特許第5979983号(P5979983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979983
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】吸収性物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20160818BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61F13/511 110
   A61F13/15 352
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-120710(P2012-120710)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-244256(P2013-244256A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】栗原 涼子
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−151678(JP,A)
【文献】 特開2011−131044(JP,A)
【文献】 特開2009−291473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる透液性の表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記表面シートは、吸収性物品の幅方向に所定の間隔を空けて、吸収性物品の長手方向に連続する畝状の凸部を有し、前記各凸部の両側に吸収性物品の長手方向に間隔を空けて右側隣接位置と左側隣接位置とに交互に点状の凹エンボスが設けられるとともに、前記凹エンボスは全体的に千鳥状に配置とされ、前記凹エンボスを通る幅方向横断面において、前記凸部に対して近接している側の凹エンボスとの間の傾斜面が相対的に急勾配の傾斜面とされ、前記凸部に対して遠隔している側の凹エンボスとの間の傾斜面が相対的に緩勾配の傾斜面とされ、前記凸部の横断面形状が左右非対称形状を成していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記凸部の頂部での高さが1〜3mm、前記緩勾配の傾斜面の中間点位置での高さが0.5〜2mmとされる請求項記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記凹エンボスは、吸収性物品の長手方向寸法が0.3〜4mm、吸収性物品の幅方向寸法が0.3〜3mmであり、吸収性物品の長手方向間隔及び幅方向間隔が2〜15mmとされる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品を製造するための方法であって、
前記表面シートは、対面配置で一対の第1凹凸ロールと第2凹凸ロールとの間を挿通させることにより前記凸部及び凹エンボスが形成され、
前記第1凹凸ロールは、ライン幅方向に間隔を空けてライン方向に連続する凸条部が形成されるとともに、この凸条部は平面視で左側に突出する左凸状曲部と、右側に突出する右凸状曲部とが交互に繰り返された波状の凸条部とされ、前記左凸状曲部の内面側及び前記右凸状曲部の内面側は弧状曲線部とされ、
前記第2凹凸ロールは、前記第1凹凸ロールの左凸状曲部の内面側弧状曲線部に対応する位置にドット状凸部を有するとともに、前記右凸状曲部の内面側弧状曲線部に対応する位置にドット状凸部を有し、これらドット状凸部が全体的に千鳥状配置とされ、
前記表面シートは、前記第1凹凸ロールと第2凹凸ロールとの間を挿通した後、前記第1凹凸ロールから離脱し、第2凹凸ロール側に保持された状態で周回した後、前記第2凹凸ロールと対面配置で設けられたフラットロールとの間に導入されるとともに、これら前記第2凹凸ロールとフラットロールとの間にセカンドシート不織布が導入され、前記表面シートと前記セカンドシート不織布とが前記第2凹凸ロールのドット状凸部に対応する位置で接合され、
その後の組立工程で、裏面シートの上面に吸収体が載置されるとともに、その上面に前記セカンドシート不織布が下面側に一体的に積層された表面シートが重ねられることを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸れを低減でき体液の伝い漏れを防止するとともに、肌との接触面積を低減しかつ肌への当りが柔らかい表面シートを備えた生理用ナプキン、失禁ライナー、失禁パッド、おりものシートなどの吸収性物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸収性物品の表面シートとして、肌への接触面積を低減することにより肌トラブルを無くしたり、質感を出すと共に、スポット吸収性を高めるなどの種々の目的に応じて適宜のエンボスパターンを付与したものが市場に提供されている。この種のものとしては、例えば下記特許文献を挙げることができる。
【0003】
先ず、下記特許文献1では、図11に示されるように、着用時に肌と当接する面側に凹凸形状が形成されている吸収性物品用の表面シート50であって、前記表面シート50を用いた吸収性物品の装着時において、前記凹凸形状は、身体の形状及び動きに柔軟に追随して変形し、且つ凹凸形状の凹部が、高粘性排泄物を取り込んで該高粘性排泄物と身体とを離間させるようにしたものが提案されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、図12に示されるように、吸収性物品の肌当接面に用いられる吸収性物品用の表面シート51であって、着用者の肌側に向けられ且つ実質的に伸縮しないシート状物からなる上層と吸収体側に配され且つ実質的に伸縮しないシート状物からなる下層とを有しており、該上層と該下層とが部分的に接合されて多数の接合部が形成されており、該上層が、該接合部以外の部分において着用者の肌側に向けて突出して、内部が空洞となっている多数の凸部を形成しており、前記凸部及び前記接合部は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されており、更に該列が多列に配置されており、一の列における任意の一つの凸部に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していない表面シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−165830号公報
【特許文献2】特開2004−174234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に係る表面シートは、凸部と凹部(接合部)とが一方向に直線的かつ平行的に連続しているものであるが、前記凸部が一方向に連続していることにより、空気の通り道ができ蒸れを大きく低減することができるが、凹部(接合部)も一方向に連続しているため、この凹部を流路として体液の伝い漏れが発生し易いなどの問題があった。
【0007】
一方、前記特許文献2に係る表面シートの場合は、凸部と凹部とが千鳥状に配置されているものであり、スポット吸収性に優れ体液の伝い漏れを防止することができるが、空気が通り難いため蒸れが発生し易いなどの問題があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、蒸れを低減でき体液の伝い漏れを防止するとともに、肌との接触面積を低減しかつ肌への当りが柔らかい表面シートを備えた吸収性物品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、不織布からなる透液性の表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記表面シートは、吸収性物品の幅方向に所定の間隔を空けて、吸収性物品の長手方向に連続する畝状の凸部を有し、前記各凸部の両側に吸収性物品の長手方向に間隔を空けて右側隣接位置と左側隣接位置とに交互に点状の凹エンボスが設けられるとともに、前記凹エンボスは全体的に千鳥状に配置とされ、前記凹エンボスを通る幅方向横断面において、前記凸部に対して近接している側の凹エンボスとの間の傾斜面が相対的に急勾配の傾斜面とされ、前記凸部に対して遠隔している側の凹エンボスとの間の傾斜面が相対的に緩勾配の傾斜面とされ、前記凸部の横断面形状が左右非対称形状を成していることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、表面シートは吸収性物品の幅方向に所定の間隔を空けて、吸収性物品の長手方向に連続する畝状の凸部を有するが、表面シートを固定するための凹エンボス(接合部)は、前記各凸部の両側に吸収性物品の長手方向に間隔を空けて右側隣接位置と左側隣接位置とに交互に点状の凹エンボスが付与され、前記凹エンボスは全体的に千鳥状に配置とされているものである。
【0011】
従って、長手方向に連続する前記凸部によって空気の通り道ができ蒸れを低減することができる。また、表面シートを固定するための凹エンボスは、前記各凸部の両側に吸収性物品の長手方向に間隔を空けて右側隣接位置と左側隣接位置とに交互に点状に千鳥状に配置されているため、体液の流路は各凹エンボスを繋いだジグザグ状の流路となるため伝い漏れを防止することが可能となる。
【0012】
更には、表面シートを通過して前記凸部内を流れた体液があっても、この凸部内の流路は流路幅を交互に拡大、縮小させた流路となっているため体液が流れづらく吸収体側に吸収され易くなるため体液の伝い漏れを防止することができるようになる。
【0013】
また、前記凸部の断面形状に関し、凸部に対して近接している側の凹エンボスとの間の傾斜面が相対的に急勾配の傾斜面とされ、前記凸部に対して遠隔している側の凹エンボスとの間の傾斜面が相対的に緩勾配の傾斜面とされ、前記凸部の横断面形状が頂部を境に左右非対称形状を成している。
【0014】
従って、肌との接触面積を低減し得るとともに、表面側から体圧を受けた際、前記凸部の横断形状が頂部を境に左右非対称形状を成し、凸部の両壁が抵抗する左右対称形状よりも圧力に対して抵抗力が小さく潰れ易いため肌への当りが柔らかいものとなる。
【0015】
請求項に係る本発明として、前記凸部の頂部での高さが1〜3mm、前記緩勾配の傾斜面の中間点位置での高さが0.5〜2mmとされる請求項記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項記載の発明は、前記表面シートの凸部の高さ寸法を規定したものである。具体的には前記凸部の頂部での高さが1〜3mm、前記緩勾配の傾斜面の中間点位置(頂部と凹エンボス間距離の1/2点)での高さが0.5〜2mmとするのが望ましい。
【0017】
請求項に係る本発明として、前記凹エンボスは、吸収性物品の長手方向寸法が0.3〜4mm、吸収性物品の幅方向寸法が0.3〜3mmであり、吸収性物品の長手方向間隔及び幅方向間隔が2〜15mmとされる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項記載の発明は、前記表面シートの凹エンボスの寸法を規定したものである。具体的には前記凹エンボスの吸収性物品の長手方向寸法が0.3〜4mm、吸収性物品の幅方向寸法が0.3〜3mmであり、吸収性物品の長手方向間隔及び幅方向間隔が2〜15mmとするのが望ましい。
【0019】
請求項に係る本発明として、請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品を製造するための方法であって、
前記表面シートは、対面配置で一対の第1凹凸ロールと第2凹凸ロールとの間を挿通させることにより前記凸部及び凹エンボスが形成され、
前記第1凹凸ロールは、ライン幅方向に間隔を空けてライン方向に連続する凸条部が形成されるとともに、この凸条部は平面視で左側に突出する左凸状曲部と、右側に突出する右凸状曲部とが交互に繰り返された波状の凸条部とされ、前記左凸状曲部の内面側及び前記右凸状曲部の内面側は弧状曲線部とされ、
前記第2凹凸ロールは、前記第1凹凸ロールの左凸状曲部の内面側弧状曲線部に対応する位置にドット状凸部を有するとともに、前記右凸状曲部の内面側弧状曲線部に対応する位置にドット状凸部を有し、これらドット状凸部が全体的に千鳥状配置とされ、
前記表面シートは、前記第1凹凸ロールと第2凹凸ロールとの間を挿通した後、前記第1凹凸ロールから離脱し、第2凹凸ロール側に保持された状態で周回した後、前記第2凹凸ロールと対面配置で設けられたフラットロールとの間に導入されるとともに、これら前記第2凹凸ロールとフラットロールとの間にセカンドシート不織布が導入され、前記表面シートと前記セカンドシート不織布とが前記第2凹凸ロールのドット状凸部に対応する位置で接合され、
その後の組立工程で、裏面シートの上面に吸収体が載置されるとともに、その上面に前記セカンドシート不織布が下面側に一体的に積層された表面シートが重ねられることを特徴とする吸収性物品の製造方法が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明は、本吸収性物品の製造方法に係り、特に好適な表面シートの製造方法を規定したものである。
【0021】
具体的には、対面配置で一対の第1凹凸ロールと第2凹凸ロールとの間を挿通させる過程で前記凸部及び凹エンボスを付与するようにする点は一般的な方法であるが、本製造方法では、前記第1凹凸ロールは、ライン幅方向に間隔を空けてライン方向に連続する凸条部が形成されるとともに、この凸条部は平面視で左側に突出する左凸状曲部と、右側に突出する右凸状曲部とが交互に繰り返された波状の凸条部とされ、前記左凸状曲部の内面側及び前記右凸状曲部の内面側は弧状曲線部とされる。
【0022】
一方、前記第2凹凸ロールは、前記第1凹凸ロールの左凸状曲部の内面側弧状曲線部に対応する位置、具体的には前記内面側弧状曲線部のほぼ中心位置にドット状凸部を有するとともに、前記右凸状曲部の内面側弧状曲線部に対応する位置、具体的には前記内面側弧状曲線部のほぼ中心位置にドット状凸部を有し、これらドット状凸部が全体的に千鳥状配置とされる。
【0023】
表面シートの凸部を形成するための前記第1凹凸ロールの凸条部は、直線状に形成するのではなく、平面視で左側に突出する左凸状曲部と、右側に突出する右凸状曲部とが交互に繰り返された波状凸部とされ、前記左凸状曲部の内面側及び前記右凸状曲部の内面側は弧状曲線部とされ、前記表面シートの凹エンボスを形成するための前記第2凹凸ロールのドット状凸部は、前記弧状曲線部で囲まれたほぼ中心位置とされている。
【0024】
従って、前記第1凹凸ロールの弧状曲線部に囲まれたほぼ中心位置に第2凹凸ロールのドット状凸部が位置し、このドット状凸部から前記第1凹凸ロールの弧状曲線部までの距離がほぼ均等になっているため、凹エンボスを付与する際に、表面シートの切れを効果的に防止することができる。
【0025】
なお、前記第1凹凸ロールの凸条部は波状の凸条部とされているが、製品状態で表面シートに形成された畝状の凸部は、不織布の復元性によってほぼ直線状に形成されている。
【発明の効果】
【0026】
以上詳説のとおり本発明によれば、蒸れを低減でき体液の伝い漏れを防止するとともに、肌との接触面積を低減しかつ肌への当りが柔らかい表面シートを備えた吸収性物品を提供することが可能となる。
【0027】
また、本発明の製造方法によれば、表面シートにエンボスを付与する際、シートの切れを防止しながら凸部に近接した位置に凹エンボスを付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る吸収性物品(失禁ライナー)1の一部破断斜視図である。
図2】吸収性物品(失禁ライナー)1の横断面図(図1のII−II矢視図)である。
図3】本発明に係る表面シート3の要部拡大斜視図である。
図4】表面シート3の横断面図を示す、(A)は図3の4A−4A断面図、(B)は図3の4B−4B断面図である。
図5】表面シート3を製造方法の概略図である。
図6】第1凹凸ロール10と第2凹凸ロール11との噛み合わせ部(図5のVI部)を示す、(A)はその噛み合わせ面の展開図であり、(B)はその断面図である。
図7】第1凹凸ロール10を示す、(A)は要部断面図、(B)はその平面図である。
図8】第2凹凸ロール11を示す、(A)は要部平面図、(B)は要部断面図である。
図9】第1凹凸ロール10及び第2凹凸ロール11の凸条部、ドット状凸部の寸法例を示した図である。
図10】第1凹凸ロール10と第2凹凸ロール11とによるエンボス付与状態及び表面シート3の作用効果を説明するための図である。
図11】従来の表面シートの第1例を示す要部斜視図である。
図12】従来の表面シートの第2例を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0030】
〔吸収性物品(失禁ライナー)1の構造例〕
失禁ライナー1は、図1に示されるように、不透液性裏面シート2と、透液性表面シート3(以下、単に表面シートという。)との間に、吸収体4または同図に示されるように、クレープ紙5によって囲繞された吸収体4が介在されるとともに、前記表面シート3と吸収体4との間に親水性のセカンドシート(不織布)6を配置され、表面側両側部に立体ギャザーG、Gを備えた構造となっている。 前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0031】
前記表面シート3は、肌当接面層を構成するものであり、本発明では不織布が使用されている。この表面シート3は、ライナー1の長手方向に連続する畝状の凸部7,7…と、千鳥状パターンで付与された凹エンボス8a…、8b…とにより凹凸形状を成している。表面シート3の上面には、排尿部位Hを囲むように小判形状のフィットエンボス17が形成されている。この表面シート3については後段でさらに具体的に詳述する。
【0032】
前記不透液性裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するためにクレープ紙5によって囲繞するのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0033】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0034】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は吸収体重量の10〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が10%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
【0035】
前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置される親水性のセカンドシート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。また、前記セカンドシート6は、コシを持たせるため、裏面側(吸収体4側)に多孔のフィルム層を有していてもよく、またクレープ紙との積層シートとしてもよく、更にはパルプを含む素材を用いてもよい。
【0036】
本失禁ライナー1の表面がわ両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ失禁ライナー1の全長に亘ってサイド不織布15,15が設けられているとともに、このサイド不織布15,15の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布15部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0037】
前記サイド不織布15としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布15としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくは目付け量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。
【0038】
前記サイド不織布15の内方側は、図2に示されるように、前記サイド不織布15をほぼ二重に折り返すとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1または複数の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材16,16が配設され、その収縮力によって前記二重シート部分を表面側に起立させた立体ギャザーG、Gが形成されている。
【0039】
〔表面シート3の構造〕
表面シート3は不織布からなる。この不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、エアスルー法、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、エアスルー法、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0040】
前記表面シート3には、図3に示されるように、失禁ライナー1の幅方向に所定の間隔Sを空けて、ライナー1の長手方向に連続する畝状の凸部7,7…を有するとともに、前記各凸部7,7…の両側にライナー1の長手方向に間隔を空けて右側隣接位置と左側隣接位置とに交互に点状の凹エンボス8a…、8b…が付与され、前記凹エンボス8a…、8b…は全体的に略正格子で千鳥状に配置とされている。すなわち、図3において符合7’を付した凸部7を見たとき、長手方向に間隔を空けて右側隣接位置の凹エンボス8bと、左側隣接位置の凹エンボス8aとが交互に付与されるとともに、これら凹エンボス8a…、8b…は略正格子で千鳥状に配置されている。
【0041】
前記凸部7の横断面形状は、図3の4A−4A断面では、図4(A)に示されるように、凹エンボス8a…、8b…は略正格子で千鳥状に配置されている結果、前記凸部7に対して横断面方向に隣接する凹エンボス8a…(8b…)は、一方が相対的に近接し、他方が相対的に遠隔した位置となる。そのため、前記凸部7に対して近接している側の凹エンボス8aとの間の傾斜面が相対的に急勾配の傾斜面とされ、前記凸部7に対して遠隔している側の凹エンボス8aとの間の傾斜面が相対的に緩勾配の傾斜面とされ、前記凸部7の横断面形状が左右非対称形状を成している。ここで、本明細書では、前記凸部7の頂部は高凸部7aと定義し、前記緩勾配の傾斜面の中間点を低凸部7bと定義することとする。
【0042】
また、図3の4B−4B断面では、凸部7に対して近接する凹エンボス8bと、遠隔する凹エンボス8bとの関係が反対となるため、図4(B)に示されるように、凸部7に対して右側に急勾配の傾斜面が形成され、左側に緩勾配の傾斜面が形成されている。
【0043】
前記高凸部7aの高さh1は、1〜3mmとし、前記低凸部7bの位置(便宜上、高凸部7aと凹エンボス8aとの間の1/2点)の高さh2は0.5〜2mmとするのが望ましい。また、前記凹エンボス8a(8b)は、ライナー1の長手方向寸法が0.3〜4mm、ライナー1の幅方向寸法が0.3〜3mmの円形又は楕円形状とするのが望ましく、ライナー1の長手方向間隔L1及び幅方向間隔L2(同列線上での距離)は2〜15mmとするのが望ましい。
【0044】
次に、表面シート3に付与される前記凸部7、7…及び凹エンボス8a…、8b…について、これらエンボスを付与する製造方法を踏まえながら、図5図10に基づいて詳述する。
【0045】
前記表面シート3は、図5に示されるように、対面配置で一対の第1凹凸ロール10と第2凹凸ロール11との間に挿通させることにより前記凸部7、7…及び凹エンボス8a…、8b…が付与され、前記第1凹凸ロール10と第2凹凸ロール11との間を挿通した後、前記第1凹凸ロール10から離脱し、第2凹凸ロール11側に保持された状態で周回した後、前記第2凹凸ロール11と対面配置で設けられたフラットロール12との間に導入されるとともに、これら前記第2凹凸ロール11とフラットロール12との間にセカンドシート不織布6が導入され、前記表面シート3と前記セカンドシート不織布6とが前記第2凹凸ロール11の凸部に対応する位置で加熱圧着接合されるようになっている。
【0046】
図示例では、上下方向に上段側から第1凹凸ロール10,第2凹凸ロール11、フラットロール12の順で配置し、前記第1凹凸ロール10の上面側に表面シート3を供給し、半周分だけ周回させた後、第1凹凸ロール10と第2凹凸ロール11との噛み合わせ部に導入し、その後第2凹凸ロール11を半周分だけ周回させた後、セカンドシート不織布と第2凹凸ロール11とフラットロール12との噛み合わせ部で接合されるようになっている。
【0047】
前記第1凹凸ロール10と前記第2凹凸ロール11との噛み合わせ部VIでは、図6に示されるように、第1凹凸ロール10に設けられた凸条部10A、10A…と、第2凹凸ロール11に設けられたドット状凸部11A、11A…との噛み合わせによって、表面シートに凸部7,7…と、凹エンボス8a…、8b…とが付与されるようになっている。
【0048】
前記第1凹凸ロール10は、詳細には図7に示されるように、ライン幅方向に間隔を空けてライン方向に連続する凸条部10Aが形成されるとともに、この凸条部10Aは平面視で左側に突出する左凸状曲部10aと、右側に突出する右凸状曲部10bとが交互に繰り返された波状の凸条部とされ、前記左凸状曲部10aの内面側及び前記右凸状曲部10bの内面側は弧状曲線部10cとされる。
【0049】
一方、前記第2凹凸ロール11は、詳細には図8に示されるように、前記第1凹凸ロール10の左凸状曲部10aの内面側弧状曲線部10cに対応する位置、すなわち前記内面側弧状曲線部10cのほぼ中心点に対応する位置にドット状凸部11Aを有するとともに、前記右凸状曲部10bの内面側弧状曲線部10cに対応する位置、すなわち前記内面側弧状曲線部10cのほぼ中心点に対応する位置にドット状凸部11Aを有し、これらドット状凸部11A、11A…が全体的に正格子の千鳥状配置とされる。前記第1凹凸ロール10と第2凹凸ロール11との噛み合わせ状態は、図6(A)に図示した通りである。
【0050】
同図から分かるように、前記左凸状曲部10aを通る横断線上D1で、右側に位置するドット状凸部11Aは近接した位置にあり、左側に位置するドット状凸部11Aは遠隔した位置にある。また、前記右凸状曲部10bを通る横断線上D2で、右側に位置するドット状凸部11Aは遠隔した位置にあり、左側に位置するドット状凸部11Aは近接した位置にある。
【0051】
前記第1凹凸ロール10の凸条部10A及び第2凹凸ロール11のドット状凸部11Aの寸法例を図9に示す。
【0052】
前記第2凹凸ロール11のドット状凸部11Aの先端径は、円形でもよいが、ライン方向(MD)がライン幅方向(CD)方向よりもやや長い楕円形状とするのが望ましい。その後の工程で、表面シート3から吸収体4側にかけてフィットエンボスを入れる際、表面シート3を吸収体4に押し込むことで表面シート3が幅方向に引っ張られて伸び、ドットが剥がれ易くなる問題が発生するが、ライン方向に長い楕円形状の方が幅方向の接合強度が強くなり、ドットが剥がれ難くなる。具体的に寸法としては、ライン方向寸法(A)が0.3〜4mm、好ましくは0.8〜2.0mm、ライン幅方向寸法(A)が0.3〜3mm、好ましくは0.8〜1.5mmとするのがよい。図示例では、ライン方向寸法(A)が1.2mm、ライン幅方向寸法(A)が1.0mmとしている。
【0053】
また、前記ドット状凸部11Aのライン方向間隔(B)及びライン直交間隔(B)は、2〜15mm、好ましくは3〜10mmとするのが望ましい。図示例では、ライン方向間隔(B)が4.8mm、ライン直交間隔(B)が5.0mmとしている。
【0054】
前記第1凹凸ロール10の凸条部10Aの寸法は、左凸状曲部10a及び右凸状曲部10bの幅(D)は、1〜2mmとするのが望ましい。図示例では1.44mmとしている。左凸状曲部10aと右凸状曲部10bとの境界部の幅寸法(D)は、0.5mm以上とするのが望ましい。図示例では0.55mmとしている。また、左凸状曲部10aの先端から幅方向に隣接する凸状部10Aの内面側弧状曲線部10cまでの距離(C)は、1〜15mm、好ましくは3〜10mmとするのが望ましく、かつ前記ドット状凸部11Aの先端径の3倍以上とするのが望ましい。図示例では4.56mmとしている。
【0055】
前記第1凹凸ロール10と前記第2凹凸ロール11との噛み合わせ部Vにおいて、表面シート3に凸部7,7…と凹エンボス8a…、8b…とが付与されるが、この点について図10に基づいて更に詳述するとともに、本発明の表面シート3の作用効果等について詳述する。
【0056】
前述したように、前記第1凹凸ロール10に形成された波状の凸条部10Aによって表面シート3に畝状の凸部7が形成される。前記凸条部10Aは波状を成しているが、エンボス付与時の凸条領域は概念的に斜線領域Pで示された領域となる。この凸条領域Pも緩い波状形態を示しているが、表面シート3は不織布から構成されており、その復元性により製品状態ではほぼ直線状に畝状の凸部7,7…が形成される。この凸部7,7…が長手方向に連続する空気の通り道を作るため、蒸れを低減することができる。
【0057】
前記凸条部10Aの凸状曲部10a、10bを通る横断線上で、隣接する一方側のドット状凸部11Aは相対的に近接した位置にあり、隣接する他方側のドット状凸部11Aは相対的に遠隔した位置にある。この遠隔した位置にあるドット状凸部11Aとの間に空間領域qが存在することにより、この空間領域qに対応して表面シート3に前記低凸部7bが形成される。表面シート3には、横断方向に高凸部7aと低凸部7bとが交互に存在することになる。
【0058】
表面シート3に形成される前記凸部7の断面形状に関し、凸部7に対して近接している側の凹エンボス8a(8b)との間の傾斜面が相対的に急勾配の傾斜面とされ、前記凸部7に対して遠隔している側の凹エンボス8a(8b)との間の傾斜面が相対的に緩勾配の傾斜面とされ、前記凸部7の横断面形状が頂部を境に左右非対称形状を成しているため、肌との接触面積を低減し得るとともに、表面側から体圧を受けた際、前記凸部7の横断形状が頂部を境に左右非対称形状を成して凸部の両壁が抵抗する左右対称形状よりも圧力に対して抵抗力が小さく潰れ易いため肌への当りが柔らかいものとなる。
【0059】
一方、凸条部10Aに近接したドット状凸部11Aは、弧状曲線部10cに囲まれた略中心点に位置し、このドット状凸部11Aから前記第1凹凸ロールの弧状曲線部11cまでの距離がほぼ均等になっているため、エンボスを付与する際に、表面シート3の切れを防止することができるようになっている。
【0060】
前記凸状部10A、10A間に存在するドット状凸部11A、11A…を繋いだ折れ線Mは、ジグザグ状になる。この折れ線Mは体液の流路となる線であり、体液は直線的に流れることがないため体液の伝い漏れが防止できるようになっている。更には、表面シート3を通過して前記凸部7内を流れる体液があった場合も、この凸部7内の流路は、同図に斜線領域Rで示したように、流路幅を交互に拡大、縮小させた流路となっているため体液が流れづらく吸収体側に吸収され易くなるため体液の伝い漏れを防止することができる。
【0061】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、第1凹凸ロール10に形成した凸条部10Aを、平面視で左側に突出する左凸状曲部10aと、右側に突出する右凸状曲部10bとが交互に繰り返された波状の凸条部としたが、この凸条部10Aをライン方向に直線状に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…吸収性物品(失禁ライナー)、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…セカンドシート不織布、7…凸部、7a…高凸部、7b…低凸部、8a・8b…凹エンボス、10…第1凹凸ロール、10A…凸条部、10a…左側凸状曲部、10b…右側凸状曲部、10c…内面側弧状曲線部、11…第2凹凸ロール、11A…ドット状凸部、12…フラットロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12