【実施例】
【0036】
上記実施形態で説明した消臭剤の製造方法に従って、各種の消臭剤を製造した。本発明の条件で製造した消臭剤を実施例とし、本発明とは異なる条件で製造した消臭剤を比較例として説明する。なお、下記の実施例及び比較例において、消臭剤の組成分析はICP−AES法(株式会社日立ハイテクサイエンス社製のICP発光分光分析装置SPS−3100シリーズを使用)により実施した。消臭剤の水分含有量はカールフィッシャー法(三菱化学株式会社製の微量水分測定装置CA−07型を使用)により実施した。組成及び水分含有量の単位はすべて質量%とする。消臭剤の構造分析については、X線回折法(株式会社島津製作所社製のX線回折装置LabX XRD−6000を使用)により実施した。
【0037】
〔実施例1〕
実施例1は、上記第一実施形態の製造方法に準じて行った製造試験である。(a)ケイ酸塩水溶液として、JIS規格K1408で規定されている水ガラス3号(Na
2O/SiO
2=1/3.2)46.3gを水80gで希釈したものを使用した。(b)亜鉛塩水溶液として、試薬として市販されている酸化亜鉛4.85gを5.2%硫酸118.54gに溶解したものを使用した。(c)金属塩水溶液として、Al
2O
310%のポリ塩化アルミニウム水溶液(PAC)10.8gを使用した。
(b)亜鉛塩水溶液に(c)金属塩水溶液を添加し、亜鉛塩/金属塩混合液とした。(a)ケイ酸塩水溶液、及び亜鉛塩/金属塩混合液を、水100gを入れたビーカーに夫々約6ml/分の添加速度で攪拌しながら同時に添加し、反応させた。液の添加終了後、生成したスラリー液を常温で60分間攪拌しながら熟成させた。熟成後のスラリー液のpHは6.3であった。スラリー液を静置して沈澱した固形分を濾過し、ケーキとして回収した。ケーキを水洗し、120℃で7時間乾燥させた。乾燥したケーキを適宜粉砕・分級し、白色消臭剤を得た。白色消臭剤の組成は、ZnO:21.1%、SiO
2:61.9%、Al
2O
3:5.1%、水分:7.3%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4のX線回折スペクトルに示すように、特定の回折パターンではなくブロードなピークが測定されたことから、無定形であることが確認された。
【0038】
〔実施例2〕
実施例2は、上記第一実施形態の製造方法に準じて行った製造試験である。(a)ケイ酸塩水溶液として、JIS規格K1408で規定されている水ガラス3号(Na
2O/SiO
2=1/3.2)46.3gを水80gで希釈したものを使用した。(b)亜鉛塩水溶液として、試薬として市販されている酸化亜鉛4.85gを5.2%硫酸118.54gに溶解したものを使用した。(c)金属塩水溶液として、Al
2O
36.4%の塩化アルミニウム水溶液28.0gを使用した。
(a)ケイ酸塩水溶液、(b)亜鉛塩水溶液、及び(c)金属塩水溶液の混合手順、並びに最終の白色消臭剤を得るまでの工程は、実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。熟成後のスラリー液のpHは6.1であった。白色消臭剤の組成は、ZnO:14.0%、SiO
2:63.5%、Al
2O
3:6.5%、水分:10.4%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0039】
〔実施例3〕
実施例3は、上記第二実施形態の製造方法に準じて行った製造試験である。(a)ケイ酸塩水溶液として、JIS規格K1408で規定されている水ガラス3号(Na
2O/SiO
2=1/3.2)46.3gを水80gで希釈したものを使用した。(b)亜鉛塩水溶液として、試薬として市販されている酸化亜鉛4.85gを5.2%硫酸118.54gに溶解したものを使用した。(c)金属塩水溶液として、Al
2O
310%のポリ塩化アルミニウム水溶液(PAC)10.8gを使用した。
(a)ケイ酸塩水溶液、及び(b)亜鉛塩水溶液を、水100gを入れたビーカーに夫々約6ml/分の添加速度で攪拌しながら同時に添加し、反応させた。次いで、(c)金属塩水溶液を添加し、生成したスラリー液を常温で60分間攪拌しながら熟成させた。熟成後のスラリー液のpHは5.8であった。スラリー液を静置して沈澱した固形分を濾過し、ケーキとして回収した。ケーキを水洗し、120℃で7時間乾燥させた。乾燥したケーキを適宜粉砕・分級し、白色消臭剤を得た。白色消臭剤の組成は、ZnO:21.7%、SiO
2:61.3%、Al
2O
3:5.1%、水分:7.0%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0040】
〔実施例4〕
実施例4は、上記第三実施形態の製造方法に準じて行った製造試験である。製品である二酸化ケイ素と酸化亜鉛との混合物として、ラサ工業株式会社から市販されている四大悪臭用消臭剤「シュークレンズ(登録商標)KD−211」10.0gを使用した。(c)金属塩水溶液として、Al
2O
310%のポリ塩化アルミニウム水溶液(PAC)8.5gを使用した。
上記混合物を水190gに分散してスラリー液を調製し、スラリー液に(c)金属塩水溶液を添加した。スラリー液を常温で60分間攪拌しながら熟成させた。スラリー液のpHは、(c)金属塩水溶液の添加直後、及びスラリー液の熟成後で変化はなく、pH5.7であった。熟成後のスラリー液を静置して沈澱した固形分を濾過し、ケーキとして回収した。ケーキを水洗し、120℃で7時間乾燥させた。乾燥したケーキを適宜粉砕・分級し、白色消臭剤を得た。白色消臭剤の組成は、ZnO:15.4%、SiO
2:63.5%、Al
2O
3:8.1%、水分:10.3%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0041】
〔実施例5〕
実施例5は、上記第三実施形態の製造方法に準じて行った製造試験である。製品である二酸化ケイ素と酸化亜鉛との混合物として、ラサ工業株式会社から市販されている四大悪臭用消臭剤「シュークレンズ(登録商標)KD−211」10.0gを使用した。(c)金属塩水溶液として、12.6%硫酸ジルコニウム水溶液18.0gを使用した。
上記混合物、及び(c)金属塩水溶液の混合手順、並びに最終の白色消臭剤を得るまでの工程は、実施例4と同様であるため、詳細な説明は省略する。スラリー液のpHは、(c)金属塩水溶液の添加直後でpH5.6、スラリー液の熟成後でpH5.7であった。白色消臭剤の組成は、ZnO:13.8%、SiO
2:63.4%、Zr
2O
2:13.8%、水分:7.6%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0042】
〔実施例6〕
実施例6は、上記第三実施形態の製造方法に準じて行った製造試験である。製品である二酸化ケイ素と酸化亜鉛との混合物として、ラサ工業株式会社から市販されている四大悪臭用消臭剤「シュークレンズ(登録商標)KD−211」10.0gを使用した。(c)金属塩水溶液として、6.6%オキシ塩化ジルコニウム水溶液35.4gを使用した。
上記混合物、及び(c)金属塩水溶液の混合手順、並びに最終の白色消臭剤を得るまでの工程は、実施例4と同様であるため、詳細な説明は省略する。スラリー液のpHは、(c)金属塩水溶液の添加直後でpH5.3、スラリー液の熟成後でpH5.4であった。白色消臭剤の組成は、ZnO:18.7%、SiO
2:63.4%、Zr
2O
2:1.84%、水分:11.1%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0043】
〔実施例7〕
実施例7は、上記第三実施形態の製造方法に準じて行った製造試験である。製品である二酸化ケイ素と酸化亜鉛との混合物として、ラサ工業株式会社から市販されている四大悪臭用消臭剤「シュークレンズ(登録商標)KD−211」10.0gを使用した。(c)金属塩水溶液として、6.8%硫酸亜鉛及び0.8%硫酸チタニルの混合水溶液35.47gを使用した。
上記混合物、及び(c)金属塩水溶液の混合手順、並びに最終の白色消臭剤を得るまでの工程は、実施例4と同様であるため、詳細な説明は省略する。スラリー液のpHは、(c)金属塩水溶液の添加直後でpH5.3、スラリー液の熟成後でpH5.6であった。白色消臭剤の組成は、ZnO:14.8%、SiO
2:63.5%、Zr
2O
2:12.6%、水分:7.3%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0044】
〔実施例8〕
実施例8は、上記第三実施形態の製造方法に準じて行った製造試験である。製品である二酸化ケイ素と酸化亜鉛との混合物として、ラサ工業株式会社から市販されている四大悪臭用消臭剤「シュークレンズ(登録商標)KD−211」10.0gを使用した。(c)金属塩水溶液として、6.4%塩化アルミニウム水溶液20.0gを使用した。
上記混合物、及び(c)金属塩水溶液の混合手順、並びに最終の白色消臭剤を得るまでの工程は、実施例4と同様であるため、詳細な説明は省略する。スラリー液のpHは、(c)金属塩水溶液の添加直後でpH5.5、スラリー液の熟成後でpH5.6であった。白色消臭剤の組成は、ZnO:12.4%、SiO
2:63.5%、Al
2O
3:8.1%、水分:11.0%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0045】
〔比較例1〕
比較例1は、上記第一実施形態の製造方法との比較のために行った製造試験である。(a)ケイ酸塩水溶液として、JIS規格K1408で規定されている水ガラス3号(Na
2O/SiO
2=1/3.2)46.3gを水80gで希釈したものを使用した。(b)亜鉛塩水溶液として、試薬として市販されている酸化亜鉛4.85gを5.2%硫酸118.54gに溶解したものを使用した。(c)金属塩水溶液は使用しなかった。
(a)ケイ酸塩水溶液、及び(b)亜鉛塩水溶液を、水100gを入れたビーカーに夫々約6ml/分の添加速度で攪拌しながら同時に添加し、反応させた。液の添加終了後、生成したスラリー液を常温で60分間攪拌しながら熟成させた。スラリー液のpHは、(a)ケイ酸塩水溶液、及び(b)亜鉛塩水溶液の添加直後でpH6.1、スラリー液の熟成後でpH6.4であった。スラリー液を静置して沈澱した固形分を濾過し、ケーキとして回収した。ケーキを水洗し、120℃で7時間乾燥させた。乾燥したケーキを適宜粉砕・分級し、白色消臭剤を得た。白色消臭剤の組成は、ZnO:21.7%、SiO
2:62.0%、Al
2O
3:0.2%、水分:11.1%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4のX線回折スペクトルに示すように、特定の回折パターンではなくブロードなピークが測定されたことから、無定形であることが確認された。
【0046】
〔比較例2〕
比較例2は、上記第三実施形態の製造方法との比較のために行った製造試験である。製品である二酸化ケイ素と酸化亜鉛との混合物として、ラサ工業株式会社から市販されている四大悪臭用消臭剤「シュークレンズ(登録商標)KD−211」10.0gを使用した。(c)金属塩水溶液として、Al
2O
310%のポリ塩化アルミニウム水溶液(PAC)25.0gを使用した。
上記混合物を水190gに分散してスラリー液を調製し、スラリー液に(c)金属塩水溶液を添加した。スラリー液を常温で60分間攪拌しながら熟成させた。スラリー液のpHは、(c)金属塩水溶液の添加直後でpH4.5、スラリー液の熟成後でpH5.0であった。熟成後のスラリー液を静置して沈澱した固形分を濾過し、ケーキとして回収した。ケーキを水洗し、120℃で7時間乾燥させた。乾燥したケーキを適宜粉砕・分級し、白色消臭剤を得た。白色消臭剤の組成は、ZnO:0.5%、SiO
2:63.5%、Al
2O
3:23.8%、水分:7.2%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0047】
〔比較例3〕
比較例3は、上記第三実施形態の製造方法との比較のために行った製造試験である。製品である二酸化ケイ素と酸化亜鉛との混合物として、ラサ工業株式会社から市販されている四大悪臭用消臭剤「シュークレンズ(登録商標)KD−211」10.0gを使用した。(c)金属塩水溶液として、12.6%硫酸ジルコニウム水溶液25.0gを使用した。
上記混合物、及び(c)金属塩水溶液の混合手順、並びに最終の白色消臭剤を得るまでの工程は、比較例2と同様であるため、詳細な説明は省略する。スラリー液のpHは、(c)金属塩水溶液の添加直後でpH1.6、スラリー液の熟成後でpH1.7であった。熟成後のスラリー液を静置して沈澱した固形分を濾過し、ケーキとして回収した。ケーキを水洗し、120℃で7時間乾燥させた。乾燥したケーキを適宜粉砕・分級し、白色消臭剤を得た。白色消臭剤の組成は、ZnO:1.6%、SiO
2:63.4%、Zr
2O
2:18.9%、水分:11.1%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0048】
〔比較例4〕
比較例4は、上記第三実施形態の製造方法との比較のために行った製造試験である。製品である二酸化ケイ素と酸化亜鉛との混合物として、ラサ工業株式会社から市販されている四大悪臭用消臭剤「シュークレンズ(登録商標)KD−211」10.0gを使用した。(c)金属塩水溶液は使用しなかった。
すなわち、比較例4は、上記混合物を二次加工することなく、そのまま白色消臭剤として使用したものである。白色消臭剤の組成は、ZnO:20.5%、SiO
2:63.5%、Al
2O
3:0.8%、水分:9.7%であった。また、白色消臭剤の構造は、
図4と同様のX線回折スペクトルであったため省略するが、無定形であることが確認された。
【0049】
〔消臭性能試験〕
次に、上記実施例及び比較例の白色消臭剤の性能を確認するため、主に汗臭を想定した悪臭成分(アンモニア、酢酸ガス、硫化水素ガス)に対する消臭性能試験を実施した。消臭性能試験は、ガス検知管法により実施した。各消臭性能試験の試験条件は以下のとおりである。
【0050】
(1)アンモニア消臭試験
実施例1〜8、及び比較例1〜4の白色消臭剤0.5gを3Lの樹脂製の臭い袋に入れ、1000ppmのアンモニアガスを封入し、30分経過後、検知管を用いてアンモニア濃度を測定した。
(2)酢酸ガス消臭試験
実施例1〜8、及び比較例1〜4の白色消臭剤0.1gを3Lの樹脂製の臭い袋に入れ、100ppmの酢酸ガスを封入し、10分経過後、検知管を用いて酢酸濃度を測定した。
(3)硫化水素ガス消臭試験
実施例1〜8、及び比較例1〜4の白色消臭剤0.1gを3Lの樹脂製の臭い袋に入れ、100ppmの硫化水素ガスを封入し、30分経過後、検知管を用いて硫化水素ガス濃度を測定した。
【0051】
夫々のガスに対する消臭性能試験の結果を表1に示す。また、表1では、夫々の白色消臭剤のスラリー液のpHについても併せて示す。スラリー液のpHは、夫々の白色消臭剤2.5gをイオン交換水47.5gに添加してスラリー液とし、30分攪拌した後、スラリー液のpHをpHメーター(株式会社堀場製作所社製の卓上型pH計F−22)で測定したものである。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、実施例1〜8の白色消臭剤は、アンモニア、酢酸ガス、及び
硫化水素ガスの何れの悪臭成分に対しても高い消臭性能を示すことが確認された。比較例の白色消臭剤については、比較例1及び4の白色消臭剤は消臭性能が十分であったが、比較例2及び3の白色消臭剤は消臭性能が不十分であり、特に硫化水素に対しては殆ど効果が見られなかった。
【0054】
スラリー液のpHに関しては、実施例1〜8の白色消臭剤はpH6.0〜7.0の範囲にあり、弱酸性〜中性領域であった。この範囲のpHであれば、白色消臭剤を繊維に添加、塗布、含浸等により適用する場合、スラリー液のpHを調整する必要がない。従って、実施例1〜8の白色消臭剤は、酸化亜鉛の溶出を回避して高い消臭性能を維持しつつ、事前のpH調整が不要な利便性に優れた消臭剤として使用することができる。
【0055】
これに対し、比較例1及び4の白色消臭剤は、スラリー液のpHが7より高くアルカリ性領域であるため、繊維に適用する際にpH調整が必要となり、その際、酸化亜鉛が溶出して消臭性能を低下させてしまうことになる。また、比較例2及び3の白色消臭剤は、スラリー液のpHが5より低く比較的強い酸性であるため、繊維に適用することには不向きである。