(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一ガスノズルの外周面のうち少なくとも一部を覆い、前記第一のガスの温度低下を防止する温度低下低減部を備える請求項1から6の何れか一項に記載のバーナー。
【背景技術】
【0002】
低品位炭を高品位化する石炭改質プラントにおいては、低品位炭に含まれる水銀などの不純物を除去するために熱分解処理を行う場合がある。この熱分解処理を行う際に、低品位炭から可燃性のガスが分離される。この可燃性のガスは、燃焼炉で燃焼され高温のガスとして再利用される場合がある。この高温のガスは、例えば、低品位炭を熱分解するための熱源としてロータリーキルンなどのジャケットに送られ、その後、排気浄化装置などを介して外部に排出される。
【0003】
低品位炭から得られる可燃性のガスは、一般に低熱量ガスである。そのため、燃焼炉で燃焼させる際に、熱量不足により安定的に燃焼できない場合、天然ガスなど高熱量ガスを一部燃焼炉に入れて、低熱量ガスと高熱量ガスとを同時に燃焼させる場合がある。上記石炭改質プラントにおいては、高熱量ガスから低熱量ガスへの火移りをよくするために、低熱量ガス用バーナーの近傍に助燃バーナーである高熱量ガス用バーナーを配置している。また、高熱量ガス用バーナーの近傍には、点火トーチが配置されている。
しかしながら、低熱量ガス用バーナーや高熱量ガス用バーナーなど、各バーナーに空気を個別に供給する必要があるため、配管が複雑化してしまう。また、各バーナーは、専用の管台を介して燃焼炉壁面などに個別に取り付けられているため、管台数が増加して装置の小型化が困難となっていた。
【0004】
特許文献1には、低熱量ガスを供給する低熱量ガス用ノズルと、低熱量ガス用ノズルの内側中央に高熱量ガスを供給する高熱量ガス用ノズルとを備え、低熱量ガスと高熱量ガスとを同時に燃焼させる燃焼器が記載されている。
特許文献2には、補助バーナーにより天然ガスなどの高熱量の燃料を燃焼させ、その炎を用いて排気ガスの燃焼を補助する混焼式のバーナーが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、石炭改質プラントにおいては、プラント起動時に、昇温の目的で高熱量ガスに点火する。しかし、プラント起動時には、低品位炭を熱分解するキルンに対して不活性ガス(例えば、窒素)をパージする。そのため、低熱量ガス用のノズルを介して高熱量ガス用ノズルの近傍に不活性ガスが供給されてしまい、低熱量ガス用ノズルの近傍に配された高熱量ガス用ノズルの火炎が失火してしまう場合があるという課題がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低熱量ガス用ノズルの近傍に高熱量ガス用ノズルが配されている場合に低熱量ガス用ノズルから噴出される不活性ガスにより高熱量ガスの火炎が失火することを低減できるバーナー、および、石炭改質プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明に係るバーナーは、第一のガスと、前記第一のガスよりも熱量の高い第二のガスとを同時に燃焼させるバーナーであって、第一方向に一次空気を供給する開口部を有した筒状の第一外筒と、前記第一外筒の内側に配され、前記第一方向に向かって漸次拡径する内周面を有するディフューザと、を備えている。さらにこの発明に係るバーナーは、前記第一外筒の内側に配され、前記ディフューザの径方向外側の領域に前記第一方向に向かって前記第一のガスを供給する第一ガスノズルと、前記第一外筒の周方向で前記第一ガスノズルと隣り合うように配され、前記ディフューザの径方向外側の領域に前記第一方向に向かって前記第二のガスを供給する第二ガスノズルと、を備えている。またこの発明に係るバーナーは、前記第一外筒の内側に配され、前記第二のガスと前記第一のガスとの少なくとも一方に点火する点火トーチと、を備えている。
このように構成することで、ディフューザの外側を第一方向に向かって流れる一次空気が、ディフューザの内周面側に渦を巻くように引き込まれる。さらに、この渦に第二ガスノズルから供給される第二のガスを引き込んで、ディフューザ内に小さい火の玉を作ることができる。そのため、一次空気と第二のガスとを確実に混合して、第一ガスノズルから供給される不活性ガスの影響を低減することができる。また、第一ガスノズルから第一のガスが供給された場合には、第一のガスをディフューザに引き込み、第一ガスを確実に燃焼させることができる。
【0008】
さらに、この発明に係るバーナーは、上記バーナーにおいて、前記第一方向における前記第一ガスノズルの開口端部は、前記ディフューザの最外周部に沿って接する接触部を備えていてもよい。
このように構成することで、第一ガスノズルから供給される第一のガスを、接触部を介して円滑にディフューザに引き込ませることができる。
【0009】
さらに、この発明に係るバーナーは、上記バーナーにおいて、前記第一ガスノズルを複数備え、前記第一ガスノズルの各接触部が前記ディフューザに当接する周方向の角度範囲の合計は、90度から200度とされている。
例えば、接触部とディフューザとの当接する周方向の角度範囲の合計が90度を下回る場合には、第一のガスをディフューザ内に適正に供給することができず、安定燃焼できない可能性がある。また、接触部とディフューザとの当接する周方向の角度範囲の合計が200度を上回る場合には、ディフューザへの第一のガスの引き込まれる範囲が広すぎて、第二のガスや一次空気などがディフューザへ引き込まれることを阻害してしまう可能性がある。しかし、上記のように接触部とディフューザとの当接する周方向の角度範囲の合計を90度から200度の角度範囲とすることで、第一のガスをディフューザによって引き込ませる範囲を、第一のガスが燃焼するために最適な範囲にすることができる。
【0010】
さらに、この発明に係るバーナーは、上記バーナーにおいて、前記第二ガスノズルは、その第一方向の開口端部に、前記第二のガスに渦流を発生させる保炎パッドを備えていてもよい。
このように構成することで、第二ガスノズルの開口端部の周囲に第二のガスによる渦流を形成することができる。そのため、渦流に点火することによって第二ガスノズルで発生する火炎を保炎して、ディフューザ内の火炎が失火することを更に低減できる。
【0011】
さらに、この発明に係るバーナーは、上記バーナーにおいて、前記第一外筒の外側に配され、前記第一外筒との間に二次空気が流れる流路を形成する第二外筒を備えていてもよい。
このように構成することで、第一外筒から下流側の空間を二次空気によって外側から囲むことができる。そのため、より多くの一次空気、第一のガス、および、第二のガスをディフューザ内へ導くことができる。
【0012】
さらに、この発明に係るバーナーは、上記バーナーにおいて、前記第一外筒と前記第二外筒との間に配され、前記二次空気を周方向に旋回させるスワラーを備えていてもよい。
このように構成することで、二次空気の内側の空間が二次空気の旋回により負圧となるため、一次空気、第一のガス、および、第二のガスをディフューザ内へより効率よく導くことができる。
【0013】
さらに、この発明に係るバーナーは、上記バーナーにおいて、前記第一ガスノズルの外周面のうち少なくとも一部を覆い、前記第一のガスの温度低下を低減する温度低下低減部を備えていてもよい。
このように構成することで、第一のガスは比較的高温であるため、第一ガスノズルの周囲を流れる一次空気により第一のガスが冷されて、第一のガスに含まれるタールなどの成分が凝結することを低減できる。
【0014】
この発明に係る石炭改質プラントは、上記バーナーのうち何れか一つのバーナーを具備した燃焼炉を備えている。
このように構成することで、バーナーの火炎が失火することを低減できるため、石炭改質過程における熱分解処理を安定的に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るバーナーおよび石炭改質プラントによれば、低熱量ガス用ノズルの近傍に高熱量ガス用ノズルが配されている場合に低熱量ガス用ノズルから噴出される不活性ガスにより高熱量ガスの火炎が失火することを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一実施形態に係る石炭改質プラントについて説明する。
図1は、この実施形態における石炭改質プラント1の概略構成図である。
この実施形態における石炭改質プラント1は、低品位炭に含まれる水分や不純物などを除去して成形することで低品位炭の高品位化を図るプラントである。
図1に示すように、石炭改質プラント1は、クラッシャー2、ドライヤー3、パイロライザー4、燃焼炉5、クエンチャー6、フィニッシャー7、ニーダー8、及び、ブリケッティング装置9を主に備えている。
【0018】
クラッシャー2は、原炭Lを粉砕することで、後工程で処理し易い大きさに原炭Lの大きさを整える装置である。クラッシャー2で大きさを整えられた原炭Lは、ドライヤー3に送られる。
ドライヤー3は、クラッシャー2で大きさを整えられた原炭Lを乾燥させる装置である。このドライヤー3としては、例えば、蒸気を用いて原炭Lを間接加熱するスチームチューブドライヤーなどを用いることができる。このドライヤー3により乾燥させた石炭は、パイロライザー4に送られる。
【0019】
パイロライザー4は、ドライヤー3で乾燥させた石炭を僅かに熱分解する装置である。より具体的には、パイロライザー4は、石炭に含まれる揮発分や、水銀など種々の不純物をガス化して抽出する。このパイロライザー4により分離されたガスは、低熱量ガス(第一のガス)として燃焼炉5に送られる。また、パイロライザー4により熱分解された後の改質炭は、クエンチャー6に送られる。
【0020】
燃焼炉5は、パイロライザー4により分離された低熱量ガスを、一次空気などと共に燃焼させて高温ガスを生成する。この高温ガスは、パイロライザー4のジャケット4aに供給されて、パイロライザー4の熱源として用いられる。このパイロライザー4により原炭Lの加熱に用いられた高温ガスは、例えば、排気クリーンシステム(AQCS)Csにより浄化された後、大気中に排出される。
図1中、符号「F」は風量調整ファン、符号「B」はブロアである。ジャケット4aと排気クリーンシステムCsとの間の配管に設置される風量調整ファンFとブロアBとは共に、使用済みの高温ガスを排気クリーンシステムCsに送り込む。
【0021】
クエンチャー6は、パイロライザー4によって熱分解処理を行った改質炭を冷却する装置である。このクエンチャー6により、400℃程度あった改質炭の温度が、70℃前後まで冷却される。クエンチャー6により冷却された改質炭は、フィニッシャー7へ送られる。
フィニッシャー7は、クエンチャー6によりある程度冷却された改質炭を、更に大気などによって緩やかに温度調整する装置である。フィニッシャー7は、例えば、改質炭を50℃以下となるように温度調整する。このフィニッシャー7により温度調整された改質炭は、ニーダー8へ送られる。
【0022】
ニーダー8は、フィニッシャー7で温度調整された改質炭を粉砕し更に細かい粒子状にする。また、ニーダー8は、粉砕と同時に改質炭を成形するためにバインダ等の添加物が必要な場合には、改質炭にバインダを投入して撹拌する。ニーダー8で粉砕および撹拌された改質炭は、ブリケッティング装置9へ送られる。
ブリケッティング装置9は、改質炭を所定のブリケット状に成形する装置である。ブリケッティング装置9は、例えば、圧縮成形などにより、改質炭をブリケット状に成形する。このブリケッティング装置9により成形された改質炭のブリケットBrは、車両や船舶などの搬送手段により仕向地へ搬送される。
【0023】
次に、上述した燃焼炉5のバーナー10について図面に基づき説明する。
図2は、燃焼炉5のバーナー10周囲の概略構成を示す断面図である。
図2に示すように、燃焼炉5は、燃焼用の空間Kを形成する容器11を備えている。この容器11には、一つの管台11aを介してバーナー10が取り付けられている。バーナー10は、熱量の異なる2種類のガスを混焼させる装置である。バーナー10の空間K側の端部10aの位置は、バーナー10の軸線O方向で容器11の内側面11bと同一位置とされている。バーナー10には、低カロリー燃料、高カロリー燃料、点火トーチ燃料、および、空気を供給するための配管12a〜12dが接続されている。これら配管12a〜12dには、それぞれ流量調整弁13a〜13dが取り付けられている。この実施形態の一例においては、バーナー10には、低カロリー燃料として、パイロライザー4で発生する低熱量ガスが供給される。また、この実施形態の一例におけるバーナー10には、高カロリー燃料として、低熱量ガスよりも熱量が高い天然ガスなどの高熱量ガス(第二のガス)が供給される。また、バーナー10に供給される空気は、後述する一次空気および二次空気として用いられる。
【0024】
図3は、
図2のIII方向から見たバーナー10の正面図である。
図4は、
図3のVI−VI線に沿う断面図である。
図3、
図4に示すように、バーナー10は、第一外筒20、ディフューザ21、第一ガスノズル22、第二ガスノズル23、点火トーチ24、および、第二外筒25を備えている。
【0025】
第一外筒20は、内部空間Kに向けて一次空気を供給する流路を形成する。第一外筒20は、筒状より具体的には円筒状に形成されている。第一外筒20は、その軸線O方向における内部空間K側(以下、単に第一方向と称する)に開口部27を有している。
【0026】
ディフューザ21は、第一外筒20の内側に配され、第一方向に向かって漸次拡径する内周面28を有している。このディフューザ21の径方向の内側には、円錐状の空間が形成される。ディフューザ21は、内部空間K側から見て、第一外筒20と同心の円形に形成されている。また、ディフューザ21は、第一方向の端部である最外周部29の位置が、第一外筒20の第一方向の端部30の位置と軸線O方向で同じ位置に配されている。ここで、ディフューザ21の内周面28と軸線との角度θ0は、50〜70度とするのが好ましい。
【0027】
第一ガスノズル22は、第一外筒20の径方向内側に配されている。この第一ガスノズル22は、ディフューザ21の径方向外側の領域に第一方向に向かって低熱量ガスを供給する。この実施形態におけるバーナー10には、複数、より具体的には2つの第一ガスノズル22が設けられている。これら第一ガスノズル22の開口部31は、それぞれ軸線Oを挟んで対称位置に配されている。
【0028】
第一方向における第一ガスノズル22の開口端部32は、ディフューザ21に接触する接触部33を有している。この接触部33は、最外周部29に沿う断面円弧状に形成されている。接触部33は、その周方向の全域に渡って、ディフューザ21の最外周部29に接している。これにより第一ガスノズル22の接触部33とディフューザ21の最外周部29との間には、第一外筒20の内側を流れる一次空気が第一方向に向かって流れないようになっている。2つの接触部33がディフューザ21の最外周部29に当接する周方向の角度範囲θ1,θ2とすると、これら角度範囲θ1,θ2の合計は、90度から200度の範囲とされている。
【0029】
第一ガスノズル22の開口端部32は、接触部33の周方向両側から第一外筒20に向かって平行に延びる2つの側壁部34を備えている。また、開口端部32は、平行な側壁部34の第一外筒20側の端部同士をつなぐ外側壁部34aを備えている。外側壁部34aは、第一外筒20の内側面に沿うように、第一外筒20側に向かって凸となる断面円弧状に形成されている。
【0030】
第二ガスノズル23は、ディフューザ21の径方向外側の領域に第一方向に向かって高熱量ガスを供給する。この実施形態におけるバーナー10には、複数、より具体的には2つの第二ガスノズル23が設けられている。これら第二ガスノズル23は、第一外筒20の周方向で第一ガスノズル22と隣り合うように配されている。また、2つの第二ガスノズル23は、軸線Oを挟んで対称位置に配されている。
【0031】
第二ガスノズル23は、その第一方向の開口端部35が、ディフューザ21の最外周部29よりも、第一方向で上流側に配されている。つまり、第二ガスノズル23の開口端部35は、内部空間K側から見て、ディフューザ21よりも後側に配されている。ディフューザ21の最外周部29と第二ガスノズル23の開口端部35との軸線O方向における距離dは、0〜30mmとしてもよい。また、距離dは、0mmとするのがより好ましい。
【0032】
第二ガスノズル23は、その開口端部35に保炎パッド36を備えている。保炎パッド36は、第二ガスノズル23から供給される高熱量ガスが点火された際に、その火炎を保持する機能を有している。具体的には、保炎パッド36は、第一方向の開口端部35を塞ぐように第一方向に直交する方向に延びる平面37を有している。また保炎パッド36は、開口端部35における第二ガスノズル23の流路よりも断面積の小さい複数の貫通孔38を有している。これら貫通孔38は、第二ガスノズル23の内部空間と、ディフューザ21の最外周部29の径方向外側の領域との間を連通している。第二ガスノズル23を流れる高熱量ガスは、貫通孔38を通過して第二ガスノズル23の外部に流出する際に、貫通孔38の周囲に小さな渦流(図示せず)を形成する。この小さな渦流により、高熱量ガスの火炎の失火が低減される。
【0033】
ここで、この実施形態における保炎パッド36は、第二ガスノズル23の火炎を保つために、第二ガスノズル23からディフューザ21に向かう方向の幅wを5〜20mmとすることで効率よく保炎することができる。さらに、幅wは、10mmとするのがより好ましい。つまり、保炎パッド36と、ディフューザ21との間には、一次空気が流れる場合がある。
【0034】
点火トーチ24は、上述した高熱量ガスと低熱量ガスとの少なくとも一方に点火する火種を形成する。点火トーチ24には、上述した点火トーチ燃料が供給される。点火トーチ24は、第一外筒20の内側における第一ガスノズル22と第二ガスノズル23との間に配置されている。ここで、この実施形態においては、点火トーチ24を2つ設ける場合を例示しているが、1つであってもよい。
【0035】
第二外筒25は、第一外筒20との間に二次空気が流れる流路を形成する。第二外筒25は、所定の間隔を空けて第一外筒20の外側を覆うように配置されている。第二外筒25は、第一外筒20と軸線Oが重なり第一外筒20よりも大径な円筒状に形成されている。すなわち、二次空気が流れる流路は、第一外筒20の全周において径方向の寸法が等しく形成される。
【0036】
第一外筒20と第二外筒25との間には、複数のスワラー39が周方向に所定の等間隔で配されている。スワラー39は、二次空気を軸線O回りに旋回させる偏向板として機能する。つまり、第一外筒20と第二外筒25との間の流路から内部空間Kに流出する二次空気の流れは、円筒らせん状の旋回流となる。この二次空気の旋回流によって、その径方向内側の開口部27の近傍の領域が負圧となる。そのため、この負圧により、二次空気は、開口部27から軸線O方向で離間するに従い、徐々に縮径される。これにより、二次空気の内側に流出する一次空気、低熱量ガス、高熱量ガスが軸線O側に集まるため、火炎の失火を更に低減することが可能となっている。ここで、この実施形態におけるスワラー39は、二次空気に旋回を与えるための翼角度が0〜45度とすることで効果的に失火を低減できる。さらに、翼角度は30度とするのがより好ましい。
【0037】
図5は、第一ガスノズル22に温度低下低減部40を装着した状態を示す斜視図である。
図5に示すように、バーナー10は、第一ガスノズル22の温度低下を低減する温度低下低減部40を備えている。この温度低下低減部40は、第一ガスノズル22の外周面41の少なくとも一部を覆っている。温度低下低減部40は、第一ガスノズル22を加熱可能な加熱器と断熱材とのうち少なくとも一方を備えている。このようにすることで、パイロライザー4から送られてくる高温の低熱量ガスに含まれるタールなどが凝縮温度以下になり凝結することを低減できる。
【0038】
この実施形態におけるバーナー10は、上述した構成を備えている。
図6は、第二ガスノズル23の入熱比(%)に対して安定燃焼すなわち、安定した着火、および、安定した保炎が可能な1次空気比を示すマップである。ここで、一次空気比とは、一次空気の全流量と、高熱量ガスの全流量との理論上の空気量の比で定義される。また、第二ガスノズル23の入熱比とは、低熱量ガスと高熱量ガスとの全流量のうち高熱量ガスがどれだけ含まれているかを示す値であって、高熱量ガスの入熱/(低熱量ガスの入熱+高熱量ガスの入熱)×100(%)で定義される。
【0039】
上記バーナー10は、第二ガスノズル23の入熱比に応じて、
図6中実線で示す下限値よりも大きい一次空気比となるように調整される。
図6中、「○」は、実験により安定燃焼(安定着火および安定保炎含む)が確認された第二ガスノズル23の入熱比に対する一次空気比を示している。また
図4中、「×」は、実験により不安定燃焼が確認された第二ガスノズル23の入熱比に対する一次空気比を示している。
【0040】
この
図6に示すように、一次空気比の下限値は、第二ガスノズル23の入熱比が減少するにつれて、その上昇率が急激に増加して一次空気の流量調整だけでは安定燃焼させることが困難となってしまう。そのため、入熱比が10%よりも大きくなるように高熱量ガスの流量を調整することが望ましいが、省エネルギーの観点から、できるだけ高熱量ガスの流量は少なくなるように調整される。
【0041】
図7は、一次空気比に対して、安定燃焼すなわち安定した着火、および、安定した保炎が可能な一次混合酸素濃度(vol%)を示すマップである。ここで、一次空気混合酸素濃度は、一次空気と不活性ガス(例えば、窒素)との全流量のうち、一次空気の酸素がどれだけ含まれているかを示す値であって、一次空気中酸素堆積流量/(一次空気流量+不活性ガス流量)×100(%)で定義される。
【0042】
パイロライザー4に不活性ガスがパージされる場合、その不活性ガスが第一ガスノズル22から流出する。この場合、上記バーナー10は、一次空気比に応じて、
図7中実線で示す下限値よりも大きい一次混合酸素濃度とすることで、安定燃焼すなわち、安定した着火、および、安定した保炎が可能となる。
図7中、「○」は、実験により安定燃焼(安定着火および安定保炎含む)が確認された一次空気比に対する一次混合酸素濃度を示している。また
図4中、「×」は、実験により不安定燃焼が確認された一次空気比に対する一次混合酸素濃度を示している。
【0043】
図7に示すように、一次混合酸素濃度の下限値は、一次空気比が「2」程度の場合に最も低くなる。そして、一次混合酸素濃度が最も低くなる値から、一次空気比が増加するにつれて、緩やかに一次混合酸素濃度の下限値が増加する。一方で、一次混合酸素濃度が最も低くなる値から一次空気比が減少するにつれて、一次混合酸素濃度の下限値は急激に増加してしまう。そのため、一次空気比が「1」よりも大きくなるように一次空気の流量が調整されることが望ましい。
【0044】
上述した一次空気比の調整、及び、一次混合酸素濃度の調整は、予め記憶されたプログラムをコンピュータに実行させることで、自動的に行うようにしても良い。
一次空気比および一次混合酸素濃度を自動的に調整する場合、例えば、流量調整弁13a〜13cを個別に駆動するアクチュエータ(図示せず)と、高熱量ガスの流量、低熱量ガスの流量、および、一次空気の流量をそれぞれ計測する流量計(図示せず)とを設ける。そして、各流量計の計測結果に基づいて、コンピュータにより第二ガスノズル23の入熱比を算出するとともに、上記マップを参照して安定燃焼が得られる一次空気比および一次混合酸素濃度を求める。さらに、求めた一次空気比となるように一次空気の流量を制御する。なお、一次空気比の調整は、自動的に制御するものに限られず、流量計の計測結果や、上記
図6、
図7に示すマップをディスプレイに表示することで、上記コンピュータによる制御処理を適宜作業者が行うようにしてもよい。
【0045】
したがって、上述した実施形態のバーナー10によれば、ディフューザ21の外側を第一方向に向かって流れる一次空気が、
図4に示すように、ディフューザ21の内周面側に渦を巻くように引き込まれ、さらに、この渦に第二ガスノズル23から供給される高熱量ガスを引き込んで、ディフューザ21内に小さい火の玉を作ることができる。そのため、一次空気と高熱量ガスとを確実に混合して、第一ガスノズル22から供給される不活性ガスの影響を低減することができる。また、第一ガスノズル22から低熱量ガスが供給された場合には、低熱量ガスをディフューザ21に引き込み、低熱量ガスを確実に燃焼させることができる。
したがって、低熱量ガス用ノズルの近傍に高熱量ガス用ノズルが配されている場合に低熱量ガス用ノズルから噴出される不活性ガスにより高熱量ガスの火炎が失火することを低減できる。
【0046】
また、第一ガスノズル22の開口端部32が接触部33を有することで、第一ガスノズル22から供給される低熱量ガスを、接触部33を介して円滑にディフューザ21に引き込ませることができる。
さらに、接触部33がディフューザ21に当接する周方向の角度範囲の合計が、90度から200度とされることで、低熱量ガスがディフューザ21へ巻き込まれる範囲を、低熱量ガスが燃焼するために最適な範囲にすることができる。
【0047】
一方で、接触部33とディフューザ21との当接する周方向の角度範囲の合計が90度を下回る場合には、低熱量ガスをディフューザ21内に適正に供給することができず、安定燃焼できない可能性がある。また、接触部33とディフューザ21との当接する周方向の角度範囲の合計が200度を上回る場合には、ディフューザ21への低熱量ガスの引き込まれる範囲が広すぎて、高熱量ガスや一次空気がディフューザ21へ引き込まれることを阻害する可能性がある。
【0048】
さらに、第二ガスノズル23の第一方向の開口端部35が、ディフューザ21の最外周部29よりも、軸線O方向における上流側に配されている場合には、第一ガスノズル22から不活性ガスが噴出されたとしても、第一ガスノズル22の開口端部32よりも上流側に配される第一ガスノズル22の開口端部32に向かって不活性ガスが向かって流れることがない。そのため、不活性ガスにより第二ガスノズル23の火炎が失火することを低減できる。
【0049】
また、保炎パッド36を備えていることで、第二ガスノズル23の開口端部35の周囲に高熱量ガスによる渦流を形成することができる。そのため、渦流に点火することによって第二ガスノズル23で発生する火炎を保炎して、ディフューザ21内の火炎が失火することを更に低減できる。
【0050】
さらに、第二外筒25を備えていることで、第一外筒20の下流側の空間を二次空気によって外側から囲むことができる。そのため、より多くの一次空気、低熱量ガス、および、高熱量ガスをディフューザ内へより確実に導くことができる。
また、スワラー39を備えていることで、二次空気の内側の空間が二次空気の旋回により負圧となるため、一次空気、低熱量ガス、および、高熱量ガスをディフューザ21内へより効率よく導くことができる。
【0051】
また、上述した実施形態における石炭改質プラント1によれば、バーナー10の火炎が失火することを低減できるため、石炭改質過程における熱分解処理を安定的に行うことができる。
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0052】
例えば、上述した実施形態においては、第一ガスノズル22と第二ガスノズル23と点火トーチ24とをそれぞれ2つずつ設ける場合を一例に説明したが、1つ以上であれば良い。
さらに、上述した実施形態のディフューザ21は、その内部空間が円錐状に形成される場合について説明したが、軸線O方向に貫通する取付用の貫通孔や、熱変形による割れを防止するために空間K側から見て径方向に延びるスリットをディフューザ21に設けるようにしても良い。
また、上述した実施形態においては、石炭改質プラント1の燃焼炉5に設けられたバーナー10を一例にして説明したが、石炭改質プラント1以外の燃焼炉に適用しても良い。