特許第5979958号(P5979958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979958
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】物干し装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 57/12 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   D06F57/12 A
   D06F57/12 L
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-103443(P2012-103443)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-230225(P2013-230225A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】593099104
【氏名又は名称】タカラ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津島 重弘
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3078020(JP,U)
【文献】 特開平09−173693(JP,A)
【文献】 特公平05−027765(JP,B2)
【文献】 実開昭63−132694(JP,U)
【文献】 特開2009−268867(JP,A)
【文献】 特開2007−054390(JP,A)
【文献】 実開平07−035601(JP,U)
【文献】 特開2012−045171(JP,A)
【文献】 特開2011−244970(JP,A)
【文献】 特開平07−008338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2本の支柱のそれぞれに取り付けられる物干し装置であって、
両端部をそれぞれ基端部及び開放端部とする長尺体であって前記基端部と前記開放端部との間に物干し竿を保持する少なくとも1つの保持部を有するアームと、
前記対向する2本の支柱のそれぞれの垂直面に背面を当接させて固定され、所定の回転角度範囲で前記基端部を回転自在に支持する支持部材と、
前記支持部材に対する前記アームの前記基端部の回転に常に制動力を作用させる制動部材と、
を備え
前記アームは、前記基端部に段部を有する貫通孔が配置され、
前記制動部材は、前記貫通孔の前記段部を押圧して前記アームの前記基端部の回転を規制する物干し装置。
【請求項2】
前記支持部材は、正面側に突出するボス部であって前記基端部が外嵌するボス部を備え、
前記制動部材は、前記ボス部に前記支持部材の正面側から固定されるキャップと、前記ボス部に外嵌する皿バネであって前記基端部と前記キャップとの間に位置する皿バネと、を備えた請求項1に記載の物干し装置。
【請求項3】
前記支持部材の正面における前記ボス部の周囲と前記アームの前記基端部の背面とのうち、何れか一方には前記所定の回転角度範囲に対応した円弧状の溝部を形成し、他方には前記溝部に嵌入する突起を形成した請求項1又は2に記載の物干し装置。
【請求項4】
記溝部の少なくとも一方の端部に前記ボス部の半径方向に延出した延出部を有し、
前記延出部は、前記溝部における前記アームの回転を規制し、
前記支持部材は、前記ボス部材が前記溝部及び前記延出部を前記半径方向に沿って移動自在に支持する請求項3に記載の物干し装置。
【請求項5】
前記所定の回転角度範囲は、前記アームをその長手方向が垂直となる収納位置と水平方向に傾斜した露出位置とを両端とする請求項1乃至4の何れかに記載の物干し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2本の柱における互いに対向する垂直面に固定されて、物干し竿を保持する物干し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物干し竿を保持する物干し装置として、支持部材とアーム部材とを備えたものがある。(例えば、特許文献1参照。)支持部材を壁面や支柱等の垂直面に固定し、この支持部材に対してアーム部材をその基端部を中心に垂直面内で回転自在に支持させる。
【0003】
物干し竿を保持するアーム部材は、例えば、斜め上方に傾斜した状態の露出位置と垂直状態の収納位置のそれぞれで選択的に固定できるようにされている。露出位置にあるアーム部材に物干し竿を保持させる一方、アーム部材を収納位置に位置させることで不使用時の収納スペースを小型化できる。
【0004】
特に、カーポートの支柱やベランダの手摺りの支柱等の2本の柱における互いに対向する垂直面に支持部材を固定した場合、不使用時にアーム部材を収納位置に位置させることで物干し装置全体が支柱の幅内に配置され、スペースを有効活用できるとともに、外観を煩雑にすることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−244970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の物干し装置では、アーム部材の基端部が支持部材に対して自由に回転できる状態で支持されているため、少なくとも露出位置との収納位置とを含む複数の位置でアーム部材の回転を規制する機構が必要になり、構造が複雑化する。また、アーム部材を収納位置から露出位置に移動させる際に、使用者が誘導しないとアーム部材が自重によって規制部に当接し、大きな衝撃音を生じるだけでなく、装置の破損の原因ともなる。
【0007】
この発明の目的は、アーム部材が支持部材に対して自由に回転することがないようにし、構造の複雑化を防止できるとともに、アーム部材が自重によって規制部と当接しないようにして衝撃音の発生や装置の破損を防止できる物干し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の物干し装置は、アーム、支持部材及び制動部材を備えている。アームは、両端部をそれぞれ基端部及び開放端部とする長尺体であって基端部と開放端部との間に物干し竿を保持する少なくとも1つの保持部を有している。支持部材は、垂直面に背面を当接させて固定され、所定の回転角度範囲でアームの基端部を回転自在に支持する。制動部材は、支持部材に対するアームの基端部の回転に常に制動力を作用させる。
【0009】
この構成により、アームは、所定の回転角度範囲内を移動する際に、常に制動部材から制動力の作用を受ける。アームの所定の回転角度範囲内における移動速度が低減され、所定の回転角度範囲の終端で停止する際の衝撃が緩和される。
【0010】
この構成において、支持部材は正面側に突出するボス部であってアームの基端部が外嵌するボス部を備え、制動部材はボス部に支持部材の正面側から固定されるキャップと、ボス部に外嵌する皿バネであってアームの基端部とキャップとの間に位置する皿バネと、を備えたものとすることが好ましい。アームの基端部の回転に対する制動力を簡単な構成で確実に作用させることができる。
【0011】
また、支持部材の正面におけるボス部の周囲とアームの基端部の背面とのうち、何れか一方には所定の回転角度範囲に対応した円弧状の溝部を形成し、他方には部に嵌入する突起を形成することが好ましい。アームの基端部の回転角度範囲を簡単な構成で所定の範囲に規定することができる。
【0012】
さらに、溝部の少なくとも一方の端部にボス部の半径方向に延出した延出部を形成するとともに、ボス部を支持部材に対して延出部の延出方向に沿って移動自在に支持することができる。アームをボス部とともに延出方向に移動させた状態でのみ回転できるようにし、アームを収納位置又は露出位置に固定することができる。
【0013】
また、所定の回転角度範囲は、アームをその長手方向が垂直となる収納位置と水平方向に傾斜した露出位置とを両端とすることが好ましい。アームを不使用時の収納位置と使用時の露出位置との間で基端部を中心に回転させることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、アーム部材が支持部材に対して自由に回転することがないようにし、構造の複雑化を防止できるとともに、アーム部材が自重によって規制部と当接しないようにして衝撃音の発生や装置の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)及び(B)は、この発明の第1の実施形態に係る物干し装置の使用状態を示す外観図である。
図2】(A)及び(B)は、同物干し装置の分解図である。
図3】は、同物干し装置の要部の断面図である。
図4】(A)及び(B)は、この発明の別の第2の実施形態に係る物干し装置の部分断面斜視図及びアームの要部の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(A)及び(B)に示すように、この発明の第1の実施形態に係る物干し装置10は、アーム1、支持部材2を備えている。アーム1は、両端部をそれぞれ基端部11及び開放端部12とする長尺体であって基端部11と開放端部12との中間部、及び開放端部12に、物干し竿200を保持する保持部13を有している。アーム1における保持部13の位置及び個数は、これに限るものではない。また、保持部13は、アーム1の長手方向に直交する方向に沿ってアーム1から延出させて形成することもできる。
【0017】
支持部材2は、例えばベランダの手摺り100の2本の支柱101のそれぞれにおける互いの対向面に取り付けられる。なお、図1では、1本の支柱101のみを図示している。アーム1は、図1(A)に示す収納位置と、図1(B)に示す露出位置と、の間で回転移動するように、基端部11で支持部材2に回転自在に支持されている。アーム1は、収納位置で長手方向が略垂直となり、露出位置で開放端部12を基端部11より上方に位置するように傾斜する。アーム1は、収納位置で開放端部12を基端部11の直下に位置するように長手方向が垂直となるようにすることもでき、露出位置で略水平、又は開放端部12を基端部11より下方に位置するように傾斜させることもできる。
【0018】
支持部材2を2本の支柱101のそれぞれにおける互いの対向面に取り付けることにより、アーム1が収納位置にある状態では、物干し装置10の全体が手摺り100よりもベランダの内側に突出することがない。このため、ベランダのスペースを有効活用できるとともに、手摺り100の外観を煩雑にすることがない。
【0019】
物干し装置10は、ベランダの手摺り100の2本の支柱101だけでなく、カーポートの2本の支柱にも取り付けることができ、カーポートの外観を煩雑にすることがなく、ガレージのスペースを有効活用できる。
【0020】
図2に示すように、物干し装置10は、アーム1、支持部材2、キャップ3、固定ボルト4、座金5A,5B、皿バネ6A,6B、ブッシュ7、座金8、ピン9、ナット41、取付ネジ91を備えている。座金5A,5B、皿バネ6A,6B、ブッシュ7、座金8は、何れも環状を呈している。キャップ3、固定ボルト4、皿バネ6A,6B、ブッシュ7、座金8及びナット41が、この発明の制動部材に相当する。
【0021】
アーム1の基端部11には、貫通孔15が形成されている。貫通孔15の前面側及び背面側には、径を拡大した段部15A及び15Bが形成されている。アーム1の基端部11の背面側には、円弧状の溝部14が形成されている。溝部14は、貫通孔15の外側で貫通孔15と同心上に形成されている。
【0022】
支持部材2は、上下方向の略中央部に、前面側に突出した円筒状のボス部21を備えている。ボス部21には、孔部23が支持部材2の前後方向に貫通している。支持部材2の上下の端部には、取付孔22が形成されている。支持部材2は、取付孔22を貫通する図示しない取付ネジを介して、背面を支柱101(図1参照。)の側面に接触させて取り付けられる。支持部材2の前面には、ボス部21の上方の2箇所に穴部24が形成されている。
【0023】
2箇所穴部24のうち、アーム1の露出位置を支持部材2の左右何れに位置させるかに応じて選択される一方の穴部24には、ピン9が嵌入する。ピン9は、ネジ91を介して穴部24に固定される。ピン9の外径は、アーム1の溝部14に背面側から嵌入する大きさにされている。
【0024】
ボス部21は、小径部211、中径部212及び大径部213を備えている。小径部211の外径は、座金5A,5B、皿バネ6A,6B、ブッシュ7及び座金8の内径よりも小さくされている。中径部212の外径は、アーム1の貫通孔15の内径よりも小さくされている。大径部213の外径は、アーム1の段部15Bの内径に略等しくされている。
【0025】
キャップ3は、背面側に開放した凹部31、及び前面側から凹部31に連通する孔部32を備えている。孔部32の前面側には、ザグリ部32Aが形成されている。アーム1の段部15Aの内径に対して、キャップ3の外径は大きく、孔部32の内径は小さくされている。キャップの凹部31は、段部31Aを備えている。段部31Aの内径は、支持部材2におけるボス部21の前面に突出した凸部21Aの外径に等しくされている。
【0026】
固定ボルト4は、頭部の外径をキャップ3のザグリ部32Aの内径に略等しくされており、軸部の長さをキャップ3のザグリ部32Aの底面からキャップ3の背面までの長さと支持部材2における凸部21Aから背面までの長さとを加算した長さよりも長くされている。
【0027】
物干し装置10を組み立てる際には、支持部材2の穴部24の一方にピン9を嵌入させた後、支持部材2の背面側からネジ91をピン9に螺合させ、ピン9を支持部材2に固定する。
【0028】
この後、支持部材2のボス部21に、支持部材2の前面側から、座金8、アーム1、ブッシュ7、座金5B、皿バネ6B、皿バネ6A、座金5Aの順に外嵌させる。このとき、2つの皿バネ6Aと皿バネ6Bとは、互いに対向させて配置する。なお、座金5A,5B及び皿バネ6A,6Bの配置順はこれに限るものではない。また、皿バネ6A,6Bに加えて別の皿バネを追加することもできる。
【0029】
次いで、キャップ3の孔部32を前面側から貫通した固定ボルト4のネジ部をボス部21の孔部23に挿通させ、固定ボルト4のネジ部における支持部材2の背面側に露出した部分にナット41を締着させる。アーム1の溝部14にピン9が嵌入した状態で、物干し装置10が組み立てられる。アーム1は、溝部14の角度範囲で支持部材2に回転自在にして支持される。
【0030】
ここで、ピン9は、突起に相当する部材である。なお、アーム1にピン9を固定し、溝部14を支持部材2の前面に形成することもできる。
【0031】
図3に示すように、固定ボルト4の軸方向について、座金5A,5B、皿バネ6A,6B及びブッシュ7の長さの和は、アーム1の段部15Bの長さ及びキャップ3の凹部31の長さの和よりも長くされている。支持部材2の背面側で固定ボルト4のネジ部にナット41を締め付けていくと、キャップ3が支持部材2の背面側に移動することによって皿バネ6A,6Bが軸方向に圧縮されて弾性変形を生じる。皿バネ6A,6Bは、弾性力によってアーム1の段部15Aをブッシュ7を介して支持部材2側に押圧する。固定ボルト4のネジ部に対するナット41の締着量は、アーム1の回転動作を完全に規制する押圧力よりも小さい押圧力がアーム1の段部15Aに作用するように調整する。
【0032】
これによって、アーム1の段部15Aの前面及び15Bの背面には、それぞれブッシュ7及び座金8が圧接し、アーム1の支持部材2に対する回転動作に制動力が作用する。アーム1は、収納位置から露出位置に向かって自重によって自由に回転することがなく、露出位置で停止する際に、ピン9が溝部14の端部に高速で当接することがなく、大きな衝撃音を生じることがない。これによって、動作不良や部品の破損を防止できる。また、露出位置や収納位置等の複数の位置でアームの回転を規制する機構が不要になり、構造を簡略化できる。
【0033】
また、座金5A,5B、皿バネ6A,6B、ブッシュ7及び座金8は何れも環状を呈しているため、アーム1の回転角度に関わらず一定の制動力をアーム1に作用させることができ、アーム1を安定して回転させることができる。
【0034】
図4(A)及び(B)に示すように、この発明の第2の実施形態に係る物干し装置10′は、アーム1の回転軸に直交する方向に移動自在に保持されたスライダ25にボス部21を形成するとともに、溝部14に同方向の延出部を形成したものである。一例として、物干し装置10′は、スライダ25を支持部材2に対して垂直方向に移動自在にし、アーム1の溝部14に垂直方向の延出部14Aを形成している。
【0035】
アーム1は、収納位置から一旦上方に移動させた後にのみ露出位置に回転させることができるようになる。アーム1を収納位置で支持部材2に確実に固定させることができる。
【0036】
なお、溝部14においてアーム1が露出位置に回転した際のピン9が停止している位置に延出部14Aを形成することで、露出位置におけるアーム1の回転を規制することができ、露出位置でアーム1を確実に固定することができる。
【0037】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
1−アーム
2−支持部材
3−キャップ
4−固定ボルト
6−皿バネ
9−ピン
10−物干し装置
図1
図2
図3
図4