(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のオレフィン系重合体組成物は、オレフィン系重合体と、下記要件(i)〜(iii)を満たす超高分子量オレフィン系重合体に放射線を照射して架橋させた架橋超高分子量オレフィン系重合体を含んでなる。
【0020】
以下、架橋超高分子量オレフィン系重合体について説明した後、本発明のオレフィン系重合体組成物について説明する。
〔架橋超高分子量オレフィン系重合体〕
本発明にかかる樹脂組成物の構成要素の一つである、架橋超高分子量オレフィン系重合体は、特定の物性を有する超高分子量オレフィン系重合体に放射線を照射して架橋させることによって得られた物である。
【0021】
なお、本発明において、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5dl/g以上のオレフィン系重合体を超高分子量オレフィン系重合体ということがある。
【0022】
以下、超高分子量オレフィン系重合体および架橋超高分子量オレフィン系重合体の調製方法について説明する。
<超高分子量オレフィン系重合体>
架橋超高分子量オレフィン系重合体の原料として用いられる超高分子量オレフィン系重合体は下記要件(i)〜(iii)を満たす。
(i)135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5〜50dl/g
(ii)平均粒子径d
50が、3〜30μm
(iii)目開き37μmメッシュ篩を少なくとも95重量%以上が通過
以下、要件(i)〜(iii)について説明する。
・要件(i)
本発明において超高分子量オレフィン系重合体の135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は5〜50dl/g、好ましくは5〜40dl/g、より好ましくは5〜30dl/gの範囲である。
【0023】
極限粘度が上記範囲内にあると、耐摩耗性および自己潤滑性などに優れるので好ましい。
・要件(ii)
本発明において超高分子量オレフィン系重合体の平均粒子径d
50は、コールターカウンター法による重量基準粒度分布の測定によって、粒形分布の積算値が50重量%となる値であり、平均粒子径d
50は3〜30μm、好ましくは3〜25μm、より好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは3〜15μmの範囲である。
【0024】
平均粒子径が30μm以下であると、オレフィン系重合体とのブレンドにより得られるオレフィン系重合体組成物からなる成形体の耐衝撃強度が向上する。また、得られる成形体の外観がより良好になる点で好ましい。一方、平均粒子径が3μm以上であると、成形時の粒子のハンドリングが良好であることから好ましい。
・要件(iii)
本発明において超高分子量オレフィン系重合体は、振動篩または超音波式振動篩を用い、目開き37μmのメッシュ篩(Tyler #400)を95重量%以上通過するものであり、より好ましくは98重量%以上、さらに好ましくは99.7%以上、最も好ましくは100%通過するものである。
【0025】
通過量が95重量%より多いということは、粗大粒子の存在量が少ないことを意味する。粗大粒子が少ない場合、当該超高分子量オレフィン系重合体から製造される架橋超高分子量オレフィン系重合体をオレフィン系重合体組成物に存在させると、加えた物質(粒子)が効率よく耐ブロッキング性の向上に寄与することになるため、好ましいと考えられる。
【0026】
本発明において超高分子量オレフィン系重合体とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどの単独重合体や、エチレンと少量の他のα−オレフィン、たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび4−メチル−1−ペンテンなどとの共重合体であるが、好ましくはエチレン系のポリマーであり、特に好ましくはエチレンの単独重合体である。
【0027】
本発明において超高分子量オレフィン系重合体の製造方法は、上記要件(i)〜(iii)を満たすものであれば特に限定は無いが、例えば、以下の文献に開示された方法により製造することができる。
(1)国際公開2006/054696号パンフレット
(2)国際公開2008/013144号パンフレット
(3)国際公開2009/011231号パンフレット
(4)国際公開2010/074073号パンフレット
<架橋超高分子量オレフィン系重合体の調製>
本発明において架橋超高分子量オレフィン系重合体は、上述した超高分子量オレフィン系重合体に放射線を照射することにより得られる。
【0028】
超高分子量オレフィン系重合体に放射線を照射することによって、分子鎖の切断と架橋が生じ、その結果、分子鎖が架橋点で結び合わされる。これより、ガラス転移温度あるいは融点以上でも分子鎖が勝手に流動することができなくなり、高温特性が改善される。さらに応力を受けても形態を保つことができ、機械的特性を保持できるようになる。
【0029】
放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、イオンなどがあり、いずれも使用可能であるが、電子線あるいはγ線が適している。
【0030】
放射線の照射線量は、使用する超高分子量オレフィン系重合体を構成するモノマー種によっても異なるが、通常20〜700kGy、好ましくは100〜500kGyであることが望まれる。
【0031】
照射線量が上記範囲内にある場合、超高分子量オレフィン系重合体の架橋反応が効率よく進行し、このようにして得られた架橋超高分子量オレフィン系重合体をオレフィン系重合体組成物に使用すると、粒子同士の再凝集を抑制することができる。
【0032】
一方、照射線量が700kGy以上であると、ポリマーの劣化が激しくなり、また、照射線量が20kGy以下であると、ポリマー鎖の架橋が進まない若しくは遅くなってしまうため、好ましくない。
〔オレフィン系重合体組成物〕
本発明にかかるオレフィン系重合体組成物は、上述した架橋超高分子量オレフィン系重合体をアンチブロッキング剤とし、さらにオレフィン系重合体と混合することによって得られる。
【0033】
本発明において用いることのできるオレフィン系重合体としては、エチレンおよび炭素原子数3〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合して得られるものが挙げられる。
【0034】
炭素原子数3〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンとして具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。
【0035】
なお、本発明においてオレフィン系重合体を構成するモノマー成分としては、上述したα−オレフィンの他、本発明の目的を損なわない範囲で環状オレフィン、官能化ビニル化合物、極性基(例えばカルボニル基、水酸基、エーテル結合基など)および重合性の炭素−炭素二重結合を分子中に有するモノマー(以下、極性基含有モノマーとも記す。)、共役ジエン、非共役ポリエンなどを含んでもよい。
【0036】
環状オレフィンとしては、炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0037】
官能化ビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物や脂環族ビニル化合物が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン; メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、などの官能基含有スチレン誘導体; および3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレンなどが挙げられ、脂環族ビニル化合物としては、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタンなどが挙げられる。
【0038】
上述したオレフィン系重合体のうち、好ましくは、エチレン系重合体、プロピレン系重合体または4−メチル−1−ペンテン系重合体が用いられる。
【0039】
エチレン系重合体としては、エチレンを主たる構成モノマー成分として含み、通常はエチレンを50モル%以上、好ましくは80モル%以上含む。エチレン系重合体として具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)などが挙げられる。
【0040】
より具体的にエチレン系重合体としては、密度940kg/m
3以上980kg/m
3未満の範囲である高密度ポリエチレン、密度900kg/m
3以上940未満kg/m
3の範囲である低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、あるいはこれらのブレンドなどが挙げられる。これらのうちいずれを採用するかについては、特に限定されないが、透明性、加工性のバランスに優れるという観点から、低密度ポリエチレンや、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。なお、エチレン系重合体の密度は、JIS K7112の密度勾配管法に従って測定される。
【0041】
エチレン系重合体のメルトインデックス(MI)は、通常0.01〜100g/10分、好ましくは、0.02〜50g/10分、より好ましくは0.02〜30g/10分の範囲にある。MIは、JIS K7210に従って、190℃、試験荷重21.18Nの条件で測定される。
【0042】
上記エチレン系重合体は、エチレン単独重合体、またはエチレンと少量のα−オレフィンとの共重合体、またはそれらのブレンドをいう。共重合体の共重合成分は、全モノマー単位の50モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。共重合体の共重合成分の例として、好ましくは炭素原子数2〜20のオレフィンであり、炭素原子数2〜20のオレフィンには、直鎖状または分岐状のα−オレフィン、環状オレフィン、官能化ビニル化合物、極性基含有モノマー、共役ジエン、非共役ポリエンなどが含まれる。
【0043】
プロピレン系重合体としては、プロピレンを主たる構成モノマーとして含み、通常はプロピレンを50モル%以上含み、好ましくは80モル%以上含む。プロピレン系重合体として具体的には、プロピレンホモポリマー、プロピレンとプロピレン以外の上述したα−オレフィンとのブロックコポリマーもしくはランダムコポリマー、あるいはそれらのブレンド物をいう。これらのうちいずれを採用するかについては、特に限定されないが、オレフィン系樹脂組成物のベタツキ感の抑制の観点から、融点と剛性が高いホモポリマーが好ましい。
【0044】
プロピレン系重合体の密度は、通常895〜930kg/m
3の範囲である。ポリプロピレン系重合体の密度は、JIS K7112の密度勾配管法に従って測定される。
【0045】
プロピレン系重合体のメルトインデックス(MI)は、通常0.01〜200g/10分、好ましくは、1〜100g/10分、より好ましくは1〜50g/10分の範囲にある。MIは、JIS K7210に従って230℃、試験荷重21.18Nの条件で測定される。
【0046】
4−メチル−1−ペンテン系重合体としては、4−メチル−1−ペンテンを主たる構成モノマーとして含み、通常は4−メチル−1−ペンテンを50モル%以上含み、好ましくは80モル%以上含む。4−メチル−1−ペンテン系重合体として具体的には、4−メチル−1−ペンテンホモポリマー、4−メチル−1−ペンテンとエチレンおよび炭素原子数3〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)とのブロックコポリマーもしくはランダムコポリマー、あるいはそれらのブレンド物をいう。
【0047】
4−メチル−1−ペンテン系重合体の密度は、通常820〜850kg/m
3の範囲である。4−メチル−1−ペンテン系重合体の密度は、JIS K7112の密度勾配管法に従って測定される。
【0048】
4−メチル−1−ペンテン系重合体のメルトインデックス(MI)は、通常0.01〜200g/10分、好ましくは、1〜100g/10分、より好ましくは1〜50g/10分の範囲にある。MIは、JIS K7210に従って260℃、試験荷重49.03Nの条件で測定される。MIが上記範囲内にあると、4−メチル−1−ペンテン系重合体は成形性に優れ、機械的強度特性に優れる。
【0049】
本発明においてオレフィン系重合体組成物を構成する架橋超高分子量オレフィン系重合体とオレフィン系重合体の配合割合は、オレフィン系重合体100重量部に対して、架橋超高分子量オレフィン系重合体0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0050】
架橋超高分子量オレフィン系重合体の配合割合が0.1重量部未満では耐ブロッキング性の改善の効果が薄くなることがあり、20重量部を超えると成形体の表面外観が悪くなることがある。
〔オレフィン系重合体組成物の製造方法〕
本発明のオレフィン系重合体組成物の製造方法について説明する。
【0051】
オレフィン系重合体組成物は、上述の架橋超高分子量オレフィン系重合体およびオレフィン系重合体の各成分を特定の量で配合し、さらに必要に応じて、後述する添加剤を配合・混合することにより得ることができる。
【0052】
各成分の混合方法については、種々公知の方法、例えば、多段重合法、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラー、ブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用することができる。当該方法により、各成分および添加剤が均一に分散混合された高品質のオレフィン系重合体組成物を得ることができる。
〔添加剤〕
本発明のオレフィン系重合体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、核剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤、架橋超高分子量オレフィン系重合体以外のアンチブロッキング剤などを配合することができる。
【0053】
核剤としては、ジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤、フッ素化ポリエチレン、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ピメリン酸やその塩、2,6−ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド等が使用できる。配合量は特に制限はないが、オレフィン系重合体組成物100重量部に対して0.1〜1重量部程度があることが好ましい。配合タイミングに特に制限は無く、重合中、重合後、あるいは成形加工時での添加が可能である。
【0054】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、あるいはこれらを数種類組み合わせたものが使用できる。
【0055】
滑剤としては、例えばラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。またかかる滑剤の配合量は、オレフィン系重合体組成物100重量部に対して通常0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部程度であることが望ましい。
【0056】
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれらの飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることが好ましい。これらのうちでは、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアロアマイドが特に好ましい。これらの脂肪酸アミドは、オレフィン系重合体組成物100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲で配合することが好ましい。
〔オレフィン系重合体組成物からなるフィルム〕
本発明のフィルムは、上述したオレフィン系重合体組成物を160〜320℃の範囲で溶融押出して得ることができる。本発明のフィルムは、Tダイ押出成形法などによりフィルム、シート状に成形して得た成形品を、さらに一軸延伸あるいは二軸延伸して得たものであることが好ましい。
【0057】
なお、本発明において「フィルム」とは、オレフィン系重合体の外観構造を示すための便宜上の名称であって、「フィルム」とは平面上の成形物の総称であり、これにはフィルムの他、シート、膜(メンブレン)、テープなども含む概念である。
【0058】
本発明のフィルムは、その材料として上述した架橋超高分子量オレフィン系重合体をアンチブロッキング剤成分として含有していることから、耐ブロッキング性に優れることが期待できる。この理由としては、該架橋超高分子量オレフィン系重合体は、従来のオレフィン系重合体粒子と比較して、粒径が小さく、放射線によりその分子間が架橋されて高分子量化しているため、耐熱性が向上しており、溶融混練時に凝集することなく重合体組成物全体にわたって粒子の微分散化が達成されていると考えられる。その結果、フィルム中にブツと呼ばれるポリマーの凝集成分の存在を低減させることでき、表面外観に優れたフィルムを得ることが可能となると考えられる。さらに、フィルムの表面の凹凸が微細かつ均一となり、耐ブロッキング性とフィルムの耐傷付き性を改善することができると考えられる。
【0059】
このようなフィルムの具体的な用途としては、食品包装用フィルム(外層、内層、シーラント、単層)、医療包装フィルム、医薬包装フィルム、工業包装フィルム、ストレッチフィルム、ラップフィルム、延伸フィルム、通気性フィルム、防湿シート、滑り止めシート、遮光フィルム、ラミネート基材用フィルム、発泡フィルム、建材表皮材、離形フィルム、例えばフレキシブルプリント基板用離型フィルム、リジット基板用離型フィルム、リジットフレキシブル基板用離型フィルム、先端複合材料用離型フィルム、炭素繊維複合材硬化用離型フィルム、ガラス繊維複合材硬化用離型フィルム、アラミド繊維複合材硬化用離型フィルム、ナノ複合材硬化用離型フィルム、フィラー充填材硬化用離型フィルム、半導体封止用離型フィルム、離型フィルム用クッションフィルム、燃料電池用離型フィルム、各種ゴムシート用離型フィルム、ウレタン硬化用離型フィルム、エポキシ硬化用離型フィルム、表面保護フィルム、例えば樹脂板用保護フィルム、偏光板用保護フィルム、液晶パネル用保護フィルム、光学部品用保護フィルム、レンズ用保護フィルム、電気部品・電化製品用保護フィルム、携帯電話用保護フィルム、パソコン用保護フィルム、鏡面板用保護フィルム、シート用保護フィルム、オフィス用品、サニタリー用品、ゴミ袋を挙げることができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【0061】
以下の実施例において、超高分子量エチレン系重合体の極限粘度[η]、平均粒子径d
50、目開き37μmメッシュ篩を通過した粒子割合は下記の方法によって測定した。また、樹脂組成物およびフィルムの測定を下記のとおり行った。
(極限粘度[η])
極限粘度[η]は、超高分子量エチレン重合体をデカリンに溶解させ、温度135℃のデカリン中で測定した。
(平均粒子径d
50)
平均粒子径d
50は、ベックマン社製マルチサイザー・スリーを用いて、コールターカウンター法による重量基準粒度分布から算出した。
(目開き37μmメッシュ篩を通過した粒子割合)
粒径37μmメッシュ篩を通過した粒子割合については、目開き径37μmの篩を用いて得られた超高分子量エチレン重合体を篩い、当該篩上の粒子質量と粒子全体の質量に対する割合として算出される。
(光学顕微鏡)
下記実施例、比較例における樹脂組成物ペレット中の粒子分散状態は、(株)ニコン製光学顕微鏡(MICROPHOT-FXA)を用いて拡大倍率200倍で測定した。
(フィルムのブツ個数)
下記実施例、比較例における樹脂組成物を、インフレーションフィルム成形機(サーモプラスチック社製、20mmΦインフレフィルム製造装置)にて、シリンダ、ダイス温度ともに二軸押出機での溶融混練温度とし、引取速度2.5m/分、ブローアップ比2.0〜2.5で、厚さ30μmのインフレーションフィルムを得た。
【0062】
このフィルムを5.0cm四方に切出し、存在するブツ(粒径100μm以上のポリマー凝集物)の個数を目視で数えた。
[製造例1]
<架橋超高分子量エチレン重合体の製造>
(i)(A)マグネシウム含有担体成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g(1.0mol)、2−エチルヘキシルアルコール390.6g(3.0mol)にデカンを加え、全体を1000mLとし、130℃で2時間反応を行い、均一溶液を得た。次に、充分に窒素置換した内容積1000mLのフラスコに、前記均一溶液100mL(マグネシウム原子換算で100mmol)、精製デカン50mLおよびクロロベンゼン560mLを装入し、オルガノ社製クレアミックスCLM−0.8Sを用い、回転数15000rpmの攪拌下、液温を0℃に保持しながら、精製デカンで希釈したトリエチルアルミニウム110mmolを、30分間にわたって滴下装入した。その後、液温を4時間かけて80℃に昇温し、1時間反応させた。次いで、80℃を保持しながら、再び、精製デカン希釈のトリエチルアルミニウム202mmolを、30分間にわたって滴下装入し、その後さらに1時間加熱反応した。反応終了後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、100mLのトルエンを加えてマグネシウム含有担体成分のトルエンスラリーとした。
(ii)(B)固体触媒成分の調製
充分に窒素置換した内容積1000mLのフラスコに、前記(A)マグネシウム含有担体成分の調整で得られた成分をマグネシウム原子換算で20mmolおよび精製トルエン600mLを装入し、攪拌下、室温に保持しながら、下記遷移金属化合物(I)のトルエン溶液(0.0001mmol/mL)38.9mLを20分にわたって滴下装入した。1時間攪拌した後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、精製デカンを加えて固体触媒成分(B)の200mLデカンスラリーとした。
【0063】
【化1】
【0064】
(iii)超高分子量エチレン重合体の調製
充分に窒素置換した内容積1LのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mLを装入し、室温でエチレン100L/hrを15分間流通させ、液相及び気相を飽和させた。続いて65℃に昇温した後、エチレンを12L/hrで流通させたまま、トリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al原子で1.0mmol/mL)1.25mL、(B)固体触媒成分をZr原子換算で0.00008mmolを加え、温度を維持したまま3分間攪拌し、エマルゲンE−108(花王(株)製)40mgを加えてすぐ、エチレン圧の昇圧を開始した。10分かけてエチレン圧を0.8MPa・Gに昇圧し、圧を維持するようエチレンを供給しながら70℃で2時間重合を行なった。その後、オートクレーブを冷却し、エチレンを脱圧した。得られたポリマースラリーを濾過後、ヘキサンで洗浄し、80℃で10時間減圧乾燥することにより、超高分子量エチレン重合体(1)40.9gを得た。超高分子量エチレン重合体(1)をコールターカウンター法により測定したところ、平均粒子径d
50は9.0μmであった。生成した超高分子量エチレン重合体粒子の135℃デカリン中で極限粘度[η]は23.0dl/g、目開き37μmメッシュ篩を通過した粒子は全体の99重量%であった。
(iv)架橋超高分子量エチレン重合体の調製
上記(iii)で得られた超高分子量エチレン重合体(1)に対して、照射線量200kGyの電子線を照射することによって、架橋超高分子量エチレン重合体(1)を得た。
[実施例1]
直鎖状短鎖分岐ポリエチレン((株)プライムポリマー製、「エボリュー(SP2040)」、密度:918kg/m
3、コモノマー:1−ヘキセン、MI(230℃、21.18N荷重)3.8g/10分)100重量部に対して、製造例1で得た架橋超高分子量エチレン重合体(1)を10重量部添加し、二軸押出機(テクノベル社製、KZW15−30MG)を用いて、190℃で溶融混練し樹脂組成物(1)を得た。
【0065】
得られた樹脂組成物(1)のペレットを1mm角程度に切出し、2枚のカバーグラス間に配し、ジャパンハイテック(株)製、顕微鏡用冷却加熱ステージ(LK−600)にて樹脂組成物の融点以上まで加熱し、樹脂を溶融させた。カバーグラス上から適当な圧力を加えて薄膜化し、100℃/分で室温まで冷却して、樹脂組成物中の粒子分散状態を(株)ニコン製光学顕微鏡(MICROPHOT-FXA)(200倍)にて観察した。観察結果を
図1に示す。図より明らかなように、粒子同士が凝集することなく分散している様子が確認できた。
【0066】
上記のようにして得られた樹脂組成物(1)を用いて、上述の方法によって厚さ30μmのインフレーションフィルムを得た。このフィルムを5.0cm四方に切出し、存在するブツの個数を目視で数えた。ブツの個数の結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において直鎖状短鎖分岐ポリエチレンを、高密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製、「ハイゼックス(7000F)」、密度952kg/m
3、MI(230℃、21.18N荷重)0.04g/10分)に変更し、250℃で溶融混練した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(2)を得た。
【0067】
得られた樹脂組成物(2)中の粒子分散状態を観察したところ、粒子の凝集は無く、分散状態が良好であることを確認した。また、樹脂組成物(2)を用いて、上述の方法によって得られた厚さ30μmのインフレーションフィルムのブツの個数についても実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において直鎖状短鎖分岐ポリエチレンを、ポリプロピレン((株)プライムポリマー製、「プライムポリプロ(F107)」密度910kg/m
3、MI(230℃、21.18N荷重)が6.0g/10分)に変更し、200℃で溶融混練した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(3)を得た。
【0068】
得られた樹脂組成物(3)中の粒子分散状態を光学顕微鏡にて観察した。観察結果を
図2に示す。図より明らかなように、粒子同士が凝集することなく分散している様子が確認できた。
【0069】
また、樹脂組成物(3)を用いて、上述の方法によって得られた厚さ30μmのインフレーションフィルムのブツの個数についても実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において直鎖状短鎖分岐ポリエチレンを、ポリ4−メチル−1−ペンテン(三井化学(株)製、「TPX(MX002)」密度833kg/m
3、MI(260℃、49.03N荷重)21g/10分)に変更し、270℃で溶融混練した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(4)を得た。
【0070】
得られた樹脂組成物(4)中の粒子分散状態を観察したところ、粒子の凝集は無く、分散状態が良好であることを確認した。
【0071】
また、樹脂組成物(4)を用いて、上述の方法によって得られた厚さ30μmのインフレーションフィルムのブツの個数についても実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において架橋超高分子量エチレン重合体(1)を、製造例1で得た超高分子量エチレン重合体粒子に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(5)を得た。
【0072】
得られた樹脂組成物(5)中の粒子分散状態を光学顕微鏡にて観察した。観察結果を
図1に示す。図より明らかなように、粒子同士が凝集している様子が確認できた。
【0073】
また、樹脂組成物(5)を用いて、上述の方法によって得られた厚さ30μmのインフレーションフィルムのブツの個数についても実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0074】
比較例1は、添加する超高分子量エチレン重合体粒子を、電子線照射処理をしていないため、分子間での架橋が生じず、その結果、耐熱性が悪く、エチレン重合体粒子同士が再凝集し、フィルム外観が悪化した。
[比較例2]
実施例2において架橋超高分子量エチレン重合体(1)を、製造例1で得た超高分子量エチレン重合体粒子に変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物(6)を得た。
【0075】
得られた樹脂組成物(6)中の粒子分散状態を観察したところ、粒子の凝集が生じていることを確認した。
【0076】
また、樹脂組成物(6)を用いて、上述の方法によって得られた厚さ30μmのインフレーションフィルムのブツの個数についても実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例3において架橋超高分子量エチレン重合体(1)を、製造例1で得た超高分子量エチレン重合体粒子に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物(7)を得た。
【0077】
得られた樹脂組成物(7)中の粒子分散状態を光学顕微鏡にて観察した。観察結果を
図2に示す。図より明らかなように、粒子同士が凝集している様子が確認できた。
【0078】
また、樹脂組成物(7)を用いて、上述の方法によって得られた厚さ30μmのインフレーションフィルムのブツの個数についても実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例3において架橋超高分子量エチレン重合体(1)を、製造例1で得た超高分子量エチレン重合体粒子に変更した以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物(8)を得た。
【0079】
得られた樹脂組成物(8)中の粒子分散状態を観察したところ、粒子の凝集が生じていることを確認した。
【0080】
また、樹脂組成物(8)を用いて、上述の方法によって得られた厚さ30μmのインフレーションフィルムのブツの個数についても実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
上記実施例および比較例の対比から明らかなように、本発明において規定される特定の超高分子量エチレン重合体に特定量の放射線を照射して架橋させた架橋超高分子量エチレン重合体を含有するオレフィン系重合体組成物は、粒子同士の凝集が無く、さらに当該組成物を用いてフィルムを作成すると、外観良好なものを得ることができる。
【0083】
特に、
図1における実施例1と比較例1、と
図2における実施例3と比較例3の対比から明らかなように、本発明にかかるオレフィン系重合体組成物は、エチレン重合体粒子同士の再凝集が無く、良好な分散状態であるという驚くべき結果となった。