(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980085
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】除塵機
(51)【国際特許分類】
E02B 5/08 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
E02B5/08 104Z
E02B5/08 104C
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-225865(P2012-225865)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-77296(P2014-77296A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】中町 和雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝之
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−078558(JP,A)
【文献】
実開平01−047825(JP,U)
【文献】
国際公開第98/055699(WO,A1)
【文献】
実開昭60−130819(JP,U)
【文献】
特開平01−182407(JP,A)
【文献】
特開昭52−137141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00−15/10
E02C 1/00−5/02
E03F 1/00−11/00
B01D 23/00−23/28
B01D 27/00−27/12
B01D 33/00−33/40
B03B 1/00−13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路内の塵芥を捕捉するバースクリーンと、該バースクリーンで捕捉した塵埃を水路外に排出するレーキと、モータを駆動源として前記レーキを前記バースクリーンに沿って昇降させるレーキ駆動手段とを備えた除塵機において、前記レーキは、前記レーキ駆動手段に連結された上下方向のレーキアームと、該レーキアームの下端部から前記バースクリーンに向かって突出した櫛歯状のレーキ部とを備えるとともに、前記レーキアームと前記レーキ部との接続部に、内部にガスを封入した浮力部材を設けたことを特徴とする除塵機。
【請求項2】
前記レーキアームの下端部に前記浮力部材が設けられ、該浮力部材から前記レーキ部が突出していることを特徴とする請求項1記載の除塵機。
【請求項3】
前記浮力部材は、金属製中空部材であることを特徴とする請求項1又は2記載の除塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵機に関し、詳しくは、水路を流れる流水中の塵芥をバースクリーンで捕捉し、該バースクリーンで捕捉した塵芥をレーキによって自動的に水路外に排出する除塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
取水口,分水口,揚排水機場等の水路に設けられる除塵機は、一般に、水路内に配設したバースクリーンにより水路を流れる塵芥を捕捉し、捕捉した塵芥をスクリーンの前面に沿って上昇するレーキにより掻き揚げ、レーキの上昇端付近の下方に設けたシュート内に落下させて水路内から除去するように構成されている。このような除塵機におけるレーキの駆動方式として、ロータリーレーキ式の除塵機(例えば、特許文献1参照。)及びピンラック式の除塵機(例えば、特許文献2参照。)が広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−12521号公報
【特許文献2】特開平5−263410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の除塵機は、一般に、水路を横切るようにバースクリーンを固定するとともに、該バースクリーンの上流側の両側壁に一対の側部フレームや側板をそれぞれ固定し、この側部フレームや側板に、レーキをガイドするガイドレールや駆動機構を取り付けるようにしている。したがって、水路の幅が広くなるとバースクリーンの横幅も大きくなり、バースクリーンの横幅の拡大によってレーキも長くなるとともに重量も増加することになる。このため、バースクリーンで捕捉した塵埃をレーキで掻き揚げる際に大きな上昇力が必要となり、レーキを駆動するためのモータとして出力の大きなものを選定しなければならず、装置コストの上昇や消費電力量の増大を招くという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、レーキを駆動するモータの負荷を軽減することができ、小型で消費電力量の少ないモータでレーキを駆動することができる除塵機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の除塵機は、水路内の塵芥を捕捉するバースクリーンと、該バースクリーンで捕捉した塵埃を水路外に排出するレーキと、モータを駆動源として前記レーキを前記バースクリーンに沿って昇降させるレーキ駆動手段とを備えた除塵機において、前記レーキは、前記レーキ駆動手段に連結された上下方向のレーキアームと、該レーキアームの下端部から前記バースクリーンに向かって突出した櫛歯状のレーキ部とを備えるとともに、前記レーキアームと前記レーキ部との接続部に、内部にガスを封入した浮力部材を設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の除塵機は、前記レーキアームの下端部に前記浮力部材が設けられ、該浮力部材から前記レーキ部が突出していること、前記浮力部材が金属製中空部材であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の除塵機によれば、バースクリーンで捕捉した塵埃を掻き揚げる際に、浮力部材の浮力によってレーキの上昇力を軽減することができ、レーキを駆動するためのモータの負荷を低減することができる。これにより、小型で消費電力量の少ないモータを採用することができ、装置コストや消費電力量の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の除塵機の一形態例を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す除塵機は、水路10の両側壁10a,10aに沿って対向配置され、水路10の上方まで立ち上がった一対の側板11,11と、水路10の上方に立ち上がった前記両側板11の上流側間を閉塞する前板12及び下流側間を閉塞する後板13及び上部間を閉塞する天板14と、水路10内の前記両側板11の下端部に掛け渡されて水路10の底面10bに当接した状態で配置される底部材15とを備えた箱形の収納体16を有している。この収納体16は、前板12の下方及び後板13の下方がそれぞれ開口した状態になっており、前後の開口を通って水路10内の水が除塵機の前方から後方に向かって流れるように形成されている。
【0011】
前記収納体16の内部には、水路10内の前記両側板11の下流側間で後板13の下方の前記開口を塞ぐようにして上下方向に多数のバーを所定間隔で平行に配置したバースクリーン17が設けられ、前記両側板11の内面には、凹溝からなる無端状ガイド部18及び直線状ガイド部19が設けられるとともに、無端状ガイド部18及び直線状ガイド部19にガイドされて前記バースクリーン17の上流側を昇降するレーキ20が設けられている。
【0012】
無端状ガイド部18は、該無端状ガイド部18の中央部に設けられたラック21の両側に沿う一対の直線部18a,18bと両直線部18a,18bの上下両端を接続する円弧部18c,18dとを有している。前記直線状ガイド部19は、ラック21の上流側に位置する直線部18aの上流側に隣接して平行に設けられ、無端状ガイド部18の上下方向中間部から上部の円弧部18dの上方にわたって設けられている。また、ラック21は、上下方向に複数のラック部材に分割形成して側板11の内面にボルトなどで取り付けるようにしている。これにより、ラック21の短寸化及び軽量化が図れ、摩耗などでラックピンを交換する際に各部材毎に行うことができ、作業性の向上や作業時間の短縮を図ることができる。
【0013】
レーキ20は、前記バースクリーン17に対応した櫛歯を有するレーキ部22と、該レーキ部22を下端で支持する2本のレーキアーム23とを有しており、レーキ20を作動させるレーキ駆動手段は、レーキアーム23の上下方向中間部を保持する保持筒24と、前記レーキアーム23の上端部に掛け渡されて両端に前記直線状ガイド部19の溝内に嵌入する上部ガイドローラ25をそれぞれ有する上部ガイド軸26と、前記保持筒24内に回転可能に保持された駆動軸27と、該駆動軸27の中央部に設けられた水中モータ28と、前記駆動軸27の両端部にそれぞれ設けられて前記ラック21に歯合するスプロケット29と、前記駆動軸27の両端から前記スプロケット29の外側に突出して無端状ガイド部18の溝内に嵌入する下部ガイドローラ30とを有している。
【0014】
このレーキ20は、水中モータ28により適宜な減速器を介して駆動軸27を回転させ、スプロケット29を所定の方向に回転させることにより、上部ガイドローラ25が直線状ガイド部19にガイドされて昇降し、下部ガイドローラ30は、上流側の直線部18aを下降して下端の円弧部18cを通り、下流側の直線部18bを上昇し、上端の円弧部18dから上流側の直線部18aを下降する動作を繰り返す。これにより、レーキ部22は、バースクリーン17から離れた状態で下降し、最も下降したときに上部ガイドローラ25を支点としてレーキアーム23が回動することによりバースクリーン17の前面に近付き、レーキ部22の先端がバースクリーン17の前面から後板13の内面に沿った状態で上昇する動きを繰り返す。
【0015】
また、後板13には、レーキ20の上昇位置に対応した位置に排出口31が設けられるとともに、該排出口31の外側に排出シュート32が連設されている。さらに、レーキ20の上方には、前記レーキ部22が掻き揚げた塵芥を排出口31から排出シュート32に向かって排出するためのワイパー33が設けられている。このワイパー33は、両側板11の上部に設けられたワイパーアーム軸34に揺動可能に支持されたワイパーアーム35の下端にワイパー板36を設けるとともに、ワイパーアーム35の上端前方にバランスウエイト37を設けたもので、通常は、ワイパーアーム35がストッパー38に当接した状態で保持されている。さらに、前板12には点検扉39と点検用照明40とが設けられ、天板14には上部点検口41が、一方の側板11には換気扇42がそれぞれ設けられている。
【0016】
そして、前記両側板11、前板12及び後板13の外面には、前記収納体16の周囲を囲むようにして水平方向に設けられた据付部材43が設けられている。この据付部材43は、水路10の両上縁10cや水路10の上部を覆う蓋板などに適宜な固定手段、例えばアンカーボルトなどで固定できるように形成されている。
【0017】
このように形成した除塵機において、本形態例では、レーキ部22の基部とレーキアーム23の下端部との間に浮力部材44を設けている。この浮力部材44は、金属製中空部材、例えば、耐食性に優れたステンレス鋼製管体の内部にガス、例えば空気を封入した状態で両端を密閉したもので、浮力部材44の上面部をレーキアーム23の下端に固着するととも、浮力部材44の下流側面にレーキ部22の基部を固着している。
【0018】
このような浮力部材44を設けることにより、水中でレーキ20を上昇させる方向の浮力を得ることができるので、バースクリーン17で捕捉した塵埃を掻き揚げる際に、浮力部材44の浮力によってレーキ20の上昇力を軽減することができ、レーキ20を駆動するための水中モータ28の負荷を低減することができる。これにより、小型で消費電力量の少ないモータを採用することができ、装置コストや消費電力量の削減を図ることができる。例えば、流路幅が4mの場合、浮力部材44として長さが約4m、内径が約25cmの管体を使用した場合、約100kgの浮力を得ることができる。
【0019】
また、箱状の収納体16によってユニット化された除塵機は、コンクリートなどで形成される水路10の深さや流路幅に合わせて各部の寸法が設定され、また、各部材は、水中乃至多湿環境での使用を考慮して耐食性、耐摩耗性に優れた材質を使用し、例えばステンレス鋼、ナイロンのような合成樹脂で形成され、特に無塗装化を図ることにより、長期にわたって保守費用の軽減を図ることができる。
【0020】
水路10への除塵機の設置は、前板12を上流側に向けて据付部材43から下の部分を水路10内に挿入し、アンカーボルトなどを使用して据付部材43を水路10の両上縁10cに固定するとともに、周囲の仕上げ工事や電気工事を行うだけでよく、現場での組み立てがほとんどないため、従来に比べて除塵機の施工期間を大幅に短縮することができる。
【0021】
水路10に設置された除塵機は、バースクリーン17によって水路10内を流れる塵芥を捕捉し、連続的に又はタイマーなどを利用して間欠的にレーキ20を作動させることにより、バースクリーン17に捕捉した塵芥をレーキ部22で掻き揚げ、後板13の内面に沿って上方の排出口31から排出する。また、レーキ部22が排出口31の部分まで上昇すると、レーキ部22のレーキアーム23側基部上面にワイパー板36の下端が当接し、レーキ部22の上昇に伴ってワイパー板36がレーキ部22の先端に向けて移動することにより、レーキ部22で掻き揚げられた塵芥が排出口31から排出シュート32に向けて確実に排出される。
【0022】
このとき、レーキ20の機械的な昇降に伴って動作音が発生するが、レーキ20が収納体16内に収納されているため、外部への動作音の漏れを抑えることができる。また、必要に応じて収納体16に吸音材や防振材を取り付けることによって、更に低騒音化を図ることができる。さらに、塵芥やし渣から悪臭が発生する場合でも、悪臭が周辺に流れることを抑えることができ、必要に応じて収納体16内に脱臭器を設けることによって悪臭発生をより確実に抑えることができる。
【0023】
なお、浮力部材44は、レーキ20の動作に悪影響を与えず、レーキ20の掻き揚げ動作中に有効な浮力が得られる範囲ならば、レーキ20の任意の位置に任意の形状で設けることができる。例えば、前記浮力部材44を設けずに、レーキ部22の基部外周を囲むように設けたり、両レーキアーム23に掛け渡すように設けることもできる。また、材質も、耐食性及び適度な強度を有していれば、硬質合成樹脂、ゴムなどの軟質樹脂を用いこともでき、形状も管体に限らず、袋状に形成することも可能である。さらに、内部に封入するガスも任意であるが、通常は、乾燥空気を用いればよい。
【符号の説明】
【0024】
10…水路、10a…側壁、10b…底面、10c…上縁、11…側板、12…前板、13…後板、14…天板、15…底部材、16…収納体、17…バースクリーン、18…無端状ガイド部、18a,18b…直線部、18c,18d…円弧部、19…直線状ガイド部、20…レーキ、21…ラック、22…レーキ部、23…レーキアーム、24…保持筒、25…上部ガイドローラ、26…上部ガイド軸、27…駆動軸、28…水中モータ、29…スプロケット、30…下部ガイドローラ、31…排出口、32…排出シュート、33…ワイパー、34…ワイパーアーム軸、35…ワイパーアーム、36…ワイパー板、37…バランスウエイト、38…ストッパー、39…点検扉、40…点検用照明、41…上部点検口、42…換気扇、43…据付部材、44…浮力部材