(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979991
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】工具、又は加工片のクランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/02 20060101AFI20160818BHJP
B23B 31/12 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
B23B31/02 Z
B23B31/12 H
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-128961(P2012-128961)
(22)【出願日】2012年6月6日
(62)【分割の表示】特願2008-519809(P2008-519809)の分割
【原出願日】2006年5月13日
(65)【公開番号】特開2012-187707(P2012-187707A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2012年7月6日
【審判番号】不服2014-19298(P2014-19298/J1)
【審判請求日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】05014919.4
(32)【優先日】2005年7月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508318823
【氏名又は名称】システム 3アール インターナショナル アーべー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−オウウェ キャスペルソン
【合議体】
【審判長】
西村 泰英
【審判官】
栗田 雅弘
【審判官】
落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−316666(JP,A)
【文献】
特開平10−193234(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/046303(WO,A1)
【文献】
特開2003−200326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B31/00-33/00
B23Q3/00-3/154
B23Q3/16-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のチャックと、加工片、又は工具のための少なくとも1個のホルダとを具える、工具、又は加工片のためのクランプ装置において、前記ホルダ(19)は、上部部片(36)と、この上部部片(36)が着脱自在に連結される中空の管状延長部(24)とを有し、該管状延長部(24)は、前記上部部片(36)に連結した状態で中空のままであり、
前記上部部片は、工具、又は加工片のための、平坦な上部面を規定し、
前記チャックは、前記ホルダの前記管状延長部を受け入れるための円形の開口を構成し、
前記ホルダ(19)の前記上部部片(36)を前記中空の管状延長部(24)に着脱自在に連結する構造を、バヨネット連結(26)によって構成し、
少なくとも1個のチャックは、クランプ動作中、前記ホルダの対応する手段と協働するx−y基準面及びz基準面を有することを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記クランプ装置(1)は内部チャック(2)と、外部チャック(3)と、少なくとも1個のホルダ(19)とを有し、前記内部チャック(2)を前記外部チャック(3)に同心に固着連結したことを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記ホルダ(19)の管状延長部(24)を前記内部チャック(2)にクランプできるよう構成したことを特徴とする請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記ホルダ(19)の管状延長部(24)を前記外部チャック(3)にクランプできるよう構成したことを特徴とする請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記ホルダ(19)の管状延長部(24)を前記内部チャック(2)又は前記外部チャック(3)のそれぞれにクランプできるよう構成したことを特徴とする請求項2記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記内部チャック(2)は軸線方向に延びる連続開口(25)を中心に有することを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載のクランプ装置。
【請求項7】
前記内部チャック(2)、及び前記外部チャック(3)の両方はx‐y基準面(8,9)、及びz基準面(10,11)を有し、これ等x‐y基準面、及びz基準面はクランプ動作中、前記ホルダ(19)の対応する手段に協働することを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記x−y基準面(8,9)と係合するための前記ホルダ(19)の前記手段は、前記内部チャック(2)に対応する弾性内部舌片対(20)、及び/又は前記外部チャック(3)に対応する弾性外部舌片対(21)として構成されていることを特徴とする請求項7に記載のクランプ装置。
【請求項9】
前記ホルダ(19)はz基準面(10,11)として、前記内部チャック(2)に対応する内部接触面(22)、及び/又は前記外部チャック(3)に対応する外部接触面(23)を有することを特徴とする請求項7又は8に記載のクランプ装置。
【請求項10】
前記ホルダ(19)は前記内部チャック又は前記外部チャック(2,3)にクランプするための管状延長部(24)を有し、前記管状延長部(24)の外径Dは前記連続開口(25)の内径D′又は前記内部チャック(2)の外径D″の大きさと略同じであることを特徴とする請求項6に記載のクランプ装置。
【請求項11】
前記内部チャック(2)の前記x‐y基準面はz方向に見て、前記外部チャック(3)の前記x‐y平面の表面と同一高さに配置されることを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載のクランプ装置。
【請求項12】
前記ホルダ(19)は中心に連続開口(32)を有し、前記連続開口(32)の直径は前記管状延長部(24)の開口の直径の大きさと略同じであることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも1個のチャックと、加工片、又は工具のための少なくとも1個のホルダとを具える、工具、又は加工片のクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この一般的な形式のクランプ装置は加工片、又は工具をクランプするのに使用されており、加工片の機械加工には非常に高い精度が要求される。更に、x,y及びz方向に、加工片、又は工具を正確に、再現性あるようにクランプすることが必要である。
【0003】
特許文献1(欧州特許出願公開第255042号)には、通常、クランプ方向に合致するz方向に、2個の結合部材(チャックとホルダ)を相互に相対的に、正確に位置決めするため、複数個の直立体を複数個のクランプ部材の1個に設け、前記直立体の自由端面にz基準面を構成したクランプ装置が記載されている。他の結合部材には直立体に対応する配列で、共通平面内にある複数個のz対抗基準面を設け、結合部材を合体、クランプする時、これ等のz対抗基準面をz基準面に協働させる。2個の結合部材をz方向に位置決めするための類似の構成が特許文献2(独国実用新案第29521030号)から既知である。
【0004】
2個の結合部材と、クランプ機構とを具える他のクランプ装置は特許文献3(欧州特許出願公開第1013375号)に開示されている。第1結合部材と、第2結合部材と、これ等の2個の結合部材を軸線方向に合体してクランプするクランプ機構とから成る結合装置が記載されており、少なくとも3個のプリズムピンが第1結合部材から突出しており、各プリズムピンにはその少なくとも一側に、プリズム面を設けており、第1結合部材にはクランプ方向の横方向に延在するx‐y平面内にある少なくとも3個の相互に離間するz基準面を構成し、更に、第2結合部材には少なくとも3個の溝を設け、これ等の溝をプリズムピンに対し配列させると共に、x‐y平面における相互に相対的な結合部材の正確な位置決めのための軸線方向の弾性素子をプリズムピンに設けている。2個の結合部材におけるz方向の位置決めの構造設計を簡単にするため、プリズムピンの自由端面にz基準面を構成し、各溝の溝底にz対抗基準面を構成している。
【特許文献1】欧州特許出願公開第255042号明細書
【特許文献2】独国実用新案第29521030号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1013375号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この技術の現状に関する問題点、及び欠点は以下に記載するとおりである。
【0006】
この先行技術のクランプ装置は一般に、特定の用途のみに使用することができるもので、従って、できるだけ広い範囲の用途をカバーするためには多様なクランプ装置が必要である。例えば動力プレス工程では、特に力を受け易い場合、工具やそのクランプ装置には高い要件が課される。クランプ装置が、例えばフライス加工、研削、放電加工のような種々の機械加工の過程に使用することができ、又は他の工作機械にも使用することができれば一層有利である。同様に、クランプ装置は種々の工具の形状(例えば、放電加工における電極形状)に対しても使用することができ、時間を消費する交換時間を要しないものであるべきである。一つの問題は普遍的に設計されているクランプ装置によって、小さな寸法のホルダと、大きな寸法のホルダとの両方を工具に、又は加工片プレート上の加工片にクランプするための解決策を見出すことである。
【0007】
更に、工具(ドリル、電極等)をクランプするように設計された結合部片内に、負荷に充分に耐えるように工具を固く着座させる空間を設けることが必要である。特に高速フライスカッタの場合、技術の現状ではこの問題はまだ解決すべき問題である。
【0008】
また、クランプボール、又はその他のクランプ素子が原因で、クランプ中、望ましくない側方の力が時々、発生する欠点がある。
【0009】
従って、本発明の目的はこれ等上述した先行技術の欠点を改善したクランプ装置を提案するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上部部片と、この上部部片が着脱自在に連結される管状延長部とをホルダに設けることによって、この目的が達成される。
【0011】
上部部片と管状延長部とから成る2個の部片でホルダを構成する要旨は先行技術の上述の欠点を低減し、又は解消する。
【0012】
本発明の2部片から成るホルダはそれ自身、既知のチャックに使用することができ、また、2個のチャックからなるクランプ装置に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
2個の同心状チャックに関する本発明による別の実施例によって、先行技術において生ずる他の欠点が解消される。第1に、この「ダブルチャック」のおかげで、工具を設けた小形ホルダ、及び工具プレートを設けた大形ホルダの両方を使用することができる。内部チャック、及び外部チャックは類似の又は同一のx‐y基準面を有する。複数のz基準面は同一平面内に、又はほぼ同一平面内に配置されている。これ等2個のチャックのx‐y‐z座標は完全に統合されている。一方のチャックのz座標は他方のチャックのz座標に密接して配置されている。これ等2個のチャックは相互に同軸に連結され、一つのユニットを形成する。連結された状態では、これ等の2個のチャックは完全に心調整されている。別個の調整は必要がない。この本発明装置の故に、先行技術によるチャックに比較し、ほぼ25%小さいまでの相当小さい直径のチャックを製造することが可能である。
【0014】
内部チャックは中心に連続開口を有する。これにより、長いクランプピンと共に、工具を収容することができる。クランプ装置における従来の中心開口は工具、又は加工片のクランプのためではなく、液体の通路として専ら役立っていた。
【0015】
望ましくない側方の力を減少させ、又は消滅させるため、中央の緊締部片を管状の形態にし、バヨネット緊締具として外周縁に設けるのが有利である。
【0016】
内部チャックと、外部チャックとを具え、チャックにホルダをクランプするための管状延長部を具える本発明クランプ装置は特に高速フライスカッタ、放電加工機、又はその他の工作機械において、大きな負荷の許でも、高い正確な精度を得ることができる。
【0017】
ホルダを内部チャック、及び/又は外部チャックに、又は単一チャックにクランプすることができる。
【0018】
好適な実施例によれば、内部チャックは中心に、軸線方向に延びる連続開口を有する。
【0019】
この内部の貫通する開口によって、工具、又は加工片のクランプ素子のための十分な空間が得られる。
【0020】
更に、ホルダは機械加工中生ずる切削屑を排出するための貫通開口を中心に設けることができる。
【0021】
内部チャック、及び外部チャックはx‐y基準面とz基準面とを有し、これ等基準面はクランプ動作中、ホルダの対応する手段と協働する。更に、x‐y基準面のためのホルダの手段は弾性内部舌片対、及び/又は弾性外部舌片対として、有利に構成することができる。
【0022】
チャックの他の有利な実施例はz基準面として内部接触面、及び外部接触面を有するホルダから成る。
【0023】
本発明チャックの好適な実施例によれば、ホルダは内部チャック、及び/又は外部チャックにクランプするための管状延長部を有し、管状延長部の外径Dが連続開口の内径の大きさ程度であり、内部チャックの外径までの大きさである。
【0024】
更に、管状延長部の中心開口の直径は内部x‐y基準面の内縁によって与えられる直径の領域内にあるか、又はその直径の少なくとも半分にすることができる。
【0025】
同様に、ホルダの上部部片における中心開口の直径は管状延長部の直径の大きさ程度にすることができる。
【0026】
内部チャックのx‐y基準面はz方向に見て、外部チャックのx−y平面の表面と同一高さに配置することができる。
【0027】
外部チャックのx‐y基準面、及びz基準面は2個の仮想円内にある。
【0028】
ホルダを内部チャック、及び/又は外部チャック、又は個々のチャックに、既知の方法でクランプすることができる。
【0029】
図面に示す実施例を参照して、以下に本発明を説明する。
【実施例】
【0030】
図1に本発明クランプ装置1の可能な実施例を示す。内部チャック2はねじ18によって、外部チャック3に固着、連結されており、内部チャック2は外部チャック3に対し、同心に配置されている。内部チャック2の基本素子は部片15から成り、これ等の部片15はねじ17によって相互に保持されている。内部チャック2はクランプボール4を有しており、これ等のクランプボ―ル4はそれ自身既知のように、内部クランププランジャ12と、クランプばね5とに協働している。外部チャック3は内部チャック2に対応するように構成されている。外部チャック3の基本素子は部片14から成り、これ等の部片14はねじ16によって相互に保持されている。外部チャックも同様に、クランプボール6、外部クランププランジャ13、及びクランプばね7を有している。2個のクランププランジャ12,13は圧縮空気によって、既知のように作動することができる。両方の内部チャック2、及び外部チャック3はそれぞれ内部x‐y基準面8、外部x‐y基準面9、及び内部z基準面10、外部z基準面11を有する。
【0031】
x‐y基準面8,9,及びz基準面10,11の構成配置は
図2の平面図に見ることができる。内部チャック2の内部x‐y基準面8、及び外部チャック3の外部x‐y基準面9は例えば円錐端縁を有する棒として構成されており、内部x‐y基準面、及び外部x‐y基準面の中心線は非常に正確に合致している。内部x‐y基準面8の間に、内部z基準面10が設けられている。これに対応して、外部チャック3は外部x‐y基準面9の間の周縁側にz基準面11を有しており、これ等z基準面10,11の表面は同一の高さであるか、又は高さがわずかにずれている。
【0032】
図3には、(
図1、及び
図2に示した)クランプ装置1をホルダ19と共に示し、このホルダ19はプレートのための素子として作用する。ホルダ19は上部部片36と、管状延長部24とを有し、バヨネット連結26によって、上部部片36は管状延長部24に着脱自在に連結されている。
図4、及び
図5に示すように、ホルダ19をクランプ装置1にクランプすることができる。更に、ホルダ19には外部舌片対21が見えており、この外部舌片対21は共にクランプして合体した状態では外部x−y基準面9に協働している。更に、内部チャック2の連続開口25が見えている。この適用によれば、
図4に示されているように、管状延長部24の直径Dは連続開口25の直径D′の領域内にあって、内部チャック2の直径D″まで及んでいる。
【0033】
図5の平面図はホルダ19の管状延長部
24を有する上部部片36のバヨネット装置2
6を示している。その他の符号は
図1〜
図4の符号に対応している。
【0034】
図6はホルダ27,28の2つの実施例を示す。両方のホルダ27、及び28は直径Dの着脱自在にした中空の管状延長部24をそれぞれ有しており、直径Dは内部チャック2の連続開口25の直径D′と同程度の大きさである。ホルダ27ははんだ付け、又は接着された収容固定具29を有する。ホルダ28は特殊なチャック30を有する。
図7はクランプして合体した状態にホルダ27を示す。このホルダ27の平面図はx‐y基準面、及びz基準面と共に
図8に示す。x‐y基準面9、及びz基準面11は2つの仮想円37、及び38の間にある。クランプして合体した状態の他のホルダ28は
図9、及び平面図の
図10に示されている。
【0035】
プレート素子のためのホルダ31の側面図が
図11に示されている。特に、ホルダ31は内部舌片対20、及び外部舌片対21と、内部接触面22、及び外部接触面23とを有する。
図12はクランプされた状態のホルダ31を示す。
【0036】
図13はチャック39にクランプされたホルダ19の実施例を示す。工具33によって、加工片34は機械加工されている。ホルダ19は貫通開口32を有し、この貫通開口の直径はホルダ19の管状延長部24における貫通開口の大きさの程度である。図示の実施例では、この連続する開口は機械加工中、生じた切削屑35を排出するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図3】クランプ装置1と共にチャックのホルダを示す。
【
図4】所定位置にクランプされたホルダと共に
図1のクランプ装置の断面図を示す。
【
図5】ホルダと共に
図4のクランプ装置の平面図を示す。
【
図7】クランプされ、合体した状態の
図6による第1実施例を示す。
【
図9】クランプされ、合体した状態に
図6による第2実施例を示す。
【
図12】クランプされ、合体した状態に
図11の実施例を示す。
【
図13】加工片の機械加工中のチャックと共に、ホルダ19の更に他の実施例を示す。
【符号の説明】
【0038】
1 クランプ装置
2 内部チャック
3 外部チャック
4 ボール
5 クランプばね
6 ボール
7 クランプばね
8 内部x‐y基準面
9 外部x‐y基準面
10 内部z基準面
11 外部z基準面
12 内部クランププランジャ
13 外部クランププランジャ
14 部片
15 部片
16 ねじ
17 ねじ
18 ねじ
19 ホルダ
20 内部舌片対
21 外部舌片対
22 内部接触面
23 外部接触面
24 管状延長部
25 連続開口
26 バヨネット連結
27 ホルダ
28 ホルダ
29 収容固定具
30 チャック
31 ホルダ
32 貫通開口
33 工具
34 加工片
35 切削屑
36 上部部片
37 円
38 円
39 チャック
D 24の外径
D′ 25の内径
D″ 2の外径