(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980203
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ネットワークベースのピアトゥピアトラフィック最適化
(51)【国際特許分類】
H04M 11/00 20060101AFI20160818BHJP
G06F 13/00 20060101ALI20160818BHJP
H04L 12/859 20130101ALI20160818BHJP
H04M 3/00 20060101ALI20160818BHJP
H04W 4/06 20090101ALI20160818BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20160818BHJP
H04W 88/14 20090101ALI20160818BHJP
H04W 88/16 20090101ALI20160818BHJP
【FI】
H04M11/00 303
G06F13/00 520C
H04L12/859
H04M3/00 B
H04W4/06 170
H04W84/10
H04W88/14
H04W88/16
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-514220(P2013-514220)
(86)(22)【出願日】2011年6月1日
(65)【公表番号】特表2013-535133(P2013-535133A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】US2011038757
(87)【国際公開番号】WO2011156190
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2013年2月7日
【審判番号】不服2015-3549(P2015-3549/J1)
【審判請求日】2015年2月25日
(31)【優先権主張番号】12/813,026
(32)【優先日】2010年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リマク,イフイカ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルト,フオルカー・フリードリヒ
【合議体】
【審判長】
菅原 道晴
【審判官】
萩原 義則
【審判官】
中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第2112788(EP,A1)
【文献】
特開2009−104377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F13/00
H04B7/24-7/26
H04L12/00-12/26
H04L12/50-12/955
H04M3/00
H04M3/16-3/20
H04M3/38-3/58
H04M7/00-7/16
H04M11/00-11/10
H04W4/00-8/24
H04W8/26-16/32
H04W24/00-28/00
H04W28/02-72/02
H04W72/04-74/02
H04W74/04-74/06
H04W74/08-84/10
H04W84/12-88/06
H04W88/08-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
報復プロトコルを使用するピアトゥピアネットワークにおける逆方向リンクの帯域幅の消費を減少させるためのシステムであって、
データネットワークと、
前記データネットワークと関連して動作するピアトゥピアネットワークと、
前記データネットワークからの順方向リンクの帯域幅が前記データネットワークへの逆方向リンクの帯域幅よりも大きい非対称接続を有するクライアントと、
前記データネットワークの中に配置されたピアトゥピアプロキシサーバとを備え、
前記ピアトゥピアプロキシサーバが前記ピアトゥピアネットワークに対してクライアントであるかのように動作し、逆方向リンクでのクライアントからピアトゥピアプロキシサーバへのファイルコンテンツの転送を要求することを回避するように、ピアトゥピアプロキシサーバが前記クライアントと前記ピアトゥピアネットワークとの間を透過的にインターフェースする専用の機能を有する、システム。
【請求項2】
前記ピアトゥピアプロキシサーバが、
非対称接続されたクライアントからブートストラップメッセージを受信するためのトラッカープロキシと、
所与の非対称接続されたクライアントを前記ピアトゥピアネットワークに示すためにピアトゥピアエージェントをインスタンス化するためのメカニズムとを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記非対称接続が有線ADSL接続である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記非対称接続がワイヤレス接続である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ワイヤレス接続がLTE接続、WiMAX接続、UMTS接続およびGSM(登録商標)接続のうちの少なくとも1つである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ピアトゥピアネットワークがBitTorrentプロトコルを使用して動作し、
前記エージェントが、BitTorrentプロトコルを使用してクライアントをエミュレートする前記ピアトゥピアネットワークにインターフェースする、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの非対称接続されたクライアントを有するデータネットワークと関連して動作するピアトゥピアネットワークにおいて逆方向リンクの帯域幅の消費を減少させるための方法であって、前記ピアトゥピアネットワークが報復プロトコルを使用し、前記データネットワークから前記クライアントへの順方向リンクの帯域幅が前記クライアントから前記データネットワークへの逆方向リンクの帯域幅よりも大きく、
前記非対称接続されたクライアントからのブートストラップメッセージをインターセプトするステップと、
前記クライアントに示すためにエージェントをインスタンス化するステップと、
エージェントがピアトゥピアネットワークに対してクライアントであるかのように前記エージェントから他のピアへの透過的なピアトゥピアのメッセージ交換を実行するステップであって、前記エージェントが、通常は非対称接続されたクライアントによって実行されるコンテンツ転送を実行する、ステップと、
前記エージェントから前記クライアントへの透過的なピアトゥピアのメッセージ交換を実行するステップであって、前記エージェントが、通常は他のピアによって実行される前記クライアントへのコンテンツ転送を実行する、ステップと、
前記クライアントの逆方向リンクでの前記クライアントから前記エージェントへのファイルコンテンツの転送を要求することを回避するステップとを備える、方法。
【請求項8】
前記非対称接続されたクライアントが有線ADSL接続によって接続される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非対称接続されたクライアントがワイヤレス接続によって接続され、ワイヤレス接続がLTE接続、WiMAX接続、UMTS接続およびGSM接続のうちの少なくとも1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ピアトゥピアのメッセージ交換がBitTorrentプロトコルに従う、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアトゥピアのデータ共有に関し、詳細には、効果的にアクセスネットワークの競合レベルを下げるだけでなく、ユーザ経験を向上させるために、非対称リンクを介してネットワークに接続されたピアトゥピアネットワーククライアントのアップリンクの使用を除外することに関する。
【背景技術】
【0002】
ピアトゥピア(P2P)コンテンツ配信ソリューション(たとえば、BitTorrentプロトコルに基づくピアトゥピアネットワークなど)は、ピアトゥピアネットワークの他の参加者にコンテンツの断片を積極的に提供するためにも、コンテンツシンクを必要とする。プロトコルの効果として、ピアが完全なファイルの独自のダウンロードを完了するためには、他の参加者からすでに受信している部分を利用可能にする必要がある。このことは、逆リンク上でのデータ伝送につながり、すなわちクライアントデバイスは他の参加者に対してサーバとして機能している。
【0003】
広く使用されているピアトゥピアオーバーレイでは、いくつかの誘因メカニズムが実装されており、これは、クライアントがダウンロードしたデータに対するアップロードしたデータの量を評価する。共有速度の低いピアは、新しい部分を取得し得る速度を絞る制裁に直面する場合があるので、それ自体のサービス品質(QoE)を維持するためにアップリンクリソースを必要とする。ピアトゥピアユーザのアップリンク共有率が低い場合(特には非対称アクセス技術の場合)、ピアの順方向リンクのパフォーマンスは、実装される往復メカニズムのために付随するオーバーレイによって低下する。
【0004】
その結果、帯域幅を求めるピアトゥピアのクライアントアプリケーションがそれ自体のピアトゥピアネットワーキングの共有速度を維持しようとすることによって、ネットワークの事業者は逆方向リンク(たとえばモバイルネットワークの中のエアリンク、またはDSLネットワークの中の加入超過の集約リンクなど)で高い競合率を経験することになる。このことは事業者にとってはOPEXがより高いということを直接意味し、すべてのユーザ体験の質(QoE)を低下させた。特に携帯電話ネットワークでは、同じデータが最初にダウンリンクで送信され、その後アップリンクで再び送信されることから、不十分な無線資源が非常に非効率的に使用されることになる。
【0005】
一連の例がこの現象を説明する。以下の考察の中で、非対称接続という用語は、順方向リンクの帯域幅が逆方向リンクの帯域幅よりも大きいデータ接続のことを指す。
【0006】
図1を参照すると、IPネットワーク102がP2Pオーバーレイネットワーク104のメンバーを接続するピアトゥピアデータ共有ネットワーク実装100が示されている。クライアント106は、P2Pの他のメンバー群108へのIPネットワーク102を介したエンドホスト112への接続110aおよび110bを有する。この実装では、接続100aおよび100bの別々の帯域幅に関して区別することはない。
【0007】
ここで
図2を参照すると、順方向リンクおよび逆方向リンク上の非対称帯域幅のクライアントリンクを有するピアトゥピアデータ共有ネットワーク実装200が示されている。動作中、IPネットワーク202およびモバイルネットワーク220は、P2Pオーバーレイネットワーク204のメンバーを接続するように動作する。クライアント216は、DSLAM214を介したIPネットワーク202へのADSL接続を有する。追加のモバイルクライアント217、218および219は、たとえばeNodeB/無線ネットワークコントローラであり得るワイヤレスインターフェース224を介して、モバイルネットワーク220へワイヤレスで接続されている。モバイルネットワーク220は、IPゲートウェイ222を介してIPネットワーク202へ接続されている。ピアトゥピアオーバーレイネットワーク204はファイル共有のために相互接続されたネットワークを使用し得るが、順方向および逆方向リンクの帯域幅は多くのクライアントにとって同じものでも、また対称的なものでもない。クライアント208は、対称の高速リンク210aおよび210bを備えたIPネットワーク202に接続し得る。一方、クライアント216は、逆方向リンクの帯域幅が非常に低いADSL接続を介してIPネットワーク202に接続される(たとえば以下の表2を参照されたい)。同様に、クライアント217、218および219もモバイルネットワーク220を介して非対称無線リンクで接続される(たとえば、以下の表1を参照されたい)。動作中、クライアント216、217、218および219は、P2P報復プロトコル(tit−for tat protocol)を介して、1に近い共有速度を有するように動作することが期待される。減少した帯域幅の逆方向リンクのために、両方のこれらのクライアントの経験、およびピアトゥピアネットワークの他のメンバーの経験は、逆方向リンクの低くなった帯域幅によって低下する。
【0008】
非対称の逆方向リンク速度を持つモバイルネットワークのいくつかの例を表1に示す。
【0009】
【表1】
【0010】
非対称の逆方向リンク速度を持つ有線ネットワーク接続のいくつかの例を表2に示す。
【0011】
【表2】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、システム事業者にとっては、逆方向リンクへの影響を軽減するために、非対称クライアント接続を有するピアトゥピアネットワークにおける往復メカニズムの動作をより効率的に管理する方法を持つことが望ましい。さらに、そのような方法にとっては、クライアント側のピアトゥピアソフトウェアを見直すことの費用、およびその複雑な事態が生じないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、ピアトゥピアネットワークが動作するデータネットワークへの非対称接続を有するピアトゥピアネットワークのクライアントのために、逆方向リンクの帯域幅の消費を減少させるためのシステムおよび方法を提供することである。
【0014】
本発明の一態様によって、ピアトゥピアネットワークにおける逆方向リンクの帯域幅の消費を減少させるためのシステムであって、前記システムがデータネットワークと、前記データネットワークに関連して動作するピアトゥピアネットワークと、前記データネットワークへの非対称接続を有するクライアントと、前記データネットワークに配置されたピアトゥピアプロキシサーバとを有し、前記ピアトゥピアプロキシサーバがクライアントとピアトゥピアネットワークとの間をインターフェースする専用の機能を有するシステムが提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、ピアトゥピアプロキシサーバは、非対称接続されたクライアントからブートストラップメッセージを受信するためのトラッカープロキシと、所与の非対称接続されたクライアントをピアトゥピアネットワークに示すためにピアトゥピアエージェントをインスタンス化するためのメカニズムとを有する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、非対称接続は、たとえばADSL接続などの有線接続である。本発明の他の実施形態では、非対称接続は、たとえばLTE接続、WiMAX接続、UMTS接続またはGSM接続などのワイヤレス接続である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、ピアトゥピアネットワークはBitTorrentプロトコル、およびBitTorrentプロトコルを使用してクライアントをエミュレートするピアトゥピアネットワークへのエージェントインターフェースを使用して動作する。
【0018】
本発明の他の態様によって、少なくとも1つの非対称接続されたクライアントを有するデータネットワークと関連して動作するピアトゥピアネットワークにおいて、逆方向リンクの帯域幅の消費を減少させるための方法が提供される。本方法は、非対称接続されたクライアントからのブートストラップメッセージをインターセプトするステップと、クライアントに示すためにエージェントをインスタンス化するステップと、エージェントから他のピアへのピアトゥピアのメッセージ交換を実行するステップであって、エージェントが、通常は非対称接続されたクライアントによって実行されるコンテンツ転送を実行する、ステップと、エージェントからクライアントへのピアトゥピアのメッセージ交換を実行するステップであって、エージェントが、通常は他のピアによって実行されるクライアントへのコンテンツ転送を実行する、ステップと、クライアントの逆方向リンクでのクライアントからエージェントへのファイルコンテンツの転送を要求することを回避するステップとを有する。
【0019】
本発明のさらに別の態様によって、データネットワークに接続された、非対称接続されたクライアントからのブートストラップメッセージをインターセプトする動作と、クライアントをデータネットワークと関連して動作するピアトゥピアネットワークに示すためにエージェントをインスタンス化する動作と、エージェントから他のピアへのピアトゥピアのメッセージ交換を実行する動作であって、エージェントが、通常は非対称接続されたクライアントによって実行されるコンテンツ転送を実行する、動作と、エージェントからクライアントへのピアトゥピアのメッセージ交換を実行する動作であって、エージェントが、通常はクライアントに対する他のピアによって実行されるコンテンツ転送を実行する、動作と、クライアントの逆方向リンクでのクライアントからエージェントへのファイルコンテンツの転送を要求することを回避する動作をプロセッサが実行できるようにするための符号化された命令を有する機械アクセス可能媒体を有する製品が提供される。
【0020】
注:以下の説明および図面では、単に本発明の原理を示している。したがって、当業者には、本明細書で明示的に説明または図示されてはいないが、本発明の原理を具体化し、その趣旨および範囲に含まれる様々な構成を考案することができるということが諒解されよう。さらに、本明細書に記載するすべての例は主に、本発明の原理、および発明者によって技術の促進に寄与される概念を理解する際に読者を助けるという教育的目的になることだけが明らかに意図されており、そのように具体的に記載した例および条件に限定されることはないものとして解釈されるべきである。さらに、本発明の具体例とともに、本発明の原理、態様および実施形態を列挙する本明細書中のすべての記述はその均等物を包含することが意図される。
【0021】
本発明は、図面を参照しながら、以下の本発明の実施形態の詳細な説明からさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】知られている技術によるオーバーレイピアトゥピアネットワークの例を示す図である。
【
図2】知られている技術による非対称クライアント接続を有するオーバーレイピアトゥピアネットワークの例を示す図である。
【
図3】知られている技術による
図2のネットワークの中でピアトゥピアプロトコルを操作するクライアントのためのメッセージフローダイアグラム例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態と関連するオーバーレイピアトゥピアネットワークの例を示す図である。
【
図5】
図4のネットワークの中でピアトゥピアプロトコルを操作するクライアントのためのメッセージフローダイアグラム例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図3を参照すると、
図2のP2Pオーバーレイネットワーク204に参加するクライアントを表すメッセージフローダイアグラム300が示されている。メッセージフローダイアグラムには、ピアトゥピアクライアント306、発信元トラッカー350およびその他のピアトゥピアクライアント群308が示されている。群に参加する際、クライアント306は発信元トラッカー350にブートストラップメッセージ352を送信する。発信元トラッカー350は、その参加しているピアのリストにクライアント306を追加し、クライアント306が求めているコンテンツのためにアクセスされ得るピアをリストアップしたピアリストメッセージ354でメッセージ352に応答する。他のメンバー群のアドレスを持つと、次いでクライアント306は、所望のコンテンツの関連部分をクライアント306へ、またクライアント306から、構成されたピアトゥピア群の他のメンバーへ伝える通常のメッセージ交換のピアトゥピアプロトコル(356a
1および358a
1;356a
2および358a
2;...;356a
nおよび358a
n)に従事する。さらに、他のピアはそれらの発信元トラッカー350とのメッセージ交換に応じてクライアント306のアドレスを受信してもよく、それによってそれらのピアはクライアント306とのメッセージ交換を開始することができる。その場合、メッセージフローは逆になる。前述のように、クライアント306は、メッセージ交換356を介して受信されたコンテンツと、メッセージ交換358を介して他のメンバー群に送信されたコンテンツとの割合によって確立された共有速度を有する。クライアント306が非対称接続を介してネットワークに接続される場合、メッセージ交換358のために利用可能な帯域幅はメッセージ交換356よりも大幅に少なくなる。したがって、クライアント306は減少した共有速度による被害を受けなければならないか、またはクライアント306および他のメンバー群は、1に近い共有速度を生成するために、長くなった送信時間による害を被らなければならない。
【0024】
ここで
図4を参照すると、順方向および逆方向リンク上の非対称帯域幅のクライアントリンクを有する本発明の実施形態によるピアトゥピアのデータ共有ネットワーク実装400が示されている。動作中、IPネットワーク402およびモバイルネットワーク420は、P2Pオーバーレイネットワーク404のメンバーを接続するために動作する。クライアント416は、DSLAM414を介したIPネットワーク402へのADSL接続を有する。追加のモバイルクライアント417、418および419は、たとえばeノードB/無線ネットワークコントローラであり得るワイヤレスインターフェース424を介してモバイルネットワーク420にワイヤレスで接続される。モバイルネットワーク420は、IPゲートウェイ422を介してIPネットワーク402に接続される。さらに、ピアトゥピアプロキシ430は、DSLAM414およびIPゲートウェイ422に動作可能に接続され、P2Pクライアント408、416、417、418および419の間のピアトゥピアプロトコルメッセージングと交信し、非対称のネットワーク接続を備えたこれらのクライアントのために減少した逆リンク帯域幅の効果を克服する。
【0025】
動作中、たとえばクライアント416、417、418および419のうちのいずれかからの非対称ピアトゥピアクライアントのブートストラップメッセージは、事業者のIPコアの中で実装されるピアトゥピアプロキシ430によって透過的にインターセプトされる。プロキシ430は非対称クライアントのためのエージェントをインスタンス化し、ブートストラップ要求に対してエージェントのIDおよびアドレスで応答する。エージェントは通常のピアトゥピア参加およびメッセージ交換プロシージャを実行し、すなわち最初に接続するピアのリストを要求するために発信元ブートストラップサーバ(トラッカー)と接触する。他のピアとの実際の交換のために、エージェントはまたコンテンツを記述するメタ情報も必要とする。例として、BitTorrentでは、メタ情報は通常、クライアントがウェブサイトからダウンロードした.torrentファイルの中で搬送される。1つまたは複数のトラッカーのURLの他に、メタファイルはチャンクのサイズおよびチャンクのハッシュなどの重要な情報を含む。
【0026】
異なる実施形態によれば、エージェントがメタ情報を取得するための異なる方法がある。1つの方法によれば、エージェントはインスタンス化される場合、クライアントまたは他のピアからメタ情報をフェッチするために、いくつかのBitTorrentクライアントによってサポートされるメタ交換オプションを使用する。
【0027】
代替方法によれば、エージェントはインスタンス化される場合、コンテンツのためのマグネットリンクを生成し、分散ハッシュテーブルを使用してローカルクライアントまたはローカルクライアントが接続された他のピアからメタ情報を取り出すためにマグネットリンクを使用する。
【0028】
さらに別の方法によれば、ピアトゥピアオプティマイザ/マネージャが機能するように構成されたメタファイルは、ファイルシステムまたはデータベースにオフラインでプレロードされてもよい。インスタンス化されたエージェントは、インスタンス生成時にこの情報にアクセスすることができる。
【0029】
さらに別の方法によれば、エージェントはプロキシによってインスタンス化される場合、インターネット上で関連するメタファイルを検索するために発信元のファイル識別子を使用する。
【0030】
一旦リストが利用可能になると、エージェントは与えられたピアに接続し、それが発信元のクライアントであったかのように、ピアトゥピアコンテンツ交換プロトコルを使用して(たとえばBitTorrentプロトコルを使用して)それらとデータを交換する。プロキシ430がネットワーク内に配置される場合、逆方向リンクの帯域幅減少の効果は存在しない。同時に、エージェントはまた本来の非対称クライアントとのメッセージ交換も実行し、非対称クライアントにデータをアップロードするが、非対称クライアントから(すなわち逆方向リンク上で)コンテンツの一部を要求することはない。
【0031】
最終的な結果は、他のメンバー群が非対称クライアントの逆方向リンクの帯域幅によって絞られる低帯域幅の転送を経験することはないということであり、さらに重要なことは、すべての非対称クライアントの限られた逆方向リンクの帯域幅に対する需要が最小化されるということである。前者は他のピア群のために経験の質の向上をもたらし、後者は、非対称クライアント、および非対称クライアントにサービスを提供する事業者のために経験の質の向上をもたらす。
【0032】
図5を参照すると、
図4のP2Pオーバーレイネットワーク404に参加するクライアントを表すメッセージフローダイアグラム500が示されている。メッセージフローダイアグラムにはピアトゥピアクライアント506、発信元トラッカー550および他のピアトゥピアクライアント群508が示されている。さらには、トラッカープロキシ562とピアトゥピアエージェント564とを有するピアトゥピアアクセラレータプロキシ560が示されている。群に参加すると、クライアント506はトラッカープロキシ562によってインターセプトされるか、または代替的にトラッカープロキシ562に向けられるブートストラップメッセージ552aを送信する。トラッカープロキシ562は、適切なメッセージ転送情報552bとともにピアトゥピアエージェント564をインスタンス化し、エージェント564は変更されたブートストラップ要求552cを発信元トラッカー550に転送する。発信元トラッカー550は、クライアント506が求めるコンテンツのためにアクセスされ得るピアをリストアップするピアリストメッセージ554aで応答する。エージェント564はメッセージ544aを受信し、メッセージ交換554bを介して情報をプロキシ562に登録する。プロキシ562は次いで、メッセージ交換554cを介して変更されたピアリストをクライアント506に転送する。
【0033】
この時点で、エージェント564は与えられたピアに接続し、それが元のクライアント506であったかのようにメッセージ交換に従って(558
1および559
1、...558
nおよび559
n)、ピアトゥピアコンテンツ交換プロトコルを使用して(たとえばBitTorrentプロトコルを使用して)それらとデータを交換する。同時に、エージェント564は、他のピア群から受信された所望のコンテンツの関連する部分を搬送するクライアント506との一連のメッセージ交換(556
1および557
1、...556
mおよび557
m)を実行する。この動作の間、エージェント564はクライアント506からコンテンツ部分を要求することを控え、逆方向リンクのコンテンツ部分の転送を回避する。
【0034】
ファイル共有セッションの最後に、すなわちクライアント506が群を離れる場合、エージェント560もまた群を離れる。
【0035】
したがって、示してきたものは、ピアトゥピアオーバーレイネットワークの中の非対称接続されたクライアントにおける逆方向またはアップリンクの使用率を最小化するための方法およびシステムである。これはADSLなどの非対称接続を備えた有線ネットワーク、または順方向リンクよりも少ない帯域幅の逆方向エアリンクを有するワイヤレスネットワークを含む。
【0036】
説明した方法およびシステムの利点は、群の他のメンバーのためのダウンロード速度を改善することとともに、これらのピアがボトルネックになっている逆方向リンクによって挟まれるデータを受信していないことから、経験の質が同時に改善されることである。同様に、事業者は、ワイヤレスリンクで逆方向リンクの帯域幅の競合が改善されたこと、および有線ネットワークで加入超過の集約リンクの競合が減少したことに気付くであろう。さらに、バッテリ電源でそれ自体のデータ機器を操作するモバイルワイヤレスクライアントは、アップリンクデータの量が減少したことによってバッテリの消耗が減少したこと、およびダウンロード時間が短くなったことに気付くであろう。
【0037】
本発明は、それらの方法を実践するための方法および装置の形態で具現化され得る。本発明はまた、磁気記憶媒体、光記憶媒体、ソリッドステートメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、ハードドライブまたは任意のその他の機械可読記憶媒体などの有形の媒体において具現化されたプログラムコードの形態で具現化され得、ここでプログラムコードがコンピュータなどの機械にロードされ、機械によって実行される場合、この機械は本発明を実践するための装置となる。本発明はまた、たとえば記憶媒体に記憶されるか、または機械によってロードおよび/または実行されるプログラムコードの形態で具現化され得、ここでプログラムコードがコンピュータなどの機械によってロードおよび実行される場合、この機械は本発明を実践するための装置となる。汎用プロセッサ上で実装される場合、プログラムコードのセグメントは、特定の論理回路と同様に動作する固有のデバイスを提供するためにプロセッサと結合する。
【0038】
さらに、本発明の性質を説明するために記載および図示されてきた細部、材料および部品の構成における様々な変更は、以下の特許請求の範囲で表された本発明の範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得ることが理解されよう。
【0039】
本明細書に記載の例示的方法のステップは、必ずしも記載の順序で実行される必要はないことが理解されるべきであり、そのような方法のステップの順序は単に例示的なものとして理解されるべきである。同様に、そのような方法の中に追加のステップが含まれてもよく、いくつかのステップは、本発明の様々な実施形態と合致する方法の中で省略または結合されてもよい。
【0040】
以下の方法請求項の中の要素は、もしあれば、対応するラベルを備えた特定の順序の中で列挙されているが、請求項の記載がそれらの要素のうちのいくつかまたはすべてを実装するための特定の順序を別途指示しない限り、それらの要素は必ずしも、その特定の順序の中で実施されることに限定されることはない。
【0041】
本明細書での「一実施形態」または「1つの実施形態」という言及は、実施形態に関連して説明される特定の機能、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態の中に含まれ得るということを意味する。明細書の様々な箇所で現れている「一実施形態において」という語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではなく、また別個の、または代替の実施形態は、必ずしも他の実施形態を除く相互に排他的なものではない。同じことは、「実施」という用語にも当てはまる。特許請求の範囲の中で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上述の本発明の実施形態に対して様々な修正、変更および改造がなされ得る。