特許第5980177号(P5980177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980177
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】チェーンガイド
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/18 20060101AFI20160818BHJP
   F16H 7/08 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   F16H7/18 B
   F16H7/08 B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-151676(P2013-151676)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-21585(P2015-21585A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】近能 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】榑松 勇二
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−060782(JP,A)
【文献】 特開2002−181145(JP,A)
【文献】 特開2004−069008(JP,A)
【文献】 特開2002−266958(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0153643(US,A1)
【文献】 特開2002−139111(JP,A)
【文献】 特開2001−349400(JP,A)
【文献】 特開2003−214505(JP,A)
【文献】 特開2004−019800(JP,A)
【文献】 米国特許第05711732(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/00−7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するチェーンを摺動案内する案内シューと、該案内シューをチェーン走行方向に沿って補強するプレートとを備えたチェーンガイドであって、
前記案内シューが、チェーン走行方向に延びる走行案内部と、該走行案内部の裏面側に前記プレートを挿入可能なプレート収容部とを有するとともに、取付対象に取り付けるための取付部、あるいは、テンショナに当接するテンショナ当接部の少なくとも一方を有し、
前記プレート収容部が、前記取付部、あるいは、前記テンショナ当接部の少なくとも1箇所において、前記プレートの端部の下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されたプレート端保持部を構成し
前記プレート収容部が、前記プレートをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔を有し、
前記プレート挿入孔が、前記走行案内部の表面に開口していることを特徴とするチェーンガイド。
【請求項2】
前記案内シューが、取付対象に取り付けるための取付孔が設けられた取付部を有し、
前記取付孔が、前記プレート収容部とは重複しないことを特徴とする請求項1に記載のチェーンガイド。
【請求項3】
前記プレート収容部が、前記プレートのチェーン走行方向の移動を規制するプレート固定片を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーンガイド。
【請求項4】
前記プレートが、前記走行案内面側の上端面、および、その反対側の下端面ともに、直線、または、単一曲率半径に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーンガイド。
【請求項5】
前記上端面の曲率半径が、下端面の曲率半径以下であることを特徴とする請求項4に記載のチェーンガイド。
【請求項6】
前記プレート収容部が、前記プレート端保持部以外の箇所に前記プレートの側方あるいは下方への脱落を防止する係合片を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のチェーンガイド。
【請求項7】
前記プレートが、幅方向に2枚以上挿入されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のチェーンガイド。
【請求項8】
前記プレート収容部が、幅方向に2つ以上平行に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のチェーンガイド。
【請求項9】
チェーン走行方向に延びる走行案内部と、該走行案内部の裏面側にプレートを挿入可能なプレート収容部とを有する案内シューであって、
前記案内シューが、取付対象に取り付けるための取付部、あるいは、テンショナに当接するテンショナ当接部の少なくとも一方を有し、
前記プレート収容部が、前記取付部、あるいは、前記テンショナ当接部の少なくとも1箇所において、前記プレートの端部下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されたプレート端保持部を構成し
前記プレート収容部が、前記プレートをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔を有し、
前記プレート挿入孔が、前記走行案内部の表面に開口していることを特徴とする案内シュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行するチェーンを摺動案内する案内シューと、該案内シューをチェーン走行方向に沿って補強するプレートとを備えたチェーンガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スプロケット間を走行するチェーンを安定させ張力を適正に保持するために、走行するチェーンを摺動案内する案内シューを備えたチェーンガイドを用いることは慣用されている。
例えば、図19に示すように、エンジンルームE内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケットS1、S2間に無端懸回したローラチェーン等の伝動チェーンCHを走行させるエンジンのタイミングシステムであって、タイミングチェーンCHがエンジンルームE内のクランク軸に取り付けた駆動スプロケットS1とカム軸に取り付けた一対の従動スプロケットS2との間に無端懸回されており、このタイミングチェーンCHが揺動するチェーンガイド(揺動ガイド)500とチェーンガイド(固定ガイド)600とによってガイドされるタイミングシステムが公知である。
【0003】
この公知のタイミングシステムでは、固定ガイド600は、2つの固定用の取付軸QでエンジンルームE内に固定され、揺動ガイド500は、揺動用の取付軸Pを中心にタイミングチェーンCHの懸回平面内で揺動可能にエンジンルームE内に取り付けられている。
チェーンテンショナTは、揺動ガイド500を押圧することでタイミングチェーンCHの張力を適正に保持するとともに振動を抑制している。
このようなタイミングシステムに用いられる公知のチェーンガイド(揺動ガイド)500、チェーンガイド(固定ガイド)600は、合成樹脂で一体に形成されているためチェーンガイドの剛性や耐久性を確保するためにはガイド本体を大きくして剛性や耐久性を向上させる必要があるが、エンジンルームEをコンパクトに設計することの障害となるという問題があった。
【0004】
そこで、図20乃至図22に示すように、チェーンガイド500が、走行するチェーンを摺動案内する案内シュー510と、該案内シュー510をチェーン走行方向に沿って補強するプレート520とを備えてなり、案内シュー510の走行案内部511の裏面側にプレート520を下方から挿入可能なプレート収容部であるスリット溝512を設け、剛性や耐久性の高いプレート520を下方からスリット溝512に挿入することで、チェーンガイド500全体として必要な強度、剛性、耐久性を確保しつつ占有スペースを小さくしたものが公知である(特許文献1、2、3等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−2810号公報
【特許文献2】特開2003−130156号公報
【特許文献3】特開2002−266964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のチェーンガイド500は、案内シュー510に対してプレート520を下方からプレート収容部であるスリット溝512に挿入するように構成されているため、案内シュー510の取付対象に取り付けるための取付部514、および、テンショナに当接するテンショナ当接部515を含んで、プレート収容部であるスリット溝512の下方は全て開放されている。
また、案内シュー510の取付部514には、取付対象に取り付けるため取付軸Pが挿入される取付孔513が設けられ、この案内シュー510の取付孔513の部分にもスリット溝512が設けられプレート520が挿入されるため、プレート520にも取付軸Pが挿入される取付孔521が設けられている。
【0007】
スリット溝512に挿入されたプレート520は、案内シュー510の取付部514においては、取付孔521に取付軸Pが挿入されることで脱落が防止されるが、それ以外の箇所では、スリット溝512の下方は全て開放されているため、案内シュー510側に弾性的に変形して確実にプレート520を固定する部材を設ける必要があった。
このため、案内シュー510の弾性的に変形する箇所の耐久性が低下するとともに、プレート520の挿入固定作業にも手間がかかるという問題があった。
また、案内シュー510の取付孔513がプレート520の取付孔521の直径を完全に一致させることは困難であり、図23に示すように、プレート520の取付孔521の直径のほうが小さい場合、取付対象に取り付ける際にプレート520の取付孔521の周縁部が取付軸Pと接触し変形や破損が発生するおそれがあった。
【0008】
これを避けるためには、取り付け時にプレート520の取付孔521と取付軸Pの中心を精度よく一致させる必要があり、組立作業効率が低下するという問題があった。
また、チェーンガイド500は、プレート520の取付孔521の幅でのみ取付軸Pに支持されることとなるため、図24に示すように、本来の姿勢に対して傾斜した状態になりやすく、傾斜した場合には、チェーンガイド500によりガイドされるチェーンの走行が不安定となり、騒音や摩耗が増大するという問題があった。
【0009】
逆に、図25に示すように、プレート520の取付孔521の直径のほうが大きい場合、取付軸Pとの間に隙間が生じるため、使用時にプレート520がスリット溝512で移動し、スリット溝512の底部や取付軸Pと衝突を繰り返し、騒音や摩耗が発生したり、破損が生じたりするおそれがあった。
また、樹脂等からなる剛性や強度の低い案内シュー510の取付孔513が取付軸Pにより支持されるため、幅方向の寸法をある程度大きく取る必要があった。
【0010】
さらに、案内シュー510の取付対象に取り付けるための取付部514、および、テンショナに当接するテンショナ当接部515は、チェーンをガイドする際の押圧力を最も受ける部分であるため、他の部分よりも上下方向に大きな寸法とする必要があり、プレート520も、取付部514およびテンショナ当接部515のスリット溝512内に挿入された際に、開放した下方まで達する寸法とする必要があった。
一般的に、プレート520は、強度、剛性、耐久性に優れた圧延鋼板から打ち抜き加工等によって製造されるが、上下方向に大きな寸法とするために材料を多く必要とし、図26に示すように、取付部514およびテンショナ当接部515以外の部分の上下方向の寸法を小さなものとしても、圧延鋼板Kを打ち抜いた際に多くの残材Zが発生するという問題があった。
【0011】
本発明は上述した課題を解決するものであり、簡単な構成で、組立作業性が向上し、材料コストが低減されるとともに、振動や傾きが抑制され、騒音、摩耗、破損等の発生が少なく耐久性の高いチェーンガイドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本請求項1に係る発明は、走行するチェーンを摺動案内する案内シューと、該案内シューをチェーン走行方向に沿って補強するプレートとを備えたチェーンガイドであって、前記案内シューが、チェーン走行方向に延びる走行案内部と、該走行案内部の裏面側に前記プレートを挿入可能なプレート収容部とを有するとともに、取付対象に取り付けるための取付部、あるいは、テンショナに当接するテンショナ当接部の少なくとも一方を有し、前記プレート収容部が、前記取付部、あるいは、前記テンショナ当接部の少なくとも1箇所において、前記プレートの端部の下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されたプレート端保持部を構成し、前記プレート収容部が、前記プレートをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔を有し、前記プレート挿入孔が、前記走行案内部の表面に開口していることにより、前記課題を解決するものである。
【0013】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係るチェーンガイドの構成に加え、前記案内シューが、取付対象に取り付けるための取付孔が設けられた取付部を有し、前記取付孔が、前記プレート収容部とは重複しないことにより、前記課題を解決するものである。
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係るチェーンガイドの構成に加え、前記プレート収容部が、前記プレートのチェーン走行方向の移動を規制するプレート固定片を有することにより、前記課題を解決するものである。
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るチェーンガイドの構成に加え、前記プレートが、前記走行案内面側の上端面、および、その反対側の下端面ともに、直線、または、単一曲率半径に形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項5に係る発明は、請求項4に係るチェーンガイドの構成に加え、前記上端面の曲率半径が、下端面の曲率半径以下であることにより、前記課題を解決するものである。
【0014】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに係るチェーンガイドの構成に加え、前記プレート収容部が、前記プレート端保持部以外の箇所に前記プレートの側方あるいは下方への脱落を防止する係合片を有することにより、前記課題を解決するものである。
【0015】
本請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに係るチェーンガイドの構成に加え、前記プレートが、幅方向に2枚以上挿入されていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項8に係る発明は、請求項7に係るチェーンガイドの構成に加え、前記プレート収容部が、幅方向に2つ以上平行に設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項9に係る発明は、チェーン走行方向に延びる走行案内部と、該走行案内部の裏面側にプレートを挿入可能なプレート収容部とを有する案内シューであって、
前記案内シューが、取付対象に取り付けるための取付部、あるいは、テンショナに当接するテンショナ当接部の少なくとも一方を有し、
前記プレート収容部が、前記取付部、あるいは、前記テンショナ当接部の少なくとも1箇所において、前記プレートの端部下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されたプレート端保持部を構成し、前記プレート収容部が、前記プレートをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔を有し、前記プレート挿入孔が、前記走行案内部の表面に開口していることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0016】
本請求項1に係るチェーンガイドによれば、強度、剛性、耐久性に寄与するプレートを案内シューと別材料で形成し、案内シューの走行案内部の裏面側に設けたプレート収容部にプレートを収容可能とすることにより、簡単な構成で容易に組み立てることができ、チェーンガイド全体として必要な強度、剛性、耐久性を確保しつつ占有スペースを小さくすることが可能となる。
そして、プレート収容部が、取付部、あるいは、テンショナ当接部の少なくとも1箇所において、プレートの端部の下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されたプレート端保持部を構成していることにより、プレート端保持部において、プレートが取付軸やテンショナに直接支持される必要がないため、プレート全体の上下方向の寸法を小さいものとし、少ない材料で製造することが可能となる。
また、プレート端保持部が、プレートの端部の下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されていることで、プレートをプレート収容部に固定する際に、プレート端保持部への挿入方向の移動のみを規制すればよいため、固定する部材を簡素化でき、案内シューの耐久性低下を抑制できるとともに、プレートの挿入固定作業も容易となる。
また、プレート収容部が、プレートをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔を有することにより、プレート端保持部にプレートを走行方向にのみ挿入可能として、確実にプレートの端部の下方および側方をプレート端保持部に支持できるよう構成できるとともに、プレートのプレート収容部への挿入固定作業も容易に行うことができる。
さらに、プレート挿入孔が走行案内部の表面に開口していることにより、プレートをプレート収容部に直線的に挿入し、プレートの端部をプレート端保持部に容易に挿入することが可能となり、さらにプレートの挿入固定作業を容易に行うことができる。
【0017】
本請求項2に記載の構成によれば、案内シューの取付孔が、プレート収容部とは重複しないことにより、プレートに取付孔を設ける必要がなく、プレートの取付部近傍に収容される部分の上下方向の寸法をさらに小さいものとすることができ、少ない材料で製造することが可能となる。
また、プレートの上下方向の寸法を、長手方向全体にわたって変化の少ないものとすることが可能となり、圧延鋼板等から打ち抜いた際に、残材の発生を少なくすることが可能となり、さらに材料コストを低減することができる。
本請求項3に記載の構成によれば、プレート収容部がチェーン走行方向の移動を規制するプレート固定片を有することにより、プレート端保持部にプレートを走行方向にのみ挿入可能として、確実にプレートの端部の下方および側方をプレート端保持部に支持できるよう構成できるとともに、プレート固定片は、使用時の負荷の小さいプレートの走行方向の移動のみを規制すればよいため、簡単な構造で構成でき、プレートのプレート収容部への挿入固定作業も容易に行うことができる。
【0018】
本請求項4に記載の構成によれば、プレートが、走行案内面側の上端面、および、その反対側の下端面ともに、直線、または、単一曲率半径に形成されていることにより、プレートを単純な形状とすることができ、圧延鋼板等から打ち抜くための型が単純化されるとともに、残材の発生を少なくすることが可能となり、さらにコストを低減することができる。
また、長手方向で曲率半径の変化のない形状であることで、力を受けた時の応力集中が少なく、剛性、強度を向上することができる。
本請求項5に記載の構成によれば、上端面の曲率半径が下端面の曲率半径以下であることにより、プレートの両端部の上下方向寸法を中間部より小さく構成でき、プレート端保持部の上下方向寸法を小さくすることができるため、案内シューの取付部を、取付孔とプレート収容部との重複を避けつつ、小さく設計することが可能となる。
【0019】
本請求項6に記載の構成によれば、プレート収容部が、プレート端保持部以外の箇所にプレートの側方あるいは下方への脱落を防止する係合片を有することにより、さらに確実にプレートの脱落を防止することができる。
【0020】
本請求項7に記載の構成によれば、プレートが幅方向に2枚以上挿入されていることにより、それぞれのプレートを薄くして圧延鋼板等から打ち抜くコストを低減できるとともに、複数挿入することで全体として必要な強度、剛性、耐久性を確保することが可能となる。
本請求項8に記載の構成によれば、プレート収容部が、幅方向に2つ以上平行に設けられていることにより、複数枚のプレートを個々にそれぞれ別のプレート収容部に挿入固定することができるため、プレートを複数としても、それらを同時に束ねて扱う必要がなく、プレートの挿入固定作業を容易に行うことができる。
また、プレートの固定のためにプレート収容部にプレートの厚み方向から係合する係合箇所等を設ける場合、複数枚のプレートをそれぞれ別のプレート収容部で個々に確実に係合させて固定することができる。
【0021】
本請求項9に係る案内シューによれば、プレート収容部が、取付部、あるいは、テンショナ当接部の少なくとも1箇所において、プレートの端部の下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されたプレート端保持部を構成していることにより、プレート端保持部において、プレートが取付軸やテンショナに直接支持される必要がないため、プレート全体の上下方向の寸法を小さいものとし、少ない材料でプレートを製造することが可能となる。
また、プレート端保持部が、プレートの端部の下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されていることで、プレートをプレート収容部に固定する際に、プレート端保持部への挿入方向の移動のみを規制すればよいため、固定する部材を簡素化でき、案内シューの耐久性低下を抑制できるとともに、プレートの挿入固定作業も容易となる。
また、プレート収容部が、プレートをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔を有することにより、プレート端保持部にプレートを走行方向にのみ挿入可能として、確実にプレートの端部の下方および側方をプレート端保持部に支持できるよう構成できるとともに、プレートのプレート収容部への挿入固定作業も容易に行うことができる。
さらに、プレート挿入孔が走行案内部の表面に開口していることにより、プレートをプレート収容部に直線的に挿入し、プレートの端部をプレート端保持部に容易に挿入することが可能となり、さらにプレートの挿入固定作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの上方からの斜視図。
図2】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの下方からの斜視図。
図3】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの側面図。
図4】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの平面図。
図5】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの底面図。
図6】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの正面図および背面図。
図7図3のI−I、II―IIおよびIII−III断面図。
図8図4のIV−IV断面図。
図9】本発明の第2実施形態に係るチェーンガイドの図8相当の断面図。
図10】本発明の第3実施形態に係るチェーンガイドの図8相当の断面図。
図11第1参考例に係るチェーンガイドの図8相当の断面図。
図12第2参考例に係るチェーンガイドのプレート挿入説明図。
図13第3参考例に係るチェーンガイドのプレート挿入説明図。
図14】本発明の第実施形態に係るチェーンガイドの断面説明図。
図15】本発明の第実施形態に係るチェーンガイドの断面説明図。
図16】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドのプレートの製造説明図。
図17】本発明の第2実施形態に係るチェーンガイドのプレートの製造説明図。
図18】本発明の第3実施形態に係るチェーンガイドのプレートの製造説明図。
図19】従来のエンジンのタイミングシステムの説明図。
図20】従来のチェーンガイドの斜視図。
図21図20の他の方向からの斜視図。
図22図20のチェーンガイドの側面図。
図23図22のA−A断面説明図。
図24図23の他の状態の説明図。
図25図23のさらに他の状態の説明図。
図26】従来のチェーンガイドのプレートの製造説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のチェーンガイドは、走行するチェーンを摺動案内する案内シューと、該案内シューをチェーン走行方向に沿って補強するプレートとを備えたチェーンガイドであって、案内シューが、チェーン走行方向に延びる走行案内部と、該走行案内部の裏面側に前記プレートを挿入可能なプレート収容部とを有するとともに、取付対象に取り付けるための取付部、あるいは、テンショナに当接するテンショナ当接部の少なくとも一方を有し、プレート収容部が、取付部、あるいは、テンショナ当接部の少なくとも1箇所において、プレートの端部の下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されたプレート端保持部を構成し、プレート収容部が、プレートをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔を有し、プレート挿入孔が、前記走行案内部の表面に開口し、簡単な構成で、組立作業性が向上し、材料コストが低減されるとともに、振動や傾きが抑制され、騒音、摩耗、破損等の発生が少なく耐久性の高いものであれば、その具体的な構成はいかなるものであってもよい。
【0024】
また、本発明の案内シューは、チェーン走行方向に延びる走行案内部と、該走行案内部の裏面側にプレートを挿入可能なプレート収容部とを有する案内シューであって、案内シューが、取付対象に取り付けるための取付部、あるいは、テンショナに当接するテンショナ当接部の少なくとも一方を有し、プレート収容部が、取付部、あるいは、テンショナ当接部の少なくとも1箇所において、プレートの端部下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されたプレート端保持部を構成し、プレート収容部が、プレートをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔を有し、プレート挿入孔が、前記走行案内部の表面に開口し、簡単な構成で、組立作業性が向上し、材料コストが低減されるとともに、振動や傾きが抑制され、騒音、摩耗、破損等の発生が少なく耐久性の高いものであれば、その具体的な構成はいかなるものであってもよい。
案内部シューの材質は、合成樹脂であるのが望ましいが、摩擦抵抗、剛性、耐久性、成形性、コスト等に諸条件に応じて公知の適宜のものを選択すればよい。
【実施例1】
【0025】
本発明の第1実施形態に係るチェーンガイド100(揺動ガイド)について図面に基づいて説明する。
チェーンガイド100は、前述した公知のタイミングシステムに適用されるものであり、図1乃至図8に示すように、走行するチェーンを摺動案内する案内シュー110と、該案内シュー110をチェーン走行方向に沿って支持するプレート120とを備えている。
プレート120は、チェーン走行方向に延びる板状の部材からなりチェーン走行方向に沿って所定の湾曲形状が付与されている。
このプレート120は、チェーン走行方向に一様な厚さを持つものであり、圧延鋼板等から打ち抜き等で製造されている。
【0026】
案内シュー110は、チェーン走行方向に延びる走行案内部111と、走行案内部111の裏面側にプレート120を挿入可能なプレート収容部130とを有するとともに、取付対象に取り付けるための取付部114、および、テンショナに当接するテンショナ当接部115を有し、合成樹脂材料で例えば射出成形等によって一体に成形されている。
取付部114は、走行案内部111の裏面側に延びるように形成され、取付対象に取り付けるためのボルト等が挿通される取付孔113が設けられている。
走行案内部111のテンショナ当接部115側の表面には、プレート収容部130に対してプレート120をチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔133が開口している。
【0027】
プレート収容部130は、取付部114の近傍において、図1乃至図3図7のIII−III断面、図8等に示すように、プレート120の端部の下方を支持可能で下方以外の方向から挿入可能に形成されたプレート端保持部131を構成しており、プレート端保持部131は、走行案内部111と取付孔113との間に、取付孔113とは重複しない位置に設けられている。
また、プレート収容部130は、テンショナ当接部115の近傍において、図1乃至図3図7のI−I断面等に示すように、プレート120が挿入された際に係合してチェーン走行方向の移動を規制するプレート固定片132を有している。
また、プレート収容部130は、取付部114とテンショナ当接部115の間の領域において、図1乃至図3図7のII−II断面等に示すように、プレート120の上下方向寸法より小さく、下方に開口した溝状に形成されている。
【0028】
以上のように構成された本発明の第1実施形態に係るチェーンガイド100は、プレート120を走行案内部111のテンショナ当接部115側の表面に設けられたプレート挿入孔133から真っ直ぐに挿入し、プレート120の端部をプレート端保持部131に保持させ、プレート固定片132によってチェーン走行方向への移動を規制して固定することで組み立てられる。
プレート固定片132は、使用時の負荷の小さいプレート120の走行方向の移動のみを規制すればよいため、簡単な構造で構成でき、プレート120のプレート収容部130への挿入固定作業も容易に行うことができる。
【0029】
また、プレート端保持部131が案内シュー110の取付孔113とは重複しない位置に設けられているため、プレート120に取付孔を設ける必要がなく、プレート120の上下方向の寸法は、長手方向全体にわたって変化の少ないものとなる。
このことで、図16に示すように、プレート120を圧延鋼板Kから打ち抜いた際の残材Zが少なくなり、材料コストを低減することができる。
また、本実施形態では、プレート収容部130が、取付部114とテンショナ当接部115の間の領域において、プレート120の上下方向寸法より小さく、下方に開口した溝状に形成されているため、プレート120が外部に露出して放熱性が高くなり、チェーンが走行案内部111と摺動した際の摩擦熱を効率よく放熱することが可能となる。
【実施例2】
【0030】
本発明の第2実施形態に係るチェーンガイド(揺動ガイド)は、図9に示すように、プレート120aの形状を、走行案内面側の上端面、および、その反対側の下端面ともに、単一曲率半径に形成し、上端面の曲率半径Rを下端面の曲率半径R’より小さくしたものである。
他の構成は、案内シュー110aのプレート収容部をプレート120aに合致させる点を除いて、第1実施形態のチェーンガイド100と同様である。
【0031】
本発明の第2実施形態に係るチェーンガイドによれば、プレート120aの両端部の上下方向寸法を中間部より小さく構成でき、プレート端保持部の上下方向寸法を小さくすることができるため、案内シュー110aの取付部を、取付孔113aとプレート収容部との重複を避けつつ、小さく設計することが可能となる。
また、プレート120aを単純な形状とすることができ、圧延鋼板から打ち抜くための型が単純化されるとともに、図17に示すように、プレート120aを圧延鋼板Kから打ち抜いた際の残材Zがさらに少なくなり、材料コストを低減することができる。
また、プレート120aが長手方向で曲率半径の変化のない形状であることで、力を受けた時の応力集中が少なく、剛性、強度を向上することができる。
【実施例3】
【0032】
本発明の第3実施形態に係るチェーンガイド(揺動ガイド)は、図10に示すように、プレート120bの形状を、走行案内面側の上端面、および、その反対側の下端面ともに、直線としたものである。
他の構成は、案内シュー110bのプレート収容部をプレート120bに合致させる点を除いて、第1実施形態のチェーンガイド100と同様である。
【0033】
本発明の第3実施形態に係るチェーンガイドによれば、プレート120bが直線状に形成されているため、プレート120bのプレート収容部への挿入固定作業を容易に行うことができる。
また、プレート120bを単純な形状とすることができ、圧延鋼板から打ち抜くための型が単純化されるとともに、図18に示すように、プレート120bを圧延鋼板Kから打ち抜いた際の残材Zが、両端部以外はほとんど発生せず、材料コストを低減することができる。
また、プレート120bが直線状で一様な形状であることで、力を受けた時の応力集中が少なく、剛性、強度を向上することができる。
【参考例1】
【0034】
第1参考例に係るチェーンガイド(揺動ガイド)は、図11に示すように、プレート端保持部131cをテンショナ当接部115cに設け、プレート挿入孔133cを、取付部114cを貫通して開口するように設けたものである。
他の構成は、プレート固定片の構成、配置(図示せず)を除いて、本発明の第1実施形態のチェーンガイド100と同様である。
【0035】
第1参考例に係るチェーンガイドは、プレート120cの図示右側の端部を取付部114cのプレート挿入孔133cから突出するように、テンショナ当接部115c側(図面左側)から挿入し、続いて、プレート120cの図示左側端部をプレート端保持部131cに挿入して保持させることで組み立てられる。
プレート120cの図示左側端部が僅かに拡大しているため、プレート端保持部131cを僅かに弾性変形させて挿入することで、プレート120cが固定されるが、別途図示しないプレート固定片を適宜の位置に設けてもよい。
第1参考例に係るチェーンガイドによれば、プレート挿入孔を走行案内部の表面に開口させる必要がないため、チェーンと摺動する走行案内部の表面の形状に制約がなく設計自由度が向上する。
【参考例2】
【0036】
第2参考例に係るチェーンガイド(揺動ガイド)は、図12に概略を示すように、プレート収容部130dの少なくともプレート端保持部を、側方のみが開放されプレート120dが側方からのみ挿入可能な形状とし、プレート120dの脱落を防止する係合片134dを開放した側方上部の適宜の位置に設けたものである。
また、プレート120dをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔は不要である。
他の構成は、本発明の第1実施形態乃至第実施形態のチェーンガイドのいずれと同様であってもよい。
【0037】
第2参考例に係るチェーンガイドによれば、プレート120dを側方から直接挿入できるため、プレート120dの挿入固定作業を容易に行うことができる。
また、プレート挿入孔を走行案内部の表面に開口させる必要がないため、チェーンと摺動する走行案内部の表面の形状に制約がなく設計自由度が向上する。
【参考例3】
【0038】
第3参考例に係るチェーンガイド(揺動ガイド)は、図13に概略を示すように、プレート収容部130eのプレート端保持部131eを、プレート120eが斜め側方から挿入可能な形状としたものである。
また、プレート120eをチェーン走行方向に挿入可能なプレート挿入孔は不要である。
他の構成は、本発明の第1実施形態乃至第実施形態のチェーンガイドのいずれと同様であってもよい。
第3参考例に係るチェーンガイドによれば、プレート120eを斜め側方から挿入できるため、プレート挿入孔を設ける必要がなく、案内シュー110eの設計自由度が向上する。
【実施例4】
【0039】
本発明の第実施形態に係るチェーンガイド(揺動ガイド)は、図14に概略を示すように、プレート120f、120gを幅方向に2枚あるいは3枚重ねてプレート収容部130f、130gに挿入したものである。
他の構成は、第1実施形態乃至第実施形態のチェーンガイドのいずれと同様であってもよい。
また、重ねるプレートの枚数は、4枚以上であってもよい。
本発明の第実施形態に係るチェーンガイドによれば、それぞれのプレート120f、120gを薄くして圧延鋼板等から打ち抜くコストを低減できるとともに、複数挿入することで全体として必要な強度、剛性、耐久性を確保することが可能となる。
【実施例5】
【0040】
本発明の第実施形態に係るチェーンガイド(揺動ガイド)は、図15に概略を示すように、プレート収容部130h、130jを幅方向に2つあるいは3つ平行に設け、それぞれのプレート収容部130h、130jに独立してプレート120h、120jを挿入したものである。
他の構成は、第1実施形態乃至第実施形態のチェーンガイドのいずれと同様であってもよく、並行するプレート収容部130h、130jがそれぞれ異なる形態のものであってもよい。
また、平行に設けるプレート収容部は、4つ以上であってもよい。
【0041】
本発明の第実施形態に係るチェーンガイドによれば、それぞれのプレート120h、120jを薄くして圧延鋼板等から打ち抜くコストを低減できるとともに、複数挿入することで全体として必要な強度、剛性、耐久性を確保することが可能となる。
また、複数枚のプレート120h、120jを個々にそれぞれ別のプレート収容部130h、130jに挿入固定することができるため、プレート120h、120jを複数としても、それらを同時に束ねて扱う必要がなく、プレート120h、120jの挿入固定作業を容易に行うことができる。
【0042】
以上説明した各実施形態は、本発明に係るチェーンガイド(揺動ガイド)の具体例であるが、本発明に係るチェーンガイドはこれらに限定されるものではなく、取付部が複数箇所設けられたチェーンガイド(固定ガイド)に適用されてもよく、各構成部材の形状、位置、寸法、配置関係等も、様々な変形が可能である。
また、各実施形態は、タイミングシステムを有するエンジン内に設けられるものであるが、これに限定されず様々な機器類に適用可能である。
また、チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、種々の産業分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
100、500 ・・・ チェーンガイド(揺動ガイド)
600 ・・・ チェーンガイド(固定ガイド)
110、510 ・・・ 案内シュー
111、511 ・・・ 走行案内部
512 ・・・ プレート収容部(スリット溝)
113、513 ・・・ 取付孔(案内シューの)
114、514 ・・・ 取付部
115、515 ・・・ テンショナ当接部
120、520 ・・・ プレート
521 ・・・ 取付孔(プレートの)
130 ・・・ プレート収容部
131 ・・・ プレート端保持部
132 ・・・ プレート固定片
133 ・・・ プレート挿入孔
134 ・・・ 係合片
S1 ・・・ 駆動スプロケット
S2 ・・・ 従動スプロケット
CH ・・・ タイミングチェーン
P ・・・ 取付軸(揺動用)
Q ・・・ 取付軸(固定用)
T ・・・ チェーンテンショナ
K ・・・ 圧延鋼板
Z ・・・ 残材
図1
図2
図3
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