特許第5980049号(P5980049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980049
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】消音器及びその振動板部の振幅調整方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 11/14 20060101AFI20160818BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61F11/14
   G10K11/16 H
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-187975(P2012-187975)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-42752(P2014-42752A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】512223836
【氏名又は名称】義積 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】義積 泰典
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3087152(JP,U)
【文献】 特開平6−200730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 11/06−11/14
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の耳に適用する消音器であって、
筒状の消音器本体を備え、該消音器本体は、
耳の鼓膜側に配される内側部と、
該内側部から拡径するように該内側部の筒軸方向に沿って延設された、外界側に配される外側部と、
を有し、
前記内側部の開口を覆うように振動板部が設けられ、該内側部の開口より面積が大きい前記外側部の開口を覆うように集音板部が設けられ、
さらに該消音器本体の内空部には、
前記内側部の筒軸方向に直交するように設定されており、該消音器本体の側壁に回動自在に取り付けられているテコ軸部と、
該テコ軸部から集音板部へ向かって延設され、端部が該集音板部に固着された集音板部側ロッド部と、
該テコ軸部から振動板部へ向かって延設され、端部が該振動板部に固着された振動板部側ロッド部と、
を有する振動伝達テコ部材が備えられており、
前記集音板部が音波によって振動した際に、該集音板部の振動に伴い前記振動伝達テコ部材が前記テコ軸部を中心にして回動することで、前記振動板部が前記集音板部とは逆位相で振動する
ことを特徴とする消音器。
【請求項2】
前記消音器本体の内空部であって、前記振動伝達テコ部材のテコ軸部と集音板部との間には、前記集音板部側ロッド部が挿通される貫通部が設けられた遮蔽板が配設されている
請求項1に記載の消音器。
【請求項3】
前記遮蔽板が配置された位置に対応する消音器本体の側壁には、該側壁を貫通する開孔が設けられている
請求項2に記載の消音器。
【請求項4】
前記消音器本体の外側部の筒軸線が、前記内側部の筒軸線に対して偏心しており、該内側部の筒軸線が前記集音板部の中心を通らない構成となっている
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の消音器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の消音器にあって、前記集音板部および前記振動板部に対する前記振動伝達テコ部材におけるテコ軸部の位置を変更することで、該集音板部の振動に伴って該振動板部が振動した際の振幅を調整することを特徴とする消音器における振動板部の振幅調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の耳に適用する消音器、及びその振動板部の振幅調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部の騒音を遮断するための耳栓として、可塑性を有する材料を用いて外耳道に挿入するものが開示されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
また、外部の騒音を電子回路を用いて電気信号として入力し、それと逆位相の信号を出力することによって騒音の音波を相殺し、不要な騒音のみを選択的に遮断するもの(いわゆるノイズキャンセラー)も開示されている(例えば、特許文献3)。
このように電子回路を用いて消音するものは、耳栓に限らず、排気口や冷却ファンなどから発生する雑音やノイズ音に対するものや、大きな騒音を発生する磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)に対するものも既に開示されている(例えば、特許文献4,5)。
【0004】
更に、枠体に固定された相対する2枚の振動板を機械式逆位相化振動伝達機構によって連結し、一方の振動板の振動を機械的に逆の位相の振動に変えて他方の振動板に伝達することで消音効果を発揮する消音壁も開示されている(例えば、特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4047162号公報
【特許文献2】特開平11−000357号公報
【特許文献3】特開2008−099163号公報
【特許文献4】特開2005−234203号公報
【特許文献5】特開2005−152420号公報
【特許文献6】特許第3136562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2の耳栓は簡易な構成で有用ではあるが、耳栓自体を通り抜けた音を遮断することができず、完全に遮音された状態を作ることは極めて難しい。
【0007】
また上記特許文献3のノイズキャンセルヘッドフォンは、電子回路を使用するため装置が複雑化し、高価なものとなり、また回路を動作させるために余分な電力を消費することになる。これは上記特許文献4,5に開示された構成も同様である。
【0008】
更に、MRI装置を用いた検査時においては、通常、使用者には耳栓を装着させることが一般的である。しかし該MRI装置は、強力な電磁場を発生させるため、検査を阻害してしまうことを避けるべく使用者は基本的に金属類を身につけることができない。そのため、結局、上記特許文献1,2のような耳栓を使わざるを得ない状況であった。
【0009】
更に、上記特許文献6に記載の消音壁は、一方の振動板と他方の振動板との表面積が同一であることが大前提であり、一方の振動板の振動を他方の振動板の振動へ伝達する機械式逆位相化振動伝達機構の摩擦等によるエネルギー減衰に起因して、騒音の音波振動に対して振動板の振動がずれてしまい、消音効果が低下するという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、できるだけ簡易な構成で、電子機器に頼ることなく例えばMRI装置を用いて診断する際にも使用でき、好適に消音できる消音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、人の耳に適用する消音器であって、筒状の消音器本体を備え、該消音器本体は、耳の鼓膜側に配される内側部と、該内側部から拡径するように該内側部の筒軸方向に沿って延設された、外界側に配される外側部と、を有し、前記内側部の開口を覆うように振動板部が設けられ、該内側部の開口より面積が大きい前記外側部の開口を覆うように集音板部が設けられ、さらに該消音器本体の内空部には、前記内側部の筒軸方向に直交するように設定されており、該消音器本体の側壁に回動自在に取り付けられているテコ軸部と、該テコ軸部から集音板部へ向かって延設され、端部が該集音板部に固着された集音板部側ロッド部と、該テコ軸部から振動板部へ向かって延設され、端部が該振動板部に固着された振動板部側ロッド部と、を有する振動伝達テコ部材が備えられており、前記集音板部が音波によって振動した際に、該集音板部の振動に伴い前記振動伝達テコ部材が前記テコ軸部を中心にして回動することで、前記振動板部が前記集音板部とは逆位相で振動することを特徴とする消音器である。
【0012】
かかる構成にあって、外部の音はまず集音板部を振動させる。該集音板部が振動すると、これに接続されている振動伝達テコ部材がテコ軸部を中心に回動し、振動板部を振動させる。このとき、該振動板部は、集音板部とは逆位相で振動する。即ち、前記集音板部側ロッド部と前記振動板部側ロッド部とが連動することによって該集音板部と該振動板部とが逆方向に振動することになり、外界で発せられた音波と、該振動板部の振動によって形成された圧力波とが打ち消し合い、これによって外部の音が好適に消音される。
【0013】
ところで、テコ軸部の回動時に発生する摩擦抵抗等によって、振動板部の振動は外音の振動より小さくなることが考えられる。しかし、振動板部の方が集音板部よりも面積が小さいために、上記理由により振動板部の振動が外音の振動より小さくなったとしても該振動板部は十分な振幅で振動し、適切な逆位相波を発生させることができる。また、本発明は、いわゆるてこの原理を利用して振動板部を振動させる構成であり、電子回路を不要とし、構成材料全てを非金属(合成樹脂等)によって構成することができる。このため、例えば、金属を身に付ける事のできないMRI装置の使用中にあっても、使用することができる。
【0014】
また、前記消音器本体の内空部であって、前記振動伝達テコ部材のテコ軸部と集音板部との間には、前記集音板部側ロッド部が挿通される貫通部が設けられた遮蔽板が配設されていることが望ましい。
【0015】
かかる構成とすることにより、前記集音板部を通り抜けた音(振動)は、前記遮蔽板によって反射又は吸収されることで部分的に遮蔽されるため、振動板部の面積が集音板部の面積に比して小さくても十分に消音効果が期待できる。
【0016】
前記遮蔽板が配置された位置に対応する消音器本体の側壁には、該側壁を貫通する開孔が設けられていてもよい。
【0017】
かかる構成とすることにより、前記消音器本体内部に侵入した音(振動)や、該消音器本体や前記遮蔽板によって反射した音(振動)が前記開孔から外部へと向かうため、消音器本体の内空部を振動板部方向へ通過する音(振動)が制限される。このため、前記振動板部の面積が集音板部に比して小さくても十分に消音効果が期待できる。また、外部の音(振動)が遮蔽板で反射した際又は吸収された際に該遮蔽板の周囲で圧力変動が生じても、該開孔を介して好適にその圧力変動を緩和させて上記消音効果を阻害しないようにすることが可能となる。
【0018】
更に、前記消音器本体の外側部の筒軸線が、前記内側部の筒軸線に対して偏心しており、該内側部の筒軸線が前記集音板部の中心を通らない構成としていることが望ましい。
【0019】
かかる構成とすることにより、例えば前記消音器を耳栓として集音板部側を外界に向け、振動板部側を鼓膜側に向けた場合、前記外側部における筒軸線と前記内側部の筒軸線とが一致した構成のものよりも、より使用者の耳の内周面に消音器本体を密着させることが可能になり、より一層消音効果を向上させることができる。
【0020】
また、本発明は、上記消音器にあって、前記集音板部および前記振動板部に対する前記振動伝達テコ部材におけるテコ軸部の位置を変更することで、該集音板部の振動に伴って該振動板部が振動した際の振幅を調整することを特徴とする消音器における振動板部の振幅調整方法である。
【0021】
このように、前記振動伝達テコ部材のテコ軸部の位置を調整して、前記ロッド部の全長等を変更することで、外部の騒音に対して最も優れた消音効果が得られるように前記振動板部を振動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の消音器は、電子機器などを使用することなく、したがって電力を用いる必要がなく、従来の耳栓等の消音器よりも格段に優れた消音効果を発揮することができる。更に樹脂材料等を使用して作成することで金属を用いる必要もなくなり、金属を身に付けることが不可能な状況(例えばMRI装置による診断中)においても使用することが可能である。
【0023】
また本発明の振幅調整方法は、使用条件に応じて、最も効果的な消音効果が得られる消音器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1にかかる消音器であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は縦断面図。
図2】実施例1にかかる消音器の構成を説明するための説明図。
図3】消音効果を確認するための実験の模式図。
図4】実施例2にかかる消音器であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は縦断面図。
図5】実施例3にかかる消音器であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は縦断面図。
図6】実施例4にかかる消音器を備えたヘッドセットの斜視図。
図7】実施例5にかかる消音器を備えたヘッドセットの耳あて部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の消音器を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0026】
〔実施例1〕
人の耳に適用する消音器の消音効果を確かめるべく、実験用モデルとしての消音器1Aを作成した。図1,2に消音器1Aを示す。
【0027】
消音器1Aは、筒状の消音器本体2を備えている。該消音器本体2は、耳の鼓膜側に配される内側部3と、該内側部3から拡径するように該内側部3の筒軸方向に沿って延設された、外界側に配される外側部4を備えている。なお、前記外側部4は、内側部4と連成するテーパー部4aと、該テーパー部4aから延設されている直管部4bとで構成されている。
【0028】
また、前記消音器本体2の外側部4には、その開口を覆うようにして薄板状の集音板部5が配設されている。さらに、該消音器本体2の内側部3には、その開口を覆うように薄板状の振動板部6が配設されている。なお、該集音板部5は該振動板部6に比して面積が大きくなるように寸法設計されている。また、該集音板部5および該振動板部6はそれぞれ該消音器本体2の内側部3の筒軸線に対して直交しないように斜めに配向されている。
【0029】
更に前記消音器本体2の内空部に、該内側部3の筒軸方向に直交するように設定され、前記外側部4の側壁に回動自在に取り付けられているテコ軸部7を有する振動伝達テコ部材8が備えられている。さらに詳述すると、該振動伝達テコ部材8は、前記テコ軸部7から集音板部5に向かって延設され、その端部が該集音板部5に固着された集音板部側ロッド部8aを備えている。また、該テコ軸部7から振動板部6に向かって延設され、その端部が該振動板部6に固着された振動板部側ロッド部8bも備えている。
【0030】
また更に、前記消音器本体2の内空部には、前記集音板部側ロッド部8aを貫通させるための貫通孔で構成された貫通部9aが中央に設けられた遮蔽板9が設けられている。具体的に該遮蔽板9は、前記集音板部5の方向に向かうに従い縮径する形状に構成されている。また、該遮蔽板9が配置された位置に対応する外側部4の側壁には、開孔10が貫通状に複数設けられている。なお、前記貫通部9aは、切欠部で構成されていてもよい。
【0031】
上記構成にあって、図2aに示すように、前記集音板部5が外部で発生した音波によって振動した場合、これに伴い該集音板部5に固着された前記集音板部側ロッド部8aがその軸方向に連動し、これに起因して、図2bに示すように、前記振動伝達テコ部材8が前記テコ軸部7を中心にして回動する。そうすると、前記振動板部側ロッド部8bがその軸方向に連動することで、前記振動板部6が前記集音板部5とは逆位相で振動することになる。
【0032】
これにより、外界で発せられた音波と、該振動板部6の振動によって形成された圧力波とが打ち消し合い、これによって外部の音が好適に消音される。
【0033】
なお、本実施例においては、消音器1Aとして、消音器本体2は塩化ビニル製の管材を用いた。
集音板部5としては直径50mmのスピーカーのコーンを使用し、振動板部6としては直径20mmのスピーカーのコーンを使用した。
振動伝達テコ部材8は、熱可塑性樹脂材料からなる成形品を使用した。
遮蔽板9としては熱可塑性樹脂材料からなる円錐台形状の成形品を使用した。
【0034】
本実施例における集音板部5と振動板部6との面積比は6.25:1である。この集音板部5と振動板部6との面積比、又は集音板部5及び振動板部6に対するテコ軸部7の相対位置によって、図2(a),(b)に示すように、集音板部5が拾う振動αに対する最適な逆位相の振動βを発生させることができる。
【0035】
また前記集音板部5を通過した振動は遮蔽板9によって大部分が反射され、開孔10から外部zへ向かい、該遮蔽板9の貫通部9aを通過した振動のみが前記振動板6部側へ向かうことになる。
【0036】
上記消音器1Aの消音効果を確かめるため、図3に模式的に示したような試験を行った。すなわち、所定内径の塩化ビニル製パイプPに該消音器1Aを挿入し、集音板部5側からスピーカーSによって音波を発し、該パイプP内の該消音器1Aとは反対側にマイクMを設置して、マイクMで検出される音波が減衰されているかどうかを確認した。
【0037】
比較例1として、振動伝達テコ部材8を取り外した消音器を使用した。また、比較例2として、消音器の代わりにゴム栓とし、これをパイプPに差し込んで確認試験を行った。
【0038】
上記実験の結果、実施例1の場合について、振幅の低減が確認できた。一方、比較例1、比較例2については、効果的な振幅の低減が確認できなかった。さらに、実施例1については、オシロスコープを用いて振動板部6が集音板部5に対して逆位相で振動することが確認された。
【0039】
なお、前記遮蔽板9は、公知の吸音材料で構成してもよい。以下の実施例において示される遮蔽板9についても同様である。また、適宜、前記消音器1Aを耳栓とした場合に、装着時において集音板部5又は振動板部6が適切な方向を向くように消音器本体2の外観形状を設計することが好ましい。また、集音板部5は、外側部4の開口端に配設されてもよいが、破損予防のため、該開口端よりやや内側に配置することが好ましい。振動板部6についても同様である。また、外側部4の開口端に、その開口面積を調整できる開口面積調整手段を配設してもよい。
【0040】
〔実施例2〕
図4に、耳栓として使用される消音器1Bを示す。
各部の符号は実施例1と同様であり、実施例1と共通する部分については説明を簡略又は省略する。
【0041】
消音器1Bにあっては、前記外側部4の筒軸線Yが、前記内側部3の筒軸線Xに対して偏心して形成され、該内側部3の筒軸線Xが前記集音板部5の中心を通らない構成となっている。これによって、該消音器1Bの外側部4が使用者の耳の内周面に密着しやすくなる。また、振動伝達テコ部材8の寸法形状が最適化され、効率良く振動伝達することが可能となる。
【0042】
更に前記振動板部6は、該消音器本体2の内側部3の筒軸線Xに直交しないように斜めに設けられており、該消音器1Bが耳に装着された際、該振動板部6が使用者の鼓膜に向かう形となるように設計されている。かかる構成により、より一層高い消音効果が得られる。
【0043】
〔実施例3〕
耳栓として使用される消音器1Cを図5に示す。各部の符号は実施例1,2と同様である。
【0044】
本実施例においては実施例2とは異なり、振動板部6だけでなく集音板部5も消音器本体2の内側部3の筒軸線Xに直交しないように斜めに配向されている。かかる構成としても、十分な振幅で振動板部6を振動させて消音効果を得ることができる。
【0045】
〔実施例4〕
消音器1Dを用いたヘッドセットH1を図6に示す。
本実施例においては、ヘッドセットH1の耳あて部11に消音器1Dが取り付けられている。この場合、該消音器1Dの内側部3はヘッドセットH1の使用者の耳内部に挿入されることはなく、使用時において該耳あて部11内周に設けられた遮音スポンジ12によって使用者の耳が覆われることとなる。
【0046】
本実施例においては、該耳あて部11の遮音スポンジ12より内側にスピーカー(図示省略)を配置し、外部の騒音を好適に消音するヘッドフォンとすることもできる。
【0047】
〔実施例5〕
本実施例の消音器1Eを用いたヘッドセットH2の耳あて部13の断面図を図7に示す。
【0048】
本実施例においては、ヘッドセットH2の耳あて部13を吸音性材料によってドーム状に形成し、その一部に孔部14を設けて該消音器1Eの消音器本体2を構成している。そして、該消音器本体2には集音板部5と振動板部6とが設けられている。
【0049】
また、該ヘッドセットH2の耳あて部13にはスピーカー15が備えられており、該スピーカー15から出力される音は確実に使用者に聞こえ、外部の騒音は該消音器1Eによって好適に消音される。
【0050】
ここに、該耳あて部13を吸音性材料ではなく硬質材料を用いて空洞状に形成し、該空洞内に吸音性材料を充填するようにしてもよい。その場合、前記消音器本体2の外側部4には開孔10が設けられていてもよい。
【0051】
本発明の消音器は、金属類の持ち込みが禁止されるような場所(MRI装置による診断等)においても使用可能なように全体を合成樹脂で製造し、耳栓として使用することが可能であり、消音効果も非常に高いものが提供可能となる。また消音効果が高いため、睡眠時の安眠用として、あるいは大きな騒音が発生する作業現場等でも使用でき、安価に製造することが可能である。
【0052】
更に、本発明の消音器1A〜1Eは、前記集音板部5および前記振動板部6に対する前記振動伝達テコ部材8におけるテコ軸部7の位置を変更することで、該集音板部5の振動に伴って該振動板部6が振動した際の振幅を調整することができ、これにより、該振動板部6が消音効果を発揮する最適な状態とすることが可能である。
【0053】
また、本発明の消音器1A〜1Eは、実施例2,3の耳栓、実施例4,5のヘッドセットに限らず、例えば作業現場におけるヘルメット等、使用環境に対応した形態で適用することができる。
【0054】
なお、振動伝達の効率を考慮すれば、消音器本体2は硬質材料で構成されることが望ましく、また集音板部5および振動板部6は、出来る限り薄いフィルム形状であることが望ましい。
【0055】
ところで、これまでに述べた消音器1A〜1Eは、軽量化されることに伴って、集音板部5の振動に対する振動板部6の追従性が向上するため、より一層消音効果が向上し、該消音効果が発揮される音域が広がることも推察される。したがって、軽量化が進むほど、機械的動作部(具体的には、集音板部5、振動板部6、及び振動伝達テコ部材8)の共振現象による不具合は無視できるようになるものと考えられる。
【符号の説明】
【0056】
1A〜1E 消音器
2 消音器本体
3 内側部
4 外側部
5 集音板部
6 振動板部
7 テコ軸部
8 振動伝達テコ部材
8a 集音板部側ロッド部
8b 振動板部側ロッド部
9 遮蔽板
9a 貫通部
10 開孔
X,Y 筒軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7