特許第5980045号(P5980045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5980045-リザーブタンク構造 図000002
  • 特許5980045-リザーブタンク構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980045
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】リザーブタンク構造
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20160818BHJP
   F01P 11/04 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   F01P11/00 C
   F01P11/04 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-183568(P2012-183568)
(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-40802(P2014-40802A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】久保 大智
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−203816(JP,A)
【文献】 実開平05−015656(JP,U)
【文献】 実開昭60−052338(JP,U)
【文献】 実開昭60−128934(JP,U)
【文献】 特開平06−221156(JP,A)
【文献】 特開2004−251169(JP,A)
【文献】 特開2002−174122(JP,A)
【文献】 実開昭62−076795(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
F01P 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上面と側面と下面を有するリザーブタンク構造であって、
前記下面から下方に突設され、前記側面方向に向いた開口が前記下面より下方に位置する筒状の挿入部を突設面に配設された最下部と、
前記下面に連結部を介して連結された前記側面に形成されたクランプ部と、
前記下面と前記側面の連結部に設けられた凹部と、
一端が前記挿入部に挿入され、前記凹部に当接され、前記クランプ部で保持されたリザーブタンクホースを有し、
前記開口方向の軸線上の位置で前記開口と前記凹部と前記クランプ部が前記突設面からこの順にならんでいることを特徴とするリザーブタンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン冷却系に用いられるラジエータのリザーブタンク構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等に用いられるエンジンは、高熱を発するため、冷却するための冷却システムを有する。自動車のように、エンジンを車体内部に配置させる場合、安定した冷却能を得るために、冷却水を用いた水冷システムが用いられる。水冷システムは、シリンダヘッドおよびシリンダヘッドに隣接するシリンダブロック周囲に直接水を流して冷却するウォータージャケットと、ウォータージャケットからの高温の冷却水を冷却するラジエータによって構成される。つまり、水冷システム中では冷却水が循環することで、熱交換が行われる。
【0003】
水冷システム中を循環する冷却水は、温度によって体積が膨張する。そのため、冷却水の循環路を固定容積とすると、冷却水の体積膨張によって、冷却水を収容できなくなるおそれがある。そこで、体積膨張を吸収するために、水冷システムでは、リザーブタンクが用意される。
【0004】
リザーブタンクは、冷却水の循環系とホース(以後「リザーブタンクホース」と呼ぶ。)で連通される、バッファ空間である。循環系から溢れた冷却水は、リザーブタンクに貯留される。また、リザーブタンクには、一定量の冷却水を貯留させておき、冷却水の循環系で不足が生じた場合は、ここから供給する。
【0005】
このようなリザーブタンク構造では、リザーブタンクと冷却水の循環系とを連通させるリザーブタンクホースの取り回しに課題が生じる。リザーブタンクホースは、可撓性を有する素材で作製される。リザーブタンクおよびリザーブタンクホースは、組み付けの際には、エンジンおよびラジエータ搭載後に取り付けられるため、可撓性を有することが作業の容易性を高めるからである。
【0006】
エンジン室内は、常時振動に曝されるので、可撓性のリザーブタンクホースは、振動する。そこで、振動によって、取り付け部分が外れる、若しくは損傷を受けるといった課題が生じる。また、周囲に位置する他の部材と干渉を起こすことで、ホースが損傷を受けるといった場合もある。さらに、メンテナンスの際に、作業箇所へのアプローチの邪魔になるといった課題も発生する。したがって、リザーブタンクホースは、できるだけ、リザーブタンクに沿わせて取り回すことが必要とされる。
【0007】
このような課題に対して、特許文献1には、リザーブタンクの上部に設けたキャップに、冷却水の循環系と連通するためのパイプと、リザーブタンク自体の容量オーバーによってオーバーフローする冷却水を排出するためのオーバーフローホースを有するリザーブタンク構造が開示されている。
【0008】
ここで開示されたオーバーフローホースは、一方の開口からL字エルボーが形成され、他方の開口とL字エルボーとの間に凸部が形成されている。そして、一方の開口は、リザーブタンク上部のキャップに設けられたオーバーフロー用パイプに挿入され、リザーブタンク側面に設けられた凹部に凸部を嵌合させる。このようにして、オーバーフロー用パイプとリザーブタンク側面の凹部によって、オーバーフローホースを固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−221156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1で開示された発明では、オーバーフローホースをリザーブタンクの外面に沿って取り回しているので、振動によって発生する課題や、メンテナンスの際に作業の邪魔になるという点については、解決策が講じられているといえる。
【0011】
しかし、特許文献1のオーバーフローホースの取り回しでは、リザーブタンクとの係止点が、オーバーフローホースの凸部であるので、キャップのパイプへの連結部分と、凸部の間の距離の公差が非常に厳しく規制されなければならない。もし、凸部からパイプまでの距離が短ければ、パイプとオーバーフローホースの接続が十分でなくなる。また、リザーブタンクの上面と側面が作る角部に、過度にオーバーフローホースを押し付けることになるため、損傷するおそれもある。
【0012】
また、キャップのパイプへの連結部分と、凸部の間の距離が、長ければオーバーフローホースが、リザーブタンク外面から浮いてしまう。必要以上の浮きは、振動によって発生する課題が再発してくる。
【0013】
また、特許文献1のリザーブタンク構造では、リザーブタンク内の冷却水の出入り口をリザーブタンク上部に配置しているので、キャップからタンクの底まで繋がる吸出しパイプを配する必要があり、構造が複雑になってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みて想到されたものであり、リザーブタンクホースを確実にリザーブタンク外面に沿わせ、固定することができるリザーブタンク構造を提供するものである。
【0015】
より具体的には、本発明に係るリザーブタンク構造は、
少なくとも上面と側面と下面を有するリザーブタンク構造であって、
前記下面から下方に突設され、前記側面方向に向いた開口が前記下面より下方に位置する筒状の挿入部を突設面に配設された最下部と、
前記下面に連結部を介して連結された前記側面に形成されたクランプ部と、
前記下面と前記側面の連結部に設けられた凹部と、
一端が前記挿入部に挿入され、前記凹部に当接され、前記クランプ部で保持されたリザーブタンクホースを有し、
前記開口方向の軸線上の位置で前記開口と前記凹部と前記クランプ部が前記突設面からこの順にならんでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るリザーブタンク構造は、リザーブタンクホースをリザーブタンク外面に沿って、たわみなく取り回すことができるので、ラジエータとリザーブタンクホースの接続部分における寸法の誤差を容易に吸収することができるという効果を奏する。
【0017】
また、リザーブタンクの最下部から側面の取り回しの際に、リザーブタンクホースが当接する凹部を側面と下面の稜線に設けたので、稜線の角でリザーブタンクホースが損傷を受けることがない。また、リザーブタンクホースを凹部に当接させることで、たわみなくリザーブタンクホースを取り付けることができる。
【0018】
また、冷却水の出入り口をタンク下部から突設させた最下部に設けたので、リザーブタンク内に冷却水の吸出し構造を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るリザーブタンク構造を有するリザーブタンクとリザーブタンクホースを示す斜視図である。
図2図1のリザーブタンクをA−Aで切断した切断図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を用いて本発明について説明する。なお、以下の説明は本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明の趣旨から外れない範囲内で、下記の実施形態を変更しても、本発明の技術的範囲に含まれるのは言うまでもない。
【0021】
図1に本発明に係るリザーブタンク構造1を有するリザーブタンク2およびリザーブタンクホース3を示す。なお、リザーブタンクホース3は外れている状態を示している。リザーブタンク2は、少なくとも互いに連結された上面10と側面11と下面12を有する容器である。上面10と下面12の間に側面はいくつあってもよいが、少なくとも1つの側面は、上面10と下面12に連結されている。
【0022】
リザーブタンク2の形状は特に限定されず、エンジン室内の配置によって様々に設計される。したがって、上面10と下面12は、必ずしも水平面でなくても良い。また、上面10及び下面12と、側面11の関係は必ずしも直角に連結されていなくてもよい。側面11と下面12との連結箇所を連結部20と呼ぶ。
【0023】
リザーブタンク2には、上面10に蓋部13が設けられる。冷却液を注入するためである。また、下面12からは、最下部15が突設されている。最下部15の形状も特に限定されない。また最下部15は少なくとも下面12より下方に設けられた空間であればよい。ただし、リザーブタンク2にとって、最下部15よりも重力方向で下方に設けられた空間は設けられない。
【0024】
最下部15は、下面12に対して突設面15aを有する。すなわち、突設面15aからみて下面12は庇といえる。下面12と突設面15aとの関係も直角である必要はない。
【0025】
図2には、図1でリザーブタンク2だけのA−A断面を示す。突設面15aには、リザーブタンクホース3に挿入される挿入部16が設けられる。挿入部16は、一端が突設面15aに連通された筒形状をしている。他端は開口16aとなる。つまり、開口16aから最下部15内部は連通している。挿入部16は、リザーブタンクホース3に挿入されるので、外面には、抜けを抑制するための返し構造が設けられていても良い。
【0026】
挿入部16は、リザーブタンクホース3を固定する手段の一部であるので、リザーブタンクホース3が十分に固定される程度の長さを有する。一方、リザーブタンクホース3は急激に配置方向を変えられると、折れが生じ、破損の発生箇所となるおそれがある。
【0027】
リザーブタンクホース3に急激な折れを発生させないためには、リザーブタンクホース3をできるだけ大きな曲率で配置させる必要がある。もし、開口16aが側面11と下面12の連結部20の直下に配置されると、リザーブタンクホース3を大きな曲率で取り回すと、側面11から大きく離れてしまう。
【0028】
したがって、開口16aは、下面12より下方に位置し、リザーブタンクホース3が大きな曲率で曲がった際に、側面11からあまり離れない程度、突設面15aに近いことが必要である。図2(b)には、挿入部16周辺の拡大図を示す。開口16aは、連結部20の凹部22の下面12側の開始点22sの位置より、突設面15aに近い位置に配置されている。
【0029】
側面11には、リザーブタンクホース3を保持するクランプ部11cが設けられる。クランプ部11cの設定数に特に制限はない。また、上面10にクランプ部10cを設けても良い。リザーブタンクホース3を、最下部15から側面11上および上面10上で保持するためである。
【0030】
図2(b)では凹部22の開始点22sから距離dだけ突設面15a側に配置されている状態を示す。本発明に係るリザーブタンク構造1では距離dは常に突設面15a方向を正方向として正の値を有する。
【0031】
下面12と側面11との連結箇所である連結部20には、凹部22が設けられる。凹部22は、連結部20の一部に設けられる。この凹部22にリザーブタンクホース3を当接させる。
【0032】
凹部22は、リザーブタンクホース3が連結部20の角で急激に折れ曲がるのを緩和するために設けられる。したがって、凹部22はリザーブタンクホース3が滑らかに当接できるように設けられれば良い。
【0033】
以上のような構造を有するリザーブタンク2にリザーブタンクホース3を取り付ける手順を説明する。リザーブタンクホース3の一端の開口部分に、挿入部16を挿入する。この場合、リザーブタンクホース3の一端が、突設面15aに当接するまで挿入してよい。
【0034】
次に、リザーブタンクホース3を凹部22に当接させながら、側面11のクランプ部11cで保持する。このようにすると、挿入部16、凹部22、クランプ部11cの3点でリザーブタンクホース3を保持することができる。したがって、リザーブタンクホース3にたわみ等が生じない。
【0035】
リザーブタンクホース3は、さらに、上面10のクランプ部10cに保持させてもよい。上面10側では、上面10とリザーブタンクホース3との間の距離が離れていても良い。上面10は冷却水を注入するための蓋部13が設けられているので、上面10の上方は空き空間が確保される。したがって、他の部材と干渉するおそれが低いからである。
【0036】
以上のように本発明のリザーブタンク構造1では、リザーブタンクホース3をリザーブタンク2に沿わせて取り回しでき、また、リザーブタンクホース3に過度の曲げを与えない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、自動車等のようにエンジンをボディで覆う構造で用いるリザーブタンクだけでなく、オートバイなどのように、露出したエンジン構造に用いるリザーブタンクにも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 リザーブタンク構造
2 リザーブタンク
3 リザーブタンクホース
10 上面
10c クランプ部
11 側面
11c クランプ部
12 下面
13 蓋部
15 最下部
15a 突設面
16 挿入部
16a 開口
20 連結部
22 凹部
図1
図2