(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、水路内に水が流れていない状態で水路の外部に水が溜まることがある。こうなると、隣り合うコンクリート構造物の間には、水路の外側から内側へ水圧(外水圧)が作用する。特許文献1の可撓性遮水シートは大きな外水圧を受けると、本来、コンクリート構造物の変位を吸収するためのものである折り返し部が展開して水路内側へ大きく膨らむように無理に変形し、水路内の水の流れを阻害し、やがて損傷してしまうことが考えられる。
【0008】
そこで、特許文献2のように可撓性遮水シートの内側を覆う一対のカバープレートを設けることが考えられるが、これらカバープレートの間には隙間があり、外水圧を受けた可撓性遮水シートはカバープレートの隙間から水路内側へ向けて大きく膨らんで損傷する恐れがある。
【0009】
また、外水圧を受けた可撓性遮水シートは膨らもうとしてカバープレートを水路内側へ押し、これによってカバープレートが水路内側へ向けて折れるように変形することが考えられる。こうなると可撓性遮水シートが水路内側へ向けて大きく膨らんで損傷してしまう。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、隣り合うコンクリート構造物の相対変位を許容しながら止水性を確保できるように可撓性遮水シートを設ける場合に、可撓性遮水シートが外水圧を受けても無理な変形が起こらないようにし、もって、可撓継手の耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、可撓性遮水シートの外水圧による膨れを抑制する第1及び第2膨れ抑制用板状体を設け、第1及び第2膨れ抑制用板状体の固定側とは反対側の端部を互いに連結するか、又は、可撓性遮水シートに固定するようにした。
【0012】
第1の発明は、所定方向に並ぶように配置された複数のコンクリート構造物の外水圧を受ける継目部分に配設され、継目部分からの漏水を防止する目地用可撓継手であって、
上記所定方向に隣り合うコンクリート構造物の継目部分を覆うように設けられる可撓性遮水シートと、
上記可撓性遮水シートの外水圧が作用する側とは反対側に配置され、該可撓性遮水シートの外水圧による膨れを抑制するための第1及び第2膨れ抑制用板状体と、
上記可撓性遮水シートの幅方向一端部を、上記所定方向に隣り合うコンクリート構造物の一方のコンクリート構造物に固定する第1止め付け部材と、
上記可撓性遮水シートの幅方向他端部を、上記所定方向に隣り合うコンクリート構造物の他方のコンクリート構造物に固定する第2止め付け部材とを備え、
上記第1膨れ抑制用板状体の端部は、上記一方のコンクリート構造物に対し上記第1止め付け部材により固定され、
上記第2膨れ抑制用板状体の端部は、上記他方のコンクリート構造物に対し上記第2止め付け部材により固定され、
上記第1及び第2膨れ抑制用板状体の固定側とは反対側の端部は、それぞれ、上記所定方向に隣り合うコンクリート構造物の継目部分を覆う部位まで延びるとともに、可撓性連結部材により互いに連結さ
れていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、コンクリート構造物の継目部分に外水圧が作用した場合には、可撓性遮水シートが外水圧を受けて膨らもうとし、第1及び第2膨れ抑制用板状体に対して水路内側へ向かう力が作用する。このとき、第1及び第2膨れ抑制用板状体の端部同士が可撓性連結部材で連結されている場合には、第1及び第2膨れ抑制用板状体はそれらの端部が互いに離れる方向へ変形するのが抑制されるので、水路内側へ向かって変形しにくくなる
。従って、可撓性遮水シートが膨らむのを第1及び第2膨れ抑制用板状体によって抑制することが可能になる。
【0014】
また、隣り合うコンクリート構造物が相対変位した場合には、可撓性遮水シートが撓むことによって相対変位が許容される。このとき、可撓性連結部材を設けていた場合には、この連結部材も撓むので、コンクリート構造物の変位に追従できる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記上記可撓性遮水シートの幅方向の端部が上記第1及び第2膨れ抑制用板状体に固着されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、可撓性遮水シートが外水圧を受けた際に、該可撓性遮水シートが水路内側へ向かって膨れると、可撓性遮水シートのプラスチックアンカー等による固定部から可撓性遮水シートが抜け出そうとするが、可撓性遮水シートの幅方向端部が膨れ抑制用板状体に固着されているので可撓性遮水シートの抜け出し力は膨れ抑制用板状体に分散される。この可撓性遮水シートの抜け出しは、コンクリート構造物への固定部間の中央部においてシートへの押え力が小さくなるため大きくなり易く、仮にシートが抜け出すと漏水に至るが、本発明では可撓性遮水シートが膨れ抑制用板状体に固着していることにより抜け出し力が分散され止水性が保たれる。
【0017】
第3の発明は、所定方向に並ぶように配置された複数のコンクリート構造物の外水圧を受ける継目部分からの漏水を防止する漏水防止方法において、
上記所定方向に隣り合うコンクリート構造物の継目部分を覆う可撓性遮水シートの幅方向一端部を、上記所定方向に隣り合うコンクリート構造物の一方のコンクリート構造物に対して第1止め付け部材により固定し、該可撓性遮水シートの幅方向他端部を、上記所定方向に隣り合うコンクリート構造物の他方のコンクリート構造物に対して第2止め付け部材により固定する工程と、
上記可撓性遮水シートの外水圧による膨れを抑制する第1及び第2膨れ抑制用板状体を、該可撓性遮水シートの外水圧が作用する側とは反対側に配置し、それぞれ上記一方及び他方のコンクリート構造物に対して上記第1及び第2止め付け部材により固定する工程と、
上記第1及び第2膨れ抑制用板状体の固定側とは反対側の端部は、それぞれ、上記所定方向に隣り合うコンクリート構造物の継目部分を覆う部位まで延び、該第1及び第2膨れ抑制用板状体の固定側とは反対側の端部を可撓性連結部材により互いに連結す
る工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1及び第2膨れ抑制用板状体の固定側とは反対側の端部を可撓性連結部材により互いに連
結するようにしたので、外水圧を受けた可撓性遮水シートが膨らもうとした際に、第1及び第2膨れ抑制用板状体の変形を抑制することができる。これにより、可撓性遮水シートが大きく膨らむのを抑制できる。また、隣り合うコンクリート構造物が相対変位した場合には、可撓性遮水シート及び可撓性連結部材が撓むことによって各部に無理な力をかけずにコンクリート構造物の変位を許容させることができるので、可撓継手の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる目地用可撓継手1を備えた水路Aの一部を示すものである。この水路Aは、複数のコンクリート構造物(ボックスカルバート)B1,B2を所定方向に並べて構成されたコンクリート製水路である。各コンクリート構造物B1,B2は、略矩形の閉断面を有しており、地面に埋め込まれている。従って、コンクリート構造物B1,B2の外側には土砂が存在している。コンクリート構造物B1,B2の間の継目部分の止水目地材が劣化したり、またはコンクリート構造物B1,B2が変位して止水目地材が損傷すると、水路Aの外部の土砂が水を含んだ場合に、コンクリート構造物B1,B2の外側から内側へ水圧(外水圧)が作用して漏水の原因となることがある。
【0022】
図2に示すように、目地用可撓継手1は、隣り合うコンクリート構造物B1,B2の継目部分からの漏水を防止するためのものであり、各継目部分にそれぞれ配設されている。目地用可撓継手1は、水路A内の水が継目部分から外部へ漏れるのを防止するととともに、水路Aの外部に溜まった水が継目部分から内部へ浸入するのも防止するように構成されている。
【0023】
目地用可撓継手1は、水路Aの継目部分が劣化したり損傷した場合にも使用することができるものであり、全体として水路Aの周方向に延びる長尺状に形成され、水路Aの周方向に連続するように配設される。
【0024】
この目地用可撓継手1は、可撓性遮水シート5と、可撓性遮水シート5をコンクリート構造物B1,B2の内側から覆って該可撓性遮水シート5の外水圧による膨れを抑制するための第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20と、可撓性遮水シート5及び膨れ抑制用板状体10,20をコンクリート構造物B1,B2にそれぞれ固定するための第1及び第2止め付け部材30,31と、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20を連結するための可撓性連結部材40と、不定形シーリング材50とを備えている。
【0025】
図3に拡大して示すように、可撓性遮水シート5は、例えば水を透過させないゴム系又は熱可塑性エラストマー系材料よりなればよいが、好ましくは軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー等からなる群より選ばれる材質のものである。
【0026】
図2に示すように、可撓性遮水シート5は、一方のコンクリート構造物B1の縁部から他方のコンクリート構造物B2の縁部に亘って延び、さらに、水路Aの周方向に長く延びている。
図3に示すように、可撓性遮水シート5の幅方向の一方の縁部は、一方のコンクリート構造物B1の縁部に固定される第1定着部5aとされ、また、他方の縁部は、他方のコンクリート構造物B2の縁部に固定される第2定着部5bとされている。
【0027】
可撓性遮水シート5の第1及び第2定着部5a,5bの間には、一方のコンクリート構造物B1と他方のコンクリート構造物B2との相対変位を許容するための余長部5cが設けられている。余長部5cとは、第1及び第2定着部5a、5bをコンクリート構造物B1,B2にそれぞれ固定した直後(施工直後)に余って弛んでいる部分であり、本実施形態のように弛ませたままでもよいし、図示しないが折り畳んでもよい。
【0028】
第1膨れ抑制用板状体10は、鋼板と、鋼板の少なくとも片面に軟質塩化ビニル樹脂又は熱可塑性エラストマーを積層してなる被覆層とを有する積層鋼板である。第1膨れ抑制用板状体10は、一方のコンクリート構造物B1に固定される固定部11と、固定部11から他方のコンクリート構造物B2側へ向かって延び、上記可撓性遮水シート5を覆う覆い部12とを有している。被覆層は、水路A内側に露出するように位置している。
【0029】
固定部11は、積層鋼板の幅方向(
図3の左右方向)の一側(
図3の左側)を所定幅だけ折り曲げて形成されており、積層鋼板の2枚分の厚みを有している。このように折り曲げて固定部11を構成することで、固定部11の水路A内側に向く面と外側に向く面の両方が被覆層で覆われることになる。
【0030】
固定部11の水路A外側に向く面は、例えば溶剤、熱、接着剤等によって可撓性遮水シート5に固着されている。
【0031】
覆い部12は、水路A内面と略平行に平板状に延びている。覆い部12と、水路Aの内面との間には、可撓性遮水シート5を弛ませた状態で配設することができる程度の隙間が形成されるようになっている。覆い部12の先端部(
図3における右端部)は、コンクリート構造物B1,B2の継目部分に対応する位置まで延びている。
【0032】
また、第2膨れ抑制用板状体20は、第1膨れ抑制用板状体10と同様に積層鋼板を折り曲げて構成されており、他方のコンクリート構造物B2に固定される固定部21と、可撓性遮水シート5を覆う覆い部22とを備えている。この第2膨れ抑制用板状体20の先端部(
図3における左端部)も、コンクリート構造物B1,B2の継目部分に対応する位置まで延びており、第1膨れ抑制用板状体10の先端部とは離れている。可撓性遮水シート5は、第1膨れ抑制用板状体10及び第2膨れ抑制用板状体20によって大部分が覆われている。
【0033】
第1膨れ抑制用板状体10及び第2膨れ抑制用板状体20は、可撓性遮水シート5が大きく膨らむのを抑制するためのものであるので、高い剛性を有している。
【0034】
可撓性連結部材40は、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の水路A内側に配置され、該膨れ抑制用板状体10,20の先端部同士を連結して両先端部が互いに離れるのを抑制するためのものである。可撓性連結部材40は、可撓性遮水シート5と同様な材料で構成された長尺のシート状部材であり、第1膨れ抑制用板状体10の先端部に固定される第1固定部41と、第2膨れ抑制用板状体20の先端部に固定される第2固定部42とを有している。第1及び第2固定部41,42の固定方法としては、例えば溶剤、熱、接着剤等で接着する方法が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0035】
可撓性連結部材40における第1固定部41と第2固定部42との間の部位は、幅方向への引張力が作用した際に伸長する伸長部43とされている。この引張力とは、コンクリート構造物B1,B2が地盤沈下等で相対変位して生じる大きな力のことであり、後述する外水圧によって可撓性遮水シート5が膨らもうとする場合のように比較的小さな力では殆ど伸長しない。
【0036】
次に、上記のように構成された目地用可撓継手1を水路Aに設置する方法(漏水防止方法)について
図4に基づいて説明する。
【0037】
コンクリート構造物B1,B2は既に設置されているものとし、これらの間には継目部分がある。
【0038】
まず、一方及び他方のコンクリート構造物B1,B2の内面における縁部近傍に、プライマーを塗布してプライマー層P(
図4にのみ示す)を形成した後、プライマー層Pの上に不定形シーリング材50を塗布する。不定形シーリング材50は、ウレタン系、シリコン系、変成シリコン系、エポキシ系、アクリル系、ブチルゴム系、チオコール系等の不定形のコーキング材、シール材等からなる群より選ばれる材質のものを用いることができる。不定形シーリング材50は、目地用可撓継手1の一部を構成する構成物である。
【0039】
また、可撓性遮水シート5の第1定着部5aに第1膨れ抑制用板状体10の固定部11を固定し、可撓性遮水シート5の第2定着部5bに第2膨れ抑制用板状体20の固定部21を固定する。このとき可撓性遮水シート5には余長部5cができるように固定位置を設定する。
【0040】
また、可撓性連結部材40の第1固定部41を第1膨れ抑制用板状体10の先端側に固定し、可撓性連結部材40の第2固定部42を第2膨れ抑制用板状体20の先端側に固定する。これにより、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の先端側同士が可撓性連結部材40により連結される。つまり、この工程は、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の固定側とは反対側の端部を、可撓性連結部材40により互いに連結する工程である。
【0041】
その後、不定形シーリング材50に可撓性遮水シート5の第1定着部5a及び第2定着部5bを押し付けるようにして埋め込む。これにより、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20に長手方向の継目がある場合でも止水性を維持できる。
【0042】
しかる後、例えばハンマードリルを用いて第1膨れ抑制用板状体10の固定部11、可撓性遮水シート5の第1定着部5a、不定形シーリング材50に貫通孔をあけるとともに、一方のコンクリート構造物B1に下穴(図示せず)をあける。また、同様にして、第2膨れ抑制用板状体20の固定部21、可撓性遮水シート5の第2定着部5b、不定形シーリング材50に貫通孔をあけるとともに、他方のコンクリート構造物B2に下穴(図示せず)をあける。
【0043】
次いで、第1膨れ抑制用板状体10の固定部11、可撓性遮水シート5の第1定着部5a及び不定形シーリング材50にプラスチックアンカー等の第1止め付け部材30を挿入し、さらにその第1止め付け部材30を一方のコンクリート構造物B1の下穴に叩き込み、第1膨れ抑制用板状体10の固定部11、可撓性遮水シート5の第1定着部5aを一方のコンクリート構造物B1に固定する。
【0044】
さらに、第2膨れ抑制用板状体20の固定部21、可撓性遮水シート5の第2定着部5b及び不定形シーリング材50に同様な第2止め付け部材31を挿入し、さらにその第2止め付け部材31を他方のコンクリート構造物B2の下穴に叩き込み、第2膨れ抑制用板状体20の固定部21、可撓性遮水シート5の第2定着部5bを他方のコンクリート構造物B2に固定する。
【0045】
以上の工程が、隣り合うコンクリート構造物B1,B2の継目部分を覆うように可撓性遮水シート5を配置し、可撓性遮水シート5の幅方向一端部を一方のコンクリート構造物B1に対して第1止め付け部材30により固定し、可撓性遮水シート5の幅方向他端部を他方のコンクリート構造物B2に対して第2止め付け部材31により固定する工程と、可撓性遮水シート5の外水圧による膨れを抑制する第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20を、それぞれ一方及び他方のコンクリート構造物B1,B2に対して第1及び第2止め付け部材30,31により固定する工程である。
【0046】
尚、第1及び第2止め付け部材30,31は、プラスチックアンカーに限られるものではなく、例えば、スクリューネジ等であってもよく、スクリューネジの場合には下穴にねじ込むことによって固定する。
【0047】
また、可撓性遮水シート5をコンクリート構造物B1,B2に固定した後に、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20をコンクリート構造物B1,B2に固定してもよい。
【0048】
以上のようにして目地用可撓継手1の設置が完了すると、水路A内の水は可撓性遮水シート5が設けられていることによって外部へ漏れることはない。
【0049】
次に、
図5に示すように例えば地盤沈下等によって一方のコンクリート構造物B1(または他方のコンクリート構造物B2)が他方のコンクリート構造物B2(または一方のコンクリート構造物B1)から水路Aの延びる方向に離れるように変位した場合について説明する。
【0050】
この場合、可撓性遮水シート5の第1定着部5aと第2定着部5bとが幅方向に引っ張られることになる。このとき余長部5cが張ることになるので、第1定着部5aと第2定着部5bには無理な力がかからない。また、余長部5cが撓むことによってもコンクリート構造物B1,B2の相対変位が許容される。
【0051】
また、第1膨れ抑制用板状体10と第2膨れ抑制用板状体20とが互いに離れる方向に引っ張られる。このとき、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20が可撓性連結部材40で連結されているが、この可撓性連結部材40は上述のように地盤変動のような大きな引張力を受けた場合には伸長部43が伸長する。これにより、各部にかかる力が低減され、コンクリート構造物B1,B2の変位が許容される。また、隣り合うコンクリート構造物B1,B2が傾くように変位したり、上下方向に変位した場合には、伸長部43が撓むことによっても、それらコンクリート構造物B1,B2の変位が許容される。
【0052】
次に、例えば農閑期のように水路A内に水が無い状態で、水路Aの外部に水が溜まった場合について説明する。水路Aの外部の水は、継目部分を通って水路Aの内側へ浸入していき、可撓性遮水シート5に外水圧が作用する。外水圧を受けた可撓性遮水シート5は、水路A内側へ向けて膨らもうとする。
【0053】
外水圧が比較的低い場合には、高剛性な第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20によって可撓性遮水シート5の水路A内側を覆っているので、可撓性遮水シート5が大きく膨らむのが抑制される。
【0054】
外水圧が高い場合には、可撓性遮水シート5が膨らもうとする力が大きくなり、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20を水路A内側へ向けて強く押すことになる。このとき、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20は基端側がコンクリート構造物B1,B2に固定されているので、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の先端側同士が開こうとするが、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の先端側同士は可撓性連結部材40によって連結されていて開くのが抑制されている。よって、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20が水路A内側へ向けて変形しにくくなり、これにより、可撓性遮水シート5が大きく膨らむのが抑制される。
【0055】
以上説明したように、この実施形態にかかる目地用可撓継手1によれば、第1及び第2膨れ抑制用板状体10.20の先端部を可撓性連結部材40により互いに連結したので、外水圧を受けた可撓性遮水シート5が膨らもうとした際に、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の変形を抑制することができる。これにより、可撓性遮水シート5が大きく膨らむのを抑制できる。また、隣り合うコンクリート構造物B1,B2が相対変位した場合には、可撓性遮水シート5及び可撓性連結部材40が撓むことによって各部にかかる力が低減されてコンクリート構造物B1,B2の変位を許容させることができるので、可撓継手1の耐久性を向上させることができる。
【0056】
図6に示す変形例1のように、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20に突条部13,23をそれぞれ形成してもよい。突条部13は、第1膨れ抑制用板状体10の固定部11と覆い部12との境界部分近傍に設けられており、水路A内側へ突出して水路Aの周方向に延びている。この突条部13を形成することにより、例えば
図7に示すように外水圧が作用した際に、第1膨れ抑制用板状体10の覆い部12が水路A内側に変形しようとした際に覆い部12のみを変形させて固定部11には無理な力がかからないようにすることができる。第2膨れ抑制用板状体20の突条部23も同様である。
【0057】
(参考例)
図8は、参考例にかかる目地用可撓継手1を示すものである。この参考例では、可撓性遮水シート5の配設位置が実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0058】
すなわち、参考例では、可撓性遮水シート5が、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20よりも水路A内側に配設されている。また、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20には、突条部14,24がそれぞれ設けられている。突条部14は、第1膨れ抑制用板状体10の固定部11近傍において水路A内面に接触するように突出しており、水路Aの周方向に連続している。この突条部14は、実施形態1の変形例の突条部13と同様に固定部11に無理な力がかかるのを抑制するためのものである。第2膨れ抑制用板状体20の突条部24も同様である。
【0059】
可撓性遮水シート5の第1定着部5aは第1膨れ抑制用板状体10の固定部11に固定されている。また、可撓性遮水シート5の第2定着部5bは第2膨れ抑制用板状体20の固定部21に固定されている。
【0060】
また、可撓性遮水シート5の幅方向中間部は、第1膨れ抑制用板状体10の先端側に接着により固定されており、その接着部分を符号5dで示す。さらに、可撓性遮水シート5の幅方向中間部は、第2膨れ抑制用板状体20の先端側に接着により固定されており、その接着部分を符号5eで示す。可撓性遮水シート5の接着部5dと接着部5eとの間は、可撓性遮水シート5の幅方向に引張力を受けた際に伸長する伸長部5fとされている。
【0061】
この引張力とは、コンクリート構造物B1,B2が地盤沈下等で相対変位して生じる大きな力のことである。
【0062】
尚、
図8においてクロスハッチングを付している部分は可撓性遮水シート5の第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20への接着部分である。
【0063】
参考例においても実施形態1と同様な要領で目地用可撓継手1を水路Aに設置することができる。
【0064】
次に、コンクリート構造物B1,B2が相対変位した場合について説明する。この場合、可撓性遮水シート5の第1定着部5aと第2定着部5bとが幅方向に引っ張られることになる。このとき伸長部5fが伸長するので、第1定着部5aと第2定着部5bにかかる力を低減できる。また、伸長部5fが撓むことによってもコンクリート構造物B1,B2の相対変位が許容される。
【0065】
また、第1膨れ抑制用板状体10と第2膨れ抑制用板状体20とが互いに離れる方向に引っ張られる。このとき、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の先端側同士が可撓性遮水シート5で連結されているが、この可撓性遮水シート5は地盤変動のような大きな引張力を受けた場合には伸長部5fが伸長するので、かかる力を低減でき、コンクリート構造物B1,B2の変位が許容される。
【0066】
次に、例えば農閑期のように水路A内に水が無い状態で、水路Aの外部に水が溜まった場合について説明する。水路Aの外部の水は、継目部分を通って水路Aの内側へ浸入していき、可撓性遮水シート5に外水圧が作用する。外水圧を受けた可撓性遮水シート5は、水路A内側へ向けて膨らもうとする。
【0067】
外水圧が比較的低い場合には、高剛性な第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20と可撓性遮水シート5とが接着されているので、可撓性遮水シート5が大きく膨らむのが抑制される。
【0068】
外水圧が高い場合には、可撓性遮水シート5が膨らもうとする力が大きくなり、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20が水路A内側へ向けて強く押されることになる。このとき、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の先端側同士は可撓性遮水シート5によって連結されていて開くのが抑制されている。よって、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20が水路A内側へ向けて変形しにくくなり、これにより、可撓性遮水シート5が大きく膨らむのが抑制される。
【0069】
以上説明したように、この参考例にかかる目地用可撓継手1によれば、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の先端部を可撓性遮水シート5により互いに連結したので、外水圧を受けた可撓性遮水シート5が膨らもうとした際に、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の変形を抑制することができる。これにより、可撓性遮水シート5が大きく膨らむのを抑制できる。また、隣り合うコンクリート構造物B1,B2が相対変位した場合には、可撓性遮水シート5が撓むことによってかかる力を低減でき、コンクリート構造物B1,B2の変位を許容させることができるので、可撓継手1の耐久性を向上させることができる。
【0070】
図9に示す変形例のように、可撓性遮水シート5を第1膨れ抑制用板状体10の全面に接着し、また、第2膨れ抑制用板状体20の全面に接着するようにしてもよい。これにより、可撓性遮水シート5と第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20とを強固に一体化することができる。
【0071】
また、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20を水路Aの周方向に連続させていれば、第1及び第2膨れ抑制用板状体10,20の端部の接着部分5d,5eを可撓性連結部材で連結することにより遮水効果を得ることができ、同様な目地用可撓継手とすることができる。
【0072】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2にかかる目地用可撓継手1の接合部分を示すものである。この実施形態2では、可撓性遮水シートが二重構造となっている点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0073】
実施形態2では、実施形態1の可撓性遮水シート5の水路A外側に接合用補助シート6を設けており、
図1に示す施工例のように筒状に成型する場合のジョイント部分を遮水効果を有しながら連結できる。
【0074】
接合用補助シート6は、可撓性遮水シート5と重なるように配置されており、一方のコンクリート構造物B1の縁部に固定される第1定着部6aと、他方のコンクリート構造物B2の縁部に固定される第2定着部6bと、余長部6cとを備えている。
【0075】
可撓性遮水シート5と接合用補助シート6とを溶剤溶着や熱溶着することにより、簡単な作業で遮水効果を得ることができ、作業性に優れる。
【0076】
この実施形態2では、実施形態1と同様な方法によって目地用可撓継手1を水路Aに設けることができる。