特許第5980140号(P5980140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980140
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】カードコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/703 20060101AFI20160818BHJP
   H01R 12/73 20110101ALI20160818BHJP
【FI】
   H01R13/703
   H01R12/73
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-22175(P2013-22175)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-154316(P2014-154316A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】大越 諭高
(72)【発明者】
【氏名】辻 淳也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 樹
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−258101(JP,A)
【文献】 特開平06−203222(JP,A)
【文献】 米国特許第06409529(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/703
H01R 12/70 − 12/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に表面実装されて、複数の接続パッドが形成されたカードが挿入されるカードコネクタであって、
ハウジングと、
表面実装用の基板接続部と、挿入されたカードの複数の接続パッドそれぞれに接触して該カードと導通する接点部とを有する複数のコンタクトと、
カード無挿入時に互いに接触しカード挿入により第1の接点部材が該カードに押されて互いに離間することでカードの挿入を検出する、該第1の接点部材と第2の接点部材とからなるスイッチとを備え、
前記第2の接点部材が、前記複数のコンタクトのうちの1つのコンタクトと同一の部材で構成され、該1つのコンタクトの基板接続部を介して回路基板に接続されるものであることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記複数のコンタクトおよび前記第2の接点部材が、前記ハウジングを構成する樹脂にインサート成形された金属板からなり、
前記第1の接点が前記ハウジングに圧入された金属部材からなることを特徴とする請求項1記載のカードコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に表面実装されてメモリカード等のカードが挿入されるカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のタイプのカードコネクタは、ハウジングを形成する樹脂に、複数のコンタクトが繋がった形状の金属板がインサート成形され、成形後に金属板を切断して複数のコンタクトに分離するという工程を経て作製される(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、このタイプのカードコネクタは、ハウジングの厚みが薄いにもかかわらず、回路基板との接触面積が広いという形状を有する。この場合、コンタクトの基板接続部のいわゆる共平面性が問題となる。すなわち、インサート成形された金属板由来の複数のコンタクトの、回路基板に接続される基板接続部が、それら複数のコンタクトにわたって十分な精度で1つの平面上にあることが必要となる。複数のコンタクトのうちの1つでもその平面から外れると回路基板に表面実装した際に半田付け不良のおそれがある。近年、このタイプのカードコネクタは小型化、低背化が著しく進んできている。このためハウジングの厚みが益々薄くなり、成形金型の僅かな寸法誤差や成形時の僅かな反りや変形等が基板接続部の共平面性に大きく影響する。この共平面性を確保するため、複数のコンタクトの基板接続部は互いに近接した位置に配置するようにレイアウトが工夫される。
【0004】
ここで、上記のタイプのカードコネクタには、カードの挿抜を検出するスイッチを組み込むことが多い。このスイッチは、カードが最終位置まで挿入されたことを検出するスイッチであるため、複数のコンタクトとは離れた、カードコネクタの奥側に配置される。このスイッチ基板接続部についてもコンタクトの基板接続部との共平面性を確保する必要がある。
【0005】
特許文献2には、スイッチを構成する2つの接点部材がハウジングに圧入された構造のスイッチが開示されている。圧入の場合、インサート成形よりも高い精度を確保することができる。したがって、そのスイッチを構成する接点部材の基板接続部がコンタクトの基板接続部から離れた位置にあっても、基板接続部の共平面性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−252950号公報
【特許文献2】米国特許第7,258,278号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
接点部材を圧入するには、上記のインサート成形用の金属板とは別に接点部材を製造し圧入する必要があり、工数やコストの上昇を招く。スイッチとしての機能を確保する観点からは、スイッチ用の2つの接点部材のうちの1つをインサート用の金属板に配置し、別途に製造して圧入する接点部材の数を1つとすることができる。ただしこの場合、上記の金属板に配置したスイッチ用の接点部材は、コンタクトから離れた、カードコネクタの奥側に配置する必要があり、共平面性の問題が残る。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、カードの挿抜検出用のスイッチを備えるとともに、コストを抑えつつ基板接続部の共平面性を確保したカードコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明のカードコネクタは、
回路基板に表面実装されて、複数の接続パッドが形成されたカードが挿入されるカードコネクタであって、
ハウジングと、
表面実装用の基板接続部と、挿入されたカードの複数の接続パッドそれぞれに接触してカードと導通する接点部とを有する複数のコンタクトと、
カード無挿入時に互いに接触しカード挿入により第1の接点部材がカードに押されて互いに離間することでカードの挿入を検出する、その第1の接点部材と第2の接点部材とからなるスイッチとを備え、
上記第2の接点部材が、複数のコンタクトのうちの1つのコンタクトと同一の部材で構成され、その1つのコンタクトの基板接続部を介して回路基板に接続されるものであることを特徴とする。
【0010】
複数のコンタクトのうちの1つは、グラウンドに接続されるコンタクトであり、また、スイッチを構成する2つの接点部材のうちの一方はグラウンドに接続される。本発明のカードコネクタは、この点に着目したものである。すなわち、本発明のカードコネクタは、スイッチ用の一方の接点部材である第2の接点部材を、1つのコンタクトと同一の部材で構成しその1つのコンタクトの基板接続部を介して回路基板に接続する構造としている。このため、スイッチがコンタクトから離れた位置にあっても基板接続部の共平面性が確保される。
【0011】
ここで、本発明のカードコネクタでは、典型的には、上記複数のコンタクトおよび上記第2の接点部材が、ハウジングを構成する樹脂にインサート成形された金属板からなり、上記第1の接点がハウジングに圧入された金属部材からなる。
【0012】
第2の接点部材は、上記の通り1つのコンタクトと繋がっていてそのコンタクトの基板接続部を介して回路基板に接続されるため、インサート成形であっても基板接続部の共平面性が確保される。また、この第2の接点部材を別部品として製造して圧入する必要がないため、その分コストが抑えられる。スイッチを構成するもう一方の接点部材である第1の接点部材は、ハウジングに圧入された金属部材であり、高い精度が確保されるため、その第1の金属部材の基板接続部がコンタクトの基板接続部から離れた位置にあっても基板接続部の共平面性が確保される。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明のカードコネクタによれば、コストを抑えつつ基板接続部の共平面性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態としてのカードコネクタの斜視図である。
図2図1に外観を示すカードコネクタからシェルを外してハウジングの上面側を示した斜視図である。
図3図1に外観を示すカードコネクタからシェルを外してハウジングの上面側を示した平面図である。
図4図3に示す矢印A−Aに沿う断面図である。
図5図3に示す矢印B−Bに沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態としてのカードコネクタの斜視図である。
【0017】
また、図2図3は、図1に外観を示すカードコネクタからシェルを外してハウジングの上面側を示した、それぞれ斜視図および平面図である。
【0018】
このカードコネクタ10は、図1に示すように、ハウジング組立体20とシェル30とを有し、それらの間に、カード挿入口11が設けられている。
【0019】
ハウジング組立体20は、図2図3に示すように、ハウジング21と、そのハウジング21に対しインサート成形された複数のコンタクト22_1〜22_6と、2つの接点部材23a,23bからなるスイッチ23を有する。このスイッチ23を構成する2つの接点部材23a,23bは、カード(図示せず)が挿入されていない状態では互いに接触している。このスイッチ23を構成する一方の接点部材23bは、コンタクト22_1〜22_6とともにハウジング21にインサート成形されたものである。これらのコンタクト22_1〜22_6や接点部材23bをインサート成形するにあたっては、それらのコンタクト22_1〜22_6や接点部材23bが繋がった形状の金属板が用意されてその金属板がインサート成形される。そして、成形後に金属板の必要な箇所が切断されて、コンタクト22_1〜22_6や接点部材23bが形成される。
【0020】
それらのコンタクト22_1〜22_6は、図3に実線と点線で示すようにそれぞれ広がっている。各コンタクト22_1〜22_6は、挿し込まれたカード(図示せず)のハウジング21側を向いた面に形成されている各接続パッドに接触する接点部22a_1〜22a_6と、回路基板(図示せず)に表面実装される基板接続部22b_1〜22b_6とを有する。それらのコンタクト22_1〜22_6の基板接続部22b_1〜22b_6は、互いに近接した位置に配置され、これにより共平面性の精度を確保している。
【0021】
また、スイッチ23を構成するもう一方の接点部材23aは、カードに押されて弾性変形させる必要上、別体の金属部材で形成されていて、一端部231aがハウジング21に圧入されて片持ち梁形状となっている。
【0022】
また、このハウジング組立体20にはさらに、スライダ24、カムバー25、およびコイルバネ26が備えられている。スライダ24は、ハウジング21に対し、カードの挿入方向(矢印A方向)および抜取方向(矢印B方向)にスライドする部材である。このスライダ24は、コイルバネ26により抜取方向(矢印B方向)に付勢されている。このスライダ24は、挿入されてきたカードに押されるカード受け部241と、いわゆるハートカム溝242を有する。ハートカム溝242にはカムバー25の先端部のカムピン251が入り込んでいる。
【0023】
カードが挿入されてくるとカード受け部241にカードが当接する。カードがさらに挿入されるとスライダ24がカードに押され、そのスライダ24が、コイルバネ26の付勢に抗して挿入方向(矢印A方向)にスライドする。このスライダ24が挿入方向最終位置までスライドすると、カムピン251がハートカム溝242のロック位置242aに入り込み、スライダ24はその最終位置までスライドした状態のままロックされる。挿入されているカードを指で再度挿入方向に押すと、カムピン251がハートカム溝242のロック位置242aから外れる。その後カードから指を離すと、スライダ24がコイルバネ26に押されて抜取方向(矢印B方向)にスライドする。これによりカードがスライダ24に押されて、抜取方向に、カード挿入口11(図1参照)から一部が食み出した状態となるまで移動する。このカードは指あるいはピンセットなどの道具で摘んで抜き取られる。
【0024】
また、カードが挿入されてきたとき、そのカードの挿入の最終に近い段階でスイッチ23の一方の接点部材23aがカードで押されて弾性変形する。すると、この接点部材23aがもう一方の接点部材23bから離れ、これによりカードが挿入されたことが検出される。挿入されたカードが上記にようにして抜取方向に移動すると、接点部材23aが再び接点部材23bに接触し、これによりカードの抜取りが検出される。
【0025】
図4図5は、図3に示す、それぞれ矢印A−A、矢印B−Bに沿う各断面図である。
【0026】
図4に示す、矢印A−Aに沿う断面図上では、スイッチ23を構成する2つの接点部材23a,23bの双方がコンタクト22_3から離れている。ただし、このスイッチ23を構成する一方の接点部材23bは、図5に示す、矢印B−Bに沿う迂回した経路により繋がっている。すなわち、この接点部材23bは、インサート成形された金属板の必要箇所を切断した後もコンタクト22_3と同一の部材で構成されている。このコンタクト22_3は、回路基板上のグラウンドに接続されるコンタクトである。接点部材23bも回路基板上のグラウンドに接続される部材であるため、本実施形態では、この接点部材23bを、コンタクト22_3と同一の部材で構成して、コンタクト22_3の基板接続部22b_3を介して回路基板に接続するようにしている。これにより、スイッチ23を構成する2つの接点部材23a,23bの接触ポイント自体はコンタクト22_1〜22_6から離れた位置にあっても、一方の接点部材23bの回路基板への接続部分の共平面性が確保されている。
【0027】
スイッチ23を構成するもう一方の接点部材23aの基板接続部は、ハウジング21に圧入された固定端231a側にある。この基板接続部の位置はコンタクト22_1〜22_6の基板接続部22a_1〜22a_6から離れているが、ハウジング21に圧入された部材であり、インサート成形と比べ高い組立精度を有する。このため、この接点部材23aの基板接続部についても共平面性が確保されている。
【0028】
このように、本実施形態では、スイッチ23の一方の接点部材23bをコンタクト22_3と同一の部材で構成して回路基板に接続することにより基板接続部の共平面性が確保されている。また、本実施形態によれば、スイッチ23を構成する2つの接点部材23a,23bのうちの圧入される部材は一方のみであり、前掲の特許文献2のようにスイッチを構成する2つの接点部材の双方を圧入する構成と比べ、工数やコストの低減化が図られる。
【符号の説明】
【0029】
10 カードコネクタ
11 カード挿入口
20 ハウジング組立体
21 ハウジング
22_1〜22_6 コンタクト
22a_1〜22a_6 接点部
22b_1〜22b_6 基板接続部
23 スイッチ
23a,23b 接点部材
24 スライダ
25 カムバー
26 コイルバネ
30 シエル
251 カムピン
242 ハートカム溝
242a ロック位置
図1
図2
図3
図4
図5