(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオール成分のOH基及び前記イソシアネート成分のイソシアネート基を、1:0.9〜1:1.5の当量比で使用することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、当該組成物の製造方法、当該組成物の被覆剤としての使用、当該組成物を含有する多層被膜、当該多層被膜の製造方法、及び当該多層被膜の使用に関する。本発明はさらに、前記組成物又は前記多層被膜で被覆されている基材に関する。
【0002】
従来技術
耐蝕性表面は、対応する利点の特別な機能のために、ますます必要とされている。ここでその例として挙げられるのは、周辺条件に関しては、高速と同時に、腐蝕性物質(例えば固体又は液体)による負荷にさらされる表面である。腐蝕性負荷を被るのは基本的に、それ自体が動く物体、例えば回転翼(風力エネルギープラントの回転翼、又はヘリコプターのプロペラ若しくは船舶のスクリュー)、航空機及び地上用車両(例えば飛行機、軌道車両、乗用車)、及び船舶である。その一方、その周囲で、又はそれによって運動を起こす物体が考慮される(例えば、建築物(例えばファサード要素、電波塔、又は風力エネルギープラント塔、又は送信塔)、又はパイプライン)。
【0003】
腐食は基本的に、それ自体で、又は他の気体状若しくは液体状媒体(例えば空気又は水)中に分散及び/又は溶解されて存在する液体若しくは固体の物質によって、及びこれらの媒体を通過して動くことによって(例えば浮遊砂塵、雨)引き起こされ得る。物体にぶつかった際には、この物体に腐食力がかかる。この例は、回転翼での、又は飛行機の前翼領域における、雨又は浮遊砂塵による腐食である。
【0004】
一般的には耐摩耗性(例えば被覆の耐腐食性)を、以下のような基本的に異なる措置によって制御することができる。
【0005】
例えば、被覆の層厚を増加させることができる。しかしながらこれは重量的な理由から、多くの適用において(例えば航空機構造、又は風力エネルギープラントの回転翼構造)追求する価値がない。
【0006】
さらに、芳香族樹脂成分を有する樹脂、例えばエポキシ樹脂を、被覆剤中で用いることができる。芳香族分子成分が原因で、生じる被覆には高い耐摩耗性が得られるが、紫外線耐性が明らかに限定されてしまう。
【0007】
さらに、樹脂を含有する被覆剤を使用することができ、当該樹脂は、光又は温度により誘導されて高い架橋密度を得ることができる。例えばUV樹脂(ラジカル性又はイオン性重合によるもの)、又は特定の高反応性重付加樹脂を用いることができる。これらの結合剤類によって、同様に耐摩耗性を改善することができるが、しかしながら大きな構造物(例えば回転翼若しくは飛行機部材)で用いる際には、制限要因がある。そのため、UV樹脂製の配合物の場合、顔料の選択が制限される。と言うのもこうした配合物は、硬化波長で吸収極大値を有することができ、その層厚は顔料化レベルに依存して制限されているからである。さらに、UV開始剤の酸素阻害という装置技術的な挑戦が生じる。温度誘導性塗料(例えばポリウレタンベースの焼き付け塗料)を用いる際には特に、大きな部材の場合の装置寸法との関連で、焼き付け温度の点でこの制限が存在する。
【0008】
今日、回転翼構造又は航空機構造で使用される被覆は、将来的な挑戦のための耐腐食性をもたらさない(例えば、風力エネルギープラントの回転翼において、特に風の多い立地(沖合)で、又は航空機構造において(同じ若しくはよりよい性能での重量減少))。従って、耐腐蝕性の点で明らかな改善がもたらされ、これにより高コストのメンテナンスインターバルと修理インターバルが最小化される被覆に対する要求を満たすことが重要になる。
【0009】
Hontek Corporation社の国際出願WO 2006/055038A1からは、耐腐蝕性のポリウレタン被覆が公知であり、これはイソシアネートプレポリマーから、ポリアスパラテートとの関連で製造されるものである。この被覆によっては、腐食保護の持続期間についての要求が充分に満たされない。さらにこの材料は、湿分が低すぎる場合、その硬化において問題が生じ得る。
【0010】
腐食保護性被覆としての被覆の他にはまた、腐食保護剤としてのシートも公知である。これは例えば、接着剤としてアクリレートが備えられているポリウレタンエラストマーフィルムである。しかしながらこうしたシートは、特に比較的大きい、又は幾重にも屈曲した部材の場合(例えば飛行機部材若しくは風力エネルギープラントの回転翼部材)、加工するのが困難である。このような部材では、シートを均一に備え付けることができない。同様にシートの接着剤はしばしば、被覆に比べて、充分な接着性を有さない。このことは、腐食安定性の減少につながりかねない。
【0011】
課題
従って本発明は、従来技術が有する上述の欠点を取り除くという課題に基づく。腐食保護性被覆として、従来技術の腐食保護被覆よりも明らかに改善された腐食安定性を有する組成物が提供されるべきであった。
【0012】
先に既に述べた適用領域のために被覆材料の腐食強度を追求する以外に、前記組成物は、一般的な天候による影響(例えば紫外線、湿分など)に対して良好な耐性を有するべきであった。さらにこの被覆は、作動液(例えばギアオイル)に対して耐性があるべきであった。同様にこの被覆剤は、容易に製造可能であり、また大きな部材の場合(例えば風力エネルギープラントの回転翼又は航空機)でも、容易に加工可能であるべきであった。
【0013】
課題の解決
意外なことに、従来技術の欠点を有さない組成物が判明した。特に、被覆中で腐食安定性が高い組成物が判明した。これによれば、以下のa及びbを含有する組成物が判明したのである:
a)ポリオール成分の全質量に対してヒドロキシル基含分が9〜15質量%のポリオール成分少なくとも1種、ここで当該ポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリエステルポリオールから成る群から選択されるポリオールを少なくとも1種含有するものであり、
b)イソシアネート成分の全質量に対してイソシアネート基含分が10〜15質量%のイソシアネート成分少なくとも1種、ここで当該イソシアネート成分は、ジイソシアネート末端若しくはポリイソシアネート末端のポリラクトンプレポリマーを少なくとも1種含有するものである。
【0014】
ポリオール成分のOH基、及びイソシアネート成分のイソシアネート基は、好適には1:0.9〜1:1.5の当量比で使用する。この当量比は好ましくは、1:0.95〜1:1.3である。ポリオール成分のOH基は、イソシアネート成分のイソシアネート基に対して、過剰で存在しないのが特に好ましい。極めて特に好ましい比率は、1:1〜1:1.2であり、特に1:1である。
【0015】
本発明のさらに好ましい態様は、従属請求項に記載される。
【0016】
この組成物中には、更なる結合剤、顔料、溶剤、分子ふるい、充填材、着色剤、触媒、並びに添加剤と助剤が含まれていてよい。これらは、ポリオール成分及びイソシアネート成分の構成要素とは異なる。これらはポリオール成分とも、またイソシアネート成分とも混合可能だが、ポリオール成分と混合できるのが好ましい。
【0017】
ポリオール成分
ポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリエステルポリオールから成る群から選択されるポリオール成分を少なくとも1種含有する。ポリエーテルポリエステルポリオールとは、ポリエステル構造とポリエーテル構造とをともに有するポリオールである。ポリオールは好ましくは、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択される。特に好ましくは、ポリエーテルとポリエステルとの混合物を使用する。
【0018】
適切なポリエーテルポリオールは例えば、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンである。
【0019】
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリエステルポリオールは、二量体脂肪酸を含有することができる。これらのポリオールは例えば、二量体脂肪酸を多価アルコールでエステル化し、引き続き重合することによって製造できる。これらの縮合反応の開始剤としては、アミン、例えば3,5−ジエチル−2,4−トルオールジアミン、又は3,5−ジエチル−2,6−トルオールジアミンを使用することができる。所望のOH含分では、反応が中止される。さらに、二量体脂肪酸を含有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリエステルポリオールは、二量体脂肪酸のエポキシ化によって、引き続き多価アルコール及び/又はカルボン酸との反応によって、そして続いて重合させることにより得ることができる(Stoye / Freitag: Lackharze, Carl Hansa Verlag Muenchen und Wien 1996, ISBN 3-446-17475-3, p 204-210、及びp 377-383)。
【0020】
適切な二量体脂肪酸は例えば、天然油、例えば大豆油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、及びパーム油に由来するものである。
【0021】
ポリオール成分はさらに、別のポリオール、例えばポリラクトン、ポリアクリレート、及び/又はポリエポキシドを含有することができる。
【0022】
ポリオール成分は好適には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリエステルポリオールから成る群から選択されるポリオール成分を、ポリオール成分の全質量に対して少なくとも50質量%含有する。好ましい割合は80質量%、特に好ましくは90質量%、極めて特に好ましくは100質量%である。
【0023】
ポリオール成分のポリオールは、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。ポリオールは好適には、分枝鎖状である。さらに、ポリオール成分のポリオールは、飽和又は不飽和であり、このうち飽和ポリオールが好ましい。
【0024】
ポリオール成分の割合は、組成物の全質量に対して、好適には5〜30質量%、好ましくは15〜25質量%である。本発明による組成物の全成分の合計は、100質量%である。
【0025】
ポリオール成分は好適には、ポリオール成分の全質量に対して10〜12質量%の割合で、OH基を含有する。
【0026】
ポリオール成分は好適には、固体に対して酸価が0〜3mg/KOHgである。この酸価は、ISO 660によって測定する。
【0027】
ポリオール成分のヒドロキシ含分は、ポリオール成分の全質量に対して、好適には9〜13質量%である。ヒドロキシ含分は、ヒドロキシ価により特定できる。このヒドロキシ価は、DIN 53240によって測定する。
【0028】
ポリオール成分は好適には、固体含分が95〜100質量%である。組成物及びその構成成分の固体含分は、DIN ISO 3251に従い、1.0gの秤量で、試験時間60分、温度125℃で実施する。
【0029】
ポリオール成分の各ポリオールは、質量平均分子量が、160〜4000g/mol、好適には160〜2000g/molである。
【0030】
ポリオール成分は好適には、質量平均分子量が、160〜800g/molである。質量平均分子量は好ましくは、180〜600g/mol、特に好ましくは200〜500g/molである。
【0031】
記載した全ての化合物の分子量の測定は、特に記載しない限り、THF(+THF質量に対して0.1質量%の酢酸)を溶離液(1mL/分)として用いたGPC分析で、スチレン−ジビニルベンゼンカラムの組み合わせで行う。較正は、ポリスチレン標準を用いて行う。
【0032】
イソシアネート成分
イソシアネート成分は、ジイソシアネート末端又はポリイソシアネート末端のポリラクトンプレポリマーを、少なくとも1種含有する。これは、前記プレポリマーが少なくとも1つのジイソシアネート又は少なくとも1つのポリイソシアネートで末端化されていることと理解されるべきである。好適にはプレポリマーは、ジイソシアネート末端である。末端のNCO基は、完全に若しくは部分的にブロックされているか、又は全くブロックされていなくてもよい。前記NCO基は、好適にはブロックされていない。
【0033】
ブロックされたイソシアネート化合物はイソシアネートから、ブロック化剤との反応によって得ることができる。イソシアネートのためのブロック化剤として考慮されるのは、通常使用されるあらゆるブロック化剤、例えば相応するアルコール、アミン、ケトン、ピラゾールなどが考慮され、好ましいのは、脱ブロック化温度が60℃未満のブロック化剤である。
【0034】
プレポリマーは質量平均分子量が500〜4000g/mol、好ましくは1000〜3000g/mol、特に好ましくは1800〜2200g/molである。このプレポリマーは、出発分子としてのラクトンと、少なくとも1種のジオール又はポリオールから製造できる。好ましいのは、ジオール、特にOH基末端のジオールである。適切なジオール又はポリオールは、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、及びトリメチロールプロパンである。適切なラクトンは、オキシラン−2−オン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、又はメチル−ε−カプロラクトンであり、好適にはγ−ブチロラクトン及びε−カプロラクトンであり、好ましくはε−カプロラクトンである。これによればポリブチロラクトン及びポリカプロラクトンのプレポリマーが、好ましいポリラクトンのプレポリマーである。極めて特に好ましいのは、ポリカプロラクトンのプレポリマーである。
【0035】
プレポリマーは、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。好適にはプレポリマーは、直鎖状である。さらにプレポリマーは、飽和又は不飽和であってよく、このうち飽和プレポリマーが好ましい。
【0036】
プレポリマーは20℃、1013hPaで、好適には液状である。
【0037】
ジイソシアネート末端又はポリイソシアネート末端のポリラクトンプレポリマーの割合は、イソシアネート成分の全質量に対して少なくとも50質量%である。好ましくは、この割合は50〜99質量%、特に好ましくは70〜90質量%である。
【0038】
好適にはポリラクトンプレポリマーは質量平均分子量が、500〜4000g/molである。質量平均分子量は好ましくは、1000〜3000g/mol、特に好ましくは1250〜2500g/molである。
【0039】
プレポリマー中のNCO基の割合は、プレポリマーの全質量に対して、好適には6〜12質量%である。好ましくはこの割合は、7〜10質量%、特に好ましくは8〜9質量%である。
【0040】
イソシアネート成分はさらに、プレポリマーとは異なる別のイソシアネート化合物を少なくとも1種含有することができる。この化合物のイソシアネート基は、完全に若しくは部分的にブロックされているか、又は全くブロックされていなくてもよい。前記イソシアネート基は、好適にはブロックされていない。
【0041】
さらなるイソシアネート化合物としては、塗料工業の分野で一般的に用いられる芳香族及び脂肪族のイソシアネート化合物が考慮される。好適には、ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物を用いる。好ましいのは、脂肪族のジイソシアネート又はポリイソシアネートである。特に好ましいのは、脂肪族のジイソシアネートである。
【0042】
さらなるイソシアネート化合物のNCO基含分は、さらなるイソシアネート化合物の全質量に対して、好ましくは15〜30質量%である。好ましくはこの割合は、20〜25質量%である。
【0043】
芳香族イソシアネート化合物としてあり得るのは例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、及び2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、又はこれらのオリゴマーであり、このうち前記オリゴマーが好ましい。
【0044】
適切な脂肪族ジイソシアネートは例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,3−シクロヘキシルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(H(12)MDI)、2,2,4−及び/又は2,4,4−トリメチル1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−3−イソシアナト−メチルシクロヘキサン(IPDI)、又はこれらのオリゴマーであり、このうち前記オリゴマーが好ましい。
【0045】
オリゴマーには、イソシアヌレート及び/又はウレトジオンが含まれる。
【0046】
イソシアネートプレポリマーはさらに、別のイソシアネート化合物として使用することができる。これらは上述の芳香族及び脂肪族イソシアネート化合物又はそのオリゴマーと、OH基、NH基、又はSH基を含有する樹脂との反応から得ることができる。イソシアネートポリマーは好適には、遊離したOH基、NH基、又はSH基が、イソシアネートポリマーの全質量に対して、0.1質量%未満である。イソシアネートポリマー特に好ましくは、遊離したOH基、NH基、又はSH基を含有しない。
【0047】
さらなるイソシアネート化合物は好適にはその含分が、イソシアネート成分の全質量に対して1〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。
【0048】
イソシアネート成分は好適にはイソシアネート基を、イソシアネート成分の全質量に対して10〜13質量%の含量で含有する。
【0049】
本発明による組成物中のイソシアネート成分の割合は、組成物の全質量に対して、好適には最大70質量%である。好ましくは40〜63質量%、特に好ましくは47〜60質量%である。極めて特に好ましくは、その割合が47〜53質量%である。
【0050】
極めて好ましい本発明による組成物はポリオール成分として、ポリエーテルとポリエステルとの混合物を含有し、ここでポリオール成分の割合は、組成物の全質量に対して15〜25質量%である。ポリオール成分は、ポリオール成分の全質量に対して10〜12質量%の割合で、OH基を含有する。極めて好ましい組成物のイソシアネート成分としては、ジイソシアネート末端のポリカプロラクトンプレポリマーと、別のイソシアネート化合物との混合物を使用し、ここでジイソシアネート末端のポリカプロラクトンプレポリマーの割合は、イソシアネート成分の全質量に対して70〜90質量%であり、イソシアネート成分の割合は、組成物の全質量に対して47〜53質量%である。イソシアネート成分はイソシアネート基を、イソシアネート成分の全質量に対して10〜13質量%の割合で含有する。
【0051】
さらなる結合剤
本発明による組成物は、官能基を有するさらなる結合剤を、また結合剤の官能基に対して相補性の官能性を有する架橋剤少なくとも1種を含有することができる。このような相補的官能性の例は、特に(カルボキシ/エポキシ)、(アミン又はチオール/アルコキシ化されたアミノ基又はエステル交換可能な基)、((メタ)アクリアクリロイル/CH酸、又はアミン又はチオール)、(カルバメート/アルコキシ化されたアミノ基)、及び((メタ)アクリロイル/(メタ)アクリロイル)である。
【0052】
さらに、結合剤はエチレン性不飽和二重結合を有していてよい。これらの結合剤は例えば、アクリレートポリマー、スチレンポリマー、又はポリウレタンポリマー中に含まれていてよい。
【0053】
加えて、アルコキシシラン基含有ポリマーが、さらなる結合剤として含まれていてよい。好適なのは、エポキシ変性又はアミノ変性されたアルコキシシラン含有ポリマーである。これらのポリマーは特に好ましくは、ジアルコキシシラン基及び/又はトリアルコキシシラン基を含有する。
【0054】
さらなる結合剤は好ましくは、エチレン性不飽和二重結合を有する。
【0055】
架橋剤、例えばアミノプラスト樹脂又はトリス(アルコキシカルボニルアミノ)−1,3,5−トリアジン(TACT)が、組成物中に含まれていないのが好ましい。
【0056】
さらなる結合剤は、組成物の全質量に対して、5〜30質量%の割合で、本発明による組成物中に含有されていてよい。
【0057】
顔料
本発明による組成物は、顔料を含有することができる。この組成物は好適には、少なくとも1種の顔料を、組成物の全質量に対して2〜20質量%含有する。好ましいのは、顔料を5〜10質量%含有する組成物である。
【0058】
顔料とは、粉末状又はフレーク状の着色剤であり、これらは染料とは異なり周辺媒体に不溶性である(Roempp Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag Stuttgart / New York 1998, p451, "Pigmente"の項目参照)。
【0059】
この顔料は好適には、有機及び無機の、着色性、効果付与性、着色性かつ効果付与性、磁力遮断性、導電性、腐食保護性、蛍光性、及びリン光性の顔料からなる群から選択される。好ましくは、着色性かつ/又は効果付与性の顔料を用いる。
【0060】
溶剤
組成物は溶剤として、水又は有機溶剤を含有することができる。溶剤は組成物の全質量に対して、好適には最大5質量%、好ましくは最大2質量%含まれている。溶剤不含の組成物が、特に好ましい。
【0061】
分子ふるい
本発明による組成物は、1つ又は複数の分子ふるいを有することができる。分子ふるいとは、天然又は合成のゼオライトに対する呼称である。これらは、内部表面積が比較的大きく(約600〜700m
2/g)、均一な細孔直径を有する。これによって、比較的強度の吸着能力が得られる。組成物は好適には、少なくとも1種の分子ふるいを、組成物の全質量に対して、1〜10質量%含有する。
【0062】
適切な分子ふるいは、孔径が2〜10Å、好適には3〜4Åである。例えば、孔径が3Åの高多孔性ケイ酸アルミニウムを使用することができる。
【0063】
充填剤
本発明による組成物は、有機及び無機の充填剤を含有することができる。適切な充填剤は例えば、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、及び二酸化ケイ素である。好ましい充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、及び二酸化ケイ素である。
【0064】
この組成物は好適には、少なくとも1種の充填剤を、組成物の全質量に対して20〜50質量%含有する。
【0065】
染料
本発明による組成物は、染料を含有することができる。染料とは、周辺媒体に溶解性の、黒色又は様々な色の有機物質である(Roempp Lacke und Druckfarben, p221, "Farbmittel"の項目参照)。この組成物は好適には、少なくとも1種の染料を、組成物の全質量に対して0.1〜1.0質量%含有する。
【0066】
触媒
本発明による組成物は、ヒドロキシ基とイソシアネート基とを反応させるための触媒を含有することができる。この組成物は好適には、少なくとも1種の触媒を、組成物の全質量に対して0.05〜2質量%含有する。本発明による組成物は好ましくは、少なくとも1種の触媒を、それぞれ組成物の全質量に対して0.1〜1質量%含有する。
【0067】
適切な触媒は、金属触媒、例えばスズ、モリブデン、ジルコン、又は亜鉛の触媒であり、またアミン触媒、例えば2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールである。
【0068】
助剤と添加剤
本発明による組成物は、上記物質とは異なる助剤及び添加剤を含有することができる。この組成物は好適には、少なくとも1種の助剤又は添加剤を、組成物の全質量に対して2〜5質量%含有する。
【0069】
適切な助剤又は添加剤は、塗料工業で通常用いられる、公知の助剤及び添加剤である。
【0070】
適切な助剤及び添加剤の例は、通常の助剤及び添加剤、例えば酸化防止剤、脱泡剤、濡れ助剤、分散剤、乳化剤、レオロジー助剤、例えば均展剤、粘稠剤、流出防止剤(Antiablaufmittel)、及びチキソトロープ剤、ワックスとワックス状化合物、スリップ助剤、反応性希釈剤、流動助剤、乾燥剤、殺菌剤、下地濡れ改善添加剤、表面光沢改善添加剤、つや消し剤、ラジカル補足剤、光保護剤、好適には吸収極大値が370nm未満の紫外線吸収剤及び/又は立体障害性アミン(HALS)、腐食防止剤、難燃剤、又は重合阻害剤であり、これらは例えば"Lackadditive", Johan Bielemann, Wiley-VCH, Weinheim, New York, 1998に詳細に記載されている。 好ましい助剤及び添加剤は、レオロジー助剤、脱泡剤、濡れ助剤、分散剤、紫外線吸収剤、及びラジカル補足剤である。特に好ましい助剤及び添加剤は、紫外線吸収剤、濡れ助剤、並びにレオロジー助剤である。
【0071】
助剤及び添加剤を添加することによって、本発明による腐食保護性被覆の被覆は、表面効果、例えば耐汚染性、及び植物繁茂の低減(Bewuchsverminderung)、空気力学上の改善(流体的に有利な表面、例えばリブ(Riblet))、又は清掃が容易であるという特性を備えることができる。
【0072】
本発明のさらなる対象
本発明による組成物は好適には、本発明による組成物を製造するための本発明による方法に従って製造する。
【0073】
よって、本発明による組成物の製造方法は、本発明のさらなる対象である。ここでこの組成物は、少なくとも1種のポリオール成分と、少なくとも1種のイソシアネート成分とを混合し、任意で均質化することによって製造できる。この組成物は好適には、前述の混合比で相互に混合し、任意で均質化する。
【0074】
本発明のさらなる対象は、前記組成物の被覆剤としての使用である。好適にはこの組成物を、腐食保護性の被覆剤として用いる。この被覆剤は好適には、多層被膜における腐食保護層を製造するために使用する。
【0075】
本発明による組成物は、Original Equipment Manufacturer(OEM)塗料として、又は修理用塗料として用いることができる。
【0076】
本発明のさらなる対象は、本発明による組成物の被膜を少なくとも1つ有する、多層被膜である。この多層被膜は好適には、さらに少なくとも1種のベースコートを有する。
【0077】
本発明による組成物被膜は、本発明による多層被膜において、それ自体で表面被覆(最も外側にある被膜)として機能することができる。本発明による組成物の被膜はさらに、少なくとも1種の別の塗料(以下、表面塗料と呼ぶ)でさらに塗装されていてよく、ここではさらなる塗料の被膜が、表面被覆として機能する。
【0078】
表面塗料としては、通常使用される、溶剤含有被覆剤又は水性顔料で着色された被覆剤がすべて適している。使用される表面塗料は、熱により、及び/又は照射線により、特に赤外線によって硬化可能である。
【0079】
表面塗料は通常、官能基を有する結合剤を少なくとも1種、また結合剤の官能基に対して相補的な官能性を有する架橋剤を少なくとも1種、含有する。このような相補的官能性の例は、特に(カルボキシ/エポキシ)、(アミン又はチオール又はヒドロキシ/ブロックされた又は遊離のイソシアネート、又はアルコキシ化されたアミノ基又はエステル交換可能な基)、((メタ)アクリアクリロイル/CH酸、又はアミン又はヒドロキシ又はチオール)、(カルバメート/アルコキシ化されたアミノ基)、及び((メタ)アクリロイル/(メタ)アクリロイル)である。
【0080】
ポリウレタン樹脂及び/又はポリアクリレート樹脂及び/又はポリエステル樹脂がベースの表面塗料が特に使用され、好ましいのは、ヒドロキシ基、アミノ基、カルバメート基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、及び/又はチオール基を、相応する架橋剤との組み合わせで、特にイソシアネートとの組み合わせで有するものである。
【0081】
結合剤及び架橋剤の他に、表面塗料は通常の助剤及び添加剤を含有し、それは例えば架橋用触媒、脱泡剤、接着性改善剤、下地濡れ改善添加剤、レオロジー助剤、ワックス、均展剤、光保護剤であり、好適には吸収極大値が370nm未満である前述の紫外線吸収剤、及び/又はHALS、腐食防止剤、殺菌剤、難燃剤、又は重合阻害剤であり、これらは例えば、"Lackadditive", Johan Bielemann, Wiley-VCH, Weinheim, New York, 1998に詳細に記載されている。顔料着色された適切な被覆剤は例えば、ドイツ国特許出願DE-A-2006053776に記載されている。
【0082】
本発明のさらなる対象は、本発明による多層被膜の製造方法である。ここでは、少なくとも1種の本発明による組成物を、基材に塗布する。本発明による組成物の被膜には、少なくとも1種のさらなる表面塗料を塗布することができる。この表面塗料は、ウェット・イン・ウェット法で適用できる。本発明による組成物の被膜と、表面塗料の被膜は、一緒に硬化させることができる。
【0083】
これらの表面塗料と本発明による組成物は、通常の方法、例えば吹き付け(例えばエアレス、空気混合、圧縮空気、高温スプレー法、又は誘導混合)、圧延塗布、ローラ塗布、刷毛塗り、又はカートリッジによって適用することができる。表面塗料と本発明による組成物は好適には、吹き付け、ロール塗布、又はカートリッジによって適用する。
【0084】
本発明による組成物の被膜は好適には、100〜1000μmの乾燥膜厚で塗布する。乾燥膜厚は、200〜800μmであるのが好ましく、300〜600μmであるのが特に好ましい。
【0085】
表面塗料の被膜はそれぞれ、乾燥膜厚が80〜300μm、好適には80〜150μmであり得る。
【0086】
本発明による組成物の被膜と、任意の表面塗料の被膜は、熱によって、及び/又は化学線によって、硬化させることができる。この硬化は好適には熱により、好ましくは最大60℃の温度で行う。温度範囲は、15〜60℃であるのが特に好ましく、18〜50℃であるのが、極めて特に好ましい。
【0087】
熱による硬化は好適には、30〜90分の時間の間、40〜60℃の温度で、又は4〜6時間の間、15〜25℃で行う。完全な硬化は通常、20℃では約7日後に得られる。当業者はこれを、「最終特性の形成」と言う。
【0088】
湿潤層の乾燥又はコンディショニングのため、好ましくは熱による方法及び/又は対流法を使用し、ここで通常かつ公知の装置、例えば連続炉、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーター、送風機、及び吹き込み口(Blastunnel)が用いられる。これらの装置はまた、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0089】
本発明による多層被膜は、任意の基材に施与することができる。ここで本発明による組成物の層は、腐食保護層として機能する。前記基材は様々な材料から、また材料の組み合わせから構成されていてよい。この基材は好適には、金属(例えば鋼又はアルミニウム)、プラスチック(ガラス繊維強化プラスチック(GFK)、アラミド繊維強化プラスチック(AFK)、炭素繊維強化プラスチック(CFK)、又は例えば麻若しくはサイザル麻といった天然繊維で強化されたプラスチックであり得る)、及び/又はガラスからなっており、特に好ましくは、金属及び/又はプラスチックからなっている。
【0090】
適切な基材は例えば、雨又は砂による腐食に激しくさらされている基材である。基材としては、回転翼、航空機、又は地上用車両、船舶、建築物、又はパイプラインが考慮される。好ましい基材は、風力エネルギープラントの回転翼、ヘリコプターのプロペラ、又は船舶のスクリュー、また航空機、例えば飛行機である。風力エネルギープラントの回転翼と飛行機が、特に適切な基材である。
【0091】
本発明による組成物は、コスト又は重量を低減させるため、好適には飛行機では前翼領域において、又は回転翼では回転翼部材との接合部(Naht)で塗布する。
【0092】
これらの基材は通常、ベースコートを備えており、通常の方法、例えば吹き付け(例えばエアレス、空気混合、圧縮空気、高温スプレー法、又は誘導混合)、圧延塗布、ローラ塗布、又は刷毛塗りで適用することができる。引き続き、へら塗り層、及びシーリング剤(Porenfueller)を施与することができ、それから少なくとも1種の本発明による組成物、及び任意で引き続き少なくとも1種の表面塗料を施与することができる。
【0093】
本発明のさらなる対象は、基材を被覆するための、本発明による多層被膜の使用である。ここでこの被覆は、特に腐食保護被覆として役立つ。これは好適には、上述の基材である。
【0094】
本発明のさらなる対象は、本発明による組成物及び/又は本発明による多層被膜で被覆されている、上述の基材である。本発明による組成物は好適には、金属層被膜の腐食保護層を形成する。
【0095】
試験法
この試験法では、被覆について、雨及び砂による腐食耐性を試験することができる。
【0096】
実験室レベルで耐腐食性を測定するためには、様々な装置を使用することができるが、腐食させる物体を腐食媒体を通して移動させるか、又は腐食させる物体を固定して、腐食媒体を流すかのいずれかである。固定した試験体は例えば、高圧の水流技術(例えば、ウォータージェット切断で使用される技術)によって試験することができる。この腐食作用は、水圧、試料に対する距離、またノズル径とノズルの種類によって制御される。砂、コランダム、又は炭化ケイ素を併用することにより、この作用をさらに強化することができる。さらに、サンドブラスト又は蒸気ブラストも考えられ、ここでは同様に圧力、ノズル径、及び試料に対する距離を調整することによって腐食作用を変更することができ、実際の条件に適合させることができる。
【0097】
移動させる試験体について雨腐蝕試験を行う場合、腐蝕させる物体を、ローター又はディスクに固定し、発生させる周速度によって、水蒸気、又は塩若しくは砂との混合物のカーテンを通過させて動かす。例えば風力エネルギー分野で用いられる、現在慣用のこの試験手順は、140m/秒の速度、及び30l/hの雨量で行われる。航空産業の分野では、最大220m/秒の速度で、同等の雨量で試験される。雨腐食耐性を試験するためのこれらの試験は、ASTM標準G73によって行うことができる。この基準に該当する構成は個別的だが、標準によって相互に比較することができる。
【0098】
砂腐食耐性を評価するためには、試験体を動かしながら規定の角度で、空気流中に導入することができる。例えば試料を45゜の角度で空気流中に導入することができ(v=30m/秒)、これに粒径0.2〜0.6mmの砂(平均粒径0.05〜0.8mmの浮遊砂塵に相当)を規定量、添加する(400g/分の体積流量)。腐食耐性はここでも、基材に初めて透過が見られた時間に相当する。
【0099】
使用可能な前述の全ての試験法に共通しているのは、実際の速度(例えば回転翼の周速度、又は飛行機の巡航速度)をシミュレーションすることであり、その破損形成は、実際に現れる破損形成に近いということである。
【0100】
ショア硬度とは、エラストマー(A)及び熱硬化性樹脂(D)の圧痕硬度の測定である。これは、DIN EN ISO 868によって試験できる。好適には、本発明による組成物の被膜は、ショア硬度が、A50〜A90である。これによって、柔軟〜様々な硬度の被覆が得られる。好ましいのは、ショア硬度A60〜A80である。
【0101】
以下で本発明を、実施例を用いてさらに説明する。
実施例
【表1】
【0102】
試験条件
・雨腐蝕試験基準
この試験は、ASTM標準G 73に従って行う。この試験は、社独自の雨耐蝕性実験室で行う。試験体は、特定の時間(15分)、規定の速度(140m/秒)で、液滴カーテンを通して回転させる(schleudern)。ここで雨量は、流量比の調節によって、同様に一定に保つ(30l/時間)。液滴径は「雨」に調節し、ここでは平均5〜6mmである。この試験は、20〜25℃の温度で行う。評価は視覚的に行い、写真によって資料化する。腐食耐性は、基材に初めて透過が見られた時間に相当する。
【0103】
約300μの乾燥膜厚で、シーリング剤で下塗りされたエポキシ樹脂製の試験体に被膜を塗布し、7日間、20〜25℃の温度で貯蔵した。
【0104】
ショア硬度
ショア硬度、DIN EN ISO 868によって測定する。
【表2】
【0105】
従来技術で使用される組成物と比べて、本発明による組成物は前述の条件で、最大で3倍、耐腐食性が高い。