特許第5980185号(P5980185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5980185樹脂モールドステータおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980185
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】樹脂モールドステータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20160818BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20160818BHJP
   H02K 3/44 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H02K15/12 E
   H02K1/18 E
   H02K3/44 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-195589(P2013-195589)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-61482(P2015-61482A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2014年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】398061810
【氏名又は名称】日本電産テクノモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 聖
(72)【発明者】
【氏名】新井 康之
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−236921(JP,A)
【文献】 特開2003−164080(JP,A)
【文献】 特開2004−236500(JP,A)
【文献】 特開昭62−173959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
H02K 1/18
H02K 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)複数のコア要素と、複数の節と、複数の巻線と、を備え、前記複数のコア要素が直線状に配列され、各コア要素が部分コアバックとティースとを含み、前記部分コアバックが隣接する部分コアバックと節にて結合し、各ティースに巻線が施された、直線状巻線コアを準備する工程と、
b)前記直線状巻線コアを前記複数の節にて曲げて複数のティースが径方向内方を向く環状とし、かつ、柱状の芯金の外周面に前記複数のティースの先端を対向させることにより、ステータを前記芯金に組み付けた芯金組立体を得、さらに、当該芯金組立体を金型内に配置する、または、柱状の芯金を備えた金型にて、前記芯金の外周面に前記複数のティースの先端を対向させることにより、ステータを前記芯金に組み付けた芯金組立体とし、当該芯金組立体を金型内に位置させる、工程と、
c)前記金型内に樹脂を注入し、当該樹脂にて少なくとも各ティースの巻線を覆い、当該樹脂を硬化させる工程と、
d)樹脂モールドされたステータを前記金型および前記芯金から取り出す工程と、
を備え、
前記芯金は、前記外周面から径方向外方に突出する3以上かつティースの本数未満の複数のリブを含み、
前記複数のリブのそれぞれは、中心軸に平行に延び、
前記芯金組立体において、前記複数のリブのそれぞれは、互いに隣接するティース先端間の間隙内で、周方向に等間隔に位置する、樹脂モールドステータの製造方法。
【請求項2】
前記b)工程は、
前記直線状巻線コアを環状に曲げて環状巻線コアを得る工程と、
前記環状巻線コアに前記芯金を挿入する工程と、
を備える、請求項1に記載の樹脂モールドステータの製造方法。
【請求項3】
前記複数のリブのそれぞれの周方向の幅は、前記中心軸から離れるに従って小さくなる、請求項1又は請求項2に記載の樹脂モールドステータの製造方法。
【請求項4】
前記芯金組立体において、前記複数のリブのそれぞれが、前記複数のティースの少なくとも軸方向の一端から他端に亘る部分に存在する、請求項1ないしのいずれかに記載の樹脂モールドステータの製造方法。
【請求項5】
環状巻線コアと、
前記環状巻線コアの少なくとも巻線を覆う環状のモールド樹脂と、
を備え、
前記環状巻線コアは、複数のコア要素と、複数の節と、複数の巻線と、を備え、
前記複数のコア要素は環状に配列され、各コア要素が部分コアバックと、前記部分コアバックから径方向内方に延びるティースとを含み、
隣接する前記部分コアバックの少なくとも1箇所は、互いの部分コアバックが結合する溶接部またはかしめ部を含み、
隣接する前記部分コアバックの他の箇所は、互いの部分コアバックが結合する節を含み、
前記各ティースは、巻線が施され、
複数のティースの先端面は、前記モールド樹脂の内周面から露出し、
前記モールド樹脂の内周面は、互いに隣接するティース先端間の間隙内に向かって窪む3以上かつティースの本数未満の複数の溝を含み、前記複数の溝のそれぞれは、中心軸に平行に延び、周方向に等間隔に位置する、樹脂モールドステータ。
【請求項6】
前記複数の溝のそれぞれの周方向の幅は、前記中心軸から離れるに従って小さくなる、請求項に記載の樹脂モールドステータ。
【請求項7】
前記複数の溝のそれぞれが、前記複数のティースの少なくとも軸方向の一端から他端に亘る部分に存在する、請求項5又は請求項6に記載の樹脂モールドステータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂にてモールドされたステータに関連する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ブラシレスDCモータにおいて、ステータの保護のために、樹脂にてモールドされたステータが設けられる場合がある。また、特開2001−258186号公報に開示されるように、樹脂にてモールドされるステータのコアとして、直線状の積層コアを折り曲げて環状にしたものも知られている。巻線が施された環状のコアは、環状に維持された状態で金型内で樹脂にてモールドされる。モールド時には、環状のステータの複数のティースの内側に芯金が挿入される。これにより、ティースの先端面以外の領域が樹脂にて覆われる。
【0003】
しかし、コアの折り曲げ位置に存在する節は剛性が低いため、金型内に樹脂を注入する際に、樹脂の流れの力を受けて環状のコアの形状が僅かに歪むことがある。コアの真円度やティースのピッチの均一性が低下したり、あるいは、コアの歪みにより回転部とステータとの同軸度が低下すると、モータの振動が増大してしまう。
【0004】
一方、特開2004−312790号公報では、全ティースの先端部中央に係合凹部を設け、芯金の外周に係合突条を設け、環状のコアに芯金を挿入する際に、係合突条が係合凹部に係合する。これにより、金型内に樹脂を注入する際に複数のティースのピッチが所定の間隔に保たれ、かつ、その内径も保持される。
【特許文献1】特開2001−258186号公報
【特許文献2】特開2004−312790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特開2004−312790号公報等の方法のように、芯金の突起に全てのティースを係合させる場合、芯金の周囲にコアを配置した組立体を組み立てる作業に時間を要する、又は組み立てを容易にするための余分な冶具等が必要になる、又は組立作業者に熟練が要求される。
【0006】
本発明は、樹脂モールドステータを製造する際に、作業性を低下させることなくコアの形状を確保することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な一の実施形態に係る樹脂モールドステータの製造方法は、a)複数のコア要素と、複数の節と、複数の巻線と、を備え、前記複数のコア要素が直線状に配列され、各コア要素が部分コアバックとティースとを含み、前記部分コアバックが隣接する部分コアバックと節にて結合し、各ティースに巻線が施された、直線状巻線コアを準備する工程と、b)前記直線状巻線コアを前記複数の節にて曲げて複数のティースが径方向内方を向く環状とし、かつ、柱状の芯金の外周面に前記複数のティースの先端を対向させることにより、ステータを前記芯金に組み付けた芯金組立体を得、さらに、当該芯金組立体を金型内に配置する、または、柱状の芯金を備えた金型にて、前記芯金の外周面に前記複数のティースの先端を対向させることにより、ステータを前記芯金に組み付けた芯金組立体とし、当該芯金組立体を金型内に位置させる、工程と、c)前記金型内に樹脂を注入し、当該樹脂にて少なくとも各ティースの巻線を覆い、当該樹脂を硬化させる工程と、d)樹脂モールドされたステータを前記金型および前記芯金から取り出す工程と、を備え、前記芯金は、前記外周面から径方向外方に突出する3以上かつティースの本数未満の複数のリブを含み、前記複数のリブのそれぞれは、中心軸に平行に延び、前記芯金組立体において、前記複数のリブのそれぞれは、互いに隣接するティース先端間の間隙内で、周方向に等間隔に位置する。
【0008】
本発明は、樹脂モールドステータにも向けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂モールドステータを製造する際に、作業性を低下させることなくコアの形状を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、樹脂モールドステータの製造の流れを示す図である。
図2図2は、直線状コアを示す平面図である。
図3図3は、ステータを示す平面図である。
図4図4は、環状コアを示す平面図である。
図5図5は、芯金を示す平面図である。
図6図6は、芯金組立体を示す平面図である。
図7図7は、芯金組立体におけるリブ近傍を拡大して示す図である。
図8図8は、1つのリブを拡大して示す横断面図である。
図9図9は、金型内に芯金組立体が配置された状態を示す縦断面図である。
図10図10は、樹脂モールドステータを示す正面図である。
図11図11は、樹脂モールドステータを示す底面図である。
図12図12は、樹脂モールドステータの一部と、その周囲の樹脂の横断面を示す図である。
図13図13は、溝を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、ステータの中心軸方向の一方側を「上側」と呼び、他方側を「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、説明の便宜上定めるものであり、重力方向に一致する必要はない。また、中心軸に平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0012】
図1は、本発明の例示的な一の実施形態に係る樹脂モールドステータの製造の流れを示す図である。
【0013】
樹脂モールドステータの製造では、まず、鋼板を金型で打ち抜いた打ち抜き片を積層し、直線状コアが準備される。図2は直線状コア2を示す平面図である。直線状コア2は、複数のコア要素21と、複数の節22と、を含む。複数のコア要素21は直線状に配列される。各コア要素21は、部分コアバック211と、ティース212と、を含む。部分コアバック211は、隣接する部分コアバック211と節22にて結合する。節22は、部分コアバック211の両側部であって、ティース212とは反対側に位置する。節22の数は、部分コアバック211の数よりも1つ少ない。
【0014】
直線状コア2が準備されると、各ティース212にインシュレータが装着される。インシュレータ上から各ティース212に導線が巻回される(ステップS11)。以下、巻線が施された直線状のコアを、「直線状巻線コア」と呼ぶ。すなわち、直線状巻線コアは、複数のコア要素21と、節22と、巻線と、を少なくとも含む。直線状巻線コアは、節22にて曲げられる。これにより、直線状巻線コアは、複数のティース212が径方向内方を向く環状となる(ステップS12)。直線状巻線コアの両端部は接合される。
【0015】
以下、環状の巻線コアを「環状巻線コア」と呼ぶ。環状巻線コアには必要に応じて他の部品が取り付けられる。樹脂にてモールドされる直前の状態の環状巻線コアを含む部品を以下、「ステータ」と呼ぶ。以下の説明におけるステータに対する作業は、実質的に環状巻線コアに対する作業でもある。
【0016】
図3は、ステータ10を示す平面図である。図4は、ステータ10における環状コア2aを示す平面図である。環状コア2aでは、部分コアバック211が環状に配列される。直線状コア2にて両端に位置する部分コアバック213は、溶接またはかしめにて結合される。複数の部分コアバック211により、環状のコアバック231が構成される。複数のティース212は、コアバック231から径方向内方に延びる。ステータ10のインシュレータ232上には、3本の接続ピン233が設けられる。接続ピン233には巻線234を形成する導線の端部が接続される。
【0017】
次に、柱状の芯金がステータ10に挿入される(ステップS13)。換言すれば、芯金は環状巻線コアに挿入される。すなわち、芯金は環状巻線コアの複数のティース212に囲まれた空隙に挿入される。図5は、芯金81の平面図である。図6は、芯金81がステータ10に挿入された状態を示す平面図である。以下、ステータ10を芯金81に組み付けた組立体を「芯金組立体70」と呼ぶ。芯金組立体70では、芯金81の外周面に複数のティース212の先端が対向する。芯金組立体70を得る際には、環状巻線コアを芯金81に巻き付けるようにしてステータ10を芯金81に取り付けてもよい。
【0018】
芯金組立体70は金型に取り付けられ、金型を閉じることにより、金型内に配置される(ステップS14)。芯金81は、予め金型に備えられていてもよい。すなわち、芯金81は金型に予め固定されていてもよい。この場合、芯金81の外周面に複数のティース212の先端を対向させてステータ10を芯金81に組み付けて芯金組立体70とし、金型を閉じることにより、芯金組立体70は金型内に位置する。
【0019】
芯金81は、外周面から径方向外方に僅かに突出する4本のリブ811を含む。複数のリブ811のそれぞれは、芯金81の中心軸J1に平行に延びる。芯金組立体70では、中心軸J1は、ステータ10の中心軸に一致する。以下の説明では、ステータ10の中心軸についても区別することなく符号J1を付す。図6において、外周の二点鎖線は、金型により形成される空間の内周面を示す。
【0020】
図7は、芯金組立体70におけるリブ811近傍を拡大して示す図である。ティース212の先端は、インシュレータ232から露出する。芯金組立体70では、複数のリブ811のそれぞれは、互いに隣接するティース212の先端間の間隙内に位置する。すなわち、中心軸J1からリブ811の先端までの距離は、中心軸J1からティース212の先端面の周方向端部までの距離よりも長い。図8は、1つのリブ811を拡大して示す横断面図である。各リブ811の周方向の幅は、中心軸J1から離れるに従って小さくなる。これにより、リブ811の側面がティース212の先端の位置決めの際の案内面となり、環状巻線コアの真円度を矯正しつつ環状巻線コア内へ芯金81の挿入が容易となる。
【0021】
リブ811の根元の周方向の幅は、ティース212間の周方向の最小幅よりも僅かに大きい。リブ811の一方の側面は、一方のティース212に接触または近接する。リブ811の他方の側面は、他方のティース212に接触または近接する。
【0022】
芯金組立体70が金型内に配置されると、金型内に樹脂が注入される(ステップS15)。リブ811の存在により、モールド時のコアの真円度および芯金組立体70の同軸度を維持することができる。なお、リブ811の数は、3以上かつティース212の本数未満であればよい。好ましくは、リブ811は周方向に等間隔に位置する。これにより、モールド時のコアの真円度、並びに、芯金81およびステータ10の同軸度を容易に維持することができる。
【0023】
樹脂は、少なくとも各ティース212の巻線を覆う。ティース212の先端面は、芯金81の外周面に接触または近接するため、樹脂には覆われない。樹脂が硬化した後、金型は開かれ、樹脂モールドされたステータ10が金型および芯金81から取り出される(ステップS16)。
【0024】
図9は、金型80内に芯金組立体70が配置された状態を示す縦断面図である。なお、芯金81は金型80の一部と捉えられてもよい。図9の下側から上方を向く方向が図6の平面視の方向に対応する。金型80は、上金型82と、下金型83と、を含む。芯金81の下部814は、下金型83に固定される。芯金81の上部812は、金型80を閉じた状態で上金型82にほぼ接する。芯金81の中央部813の外周面にステータ10は取り付けられる。リブ811はこの中央部813に設けられる。芯金組立体70において、各リブ811は、複数のティース212の少なくとも軸方向の一端から他端に亘る部分に存在する。これにより、リブ811はティース212を安定して支持する。
【0025】
いわゆるゲートである樹脂の注入口821は、上金型82と下金型83との間に設けられる。樹脂の流路は、上金型82に溝を設けることにより、上金型82と下金型83との間に設けられる。図6にて二点鎖線にて示すように、注入口821は、周方向においてリブ811とリブ811との間に位置する。さらに、注入口821は、節22と径方向に対向する。これにより、樹脂は、この節22の両側のティース212を広げるようにコアに力を与える。
【0026】
図10は、金型80から取り出された樹脂モールドステータ100を示す正面図である。図11は、樹脂モールドステータ100の底面図である。図12は、樹脂モールドステータ100の一部と、その周囲のモールド樹脂4の横断面を示す図である。図10における上下方向は、図9の上下方向に対応する。
【0027】
樹脂モールドステータ100は、環状巻線コアを含むステータ10と、モールド樹脂4と、を含む。モールド樹脂4は、ステータ10のティース212の先端面以外のほぼ全ての部位を覆う。すなわち、複数のティース212の先端面は、モールド樹脂4の内周面から露出する。なお、モールド樹脂4は、環状巻線コアの少なくとも巻線234を覆うのであれば、ティース212の先端面以外の全体を覆う必要はない。環状巻線コアは、既述のように、複数のコア要素21と、複数の節22と、複数の巻線234と、を含む。環状巻線コアでは、コア要素21は環状に配列される。ティース212は、部分コアバック211から径方向内方に延びる。
【0028】
複数のコア要素21では、1箇所を除いて部分コアバック211は隣接する部分コアバック211と節22にて結合する。当該1箇所にて隣接する部分コアバック213、すなわち、図12の中央にて隣接する部分コアバック213は溶接またはかしめにて結合する。図11に示すように、接続ピン233は、モールド樹脂4から突出する。
【0029】
芯金81のリブ811の存在により、図13の拡大図に示すように、モールド樹脂4の内周面には、互いに隣接するティース212の先端間の間隙内に向かって窪む溝41が形成される。なお、ここでの先端間の間隙は、モールド樹脂4の存在を無視した間隙を指す。換言すれば、中心軸J1から溝41の底面までの距離は、中心軸J1からティース212の先端面の周方向端部までの距離よりも長い。
【0030】
本実施の形態では、溝41の数は4であり、4つの溝41は周方向に等間隔に位置する。例えば、12スロットコアの場合、溝の数は、等間隔となる4個、6個、または3個が望ましい。24スロットコアの場合、溝の数は、等間隔となる8個、12個、または6個が望ましい。各溝41は、中心軸J1に平行に延びる。溝41の数は4には限定されず、3以上かつティース212の本数未満である。好ましくは、複数の溝41は、周方向に等間隔に位置する。また、各溝41の形状はリブ811と同じであり、各溝41の周方向の幅は、中心軸J1から離れるに従って小さくなる。
【0031】
各溝41は、複数のティース212の少なくとも軸方向の一端から他端に亘る部分に存在する。溝41は、モールド樹脂4の最内周面の上下方向全体に存在する必要はない。例えば、溝41は、ティース212の先端面の上下方向の一方端から始まり、モールド樹脂4の最内周面の他方端まで連続してもよい。
【0032】
仮に、芯金の外周面が完全な円筒面である場合、すなわち、芯金にリブが設けられない場合、ティースの位置は、ティースの先端面が芯金の外周面に倣うことにより決定される。しかし、ティースの先端面と芯金の外周面との間には僅かな隙間が設けられるため、樹脂にてモールドする際に、樹脂から力を受けてティースの位置が許容範囲以上に移動してしまう虞がある。ステータの真円度を向上するためには、芯金とティースの先端面との間の距離を極端に小さくする必要があるが、この距離を小さくするとステータに芯金を挿入することが困難となる。
【0033】
これに対し、樹脂モールドステータ100の製造では、芯金81のリブ811がティース212の先端の間に位置する。これにより、モールド時に、各リブ811の両側のティース212の先端の移動を抑制することができる。その結果、少ない数のリブ811でステータ10のコアの形状を確保することができ、モータの振動や騒音を防止することができる。また、リブ811とティース212の先端との間の距離を小さくすることにより、真円度を向上するために芯金81の外周面とティース212の先端面とを極限まで近づける必要がなくなる。また、芯金81をステータ10に挿入する際の接触領域が削減され、作業性の低下が防止される。また、本発明の方法では、先端が完全に位置決めされていないティース212が、一つ以上存在することを許容する。言い替えれば、ティース212の先端の周方向の両端の内、片方、若しくは両方ともリブ811に接していないティース212が一つ以上存在する芯金組立体を形成する。この場合、リブ811の数は、ティース212の数未満になる。こうすることで、芯金81をステータ10に挿入する際の作業性の低下が防止される。
【0034】
なお、ティース212の先端の周方向の両端の内、片方、若しくは両方ともリブ811に接していないティースを許容した場合、ティース212先端の位置決め精度が低下することが懸念される。しかし、周方向両端の内の片方、若しくは隣接するティース又は更にその先に位置するティース212の先端を位置決めすることで、芯金組立体全体の形状は比較理想に近い状態を維持することが出来る。
【0035】
また、リブ811をスロット内に位置させてティース212の位置を拘束することにより、ティース212の先端には芯金81と係合するための溝や突起は不要となる。ティース212の先端に溝や突起を設ける場合、モールド時に樹脂が溝や突起に付着し、その後、微小な樹脂片が剥離してモータ内に落下する虞も生じるが、本発明ではその問題も回避可能である。
【0036】
なお、1つのリブ811で2つのティース212の位置をおよそ拘束することができるため、リブ811の数は、ティース212の数の半分以下であることが好ましい。もちろん、製造される樹脂モールドステータ100の溝41の数および位置は、リブ811の数および位置と一致する。
【0037】
芯金81には、ティース212の先端間に入り込まない程度の低いリブがさらに設けられてもよい。このようなリブは、上記説明におけるリブ811には含まれない。
【0038】
リブ811は周方向に等間隔に存在しなくてもよい。この場合であっても、ステータ10のコアの真円度をある程度確保することができる。また、リブ811は周方向の一部において等間隔に存在し、周方向の他の部位において不等間隔に存在してもよい。リブ811が等間隔に存在する場合、コアの真円度を容易に確保することができる。
【0039】
直線状コア2は、2以上の部分直線状コアに分かれていてもよい。この場合、環状コアを形成するための部分コアバック211の溶接またはかしめが行われる箇所は、2箇所以上となる。一般的に表現すれば、節22の数はコア要素21の数よりも1以上少ない。
【0040】
ティース212の数は上記実施形態にて示したものには限定されず、様々に変更されてよい。リブ811の数も、確保したい真円度に応じて適宜変更されてよい。例えば、ティース212の数が12の場合、リブ811の数は3、4、6から選択可能である。リブ811を周方向に等間隔に配置しない場合、リブ811の数はさらに柔軟に変更可能である。
【0041】
モールド樹脂4の外形は円筒面には限定されない。例えば、角柱状の面であってもよい。金型の分離方向は上下方向のみには限定されない。樹脂の注入位置も上記実施形態にて示した位置には限定されず、例えば、上下から樹脂が注入されてもよい。
【0042】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る樹脂モールドステータは、家電製品用モータ、産業用モータ、動力用モータ等の様々な用途のモータのステータとして利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
2 直線状コア
2a 環状コア
4 モールド樹脂
10 ステータ(環状巻線コア)
21 コア要素
22 節
41 溝
70 芯金組立体
80 金型
81 芯金
100 樹脂モールドステータ
211 部分コアバック
212 ティース
234 巻線
811 リブ
J1 中心軸
S11〜S16 ステップ
図1
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