(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係るシミュレーションシステムについて図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係るシミュレーションシステム1を示す図である。
図1に示す通り、本実施形態に係るシミュレーションシステム1は、走行履歴情報収集装置100と、シミュレーション装置200とを備えている。この走行履歴情報収集装置100は、例えば、車両に搭載される車載器やデータロガー等であって、所定の車両による実際の走行に基づく、当該車両の実際の走行履歴を示す情報(以下、「走行履歴情報」という)を収集する。なお走行履歴情報の具体的な内容については後述する。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る走行履歴情報収集装置を含むシステムの概念図である。
次に
図2を参照して、走行履歴情報収集装置100における走行履歴情報の一例について説明する。このシステムは、道路を事前走行する車両に搭載された走行履歴情報収集装置100と、GPS(Global Positioning System)衛星90とを備えている。なお以下の説明においては、走行履歴情報収集装置100によって走行履歴情報が収集される対象の車両を「実測用車両A」と呼称する。なお、実測用車両Aは、様々な車種の車両であってよく、ガソリン自動車や電気自動車等であってもよい。またトラックやバスなどの大型車両であってもよい。この場合、走行履歴情報収集装置100は、実測用車両Aの車種等の情報と合わせて、走行履歴情報を収集してもよい。つまり、シミュレーション装置200に入力される走行履歴情報には、走行履歴情報収集装置100によって収集された走行履歴情報に対応付けられる実測用車両Aに関する車種固有情報(後述)も含まれるものであってもよい。
また、走行履歴情報が収集される対象は車両に限定されず、道路を走行可能な走行物であればよく、例えば自転車や自動二輪車等であってもよい。また、走行履歴情報は、人が走行履歴情報収集装置100を所持した状態で、バスや自動車等に乗車する方法で取得される情報であってもよい。
【0018】
図2に示すように、実測用車両Aが道路を走行している状態において、走行履歴情報収集装置100が、単位時間ごと(例えば10秒ごと)に現在位置を検出すると、位置情報P1,P2,P3、P4,P5・・・が取得される。なお、位置情報P1,P2,P3,P4,P5が示す位置において、実測用車両Aの速度が、それぞれ時速V
1,V
2,V
3,V
4,V
5であったとする。走行履歴情報収集装置100は内部に備える速度取得部104(後述)により、実測用車両Aの時速(速度情報)V
1,V
2,V
3,V
4,V
5を、それぞれ、位置情報P1,P2,P3,P4,P5に対応付けて、自身に備えられた記憶部(後述する記憶部106)に記憶する。
【0019】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る走行履歴情報収集装置の機能構成を示すブロック図である。
以下、走行履歴情報収集装置100が車載器である場合の構成例について説明する。この走行履歴情報収集装置100は、電源回路101と、内蔵電池102と、位置検出部103と、速度取得部104と、走行履歴情報作成部105と、記憶部106と、外部インターフェイス107と、計時部108とを備えている。また位置検出部103は、GPS受信機131と、GPS補完センサ部132と、推測航法処理部133とを備えている。さらに記憶部106は、位置検出部103によって検出された位置情報と、速度取得部104によって取得された速度情報と、をそれぞれ対応づけて記憶する走行履歴情報テーブル161を備えている。
【0020】
電源回路101は、電源を安定化するレギュレータ、ノイズプロテクタを有しており、車両Aから12Vまたは24Vの電源供給を受けて走行履歴情報収集装置100の各部に供給する。
内蔵電池102は、バックアップバッテリであり、実測用車両Aの電源が消失、または瞬断した際に、走行履歴情報収集装置100の内部に記憶されているデータを保護するため各部に電源を供給する。
【0021】
位置検出部103は、GPS受信機131と、GPS補完センサ部132と、推測航法処理部133とにより、例えば、予め決められたタイミングや間隔で走行履歴情報収集装置100の位置を検出し、その位置を示す位置情報を出力する機能部である。本実施形態において位置検出部103は、例えば10秒ごとに、走行履歴情報収集装置100の位置を検出する。
GPS受信機131は、GPS衛星90から電波を受信して時刻の情報を読み出すとともに、受信した電波に基づいて緯度と経度を測定する。
GPS補完センサ部132は、ジャイロセンサと加速度センサを有しており、ジャイロセンサと加速度センサの情報から走行履歴情報収集装置100の位置を推定する演算を行う。なお、GPS補完センサ部132は、例えば、GPS衛星90からの電波の受信感度が好ましくない場合などに用いられる構成部であってもよい。
推測航法処理部133は、GPS受信機131が受信した電波に含まれる情報の精度に応じて、GPS受信機131が測定した緯度と経度と、GPS補完センサ部132が推定した走行履歴情報収集装置100の位置の情報とに基づいて走行履歴情報収集装置100の位置を補完する演算を行う。
【0022】
速度取得部104は、位置検出部103によって検出された位置における実測用車両Aの速度を取得する。この速度取得部104は、例えば、位置検出部103によって位置が検出されるときに合わせて、実測用車両AのECU(Engine Control Unit)から出力される実測用車両Aの速度情報を取得する。本実施形態において、速度取得部104は、位置検出部103の位置検出の時刻と同じ時刻に、例えば同一開始時点から10秒ごとに実測用車両Aの速度を取得する。
また速度取得部104は、位置検出部103によって検出された位置情報に基づき、実測用車両Aの速度を算出するものであってもよい。この場合、速度取得部104は、例えば、位置情報に基づき算出される検出地点間の距離と、位置情報が検出された時刻を示す情報に基づき、この地点間における実測用車両Aの速度(平均速度)を算出してもよい。
【0023】
走行履歴情報作成部105は、GPS衛星90からの電波に含まれている時刻情報と、位置検出部103によって検出された位置情報とをそれぞれ対応付けて、記憶部106の走行履歴情報テーブル161に書き込む。また走行履歴情報作成部105は、速度取得部104によって取得された速度情報と、当該速度情報が示す速度で実測用車両Aが走行した時刻を示す時刻情報とをそれぞれ対応づけて、記憶部106の走行履歴情報テーブル161に書き込む。なお走行履歴情報作成部105は、GPS衛星90からの電波に含まれている時刻情報に限られず、位置情報および速度情報が取得されたときを計時した計時部108からの出力情報と、位置情報および速度情報とを対応付けるものであってもよい。
【0024】
記憶部106は、走行履歴情報収集装置100で用いられるプログラムやデータを記憶する。また記憶部106は、例えば後述(
図4)するように、GPS衛星90からの電波に含まれている時刻情報に対応付けて、位置検出部103が検出した緯度と経度の情報と、速度取得部104が取得した速度情報と、を記憶する走行履歴情報テーブル161を有している。
外部インターフェイス107は、外部機器、例えば、シミュレーション装置200と接続し、記憶部106に記憶されている情報をシミュレーション装置200に出力する。
【0025】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る走行履歴情報テーブルを示す図である。
図4を参照して、走行履歴情報テーブル161の一例について説明する。
図4に示す通り、走行履歴情報テーブル161は、時刻情報と、位置情報(緯度、経度)と、速度情報(単位:km)とを、それぞれ対応付けて記憶するテーブルである。本実施形態において走行履歴情報とは、位置情報と、速度情報とが時刻情報ごとに対応付けられた情報群であり、また位置情報と速度情報とは、時刻情報が示す時刻における実測用車両Aの位置と速度を示す情報である。したがって走行履歴情報は、同一開始時点から単位時間ごと(例えば10秒ごと)に、移動する実測用車両Aの走行軌跡及びその挙動を示す情報群である。
【0026】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るシミュレーション装置の機能構成を示すブロック図である。
次に
図5を参照して、シミュレーション装置200の機能構成について説明する。本実施形態に係るシミュレーション装置200は、自動車を模擬した所定の自動車モデルの走行を模擬する装置である。なお以下の説明においては、シミュレーション装置200において実測用車両Aの実際の走行と同等の走行を模擬する車両を仮想車両Bと呼称する。本実施形態に係るシミュレーション装置200は、特に、仮想車両Bの自動車モデルとして電気自動車を適用し、仮想車両Bの模擬走行において想定される電力消費量を算出する機能を有している。
ここで電気自動車とは、電力で駆動する自動二輪車、普通自動車(タクシーを含む)、バス、及びトラック、並びに、ガソリンと電気のハイブリッド車(上記各種自動車のハイブリッド車)であって蓄電池に充電可能なものを示す。これに対し、ガソリン自動車とは、ガソリンのみで駆動する自動二輪車、普通自動車(タクシーを含む)、バス、及びトラック等を示す。以下の説明において、単に自動車という場合は、ガソリン自動車と電気自動車の両方を示す。
【0027】
シミュレーション装置200は、シミュレーション装置200のシステム全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)201と、各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)202と、CPU101による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)203と、詳細を後述する交通シミュレーションプログラム等の各種プログラム及び各種情報を記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)204と、を備えている。また
図5に示すように、CPU201は、加速度演算部211と、車両状態演算部212と、交通流シミュレータ213と、車種設定部215と、充電判定部216と、を含んでいる。
【0028】
HDD204は、主に走行履歴情報収集装置100から入力する走行履歴情報を格納する走行履歴情報テーブル241を有している。ここで走行履歴情報テーブル241は、走行履歴情報収集装置100の走行履歴情報テーブル161に格納されている走行履歴情報と同様の情報が格納される。
またHDD204は、所定の道路ネットワーク情報を格納する道路ネットワーク情報テーブル400を有している。道路ネットワーク情報とは、ある範囲における現実の道路のネットワークを仮想的に再現した情報群である。具体的には、交差点を模擬した交差点モデル(「リンク」ともいう)と、交差点同士を結ぶ道路を模擬した道路モデル(「ノード」ともいう)と、が網目状に結合して構築された仮想の道路ネットワークである。道路ネットワーク情報は、別途用意された地図情報等と対比されながら、現実の道路ネットワークを再現するように構築される。また道路モデルは、実際の道路の距離、車線数、勾配などの情報を有している。この道路ネットワーク情報は、特に交通流シミュレータ213において仮想車両Bの模擬走行をより忠実に模擬する目的で用いられる。なお本実施形態においては、道路ネットワーク情報は予め構築され、HDD204の道路ネットワーク情報テーブル400に記憶されている。
【0029】
操作入力部205は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等から構成され、各種操作の入力を受け付ける。画像表示部206は、液晶ディスプレイ等であって、交通流シミュレーションに要する各種情報の入力を促す画像、交通シミュレーションの結果を示す画像等の各種画像を表示する。外部インターフェイス207は、プリンタや他のコンピュータ等の外部装置と情報の送受信を行うための接続部であって、当該外部装置への各種情報の送受信を行う機能部である。読取部208は、可搬型記憶媒体300に記憶されている情報を読み取るための機能部である。なお可搬型記憶媒体300には、磁気ディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、IC(Integrated Circuit)カード、及びメモリカード等が含まれる。
【0030】
なおCPU201、ROM202、RAM203、HDD204、操作入力部205、画像表示部206、外部インターフェイス207、及び読取部208は、システムバス209を介して相互に電気的に接続されている。したがってCPU201は、ROM202、RAM203、及びHDD204へのアクセス、操作入力部205に対する操作状態の把握、画像表示部206に対する各種の画像の表示、並びに外部インターフェイス207を介した上記外部装置との各種情報の送受信、読取部208を介した可搬型記憶媒体300からの情報の読み取り等を各々行うことができる。
【0031】
本実施形態に係るシミュレーション装置200は、例えば、外部インターフェイス207を介して走行履歴情報収集装置100と接続され、走行履歴情報収集装置100の記憶部106の走行履歴情報テーブル161に格納されている走行履歴情報を読み出して、HDD204の走行履歴情報テーブル241に格納する。
【0032】
CPU201は、加速度演算部211と、車両状態演算部212と、により仮想車両Bの電力消費量を算出する。ここで加速度演算部211は、走行履歴情報に基づいて、実測用車両Aの走行中の各時点における加速度を示す加速度情報を算出する機能部である。後述するように、交通流シミュレータ213は、予め取得された走行履歴情報に基づいて、実測用車両Aの実際の走行の挙動を忠実に再現するように仮想車両Bを模擬走行させる。加速度演算部211は、この模擬走行中の各時点における仮想車両Bの加速度を算出する。具体的には、加速度演算部211は、走行履歴情報テーブル241に格納されている速度情報を参照して、単位時間ごと(例えば10秒ごと)の仮想車両B(実測用車両A)の速度の変化から加速度情報を算出する。例えば走行中のある時点から、その10秒後に仮想車両B(実測用車両A)の速度が18km/h(5m/s)増加していた場合、その時点における仮想車両B(実測用車両A)の加速度は、0.5m/s
2と算出される。
【0033】
車両状態演算部212は、仮想車両Bが実測用車両Aと同等の走行を行った場合に想定される仮想車両Bの所定の状態量を算出する機能部である。ここで本実施形態においては、所定の状態量とは、仮想車両Bの電力消費量である。車両状態演算部212は、後述する交通流シミュレータ213が実行する仮想車両Bの模擬走行において、その模擬走行中の各時点における電力消費量を算出する。特に車両状態演算部212は、加速度演算部211が算出した加速度情報に基づいて仮想車両Bの電力消費量を算出する。なお車両状態演算部212による仮想車両Bの電力消費量の算出には、所定の電力消費量算出モデルが用いられる。この電力消費量算出モデルについては後述する。
【0034】
交通流シミュレータ213は、仮想車両Bの模擬走行を実行する機能部である。本実施形態に係る交通流シミュレータ213は、HDD204に格納された走行履歴情報テーブル241と、道路ネットワーク情報テーブル400と、に基づいて仮想車両Bを模擬走行させる。より具体的に説明すると、交通流シミュレータ213は、仮想車両Bが、走行履歴情報で示される位置、速度通りに、道路ネットワーク情報において特定される道路ネットワーク(実測用車両Aが実際に走行した走行ルート)を走行するような模擬を実行する。このようにすることで、交通流シミュレータ213は、実測用車両Aの実際の走行中の挙動を忠実に再現することができる。
【0035】
車種設定部215は、仮想車両Bについての車種固有情報を設定する機能部である。ここで車種固有情報とは、実際の車種ごとに一意に定められる固有値群のことであり、例えば、その車両の重量、電気自動車として搭載する蓄電池の容量、並びに、動力への変換効率などが定義される。
例えば、仮想車両Bとしてバスやトラック等の大型車両が適用される場合、車種設定部215は、当該大型車両を示す車種固有情報を仮想車両Bの車種固有情報に設定する。なお本実施形態においては、仮想車両Bに適用される複数の車種固有情報(例えば、普通自動車、バス、二輪車等を示す各々の車種固有情報)が予めHDD204に記憶されている。そして車種設定部215は、予め記憶された複数の車種固有情報のうちから、オペレータが所望する一の車種固有情報を選択し、その車種固有情報を車両状態演算部212に出力する。
【0036】
充電判定部216は、車両状態演算部212によって算出された仮想車両Bの電力消費量と、仮想車両Bの蓄電池の残量に基づき、仮想車両Bの走行を模擬した結果、充電を必要とするか否かを判定する。
【0037】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る電力消費量算出モデルを示す図である。
車両状態演算部212は、
図6に示すような電力消費量算出モデルに基づいて、仮想車両Bの模擬走行による電力消費量を算出する。
車両状態演算部212は、電力消費量を、模擬走行中の仮想車両Bの単位時間当たり(例えば10秒当たり)の電力消費量を積算して算出する。ここで車両状態演算部212は、「単位時間当たりの蓄電池消費量」の算出に、例えば
図6に示される電力消費量算出モデル1,2の何れかを用いる。この電力消費量算出モデル1,2は、いずれも加速度演算部211が算出した加速度情報に基づいて電力消費量が算出される算出モデルとなっている。ここで自動車の燃費には、その車両の走行における加速、減速の影響が特に大きいことが一般的に知られている。つまり電力消費量算出モデル1,2においては、加速度情報に基づいて、単位時間ごとの仮想車両Bの加速度が反映されることから、車両状態演算部212は、仮想車両Bの模擬走行における電力消費量を精度よく算出することができる。
また、車両状態演算部212は、模擬走行中の各時点において式(1)に示す演算を行うことで仮想車両Bにおける蓄電池残量を算出してもよい。
【0039】
ここで蓄電池残量の初期値(満充電時の蓄電池の蓄電容量)は、車種設定部215によって設定される車種固有情報ごとに定められるものであってよい。
【0040】
次に、車両状態演算部212による電力消費量演算手段において、模擬走行中の加速度を反映させる意義について説明する。例えば交通流シミュレータ213が、仮想車両Bについて、所定の走行ルートを平均速度Vで走行する模擬走行を行ったとする。この場合、仮想車両Bの走行の挙動の例として、パターン1:当該走行ルートを一定の速度Vを維持しながら走行したか、または、パターン2:その走行ルート中で加速及び減速を頻繁に繰り返した結果、平均速度Vとなったか、の2パターンが考えられる。ここで、車両状態演算部212において、仮想車両Bの速度Vのみが反映される電力消費量算出モデルが適用される場合、パターン1,2のいずれの場合も、同一の速度Vに基づいて同一の電力消費量を算出することとなる。しかしながら車両状態演算部212が、走行中の各時点における加速度を考慮して電力消費量を算出する場合、加減速を頻繁に行っているパターン2の方がパターン1よりも電力消費量が大きくなる結果が算出されることとなり、現実の結果と整合する。
また、ここで入力する加速度情報は、上述したように、走行履歴情報収集装置100が、実測用車両Aの実際の走行中の単位時間ごとに取得した走行履歴情報(
図4)から算出して取得したものである。つまり、車両状態演算部212は、単位時間当たりの電力消費量ごとに、当該単位時間ごとの実際の加速度を用いて算出することとなる。このようにすることで、車両状態演算部212は、電力消費量が特に増大する一時的な急加速を電力消費量の演算に反映させることができるため、より精度の高い電力消費量の推定を行うことができる。
また電気自動車の場合、加速する場合に蓄電池は放電するが、減速する場合は蓄電池が充電される。そこで車両状態演算部212は、仮想車両Bが所定の地点において加速する場合、その加速度の符号を正とし、仮想車両Bが減速する場合、加速度の符号を負として、単位時間当たりの電力消費量を算出してもよい。またこの場合において、充電時と放電時で異なる値の固定係数を用いてもよい。
【0041】
なお消費量算出モデル1,2は一例であって、仮想車両Bの加速度に関する項を用いるのであれば、消費量算出モデル1,2に含まれる他の項の一部を用いない消費量算出モデル又は異なる項を新たに追加した消費量算出モデル等が用いられてもよい。
また電力消費量算出モデル1,2に示す照明点灯状態は、仮想車両Bのライトの点灯数に基づいた値であり、空調運転状態は、仮想車両Bの空調の温度に基づいた値である。例えば、仮想車両Bのライトがオフとされている場合は、照明点灯状態としての値は0(零)となり、仮想車両Bの空調がオフとされている場合は、空調運転状態としての値は0(零)となる。また、蓄電池は外気温度によって動力への変換効率が変化するため、消費量算出モデル1,2は、外気温度を考慮して蓄電池消費量を算出する。このようにすることで、車両状態演算部212は、電気自動車の電力消費量を、実際の電気自動車において電力を消費する機器等の使用状況に基づいて算出するので、さらに精度の高い蓄電池消費量を算出できる。
また電力消費量算出モデル1,2に示す「勾配」は、道路ネットワーク情報テーブル400から取得される仮想車両Bの走行ルート上の各地点における勾配である。ここで、例えば、仮想車両Bの走行ルート中に上り坂がある場合、その上り坂の区間において仮想車両Bの加速度は0(零)であっても、実際にはその上り坂を上るための電力を消費する。一方、下り坂の区間では電力を消費しない惰行運転のみで加速度が増す場合がある。本実施形態における車両状態演算部212は、仮想車両Bの加速度のみならず、模擬走行を行う走行ルート上の各地点における勾配を反映させることで、さらに精度の高い蓄電池消費量を算出できる。
【0042】
また本実施形態に係る車両状態演算部212は、さらに、予め記憶された複数の車種固有情報のうちから選択された一つに基づいて、当該選択された一の車種固有情報で示される仮想車両Bの電力消費量を算出する。上述したように、車種固有情報には、その車両の車種や重量などが定義されている。車種設定部215は、予め記憶された複数の車種固有情報のうちから、オペレータが所望する一の車種固有情報を選択し、その車種固有情報を車両状態演算部212に出力する。車両状態演算部212が入力した車種固有情報は、例えば、電力消費量算出モデル1における各固定係数(a〜g)等に反映される。具体的な例で説明すると、仮想車両Bについてバス等の大型車両の車種固有情報が適用された場合、普通自動車の車種固有情報が適用された場合に比べて仮想車両Bの重量が大きくなるので、加速度の係数aも大きくなる(重量が大きいほど、加速に要するエネルギーが大きくなる)。このようにすることで、車両状態演算部212は、様々な車種について電力消費量の推定を簡便に実行することができる。
【0043】
図7は、本発明の第1の実施形態に係るシミュレーション装置の処理フローを示すフローチャート図である。
図7は、CPU201によって実行される車両電力消費シミュレーションプログラムの処理の流れを示すフローチャート図である。当該車両電力消費シミュレーションプログラムはHDD204の所定領域に予め記憶されている。なお、車両電力消費シミュレーションプログラムは、操作入力部205を介してオペレータによって実行指示が入力された場合に実行を開始する。なおオペレータによって実行指示が入力された時点において、走行履歴情報収集装置100が取得した走行履歴情報は、既にシミュレーション装置200に入力され、HDD204に記憶されているものとする。
【0044】
まず車種設定部215は、仮想車両Bについての車種固有情報を設定する(ステップS11)。ここで適用される車種固有情報は、オペレータによって選択された一の車種固有情報である。車種設定部215は、選択された車種固有情報を車両状態演算部212に出力する。
次に、交通流シミュレータ213は、仮想車両Bの模擬走行を実行する(ステップS12)。ここでまず交通流シミュレータ213は、HDD204に記憶される走行履歴情報テーブル241及び道路ネットワーク情報テーブル400を参照する。交通流シミュレータ213は、模擬走行中の各時点における仮想車両Bの位置が、走行履歴情報テーブル241の位置情報で指定される道路ネットワーク上の各地点に存在するように走行させる。また交通流シミュレータ213は、模擬走行中の各時点における仮想車両Bの速度が、走行履歴情報テーブル241の速度情報で示される速度となるように走行させる。このようにすることで、交通流シミュレータ213は、実測用車両Aの実際の走行における挙動を忠実に再現することができる。
また交通流シミュレータ213は、オペレータの指定を受け付けて、仮想車両Bの模擬走行における仮想の時刻(日中または夜間など)、外気温度等を設定してもよい。交通流シミュレータ213は、さらに、設定された時刻や外気温度を、仮想車両Bの模擬走行中における仮想の経過時間に応じて更新してもよい。
【0045】
次に加速度演算部211は、模擬走行中の仮想車両Bの各時点における加速度情報を算出する(ステップS13)。加速度演算部211は、上述したように、走行履歴情報テーブル241の速度情報を直接参照して算出することができる。
【0046】
次に車両状態演算部212が、上述した電力消費量算出モデル1,2(
図6)に基づいて、模擬走行中の各時点における仮想車両Bの電力消費量を算出する(ステップS14)。ここで車両状態演算部212は、加速度演算部211が算出した加速度情報を入力して電力消費量算出モデル1または2に代入する。また車両状態演算部212は、交通流シミュレータ213による模擬走行中における仮想車両Bの照明点灯状態、空調運転状態、外気温度、勾配を参照して、電力消費量算出モデル1または2に代入する。なお電力消費量算出モデル1におけるa〜gの各固定係数、または、電力消費量算出モデル2における関数fの内容は、ステップS11において車種設定部215が設定した車種固有情報に基づいて決定される。また電力消費量算出モデル1,2における「証明点灯状態」、「空調運転状態」、「外気温度」、「勾配」等の数値は、交通流シミュレータ213による模擬走行において設定された仮想の時刻や外気温度等、または、道路ネットワーク情報テーブル400で定義される道路勾配が反映される。
車両状態演算部212は、仮想車両Bの模擬走行中の各時点における電力消費量を算出すると、その結果を画像表示部206に表示させるなどしてオペレータに通知する。ここで充電判定部216は、模擬走行中の仮想車両Bにおける蓄電池残量(式(1)により算出した値)を参照することで、模擬走行中の各時点において蓄電池残量が不足しているか否か、すなわち、充電を要するか否か、の判定結果を表示してもよい。
【0047】
次いで、交通流シミュレータ213は、模擬走行について予め定められている終了条件を満たしたか否かを判定する(ステップS15)。ここでNO判定の場合は、ステップS12の処理へ移行して、引き続き模擬走行及び車両状態演算部212による電力消費量の算出を継続する。一方、YES判定の場合、交通流シミュレータ213は模擬走行の処理を終了する。CPU201は、交通流シミュレータ213による模擬走行を終了した後、車両状態演算部212の演算結果、充電判定部216の判定結果等を、例えば、グラフ等で画像表示部206に表示させてもよい。またCPU201は、算出した結果をデータとしてHDD204に記憶させたり、外部インターフェイス207を介して接続される印刷機を用いて記録用紙に印刷させたりしてもよい。
【0048】
上述の通り、本実施形態に係るシミュレーション装置200は、事前走行した実測用車両Aに搭載される走行履歴情報収集装置100によって検出された走行履歴情報(位置情報、速度情報)に基づいて、実測用車両Aの実際の走行における挙動(特に、加速度の変化)を、仮想車両Bの模擬走行において忠実に再現することができる。したがって、シミュレーション装置200は、忠実に再現された模擬走行の各時点における加速度を参照することで、交通流シミュレーションの対象である仮想車両BをEVにした場合における電力消費を精度よく模擬することができる。そうすると例えば、充電判定部216が電気自動車の蓄電池残量が不足するポイントを精度よく検知することができるので、オペレータは、充電ステーションをどの地点に設置すべきかを適切に把握することが可能となる。
【0049】
また本実施形態に係るシミュレーションシステム1は、実測用車両Aとしては通常のガソリン車であってもよいので、充電ステーションの設置場所を適切に把握する上で本物の電気自動車を実際に走行させる必要がなくなる。したがって、充電ステーションの設置にかかる費用を削減することができる。
【0050】
以上、本発明の第1の実施形態に係るシミュレーションシステム1によれば、交通流シミュレータにおける現況再現に要する時間と費用を削減することができ、かつ、より精度の良いシミュレーション結果を得ることができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限られない。
例えば、本実施形態に係る走行履歴情報収集装置100は、GPS衛星90から受信する緯度、経度情報に基づいて位置検出部103が実測用車両Aの位置情報を取得する手法を用いている。しかし、他の実施形態に係る走行履歴情報収集装置100は、この手法の代わりに、単に搭載されているジャイロセンサと加速度センサ等の情報から走行履歴情報収集装置100の位置を推定する演算を行っても用いてもよい。
また本実施形態に係る加速度演算部211は、走行履歴情報収集装置100が収集した速度情報を参照して単位時間当たりの速度の変化から加速度情報を算出し、車両状態演算部212は、加速度演算部211が算出した加速度情報に基づいて電力消費量を算出する手法を用いている。しかし、他の実施形態に係る車両状態演算部212は、実測用車両Aの実際の走行において直接計測された加速度情報を参照して電力消費量を算出してもよい。この場合、走行履歴情報収集装置100は、実測用車両Aの実際の走行中における加速度を加速度センサで直接検知して、加速度情報として記憶する機能を有していてもよい。なおこの場合において、走行履歴情報テーブル161には、時刻情報と、位置情報(緯度、経度)と、速度情報(単位:km)と、に加え、さらに加速度情報(単位:m/s
2)をそれぞれ対応付けて記憶される。
【0052】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係るシミュレーションシステムについて図面を参照して説明する。第2の実施形態に係るシミュレーションシステム1では、シミュレーション装置200の構成が第1の実施形態と異なる。
図8は、本発明の第2の実施形態に係るシミュレーション装置の機能構成を示すブロック図である。なおこの図において、第1の実施形態に係るシミュレーション装置200と同一の機能構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
第2の実施形態に係るシミュレーション装置200は、追従モデル演算部214を備えている。追従モデル演算部214は、交通流シミュレータ213に含まれる演算機能であって、走行履歴情報テーブル241に記憶される走行履歴情報に基づいて、実測用車両Aの後方を走行する仮想後続車両C(後述)の走行を模擬するための機能部である。以下、追従モデル演算部214の機能について詳細に説明する。
【0054】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る追従モデル演算部に用いられる追従モデルの概念図である。
本実施形態に係る交通流シミュレータ213は、追従モデル演算部214によって実現される「追従モデル」を利用して、実測用車両Aの後方を走行する車両(以下、仮想後続車両Cと呼称する。)の走行の挙動を模擬することができる。ここで追従モデルとは、現実と同じように一台一台の車両を異なるドライバーが運転する個別の車両として表現しながら現実の交通の流れを模擬するシミュレーションモデルである。より具体的に説明すると、追従モデルは、実際のドライバーが、前方直近を走行する車両との相対的な関係に応じて自車両を加速または減速する特性に着目し、その特性に基づいて当該自車両の走行の挙動をモデル化したものである。
【0055】
ここで、一般的な追従モデルには式(2)が用いられる。
【0057】
式(2)の左辺“a”は、対象車両(追従モデルに基づいて走行の挙動を模擬しようとする車両、
図9参照)の加速度である。対象車両の加速度aは、式(2)右辺の各項の値に基づいて決定される。ここで式(2)右辺第1項目“a
1”は、対象車両の前方車両(対象車両の前方直近を走行する車両、
図9参照)に対する相対速度に起因する項であり、式(3)で示される。なお式(2)の“θ”は道路勾配である。
【0059】
ここでV1は前方車両の速度、V
2は対象車両の速度である。またdは、前方車両と対象車両の車間距離である(
図9)。式(3)は、対象車両が、車間距離dに反比例し、かつ、相対速度(V
1−V
2)に比例して加減速する傾向を示している。
【0060】
式(2)右辺第2項目“a
2”は、対象車両と前方車両の車間距離に起因する項であり、式(4)で示される。
【0062】
ここで、式(4)のfは基準車間距離である。基準車間距離fは、対象車両のドライバーが安全性を感じる所定の車間距離である。つまり式(4)は、実際の車間距離dが基準車間距離fを下回った際には減速するという特性を表現している。なお基準車間距離fは対象車両の速度Vに応じて変化するため速度Vの関数となっている。
【0063】
式(2)右辺第3項目“a
3”は、対象車両の自由流速に起因する項であり、式(5)で示される。
【0065】
ここでVexpは自由流速である。自由流速とは、対象車両が追従状態にない場合(前方車両が存在しない場合)において走行する速度である。すなわち、前方車両が存在しない場合において、対象車両のドライバーが希望する運転速度といえる。式(5)は、対象車両の速度V
2が自由流速Vexpと一致するように加速、減速を行う特性を表現している。
【0066】
なお上述の式(2)〜(5)におけるλ,λ
1,λ
2,λ
3は係数である。また、T
1,T
2,T
3は遅延時間であり、それぞれの項(相対速度、車間距離、自由流速)が実際の加速度aに作用するまでのタイムラグを定義したものである。またl,m,nは感度であり、各項における車間距離dについての影響の度合いを与えるものである。
なお、上述した追従モデルは一例であり、別の追従モデルとして上述した各項の一部が含まれない場合や、他の項が含まれる場合があってもよい。
【0067】
本実施形態による交通流シミュレータ213は、追従モデル演算部214により実現される上述の追従モデルを用いて、実測用車両Aの後方を走行する仮想後続車両Cの走行を模擬する。具体的には、まず交通流シミュレータ213は、HDD241の走行履歴情報テーブル241に基づいて、実測用車両Aの実際の走行の挙動を忠実に再現するように仮想車両Bの模擬走行を実行する(第一の実施形態で説明した機能と同一)。次に、交通流シミュレータ213は、追従モデル演算部214による演算(式(2)〜(5))に基づいて、実測用車両Aと同等の走行を模擬する仮想車両Bの後方を走行する仮想後続車両Cの走行を模擬する。
【0068】
ここで追従モデル演算部214は、式(2)〜(5)に用いられる各パラメータ(λ,θ,f(V),Vexp他)を設定するとともに、仮想後続車両Cについての位置情報、速度情報、加速度情報の適当な初期値を与えることで、仮想車両B(すなわち実測用車両A)の後方を走行する仮想後続車両Cの走行を一意に模擬することができる。例えば、追従モデル演算部214は、車間距離dを、前方車両である仮想車両Bと対象車両である仮想後続車両Cの位置関係に基づいて逐次算出する。また前方車両である仮想車両Bの速度V
1については、走行履歴情報テーブル241に記憶されている数値を参照することができる。したがって追従モデル演算部214は、式(2)〜(5)の演算に基づいて、仮想後続車両Cの模擬走行を実行することができる。また追従モデル演算部214は、仮想後続車両Cの模擬走行中における追従モデルの演算の過程で逐次算出される速度情報、加速度情報等をその都度、車両状態演算部212に出力する。
【0069】
本実施形態による車両状態演算部212は、第一の実施形態における機能に加え、さらに、仮想後続車両Cの模擬走行から求められる、仮想後続車両Cについての加速度情報に基づいて、仮想後続車両Cが実測用車両Aの後方を走行した場合に想定される仮想後続車両Cの電力消費量を算出する。上述した通り、仮想後続車両Cの速度情報、加速度情報は、模擬走行中において追従モデル演算部214によって逐次算出される情報である。車両状態演算部212は、追従モデル演算部214からこの速度情報、加速度情報を入力すると、所定の電力消費量算出モデルに基づいて仮想後続車両Cについての電力消費量を算出する。ここで用いられる電力消費量算出モデルは、第一の実施形態と同等である。すなわち車両状態演算部212は、
図6に示す電力消費量算出モデル1または2に基づいて仮想後続車両Cの模擬走行中における電力消費量を算出する。
【0070】
このようにすることで、本実施形態における車両状態演算部212は、走行履歴情報に基づいて模擬走行する仮想車両Bの電力消費量のみならず、その後方を走行する仮想後続車両Cについての電力消費量を算出することができる。
【0071】
また追従モデル演算部214は、追従モデルに基づいて仮想車両Bの後方を走行する仮想後続車両Cの走行を模擬するだけでなく、仮想後続車両Cのさらに後方を走行する仮想後続車両D,E,F,・・・の走行を模擬することもできる。このようにすることで、シミュレーション装置200は、一の走行履歴情報から、複数の車両についての電力消費量を算出することができる。したがってオペレータは、複数の車両についての電力消費量を参照することで、模擬走行を行った走行ルート(実測用車両が実際に走行した走行ルート)における平均的な電力消費量を把握することができる。
【0072】
以上、本発明の第2の実施形態に係るシミュレーションシステム1によれば、複数の車両についての電力消費量を算出することができるので、より広範囲の電力需要予測ができるシミュレーションを行うことができる。
【0073】
なお、本実施形態に係る車種設定部215は、仮想車両B及び上述した複数の仮想後続車両C,D,E,・・・について、それぞれ異なる車種固有情報を設定してもよい。例えば、仮想後続車両Cは普通自動車で仮想後続車両Dはバス、などと設定してもよい。
同様に、本実施形態に係る追従モデル演算部214は、複数の仮想後続車両C,D,E,・・・について、それぞれ異なる追従モデルを適用してもよい。例えば、現実では車両のドライバーごとの性格の相違により、基準車間距離f(ドライバーが安全性を感じる車間距離)や自由流速Vexp(ドライバーが希望する走行速度)が異なってくる。また、ドライバーごとに加速、減速へのフィードバックの早さも異なる。このような違いを考慮して、仮想後続車両C,D,E,・・・ごとに異なるパラメータ(f(V),Vexp,T
1,T
2,T
3,l,m,n)を与えて算出してもよい。このようにすることで、シミュレーション全体として、さらに現実に近い模擬走行を実現することができる。
また自由流速Vexpは、道路の車線数との相関性から導かれるものであってもよい。この場合において、追従モデル演算部214は、道路ネットワーク情報テーブル400に記憶される模擬走行中の道路の車線数を参照しながら、自由流速Vexpを逐次変化させてもよい。また追従モデル演算部214は、自由流速Vexpとして、実測用車両Aの実際の走行で取得された走行履歴情報に基づいて算出される走行ルート中の所定の区間ごとの平均値を設定してもよい。
【0074】
また、上述した第2の実施形態に係るシミュレーション装置200は、一つの走行履歴情報に基づいて、複数の車両の電力消費量を算出するものとして説明したが、本実施形態に係るシミュレーション装置200は、さらに二つ以上の走行履歴情報に基づいて電力消費量を算出してもよい。この場合、シミュレーション装置200は、例えば、第一の走行履歴情報と、当該第一の走行履歴情報の走行ルートと異なる走行ルートを走行して取得される第二の走行履歴情報と、に基づいて、より広範な道路ネットワークにおいての電力消費量を算出することができる。
【0075】
また、上述した第1の実施形態及び第二の実施形態に係るシミュレーション装置200は、仮想車両Bまたは仮想後続車両C、D、E、・・・についての状態量として電力消費量を算出するものとして説明したが、他の実施形態に係るシミュレーション装置200はこの態様に限定されない。例えばシミュレーション装置200は、車両の部品(シャフト、エンジンオイル等)の摩耗量、消費量を算出するものであってもよい。この場合、車両状態演算部212は、種々の車両の部品の摩耗量、消費量を算出するための算出モデルを有している。
【0076】
なお、上述のシミュレーション装置200は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述したシミュレーション装置200の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)または半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。