特許第5979920号(P5979920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5979920オレフィン重合用触媒およびそれをもちいたオレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979920
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒およびそれをもちいたオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20160818BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   C08F4/6592
   C08F10/00 510
【請求項の数】7
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2012-55779(P2012-55779)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-189525(P2013-189525A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】雪田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】山下 正洋
(72)【発明者】
【氏名】兼吉 寛矛
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−226695(JP,A)
【文献】 Journal of Organometallic Chemistry,1996年,Vol.522,No.1,39−54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4,6−246
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式[1]で表されるメタロセン化合物(A)と、
(B)(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b−2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、
(b−3)有機アルミニウム化合物
から選択される少なくとも1種の化合物(B)と
を含んでなるオレフィン重合用触媒
【化1】
〔上記式(1)において、
1,R6, R1'およびR6'は、それぞれ独立に炭素数6〜20のアリール基またはハロゲン含有アリール基を示し、
2,R3,R4,R5およびR7、並びにR2',R3',R4',R5',およびR7'は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、窒素含有基、酸素含有基またはケイ素含有基を示し、
MはTi、ZrまたはHfを示し;
Qはハロゲン原子、炭化水素基、炭素数が10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、且つ;
jは1〜4の整数を示し、jが2以上のときは、複数あるQは同一でも互いに異なっていてもよい。〕。
【請求項2】
前記一般式(1)において、R2、R5、R2'およびR5'が炭素数4〜10の炭化水素基またはハロゲン含有炭化水素基であることを特徴とする請求項に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項3】
(C)担体
をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィンを重合することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記オレフィンが炭素数3以上のα−オレフィンを含むことを特徴とする、請求項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記オレフィンが、プロピレンを含有することを特徴とする請求項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
得られるオレフィン重合体が下記要件(i)〜(iii)を満たすことを特徴とする、請求項に記載のオレフィン重合体の製造方法:
(i)示差走査型熱量計(DSC)により求められる融点(Tm)が150℃以上、
(ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が100,000以上、
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.5以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒および、それを用いたオレフィン重合体の製造方法に関し、特に詳しくはシンジオタクティックオレフィン重合体を製造し得る特定の構造を有するメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒および、それを用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合用の均一系触媒としては、いわゆるメタロセン化合物がよく知られている。メタロセン化合物を用いてオレフィンを重合する方法(特にα−オレフィンを重合する方法)に関しては、W.Kaminskyらによってアイソタクチック重合が報告されて以来、立体規則性や重合活性の更なる向上という視点から、多くの改良研究が行なわれている(非特許文献1)。
【0003】
このような研究の一環として、特定の触媒の存在下にプロピレンを重合した結果、シンジオタックチックペンタッド分率が0.7を超えるようなタクティシティの高いポリプロピレンが得られることが、J.A.Ewenによって報告されている(非特許文献2)。ここで、前記特定の触媒は、シクロペンタジエニル基およびフルオレニル基をイソプロピリデンで架橋した配位子を有するメタロセン化合物と、アルミノキサンとからなる。
【0004】
上記メタロセン化合物の改良として、フルオレニル基を2,7−ジtert−ブチルフルオレニル基にすることにより、立体規則性を向上させる試みがなされている(特許文献1)。その他にも、フルオレニル基を3,6−ジtert−ブチルフルオレニル基にすることにより立体規則性を向上させる試み(特許文献2)や、シクロペンタジエニル基とフルオレニル基とが結合している架橋部を変換することにより立体規則性を向上させる試み(特許文献3、4)が報告されている。
【0005】
また、エチレン(共)重合用触媒として、2つのフルオレニル基を配位子として有するメタロセン化合物を用いる試みもなされている。例えば、特許文献5には、エチレンの単独重合及びヘキセンとの共重合において、(1,2−ジフルオレニルエタン)ジルコニウムジクロリドを重合用触媒として用いる試みが報告されている。
【0006】
このようにメタロセン化合物の改良によって、(1)立体規則性の指標である、融点がある程度高いオレフィン重合体や、(2)分子量がある程度高いオレフィン重合体が得られるようになっている。
【0007】
しかしながら、そのように改良された架橋メタロセン化合物は一般的に製造コストが高い傾向が認められる。一方、架橋されていないメタロセン化合物は架橋メタロセン化合物に比べると一般的に低いコストで製造できると考えられるものの、十分に高い立体規則性と高い分子量を有するオレフィン重合体を合成するといった重合性能は知られていない。例えば、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用いた例があるが、エチレンの重合例が報告されているのみである(非特許文献3)。また、ビス(2,7−ジ−tertブチル−4−メチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドについては、プロピレン重合用触媒に適用しようとする試みがなされているが、プロピレン重合体の生成がごく少量に留まったことが報告されている(特許文献5)。
【0008】
よって、より安価に製造でき、かつ重合性能の良いメタロセン化合物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平04−069394号公報
【特許文献2】特開2000−212194号公報
【特許文献3】特開2004−189666号公報
【特許文献4】特開2004−189667号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第0666267号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 24, 507 (1985)
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 6255
【非特許文献3】Chemical Reviews, 2000, Vol.100, No. 4, P.1209
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、プロピレンなどのオレフィンを重合する場合に、工業化可能な高温条件下であっても、十分に高い立体規則性かつ高い分子量を有するオレフィン重合体を製造するオレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の構造を有するメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]に関する。
[1]
(A)下記一般式[1]で表されるメタロセン化合物(A)と、
(B)(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b−2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、
(b−3)有機アルミニウム化合物
から選択される少なくとも1種の化合物(B)と
を含んでなるオレフィン重合用触媒
【0014】
【化1】
【0015】
〔上記式(1)において、
1,R6, R1'およびR6'はそれぞれ独立に炭素数6〜20の炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、窒素含有基、酸素含有基またはケイ素含有基を示し、
2,R3,R4,R5およびR7、並びにR2',R3',R4',R5',およびR7'は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、窒素含有基、酸素含有基またはケイ素含有基を示し、
MはTi、ZrまたはHfを示し;
Qはハロゲン原子、炭化水素基、炭素数が10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し;且つ、
jは1〜4の整数を示し、jが2以上のときは、複数あるQは同一でも互いに異なっていてもよい。〕。
[2]前記一般式(1)において、R1、R6、R1'およびR6'が炭素数6〜20の炭化水素基またはハロゲン含有炭化水素基であることを特徴とする、前記[1]に記載のオレフィン重合用触媒。
[3]前記一般式(1)において、R2、R5、R2'およびR5'が炭素数4〜10の炭化水素基またはハロゲン含有炭化水素基であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のオレフィン重合用触媒。
【0016】
[4](C)担体
をさらに含むことを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれか一つに記載のオレフィン重合用触媒。
【0017】
[5]前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィンを重合することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
[6]前記オレフィンが炭素数3以上のα−オレフィンを含むことを特徴とする、前記[5]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0018】
[7]前記オレフィンが、プロピレンを含有することを特徴とする前記[5]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
[8]得られるオレフィン重合体が下記要件(i)〜(iii)を満たすことを特徴とする、前記[6]に記載のオレフィン重合体の製造方法:
(i)該オレフィン重合体のDSCにより求められる融点(Tm)が150℃以上、
(ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が100,000以上、かつ
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.5以上である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プロピレンなどのオレフィンを重合する場合に、工業化可能な高温条件下であっても、十分に高い立体規則性かつ高い分子量を有するオレフィン重合体を製造でき、なおかつ、工業的に比較的安価に製造できるオレフィン重合用触媒、および該オレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、特定のフルオレン配位子を2つ有するメタロセン化合物(A)(以下、単に、「メタロセン化合物(A)」と称する。)と、助触媒成分となる化合物(B)(以下、単に、「化合物(B)」と称する。)とを含んでなることを特徴とする。
【0021】
そして、本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、このようなオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合することを特徴とする。本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、好ましくは40℃以上の条件下において、好ましくは炭素数2以上のオレフィンから選択される少なくとも1種のモノマーを重合することにより行われる。
【0022】
以下、本発明で使用されるメタロセン化合物(A)と化合物(B)とを含むオレフィン重合用触媒、該オレフィン重合用触媒の存在下にオレフィンを重合する方法について、発明を実施するための最良の形態を順次説明する。
〔オレフィン重合用触媒〕
本発明で使用されるオレフィン重合用触媒は、
メタロセン化合物(A)と、
(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b−2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および
(b−3)有機アルミニウム化合物
から選択される少なくとも1種の化合物(B)と
を必須成分として含む。また、担体(C)や有機化合物成分(D)を任意成分として含んでいてもよい。
【0023】
《メタロセン化合物(A)》
本発明で使用されるメタロセン化合物(A)は、下記一般式(1)で表される。
【0024】
【化2】
【0025】
〔上記式(1)において、
1, R6, R1'およびR6'はそれぞれ独立に炭素数6〜20の炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、窒素含有基、酸素含有基またはケイ素含有基を示し、
2, R3, R4, R5およびR7、並びにR2', R3', R4', R5',およびR7'は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、窒素含有基、酸素含有基またはケイ素含有基を示し、
MはTi、ZrまたはHfを示し;
Qはハロゲン原子、炭化水素基、炭素数が10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、且つ;
jは1〜4の整数を示し、jが2以上のときは、複数あるQは同一でも互いに異なっていてもよい。〕
以下、メタロセン化合物(A)を構成する原子および基について説明する。
【0026】
−R1〜R7およびR1'〜R7'について−
本発明で用いられるメタロセン化合物(A)において、R1, R6, R1'およびR6'は、それぞれ独立に炭素数6〜20の炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、窒素含有基、酸素含有基またはケイ素含有基であり、R2, R3, R4, R5およびR7、並びにR2', R3', R4', R5',およびR7'は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、窒素含有基、酸素含有基またはケイ素含有基である。
【0027】
炭化水素基
メタロセン化合物(A)のフルオレニル配位子が有しうる「炭化水素基」として、炭素数1〜40の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基がより好ましい。前記炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の飽和脂環式基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基が例示される。
【0028】
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル(allyl)基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基などの直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、tert−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状アルキル基が例示される。
【0029】
炭素数3〜20の飽和脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基などの脂環式多環基が例示される。
【0030】
炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ビフェニル基などの芳香族環の基が全て水素であるアリール基(以後、非置換アリール基と言う事がある);o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、iso−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、キシリル基などのアルキルアリール基が例示される。
【0031】
炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、クミル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基、ネオフィル基などのアラルキル基;o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、エチルベンジル基、n−プロピルベンジル基、iso−プロピルベンジル基、n−ブチルベンジル基、sec−ブチルベンジル基、tert−ブチルベンジル基などのアルキルアラルキル基が例示される。
【0032】
これらの「炭化水素基」のうち、R1,R6, R1'およびR6'については、炭素数6〜20の炭化水素基、好ましくは、炭素数6〜10の炭化水素基を用いることができる。また、R2, R3, R4, R5およびR7、並びにR2', R3', R4', R5'およびR7'については、炭素数1〜10の炭化水素基であることが特に好ましい。このうち、R2, R5, R2'およびR5'については、炭素数4〜10の炭化水素基であることが特に好ましい。
【0033】
ハロゲン含有炭化水素基
メタロセン化合物(A)のフルオレニル配位子が有しうる「ハロゲン含有炭化水素基」として、上記「炭化水素基」が有する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が例示され、具体的には、
トリフルオロメチル基などのフルオロアルキル基などのハロゲン含有アルキル基;
ペンタフルオロフェニル基などのフルオロアリール基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、クロロナフチル基などのクロロアリール基、o−ブロモフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−ブロモフェニル基、ブロモナフチル基などのブロモアリール基、o−ヨードフェニル基、m−ヨードフェニル基、p−ヨードフェニル基、ヨードナフチル基などのヨードアリール基などの上記非置換アリール基の一部がハロゲンで置換された基;トリフルオロメチルフェニル基などのフルオロアルキルアリール基、ブロモメチルフェニル基、ジブロモメチルフェニル基などのブロモアルキルアリール基、ヨードメチルフェニル基、ジヨードメチルフェニル基などのヨードアルキルアリール基などの上記アルキルアリール基のアルキル構造の一部がハロゲンで置換された基;などのハロゲン含有アリール基;
o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、クロロフェネチル基などのクロロアラルキル基、o−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、p−ブロモベンジル基、ブロモフェネチル基などのブロモアラルキル基、o−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、p−ヨードベンジル基、ヨードフェネチル基などのヨードアラルキル基などの上記非置換アラルキル基の水素がハロゲンに置換されたハロゲン含有アラルキル基
が例示される。
【0034】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
これらの「ハロゲン含有炭化水素基」のうち、R1, R6, R1'およびR6'については、炭素数6〜20のハロゲン含有炭化水素基、好ましくは、炭素数6〜10のハロゲン含有炭化水素基を用いることができる。また、R2, R3, R4, R5およびR7、並びにR2', R3', R4', R5'およびR7'については、炭素数1〜10のハロゲン含有炭化水素基であることが特に好ましい。このうち、R2, R5, R2'およびR5'については、炭素数4〜10のハロゲン含有炭化水素基であることが特に好ましい。
【0035】
窒素含有基、酸素含有基、ケイ素含有基
メタロセン化合物(A)のフルオレニル配位子が有しうる「窒素含有基」として、ニトロ基、シアノ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−フェニルアミノ基が例示される。
【0036】
また、「酸素含有基」として、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基が例示される。
また、「ケイ素含有基」として、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基などのアルキルシリル基;ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基などのアリールシリル基が例示される。
【0037】
フルオレニル配位子が有しうるその他の構造
メタロセン化合物(A)において、R1〜R6のうち隣り合う任意の2つの基は、結合して環を形成していても良く、R1'〜R6'のうち隣り合う任意の2つの基についても、結合して環を形成していても良い。すなわち、メタロセン化合物(A)を構成する2つのフルオレニル配位子は、それぞれ、フルオレン環を基礎成分として含みつつ、その周辺に、ベンゼン環;水素化ベンゼン環;並びに、フラン環、チオフェン環などのヘテロ環およびこれに対応する水素化ヘテロ環などの付加的な環がさらに縮合してなる環構造を有していてもよい。また、このような環構造は、環上にアルキル基などの置換基をさらに有していてもよい。このよう環構造の例として、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基などが挙げられる。
【0038】
1〜R7およびR1'〜R7'についての好ましい態様
本発明で用いられるメタロセン化合物(A)において、R1、R6、R1'およびR6'はそれぞれ独立に、上記炭素数6〜20の炭化水素基またはハロゲン含有炭化水素基であることが好ましく、上記アリール基またはハロゲン含有アリール基であることがより好ましく、フェニル基、アルキルフェニル基、ハロゲン含有フェニル基またはハロゲン含有アルキルフェニル基であることがさらに好ましい。
【0039】
なお、R1およびR6は同一の基であることが好ましい。また、R1'およびR6'は同一の基であることが好ましい。
また、R2、R5、R2'、R5'、R7およびR7'から選択される1つ以上の基は上記炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有基であることが好ましい。さらに、R2、R5、R2'およびR5'はそれぞれ独立に上記炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有基であることが好ましく、上記炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であることがより好ましく、上記炭化水素基であることがさらに好ましく、上記アルキル基であることが特に好ましい。また、R2およびR5は同一の基であることが好ましく、R2'およびR5'は同一の基であることが好ましい。
【0040】
3、R4、R3'、R4'、R7およびR7'はそれぞれ独立に水素原子、上記炭化水素基またはハロゲン含有炭化水素基であることが好ましく、水素原子、上記アリール基またはハロゲン含有アリール基であることがより好ましく、水素原子、フェニル基、アルキルフェニル基、ハロゲン含有フェニル基、またはハロゲン含有アルキルフェニル基であることがさらに好ましい。なお、R3およびR4は同一の基であることが好ましく、R3'およびR4'は同一の基であることが好ましい。
【0041】
本発明では、以上に示したような構造を有するメタロセン化合物(A)を用いることにより、融点の高いオレフィン重合体が得られる。これは、メタロセン化合物(A)が、高立体規則性オレフィン重合体の生成を触媒するためである。このため、常温以上の温度、好ましくは常温を大きく超える高い温度で合成したオレフィン重合体でも、良好な成型加工性を示すことが可能となり、製品の価値を高めるとともに工業的にオレフィン重合体を生産する際のコストパフォーマンスが向上する。
【0042】
また、上記のような構造を有するメタロセン化合物(A)を用いることにより、分子量の大きいオレフィン重合体が得られる。これは、メタロセン化合物(A)が、高分子量体の生成を触媒するためである。このため、常温以上の温度、好ましくは常温を大きく超える高い温度で、オレフィン重合体を合成することが可能となり、工業的にオレフィン重合体を生産する際のコストパフォーマンスが向上する。
【0043】
さらに、上記のような構造を有するメタロセン化合物(A)を用いることにより、分子量分布の広いオレフィン重合体が得られることがある。これは、メタロセン化合物(A)が、広分子量体の生成を触媒することがあるためである。このため、成型加工性に優れたオレフィン重合体を容易に合成することが可能となり、工業的にオレフィン重合体を生産する際のコストパフォーマンスが向上し得る。
【0044】
本発明で用いられるメタロセン化合物(A)は、複数のフルオレニル配位子が架橋しない構造を有しながらも高い立体規則性を有する重合体を、しかも高い分子量で比較的広い分子量分布の重合体を与えるという予想外の性能を示す。この理由は現時点で明らかではないが、本発明者らは次のように推測している。
【0045】
本発明で用いられるメタロセン化合物(A)は、フルオレニル配位子における特定の位置に特定の置換基を有する構造を有している。この置換基間の立体障害により、重合反応中に架橋構造を有する配位子に類似の立体配置となるため、立体規則性の高い重合体を与えると推測される。また、完全な架橋構造ではないため、前記の立体配置に揺らぎが有るため、活性種の性能が経時的に微妙に変化するため分子量分布が広くなったり、連鎖移動が抑制されたりしているのではないかと推定される。
【0046】
−M、Qおよびjについて−
本発明で用いられるメタロセン化合物(A)において、MはTi、ZrまたはHfを示し、好ましくはZrまたはHfを示し、特に好ましくはZrを示す。
【0047】
Qはハロゲン原子(Q)、炭化水素基(Q)、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示す。
ここで、ハロゲン原子(Q)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
【0048】
また、炭化水素基(Q)としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましい。ここで、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基が例示され;炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基が例示される。炭化水素基(Q)の炭素数は5以下であることがより好ましい。
【0049】
また、炭素数10以下の中性の共役または非共役ジエンとしては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンが例示される。
【0050】
また、アニオン配位子としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基;アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基;メシレート、トシレートなどのスルホネート基が例示される。
【0051】
さらに、孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類が例示される。
【0052】
上記Qの好ましい態様は、ハロゲン原子または炭素数1〜5のアルキル基である。
また、jは1〜4の整数であり、好ましくは2である。
本発明において、上記メタロセン化合物(A)は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0053】
【化3】
【0054】
上記式(2)において、
1, R2, R5およびR6、並びに、R1', R2', R5'およびR6'の定義は、上記式(1)におけるものとそれぞれ同一であり、
M、Qおよびjの定義は、上記式(1)におけるM、Qおよびjの定義と同一である。
【0055】
<メタロセン化合物(A)の例示>
以下に、上記一般式(1)で表されるメタロセン化合物(A)の具体例を示すが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。なお、本発明においてメタロセン化合物(A)は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
ここで、便宜上、メタロセン化合物(A)のMQj(金属部分)を除いたリガンド構造、すなわち、上記フルオレニル配位子からなるリガンド構造を、Flu−A(フルオレニル部分)およびFlu−B(フルオレニル部分)の2つに分ける。本明細書では、このFlu−A(フルオレニル部分)およびFlu−B(フルオレニル部分)が互いに架橋されていないことにちなみ、MQj(金属部分)を除いたリガンド構造、すなわち、当該2つのフルオレニル部分からなる構造を非架橋部分と呼ぶこととする。そして、この非架橋部分の構造を表記上2つに分け、当該非架橋部分を構成するそれぞれの部分構造(すなわち、Flu−AおよびFlu−B)の具体例を表1に、非架橋部分の構造の具体例を表2にそれぞれ示す。
【0057】
【表1-1】
【0058】
【表1-2】
【0059】
【表2-1】
【0060】
【表2-2】
【0061】
上記表1〜2に従えば、No.α1β2はα1−β2の組合せを意味することになり、例えば、No.α1β2の非架橋部分を有し、且つ金属部分のMQjがZrCl2のメタロセン化合物(A)は、下記式で表されるメタロセン化合物として示されることになる。
【0062】
【化4】
【0063】
MQjの具体的な例示としては、ZrCl2、ZrBr2、ZrMe2、Zr(OTs)2、Zr(OMs)2、Zr(OTf)2、TiCl2、TiBr2、TiMe2、Ti(OTs)2、Ti(OMs)2、Ti(OTf)2、HfCl2、HfBr2、HfMe2、Hf(OTs)2、Hf(OMs)2、Hf(OTf)2などが挙げられる。ここで、Tsはp−トルエンスルホニル基、Msはメタンスルホニル基、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基を示す。
【0064】
《メタロセン化合物(A)の合成法》
本発明で使用される、上記一般式(1)で表されるメタロセン化合物(A)は下記の方法によって製造可能であるが、特に製造方法が限定されるわけではない。
【0065】
まず、一般式(1)で表されるメタロセン化合物(A)のFlu−A(フルオレニル部分)およびFlu−B(フルオレニル部分)を構成する前駆体化合物(3a)および前駆体化合物(3b)は、公知の方法によってそれぞれ製造することができる。
【0066】
【化5】
【0067】
上記式(3a)において、R1, R2, R3, R4, R5, R6およびR7の定義は、上記式(1)におけるものとそれぞれ同一である。
【0068】
【化6】
【0069】
上記式(3b)において、R1', R2', R3', R4', R5', R6'およびR7' の定義は、上記式(1)におけるものとそれぞれ同一である。
次に、一般式(3a)、および(3b)で表される前駆体化合物からメタロセン化合物(A)を製造する例を以下に示すが、これは発明の範囲を制限するものではなく、公知のいかなる方法で製造されてもよい。
【0070】
まず、一般式(3a)、および(3b)で表される前駆体化合物を、有機溶媒中でアルカリ金属、水素化アルカリ金属または有機アルカリ金属と、反応温度が-80℃〜200℃の範囲で接触させることで、対応するジアルカリ金属塩に変換する。上記反応で用いられる有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族炭化水素、またはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル、またはジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素等が挙げられる。また、上記反応で用いられるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが、水素化アルカリ金属としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどが、有機アルカリ金属としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウムなどが挙げられる。
【0071】
次に上記で得られたジアルカリ金属塩を、有機溶媒中で一般式(4)
MZk …(4)
(上記式(4)中、Mは周期表第4族から選ばれた金属であり、Zはハロゲン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、kは3〜6の整数である。)で表される化合物と反応させることで、一般式(1)で表されるメタロセン化合物(A)を合成することができる。
【0072】
一般式(4)で表される化合物の好ましい具体的として、三価または四価のチタニウムフッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物、四価のジルコニウムフッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物、四価のハフニウムフッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物、またはこれらのテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンまたは1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類との錯体を挙げることができる。また、用いられる有機溶媒としては前記と同様のものを挙げることができる。
【0073】
上記で得られたジアルカリ金属塩と一般式(4)で表される化合物との反応は、好ましくは等モル反応で行い、前記の有機溶媒中で、反応温度が-80℃〜200℃の範囲で行うことができる。反応で得られたメタロセン化合物は、抽出、再結晶、昇華等の方法により、単離・精製を行うことができる。このような方法で得られる本発明の遷移金属化合物は、プロトン核磁気共鳴スペクトル、13C核磁気共鳴スペクトル、質量分析、および元素分析などの分析手法を用いることによって同定される。
【0074】
下記スキームに、一般式(4)で表される化合物として4塩化ジルコニウムを用いた場合におけるメタロセン化合物(A)の合成方法を例示する。
【0075】
【化7】
【0076】
上記のスキームに例示したように、上記式(3a)および(3b)で表される前駆化合物からそれぞれ導かれる上記アルカリ金属塩に対し、4塩化ジルコニウムなど一般式(4)で表される化合物を反応させることにより、メタロセン化合物(A)を得ることができる。ただし、メタロセン化合物(A)を得ることができる限りにおいて、メタロセン化合物(A)の製造方法は、上記スキームに例示した製造方法に限られるものではなく、他の製造方法であっても良い。
【0077】
このように、メタロセン化合物(A)は、一般的な架橋メタロセン化合物に比べて、架橋構造を製造する工程を要しないため、比較的安価に製造することができる。
《化合物(B)》
本発明では、オレフィン重合用触媒において助触媒を構成する成分として、化合物(B)が用いられる。化合物(B)は、(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b−2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および(b−3)有機アルミニウム化合物から選択される少なくとも1種である。これらの中では、有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)が好ましい。
【0078】
−有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)−
有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)としては、下記一般式(5)で表される化合物および下記一般式(6)で表される化合物などの従来公知のアルミノキサン、下記一般式(7)で表される構造を有する修飾メチルアルミノキサン、下記一般式(8)で表されるボロン含有有機アルミニウムオキシ化合物が例示される。
【0079】
【化8】
【0080】
【化9】
【0081】
式(5)および(6)において、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、好ましくはメチル基を示し、nは2以上、好ましくは3以上、より好ましくは10以上の整数を示す。本発明では、式(5)および(6)において、Rがメチル基であるメチルアルミノキサンが好適に使用される。
【0082】
【化10】
【0083】
式(7)において、Rは炭素数2〜10の炭化水素基を示し、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。複数あるRは同一でも異なっていてもよい。
【0084】
【化11】
【0085】
式(8)において、Rcは炭素数1〜10の炭化水素基を示す。複数あるRdはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示す。
これらの有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)のうち、上記式(7)で表される修飾メチルアルミノキサンは、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムとを用いて調製することができる。このような修飾メチルアルミノキサンは、一般にMMAO(modified methyl aluminoxane)と呼ばれている。MMAOは、具体的には米国特許4960878号明細書および米国特許5041584号明細書で挙げられている方法で調製することが出来る。
【0086】
また、東ソー・ファインケム社などからも、トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとを用いて調製された(すなわち、上記一般式(7)においてRがイソブチル基である)修飾メチルアルミノキサンが、MMAOやTMAOといった名称で商業的に生産されている。
【0087】
MMAOは各種溶媒への溶解性および保存安定性が改善されたアルミノキサンである。具体的には上記一般式(5)または(6)で表される化合物などのようなベンゼンに対して不溶性または難溶性の化合物とは異なり、MMAOは脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素および芳香族炭化水素に溶解するものである。
【0088】
本発明では、後述するような高温においてもオレフィン重合体を製造することができる。したがって、本発明の特徴の一つに、特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物をも使用できることが挙げられる。ここで、「ベンゼン不溶性の」有機アルミニウムオキシ化合物とは、60℃のベンゼンに溶解する該化合物の溶解量が、Al原子換算で通常は10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である有機アルミニウムオキシ化合物をいう。また、特開平2−167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2−24701号公報、特開平3−103407号公報に記載されている2種以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に使用できる。
【0089】
本発明において、上記例示の有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
−メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(b−2)−
メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(b−2)(以下、「イオン性化合物(b−2)」と略称する場合がある。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、特開2004−51676号公報、米国特許5321106号明細書などに記載された、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が例示される。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も例示される。これらの中では、イオン性化合物(b−2)としては、下記一般式(9)で表される化合物が好ましい。
【0090】
【化12】
【0091】
式(9)において、Re+としては、H+、オキソニウムカチオン、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンが例示される。Rf、Rg、RhおよびRiはそれぞれ独立に有機基、好ましくはアリール基、ハロゲン含有アリール基を示す。
【0092】
上記カルベニウムカチオンとしては、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンが例示される。
【0093】
上記アンモニウムカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n−プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンが例示される。
【0094】
上記ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンが例示される。
【0095】
e+としては、上記例示の中では、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、トリフェニルカルベニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0096】
1.Re+がカルベニウムカチオンの場合(カルベニウム塩)
カルベニウム塩としては、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4−メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが例示される。
【0097】
2.Re+がアンモニウムカチオンの場合(アンモニウム塩)
アンモニウム塩としては、トリアルキルアンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩が例示される。
【0098】
トリアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレートが例示される。
【0099】
N,N−ジアルキルアニリニウム塩としては、具体的には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが例示される。
【0100】
ジアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートが例示される。
【0101】
イオン性化合物(b−2)は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
−有機アルミニウム化合物(b−3)−
有機アルミニウム化合物(b−3)としては、下記一般式(10)で表される有機アルミニウム化合物、下記一般式(11)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物が例示される。
【0102】
amAl(ORbnpq ・・・(10)
式(10)において、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。
【0103】
2AlRa4 ・・・(11)
式(11)において、M2はLi、NaまたはKを示し、複数あるRaはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。
【0104】
上記式(10)で表される有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
一般式(i−C49xAly(C510z(式中、x、yおよびzは正の数であり、z≦2xである。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
一般式Ra2.5Al(ORb0.5(式中、RaおよびRbは式(10)中のRaおよびRbと同義である。)で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムが例示される。
【0105】
また、上記式(11)で表される錯アルキル化物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154が例示される。また、錯アルキル化物(11)に類似する化合物も使用することができ、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物が例示される。このような化合物としては、(C252AlN(C25)Al(C252が例示される。
【0106】
有機アルミニウム化合物(b−3)としては、入手が容易な点から、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。また、有機アルミニウム化合物(b−3)は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0107】
《担体(C)》
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、担体(C)をさらに含んでいても良い。担体(C)は、無機化合物または有機化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
【0108】
−無機化合物−
上記無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土鉱物、粘土(通常は該粘土鉱物を主成分として構成される。)、イオン交換性層状化合物(大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。)が例示される。
【0109】
上記多孔質酸化物としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2;これらの酸化物を含む複合物または混合物が例示される。前記複合物または混合物としては、天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23、SiO2−TiO2−MgOが例示される。これらの中では、SiO2およびAl23の何れか一方または双方の成分を主成分とする多孔質酸化物が好ましい。
【0110】
上記多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、粒径が好ましくは10〜300μm、より好ましくは20〜200μmの範囲にあり;比表面積が好ましくは50〜1000m2/g、より好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり;細孔容積が好ましくは0.3〜3.0cm3/gの範囲にある。このような多孔質酸化物は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0111】
上記無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2が例示される。上記無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に上記無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させた成分を用いることもできる。
【0112】
上記粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。なお、上記イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有されるイオンが交換可能な化合物である。
【0113】
具体的には、上記粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、合成雲母などのウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ヘクトライト、テニオライト、ハロイサイトが例示され;イオン交換性層状化合物としては、六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物が例示される。具体的には、イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO42・H2O、α−Zr(HPO42、α−Zr(KPO42・3H2O、α−Ti(HPO42、α−Ti(HAsO42・H2O、α−Sn(HPO42・H2O、γ−Zr(HPO42、γ−Ti(HPO42、γ−Ti(NH4PO42・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩が例示される。
【0114】
上記粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理としては、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理が例示される。
【0115】
また、上記イオン交換性層状化合物は、そのイオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した層状化合物としてもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常はピラーと呼ばれる。例えば、層状化合物の層間に下記金属水酸化物イオンをインターカレーションした後に加熱脱水することにより、層間に酸化物支柱(ピラー)を形成することができる。なお、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。
【0116】
インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物;Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など);[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+などの金属水酸化物イオンが例示される。これらのゲスト化合物は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0117】
また、上記ゲスト化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)を加水分解および重縮合して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。
【0118】
上記無機化合物の中では、粘土鉱物および粘土が好ましく、モンモリロナイト群、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライトおよび合成雲母が特に好ましい。
−有機化合物−
上記有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状または微粒子状の固体が例示される。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜14のオレフィンを主成分として合成される(共)重合体;ビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として合成される(共)重合体;これら(共)重合体の変成体が例示される。
【0119】
《有機化合物成分(D)》
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、有機化合物成分(D)をさらに含んでいても良い。有機化合物成分(D)は、必要に応じて、オレフィンの重合反応における重合性能およびオレフィン重合体の物性を向上させる目的で使用される。有機化合物成分(D)としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、スルホン酸塩が例示される。
〔オレフィン〕
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、オレフィン重合用触媒の存在下にオレフィンを重合することを特徴とするものであり、これによりオレフィン(共)重合体が得られる。
【0120】
ここで、該オレフィン(共)重合体の原料として、炭素数2以上のオレフィンが用いられる。このオレフィンは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本発明において用いられるオレフィンは、炭素数が2以上、好ましくは3以上、より好ましくは3〜20、さらに好ましくは3〜10である。また、直鎖状または分岐状のα−オレフィンであることが好ましい。
【0121】
上記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが例示される。これらの中では、プロピレンが特に好ましい。
【0122】
また、本発明では、上記オレフィン重合体の原料として、上記オレフィンとともに、炭素数3〜30、好ましくは3〜20の環状オレフィン、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン;
極性モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などのα,β−不飽和カルボン酸;該α,β−不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−n−ブチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどの不飽和グリシジルなどを用いてもよい。
【0123】
また、ビニルシクロヘキサン、ジエン、ポリエン;芳香族ビニル化合物、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−n−ブチルスチレン、m−n−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレンなどを反応系に共存させて重合を進めることもできる。
【0124】
本発明の好ましい実施態様では、モノマーとして用いられる上記オレフィンとして、プロピレンを含有するオレフィンを用いることができる。すなわち、この実施態様においては、上記オレフィンの少なくとも一部にプロピレンを用いる。例えば、上記オレフィン100モル%に対して、プロピレンの使用割合は60〜100モル%であることが好ましく、70〜100モル%であることがより好ましい。また、得られた重合体においては、13CNMRを用いて測定したプロピレンの割合が60〜100モル%であることが好ましく、70〜100モル%であることがより好ましい。
〔オレフィン重合体の製造条件〕
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法において、重合温度は特に限定されるものではなく、通常―100〜250℃、好ましくは40〜200℃、より好ましくは45〜150℃、特に好ましくは50〜150℃(換言すれば、特に好ましくは工業化可能な温度である。)である。また、重合圧力は、通常は常圧〜10MPa−G(ゲージ圧)、好ましくは常圧〜5MPa−Gの範囲にある。上記モノマーの少なくとも一部がプロピレンである場合、生産性の観点から、重合温度は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることが更に好ましくは、60〜150℃であることが特に好ましい。
【0125】
また、重合反応は、回分式、半連続式および連続式の何れの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
オレフィン重合体の融点は、重合温度を変化させることによって調節することができる。
【0126】
また、オレフィン重合体の分子量は、例えば重合反応系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、オレフィン重合体の分子量は、オレフィン重合用触媒の成分として用いられる化合物(B)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
【0127】
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法において、重合の際には、メタロセン化合物(A)および化合物(B)などのオレフィン重合用触媒の各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
【0128】
(1)メタロセン化合物(A)および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法;(2)メタロセン化合物(A)を担体(C)に担持させた触媒成分、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法;(3)化合物(B)を担体(C)に担持させた触媒成分、およびメタロセン化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法;(4)メタロセン化合物(A)と化合物(B)とを担体(C)に担持させた触媒成分を重合器に添加する方法。
【0129】
上記(1)〜(4)の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2つは予め接触されていてもよい。化合物(B)が担体(C)に担持されている上記(3)、(4)の各方法においては、必要に応じて担持されていない化合物(B)を、任意の順序で重合器に添加してもよい。この場合、担体(C)に担持されている化合物(B)と担持されていない化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0130】
また、担体(C)にメタロセン化合物(A)が担持された固体触媒成分、担体(C)にメタロセン化合物(A)および化合物(B)が担持された固体触媒成分には、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
【0131】
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法では、上記オレフィン重合用触媒の存在下に、1種または2種以上の上記オレフィンを単独重合または共重合することによりオレフィン重合体を得る。本発明では、重合は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合法;気相重合法の何れにおいても実施できる。
【0132】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素溶媒としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が例示される。また、これらの不活性炭化水素溶媒は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、オレフィン重合体の原料として用いられるオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0133】
−オレフィン重合用触媒の構成−
(1)上記オレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、メタロセン化合物(A)は、反応容積1リットル当り、通常は10-9〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルとなるような量で用いられる。
【0134】
(2)オレフィン重合用触媒の成分として有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)を用いる場合には、該化合物(b−1)は、該化合物(b−1)とメタロセン化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b−1)/M〕が、通常は0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。
【0135】
(3)オレフィン重合用触媒の成分としてイオン性化合物(b−2)を用いる場合には、該化合物(b−2)は、該化合物(b−2)とメタロセン化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b−2)/M〕が、通常は1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0136】
(4)オレフィン重合用触媒の成分として有機アルミニウム化合物(b−3)を用いる場合には、該化合物(b−3)は、該化合物(b−3)中のアルミニウム原子(Al)と、メタロセン化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔Al/M〕が、通常は10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。
【0137】
(5)オレフィン重合用触媒の成分として有機化合物成分(D)を用いる場合には、化合物(B)が有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)であるときは、有機化合物成分(D)と該化合物(b−1)とのモル比〔(D)/(b−1)〕が、通常は0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で;化合物(B)がイオン性化合物(b−2)であるときは、有機化合物成分(D)と該化合物(b−2)とのモル比〔(D)/(b−2)〕が、通常は0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で;化合物(B)が有機アルミニウム化合物(b−3)であるときは、有機化合物成分(D)と該化合物(b−3)とのモル比〔(D)/(b−3)〕が、通常は0.01〜2、好ましくは0.05〜1となるような量で用いられる。
〔オレフィン重合体〕
以上記載の本発明によれば、プロピレンなどのオレフィンを重合する場合に、低い重合温度条件においてのみならず高い重合温度条件においても、十分に高い立体規則性を有し、かつ高い分子量を有するオレフィン重合体を製造することができる。
【0138】
以下では、プロピレン単独重合体またはプロピレンとプロピレン以外のオレフィンとの共重合体の場合(上記モノマーの少なくとも一部がプロピレンである場合)における前記プロピレン重合体の物性を説明する。
【0139】
上記プロピレン重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)は、通常は90,000以上、好ましくは97,000以上、より好ましくは100,000以上、さらに好ましくは100,000〜1,000,000である。上記プロピレン重合体のMWD(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、通常は1.0〜10、好ましくは2.5〜10、より好ましくは2.6〜10、さらに好ましくは2.8〜10である。
【0140】
上記プロピレン重合体の極限粘度[η]は、好ましくは1.20dl/g以上、より好ましくは1.25dl/g以上、さらに好ましくは1.35dl/g以上である。極限粘度[η]の上限は、通常は10dl/g程度である。
【0141】
重量平均分子量(Mw)や分子量の指標である極限粘度[η]が上記範囲にあるプロピレン重合体は、溶融押出時の安定性に優れる。
上記プロピレン重合体のDSCにより求められる融点(Tm)は、通常は140℃以上、好ましくは145〜170℃、より好ましくは150〜170℃である。融点(Tm)が前記範囲にあるプロピレン重合体は、成型加工性に優れる。また比較的高い耐熱性を示す。
【0142】
上記プロピレン重合体のDSCにより求められる結晶化温度(Tc)は、通常は70℃以上、より好ましくは80〜150℃、より好ましくは85〜130℃、特に好ましくは100〜130℃である。結晶化温度(Tc)が前記範囲にあるプロピレン重合体は、成型加工性に優れる。また比較的高い耐熱性を示す。
【0143】
なお、本発明において、オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、極限粘度[η]、融点(Tm)および結晶化温度(Tc)は、実施例に記載の条件において測定される値である。
【0144】
一般的にオレフィン重合時の重合温度を上げると、オレフィン重合体の融点および分子量は低下する。上記オレフィン重合用触媒によれば、工業化可能な温度においても、融点(Tm)が150℃以上であり、重量平均分子量(Mw)が100,000以上、かつ分子量分布(Mw/Mn)が2.5以上であるオレフィン重合体を製造できる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。最初に、オレフィン重合体の物性・性状を測定する方法について述べる。
【0146】
〔融点(Tm)、結晶化温度(Tc)〕
オレフィン重合体の融点(Tm)あるいは結晶化温度(Tc)は、パーキンエルマー社製DSC Pyris1またはDSC7を用い、以下のようにして測定した。
【0147】
窒素雰囲気下(20mL/min)、試料(約5mg)を(1)230℃まで昇温して230℃で10分間保持し、(2)10℃/分で30℃まで冷却して30℃で1分間保持した後、(3)10℃/分で230℃まで昇温させた。前記(3)の昇温過程における結晶溶融ピークのピーク頂点から融点(Tm)を、前記(2)の降温過程における結晶化ピークのピーク頂点から結晶化温度(Tc)を算出した。
【0148】
なお、実施例および比較例に記載したオレフィン重合体において、複数の結晶溶融ピークが観測された場合には、最も高温側のピークをオレフィン重合体の融点(Tm)と定義した。
【0149】
〔極限粘度[η]〕
オレフィン重合体の極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。すなわち、オレフィン重合体の造粒ペレット(約20mg)をデカリン溶媒(15mL)に溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒(5mL)を追加して希釈した後、前記と同様に比粘度ηspを測定する。この、デカリン溶媒(5ml)を追加する希釈操作をさらに2回繰り返し、オレフィン重合体の濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値をオレフィン重合体の極限粘度[η]とした。
【0150】
極限粘度[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)〕
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC-2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムはTSKgel GNH6-HT:2本およびTSKgel GNH6-HTL:2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)と酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%とを用い、前記移動相は1.0mL/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。検量線を作成する為の標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。分子量分布および各種平均分子量は、汎用校正の手順に従い、ポリプロピレン分子量換算として計算された。
【0151】
〔目的物の同定〕
合成例で得られた化合物の構造は、270MHz 1H−NMR(日本電子GSH−270)およびFD−MS(日本電子SX−102A)を用いて決定した。
【0152】
[合成例1]
ビス(3,6-ジ-tert-ブチル-2,7-ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドの合成
窒素気流下、2,7−ジフェニル−3,6−ジ−tert−ブチルフルオレン4.0g(9.3mmol)、ジエチルエーテル30mlを反応器に加え、反応器を−45℃に冷却し攪拌させながら1.65Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液5.6mL(9.3mmol)滴下した。滴下後、1時間30分で室温まで昇温させた。反応器を再び−45℃に冷却し攪拌させながら、四塩化ジルコニウム1.0g(4.3mmol)を加え、徐々に昇温させながら24時間攪拌させた。減圧濃縮を行い、ヘキサンを加え、ろ過を行い、得られた有機層を減圧濃縮した。ペンタン、ジエチルエーテルで再結晶を行い、ペンタンで洗浄しビス(3,6-ジ-tert-ブチル-2,7-ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを得た(収量0.5g)。1H NMRスペクトル及びFD−MSスペクトルの測定値を以下に示す。
【0153】
1H-NMR(CDCl3, ppm);1.2(36H), 6.3(2H), 6.7-7.3(22H), 7.9(4H)
FD-MS: 1021
[実施例1]
十分に窒素置換した内容積15mlのSUS製オートクレーブに、シクロヘキサンとヘキサンを9:1で混合した溶媒2.9mLを入れ、600回転/分にて攪拌した。溶液を50℃に昇温し、次いでプロピレンで全圧が7barになるまで加圧した。窒素雰囲気下、シュレンク管に合成例1で得られたメタロセン錯 3.4mgを加え脱水トルエン7.3mLに溶解させ0.00050Mのメタロセン溶液を調製した。修飾メチルアルモキサンの懸濁液0.47mL(n−ヘキサン溶媒、アルミニウム原子換算で4.15M、1.95mmol)を加え、室温で30分間攪拌し、触媒溶液を調製した。オートクレーブにトリイソブチルアルミニウム0.2mL(0.05M、10μmol)、触媒溶液0.2mL(0.00050M、0.10μmol)、シクロヘキサンとヘキサンを9:1で混合した溶媒0.7mLを加え重合を開始した。50℃で10分間重合した後、少量のイソブチルアルコールを加えて重合を停止した。メタノール50mL、少量の塩酸水溶液を加え、室温にて1時間攪拌した。ろ過し、減圧乾燥してポリマー 42.3mgを得た。重合活性は2.54kg/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は3.88、重量平均分子量(Mw)は427000、数平均分子量(Mn)は143000、分子量分布(Mw/Mn)は2.98、結晶化温度(Tc)は109.1℃、融点(Tm)は157.3℃であった。


【0154】
[実施例2]
重合温度を65℃にした以外は実施例1と同様に行い、ポリマー 26.8mgを得た。重合活性は1.61kg/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は2.56、重量平均分子量(Mw)は261000、数平均分子量(Mn)は61900、分子量分布(Mw/Mn)は4.22、結晶化温度(Tc)は103.8℃、融点(Tm)は150.1℃であった。
【0155】
[比較例1]
錯体としてビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は実施例1同様に行ったが、ろ過後に固体は得られなかった。これは重合体が得られなかったか、得られた重合体の分子量が極めて低いか、立体規則性が低いためと考えられる。
【0156】
[参考例1]
錯体としてジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は実施例1同様に行い、ポリマー 804mgを得た。重合活性は32.2kg/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は1.64、重量平均分子量(Mw)は146000、数平均分子量(Mn)は73000、分子量分布(Mw/Mn)は2.0、結晶化温度(Tc)は95℃、融点(Tm)は139℃であった。
【0157】
実施例1、2、および比較例1の結果を表3にまとめた。
【0158】
【表3】