【実施例】
【0021】
本発明の好ましい一実施例のクロノグラフ機構1を備えた時計2、即ちクロノグラフ機構付時計2は、例えば、概ね
図2に示したような外観を有する。
すなわち、クロノグラフ機構付時計2は、
図2に示したように、中心軸線Cのまわりで時計回りC1に回る時針11及び分針12と、クロノグラフ指針として、中心軸線Aの周りで回転される時クロノグラフ針14(例えば12時間積算用、但し異なっていてもよい)、中心軸線Bの周りで回転される分クロノグラフ針15(例えば30分積算用、但し異なっていてもよい)及び中心軸線Cの周りで回転される秒クロノグラフ針16(例えば60秒積算用、但し異なっていてもよい)とを有する。文字板7の9時側には調速脱進機構30を構成し中心軸線Dのまわりで往復回動するてんぷ31が透明窓7aから見えるようになっている。時計2は、りゅうず8やスタート/ストップ(発停)スイッチ9aや、リセット(帰零指示)スイッチ9bを含む。
【0022】
クロノグラフ機構付時計2は、輪列としては、概ね、
図1、
図3及び
図4に示したような構造を有する。
時計2は、裏蓋側から見た平面説明図である
図1に示したように、概ね4時半の位置に香箱20を備え、9時の位置に調速脱進機構30のてんぷ31を備える。
図3に示した通り、中心軸線Eのまわりで回転される香箱20は、角穴ねじ21及び角穴歯車22aを含む角穴車22を香箱真23と一体的に有し、香箱歯車24及び香箱かな26とを香箱車25と一体的に有している。香箱車25は、香箱歯車24から、増速輪列4を介して調速脱進機構30につながる。
図3及び
図4に示したように、香箱かな26は減速輪列5を介して時車71につながっている。この例では、裏蓋側からみて、香箱車25が反時計回りに回転される。当然ながら、中間車の数が一つ分だけ異なる場合には香箱車25が時計回りに回ってもよい。
【0023】
減速輪列5は、香箱車25につながった中間車73と、時クロノグラフ歯車機構80の時クロノグラフ歯車本体部81と、日の裏車74とを有する。
中間車73は、香箱かな26と時クロノグラフ歯車本体部81とをつないでいる。中間車73は、
図3及び
図4の断面説明図からわかる通り、中間車真部73aと、該真73aと一体的な中間車かな部73b及び中間車歯車部74cを備え、中間車歯車部73cで香箱かな26に噛合し、中間車かな部73bで時クロノグラフ歯車機構80の時クロノグラフ歯車本体部81に係合する。中間車73aは、歯車とかなを有する代わりに、例えば、香箱かな26と時クロノグラフ歯車本体部81とをつなぐ単一の歯車からなっていてもよい。
【0024】
日の裏車74は、真部74aと第一かな部74bと第二かな部74cと歯車部74dとを備え、第一かな部74bで時クロノグラフ歯車本体部81の歯車と噛合し、第二かな部74cで時車71の歯車部71aと噛合している。なお、日の裏車74の歯車部74dは、分車72のかな部ないし小径歯車部72aと噛合している。時車71及び分車72は中心軸線Cのまわりで回転可能で、夫々、時針11が取付けられる大径筒部71b及び分針12が取付けられる小径筒部72bを備える。時車71及び分車72は、例えば、中心パイプ107によって軸支される。
【0025】
時クロノグラフ歯車機構80は、
図3の断面説明図に加えて
図4の拡大断面説明図からわかるように、時クロノグラフ歯車本体部81と、時クロノグラフ歯車制御機構部83とを有する。時クロノグラフ歯車本体部81は、中空ハブ部ないし中空真部81aと、該真部81aに一体的な時クロノグラフかな部81b及び時クロノグラフ歯車部81cとを備え、時クロノグラフかな部81bで中間かな73bに噛合している。時クロノグラフ歯車81cはクラッチ受板部としても働く。時クロノグラフ歯車部81cは、大きなトルクが働くと真部81aに対して中心軸線Aのまわりで相対回転可能なようにすべり係合している。
【0026】
時クロノグラフ歯車制御機構部83は、時クロノグラフ車軸84と、時クロノグラフクラッチリング85と、時クロノグラフクラッチばね86と、時クロノグラフクラッチばね受座87と、クロノグラフハートカム88とを有する。時クロノグラフ車軸84は、小径軸部84aと、大径フランジ部84bと、中径軸部84cと、小径取付軸部84dと、針嵌着用の小径真部84eとを備え、小径軸部84aで時クロノグラフ歯車本体部81の中空真部81aに摺動回転自在に嵌合されている。時クロノグラフ車軸84の大径フランジ部84b及び中径軸部84cには、時クロノグラフクラッチリング85が、該車軸84に対して、軸線方向に相対的に摺動変位可能に係合されている。時クロノグラフクラッチばね86は、一端でクラッチリングのばね受部85aに圧接され、他端でグラフクラッチばね受座87に係止されている。受座87は、車軸84に対して固定されている。なお、車軸84には、例えば、小径軸部84aに先端側において、時計2の厚さ方向T1,T2のうち文字板側方向T1への抜け止め108aが施されている。また、車軸84には、例えば、小径軸部84aに末端側において裏蓋方向T2への抜け止め108bが施されている。ここで、時クロノグラフ歯車機構80の時クロノグラフ歯車クラッチ機構89は、垂直クラッチの形態で、時クロノグラフクラッチリング85と、時クロノグラフクラッチばね86と、時クロノグラフクラッチばね受座87と、時クロノグラフクラッチ受板部81cとからなる。
【0027】
クラッチリング85は、外周面に環状凹部85cを備え、
図5の(a)に示したように、時発停レバー係合部6aが該環状凹部85cに向かって径方向内向きにA3方向に変位されて環状凹部85cに嵌ると、クラッチリング85がクラッチばね86のバネ力に抗して軸線方向文字板側にT1方向に移動されて、時クロノグラフ歯車制御機構部83のクラッチリング85と時クロノグラフ歯車本体部81のクラッチ受板部81cとの係合が解除されて、時クロノグラフ歯車本体部81が時クロノグラフ歯車制御機構部83に対して自由に回転し得るようになる。このとき、時発停レバー係合部6aとクラッチリング85の環状凹部85cとの係合により、真部84e及び時クロノグラフ針14の動きは禁止される。
【0028】
一方、
図5の(b)に示したように、時発停レバー係合部6aがA4方向に移動されて時発停レバー係合部6aとクラッチリング85の環状凹部85cとの係合が解除されると、クラッチばね86のバネ力の作用下でクラッチリング85が軸線方向裏蓋側にT2方向に移動されて、時クロノグラフ歯車制御機構部83のクラッチリング85と時クロノグラフ歯車本体部81のクラッチ受板部81cとが係合される。従って、時クロノグラフ歯車本体部81の回転に伴って時クロノグラフ針14が中心軸線Aのまわりで回転されて、クロノグラフ計測が行われ得る。
【0029】
増速輪列4は、
図1及び
図3からわかるように、従来の通常運針用の輪列のうち裏蓋側に位置していわゆる表輪列と呼ばれる輪列と概ね同様であって、香箱車25につながった第一増速中間車41と、分クロノグラフ歯車機構50の分クロノグラフ歯車本体部51と、第二増速中間車42と、秒クロノグラフ歯車機構60の秒クロノグラフ歯車本体部61とを有する。例えば、香箱車25が7時間で一回転し、第一増速中間車41が120分で一回転し、第二増速中間車42が4分で一回転する。てんぷ31は、例えば、6振動でも8振動でもよい。もちろん、てんぷ31の振動や輪列4を構成する車の回転速度は上記と異なっていてもよい。
【0030】
第一増速中間車41は、
図3の断面説明図からわかる通り、第一増速中間車真41aと、該真41aに一体的な第一増速中間かな41b及び第一増速中間歯車41cとを備え、第一増速中間かな41bで香箱歯車24に噛合している。
【0031】
分クロノグラフ歯車機構50は、
図3の断面説明図からわかる通り、時クロノグラフ歯車機構80と概ね同様に構成されている。すなわち、分クロノグラフ歯車機構50は、分クロノグラフ歯車本体部51と、分クロノグラフ歯車制御機構部53とを有する。分クロノグラフ歯車本体部51は、時クロノグラフ歯車本体部81と概ね同様に構成されている。すなわち、分クロノグラフ歯車本体部51は、中空ハブ部ないし中空真部51aと、該真部51aに一体的な分クロノグラフかな部51b及び分クロノグラフ歯車51cとを備え、分クロノグラフかな部51bで第一増速中間歯41cに噛合している。分クロノグラフ歯車51cはクラッチ受板部としても働く。
【0032】
分クロノグラフ歯車制御機構部53は、時クロノグラフ歯車制御機構部83と同様に構成されている。即ち、分クロノグラフ歯車制御機構部53は、分クロノグラフ車軸54と、分クロノグラフクラッチリング55と、分クロノグラフクラッチばね56と、分クロノグラフクラッチばね受座57と、分クロノグラフハートカム58とを有する。分クロノグラフ車軸54は、小径軸部54aと、大径フランジ部54bと、中径軸部54cと、小径取付軸部54dと、針嵌着用の小径真部54eとを備え、小径軸部54aで分クロノグラフ歯車本体部51の中空真部51aに摺動回転自在に嵌合されている。分クロノグラフ車軸54の大径フランジ部54b及び中径軸部54cには、分クロノグラフクラッチリング55が、該車軸54に対して、軸線方向に相対的に摺動変位可能に係合されている。分クロノグラフクラッチばね56は、一端でクラッチリング55のばね受部55aに圧接され、他端でクロノグラフクラッチばね受座57に係止されている。受座57は、車軸54に対して固定されている。車軸54には、例えば、小径軸部54aに先端側において、時計2の厚さ方向T1,T2のうち文字板側方向T1への抜け止め105aが施されている。また、車軸54には、例えば、小径軸部54aに末端側において裏蓋方向T2への抜け止め105bが施されている。ここで、分クロノグラフ歯車機構50の分クロノグラフ歯車クラッチ機構59は、垂直クラッチの形態で、分クロノグラフクラッチリング55と、分クロノグラフクラッチばね56と、分クロノグラフクラッチ受板部51cとからなる。
【0033】
クラッチリング55は、外周面に環状凹部55cを備え、分発停レバー係合部6bが該環状凹部55cに向かって径方向内向きにB3方向に変位されて環状凹部55cに嵌ると、クラッチリング55がクラッチばね56のバネ力に抗して軸線方向文字板側にT1方向に移動されて、分クロノグラフ歯車制御機構部53のクラッチリング55と分クロノグラフ歯車本体部51のクラッチ受板部51cとの係合が解除されて、分クロノグラフ歯車本体部51が分クロノグラフ歯車制御機構部53に対して自由に回転し得るようになる。このとき、分発停レバー係合部6bとクラッチリング55の環状凹部55cとの係合により、真部54e及び分クロノグラフ針14の動きは禁止される。
【0034】
一方、分発停レバー係合部6bがB4方向に変位されて分発停レバー係合部6bとクラッチリング55の環状凹部55cとの係合が解除されると、クラッチばね56のバネ力の作用下でクラッチリング55が軸線方向裏蓋側にT2方向に移動されて、分クロノグラフ歯車制御機構部53のクラッチリング55と分クロノグラフ歯車本体部51のクラッチ受板部51cとが係合される。従って、分クロノグラフ歯車本体部51の回転に伴って分クロノグラフ針14が中心軸線Bのまわりで回転されて、クロノグラフ計測が行われ得る。
【0035】
第二増速中間車42は、
図3の断面説明図からわかる通り、第二増速中間車真42aと、該真42aに一体的な第二増速中間かな42b及び第二増速中間歯車42cとを備え、第二増速中間かな42bで分クロノグラフ歯車本体部51の分クロノグラフ歯車51cに噛合している。
【0036】
秒クロノグラフ歯車機構60は、
図3の断面説明図からわかる通り、時クロノグラフ歯車機構80や分クロノグラフ歯車機構50と概ね同様に構成されている。すなわち、秒クロノグラフ歯車機構60は、秒クロノグラフ歯車本体部61と、秒クロノグラフ歯車制御機構部63とを有する。秒クロノグラフ歯車本体部61は、時クロノグラフ歯車本体部81や分クロノグラフ歯車本体部51と概ね同様に構成されている。すなわち、秒クロノグラフ歯車本体部61は、中空ハブ部ないし中空真部61aと、該真部61aに一体的な秒クロノグラフかな部61b及び秒クロノグラフ歯車61cと、クラッチ板としてのクラッチ受板部61dとを備え、秒クロノグラフかな部61bで第二増速中間歯42cに噛合している。
【0037】
秒クロノグラフ歯車制御機構部63は、時クロノグラフ歯車制御機構部83や分クロノグラフ歯車制御機構部53と同様に構成されている。即ち、秒クロノグラフ歯車制御機構部63は、秒クロノグラフ車軸64と、秒クロノグラフクラッチリング65と、秒クロノグラフクラッチばね66と、秒クロノグラフクラッチばね受座67と、秒クロノグラフハートカム68とを有する。秒クロノグラフ車軸64は、小径軸部64aと、大径フランジ部64bと、中径軸部64cと、小径取付軸部64dと、針嵌着用の小径真部64eとを備え、小径軸部64aで秒クロノグラフ歯車本体部61の中空真部61aに摺動回転自在に嵌合されている。秒クロノグラフ車軸64の大径フランジ部64b及び中径軸部64cには、秒クロノグラフクラッチリング65が、該車軸64に対して、軸線方向に相対的に摺動変位可能に係合されている。秒クロノグラフクラッチばね66は、一端でクラッチリング65のばね受部65aに圧接され、他端で秒クロノグラフクラッチばね受座67に係止されている。受座67は、車軸64に対して固定されている。車軸64には、例えば、小径軸部64aに先端側において、時計2の厚さ方向T1,T2のうち文字板側方向T1への中心パイプ107の受面107aによって抜け止めが施される。また、車軸64には、例えば、小径軸部64aに末端側において裏蓋方向T2への抜け止め106が施されている。ここで、秒クロノグラフ歯車機構60の秒クロノグラフ歯車クラッチ機構69は、垂直クラッチの形態で、秒クロノグラフクラッチリング65と、秒クロノグラフクラッチばね66と、秒クロノグラフクラッチばね受座67と、秒クロノグラフクラッチ受板部61dとからなる。
【0038】
クラッチリング65は、外周面に環状凹部65cを備え、秒発停レバー係合部6cが該環状凹部65cに向かって径方向内向きにC3方向に変位されて環状凹部65cに嵌ると、クラッチリング65がクラッチばね66のバネ力に抗して軸線方向文字板側にT1方向に移動されて、秒クロノグラフ歯車制御機構部63のクラッチリング65と秒クロノグラフ歯車本体部61のクラッチ受板部61dとの係合が解除されて、秒クロノグラフ歯車本体部61が秒クロノグラフ歯車制御機構部63に対して自由に回転し得るようになる。このとき、秒発停レバー係合部6cとクラッチリング65の環状凹部65cとの係合により、真部64e及び秒クロノグラフ針14の動きは禁止される。
【0039】
一方、秒発停レバー係合部6cがC4方向に変位されて秒発停レバー係合部6cとクラッチリング65の環状凹部65cとの係合が解除されると、クラッチばね66のバネ力の作用下でクラッチリング65が軸線方向裏蓋側にT2方向に移動されて、秒クロノグラフ歯車制御機構部63のクラッチリング65と秒クロノグラフ歯車本体部61のクラッチ受板部61dとが係合される。従って、秒クロノグラフ歯車本体部61の回転に伴って秒クロノグラフ針14が中心軸線Cのまわりで回転されて、クロノグラフ計測が行われ得る。
【0040】
時計2の調速脱進機構30は、従来の調速脱進器と同様に構成され、てんぷ31と、がんぎ車32と、アンクル33とを有する。この調速脱進機構30では、がんぎ車32が、がんぎかな32aで秒クロノグラフ歯車本体部61の秒クロノグラフ歯車61cに噛合している。
従って、時計2では、分クロノグラフ歯車51cや秒クロノグラフ歯車61cを含む増速輪列4を介して調速脱進機構30により、香箱車25の回転速度が常時制御され、時計2の調速が行われる。
【0041】
次に、以上の如く構成されたクロノグラフ機構1を備えた時計2の動作について、説明する。
クロノグラフ機構付時計2において、リセットスイッチないしリセットボタン9bが一旦H1方向に押込まれてクロノグラフ機構1がリセット位置ないし状態S0に設定されると、時計2の関連要素は
図3に示した状態を採る。
【0042】
すなわち、リセット状態S0では、一方では、時発停レバー係合部6a,分発停レバー係合部6b及び秒発停レバー係合部6cが対応する時クロノグラフクラッチリング85の凹部85c、分クロノグラフクラッチリング55の凹部55c及び秒クロノグラフクラッチリング65の凹部65cに係合して、夫々のクラッチリング85,55,65と対応するクラッチ受部81c,51c,61cとの係合を解除し、他方では、復針レバー91の時ハンマー部91a、分ハンマー91b及び秒ハンマー91cが対応するハートカム88,58及び68に押付けられて時クロノグラフ軸84、分クロノグラフ軸54及び秒クロノグラフ軸64を初期位置に帰零させた状態で該軸84,54,64の回転を規正ないし禁止する。
【0043】
このリセット状態S0では、時クロノグラフ歯車機構80のうち回転負荷(慣性モーメント)の大半を占める時クロノグラフ歯車制御機構部83の部分が時クロノグラフ歯車本体部81から分離されて該時クロノグラフ歯車本体部81のみが通常運針のための輪列の動作に従って回転され、分クロノグラフ歯車機構50のうち回転負荷(慣性モーメント)の大半を占める分クロノグラフ歯車制御機構部53の部分が分クロノグラフ歯車本体部51から分離されて該分クロノグラフ歯車本体部51のみが通常運針のための輪列の動作に従って回転され、秒クロノグラフ歯車機構60のうち回転負荷(慣性モーメント)の大半を占める秒クロノグラフ歯車制御機構部63の部分が秒クロノグラフ歯車本体部61から分離されて該秒クロノグラフ歯車本体部61のみが通常運針のための輪列の動作に従って回転される。
【0044】
増速輪列4についていえば、香箱車25の香箱歯車部24が、第一増速中間車41、分クロノグラフ歯車本体部51、第二増速中間車42、秒クロノグラフ歯車本体部61を介して調速脱進機構30のがんぎ車32につながっており、(例えば、分クロノグラフ歯車本体部51が二番車に対応し、第二増速中間車42が三番車に対応し、秒クロノグラフ歯車本体部61が四番車に対応すると想定すると、)第一増速中間車41の一つ分だけ車が多いことを除いて、従来の通常の調速される運針輪列と実際上同様に構成されている。
【0045】
すなわち、この時計2の増速輪列4では、分クロノグラフ歯車機構50及び秒クロノグラフ歯車機構60の両方が輪列4の中に組み込まれているにもかかわらず、輪列4の中に組み込まれている分クロノグラフ歯車機構50及び秒クロノグラフ歯車機構60の部分は、回転負荷の小さい分クロノグラフ歯車本体部51及び秒クロノグラフ歯車本体部61に限られるので、通常の運針用増速輪列を調速する通常の調速脱進機構30の実際上同様に調速脱進動作が行われ得るから、調速脱進動作の質の低下を実際上避け得る。
【0046】
一方、クロノグラフ機構付時計2において、リセット状態S0にある際にスタート/ストップ(発停)スイッチないし発停ボタン9aがJ1方向に一旦押込まれてクロノグラフ機構1がスタート(クロノグラフ計測開始)位置ないし状態S1に設定されると、時計2の関連要素は
図6に示した状態を採る。なお、後述のストップ状態S2にある際にスタート/ストップ(発停)スイッチ9aがJ1方向に一旦押込まれてクロノグラフ機構1がスタート(クロノグラフ計測開始)状態S1に設定されている場合も同様である。
【0047】
すなわち、スタート(クロノグラフ計測開始)状態S1では、一方では、復針レバー91の時ハンマー部91a、分ハンマー91b及び秒ハンマー91cが対応するハートカム88,58及び68から離れて時クロノグラフ軸84、分クロノグラフ軸54及び秒クロノグラフ軸64の回転規正を解除し、他方では、時発停レバー係合部6a,分発停レバー係合部6b及び秒発停レバー係合部6cが対応する時クロノグラフクラッチリング85の凹部85c、分クロノグラフクラッチリング55の凹部55c及び秒クロノグラフクラッチリング65の凹部65cから夫々A4,B4,C4方向に抜けて、夫々のクラッチばね86,56,66の作用下で夫々のクラッチリング85,55,65をT2方向に変位させて対応するクラッチ受板部81c,51c,61dに係合させる。
【0048】
このスタート(クロノグラフ計測開始)状態S1では、時クロノグラフ歯車機構80の時クロノグラフ歯車制御機構部83が時クロノグラフ歯車本体部81に係合され、分クロノグラフ歯車機構50の分クロノグラフ歯車制御機構部53が分クロノグラフ歯車本体部51に係合され、秒クロノグラフ歯車機構60の秒クロノグラフ歯車制御機構部63が秒クロノグラフ歯車本体部61に係合されて、夫々、クロノグラフ計測に伴って一体的に回転され、時クロノグラフ針14、分クロノグラフ針15、及び秒クロノグラフ針16が回転する。
【0049】
このクロノグラフ機構付時計2では、秒クロノグラフ針16のある秒クロノグラフ歯車機構60や分クロノグラフ針15のある分クロノグラフ歯車機構50が、輪列4の途中にあるので車60,50が輪列の端にある場合と比較してふらつくことなく安定した状態で回転され得る。時クロノグラフ針14のある時クロノグラフ歯車機構80の場合も同様である。従って、各クロノグラフ針14,15,16のフラツキが生じる虞れが少ない。
【0050】
また、クロノグラフ機構付時計2において、スタート状態S1にある際にスタート/ストップ(発停)スイッチないし発停ボタン9aがJ1方向に再度押込まれてクロノグラフ機構1がストップ(クロノグラフ計測停止)位置ないし状態S2に設定されると、時計2の関連要素は
図7に示した状態を採る。
【0051】
すなわち、ストップ(クロノグラフ計測停止)状態S2では、時発停レバー係合部6a,分発停レバー係合部6b及び秒発停レバー係合部6cが夫々のクラッチばね86,56,66に抗して対応する時クロノグラフクラッチリング85の凹部85c、分クロノグラフクラッチリング55の凹部55c及び秒クロノグラフクラッチリング65の凹部65cにA3,B3,C3方向に入り込んで夫々のクラッチリング85,55,65をT1方向に変位させて対応するクラッチ受板部81c,51c,61dとの係合を解除する。従って、クロノグラフ歯車機構80,50,60の歯車本体部81,51,61自体は夫々の輪列4,5の一部をなして回転可能であるけれども、クロノグラフ歯車機構80,50,60のクロノグラフ歯車御機構部83,53,63には歯車本体部81,51,61の回転は伝達されない。なお、各クロノグラフ歯車御機構部83,53,63の軸部84,54,64の回転は夫々の発停レバー係合部6a,6b,6cによって規正されるので、この状態においても針14,15,16のフラツキが生じる虞れが少ない。
【0052】
なお、時計2のクロノグラフ機構1においては、発停スイッチ9aやリセットスイッチ9bを押した際に、クロノグラフ計測の開始や停止や帰零動作が行われ得るように、発停レバーや復針レバー等が動作せしめられ、当該動作が所望に応じて作動カムの如き制御機構を介して制御されるけれども、図示した発停レバー係合部6a,6b,6cの動作を除いて、これらの動作は周知の構造により又は該構造と同様な構造を適宜用いるか組合わせることにより実現され得ることは明らかであるので、ここでは、説明を省く。例えば、復針機構は、特許文献3等で知られているような復針動作を行うように構成される。
【0053】
以上のとおり、このクロノグラフ機構付時計2では、香箱車25の回転に応じて回転され末端側の車が調速脱進機構によって調速される増速輪列4を構成する一部の歯車が、クラッチ機構59,69を介してクロノグラフ軸54,64に分離可能に結合されるクロノグラフ歯車51,61からなるので、クロノグラフ車50,60が増速輪列4の末端ないし最終段ではなく増速輪列4の途中に組み込まれ得るから、クロノグラフ車50,60の回転が安定に行われ得、負荷の増大も抑え得る。また、このクロノグラフ機構付時計2では、クロノグラフ車50,60のうち増速輪列4における回転の伝達に必要な歯車部分51,61がクロノグラフ車50,60のうちクロノグラフ軸54,64その他の部分からクラッチ機構59,69によって分離可能であるので、増速輪列4の負荷がクロノグラフ歯車51,61の介在によって増大するのを最低限に抑え得る。
【0054】
また、このクロノグラフ機構付時計2では、クラッチ機構59,69がクロノグラフ軸54,64をクロノグラフ歯車51,61に対して実際上垂直方向に結合する垂直クラッチからなるので、垂直クラッチ機構59,69が分離状態に設定されると、クロノグラフ軸54,64がクロノグラフ歯車51,61から分離されて通常の時計としての動作が行われ、垂直クラッチ機構59,69が結合状態に設定されると、クロノグラフ軸54,64がクロノグラフ歯車51,61に結合されて、クロノグラフ動作が行われ得る。
【0055】
また、クロノグラフ機構付時計2では、クロノグラフ軸54,64が、クラッチリング55,65、クラッチばね56,66及びクラッチばね受座57,67と一体的に構成され、クロノグラフ歯車51,61がクラッチ板51c,61dと一体的に構成されているので、クラッチ機構59,69が分離状態に設定されている場合、クロノグラフ歯車51,61が増速輪列4の中間に介在することによる負荷ないしデメリットが最低限に押えられ得る。
【0056】
また、クロノグラフ機構付時計2では、分クロノグラフ車50の分クロノグラフ歯車51並びに秒クロノグラフ車60の秒クロノグラフ歯車61が増速輪列4の途中に組み込まれているので、輪列を有効に利用し得る。
【0057】
また、クロノグラフ機構付時計2では、香箱車25の回転に応じて回転される減速輪列5に結合された時車71及び分車72を有するので、時車71及び分車72は、調速脱進機構30によって調速された香箱車25の回転に応じてしかも減速輪列5を介することにより負荷が最低限に抑えられた状態で駆動され得る。
【0058】
また、クロノグラフ機構付時計2では、減速輪列5のうちの一つの歯車が、時クラッチ機構89を介して時クロノグラフ軸84に分離可能に結合される時クロノグラフ歯車81からなり、減速輪列5の車が時クロノグラフ歯車として働き得るから、輪列を有効に利用し得る。クロノグラフ機構付時計2では、クロノグラフ車50,60を調速に不可欠な輪列の一部として組み込んだので、クロノグラフ機構付時計2の全体として関連する車や受等を最低限に抑え得る。その結果、コンパクトに構成することも可能になる。
【0059】
なお、各クロノグラフ表示の配置は、当然ながら、所望に応じて変更され得、
図2に示した配置と異なっていてもよい。例えば、分クロノグラフ車50を12時の位置に配置してもよく、また、分クロノグラフ車50を2時の位置に配置し、時クロノグラフ車80を10時の位置に配置し、てんぷ31を6時の位置に配置してもよい。
【0060】
以上においては、負荷を最低限に抑え得るようにした秒針のないクロノグラフ機構付時計2について説明したけれども、所望ならば、クロノグラフ時計が小秒針を備えていてもよい。
【0061】
図8の(a)には、小秒針17を12時の位置に備えたクロノグラフ機構付時計2Bが示されている。クロノグラフ機構付時計2Bのクロノグラフ機構1Bの概要は
図9の断面図に示されている。
図8の(a)及び
図9のクロノグラフ機構1B付の時計2Bにおいて、
図1から
図7に示した要素と同一の要素には同一の符号が付され、概ね同様であるけれども異なるところのある要素には、
図1〜
図7の要素の符号の後に添字Mが付されている。
【0062】
クロノグラフ機構1Bは、
図9からわかるように、秒クロノグラフ歯車機構60の秒クロノグラフ歯車部61の秒クロノグラフ歯車61cに、秒中間歯車43を介して秒歯車95bで噛合された秒車95を備える。秒車95の軸95aは、12時の位置にある中心軸線Kのまわりで回転可能である。なお、
図9のクロノグラフ機構1Bでは、詳細には図示されていないけれども、
図3等に示した調速脱進機構30と同じ調速脱進機構30が秒クロノグラフ歯車機構60の秒クロノグラフ歯車部61もしくは秒車95の秒歯車95bに結合されている。
【0063】
このクロノグラフ機構付時計2Bにおいても、クロノグラフ指針16,15,14がふらつく虞れが少ない。
なお、小秒がある場合、
図8の(a)のように、てんぷ31がみえるように文字板7に窓7aが形成されている代わりに、
図8の(b)に示したクロノグラフ機構1C付の時計2Cのように、窓がなくてもよい。
更に、小秒の表示を12時の位置で行う代わりに、例えば、
図8の(c)に示したクロノグラフ機構1D付の時計2Dのように、9時の位置で行うようにしてもよい。その場合、てんぷその他の調速脱進機構30は、例えば、概ね12時の位置に配置される。