(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直流母線に対して接続される蓄電池と、商用電力系統に接続される交流母線と前記直流母線とを接続するパワーコンディショナと、前記蓄電池及び前記パワーコンディショナの作動を制御する制御手段とを備えた電力供給システムであって、
前記パワーコンディショナが、前記交流母線での交流電力を所望の直流電力に変換して前記直流母線に出力するAC/DC変換作動状態と、前記直流母線での直流電力を所望の交流電力に変換して前記交流母線に出力するDC/AC変換作動状態とを切り替えて作動可能に構成され、
前記蓄電池が、前記直流母線から電力を充電する充電作動状態と、前記直流母線へ電力を放電する放電作動状態とを切り替えて作動可能に構成され、
前記制御手段が、前記直流母線の電圧源を、前記蓄電池と前記パワーコンディショナとで切り替えて作動させるように構成され、
前記制御手段が、前記パワーコンディショナを前記電圧源として作動させるとき、前記パワーコンディショナの作動を前記直流母線の電圧に応じて前記AC/DC変換作動状態と前記DC/AC変換作動状態との間で切り替え、及び、前記蓄電池の作動を前記直流母線の電圧に応じて前記放電作動状態と前記充電作動状態との間で切り替え、
前記制御手段が前記パワーコンディショナを前記AC/DC変換作動状態で作動させるときの前記直流母線の電圧である第1電圧範囲は、前記パワーコンディショナを前記DC/AC変換作動状態で作動させるときの前記直流母線の電圧である第2電圧範囲よりも低く設定してあり、
前記制御手段が前記蓄電池を前記放電作動状態で作動させるときの前記直流母線の電圧である第3電圧範囲は、前記パワーコンディショナを前記AC/DC変換作動状態で作動させるときの前記第1電圧範囲の最高電圧よりも低く設定してあり、及び、前記蓄電池を前記充電作動状態で作動させるときの前記直流母線の電圧である第4電圧範囲は、前記パワーコンディショナを前記DC/AC変換作動状態で作動させるときの前記第2電圧範囲の最低電圧よりも高く設定してある電力供給システム。
前記制御手段が、前記蓄電池を前記電圧源として作動させるとき、前記直流母線の電圧が前記第1電圧範囲と前記第2電圧範囲との間の充放電基準電圧以下であれば前記蓄電池を前記放電作動状態で作動させ、及び、前記直流母線の電圧が前記充放電基準電圧より高ければ前記蓄電池を前記充電作動状態で作動させる請求項1に記載の電力供給システム。
前記制御手段が、前記電圧源を前記パワーコンディショナから前記蓄電池に切り替えるとき、前記パワーコンディショナの前記AC/DC変換作動状態と前記DC/AC変換作動状態とを共に停止させる前に、前記蓄電池を前記電圧源とし、
前記蓄電池を、前記直流母線の電圧が前記第1電圧範囲と前記第2電圧範囲との間の充放電基準電圧以下であれば前記放電作動状態で作動させ、及び、前記直流母線の電圧が前記充放電基準電圧より高ければ前記充電作動状態で作動させる請求項1に記載の電力供給システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、系統正常時に蓄電池から積極的に交流母線に電力供給するために、例えば、引用文献1の構成において、単にパワーコンディショナを直流母線から交流母線に電力供給可能に構成したとしても、整流器が基準電圧を維持したままでは、蓄電池から任意の出力で放電できないという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、系統正常時においても、蓄電池から交流母線への電力供給が可能な電力供給システムを提供し、例えば、蓄電池の蓄電量に余裕がある場合には、蓄電池から交流電力線側に電力を供給することでシステムの電力効率を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る電力供給システムの特徴構成は、前記パワーコンディショナが、前記交流母線での交流電力を所望の直流電力に変換して前記直流母線に出力するAC/DC変換作動状態と、前記直流母線での直流電力を所望の交流電力に変換して前記交流母線に出力するDC/AC変換作動状態とを切り替えて作動可能に構成され、前記蓄電池が、前記直流母線から電力を充電する充電作動状態と、前記直流母線へ電力を放電する放電作動状態とを切り替えて作動可能に構成され、前記制御手段が、前記直流母線の電圧源を、前記蓄電池と前記パワーコンディショナとで切り替えて作動させるように構成され、前記制御手段が、前記パワーコンディショナを前記電圧源として作動させるとき、前記パワーコンディショナの作動を前記直流母線の電圧に応じて前記AC/DC変換作動状態と前記DC/AC変換作動状態との間で切り替え、及び、前記蓄電池の作動を前記直流母線の電圧に応じて前記放電作動状態と前記充電作動状態との間で切り替え
、
前記制御手段が前記パワーコンディショナを前記AC/DC変換作動状態で作動させるときの前記直流母線の電圧である第1電圧範囲は、前記パワーコンディショナを前記DC/AC変換作動状態で作動させるときの前記直流母線の電圧である第2電圧範囲よりも低く設定してあり、
前記制御手段が前記蓄電池を前記放電作動状態で作動させるときの前記直流母線の電圧である第3電圧範囲は、前記パワーコンディショナを前記AC/DC変換作動状態で作動させるときの前記第1電圧範囲の最高電圧よりも低く設定してあり、及び、前記蓄電池を前記充電作動状態で作動させるときの前記直流母線の電圧である第4電圧範囲は、前記パワーコンディショナを前記DC/AC変換作動状態で作動させるときの前記第2電圧範囲の最低電圧よりも高く設定してある点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、パワーコンディショナがAC/DC変換作動状態であるときには、パワーコンディショナを電圧源として、蓄電池を適宜充放電させることで、直流母線の電圧を安定して一定電圧に保つことができる。さらに、
パワーコンディショナがDC/AC変換作動状態であるときには、蓄電池を電圧源として作動させることで、蓄電池から任意の出力で放電することが可能となる。
すなわち、蓄電池から交流母線への電力供給が可能な電力供給システムを提供することができる。よって、交流母線上の電力負荷への電力供給に、例えば、一般的に商用電力系統に比べて電力効率に優れる太陽電池・燃料電池の発電出力を、蓄電池を介して利用することができ、システムの電力効率を改善できる。
加えて、制御手段が、パワーコンディショナを電圧源として作動させるとき、パワーコンディショナの作動を直流母線の電圧に応じてAC/DC変換作動状態とDC/AC変換作動状態との間で切り替え、及び、蓄電池の作動を直流母線の電圧に応じて放電作動状態と充電作動状態との間で切り替えることができる。
【0010】
ここで、比較対象として、第1電圧範囲の最大値と第2電圧範囲の最小値とが同一に設定されている場合(すなわち、特定の電圧値を境として、パワーコンディショナのAC/DC変換作動動作とDC/AC変換作動状態とを切り替える場合)には、直流母線の電圧がわずかに変動するだけで、容易にAC/DC変換動作に切り替わってしまい、DC/AC変換により直流母線から交流母線に供給した電力がAC/DC変換により再度直流母線に戻される可能性がある。このような電力の循環が起きると、パワーコンディショナを介する分電力のロスが生じるため、システムの電力効率を低下させてしまう。
この点
、第1電圧範囲を第2電圧範囲よりも低く設定してある(すなわち、AC/DC変換作動状態とする第1電圧範囲の最大値と、DC/AC変換作動状態とする第2電圧範囲の最小値とが異なる)ため、第2電圧範囲においてAC/DC動作している際に、わずかな電圧の変動が生じても、容易にAC/DC動作に切り替わることを抑制できる。すなわち、パワーコンディショナがDC/AC変換作動状態で作動しているときに、パワーコンディショナがAC/DC変換作動状態でも作動してしまい、パワーコンディショナへの交流母線からの入力が再度交流母線に再出力されることを抑制できる。よって、蓄電池から交流母線への電力供給が可能であるとともに、システムの電力効率が低下することを一層抑制した電力供給システムを提供することができる。
【0012】
また、直流母線における電力負荷の変動により、直流母線の電圧が急激に変動し、パワーコンディショナだけでは直流母線の電圧を一定範囲内に維持しづらくなった場合でも、蓄電池を充放電動作させることで、直流母線の電圧を一定範囲に維持できる。
具体的に説明すると、例えば、直流母線に接続された電力負荷の負荷量が急激に増加し、直流母線の電圧が第3電圧範囲まで下降した場合には、パワーコンディショナをAC/
DC変換作動状態で動作させることに加え、蓄電池を放電作動状態で動作させることで、直流母線の電圧を第1電圧範囲より高くできる。また、直流母線に接続された電力負荷の負荷量が急激に低下し、直流母線の電圧が第4電圧範囲まで上昇した場合には、パワーコンディショナをDC/AC変換作動状態で動作させることに加え、蓄電池を充電作動状態で動作させることで、直流母線の電圧を第2電圧範囲より低くできる。
すなわち、蓄電池から交流母線への電力供給が可能であるとともに、直流母線における電力負荷の変動に対してロバストな電力供給システムを提供することができる。
【0013】
また、前記制御手段が、前記蓄電池を前記電圧源として作動させるとき、前記直流母線の電圧が前記第1電圧範囲と前記第2電圧範囲との間の充放電基準電圧以下であれば前記蓄電池を前記放電作動状態で作動させ、及び、前記直流母線の電圧が前記充放電基準電圧より高ければ前記蓄電池を前記充電作動状態で作動させる構成とすると好適である。
【0014】
上記特徴構成によれば、蓄電池を電圧源として作動させるときでも、蓄電池の充放電作動状態を切り替えることで、直流母線の電圧を、充放電基準電圧に維持できる。このため、例えば、商用電力系統の電圧が正常でなくパワーコンディショナの動作を停止した場合や、蓄電池から交流電力側へ電力供給する場合に好適に用いることができる。すなわち、蓄電池から交流母線への電力供給が可能であるとともに、直流母線の電圧を充放電基準電圧に維持できる電力供給システムを提供することができる。
【0015】
また、前記制御手段が、前記電圧源を前記パワーコンディショナから前記蓄電池に切り替えるとき、前記パワーコンディショナの前記AC/DC変換作動状態と前記DC/AC変換作動状態とを共に停止させる前に、前記蓄電池を前記電圧源として作動させ、前記蓄電池を、前記直流母線の電圧が前記第1電圧範囲と前記第2電圧範囲との間の充放電基準電圧以下であれば前記蓄電池を前記放電作動状態で作動させ、及び、前記直流母線の電圧が前記充放電基準電圧より高ければ前記蓄電池を前記充電作動状態で作動させる構成とすると好適である。
【0016】
上記特徴構成によれば、充放電基準電圧を第1電圧範囲と第2電圧範囲との間に設定するので、パワーコンディショナから蓄電池への切り替えを無瞬断で行うことができる。
【0017】
また、前記直流母線に対して接続される電力供給ユニットを備え、前記制御手段が、前記充放電基準電圧を、充電時の充電基準電圧と放電時の放電基準電圧との2つから構成し、前記充電基準電圧を前記放電基準電圧より高く設定し、前記パワーコンディショナ及び前記電力供給ユニットが、前記直流母線の電圧が前記充電基準電圧以上である場合に、前記蓄電池の蓄電量が余剰状態にあると判定し、前記直流母線の電圧が前記放電基準電圧以下である場合に、前記蓄電池の蓄電量が不足状態にあると判定するように構成されていると好適である。
【0018】
上記特徴構成によれば、充電基準電圧と放電基準電圧との2つを設けるため、パワーコンディショナ及び電力供給ユニットは、直流母線の電圧を計測するだけで、蓄電池の蓄電量が余剰状態にあるか不足状態にあるかを判定できる。このため、パワーコンディショナ及び電力供給ユニットと、蓄電池とを、別途通信線を用意することなく連携させることが可能となる。具体的には、例えば、直流母線の電圧が放電基準電圧以下である場合には、電力供給ユニットは直流母線に供給する電力を増加させるように動作させ、放電によって蓄電池の蓄電量が不足状態となることをあらかじめ抑制することが可能となる。
また、直流母線の電圧の変動は瞬時に計測可能なため、パワーコンディショナ及び電力供給ユニットと、蓄電池とを、別途通信線を用いて通信させる場合に比べ、高速に蓄電池の状態を判定でき、蓄電池の状態変化に対して高い応答性を示すことができる。
すなわち、蓄電池から交流母線への電力供給が可能であるとともに、直流母線に接続された各機器の連携を容易に行える電力供給システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照して、本発明に係る電力供給システムの実施形態を説明する。
【0021】
(1)電力供給システムの構成
(1−1)概要
図1に示すように、本発明に係る電力供給システムS1は、直流母線DCに対して接続される蓄電池1と、商用電力系統2に接続される交流母線ACと、交流母線ACと直流母線DCとを接続するパワーコンディショナ3と、蓄電池1及びパワーコンディショナ3の作動を制御する制御手段4とを備えている。交流母線AC及び直流母線DCには、それぞれ、交流電力を消費して動作する交流電力消費装置21と、直流電力を消費して動作する直流電力消費装置22とが接続されている。また、本実施形態においては、電力供給システムS1は、電力変換器6を介して直流母線DCに対して接続される電力供給ユニット5を備えている。
【0022】
(1−2)蓄電池
蓄電池1は、直流母線DCから電力が充電される充電作動状態と、直流母線DCへ電力を放電する放電作動状態とを切り替えて作動可能に構成されている。蓄電池1は、化学電池とキャパシタとフライホイールとのうちの少なくとも1つを備えて構成されている。本実施形態においては、蓄電池1として、電気二重層キャパシタ1bがDC/DCコンバータ1aを介して直流母線DCに接続された構成を示す。
【0023】
(1−3)パワーコンディショナ
パワーコンディショナ3は、交流母線ACでの交流電力を所望の直流電力に変換して直流母線DCに出力するAC/DC変換作動状態と、直流母線DCでの直流電力を所望の交流電力に変換して交流母線ACに出力するDC/AC変換作動状態とを切り替えて作動可能に構成されている。パワーコンディショナ3は、少なくともAC/DC変換を行うための整流器と、DC/AC変換を行うためのインバータとを備えて構成されるとともに、整流器とインバータとのいずれかを介して交流母線ACと直流母線DCとが電気的に接続されるように構成されている。
【0024】
(1−4)制御手段
制御手段4は、蓄電池1及びパワーコンディショナ3と電気的に接続されており、蓄電池1及びパワーコンディショナ3の一方を直流母線DCにおける電圧源として作動させるように構成されている。制御手段4は、マイクロプロセッサ及び半導体メモリを含むマイクロコンピュータを主要な機器として構築される。ここで、「電圧源として作動」とは、直流母線DCにおいて供給される電圧の値を決定する装置として振舞うことを意味する。
【0025】
本実施形態では、電力供給システムS1は、直流母線DCの電圧V
DCを計測可能な電圧計11を備えている。電圧計11は、制御手段4と電気的に接続されており、計測された電圧値を制御手段4に伝達可能に構成されている。そして、制御手段4は、商用電力系統2の状態、蓄電池1の蓄電状況、及び電圧計11が計測した電圧値に基づいて、蓄電池1の作動状態(すなわち、放電作動状態または充電作動状態)とパワーコンディショナ3の作動状態(すなわち、AC/DC変換作動状態またはDC/AC変換作動状態)とを切り替えるように構成されている。
【0026】
(1−5)電力供給ユニット
電力供給ユニット5は、直流発電装置または交流発電装置を用いて構成される。直流発電装置としては、例えば、燃料電池を用いることができる。また、交流発電装置としては、例えば、ガスエンジンの駆動力を用いたガスエンジン発電装置を用いることができる。電力供給ユニット5は、電力変換器6を介して直流母線DCに接続される。電力供給ユニット5が直流発電装置の場合には、電力変換器6として、例えばDC/DCコンバータを用い、電力供給ユニット5が交流発電装置の場合には、電力変換器6として、例えば整流器を用いることが可能である。
【0027】
本実施形態では、電力供給システムS1には、電力供給ユニット5に接続される直流母線DCの電圧V
DCを測定可能な電圧計7が備えられている。電圧計7は、電力供給ユニット5と電気的に接続されており、計測された電圧値を電力供給ユニット5に伝達可能に構成されている。また、電力供給ユニット5は、電圧計7で計測された電圧値に基づいて、その直流母線DCへの電力供給量を調整可能に構成されている。このように、電力供給ユニット5、電力変換器6、電圧計7を一体とした構成により、直流母線DCの電圧V
DCを計測可能としつつ、蓄電池1とは物理的に異なる場所に設置できる。
【0028】
(2)電力供給システムの制御モード
次に、制御手段4による蓄電池1及びパワーコンディショナ3の動作制御について説明する。本発明に係る電力供給システムS1は、蓄電池1や商用電力系統2などの各種機器の状況に応じて、モード1〜モード4の4通りの制御を行う。
図2に、モード1〜4における各機器の動作を示す。
図2に示すように、モード1及び2においては、パワーコンディショナ3が電圧源となり、モード3及び4においては、蓄電池1が電圧源となる。以下では、これらの各モードについて詳しく説明する。
【0029】
(2−1)モード1
モード1は、電力供給システムS1の起動直後において、商用電力系統2から交流母線ACへの電力供給が正常に行われている場合の制御モードである。モード1においては、蓄電池1及び電力供給ユニット5は起動中であり、これらの機器は、起動直後は電力供給源となることができない。加えて、蓄電池1は、充電のために直流母線DCにおける電力負荷として振舞う。このため、商用電力系統2から電力の供給を受けることが可能なパワーコンディショナ3が直流母線DCにおける電力供給源となるとともに、直流母線DCにおける電圧源となる。
【0030】
このモードでは、制御手段4が、パワーコンディショナ3を電圧源として作動させ、パワーコンディショナ3の作動を、電圧計11で計測される直流母線DCの電圧V
DCに応じてAC/DC変換作動状態とDC/AC変換作動状態との間で切り替える。
図3に、パワーコンディショナ3の作動状態を切り替える条件(範囲)を示す。
図3において縦軸は直流母線DCの電圧V
DCを、横軸は、直流母線DCにおける電力の過不足を示している。より具体的には、モード1においては、
図3の横軸は、電力供給ユニット5の出力(図中では「PSU出力」。
図4においても同じ)から、直流電力消費装置22の負荷(図中では「DC負荷」。
図4においても同じ)と蓄電池1の充電量とを引いた値を示している。ここでは、「充電量」とは、単位時間当たりに蓄電池1に充電される電力量(蓄電池1により消費される電力量)を示す。
【0031】
本実施形態においては、パワーコンディショナ3をAC/DC変換作動状態で作動させるときの直流母線DCの電圧V
DCである第1電圧範囲R1は、パワーコンディショナをDC/AC変換作動状態で作動させるときの直流母線の電圧である第2電圧範囲R2よりも低く設定してある。具体的には、
図3に示すように、第1電圧範囲R1は、330V以下に設定されており、第2電圧範囲R2は、350V以上に設定されている。
【0032】
このような構成により、直流母線DCにおける電力負荷が増減し、直流母線DCの電圧V
DCが急激に変動した場合でも、パワーコンディショナ3の働きにより、第1電圧範囲R1と第2電圧範囲R2との間の電圧に維持される。具体的に説明すると、直流母線DCの電圧V
DCが高い場合(すなわち、直流母線DCにおいて電力が余剰状態にある場合)には、パワーコンディショナ3がDC/AC変換作動状態で作動することで、直流母線DCの電力を交流母線ACに供給し、直流母線DCの電圧V
DCを降下させる。また、直流母線DCにおいて電力が不足気味で、かつ直流母線DCの電圧V
DCが低くなった場合は、パワーコンディショナ3がAC/DC変換作動状態で作動することで、交流母線ACから直流母線DCに電力を供給し、直流母線DCの電圧V
DCを上昇させる。よって、直流母線DCの電圧V
DCは、第1電圧範囲R1の最大値である330Vから第2電圧範囲R2の最小値である350Vとの間に維持される。
【0033】
(2−2)モード2
モード2は、蓄電池1の充電が完了し電池容量が適正値に保たれているとともに、商用電力系統2から交流母線ACへの電力供給が正常に行われている場合の制御モードである。モード2は、例えば、モード1において蓄電池1が十分に充電された後に用いられる。モード2においては、蓄電池1は商用電力系統2の停電時に備え、放電もしくは充電作動状態で作動できるようスタンバイ状態にある。電力供給ユニット5は、起動中もしくは起動後であり、起動後であれば電流源として振舞う。そして、パワーコンディショナ3が、モード1と同様に電圧源となる。
【0034】
本実施形態では、このモードにおいて、制御手段4が、パワーコンディショナ3を電圧源として作動させるとき、蓄電池1の作動を、電圧計11により計測される直流母線DCの電圧V
DCに応じて放電作動状態と充電作動状態との間で切り替える。パワーコンディショナ3の切り替える条件については
図3に示している。モード2においては、
図3の横軸は、電力供給ユニット5の出力から、直流電力消費装置22の負荷を引いた値を示している。
【0035】
本実施形態においては、蓄電池1を放電作動状態で作動させるときの直流母線DCの電圧V
DCである第3電圧範囲R3は、パワーコンディショナ3をAC/DC変換作動状態で作動させるときの第1電圧範囲R1の最高電圧よりも低く設定してある。また、蓄電池1を充電作動状態で作動させるときの直流母線DCの電圧V
DCである第4電圧範囲R4は、パワーコンディショナ3をDC/AC変換作動状態で作動させるときの第2電圧範囲R2の最低電圧よりも高く設定してある。具体的には、
図3に示すように、第3電圧範囲R3は、R1の最高電圧である330Vよりも低い320V以下に設定され、第4電圧範囲R4は、R2の最低電圧である350Vよりも高い360V以上に設定されている。なお、このモードにおいても、パワーコンディショナ3は、モード1と同様に制御される。
【0036】
このような構成により、直流母線DCの電圧V
DCが急激に変動し、直流母線DCの電圧V
DCを、パワーコンディショナ3の作動だけでは維持しづらくなった場合には、蓄電池1が充放電を行うことで、直流母線DCの電圧V
DCを維持しやすくする。具体的に説明すると、例えば、直流母線DCの電圧V
DCが瞬間的に360V以上まで上昇した場合には、パワーコンディショナ3がDC/AC変換作動状態で作動するとともに、蓄電池1が充電作動状態で作動することで、直流母線DCにおける余剰電力を消費し、第4電圧範囲R4未満にまで直流母線DCの電圧V
DCを降下させ、さらにパワーコンディショナ3がDC/AC変換作動状態で作動することで、直流母線DCの電圧V
DCを第2電圧範囲R2未満に低下させる。
【0037】
(2−3)モード3
モード3は、商用電力系統2からの電力供給が停止した場合(すなわち、停電した場合)の制御モードである。モード3は、例えば、このモード以外のいずれかのモードにおいて停電が起きた場合に強制的に用いられる。このモードでは、パワーコンディショナ3は停止し、蓄電池1が電圧源となる。電力供給ユニット5は、起動していれば電流源となる。
【0038】
このモードでは、制御手段4が、停電を検知した際に、蓄電池1を電圧源として作動させる。ここで、制御手段4は、交流母線ACにおける電圧値を計測するための電圧計12を備え、当該電圧計の値(すなわち、商用電力系統2の電圧値)が異常であると判断した場合に、停電したと検知するように構成されている。異常であるとの判断基準としては、例えば、「系統連系している状態において、正常連系時の商用電力系統2の電圧値に対して、現在の電圧値が30%未満」といった条件を設けることができる。
【0039】
また、制御手段4は、電圧計11で計測される直流母線DCの電圧V
DCが第1電圧範囲R1と第2電圧範囲R2との間の充放電基準電圧Vth以下であれば蓄電池1を放電作動状態で作動させる。さらに、直流母線DCの電圧V
DCが充放電基準電圧Vthより高ければ蓄電池1を充電作動状態で作動させる。
図4に、蓄電池1の作動状態の切り替え条件(範囲)を示す。
図4の横軸は、
図3と同様、直流母線DCにおける電力の過不足を示しており、このモードでは、電力供給ユニット5の出力から、直流電力消費装置22の負荷を引いた値を示している。
【0040】
本実施形態においては、充放電基準電圧Vthは、蓄電池1を充電作動状態で作動させるときの充電基準電圧Vcと、放電作動状態で作動させるときの放電基準電圧Vdとの2つの値で構成されている。さらに、充電基準電圧Vcは、放電基準電圧Vdよりも高く設定されている。具体的には、
図4に太線で示すように充電基準電圧Vcは345Vに、放電基準電圧Vdは335Vに設定されている。
【0041】
なお、このモードにおいては、パワーコンディショナ3及び電力供給ユニット5は、電圧計11もしくは電圧計7で計測される直流母線DCの電圧V
DCが充電基準電圧Vc以上である場合に、蓄電池1の蓄電量が余剰状態にあると判定し、直流母線DCの電圧V
DCが放電基準電圧Vd以下である場合に、蓄電池1の蓄電量が不足状態にあると判定する。ここでは、「蓄電量」とは、蓄電池1に既に充電されている(蓄電されている)電力量を示す。
【0042】
このような構成により、パワーコンディショナ3及び電力供給ユニット5は、蓄電池1と直接通信することなく、直流母線DCの電圧V
DCを計測するだけで蓄電池1の蓄電量を検知できる。このため、例えば、直流母線DCの電圧V
DCが、放電基準電圧Vd以下の場合には、電力供給ユニット5は直流母線DCに電力を供給するように作動することで、蓄電池1の蓄電量が過少となることを予防する、といったように、蓄電池1の蓄電量に応じ、蓄電池1と協調的に動作することが可能となる。
【0043】
(2−4)モード4
モード4は、商用電力系統2から交流母線ACへの電力供給が正常に行われている状態において、蓄電池1から交流母線AC側へと積極的に電力を供給したい場合の制御モードである。モード4は、例えば、モード2において蓄電池1の蓄電量に余裕があり、蓄電池1から交流母線AC上の交流電力消費装置21に電力を供給したい場合に用いられる。このモードでは、蓄電池1が電圧源となり、電力供給ユニット5は、起動していれば電流源となる。このとき、パワーコンディショナ3はDC/AC変換作動状態で作動し、交流母線AC上の交流電力消費装置21から見て電流源となる。
【0044】
パワーコンディショナ3が電流源となる以外の点に関しては、上述したモード3での動作と同様である。
図4に、蓄電池1の作動状態の切り替え条件(範囲)を示す。なお、このモードでは、パワーコンディショナ3がDC/AC変換作動状態で作動するため、
図4の横軸は、電力供給ユニット5の出力から、直流電力消費装置22の負荷とパワーコンディショナ3の負荷(図中「PCの負荷」)を引いた値を示している。
【0045】
(3)電力システムの制御モードの遷移
次に、電力供給システムS1において、電圧源を蓄電池1とパワーコンディショナ3との間で切り替える際の制御モードの遷移について説明する。
(3−1)モード2からモード4
モード2からモード4への遷移(すなわち、電圧源をパワーコンディショナ3から蓄電池1に変更する場合)について説明する。制御手段4は、電圧源をパワーコンディショナ3から蓄電池1に切り替えるにあたり、まずモード2の制御状態において、パワーコンディショナ3のAC/DC変換作動状態とDC/AC変換作動状態とを共に停止させる。パワーコンディショナ3の停止にあたっては、まず蓄電池1を電圧源とし、モード3(あるいはモード4)と同様の制御を行う。すなわち、直流母線DCの電圧V
DCが充放電基準電圧Vth以下であれば蓄電池1を放電作動状態で作動させるとともに、直流母線DCの電圧V
DCが充放電基準電圧Vthより高ければ蓄電池1を充電作動状態で作動させる。このように蓄電池1を電圧源とした状態で、パワーコンディショナ3を停止させるため、直流母線DC上の直流電力消費装置22を停止させることなく、モード2からモード4に遷移できる。
【0046】
(3−2)モード4からモード2
モード4からモード2への遷移(すなわち、電圧源を蓄電池1からパワーコンディショナ3に変更する場合)について説明する。制御手段4は、モード4(モード3)の制御状態のまま、まずパワーコンディショナ3のみモード2と同様に制御する。すなわち、直流母線DCの電圧V
DCが第1電圧範囲R1にあれば、パワーコンディショナ3はDC/AC変換作動状態で作動し、第2電圧範囲R2にあればAC/DC変換作動状態で作動するように制御する。その後、蓄電池1をモード2と同様に制御するとともに、パワーコンディショナ3を電圧源とする。このような構成により、直流母線DC上の直流電力消費装置22を停止させることなく、モード4からモード2に遷移できる。
【0047】
(4)まとめ
最後に、
図5に電力供給システムS1の動作の概略を示すフロー図を示す。本実施形態に係る電力供給システムS1は、商用電力系統2が正常に電力を供給している間は、
図5(a)に示す通常運転処理を行う。まず、電力供給システムS1は、起動直後、モード1の制御で動作する。次に、蓄電池1の充電状態(State Of Charge;SOC)が適正値にまで達すると、電力供給システムS1はモード2の制御に遷移する。さらに、蓄電池1のSOCが適正範囲にあり(図中では「SOC適正」)、かつ、交流母線AC上の交流電力消費装置21が電力を必要としている場合(図中では「AC側電力要」)には、モード4に遷移し、蓄電池1から交流電力消費装置21へと電力供給を行う。ここで、蓄電池1のSOCが適正範囲から外れるか、交流電力消費装置21が電力を必要としなくなった時点でモード2へと遷移する。
【0048】
上述のような通常運転を行う一方、
図5(b)に示すように、電力供給システムS1は、商用電力系統2が停電しているか否かを常にチェックする停電チェック処理を行う。停電していると判断した場合には、通常運転処理によるモードの制御を中断し、強制的にモード3に遷移する。その後、商用電力系統2が停電から復旧すると、通常運転処理を再開する。
【0049】
以上のように、電力供給システムS1を構成することで、系統正常時においても、蓄電池1から交流母線ACへの電力供給を可能とし、例えば、蓄電池の蓄電量に余裕がある場合には、蓄電池から交流電力線側に電力を供給することでシステムの電力効率を改善することができる。
【0050】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態においては、第1電圧範囲R1の最高電圧と第2電圧範囲R2の最低電圧とが異なる場合の例を説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限らない。すなわち、第1電圧範囲R1の最高電圧と第2電圧範囲R2の最低電圧とが同一となるように設定することもできる。ただし、この場合においては、電力供給システムの電力効率が本実施形態に比べ低下するおそれがある。
【0051】
(2)上記実施形態においては、第3電圧範囲R3が第1電圧範囲R1の最高電圧より低く、第4電圧範囲R4が第2電圧範囲R2の最低電圧より高く設定される場合の例を説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限らない。すなわち、第3電圧範囲R3が第1電圧範囲R1と同一、または第4電圧範囲R4が第2電圧範囲R2と同一に設定されても構わない。
【0052】
(3)上記実施形態においては、充放電基準電圧Vthが、放電基準電圧Vdと充電基準電圧Vcとの2つの値からなる場合の例を説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限らない。よって、例えば、充放電基準電圧Vthを蓄電池1の放電時及び蓄電時において同一の値となるように設定しても構わない。