【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 固体酸化物形燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発の研究開発共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料ガスと圧縮酸化剤ガスとで発電する燃料電池と、前記燃料電池から排出された排燃料ガスを燃焼させて駆動するタービンとを備える発電システムの弁の動作を制御する制御装置であって、
前記燃料電池の起動時または停止時において、前記燃料電池の内圧が前記タービンの運転圧力未満であるときに、前記燃料電池から排出される排燃料ガスと前記タービンの駆動により駆動する圧縮機が精製する圧縮酸化剤ガスとの圧力差が所定範囲内になるように、前記燃料電池へ前記燃料ガスを供給する燃料供給ラインを通るガスの流量を調節する流量調節弁の開度を制御する
ことを特徴とする制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
《第1の実施形態》
図1は、本発明の第1の実施形態に係るコンバインド発電システムの系統図である。
図1に示すように、本実施形態のコンバインド発電システム1は燃料電池モジュール2と、ガスタービン3とを組み合わせた発電システムである。
ガスタービン3は、空気圧縮機4と、燃焼器5と、タービン6とを主な構成要素として有している。空気圧縮機4及びタービン6のロータ7は、互いに連結されており、空気圧縮機4は外気を吸入して圧縮する。さらに、ガスタービン3には、発電機8が接続されている。
【0019】
燃焼器5は、空気圧縮機4で圧縮された空気(酸化剤ガス)に燃料ガスを噴射して、高温燃焼ガスを生成する。タービン6は、燃焼器5により生成された高温燃焼ガスの供給を受けて回転駆動力を発生させ、この回転駆動力をロータ7に伝達するものである。タービン6には、タービン6を回転駆動した後の高温燃焼ガス、即ち、排ガスが導入されるガスタービン排ガスダクト9が設けられている。ガスタービン排ガスダクト9は、排ガスを外部に導く配管である。
【0020】
燃料電池モジュール2は圧力容器10と圧力容器10の内部に収納された複数のカートリッジ201とを有している。
カートリッジ201は、燃料ガスF1及び空気O1の供給を受けて発電を行うものであって、燃料電池モジュール2に少なくとも一つ設けられている。
カートリッジ201には、ガスタービン3から空気O1を供給する空気配管330と、燃料供給部20から燃料ガスF1を供給する燃料配管310(燃料供給ライン)が接続されている。
【0021】
燃料ガスF1としては、例えば、水素、一酸化炭素、メタン等の炭化水素系ガス、石炭等の炭素質原料のガス化により得られたガス、又は、これらの2以上の成分を含むガス等が利用される。また、本実施形態では、燃料電池モジュール2における酸化剤ガスとして、空気圧縮機4が圧縮した空気O1を用いているが、これに限られない。例えば、酸化剤ガスとしては、酸素を15〜30vol%含むガス等を利用することができ、例えば排燃料ガスF2と空気との混合ガスや、酸素と空気との混合ガスを利用してもよい。
【0022】
さらに、コンバインド発電システム1には、カートリッジ201における発電に用いられた排空気O2を、ガスタービン3の燃焼器5に供給する排空気配管340と、カートリッジ201から排出される燃料ガス(排燃料ガスF2)を燃焼器5に供給する排燃料配管320とが設けられている。排燃料配管320には、排燃料配管320を流れる排燃料ガスF2を加圧するブロワ14が設けられている。ここで、排燃料ガスF2とは、カートリッジ201を通過したガスであるが、カートリッジ201の通過時点においては、排燃料ガスF2に燃焼成分が残っている。
【0023】
燃料配管310には、燃料電池モジュール2に供給する燃料ガスF1の流量を調整する燃料流量調整バルブ401(流量調節弁)が設けられている。また、燃料配管310からは、燃料ガスF1を燃焼器5に直接導入する燃料分岐配管311が設けられている。燃料分岐配管311には、燃焼器5に供給する燃料ガスの流量を調整する燃料分岐調整バルブ402が設けられている。
【0024】
排燃料配管320には、排燃料ガスF2の一部を燃料配管310に再循環させる燃料再循環配管321が接続されている。即ち、燃料再循環配管321の一方の端部は排燃料配管320に接続され、他方の端部は燃料配管310に接続されている。
【0025】
また、排燃料配管320には、排燃料ガスF2の一部を外部に放出する配管であるベント配管322が接続されている。即ち、ベント配管322の一方の端部は排燃料配管320に接続され、他方の端部は外部に開放されている。ベント配管322には、外部に放出される排燃料ガスF2の流量を制御する排気バルブ403が設けられている。
【0026】
燃料配管310には、燃料供給部20から燃料電池モジュール2に向かって順に、燃料分岐配管311との接続部、燃料流量調整バルブ401、燃料再循環配管321との接続部が設けられている。
排燃料配管320には、カートリッジ201から燃焼器5に向かって順に、運転圧力制御バルブ404(運転圧力制御弁)、ベント配管322との接続部、ブロワ14、燃料再循環配管321との接続部、排燃料バルブ405が設けられている。運転圧力制御バルブ404は、排燃料配管320に流れる排燃料ガスF2の流量を調整することで、燃料電池モジュール2の燃料側の運転圧力を調整する。また、排燃料バルブ405は、燃焼器5に供給する排燃料ガスF2の流量を調整する。
【0027】
空気配管330は、ガスタービン3の空気圧縮機4において圧縮された空気O1をカートリッジ201に導く配管である。空気配管330からは、空気O1を排空気配管340へ分岐する空気分岐配管331が設けられており、空気分岐配管331には、排空気配管340へバイパスする空気O1の流量を調整する空気分岐調整バルブ406が設けられている。また、空気配管330には、燃料電池モジュール2に供給する空気O1の流量を調整する空気流量調整バルブ407が設けられている。また、排空気配管340には、燃焼器5に供給する空気O2の流量を調整する排空気流量調整バルブ408が設けられている。
【0028】
そして、コンバインド発電システム1は、各バルブの開度を制御する制御装置900を備える。制御装置900は、排燃料配管320に設けられた圧力計901と排空気配管340に設けられた圧力計902の計測結果に基づいて燃料電池モジュール2の内圧を管理し、各バルブの開度を制御する。
【0029】
次に、燃料電池モジュール2の詳細構造について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池モジュールの概略構成を示す模式図である。
図2に示すように、燃料電池モジュール2は、容器中心軸Avを中心として容器中心軸方向Dvに延びる円筒形状の圧力容器10と、この圧力容器10内に配置されている複数のカートリッジ201を有している。
【0030】
圧力容器10は、例えば、内部の圧力が0.1MPa〜約5MPa、内部の温度が大気温度〜約550℃で運用される。このため、この圧力容器10は、耐圧性を考慮して、円筒形状の胴部11と、胴部11の中心軸方向における両端部に形成されている半球状の鏡部12とを有している。この圧力容器10は、全体として円筒形状を成し、その容器中心軸Avが上下方向に延びるよう設置されている。また、この圧力容器10は、耐圧性と共に、使用条件によって空気O1中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性も要求される場合は、例えば、SUS304などのステンレス系材で形成しても良い。
【0031】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るセルスタックの要部断面図である。
カートリッジ201は、複数のセルスタックの束で構成されている。
図3に示すように、セル集合体であるセルスタック101は、円筒形状(又は管形状)の基体管103と、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されているインターコネクタ107とを有する。燃料電池セル105は、燃料極112と固体電解質111と空気極113とが積層して形成されている。セルスタック101は、さらに、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105のうちで、基体管103の軸方向において最も端に形成されている燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されているリード膜115を有する。
【0032】
本実施形態では、この円筒形状(又は管形状)のセルスタック101の内周側に燃料ガスF1が通り、外周側に空気O1が通る。
【0033】
基体管103は、例えば、CaO安定化ZrO
2(CSZ)、Y
2O
3安定化ZrO
2(YSZ)、MgAl
2O
4等のいずれかで形成されている多孔質体である。この基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持する役目を担っている。さらに、この基体管103は、内周側に供給された燃料ガスF1を基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料電池セル105に拡散させる役目も担っている。
【0034】
燃料極112は、例えば、Ni/YSZ等、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で形成されている。この場合、燃料極112は、燃料極112の成分であるNiが燃料ガスF1に対して触媒としても作用する。この触媒としての作用は、基体管103を介して供給された燃料ガスF1中に、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気とが含まれている場合、これら相互を反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質する作用である。
【0035】
空気極113は、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又はLaCoO
3系酸化物で形成されている。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される空気O1中の酸素を解離させて酸素イオン(O
2−)を生成する。
【0036】
固体電解質111は、例えば、主としてYSZで形成されている。このYSZは、ガスを通しにくい気密性と、高温下での高い酸素イオン導電性とを有している。この固体電解質111は、空気極113で生成された酸素イオン(O
2−)を燃料極112に移動させる。
【0037】
前述の燃料極112では、固体電解質111との界面付近において、改質により得られた水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質111から供給された酸素イオン(O
2−)とが反応し、水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)が生成される。この燃料電池セル105では、この反応過程で酸素イオンから電子が放出されて、発電が行われる。
【0038】
インターコネクタ107は、例えば、SrTiO
3系などのM1−xLxTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物で形成されている。このインターコネクタ107は、燃料ガスF1と空気O1とが混合しないように緻密な膜で、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極112とを電気的に接続する。つまり、このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105同士を電気的に直列接続する。
【0039】
リード膜115は、電子伝導性を有すること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、例えば、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で形成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により電気的に直列接続されている複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出する役目を担っている。
【0040】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るカートリッジの断面図である。
図5は、本発明の第1の実施形態に係るカートリッジの斜視図である。
カートリッジ201は、
図4及び
図5に示すように、複数のセルスタック101と、複数のセルスタック101の束の一方の端部を覆う第一カートリッジヘッダ220aと、複数のセルスタック101の束の他方の端部を覆う第二カートリッジヘッダ220bと、を有している。複数のセルスタック101は、互いに平行で且つその長手方向における互いの位置が揃って、全体として円柱形状を成している。また、第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、円柱形状を成している複数のセルスタック101の束の外径よりわずかに大きな外径の円筒形状を成している。このため、カートリッジ201は、全体として、セルスタック101の長手方向に長い円柱形状を成している。
【0041】
第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、いずれも、複数のセルスタック101の束の端部が開口228から内部に入り込む円筒形状のケーシング229a,229bと、ケーシング229a,229bの開口228を塞ぐ断熱体227a,227bと、ケーシング229a,229bの内部空間をセルスタック101の長手方向で2つの空間に仕切る管板225a,225bと、を有している。管板225a,225b等は、高温耐久性のある金属材料で形成されている。管板225a,225b及び断熱体227a,227bには、複数のセルスタック101の端部のそれぞれが挿通可能な貫通孔が形成されている。管板225a,225bは、その貫通孔に挿通されたセルスタック101の端部をシール部材又は接着剤237を介して支持する。このため、この管板225a,225bには貫通孔が形成されているものの、この管板225a,225bを基準にしてケーシング229a,229b内の一方の空間に対する他方の空間の気密性が確保されている。断熱体227a,227bの貫通孔の内径は、ここに挿通されるセルスタック101の外径よりも大きく形成されている。つまり、断熱体227a,227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されたセルスタック101の外周面との間には隙間235a,235bが存在する。
【0042】
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと管板225aとで形成されている空間は、燃料ガスF1が供給される燃料ガス供給室217を形成している。このケーシング229aには、燃料配管310からの燃料ガスF1を燃料ガス供給室217に導くための燃料ガス供給孔231aが形成されている。この燃料ガス供給室217内には、複数のセルスタック101における基体管103の端部が位置し、ここで開放している。燃料配管310から燃料ガス供給室217に導かれた燃料ガスF1は、複数のセルスタック101の基体管103の内部に流れ込む。この際、燃料ガスF1は、燃料ガス供給室217により、複数のセルスタック101の各基体管103に対してほぼ均等流量に配分される。このため、複数のセルスタック101における各発電量の均一化を図ることができる。
【0043】
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと管板225bとで形成されている空間は、セルスタック101の基体管103内を通過した排燃料ガスF2が流れ込む燃料ガス排出室219を形成している。このケーシング229bには、燃料ガス排出室219に流れ込んだ排燃料ガスF2を排燃料配管320に導くための燃料ガス排出孔231bが形成されている。この燃料ガス排出室219内には、複数のセルスタック101における基体管103の端部が位置し、ここで開放している。複数のセルスタック101の各基体管103内を通過した排燃料ガスF2は、前述したように、燃料ガス排出室219に流入した後、排燃料配管320を通って、圧力容器10外へ排出される。
【0044】
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと断熱体227bと管板225bとで形成されている空間は、空気供給室216を形成している。このケーシング229bには、空気配管330からの空気O1を空気供給室216に導くための空気供給孔233bが形成されている。この空気供給室216内に導かれた空気O1は、断熱体227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235bから、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215へと流出する。
【0045】
第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215には、複数のセルスタック101の燃料電池セル105が配置されている。このため、この発電室215では、燃料ガスF1と空気O1とが電気化学的反応して、発電が行われる。なお、この発電室215で、セルスタック101の長手方向における中央部付近の温度は、燃料電池モジュール2の定常運転時に、およそ700℃〜1100℃の高温雰囲気になる。また、この発電室215は、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間であって、外周側が後述の内側断熱材16で囲まれた空間である。
【0046】
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと断熱体227aと管板225aとで形成されている空間は、発電室215を通った排空気O2が流入する空気排出室218を形成している。このケーシング229aには、空気排出室218に流れ込んだ排空気O2を排空気配管340に導くための空気排出孔233aが形成されている。発電室215中の空気O1は、断熱体227aの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235aから空気排出室218内に流入した後、排空気配管340を通って、圧力容器10外へ排空気O2として排出される。
【0047】
発電室215の高温化に伴って、各カートリッジヘッダ220a,220bの管板225a,225bが高温化する。第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bの断熱体227a,227bは、この管板225a,225bが高温化による強度低下や空気O1中に含まれている酸化剤による腐食を抑える。さらに、この断熱体227a,227bは、管板225a,225bの熱変形も抑える。
【0048】
前述したように、発電室215中の空気O1と、この発電室215に配置されている複数のセルスタック101の内側を通る燃料ガスF1とは、セルスタック101における複数の燃料電池セル105で電気化学反応する。この結果、複数の燃料電池セル205で発電が行われる。
【0049】
複数の燃料電池セル205での発電で得られた直流電流は、複数の燃料電池セル205相互間に設けられているインターコネクタ107を経て、セルスタック101の端部側へ流れ、このセルスタック101のリード膜115に流れ込む。そして、この直流電流は、リード膜115から、集電板(不図示)を介して、カートリッジ201の集電棒(不図示)に流れ、カートリッジ201外部へ取り出される。複数の集電棒は、互いに直列及び/又は並列接続されている。集電棒のうち、最も下流側の集電棒は、例えば、図示されていないインバータに接続されている。カートリッジ201外部に取り出された直流電流は、直列及び/又は並列接続されている複数の集電棒を経て、例えば、インバータに流れ、ここで交流電流に変換されて、電力負荷へと供給される。
【0050】
セルスタック101の内周側を流れる燃料ガスF1とセルスタック101の外周側を流れる空気O1とは、このセルスタック101を介して熱交換する。この結果、燃料ガスF1は、空気O1により加熱され、空気O1は、逆に燃料ガスF1により冷却される。本実施形態では、これら燃料ガスF1と空気O1とがセルスタック101の内周側と外周側とを対向して流れる。このため、燃料ガスF1と空気O1との熱交換率が高まり、燃料ガスF1による空気O1の冷却効率、及び空気O1による燃料ガスF1の加熱効率が高まる。よって、本実施形態において、空気O1は、第一カートリッジヘッダ220aを形成する管板225a等が座屈変形等しない温度に冷却されてから、この第一カートリッジヘッダ220aの空気排出室218に流れ込む。また、本実施形態において、燃料ガスF1は、発電室215内のセルスタック101内で、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温される。
【0051】
なお、本実施形態では、燃料ガスF1と空気O1とがセルスタック101の内周側と外周側とを対向して流れる、つまり燃料ガスF1と空気O1とが逆向きに流れるが、必ずしもこの必要はなく、例えば、燃料ガスF1と空気O1とがセルスタック101の内周側と外周側で同じ向きに流れてもよいし、空気O1が燃料ガスF1の流れに対して直交する方向に流れてもよい。
【0052】
円柱形状の複数のカートリッジ201は、
図2に示すように、いずれも、カートリッジ中心軸Acが圧力容器10の容器中心軸Avと平行になるよう、圧力容器10内に配置されている。つまり、本実施形態では、カートリッジ中心軸Acは、容器中心軸Avと同様、上下方向に延びている。
【0053】
なお、カートリッジ201の構成は上記したものに限らず、カートリッジを圧力容器の中心軸と直交する方向に延びるように配置してもよい。また、カートリッジは円柱形状に限らず、角柱形状としてもよい。
【0054】
次に、上記の構成からなるコンバインド発電システム1の動作について説明する。
まず、起動時におけるコンバインド発電システム1の動作について説明する。
コンバインド発電システム1の起動は、まずガスタービン3のみを起動させ、燃料電池モジュール2の内圧がガスタービン3の運転圧力に達したときに、燃料電池モジュール2を起動させることで行う。なお、コンバインド発電システム1の起動前には、全てのバルブの開度を0にしておく。
【0055】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るコンバインド発電システムの起動方法を示すフローチャートである。
図7は、本発明の第1の実施形態に係るコンバインド発電システムの起動時における各バルブの開度の遷移を示すタイムチャートである。
まず、制御装置900は、空気分岐調整バルブ406を全開にする(ステップS1)。これにより、空気圧縮機4によって圧縮された全ての空気O1は、空気分岐配管331を介して燃焼器5へ供給される。次に、制御装置900は、燃焼器5の稼動に必要な流量だけ燃料ガスF1が供給されるよう、燃料分岐調整バルブ402の開度を制御する(ステップS2)。これにより、ガスタービン3は、燃料供給部20から燃料分岐配管311を介して供給される燃料ガスF1、及び空気供給部21から供給される空気O1によって起動される。
【0056】
ガスタービン3が起動すると、制御装置900は、圧力計901と圧力計902が測定した圧力の差圧の算出を開始する(ステップS3)。また、制御装置900は、ステップS3で算出した差圧に基づく燃料流量調整バルブ401の開度の制御を開始する(ステップS4)。具体的には、制御装置900は、ステップS3で算出した差圧が所定の値になるように燃料流量調整バルブ401の開度制御を行う。このとき、制御装置900は、排気バルブ403及び運転圧力制御バルブ404を所定の開度に固定する(ステップS5)。
【0057】
次に、制御装置900は、空気流量調整バルブ407を低開度で開度固定することで、燃料電池モジュール2の空気側の内圧を徐々に上昇させる(ステップS6)。これにより、圧力計902が測定する圧力が徐々に高まるため、ステップS4で開度の制御を開始した燃料流量調整バルブ401の開度は徐々に大きくなる。
【0058】
次に、制御装置900は、圧力計901が測定した圧力がガスタービン3の運転圧力に達したか否かを判定する(ステップS7)。これにより、制御装置900は、燃料電池モジュール2の内圧がガスタービンの運転圧力に達したか否かを判定する。圧力がガスタービン3の運転圧力に達していないと判定した場合(ステップS7:NO)、圧力がガスタービン3の運転圧力に達するまで燃料流量調整バルブ401の制御を継続する。
【0059】
他方、圧力がガスタービン3の運転圧力に達したと判定した場合(ステップS7:YES)、制御装置900は、燃料流量調整バルブ401の開度制御を、差圧を一定にする制御から、燃料ガスF1の流量を一定にする制御に変更する(ステップS8)。次に、制御装置900は、ベント配管322の圧力(図示せず)が一定値になるように、排気バルブ403の開度制御を開始する(ステップS9)。次に、制御装置900は、ステップS3で算出を開始した差圧が所定の値になるように運転圧力制御バルブ404の開度の制御を開始する(ステップS10)。
【0060】
次に、制御装置900は、空気流量調整バルブ407及び排空気流量調整バルブ408を全開にとする(ステップS11)。次に、燃料電池モジュール2に必要な空気量を調整するため、空気分岐調整バルブ406の開度を調整する。空気圧縮機4によって圧縮された空気O1の全てが必要な場合は、空気分岐調整バルブ406の開度を0にする(ステップS12)。そして、排燃料バルブ405の開度を徐々に上げる(ステップS13)。なお、燃料分岐調整バルブ402は、燃焼器5の稼動に必要な流量だけ燃料ガスF1が供給されるよう制御されているため、排燃料バルブ405の開度が上がるにつれ、燃料分岐調整バルブ402の開度は下がっていく。また、圧力計901が測定した圧力が一定値になるよう制御されている排気バルブ403の開度も下がり、0となる。
その後、排燃料バルブ405の開度が全開になった時点で、コンバインド発電システム1の起動が終了する。
【0061】
このように、本実施形態によれば、制御装置900は、燃料電池モジュール2のガス条件が運転圧力制御バルブ404によって制御できる状態になるまで、燃料電池モジュール2の内圧を燃料流量調整バルブ401によって制御する。燃料流量調整バルブ401は、燃料電池モジュール2の定常運転時より低圧・低流量のガス条件で適切に制御できるように設計されるため、制御装置900は、コンバインド発電システム1の起動時において燃料電池モジュール2の内圧を適切に制御することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、コンバインド発電システム1の起動時の動作について説明したが、コンバインド発電システム1の停止時にも同様の制御により燃料電池モジュール2の内圧を適切に制御することができる。
【0063】
また、本実施形態では、燃料電池モジュール2の内圧がガスタービンの運転圧力に達した後の制御として、排気バルブ403の開度制御を開始してから(ステップS9)運転圧力制御バルブ404の開度の制御を開始する(ステップS10)場合について説明したが、これに限られない。例えば、ステップS9とステップS10の実行順序を逆にしても良い。
【0064】
なお、本実施形態では、燃料電池モジュール2の内圧がガスタービンの運転圧力に達するまで、排気バルブ403の開度を固定開度とする場合について説明したが、これに限られない。例えば、燃料流量調整バルブ401のレンジが狭い場合、燃料流量調整バルブ401と排気バルブ403の開度をそれぞれ制御することで燃料電池モジュール2の内圧の制御を行っても良い。
【0065】
《第2の実施形態》
図8は、本発明の第2の実施形態に係るコンバインド発電システムの系統図である。
第2の実施形態に係るコンバインド発電システム1は、第1の実施形態に係るコンバインド発電システム1に、パージガス供給部22、加圧用空気配管332と加圧用空気調整バルブ409(流量調節弁)とをさらに設けたものである。
【0066】
パージガス供給部22は、燃料配管310にパージガスを供給する。なお、パージガスとしてはN
2などの不活性ガスが用いられる。
燃料配管310からは、空気O1を燃料再循環配管321に導入する加圧用空気配管332が設けられている。加圧用空気配管332には、燃料再循環配管321を介して燃料配管310に供給する空気O1の流量を調整する加圧用空気調整バルブ409が設けられている。
【0067】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るコンバインド発電システムの起動方法を示すフローチャートである。
図10は、本発明の第2の実施形態に係るコンバインド発電システムの起動時における各バルブの開度の遷移を示すタイムチャートである。
まず、制御装置900は、空気分岐調整バルブ406を全開にする(ステップS21)。これにより、空気圧縮機4によって圧縮された全ての空気O1は、空気分岐配管331を介して燃焼器5へ供給される。次に、制御装置900は、燃焼器5の稼動に必要な流量だけ燃料ガスF1が供給されるよう、燃料分岐調整バルブ402の開度を制御する(ステップS22)。これにより、ガスタービン3は、燃料供給部20から燃料分岐配管311を介して供給される燃料ガスF1、及び空気供給部21から供給される空気O1によって起動される。
【0068】
ガスタービン3が起動すると、制御装置900は、圧力計901と圧力計902が測定した圧力の差圧の算出を開始する(ステップS23)。また、制御装置900は、ステップS3で算出した差圧に基づく加圧用空気調整バルブ409の開度の制御を開始する(ステップS24)。具体的には、制御装置900は、ステップS3で算出した差圧が所定の値になるように加圧用空気調整バルブ409の開度制御を行う。このとき、制御装置900は、排気バルブ403及び運転圧力制御バルブ404を所定の開度に固定する(ステップS25)。
【0069】
次に、制御装置900は、空気流量調整バルブ407を低開度で開度固定することで、燃料電池モジュール2の空気側の内圧を徐々に上昇させる(ステップS26)。これにより、圧力計902が測定する圧力が徐々に高まるため、ステップS24で開度の制御を開始した加圧用空気調整バルブ409の開度は徐々に大きくなる。
【0070】
次に、制御装置900は、圧力計901が測定した圧力がガスタービン3の運転圧力に達したか否かを判定する(ステップS27)。これにより、制御装置900は、燃料電池モジュール2の内圧がガスタービンの運転圧力に達したか否かを判定する。圧力がガスタービン3の運転圧力に達していないと判定した場合(ステップS27:NO)、圧力がガスタービン3の運転圧力に達するまで加圧用空気調整バルブ409の制御を継続する。
【0071】
他方、圧力がガスタービン3の運転圧力に達したと判定した場合(ステップS27:YES)、制御装置900は、加圧用空気調整バルブ409の開度を0にする(ステップS28)。次に、制御装置900は、燃料ガスF1の流量が一定になるように燃料流量調整バルブ401の開度制御を開始する(ステップS29)。次に、制御装置900は、ベント配管322の圧力(図示せず)が一定値になるように、排気バルブ403の開度制御を開始する(ステップS30)。次に、制御装置900は、ステップS3で算出を開始した差圧が所定の値になるように運転圧力制御バルブ404の開度の制御を開始する(ステップS31)。
【0072】
次に、制御装置900は、空気流量調整バルブ407及び排空気流量調整バルブ408を全開とする(ステップS32)。次に、燃料電池モジュール2に必要な空気量を調整するため、空気分岐調整バルブ406の開度を調整する。空気圧縮機4によって圧縮された空気O1の全てが必要な場合は、空気分岐調整バルブ406の開度を0にする(ステップS33)。
【0073】
次に、制御装置900は、パージガス供給部22によるパージガスの供給を開始し、燃料配管310、排燃料配管320及び燃料再循環配管321をパージガスで充填し、空気O1を全て排気する(ステップS34)。パージガスの充填に十分な時間が経過すると、制御装置900は、パージガス供給部22によるパージガスの供給を停止する。そして、制御装置900は、排燃料バルブ405の開度を徐々に上げる(ステップS35)。なお、燃料分岐調整バルブ402は、燃焼器5の稼動に必要な流量だけ燃料ガスF1が供給されるよう制御されているため、排燃料バルブ405の開度が上がるにつれ、燃料分岐調整バルブ402の開度は下がっていく。また、圧力計901が測定した圧力が一定値になるよう制御されている排気バルブ403の開度も下がり、0となる。
その後、排燃料バルブ405の開度が全開になった時点で、コンバインド発電システム1の起動が終了する。
【0074】
このように、本実施形態によれば、制御装置900は、燃料電池モジュール2のガス条件が運転圧力制御バルブ404によって制御できる状態になるまで、燃料電池モジュール2の内圧を加圧用空気調整バルブ409によって制御する。したがって、加圧用空気調整バルブ409を、燃料電池モジュール2の定常運転時より低圧・低流量のガス条件で適切に制御できるように設計しておくことで、制御装置900は、コンバインド発電システム1の起動時において燃料電池モジュール2の内圧を適切に制御することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、燃料電池モジュール2の内圧を上昇させるために燃料ガスを用いる必要がないため、燃料ガスの保有量を小さくすることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、加圧用空気配管332が燃料配管310と燃料再循環配管321とを接続する場合について説明したが、これに限られない。例えば、加圧用空気配管332は、燃料配管310に直接接続されていても良い。
【0077】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0078】
なお、上述の制御装置900は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0079】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。