(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電パターンの第2端は、前記チップ本体の表面の長手方向における第1端側において、前記測定電極の外周に沿って周設されているとともに、前記チップ本体の表面の長手方向における第2端側に延長され、前記チップ本体の表面の長手方向における第2端側に設けられた前記接地電極に接続されている、
請求項2に記載の微生物数測定チップ。
前記導電パターンの第2端は、前記チップ本体の表面の長手方向における第1端側において、前記測定電極の外周に沿って周設されているとともに、前記チップ本体の表面の長手方向における第2端側に延長され、前記チップ本体の表面の長手方向における第2端側に設けられた電圧印加電極に接続されている、
請求項2に記載の微生物数測定チップ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
以下、本発明の一実施形態に係る測定チップ(微生物数測定チップ)15および微生物数測定装置ついて、添付図面を用いて説明する。
本実施形態の微生物数測定装置は、
図1に示すように、箱状の本体ケース1と、その前方の上方に開閉自在(
図2参照)に設けられた前面カバー2と、を備えている。
【0013】
本体ケース1の内側における前面カバー2の背面側には、
図2に示すように、上面が開口しており容器4が保持される容器保持部3が設けられている。
容器4は、
図3、
図4に示すように、上面に円形の開口部を有する有底円筒状の形状を有しており、開口部を上方にして容器保持部3に保持される。容器4の底面上には、筒状の保持体5が形成されている。また、保持体5の内部側面には、略鉛直方向に沿って溶出突起6が周方向に120度の間隔で3本形成されている。また、保持体5の側面には、内部から外部に貫通した溶出溝7が120度の間隔で3本形成されている。さらに、容器4内には、微生物M(
図8参照)を溶出させるための純水8(測定液の一例)が貯留されている。
【0014】
容器4の保持体5には、
図3に示すように、棒状の微生物採取具9の下端に設けられた採取部10が上方から挿入され、微生物採取具9は保持体5に保持される。微生物採取具9の採取部10は、例えば、口腔内に挿入されて、唾液を付着させることで微生物Mを採取する。
この状態で、微生物採取具9の上端部分を、例えば、右手でつまんだ状態で、左手で
図2のスイッチ11を押す。すると、モータ12の回転により容器保持部3が回転する。このとき、容器保持部3の駆動突起(図示せず)と容器4の係合突起(図示せず)とが係合しているため、容器4を回転させることができる。容器4が回転すると、
図2の動作ランプ13が点灯する。この状態で、容器4は、予め設定されたタイマー時間(例えば、10秒)の間、回転する。
【0015】
この回転により、保持体5の内壁面に設けられた複数の溶出突起6が、微生物採取具9の採取部10に連続的に当接する。このため、採取部10内の微生物Mは、溶出溝7を介して容器4内の純水8へと溶出する。
このような溶出動作が終了した時には、測定者は、微生物採取具9を容器4から上方へと摘み出す。
【0016】
次に、測定者は、前面カバー2の内面に設けられた測定チップ保持部14に、
図5(c)に示す測定チップ15を装着する。
本実施形態における測定チップ15は、
図5(a)に示すように、薄い長板形状のチップ本体15Aと、測定電極16と、接続電極17と、接続部18とを有している。
測定電極16は、チップ本体15Aの表面の下端側(長手方向の一端側)に設けられ純水8に浸漬される。
【0017】
接続電極17は、チップ本体15Aの表面の上端側(長手方向の他端側)に設けられ測定機器の測定チップ保持部14に接続される。
接続部18は、チップ本体15Aの表面において、測定電極16と接続電極17との間を接続する。
なお、本実施形態では、チップ本体15Aの基材として用いたPET(Poly-Ethylene-Terephthalate)上にパラジウムをスパッタリングし、パラジウムにレーザー加工を行って、測定電極16、接続電極17、接続部18を形成している。
【0018】
ここで、PET等の基材上にスパッタリングされる電極等の金属材料としては、パラジウム(Pd)以外に、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)等の他の金属材料を用いてもよい。
測定チップ15の詳細な構成については、後段において詳細に説明する。
次に、測定者が、測定者が
図5の測定チップ15の中ほどを摘んで、接続電極17を測定チップ保持部14に装着すると、
図3に示すように、測定チップ15と装置との間で電気的・機械的な接続が行われる。つまり、本実施形態では、前面カバー2、測定チップ保持部14などによって電極挿入部が構成されている。
【0019】
この状態から、取手19を持って前面カバー2を前方に回動させ、
図1の状態まで回動させると、
図6に示すように、測定チップ15は、容器保持部3で保持された容器4の上方から容器4の開口部を介して、容器4内に挿入される。このとき、測定チップ15の測定電極16は、容器4の純水8内に浸漬された状態となる。
次に、測定者は、
図1の測定開始スイッチ20を押して測定を開始する。すると、測定電極16に、例えば、3MHzの電圧が印加され、容器4内に溶出された微生物Mが測定電極16に集められる。また、これと同時に、測定電極16に、例えば、800kHzの電圧が印加され、測定電極16のインピーダンス変化が測定されることで、微生物数の測定が行われる。
【0020】
この測定方法については、すでに先行文献等でも知られていることであるので、説明の煩雑化をさけるために、説明は簡略化する。
本実施形態では、この測定時において、モータ12によって容器保持部3、容器4、純水8を回転させることで、容器4内に広く拡散した微生物Mが測定電極16に接近する機会が多くなるように構成されている。
【0021】
ここで、測定チップ15によって微生物数の測定を行っている状態においては、
図6に示すように、測定チップ15の中部に設けられた貫通孔21(
図5参照)内に、棒状の操作体22が挿入されている。
操作体22は、測定チップ15が容器4内に完全に下降するまでの間は、
図3に示すように、後方に後退した状態となっているが、測定チップ15が容器4内に完全に下降する直前から、
図6に示すように、前面カバー2方向に突出移動する。
【0022】
なお、貫通孔21は、測定チップ15の長手方向に長い、長穴形状を有している(
図5)。
したがって、測定後に測定者が前面カバー2を開放する時には、測定チップ15の貫通孔21の下端が操作体22の先端部に設けられた鈎状の係合部(図示せず)に係合する。その結果、測定チップ15は、測定チップ保持部14から離脱される。また、前面カバー2を開放する際に、測定チップ15が測定チップ保持部14から離脱した状態において、操作体22が後方(
図6の右側)に引かれると、操作体22に設けられた鈎状の係合部(図示せず)の先端は、測定チップ15の貫通孔21から抜き出される。
【0023】
つまり、測定チップ15は、測定チップ保持部14から引き出され、測定後に容器4内に残されたままとなる。
このため、前面カバー2の開放動作によって、測定時に付着した微生物Mが混入した純水8が、前面カバー2の前面や下面等に不用意に飛び散ったり、垂れ落ちたりすることはなく衛生面において好ましいものとなる。
【0024】
図7は、以上の動作を行わせるための、微生物数測定装置の制御ブロック図を示している。
モータ12は、電源部23のモータ用電源部24に接続されている。
モータ用電源部24は、制御部25のモータ用電源制御部26に接続されている。
また、測定電極16には、電源部23の電極用電源部27が接続されている。
【0025】
電極用電源部27は、電極用電源制御部28に接続されている。これにより、電極用電源部27から測定電極16に対して、上述した3MHzと800kHzの電圧が印加され、同時に測定電極16に接続された測定部29、演算部30により微生物数の測定が行われる。そして、その測定値は、前面カバー2の後方に設けられた表示部31に表示される。
【0026】
なお、操作部32は、電源用の操作部である。また、
図2に示すスイッチ11、動作ランプ13、
図1の測定開始スイッチ20などは、いずれも制御部25に接続されている。
すなわち、本実施形態の微生物数測定装置においては、容器保持部3で保持された容器4の上方から、容器4の開口部を介して、容器4内に測定チップ15を挿入する電極挿入部(前面カバー2、測定チップ保持部14等によって構成される)が設けられている。このため、容器4としては、上面に円形の開口部を有する単なる有底円筒状の形状のものを用いることができる。その結果、従来よりも容器4の生産コストを下げ、測定コストの低減を図ることができる。
【0027】
次に、微生物数を測定する時の測定チップ15と純水8との関係について説明する。
測定チップ15は、
図8に示すように、測定時には、円筒状の容器4内の中心軸よりも容器4の内壁面寄りの位置であって、容器4の内壁面に近接した位置に配置される。また、測定チップ15の測定電極16は、容器4の内壁面に対向配置されている。
この状態で、円筒状の容器4が、円筒の中心軸周りに回転すると、
図9に示すように、純水8には、鉛直方向に沿った中心軸の周りに渦巻き状の旋回流が発生し、その旋回流の外周部分は図中Aの位置まで立ち上がる。なお、この点に対する理解をしやすくするために、
図9では、保持体5の表示を廃止している。また、容器4の非回転時には、純水8の液面は図中Bの位置にあるものとする。
【0028】
ここで、測定チップ15は、容器4の内面に近接した位置に配置されているため、測定チップ15と容器4の内壁面とで囲まれる部分には、
図9に示すように、表面張力によって純水8の盛り上がり部分が形成される。これにより、測定電極16は、純水8内に確実に水没した状態となる。
そして、
図8に示すように、容器4内の旋回流によって、純水8中に含まれる微生物Mは遠心力を受け、容器4の内壁面に付勢された状態で容器4の内壁面に沿って旋回する。これにより、容器4の内壁面に沿って旋回する微生物Mを、容器4の内壁面に対向配置された測定電極16によって捕らえることができる。
【0029】
(測定電極16)
次に、
図5(a)〜
図5(c)を参照しながら、測定チップ15の構成について詳しく説明する。
本実施形態の測定チップ15では、上述したように、測定電極16、接続電極17、および接続部18を備えている。
【0030】
測定電極16は、
図5(a)に示すように、チップ本体15Aの表面の下端側において、所定間隔で対向する2つの測定電極16A,16Bを有している。なお、測定電極16A,16Bは、所定間隔を空けて対向配置され、櫛歯電極部16Cを形成している。
接続電極17は、チップ本体15Aの表面の上端側において、2つの接続電極17A,17Bを有している。
【0031】
接続部18は、チップ本体15Aの表面の上端と下端との間において、測定電極16Aと接続電極17Aとを接続した接続部18Aと、測定電極16Bと接続電極17Bとを接続した接続部18Bとを有している。
また、本実施形態の測定チップ15は、
図5(a)に示すチップ本体15Aの表面の上端と下端との間において、接続部18A,18Bの表面を覆うために設けられたカバー体33(
図5(b)参照)をさらに備えている。
【0032】
カバー体33は、
図10(b)に示すように、薄い長板形状を有しており、接続部18A,18Bの表面のほぼ全体を覆っている。さらに、カバー体33は、チップ本体15Aと同じくPETによって形成されている。カバー体33の厚さは、チップ本体15Aと同じ厚さとしている。
これにより、測定チップ15の測定精度を高めることができる。
【0033】
すなわち、測定チップ15は、
図6、
図9に示すように、容器保持部3において保持された容器4の上方から容器4の開口部を介して容器4内に挿入される。このとき、測定チップ15の測定電極16は、容器4の純水8内に浸漬された状態となる。また、このとき、測定電極16に接続された接続部18の下部も測定液に浸漬される。このため、測定開始時に測定電極16に電圧を印加すると、この浸漬部位にも電圧が印加されて、浸漬部位がインピーダンス成分を持つ。
【0034】
さらに、測定のため純水8を、容器4の中心軸の周りに回転させると、
図10(a)に示すように、純水8の液面が鉛直方向に揺れ幅L1だけ揺れて、接続部18の浸漬部位が変動する。この変動により、この浸漬部位のインピーダンス成分にバラツキが発生する。
測定電極16はインピーダンス変化で測定を行うため、接続部18のインピーダンス成分のバラツキにより、測定値にバラツキが発生する。
【0035】
そこで、本実施形態においては、上述したように、チップ本体15Aの表面の上端と下端との間において、
図10(b)に示すように、接続部18A,18Bの表面を覆うためのカバー体33が設けられている。
これにより、接続部18A,18Bが純水8の液面(つまり、液面の鉛直方向における揺れ幅L1)および純水8に触れることはないため、接続部18A,18Bがインピーダンス成分を持つことはない。したがって、接続部18A,18Bにインピーダンス成分のバラツキが発生することはない。
【0036】
その結果、測定値にバラツキが発生することはなく、測定精度を高めることができる。
なお、
図10(b)において、カバー体33の下端中央部よりも下に、接続部18A,18Bが見えているが、この見えている部位は、液面の揺れ幅L1よりも下部になっている。つまり、接続部18A,18Bは、純水8に常に浸漬された部位となる。したがって、この部位は、浸漬されてインピーダンス成分を持つが、常に浸漬されているためインピーダンス成分のバラツキが発生することはない。
【0037】
また、チップ本体15Aの中央部分に設けられた貫通孔21は、
図6に示すように、測定時には、容器4の上方に位置するので、貫通孔21まで液面が到達することはない。つまり、液面の揺れ幅L1は、
図10に示すように、貫通孔21と測定電極16間の接続部18上で生じるように構成されている。
さらに、本実施形態においては、
図10(a)に示すように、接続部18A,18Bの短手方向(幅方向)における寸法は、ほぼ同一とし、チップ本体15Aの幅のほぼ半分としている。
【0038】
このため、接続部18のインピーダンス成分(直列抵抗成分)を小さくすることができ、微細なインピーダンス変化により微生物数を測定する測定電極16の測定において、測定感度を高めることができる。
この点について、もう少し詳しく説明する。
すなわち、測定電極16においてインピーダンスの変化(つまり、微生物数の変化)を正確に捉えるためには、接続部18のインピーダンス成分(直列抵抗成分)を小さくする必要がある。
【0039】
接続部18のインピーダンス成分(直列抵抗成分)を小さくする方法としては、
(1)接続部18の長さを短くする
あるいは
(2)接続部18の短手方向(幅方向)における寸法を大きくする
等の方法がある。
【0040】
しかしながら、(1)の方法において、接続部18の長さは測定電極16を純水8に浸漬させる必要があるために、一定以上に短くすることは困難である。
一方、(2)の方法において、接続部18の短手方向(幅方向)における寸法を大きくすると、接続部18自体のインピーダンス成分は小さくなるが、接続部18を構成する接続部18Aと接続部18Bとがごく短い間隔で隣接してしまう。このため、接続部18の純水8に浸漬した部分において、浸漬した接続部18Aと接続部18Bとの間に、新たなインピーダンス成分が発生する。このインピーダンス成分の大きさは、接続部18Aと接続部18Bとの隣接間隔に反比例する。
【0041】
つまり、接続部18のインピーダンス成分を小さくしようとして接続部18の短手方向(幅方向)における寸法を大きくすると、接続部18A,18Bの隣接間隔が小さくなる。このため、浸漬した接続部18Aと接続部18Bとの間で発生するインピーダンス成分が大きくなってしまう。
しかしながら、本実施形態においては、上述したように、接続部18A,18Bの表面を覆うカバー体33が設けられている。したがって、接続部18A,18Bが純水8に浸漬されることはなく、接続部18Aと接続部18Bとの間に新たなインピーダンス成分は発生しない。
【0042】
このため、接続部18A,18Bの短手方向(幅方向)における寸法は、ほぼ同一とし、チップ本体15Aの短手方向(幅方向)のほぼ半分まで広くすることで、接続部18のインピーダンス成分(直列抵抗成分)を小さくすることができる。よって、測定電極16の測定感度を高めることができる。
さらにまた、本実施形態においては、
図10(a)および
図10(b)に示すように、測定電極は16A,16Bは、所定間隔を介して互いに対向する櫛歯電極部16Cを形成している。櫛歯電極部16Cは、チップ本体15Aの長手方向に長い長方形状にするとともに、チップ本体15Aの表面の下端側において、チップ本体15Aの短手方向(幅方向)における中央部に配置されている。
【0043】
これは、チップ本体15Aの短手方向(幅方向)において、櫛歯電極部16Cから、櫛歯電極部16Cに対向するチップ本体15Aの長手辺までの距離を大きくするためである。これにより、櫛歯電極部16Cとチップ本体15Aの長手辺に挟まれた2つの部位16a,16bの面積を大きくし、部位16a,16bのインピーダンス成分(直列抵抗成分)を小さくすることができる。
【0044】
その結果、測定電極16の測定電極16A,16Bのインピーダンス成分(直列抵抗成分)を小さくすることができ、この点からも測定感度を高めることができる。
さらに、本実施形態においては、カバー体33は、
図10(b)に示すように、長板形状とし、その下端中央部は、チップ本体15Aの測定電極16の櫛歯電極部16Cよりも、チップ本体15Aの上端側に配置されている。また、カバー体33の下端中央部は、純水8を回転させることによる液面の鉛直方向における揺れ幅L1よりも下端側に配置されている。
【0045】
このため、カバー体33の下端中央部は、純水8に確実に浸漬された状態となる。したがって、カバー体33に覆われた接続部18A,18Bが純水8の液面および純水8に触れることはないので、接続部18A,18Bにインピーダンス成分のバラツキが発生することはない。その結果、測定精度を高めることができる。
さらに、本実施形態においては、延伸部33A,33Bが、カバー体33の下端側の両側部をチップ本体15Aの下端にまで延伸させて形成されている。そして、2つの延伸部33A,33Bは、純水8に浸漬される測定電極16の櫛歯電極部16Cを覆わない非カバー状態としている。
【0046】
このため、測定電極16の櫛歯電極部16Cを純水8に確実に接触させることができるとともに、櫛歯電極部16Cの周辺の強度を、延伸部33A,33Bによって補強することができる。したがって、純水8の回転により、薄い長板形状のチップ本体15A上に設けられた測定電極16が振れてしまう等の問題も生じることなく、測定電極16の櫛歯電極部16Cは安定した状態で測定を行うことができる。その結果、この点からも、測定精度を高めることができる。
【0047】
さらに、本実施形態においては、
図5(a)に示すように、チップ本体15Aの中部には、チップ本体15Aが装着される測定機器から離脱させるために、長穴形状の貫通孔21Aが設けられている。
また、カバー体33は、カバー体33の上端は、
図5(b)に示すように、チップ本体15Aの貫通孔21Aよりもチップ本体15Aの上端側に配置されている。さらに、カバー体33には、チップ本体15Aの貫通孔21Aに対応する部分に、貫通孔21Aと同形状の貫通孔21Bが設けられている。つまり、貫通孔21Aと貫通孔21Bとにより、
図5(c)に示すように、貫通孔21を形成している。
【0048】
このため、測定者の使い勝手を向上させることができる。
すなわち、測定が終了した時には、測定者が前面カバー2を開放するが、上述したように、この開放動作に連動して、測定チップ15が測定チップ保持部14から引き出されて、容器4内へ離脱させるために、貫通孔21が設けられている。
貫通孔21は、
図5に示すように、薄い長板形状の測定チップ15の中央部分に形成されており、測定チップ15の長手方向に長い長穴形状を有している。このため、貫通孔21の周辺部分は、測定チップ15の中でも弱い部分となっている。そこで、カバー体33の上端をチップ本体15Aの貫通孔21Aよりも、チップ本体15Aの上端側に配置することにより、貫通孔21の周辺部分を補強している。
【0049】
なお、カバー体33は、上述したように、チップ本体15Aと同様に、PETによって形成されており、チップ本体15Aと同じ厚さを有している。よって、カバー体33は、チップ本体15Aとほぼ同じ強度を持っている。
これにより、測定時においては、測定者が、測定チップ15の中ほどを摘んで、接続電極17を測定チップ保持部14(
図2参照)に装着するのであるが、カバー体33によって貫通孔21の周辺部分が補強されているため、測定チップ15に十分な強度を持たせることができ、安定して接続を行うことができる。
【0050】
その結果、測定者の使い勝手を向上させつつ、測定精度を高めることができる。
<主な特徴>
(導電パターン34A,34B,34C)
以上の説明により本実施形態の基本的な構成および動作が理解された所で、以下、本実施形態における主要な特徴点について説明する。
【0051】
すなわち、
図5(a)に示すように、本実施形態における測定チップ15の上端には、2つの接続電極17A,17Bの外周側に、接地電極37A,37Bが設けられている。
そして、接地電極37A,37Bから下端の測定電極16に向けて、導電パターン34A,34Bが設けられている。
導電パターン34A,34Bは、接地電極37A,37Bから測定チップ15の長手方向における外周部分に沿って延伸され、それぞれ導電パターン34Cに接続されている。
【0052】
つまり、導電パターン34A,34Bは、接続部18A,18Bの外周側をそれぞれ経由し、次に、測定電極16A,16Bの外周に沿って周設された状態で、導電パターン34Cに接続されている。
その結果、
図5(a)に示すように、長板形状のチップ本体15Aの外周に沿って導電パターン34A,34Bが設けられた状態となるため、チップ本体15Aの下端側において、測定電極16の外周が囲まれた状態となっている。
【0053】
測定チップ15は、上述したように、
図5(a)に示すチップ本体15A上に、
図5(b)に示すカバー体33を被せた状態で使用される。
チップ本体15Aにカバー体33を被せた状態では、
図5(c)に示すように、カバー体33に覆われていない測定電極16の櫛歯電極部16Cの下端には、導電パターン34Cが櫛歯電極部16Cの外周に沿って周設されている。
【0054】
上述したように、測定者が
図5の測定チップ15を摘んで挿入し、接続電極17が測定チップ保持部14に装着されると、電気的・機械的な接続が行われる。測定チップ保持部14に設けられた電極挿入部の接続端子35A,35Bの構成を
図11(a)に示す。
図11(a)に示すように、測定チップ保持部14に設けられた電極挿入部の接続端子35A,35Bは、それぞれ測定チップ15の接続電極17A,17Bに接続される。また、これらの接続端子35A,35Bの両側に設けられた接地端子36A,36Bは、測定チップ15に設けられた接地電極37A,37Bに接続される。
【0055】
このうち、接地端子36Bについては、他の接続端子35A,35B、および接地端子36Aよりも長くなるように設けられている。
このため、測定チップ15が電極挿入部の接続端子35A,35Bに装着される際には、先に、接地端子36Bが、測定チップ15の接地電極37Bに装着される。このため、測定チップ15の接地電極37A,37Bは、測定電極16よりも先に装置側の接地電位に接続される。
【0056】
したがって、測定チップ15を電極挿入部の接続端子35A,35Bに装着する際に、測定チップ15の測定電極16が測定者の静電気によって破壊されることを防止することができる。
すなわち、従来の構成では、微生物数を測定する際に、測定者が測定チップを指で保持して、装置の測定チップ保持部の電極挿入部に挿入する場合に、測定者が測定チップの測定電極の櫛歯電極部を誤って指で触れてしまうと、測定者の静電気によって測定電極の櫛歯電極部が壊れてしまう場合があった。
【0057】
そこで、本実施形態の測定チップ15では、上述のように、測定電極16の下端には、装置の接地電位となる接地端子36A,36Bに接続される導電パターン34A,34B,34Cが設けられている(但し、本実施形態では、導電パターン34Cだけがカバー体33から露出した状態となっている。)。これにより、測定者の静電気によって測定電極16の櫛歯電極部16Cが壊れてしまうことを防止することができる。
【0058】
この点をさらに詳細に説明すると、本実施形態では、導電パターン34Cが、測定電極16よりも先に装置側の接地電位となるように構成されている。これにより、測定者が櫛歯電極部16Cに誤って触れた場合には、同時に導電パターン34Cにも触れるような構成となっている。その結果、測定者からの静電気は導電パターン34C,34A,34Bを介して装置側に流れる。このため、測定電極16が静電気で壊れることを防止することができる。その結果、測定チップ15の取り扱いに対して操作性を高めることができる。
【0059】
また、本装置は、測定電極16の微細なインピーダンス変化により微生物数を測定する際に、測定電極16、接続部18、および接続電極17が、導電パターン34A,34B,34Cによって囲まれているため、導電パターン34A,34B,34Cが、測定チップ15に入る外乱ノイズを低減する遮蔽体となり、測定精度を向上させることができる。
(純水の温度測定への利用)
なお、本実施形態では、導電パターン34A,34B,34Cを、接地端子36A,36Bに接続することで静電気対策をとる構造としたが、これ以外にもこれら導電パターン34A,34B,34Cを温度測定用とすることもできる。
【0060】
つまり、
図11に示す接地端子36Aを電圧印加端子とし、また、それに合わせて測定チップ15に設けた接地電極37Aを電圧印加電極とすれば、導電パターン34Aから導電パターン34B,34Cへと直流電流が流れる。周知の通り、導電路は温度によって抵抗値が変化するので、接地端子36Aの電圧を監視することで、
図9に示す純水8の温度を検出することができる。よって、この検出温度を用いて、測定される測定電極16A,16B間のインピーダンスを補正することもできる。
【0061】
すなわち、測定電極16A,16B間に捕獲される微生物の捕獲状況は、純水8の温度に影響を受けるので、純水8の温度を測定し、これによってインピーダンスを補正することで、より高精度な測定が可能となる。
また、この場合でも、導電パターン34A,34B,34Cを接地電位にするための接地端子36Bは、電圧印加端子となる接地端子36Aや、接続端子35A,35Bよりも長く形成されている。このため、測定チップ15の装着時には、一番最初に接地端子36Bが導電パターン34A,34B,34Cに接続され、上述した静電対策効果を維持することができる。
【0062】
つまり、この場合における導電パターン34A,34B,34Cは、導電パターンの機能と、温度測定パターンの機能を併せ持つ導電パターンとなる。
なお、本実施形態では、端子の長さの関係は、接地端子36B>接続端子35A>接続端子35B>接地端子36Aとなっている。
また、上述したように、
図11に示す接地端子36Aを電圧印加端子とする場合には、その電流上流側に基準抵抗を接続し、この基準抵抗から接地端子36A、接地電極37A、導電パターン34A,34C,34B、接地端子36Bへと直流電流を流す。
【0063】
そして、基準抵抗と接地端子36Aとの間の電圧値を測定すれば、導電パターン34A,34C,34Bの抵抗値が純水8の温度で変化することで、結論として純水8の温度を検出することができる。
ここで、本実施形態の測定チップ15による純水8の温度を測定する手順について、以下で詳しく説明する。
【0064】
すなわち、導電体41(導電パターン34A,34B,34C)は、
図7に示すように、その第1端が接地端子36A、第2端が抵抗測定部42に接続されている。
抵抗測定部42では、導電パターン34A,34B,34Cに直流電流が流れた状態で、直流抵抗を測定できるように構成されている。
具体的には、抵抗測定部42は、
図12に示すように、測定用抵抗43と、この測定用抵抗43に接続された電源部23と、によって構成されている。
【0065】
測定用抵抗43の電源と接続される反対側の端子は、導電パターン34A,34B,34Cの第2端と接続されている。
この構成においては、導電パターン34A,34B,34Cの第2端の電圧の値を、制御部25が読み取ることによって、導電パターン34A,34B,34Cの直流抵抗の値を検出することができる。そして、この直流抵抗の値に基づいて、検体(純水8)の温度を測定することができる。
【0066】
なお、本実施形態の測定チップ15では、上述したように、PET等の基材上にスパッタリングされる電極の金属材料として、パラジウムを用いている
この理由としては、
・温度に対する抵抗の変化率や抵抗値の大きさが比較的大きいため測定し易い
・酸化等の経年変化の影響を受け難い
・製造上、成膜等の制御が容易であるため、抵抗値の誤差を小さくすることができる
等の利点があることから、パラジウムを用いている。
【0067】
(測定チップ15の適否判定)
本実施形態の微生物数測定装置では、測定チップ15が表裏を正しく装着されているか、あるいは測定チップ15の正規品が使用されているか否かを判定することが可能である。
すなわち、本実施形態の微生物数測定装置では、上述した純水8の温度検出と同様に、微生物数測定装置に挿入された測定チップ15の導電パターン34A,34B,34Cの導通状態(例えば、直流抵抗値等の状態)を装置側でモニタリングする。
【0068】
このとき、検出された抵抗値等の検出値が所定の範囲内であるか否かに応じて、測定チップ15の裏表が正しく挿入されているのか否かを検知することができる。
例えば、測定チップ15が表裏逆転した状態で挿入されている場合には、裏面側に導電パターンは配置されていないため、装置側の制御部25において電流値(抵抗値)が検出されることはない。よって、測定チップ15の表裏が正しく装着されているか否かについては、制御部25において、電流値が検出されるか否かによって容易に判定することができる。
【0069】
ここで、挿入された測定チップ15が表裏逆であると判定された場合には、制御部25が装置前面に設けられた表示部31に、「チップを正しく挿入してください」等のメッセージを表示する等の対応を採ることができる。あるいは、警告ブザーを鳴らして、測定チップ15が表裏反対向きで挿入されていることを、測定者に報知してもよい。
また、本実施形態の微生物数測定装置では、測定チップ15が正規品であるか否かについても検知することができる。
【0070】
すなわち、正規品ではない測定チップが挿入されている場合には、電極を形成する金属材料等の組成の違いや品質のバラつき等に起因して、所定の印加電圧に対して検出される電流値の値が、正規品の測定チップ15とは異なる可能性がある。
よって、本実施形態では、制御部25において読み取られた電流値が、所定の範囲内であるか否かに応じて、測定チップ15が正規品であるか否かの判定を行う。
【0071】
ここで、正規品ではないと判定された場合には、制御部25が、装置前面に設けられた表示部31にエラー表示を行って、微生物数の測定を実施できないように制御する。あるいは、警告ブザーを鳴らして、測定チップが正規品ではないために、正しく測定できないおそれがあることを、測定者に報知してもよい。
これにより、正規品の測定チップ15を使用することを促すことで、確実に高精度な測定を実施することができる。