(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記頂点を有する傾斜面はシャンク部を構成する丸棒状のステンレス鋼又は工具鋼の軸方向の端部に形成されたロウ付け面に形成されており、該傾斜面の高さはステンレス鋼又は工具鋼のロウ付け面の直径の0.5%以上8%以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1に記載した医療用切削器具。
【背景技術】
【0002】
例えば歯科治療では、歯牙の表層を切削して目的の治療を行うことがある。このような治療に際して用いる医療用切削器具は、ハンドピースのチャックに把持されるシャンク部と、シャンク部に連続して形成され外周から先端部分にかけて表層を切削するための切刃を形成した作業部と、を有して構成されている。そして、医師がハンドピースを操作して医療用切削器具を回転させつつ、作業部を治療すべき部位に押圧することで、表層を切削して目的の治療を施している。
【0003】
上記の如く構成された医療用切削器具に於いて、作業部は硬い表層に対する切削性能を確保するために、タングステンカーバイドに代表される超硬合金を用いるのが一般的である。しかし、シャンク部まで超硬合金によって形成したのでは、加工に要する時間数が多くなるという問題が生じる。
【0004】
このため、医療用切削器具として、シャンク部をステンレス鋼や工具鋼によって構成し、このシャンク部の先端に作業部を構成する超硬合金を突き合わせ接合して構成したものが提供されている。このように、ステンレス鋼や工具鋼と超硬合金、のように異なる金属どうしを接合する場合、摩擦圧接、抵抗溶接、ロウ付け、等の方法を選択的に採用するのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シャンク部を構成するステンレス鋼或いは工具鋼と、作業部を構成する超硬合金とを摩擦圧接或いは抵抗溶接した医療用切削器具では、接合面に於ける接合強度にばらつきが生じ、不良率が高くなるという問題がある。
【0006】
また、シャンク部を構成するステンレス鋼或いは工具鋼と、作業部を構成する超硬合金とをロウ付けした医療用切削器具では、シャンク部と作業部の接合面を互いに平坦な面として形成し、これらの接合面を突き合わせてロウ付けしている。このような医療用切削器具の場合でも、接合面どうしの間隔が変化すると接合強度が変化してしまうという問題が生じている。
【0007】
本発明の目的は、高い接合強度を安定して発揮することができる医療用切削器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る医療用切削器具は、丸棒状のステンレス鋼又は工具鋼によって形成されたシャンク部の先端に超硬合金又はセラミックスによって形成された作業部を設けた医療用切削器具であって、
前記ステンレス鋼又は工具鋼によって形成されたシャンク部は頂点を有する傾斜面として形成された突出部又は平坦面からなるロウ付け面を有し、前記超硬合金又はセラミックスによって形成された作業部は頂点を有する傾斜面として形成された突出部又は平坦面からなるロウ付け面を有し、前記シャンク部を構成するステンレス鋼又は工具鋼と、作業部を構成する超硬合金又はセラミックスとはロウ付け部を介して接続されており、
該ロウ付け部は、突出部又は平坦面からなるロウ付け面を有するシャンク部と、前記シャンク部のロウ付け面と対向して配置されると共に突出部又は平坦面からなるロウ付け面が該シャンク部のロウ付け面と接触して配置された作業部と、前記シャンク部のロウ付け面と作業部のロウ付け面とが接触することで形成された隙間に充填されたロウと、によって構成され、且つ、前記作業部の回転軸心と前記シャンク部の回転軸心が一致しているものである。
【0009】
上記医療用切削器具に於い
て、前記頂点を有する傾斜面はシャンク部を構成する丸棒状のステンレス鋼又は工具鋼の軸方向の端部に形成されたロウ付け面に形成されており、該傾斜面の高さはステンレス鋼又は工具鋼のロウ付け面の直径の0.5%以上8%以下の範囲に設定されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る医療用切削器具では、シャンク部の端部に形成されたロウ付け面、作業部の端部に形成されたロウ付け面、の何れか一方又は両方に突出部を設け、これらのロウ付け面を対向させて相互に接触させた状態でロウ付けされている。即ち、シャンク部のロウ付け面と作業部のロウ付け面は、互いに対向して接触していることから、一方のロウ付け面に設けられた突出部を構成する外面の一部は、他方の面に設けられた突出部を構成する外面の一部、或いは突出部以外の形状に形成された表面の一部と接触している。
【0011】
このため、接触したロウ付け面どうしの間には、突出部どうしの形状に応じた空間、或いは突出部と突出部以外の形状に応じた空間が構成されることになる。そして、前記空間の間隔は両ロウ付け面が相互に接触していることから変化することがない。従って、ロウ付けに際し、ロウが充填される空間の容積は一定となり、ばらつきのない安定したロウ付け作業を行うことが可能となり、この結果、高い接合強度を安定して発揮することができる。
【0012】
ロウ付け面に設ける突出部を頂部を有する傾斜面として形成すると共に、この頂点を、対向するロウ付け面に設けた頂点を有する傾斜面に於ける頂点
又は傾斜面、或いは平坦な面に接触させることで、この接触部位は略点接触となる。このため、対向するロウ付け面どうしの間に形成された空間は頂点に向かって間隔が狭くなる形状となる。従って、前記空間は毛細管現象を発揮し、該空間に充填したロウが溶融したとき、このロウは頂点に向かって引きつけられて外部への流出が抑えられ、安定したロウ作業を実現することができる。
【0013】
更に、傾斜面の高さをロウ付け面の直径の0.5%以上8%以下の範囲とすることによって、対向するロウ付け面間の距離を小さくすることができ、毛細管現象をより安定して発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の医療用切削器具(以下「切削器具」という)について説明する。本発明の切削器具は、医師が手で把持して操作するハンドピースのチャックに装着されて回転し、作業部が歯牙の表層や歯槽骨を含む骨等の表面を押圧して該表層或いは表面を切削するものである。特に、作業部を超硬合金或いはセラミックスによって構成することで良好な切削性能を確保し、シャンク部をステンレス鋼或いは工具鋼によって構成することで高い耐久性を発揮し得るようにしたものである。
【0017】
本発明の切削器具に於いて、シャンク部はステンレス鋼或いは工具鋼からなる丸棒状に形成され、端部にロウ付け面が形成されている。シャンク部を構成するステンレス鋼としては析出硬化型ステンレス鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼或いはオーステナイト系ステンレス鋼を採用することが可能であり、工具鋼としては炭素工具鋼や高速度工具鋼或いは合金工具鋼等の工具鋼を選択的に採用することが可能である。
【0018】
また、作業部は超硬合金或いはセラミックスからなり、端部にロウ付け面が形成されている。作業部を構成する超硬合金としては機械加工に於ける切削具として用いられるタングステンカーバイド(WC)やチタンカーバイドを採用することが可能であり、セラミックスとしてはサーメットに代表される超硬セラミックスを採用することが可能である。
【0019】
シャンク部のロウ付け面及び作業部のロウ付け面の何れか一方、或いは両方に設けられた突出部の機能は、シャンク部のロウ付け面と作業部のロウ付け面との間隔を設定すると共に、ロウ付け作業中に於ける前記間隔を保持するものである。このように、ロウ付け面に設けた突出部を対向するロウ付け面に相互に接触させることによって、ロウ付け面の間の間隔を保持することが可能となる。このため、ロウ付け面の間隔を安定して保持した状態でロウ付け作業を行うことが可能となり、ロウ付け作業に起因する強度のばらつきを排除することが可能となる。
【0020】
ロウ付け面に設ける突出部としては、上記機能を発揮し得るものであれば良く、形状を特に限定するものではない。このような突出部として、曲面状、円錐状、角錐状等があり、これらの形状を含むどのような形状であっても良い。
【0021】
しかし、シャンク部や作業部を構成する材料に対する加工の容易さ等の条件を考慮すると、突出部としては頂点を有する傾斜面として形成されていることが好ましい。そして、一方のロウ付け面に設けられた突出部を構成する傾斜面の頂点を、対向する他方のロウ付け面に設けられた突出部を構成する頂点
又は傾斜面、或いは平坦な面に接触させた状態でロウ付けされていることが好ましい。
【0022】
上記したように、ロウ付け面に設ける突出部は、シャンク部のロウ付け面、作業部のロウ付け面の何れか一方或いは両方である。特に、突出部をシャンク部又は作業部の何れか一方のロウ付け面に設ける場合、シャンク部が加工性の優れたステンレス鋼或いは工具鋼によって構成されることから、該シャンク部のロウ付け面に設けることが好ましい。そして、シャンク部に於ける長手方向(軸方向)の端部にロウ付け面を形成することが好ましい。
【0023】
ロウ付け面に設ける頂点を有する傾斜面は、対向するロウ付け面の頂点
又は傾斜面或いは平坦な面と接触した状態でロウ付けされる。即ち、傾斜面の高さが対向する二つのロウ付け面の間隔を規定することとなり、ロウ付け部に於けるロウの容量を設定することとなる。このため、傾斜面の高さは、シャンク部と作業部との接合部に於ける太さに対応して変化させることが好ましい。
【0024】
本件発明者等の実験では、ロウ付け面に設けた傾斜面の高さは、該ロウ付け面の直径の0.5%以上8%以下の範囲に設定されていることが好ましい。前記範囲よりも高さが小さい場合、ロウの量が少なくなって十分な接合強度を得ることが困難である。また前記範囲よりも高さが大きい場合、ロウの量が大きくなって作業性が劣化し、且つコストが上昇すると共に接合強度にばらつきが生じる。特に、より均一で充分に大きい接合強度を得るためには、ロウ付け面に設けた傾斜面の高さは、該ロウ付け面の直径の1%以上5%以下の範囲に設定されていることが好ましい。
【0025】
シャンク部と作業部とはロウ付け部を介して接続されている。ロウ付け部を構成する際に用いるロウの材質は特に限定するものではないが、比較的低温で溶融する銀ロウであることが好ましい。また、銀ロウの性状も特に限定するものではなく、箔状、棒状、ペースト状の何れであっても良い。しかし、切削器具は作業部の太さが1mm前後と細いため、ペースト状であることが好ましい。
【0026】
次ぎに、本実施例に係る切削器具の構成を
図1、2により具体的に説明する。
【0027】
図に於いて、切削器具Aは、図示しないハンドピースのチャックに装着されるシャンク部1と、図示しない歯牙の表層を切削する作業部2と、を有して構成されている。本実施例に於いて、シャンク部1はオーステナイト系ステンレス鋼を材料として構成されており、作業部2はWCを材料として構成されている。そして、シャンク部1と作業部2はロウ付け部3でロウ付けにより接続されて一体化することで、切削器具Aが構成されている。
【0028】
切削器具Aに於ける作業部2の外形形状や太さ及び長さ等の仕様は、切削すべき部位や程度等の治療目的に対応させて設定されている。このため、
図1に示す切削器具Aは、切削器具Aの一例に過ぎない。例えば、作業部2の形状は、
図1に示す先端が球形で太さが一定の丸棒状、先端が球形で太さが先端ほど細いテーパ状、球形状等がある。そして、作業部2の外周面には、複数の螺旋状の切刃2aが形成されている。
【0029】
また、作業部2のシャンク部1側の端面にはロウ付け面2bが形成されている。特に、
図2に示すように、本実施例では、作業部2のロウ付け面2bは平坦な面として形成されている。
【0030】
シャンク部1はハンドピースのチャックに装着された状態で回転し且つ操作される。このため、シャンク部1の一方側にはチャックに装着される把持部1aが形成されている。この把持部1aは作業部2の形状や太さ及び長さの如何に関わらず、チャックのサイズに対応した一定の太さを有している。
【0031】
また、シャンク部1には把持部1aに連続してテーパ状のネック部1bが形成されており、該ネック部1bの先端に接合座1cが形成されている。そして、接合座1cの端面にロウ付け面1dが形成されており、このロウ付け面1dに頂点5aを有する傾斜面5bが形成されている。
【0032】
前述したように、作業部2の太さは仕様に対応して適宜設定されている。このため、ネック部1bの最も細い部分の径を作業部2の太さに対応させて設定すると、シャンク部1の種類は大きなものになる。このため、ネック部1bの先端に接合座1cを形成することで、シャンク部1の種類を少なくして在庫点数の軽減をはかるようにしている。
【0033】
接合座1cは作業部2の外径と等しい径を有しており、且つ外周面に切刃2aの一部が連続して形成されている。このため、接合座1cはシャンク部1を構成するネック部1bの最も細い部位の太さよりも大きい径を持って形成されている。
【0034】
シャンク部1のロウ付け面1dに形成された頂点5aを有する傾斜面5bは、加工の容易さから円錐状の傾斜面として形成されている。傾斜面5bを円錐状とすることによって、丸棒状の素材からシャンク部1を回転切削する際に、他の部位、例えばネック部1b、接合座1cの加工と同時にロウ付け面1dの加工を行うことが可能となり有利である。
【0035】
本実施例では、傾斜面5bの高さは、作業部2の太さが1.2mmの切削器具Aの場合、0.038mmであり、作業部2の太さの約3.1%に設定されている。また、作業部2の太さが1.0mmの切削器具Aの場合、0.031mmであり、作業部2の太さの3.1%に設定されている。更に、作業部2の太さが0.8mmの切削器具Aの場合、0.022mmであり、作業部2の太さの約2.8%に設定されている。
【0036】
ここで、作業部2の太さが1.0mmで傾斜面5bの高さを変化させたときの曲げ強度について説明する。
【0037】
本件発明者は、作業部2の太さを1.0mmに設定すると共にロウ付け面2bを平坦な面とし、シャンク部1のロウ付け面1dに傾斜面5bを設けると共に該ロウ付け面の高さを0.003mm〜0.09mmの範囲で8種類設定し、設定された寸法毎に10本のテストピースを製作してJIS T 5502:2001(歯科用回転器具−試験方法)3.3けい部強さ試験に規定された方法で曲げ試験を行った。歯牙や歯槽骨等の硬い層を切削する切削器具Aに要求される曲げ強度を35N(ニュートン)以上とした。
【0038】
試験1、ロウ付け面の高さ:0.003mm、作業部2の太さに対する比率:0.30%(以下同じ)、10本のテストの曲げ試験の結果(以下同じ)曲げ強度は29Nであった。この曲げ強度では実用上不充分と判定される。
【0039】
試験2、ロウ付け面の高さ:0.005mm、作業部2の太さに対する比率:0.50%、曲げ強度は35Nであった。この曲げ強度は実用上充分と判定される。
【0040】
試験3、ロウ付け面の高さ:0.02mm、作業部2の太さに対する比率:2.00%、曲げ強度は41Nであった。この曲げ強度は実用上充分と判定される。
【0041】
試験4、ロウ付け面の高さ:0.03mm、作業部2の太さに対する比率:3.00%、曲げ強度は45Nであった。この曲げ強度は実用上充分と判定される。
【0042】
試験5、ロウ付け面の高さ:0.04mm、作業部2の太さに対する比率:4.00%、曲げ強度は42Nであった。この曲げ強度は実用上充分と判定される。
【0043】
試験6、ロウ付け面の高さ:0.06mm、作業部2の太さに対する比率:6.00%、曲げ強度は38Nであった。この曲げ強度は実用上充分と判定される。
【0044】
試験7、ロウ付け面の高さ:0.08mm、作業部2の太さに対する比率:8.00%、曲げ強度は36Nであった。この曲げ強度は実用上充分と判定される。
【0045】
試験8、ロウ付け面の高さ:0.09mm、作業部2の太さに対する比率:9.00%、曲げ強度は27Nであった。この曲げ強度は実用上、不充分と判定される。
【0046】
上記試験1〜8の結果、最も良好な曲げ強度を発揮し得る高さが存在し、このときの高さを頂点として低くなっても、高くなっても曲げ強度は低下する。そして、高さが低く過ぎても、高く過ぎても、曲げ強度は実用上不充分となる。即ち、上記試験結果のグラフは、比率:3.00%で、曲げ強度:45Nを頂点とする二次曲線となる。
【0047】
従って、実用的な曲げ強度を発揮し得る範囲は、ロウ付け面の直径の0.5%以上8%以下であるといえる。特に、曲げ強度が約40Nよりも大きい範囲にあることを示す、ロウ付け面の直径に対する比率が、1%以上5%以下の範囲であることがより好ましいといえる。
【0048】
ロウ付け部3は、シャンク部1のロウ付け面1dに設けられた傾斜面5bの頂点5aが、作業部2のロウ付け面2bの平坦な面に接触しており、これにより、二つのロウ付け面1d、2bの間に傾斜面5bの高さに対応した間隔を持った隙間が形成されている。そして、前記隙間に充填されたロウ6によって、シャンク部1と作業部2とが一体的に接合されている。
【0049】
シャンク部1と作業部2をロウ付けする際に用いるロウは、特に限定するものではないが、比較的溶融温度の低い銀ロウであることが好ましい。また、ロウ付け作業を行う際に用いるロウの性状は、箔状、棒状であって良いが、ペースト状であると好ましい。
【0050】
上記の如く構成された切削器具Aは、ハンドピースに把持され高速回転して目的の部位を切削するため、シャンク部1の回転軸心と作業部2の回転軸心とが正確に一致していないと、作業部2が偏心回転して破断する虞がある。
【0051】
このため、本実施例に係る切削器具Aでは、
図3に示すようにして製造されている。即ち、予め切刃2aを形成した作業部2としての超硬合金をシャンク部1にロウ付けするのではなく、目的の作業部2の太さや長さよりも十分に大きい超硬合金をシャンク部1にロウ付けした後、該超硬合金を加工することで、回転軸心の一致した切削器具Aを製造している。
【0052】
先ず、
図3(a)に示すように、シャンク部1の接合座1cに形成したロウ付け面1dに、目的の作業部2の太さと長さよりも十分に大きい超硬合金の素材7を対向させる。このとき、素材7のシャンク部1のロウ付け面1dと対向する面は作業部2のロウ付け面2bとなるものであり、平坦な面として形成されている。
【0053】
その後、シャンク部1のロウ付け面1dに設けた傾斜面5bの頂点を素材7の端面に形成されたロウ付け面2bに接触させてロウ付け部3を構成し、この状態を保持して両ロウ付け面1d、2bの間にロウ6を充填してロウ付け部3を加熱する。ロウ付け部3の加熱によってロウ6が溶融し、溶融したロウは傾斜面5bと平坦な面との間で生じる毛細管現象によって確実に中心部分に入り込み、空隙を生じさせることがない。
【0054】
ロウ付け部3を所定時間加熱した後、該ロウ付け部3を冷却すると、この冷却に伴ってロウが固化し、シャンク部1と作業部2を構成する素材7がロウ付けされて一体化する。このとき、シャンク部1の回転軸心と素材7の回転軸心が一致していることの保証はない。
【0055】
次ぎに、
図3(b)に示すように、素材7を加工して中間素材8を構成する。この作業は、シャンク部1の把持部1aを図示しない加工装置に装着し、この状態で回転させつつ、素材7を研削して目的の作業部3の太さとするものである。このように、シャンク部1の把持部1aの回転軸心が切削器具Aの回転軸心となることから、素材7の回転軸心がシャンク部1の回転軸心と一致していない場合であっても、中間素材8の回転軸心はシャンク部1の回転軸心に正確に一致することとなる。
【0056】
次ぎに、
図3(c)に示すように、中間素材8を加工して半球状の端部を形成すると共に外周面に螺旋状の切刃2aを形成する。これらの加工を経ることによって、素材7から中間素材8を経て作業部2が形成され、これにより、切削器具Aが製造される。