特許第5979925号(P5979925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979925
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ワイパ装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/34 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B60S1/34 B
   B60S1/34 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-60697(P2012-60697)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-193517(P2013-193517A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】正田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】木村 正秋
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0265832(US,A1)
【文献】 特開平08−198060(JP,A)
【文献】 特開平11−048917(JP,A)
【文献】 特開2010−246261(JP,A)
【文献】 特開2001−080468(JP,A)
【文献】 特開2001−018760(JP,A)
【文献】 特開平09−086348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00−60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のガラスを払拭するように揺動運動するワイパアームと、電動モータの動力を前記ワイパアームに伝達する動力伝達軸と、この動力伝達軸を回転可能に支持する軸支持部と、この軸支持部を前記車両の構造体に固定する固定機構と、前記軸支持部を有し、かつ、前記電動モータ及び前記動力伝達軸を収容したケーシングと、前記電動モータを制御する制御回路を形成した制御基板と、を有するワイパ装置であって、
前記制御基板は、前記ケーシングの内部に収容され、
前記軸支持部は、前記固定機構の一部を構成し
前記固定機構は、
前記軸支持部の外周面に前記動力伝達軸の軸線と同軸に形成される雄ねじ部と、
前記雄ねじ部に取り付けられる雌ねじ部を備えたナットと、
を有し、
前記ケーシングには、前記動力伝達軸の軸線に対して垂直な平面内で、前記軸支持部の周囲を取り囲むように配置されるとともに、前記動力伝達軸に沿った方向に突出されたマウント部が複数設けられ、
前記動力伝達軸に沿った方向で、前記軸支持部と前記構造体との間、及び前記複数のマウント部の先端と前記構造体との間に、前記電動モータの回転により発生する振動が前記構造体に伝達されることを抑制する振動減衰部材が、それぞれ介在されていることを特徴とするワイパ装置。
【請求項2】
請求項1記載のワイパ装置において、前記軸線と交差する平面内で、前記軸支持部と前記構造体とを前記軸線を中心として位置決めする位置決め機構が設けられていることを特徴とするワイパ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のワイパ装置において、
前記ワイパアームは、前記軸線方向における前記構造体の上方で前記動力伝達軸に取り付けられ、
前記ケーシングは、前記軸線方向で前記構造体の下方に配置されていることを特徴とするワイパ装置。
【請求項4】
請求項記載のワイパ装置において、
前記位置決め機構は、
前記複数のマウント部の先端と前記構造体との間に介在された前記振動減衰部材に固定した円筒形状のカラーと、
前記複数のマウント部材にそれぞれ固定され、かつ、前記カラー内に挿入された位置決めピンと、
を有することを特徴とするワイパ装置。
【請求項5】
請求項記載のワイパ装置において、
前記位置決め機構は、
前記複数のマウント部の先端と前記構造体との間に介在された前記振動減衰部材に固定した円筒形状のカラーと、
前記カラー内に挿入され、かつ、前記複数のマウント部材に設けた雌ねじ孔にねじ込まれるボルトと、
を有することを特徴とするワイパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの動力によりワイパアームを揺動運動させることにより、車両のガラスを払拭するように構成されたワイパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、ガラスに付着した雨水、雪、埃等の付着物を払拭して、運転者の視界を確保するためのワイパ装置が設けられている。ワイパ装置は、動力を発生する電動モータと、電動モータの動力が伝達されて所定角度の範囲内で揺動してガラスを払拭するワイパアームとを有している。このようなワイパ装置の一例が、特許文献1、特許文献2に記載されている。
【0003】
まず、特許文献1に記載されたワイパ装置は、ワイパモータ(電動モータ)の動力が、減速部を経由して出力軸に伝達されるように構成されている。出力軸には、クランクアームを介して第1リンクロッドが動力伝達可能に接続されている。第1リンクロッドは第1ピボットレバーに接続されており、第1ピボットレバーは第1ピボット軸(動力伝達軸)に連結されている。この第1ピボット軸にワイパアームが取り付けられる。第1ピボット軸は第1支承部(軸支持部)により回転可能に支持されている。第1支承部には第1延出部(ブラケット)が設けられており、第1延出部は、取り付けボルトによって車体(構造体)に固定されている。一方、第1ピボットレバーは第2リンクロッドを介して第2ピボットレバーに連結されている。第2ピボットレバーは第2ピボット軸(動力伝達軸)に連結されており、第2ピボット軸は第2支承部(軸支持部)により回転可能に支持されている。この第2ピボット軸にワイパアームが取り付けられる。さらに、第2支承部には第2延出部(ブラケット)が設けられており、第2延出部は、取り付けボルトによって車体に固定されている。
【0004】
一方、特許文献2に記載されたワイパ装置は、モータ本体(電動モータ)にギヤハウジング(軸支持部)が固定されている。ギヤハウジングは、モータ本体の回転軸と、回転軸の回転速度を減速して出力軸(動力伝達軸)に動力を伝達するギヤとを収容している。出力軸はギヤハウジングの外部に露出しており、出力軸にはクランクアーム、リンク部材を介してワイパアームが連結されている。また、ギヤハウジングは固定足(ブラケット)を有しており、固定足はボルトにより車体(構造体)に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−145223号公報
【特許文献2】特開2009−166682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1、2に記載されたワイパ装置は、動力伝達軸を回転可能に支持する軸支持部を、ブラケット、ボルト等のような専用の固定機構により構造体に固定する構造となっている。このため、ワイパ装置の部品点数が増加する問題があった。
【0007】
本発明の目的は、軸支持部を車両の構造体に固定するにあたり、部品点数が増加することを抑制可能なワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイパ装置は、車両のガラスを払拭するように揺動運動するワイパアームと、電動モータの動力を前記ワイパアームに伝達する動力伝達軸と、この動力伝達軸を回転可能に支持する軸支持部と、この軸支持部を前記車両の構造体に固定する固定機構と、前記軸支持部を有し、かつ、前記電動モータ及び前記動力伝達軸を収容したケーシングと、前記電動モータを制御する制御回路を形成した制御基板と、を有するワイパ装置であって、前記制御基板は、前記ケーシングの内部に収容され、前記軸支持部は、前記固定機構の一部を構成し、前記固定機構は、前記軸支持部の外周面に前記動力伝達軸の軸線と同軸に形成される雄ねじ部と、前記雄ねじ部に取り付けられる雌ねじ部を備えたナットと、を有し、前記ケーシングには、前記動力伝達軸の軸線に対して垂直な平面内で、前記軸支持部の周囲を取り囲むように配置されるとともに、前記動力伝達軸に沿った方向に突出されたマウント部が複数設けられ、前記動力伝達軸に沿った方向で、前記軸支持部と前記構造体との間、及び前記複数のマウント部の先端と前記構造体との間に、前記電動モータの回転により発生する振動が前記構造体に伝達されることを抑制する振動減衰部材が、それぞれ介在されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のワイパ装置は、前記軸線と交差する平面内で、前記軸支持部と前記構造体とを前記軸線を中心として位置決めする位置決め機構が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明のワイパ装置は、前記ワイパアームは、前記軸線方向における前記構造体の上方で前記動力伝達軸に取り付けられ、前記ケーシングは、前記軸線方向で前記構造体の下方に配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のワイパ装置は、前記位置決め機構は、前記複数のマウント部の先端と前記構造体との間に介在された前記振動減衰部材に固定した円筒形状のカラーと、前記複数のマウント部材にそれぞれ固定され、かつ、前記カラー内に挿入された位置決めピンと、を有することを特徴とする。
本発明のワイパ装置は、前記位置決め機構は、前記複数のマウント部の先端と前記構造体との間に介在された前記振動減衰部材に固定した円筒形状のカラーと、前記カラー内に挿入され、かつ、前記複数のマウント部材に設けた雌ねじ孔にねじ込まれるボルトと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明(請求項1)のワイパ装置によれば、動力伝達軸を回転可能に支持する軸支持部は、固定機構の一部を構成しているため、専用の固定機構を設ける必要がなく、部品点数の増加を抑制できる。また、ケーシングの内部に動力伝達軸及び制御基板を共に収容することができ、制御基板専用のケーシングを設ける必要がない。また、軸支持部の外周に動力伝達軸の軸線と同軸に形成された雄ねじ部と、雄ねじ部に取り付けられる雌ねじ部を備えたナットとにより、軸支持部が構造体に固定されている。したがって、軸支持部の軸線を中心とする半径方向に延ばされた固定機構を設ける必要がなく、構造を簡略化することができ、ワイパ装置のレイアウト性が向上する。さらに、電動モータの回転により発生する振動が振動減衰部材により減衰されるため、構造体に振動が伝達されることを抑制できる。
【0015】
本発明(請求項)のワイパ装置によれば、軸線に対して垂直な平面内で、軸支持部と構造体とを軸線を中心として位置決めすることができる。
【0016】
本発明(請求項)のワイパ装置によれば、ワイパアームは、軸線方向で構造体の上方で前記動力伝達軸に取り付けられ、ケーシングは、軸線方向で構造体の下方に配置される。
【0017】
本発明(請求項)のワイパ装置によれば、位置決めピンがカラー内に挿入されて、構造体に対してケーシングが位置決めされる
本発明(請求項5)のワイパ装置によれば、ボルトがカラー内に挿入されてマウント部の雌ねじ孔にねじ込まれ、構造体に対してしてケーシングが位置決めされる
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態におけるワイパ装置を示す側面断面図である。
図2】本実施形態におけるワイパ装置の模式的な斜視図である。
図3】本実施形態におけるワイパ装置の要部を示す断面図である。
図4】本実施形態におけるワイパ装置の分解斜視図である。
図5】本実施形態におけるワイパ装置の他の具体例を示す斜視図である。
図6図5に示すワイパ装置の平面図である。
図7】本実施形態におけるワイパ装置のさらに他の具体例を示す断面図である。
図8】本実施形態におけるワイパ装置のさらに他の具体例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、図1図4を用いて詳細に説明する。図1図2に示すように、ワイパ装置10は、フロントガラス(図示せず)を払拭するワイパアーム11と、ワイパアーム11を揺動させる動力を発生する電動モータ12とを有する。その電動モータ12はステータ12a及びロータ12bを有する。ステータ12aは、通電により回転磁界を形成する電磁コイル(図示せず)を有する。ロータ12bは、ステータ12aの内側に配置されており、ロータ12bは、回転軸12cと、回転軸12cに取り付けた永久磁石12dとを有する。回転軸12cの外周にはウォーム(図示せず)が形成されている。
【0020】
また、電動モータ12を収容する中空のモータケース13が設けられており、モータケース13はハウジング14に固定されている。ハウジング14は、金属材料または樹脂材料などにより構成されている。回転軸12cのうちウォームが形成された部分はハウジング14内に配置されている。ハウジング14内には、ウォームに噛合されたウォームホイール(図示せず)が設けられている。また、ウォームホイールは、ピボット軸15と一体回転するように構成されている。
【0021】
前記ウォーム及びウォームホイールにより、減速機構が構成されている。この減速機構は、電動モータ12のトルクをピボット軸15に伝達するにあたり、回転軸12cの回転速度よりもピボット軸15の回転速度を低速として、トルクを増幅させるための機構である。さらに、ピボット軸15の回転中心である軸線Aに沿った方向の一部はハウジング14内に配置されており、ハウジング14内にはピボット軸15を回転可能に支持する軸受(図示せず)が設けられている。
【0022】
一方、ハウジング14には開口部が設けられており、開口部を塞ぐカバー16が設けられている。カバー16の内部には制御基板17が設けられている。制御基板17は、電動モータ12の回転軸12cの停止及び回転、回転数、回転方向などを制御するものであり、制御基板17には制御回路(図示せず)が形成されている。制御回路は、電磁コイルへの通電・非通電を切り替えるスイッチング素子、CPU、ROM、RAM等を有する公知のものである。そして、車両の室内に設けられたワイパスイッチの操作信号が、制御回路に入力されるように構成されている。
【0023】
さらに、図3図4のように、ハウジング14は筒形状の軸支持部14aを有する。軸支持部14aの内周には円筒部材18が固定されており、ピボット軸15が円筒部材18により回転可能に支持されている。ピボット軸15の一部は、ハウジング14の外部に露出している。ピボット軸15のうちハウジング14の外部に露出している部分の先端には雄ねじ部15aが形成されている。また、ハウジング14には、軸線Aに沿った方向に突出されたマウント部14bが複数設けられている。複数のマウント部14bは、軸線Aに対して垂直な平面内で、軸支持部14aの周囲を取り囲むように配置されている。複数のマウント部14bにはそれぞれ軸孔14cが設けられている。軸孔14cの中心線(図示せず)は軸線Aと平行になっている。
【0024】
さらに、ワイパ装置10が取り付けられる車体パネル19が設けられている。車体パネル19は金属材料、例えば、機械構造用圧延鋼等により構成されており、ハウジング14、モータケース13、カバー16は、車体パネル19の下方に配置されている。車体パネル19には円形の孔19aが設けられており、孔19a内に軸支持部14aが挿入されている。また、ピボット軸15のうちハウジング14の外部に露出している部分は車体パネル19の上方に位置している。孔19aには環状のブッシュ20が取り付けられている。このブッシュ20は弾性部材、具体的にはゴム材料により構成されており、ブッシュ20内に軸支持部14aが挿入されている。また、図3において、ブッシュ20における車体パネル19よりも上側の端部には固定リング27が接触させられている。固定リング27の外径はブッシュ20の内径よりも大きく設定されている。
【0025】
一方、軸支持部14aの先端部分の外周には雄ねじ部14dが形成されている。その軸支持部14aにおける雄ねじ部14dが形成された部分は、固定リング27内に挿入されている。さらに、車体パネル19を厚さ方向に貫通する複数の孔19bが形成されている。軸線Aに対して垂直な平面内で、複数のマウント部14bに対応する位置に、複数の孔19bが配置されている。複数の孔19bにはブッシュ21がそれぞれ取り付けられている。ブッシュ21は、弾性部材、具体的にはゴム材料より構成された環状体である。ブッシュ21内には円筒形状のカラー22が固定されている。カラー22は金属材料により構成されている。
【0026】
そして、マウント部14bの軸孔14cには位置決めピン23が固定されており、その位置決めピン23の先端がカラー22内に挿入されている。このように、位置決めピン23がカラー22内に挿入されることにより、軸線Aに対して垂直な平面内で位置決めピン23と車体パネル19との係合力により、車体パネル19に対してハウジング14が位置決めされている。
【0027】
一方、軸支持部14aの雄ねじ部14dに取り付けて締め付けられたナット24が設けられている。ナット24は内周に雌ねじ部24aを有しており、ナット24の外径は固定リング27の内径よりも大きく設定されている。また、軸線Aに沿った方向において、ナット24とブッシュ20との間に固定リング27が配置されている。そして、マウント部14bの先端をブッシュ21に接触させた状態でナット24が締め付けられており、ブッシュ21が弾性変形してナット24の締め付けが完了した状態において、ハウジング14が車体パネル19に対して固定されている。ハウジング14が車体パネル19に固定された状態において、車体パネル19は軸線Aに対して垂直な平面に沿って配置されている。
【0028】
また、ピボット軸15にはピボットキャップ25が取り付けられている。ピボットキャップ25は、樹脂材料またはゴム材料により一体成形されたものである。ピボットキャップ25は、円板形状部25aと、円板形状部25aの外周端に連続して形成され、かつ、軸線Aに沿った方向に延ばされた円筒部25bとを有している。円板形状部25aは、ピボット軸15における雄ねじ部15aとナット24との間の外周に嵌め込まれている。そして、円筒部25bの自由端は車体パネル19の表面に接触しており、ピボットキャップ25により、ナット24、固定リング27が覆われている。なお、ピボット軸15の軸線Aを中心とする半径方向において、ピボットキャップ25の円筒部25bよりも外側に複数のブッシュ21が配置されている。
【0029】
さらに、ピボット軸15の先端にワイパアーム11が取り付けられている。ワイパアーム11はボス部11aを有しており、ボス部11aには雌ねじ部11bが形成されている。雌ねじ部11bがピボット軸15の雄ねじ部15aにねじ込まれて、ワイパアーム11がピボット軸15に固定されている。さらに、図3において車体パネル19の上面には、軸線Aに沿った方向に延ばされたストッパ26が設けられている。さらに、ハウジング14の内部には、ピボット軸15の回転数、回転角度、回転方向等を検知するセンサ(図示せず)が設けられており、そのセンサの信号が制御回路に入力されるように構成されている。
【0030】
本実施形態のワイパ装置10において、ワイパスイッチが操作されてワイパアーム11を揺動させる条件が成立すると、電動モータ12に電流が供給されて回転軸12cが正回転及び逆回転する動作を交互に繰り返す。回転軸12cのトルクがウォームホイールを経由してピボット軸15に伝達されると、ピボット軸15が、所定角度の範囲内で正回転及び逆回転する。その結果、ワイパアーム11は、ピボット軸15を中心とする所定角度の範囲内で揺動し、フロントガラスが払拭される。
【0031】
本実施形態においては、軸支持部14aの外周に設けられた雄ねじ部14dと、ナット24との締結力により、ハウジング14のマウント部14bが、ブッシュ21を介して車体パネル19に押し付けられて、ハウジング14が車体パネル19に固定されている。つまり、軸支持部14aはピボット軸15を回転可能に支持する機能と、ハウジング14を車体パネル19に固定する機能とを兼備している。このため、ハウジング14を車体パネル19に固定するために、専用の固定機構を設ける必要がない。
【0032】
具体的に説明すると、本実施形態のワイパ装置10は、軸支持部14aに雄ねじ部14dが形成されているため、ハウジング14を車体パネル19に固定するためのブラケット、ブラケットの孔に挿入するボルト、ボルトを挿入するための車体パネル側の孔等を専用で設ける必要がない。すなわち、軸支持部14aは、ハウジング14を車体パネル19に固定するための固定機構の一部を兼ねている。したがって、ワイパ装置10の部品点数が増加することを抑止できる。また、部品点数の増加を抑制できるため、ワイパ装置10の軽量化を図ることができ、構造の簡略化を図ることができ、製造コストの上昇を抑制できる。さらに、ハウジング14を、車体パネル19に固定するために、専用のボルトを挿入する孔を車体パネル19に設ける必要がなく、車体パネル19の強度低下を抑制できる。
【0033】
さらに、雄ねじ部14d、ナット24は軸線Aと同軸に配置されているため、軸線Aに対して垂直な平面内で、軸支持部14aの半径方向に延ばされた固定機構を配置する必要がない。したがって、ワイパ装置10の周囲の部品と、ワイパ装置10との干渉を抑制することができ、車体パネル19に対するワイパ装置10の取り付けレイアウトの自由度が向上する。
【0034】
さらに、複数のマウント部14bにそれぞれ固定された位置決めピン23が、複数のカラー22内に個々に挿入されることにより、軸線Aに対して垂直な平面内で、軸線Aを中心としてハウジング14と車体パネル19とが位置決めされている。したがって、電動モータ12が駆動されてワイパアーム11がピボット軸15を中心として所定角度の範囲内で揺動するときに、ワイパアーム11により払拭されるフロントガラスの払拭範囲を、目標とする払拭範囲と一致させることができる。
【0035】
さらに、ワイパ装置10を車体パネル19に組み付けるにあたり、組み付け作業性が向上する。なお、車種、グレードなどの条件により異なる電動モータを取り付ける構成とし、その電動モータの種類毎に、車体パネルに設ける孔の位置、マウント部の位置を異ならせるように設計しておけば、取り付けるべき電動モータを誤ること、すなわち、誤組み付けを防止できる。さらに、制御基板17、ピボット軸15、ウォームホイールが共にハウジング14及びカバー16により取り囲まれた空間内に配置されているため、制御基板17を収容する専用のケースを設ける必要がない。
【0036】
また、電動モータ12の作動時に振動が発生すると、ブッシュ20,21により振動が減衰されるため、その振動が車体パネル19に伝達されることを抑制できる。また、ワイパアーム11に大量の雪等の負荷が加わり、予め定められた揺動角度範囲を超えてピボット軸15を回転させるような力が生じても、ワイパアーム11がストッパ26に接触すると、ワイパアーム11がそれ以上回転することを防止できる。
【0037】
ここで、本実施形態で説明した構成と、本発明の構成との対応関係を説明すると、ピボット軸15が、本発明の動力伝達軸に相当し、車体パネル19が、本発明の構造体に相当し、雄ねじ部14d、雌ねじ部24aを有するナット24が、本発明の固定機構に相当する。また、位置決めピン23、孔19b、ブッシュ21、カラー22が、本発明の位置決め機構に相当する。さらに、ブッシュ20,21が、本発明の振動減衰部材に相当し、モータケース13、ハウジング14、カバー16が、本発明のケーシングに相当する。
【0038】
次に、本発明の他の具体例を、図5図6に基づいて説明する。図5図6において、ピボット軸15の周りに3つのマウント部14bが設けられている。3つのマウント部14bの先端(上端)には、ブッシュ28がそれぞれ固定されている。ブッシュ28は、弾性部材、具体的にはゴム材料により構成されている。なお、図5図6においては、ワイパアームは省略されている。図5図6におけるその他の構成部分は、図1から図4の具体例と同様である。図5図6の具体例では、ブッシュ28は、車体パネル19の下面に押し付けられている。すなわち、図示しないナットが締め付けられると、ブッシュ28が車体パネル19の下面に押し付けられて、ハウジング14が車体パネル19に固定されている。したがって、図1から図4の具体例と同様の効果を得られる。また、図5図6の具体例において、ハウジング14は、車体パネル19に対して、ピボット軸15を中心として円周方向の位置決めを行う必要がない。したがって、ハウジング14を車体パネル19に取り付ける際の取り付け作業性が向上する。
【0039】
また、図5、6の具体例においては、ピボット軸15にストッパ29が取り付けられている。このストッパ29は、ピボット軸15を中心として円弧形状に構成されている。ストッパ29は、ピボットキャップ25の外側に配置されている。ストッパ29はリング40の外周に連続して形成されており、そのリング40はピボット軸15に取り付けられている。リング40は、図3の固定リング27と一体化させるか、または固定リング27とブッシュ20との間に挟み付けられている。なお、固定リング27、ブッシュ20は、図5図6では示されていない。また、リング40は図3の軸支持部14aの外周に取り付けられる要素であるため、リング40と軸支持部14aとが相対回転しないように、回り止め機構が設けられている。なお、軸支持部14a、回り止め機構は、図5図6では示されていない。このストッパ29は、ストッパ26と同様の役割を果たす。
【0040】
さらに、他の具体例を図7図8に基づいて説明する。図7図8においては、マウント部14bに雌ねじ孔30が設けられている。一方、マウント部14bの先端(上端)にはブッシュ31が取り付けられている。ブッシュ31は、弾性部材、具体的にはゴム材料により構成されている。ブッシュ31は環状に構成されており、ブッシュ31の内側には円筒形状のカラー32が挿入されている。ブッシュ31は大径部31aと小径部31bとを有しており、大径部31aの外径は、小径部31bの外径よりも大きい。図7のように、ブッシュ31が弾性変形していない状態では、小径部31bの外径は孔19bの内径と同じである。また、大径部31aの外径は孔19bの内径よりも大きい。ブッシュ31の小径部31bは、車体パネル19の孔19b内に挿入されている。ブッシュ31の大径部31aがマウント部14bに固定されている。そして、カラー32内にボルト33が挿入されている。ボルト33は軸部33aに雄ねじが形成されており、軸部33aが雌ねじ孔30にねじ込まれている。ボルト33は、軸部33aに連続する頭部33bを有しており、軸部33aには、環状のワッシャ33cが取り付けられている。図5図6のブッシュ28、及び図7図8のブッシュ31が、本発明の振動減衰部材に相当し、図7図8のブッシュ31、カラー32、ボルト33が、本発明の位置決め機構に相当する。
【0041】
ボルト33の締め付けが完了していないと、図7のようにブッシュ31は弾性変形していない。これに対して、ボルト33の締め付けが完了すると、図8のようにワッシャ33cとマウント部14bとによりブッシュ31が挟まれて、小径部31bが主として弾性変形する。このためブッシュ31の小径部31bの外径は、孔19bの内径よりも大きくなっている。図7図8のその他の構成は、図1図4の具体例と同じであり、同様の効果を得られる。また、図7図8の具体例においては、図示しないナットを締め付けると、ブッシュ31の大径部31aが車体パネル19の下面に押し付けられて、ハウジング14が車体パネル19に固定される。したがって、図1図4の具体例と同様の効果を得られる。また、ブッシュ31が孔19bに挿入されており、ハウジング14と車体パネル19とが、ピボット軸を中心として相対回転することを防止できる。
【0042】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、車体パネルに位置決めピンを固定して設け、マウント部に軸孔を設けておき、位置決めピンを軸孔に挿入することにより、車体パネルに対してハウジングを位置決めする構成としてもよい。また、位置決めピンを軸孔に挿入することにより、車体パネルとハウジングとを位置決めする構成に加えて、位置決めピンの先端に雄ねじを形成しておき、その雄ねじにナットを取り付けて締め付けるように構成してもよい。
【0043】
また、図1図4の実施形態において説明したマウント部14b、ブッシュ21、位置決めピン23を設けない構成とすることもできる。この場合、軸支持部に、半径方向に張り出した環状のフランジ部を形成する。さらに、フランジ部よりも先端側に雄ねじ部を形成する。そして、図3において軸支持部を孔19aに挿入し、ナット24を雄ねじ部に取り付けて締め付けると、ナット24とフランジ部とにより、ブッシュ20、固定リング27が挟み付けられて、ハウジング14が車体パネル19に固定される。
【0044】
また、本実施形態では、ワイパアームがフロントガラスを払拭するワイパ装置に適用したものを示したが、ワイパアームでリヤガラスを払拭するワイパ装置に適用することもできる。また、上記実施形態は、ワイパアームを固定したピボット軸が、ウォームホイールと一体回転するように構成されたダイレクトドライブ型のワイパ装置である。
【0045】
これに対して、ウォームホイールと同軸に設けた出力軸と、ピボット軸とが平行に配置されており、出力軸とピボット軸とを、リンク、アーム、ギヤ等の動力伝達要素を介して動力伝達可能に連結したワイパ装置において、そのピボット軸を回転可能に支持した軸支持部を車体パネルに固定するための構造として、本発明を用いることもできる。さらにまた、出力軸とピボット軸とを、リンク、アーム、ギヤ等の動力伝達要素を介して動力伝達可能に連結したワイパ装置において、その出力軸を回転可能に支持した軸支持部を車体パネルに固定するための構造として、本発明を用いることもできる。
【0046】
さらに、運転席側または助手席側のいずれか一方のワイパアームを電動モータの動力により揺動可能とするとともに、その電動モータの動力を他方のワイパアームに伝達して揺動するように構成したデュアル型のワイパ装置において、他方のワイパアームをピボット軸を介して揺動可能に支持したフレームを車体パネルに固定するために、本発明を適用することもできる。さらに、動力伝達軸の軸線と車体パネルとは、所定の角度で交差するように配置されていればよい。また、本発明における動力伝達軸には、360度未満の所定角度範囲内で正逆回転(回動)するもの、または360度以上の範囲で一定方向に回転するものが含まれる。さらに、本発明の電動モータには、ブラシレスモータ、ブラシ付きモータが含まれる。また、本発明の固定機構には、雄ねじとナットとの組み合わせによるねじ構造(締結構造)が含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 ワイパ装置
11 ワイパアーム
11a ボス部
11b,24a 雌ねじ部
12 電動モータ
12a ステータ
12b ロータ
12c 回転軸
12d 永久磁石
13 モータケース
14 ハウジング
14a 軸支持部
14b マウント部
14c 軸孔
14d,15a 雄ねじ部
15 ピボット軸
16 カバー
17 制御基板
18 円筒部材
19 車体パネル
19a,19b 孔
20,21,28,31 ブッシュ
22,32 カラー
23 位置決めピン
24 ナット
25 ピボットキャップ
25a 円板形状部
25b 円筒部
26,29 ストッパ
27 固定リング
30 雌ねじ孔
31a 大径部
31b 小径部
33 ボルト
33a 軸部
33b 頭部
33c ワッシャ
A 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8