのような織り方でも良く、平織り、綾織り、朱子織りなどどのような織り方でもよい。織布は、開口を有していても開口のないものであってもよいが、少なくともコア材10に隣接する織布は開口を有するのが望ましい。
【0046】
本発明のC/C複合材の積層体の第1の実施形態は以下の工程(1)−(5)で得ることができる。
(1)コア材のプリフォームの準備工程
(2)成形工程
(3)硬化工程
(4)脱脂工程
(5)焼成工程
【0047】
以下各工程について説明する。
[コア材のプリフォーム準備工程]
コア材のプリフォームは、平均繊維長が0.01〜30mmの第一の炭素繊維と第一の炭素繊維を繋ぐバインダ樹脂(炭素質母材の前駆体)とからなる。バインダ樹脂(炭素質母材の前駆体)は加熱して炭化するものであればどのようなものでもよいが、フェノール樹脂、フラン樹脂、及びイミド樹脂などの熱硬化性樹脂などが好適に利用できる。炭素繊維とバインダ樹脂との重量比は1:1〜1:2のものが好ましい。第一の炭素繊維の比率を上記範囲にとることで、成形性が良好でかつ高密度のコア材を得ることができ、高い強度を得ることができる。また焼成時にバインダ樹脂の分解により発泡するのを抑制することができ、内部クラックの発生を抑えることができる。第一の炭素繊維の比率が増えると成形性が悪くなり高密度のコア材が得られず高い強度が得られない。バインダ樹脂(炭素質母材の前駆体)の比率が増えると後の焼成時にバインダ樹脂の分解により発泡しやすくなり、内部クラックができやすくなる。ここでバインダ樹脂は、炭素質母材の前駆体であり、焼成後、最終的には炭素質母材となる。
本実施形態では、抄造法により、内側(内法寸法)が1050×1050×315mmの箱形状のプリフォームを用意する。ここで板厚は25mm程度とする。
【0048】
[成形工程]
プリフォームの表面を炭素繊維の織布で覆い成形する。C/C複合材が平坦に近い形状であれば1軸プレスで成形することができ、立体形状であればオートクレーブで成形することができる。
【0049】
オートクレーブで成形する場合は以下のように行うことができる。表面を炭素繊維の織布で覆われたプリフォームを密閉フィルムで覆い、オートクレーブを用いて熱と圧力を加え成形する。まず密閉フィルム内の空気を吸引し真空引きした後、圧力をかける。成形圧は特に限定されないが1MPa以上が好ましい。1MPaの圧力があれば、熱硬化性樹脂の硬化反応で発生する生成ガスによって、抄造による成形体が膨張するのを防ぐことが出来る。
加熱温度は熱硬化性樹脂の軟化温度以上まで昇温することが好ましい。
【0050】
プリフォーム側の織布に開口があれば、圧縮時にプリフォームのバインダ樹脂(炭素質母材)が溶融し、開口に充填される。このため織布層とコア材の高い接合強度を得ることができる。
【0051】
オートクレーブ成形の場合には圧縮成形時に表面に凹凸が形成されやすいので、圧縮成形を第1成形工程、第2成形工程の2段階で行ってもよい。第1成形工程では第2成形工程の圧力の10〜90%の圧力で行い大きく収縮させた後、表面を切削して平坦にした後に織布を貼り付け、さらに第2成形工程を行ってもよい。第1成形工程では完全に収縮していないため、第2成形工程で開口に第1の炭素繊維及び炭素質母材の前駆体が流れ充填させることができる。
【0052】
[硬化工程]
炭素質母材となるバインダ樹脂は熱硬化性樹脂の場合、上記成形工程において十分に圧力を上げた後、加熱し、プリフォームに含まれる熱硬化性樹脂を溶融硬化させることが好ましい。これにより、プリフォームが変形しないように形状を固定化することができる。加熱温度は熱硬化性樹脂の硬化温度以上まで昇温することが好ましい。具体的には、加熱温度は100℃以上が好ましい。加熱温度が100℃以上であると、バインダ樹脂の硬化が速やかに行われるので、硬化工程にかかる時間を短縮出来る。加熱温度が高ければ高いほど硬化が速やかに進行するが、加熱温度は200℃以下であることが好まい。200℃を越えると、表面のみ先に硬化しやすいので、表面が硬い殻を形成し、内部の密度が上がりにくいからである。前記の成形工程をオートクレーブで行う場合等、成形工程で充分に加熱できれば、硬化工程は成形工程と同時に行うこともできる。
【0053】
[脱脂工程]
こうして得られた成形体を還元性雰囲気あるいは不活性雰囲気で熱処理しバインダ樹脂を炭素化する。脱脂は400〜1000℃で行うことが好ましい。
【0054】
[焼成工程]
前記脱脂工程の次に焼成工程を行うことにより、バインダ樹脂を十分に炭素化させ炭素質母材を形成し、C/C複合材の積層体を得ることができる。焼成温度は1500〜2500℃で焼成することが好ましい。
発生ガスの処理に対応できる炉であれば、脱脂工程と焼成工程を同時に行うことができる。
【0055】
本発明のC/C複合材によれば、織布層でコア材の表面が覆われているため、強度の向上を図ることが可能である。特許文献1の場合のように、炭素繊維が短いとき、様々な形状を得るために短い炭素繊維を用いC/C複合材を得る場合であっても、C/C複合材の強度不足が発現する場合も、織布層で表面を覆うことにより、高強度化をはかることができる。すなわち、一般的に抄造で使用される炭素繊維の平均繊維長は1から2mmの範囲にあり、比較的短いため、1本1本の炭素繊維の表面は小さい。このことから、炭素繊維自身をマトリックス内に留めるための接着力は十分でなく、炭素繊維に外力が加わったときマトリックスから引き抜かれやすくなり、高強度のC/C複合材が得られないことが推定される。これに対し、本発明の構成によれば織布層で表面を覆うことで従来例に比べて強度の向上を図ることが可能である。
【0056】
本発明の第1の実施形態は、内表面及び外表面に織布が積層されているので、高い強度を得ることができる。本実施形態の鋳型には、シリコン、銅、貴金属などの溶融金属が流し込まれる。鋳型として使用中に、側面には重力により高い圧力がかかる。このため高い強度が要求されるが、本実施形態のC/C複合材積層体による鋳型には、表面に織布層20が貼り付けられているので高い強度を得ることができる。溶融金属の圧力により凹部50の外側にふくれるように変形するので、外側では表面が引っ張られ、内側では表面が圧縮されるように変形する。特に外表面側(外側面)は高い弾性、強度を備えた織布層20が貼り付けられているので、引っ張り荷重に対して高い強度を発現することができる。
【0057】
また、貴金属、銅などの溶融金属に直接接する鋳型として使用した場合には、内表面側に炭素繊維クロスを備えることにより、溶融金属の内部への浸透を防止することができるので離型しやすくすることができる。
【0058】
本発明のC/C複合材積層体は、5層の織布が積層され、表層側で開口比が小さくなるように順に貼り付けられている。このため、内層の織布により外表面側の織布とコア材10との物性差を緩和することができ、溶融した金属が接して内側面が高い温度にさらされた場合でも、熱膨張差によって織布層20とコア材及び織布層の層間が剥がれることを防止することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係るC/C複合材積層体より構成された保温筒200を示す。
図4(a)は保温筒200の斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)のA−A線に沿った断面図である。
【0060】
本発明の第2の実施形態のC/C複合材積層体は内径(内法)1000mm高さ1000mmの円筒形状の、単結晶引き上げ装置の保温筒200であり、筒を構成するコア材10の内表面及び外表面には織布層20が貼着されている。ここでコア材の板厚は25mm程度である。
図5(a)および
図5(b)に要部断面図を示すようにこの保温筒200においては、コア材10と、第2の炭素繊維22の織布層20から構成され、織布層20がコア材10の相対向する2面に貼着される。なおここでは2面に貼着したが、少なくとも一面に貼着されていればよい。ここで、織布層20は3層構造をなしている。
図5(a)は本発明の第2の実施形態のC/C複合材積層体を示す要部断面図であり、
図5(b)は
図5(a)の点線部分の拡大図、
図5(c)は第1層目の織布を貼着した状態を示すようにコア材から第1層目の織布の上面で切断した斜視図である。
【0061】
本実施形態のC/C複合材積層体30は、プリフォームを成形、硬化、脱脂及び焼成してコア材10を得た後、織布を貼り付けるようにした点が前記実施の形態1のC/C複合材積層体と異なるが、他は前記実施の形態1のC/C複合材積層体と同様である。
【0062】
まず、大きさが、内径φ1050×1000のプリフォームを準備する。プリフォームの材質等は第1の実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態では、プリフォームに織布を貼り付けることなく、成形、硬化、脱脂及び焼成(第1の焼成)し、C/C複合材を得る。得られたC/C複合材を円筒形状に加工し、目的の形状を形成しコア材10とした後、表面に織布を貼り付ける。貼り付けはどのような方法で行ってもよいが、コプナ樹脂、フェノール樹脂など接着剤として利用できる。接着材を用いて織布が貼り付けられたC/C複合材を1500〜2500℃で再度焼成することによりC/C複合材積層体30を得ることができる。(第2の焼成)
本実施形態のC/C複合材積層体では、C/C複合材からなるコア材10を形成した後に織布層20を貼り付けているので織布層20の開口23に第1の炭素繊維14は充填されない。
従って、
図5(b)および
図5(c)に示すように、織布層20とコア材10の界面は平滑であり、開口23にはコア材10(第1の炭素繊維14)が存在しない。
【0064】
本発明の第2の実施形態の保温筒200によれば、内表面及び外表面に織布層が積層されているので、高い強度を得ることができる。本実施形態の保温筒200は、シリコン単結晶引き上げ装置の被加熱領域であるホットゾーンの最外部に備えられる。さらに保温筒の外側には断熱材が配置される。保温筒の内側の高さの中心付近にカーボンヒーターが備えられている。このため、保温筒の上下端に比べ中央は高温にさらされ、熱で膨張しようとする。本実施形態のC/C複合材積層体30による保温筒200の内表面及び外表面に織布層20が貼り付けられているので、カーボンヒーターの熱で発生する部分的に不均一な変形を高強度かつ高弾性の織布層が、抑えようと作用する。このため、変形が小さく破損しにくい保温筒が得られる。
【0065】
また、シリコン単結晶引き上げ装置では内表面がSiOガス、シリコン蒸気に曝されるため、内表面側に織布層20である炭素繊維クロスを備えることにより、SiOガス、シリコン蒸気が表面層の織布層20と反応し、コア材内部にSiOガスが浸入することによる珪化を防止することができる。
【0066】
<実施例1>
図1(a)および(b)は、本発明の第1の実施形態のC/C複合材積層体の実施例を示す。本実施例のC/C複合材積層体は、上記実施の形態1と同様、凹部50と平面部分とを有するバット状(箱状)の形状をなすものである。
本実施例のC/C複合材積層体は、内側(内法)が縦1000×横1000×高さ200mm、厚さ30mmの箱形の形状であり、溶融した金属を冷却するための鋳型である。このC/C複合材積層体は、平均繊維長が0.5mmの炭素繊維が炭素質母材中に分散したC/C複合材からなるコア材と、内表面側及び外表面に貼り付けられた5層の織布とからなる。織布は外側から、第1層〜第5層24c2、24c1、24b2、24b1、24aを構成している。ここでC/C複合材積層体の板厚は25mmである。
【0067】
5層の織布のうち、コア材10側の織布24aには、開口23内部に炭素質母材12、第1の炭素繊維14が存在し、また各織布24a、24b1、24b2、24c1、24c2も互いに密着しており、互いに剥離することを防止している。いずれの織布も厚さ0.5mm、正方形をなす格子の一辺の大きさは5mmであり、開口比は、次表1に示すように、0%、0%、50%、50%、70%である。
【0069】
本実施例のC/C複合材積層体は、5層の織布が積層され、表層側で開口比が小さくなるように順に貼り付けられている。このため、内層の織布により外表面側の織布とコア材10との物性差を緩和することができ、溶融した金属が接して高い温度にさらされた場合でも、熱膨張差及び熱歪みによって織布層20が剥がれることを防止することができ、高強度の鋳型を構成することができる。
【0070】
<
参考例1>
参考例1のC/C複合材積層体として、
円筒状の形状をなす保温筒200について説明する。保温筒200は
図4(a)および
図4(b)に示すとおりである。
図4(a)は斜視図、
図4(b)はA−A断面図である。
参考例1のC/C複合材積層体の断面拡大図を
図5に示す。
図5(a)は
参考例1のC/C複合材積層体を示す要部断面図であり、
図5(b)は
図5(a)の点線部分の拡大図、
図5(c)は第1層目の織布を貼着した状態を示すようにコア材から第1層目の織布の上面で切断した斜視図である。
【0071】
このC/C複合材積層体30は、内径(内法)1000mm高さ1000mmの円筒形状であり、板厚は25mmである。そして、このC/C複合材積層体30は、その大部分であるコア材は、平均繊維長0.5mmの炭素繊維が炭素質母材中に分散したC/C複合材であるが、内表面側及び外表面には3層の織布が貼り付けられており、外側から、第1層〜第3層24c、24b、24aを構成している。
【0072】
参考例1のC/C複合材積層体30では、C/C複合材のコア材10を形成した後に織布層20を貼り付けているので織布層20の開口23に第一の炭素繊維14は充填されない。従って、
図5(b)および
図5(c)に示すように、織布層20はコア材10の表面に配置し、織布層の開口23にはコア材10が存在しない。内側の織布24aは、開口を有しているので、弾性率が低い。このためコア材10との間の緩衝作用があるので、織布層が剥離しにくくしている。
【0074】
参考例1の保温筒200によれば、内表面及び外表面の最外層
には開口の小さな高強度かつ高弾性の織布が積層されているので、高い強度を得ることができる。
【0075】
なお、本発明は、本発明の趣旨ならびに範囲を逸脱することなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が様々な変更、あるいは応用を行うことも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。