(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、他の実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0018】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る半導体記憶装置の構成図である。
図1に示す半導体記憶装置は、2つの記憶ノードN1〜2を有するようにアクセストランジスタA1〜2、ドライブトランジスタD1〜D2、及びロードトランジスタL1〜2で構成されたメモリセル10と、ビット線プリチャージ回路15と、P型MOSトランジスタMP1〜2で構成されたメモリセル電源回路20と、リーク電流補償回路25と、電源電圧検知回路30と、インバータ回路INV1と、NAND回路NAND1とを備える。WL0〜xはワード線、BL0〜1及び/BL0〜1はビット線、PCGはプリチャージ制御信号、VDDM0〜1はメモリセル電源、AD0〜1はカラムアドレス信号、WENはライト制御信号、VDDは電源(第1の電源)を示す。xは1以上の整数であり、
図1において、複数のワード線WL0〜xに接続するメモリセル10が複数個存在することを表している。
【0019】
各ワード線WL0〜xは、各メモリセル10を構成するアクセストランジスタA1,A2のゲート端子に各々接続されている。また、各ビット線BL0〜1,/BL0〜1は、各メモリセル10を構成するアクセストランジスタA1,A2のドレイン端子に各々接続されている。同一のビット
線BL0,/BL0(或いはBL1,/BL1)
上に接続した各メモリセル10のロードトランジスタL1,L2のソース端子には、同一のメモリセル電源
(VDDM
0或いはVDDM1)が接続されている。
【0020】
メモリセル10は、ロードトランジスタL1とドライブトランジスタD1とにより、また、ロードトランジスタL2とドライブトランジスタD2とにより各々インバータを構成し、各々のインバータの入出力端子を接続してフリップフロップを構成している。このフリップフロップによりデータの記憶保持を行う。また、アクセストランジスタA1,A2のゲート端子はワード線WL0〜xに接続され、そのドレイン端子はビット線BL0〜1,/BL0〜1に各々接続される。また、アクセストランジスタA1,A2のソース端子は、前記インバータの入出力端子に各々接続されている。
【0021】
メモリセル電源回路20は、電源VDDと接地電源との間に直列に接続したP型MOSトランジスタMP1,MP2で構成され、P型MOSトランジスタMP1,MP2の接点をメモリセル電源VDDM0〜1として出力している。メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2のゲート端子には、カラムアドレス信号AD0(或いはAD1)とライト制御信号WENと電源電圧検知回路30の出力とを入力とするNAND回路NAND1の出力信号が接続されている。また、P型MOSトランジスタMP1のゲート端子には、NAND回路NAND1の出力信号を入力とする、インバータ回路INV1の出力信号が接続されている。
【0022】
図2は、
図1中のビット線プリチャージ回路15の詳細構成例を示す回路図である。ビット線プリチャージ回路15は、各々プリチャージ制御信号PCGをゲート端子に受け取る3個のP型MOSトランジスタMP3,MP4,MP5で構成され、電源VDDと各ビット線BL,/BLとの間と、両ビット線BL,/BLの間とに挿入されている。
【0023】
図3は、
図1中のリーク電流補償回路25の詳細構成例を示す回路図である。
図3において、MP6はP型MOSトランジスタ、MN1はN型MOSトランジスタを示す。P型MOSトランジスタMP6のソース端子とゲート端子には電源VDDが接続され、ドレイン端子がメモリセル電源VDDMに接続される。N型MOSトランジスタMN1のソース端子には電源VDDが接続され、ゲート端子には接地電源が接続され、ドレイン端子がメモリセル電源VDDMに接続される。
図3のP型MOSトランジスタMP6とN型MOSトランジスタMN1とは、いずれもオフ状態である。
【0024】
なお、
図1では、カラムアドレス信号とライト制御信号とに基づいて、書き込み対象のメモリセル10に接続したビット線に書き込みデータを転送するためのライト回路、また、メモリセル10からのデータを読み出すためのリード回路は、説明を簡単にするため省略してある。ライト回路は、ビット線BL0,/BL0に書き込みデータを転送する場合、カラムアドレス信号AD0及びライト制御信号WENに基づく信号で制御され、また、ビット線BL1,/BL1に書き込みデータを転送する場合、カラムアドレス信号AD1及びライト制御信号WENに基づく信号で制御されているものとする。
【0025】
以下、以上のように構成された本実施形態に係る半導体記憶装置の動作を説明する。
【0026】
メモリセル10へのデータの書き込みは、予め、ビット線プリチャージ回路15によりHレベルにプリチャージされたビット線BL,/BLのうちの一方のビット線の電位を、HレベルからLレベルにし、ワード線をLレベルからHレベルの状態(活性状態)にすることで実現される。メモリセル10からのデータの読み出しは、予め、ビット線プリチャージ回路15によりHレベルにプリチャージされたビット線BL,/BLの状態から、ワード線を活性状態にすることにより、メモリセル10中のフリップフロップが記憶保持していた状態に基づいて、いずれか一方のビット線をHレベルからLレベルにすることで実現される。また、ワード線がLレベル(非活性状態)の場合には、アクセストランジスタA1,A2が共にオフするため、メモリセル電源VDDM0〜1が供給され続けている限り、フリップフロップに記憶されたデータは、外部からの影響を受けることなく、同一のデータを記憶保持し続ける。
【0027】
次に、データ書き込み動作について詳細に説明する。ここでは、ワード線WLxとビット線BL0,/BL0とに接続したメモリセル10(
図1の左上のメモリセル)に対して書き込みを行う場合を例にして説明する。また、メモリセル10のアクセストランジスタA1のソース端子側がHレベル(アクセストランジスタA2のソース端子側はLレベル)となるデータを記憶しているとする。また、電源電圧検知回路30の出力がHレベルであるものとする。
【0028】
まず、全てのワード線はLレベル(非活性状態)で、全てのビット線はHレベルにプリチャージされている。
【0029】
次に、書き込み対象のメモリセル10に接続したビット線BL0,/BL0のうちの一方のビット線をHレベルからLレベルにする。例えば、BL0側をHレベルからLレベルにする。この状態で、ワード線WLxをLレベルからHレベルの状態(活性状態)にする。
【0030】
ワード線WLxがHレベルになると、アクセストランジスタA1(A2)がオンする。よって、ビット線BL0(/BL0)の電位状態が、アクセストランジスタA1(A2)を介してメモリセル10に伝達される。
【0031】
ビット線BL0の電位状態がLレベルであるため、メモリセル10のアクセストランジスタA1のソース端子側は、HレベルからLレベル側に電位が変化する。アクセストランジスタA1のソース端子は、ロードトランジスタL2とドライブトランジスタD2とで構成したインバータの入力である。よって、アクセストランジスタA1のソース端子の電位が、このインバータのスイッチング電圧を越えると、メモリセル10のデータが反転してデータの書き換えが完了する。
【0032】
アクセストランジスタA1のソース端子側がHレベルの時は、ロードトランジスタL1がオン、ドライブトランジスタD1がオフしている状態である。実際のアクセストランジスタA1のソース端子の電位は、アクセストランジスタA1とロードトランジスタL1との電流能力比で決定している。
【0033】
メモリセル10は、「アクセストランジスタの電流能力>ロードトランジスタの電流能力」となるように設計される。よって、ビット線BL0側がLレベルになれば、アクセストランジスタA1のソース端子側はHレベルからLレベル側に変化でき、ロードトランジスタL2とドライブトランジスタD2とで構成したインバータのスイッチング電圧を超えられるため、メモリセル10のデータの書き換えが可能である。
【0034】
しかし、低い電源電圧が通常の電圧として供給される半導体記憶装置では、アクセストランジスタA1の電流能力が低下し、アクセストランジスタA1のソース端子側がLレベルになりにくくなる。よって、ロードトランジスタL2とドライブトランジスタD2とで構成したインバータのスイッチング電圧を超えることができなくなり、メモリセル10のデータの書き換えができなくなる。
【0035】
上記の問題を改善するためには、メモリセル10のデータの書き換え時に、ロードトランジスタのソース電位(メモリセル電源)を低下させて、ロードトランジスタの能力を、通常状態(ロードトランジスタのソース端子に電源VDDレベルが印加されている状態)よりも低下させればよい。
【0036】
ロードトランジスタL1のソース電位(メモリセル電源)が低下すれば、ロードトランジスタL1の能力が低下する。よって、ワード線WLxが活性状態でビット線BL0側がLレベルの時、アクセストランジスタA1のソース端子側はHレベルからLレベル側に変化しやすくなり、ロードトランジスタL2とドライブトランジスタD2とで構成したインバータのスイッチング電圧を越えやすくなるため、メモリセル10のデータの書き換えが可能となる。
【0037】
以上のとおり、書き込み動作時に、ロードトランジスタのソース電位(メモリセル電源)を低下させれば、メモリセル10への書き込み特性が改善する。
【0038】
メモリセル電源VDDM0,VDDM1を生成するメモリセル電源回路20は、カラムアドレス信号AD0,AD1とライト制御信号WENとに基づいた信号で制御されている。
【0039】
ライト動作時以外は、ライト制御信号WENはLレベル(非活性状態)である。よって、カラムアドレス信号AD0,AD1の状態によらず、NAND回路NAND1はHレベルを出力し、NAND回路NAND1の出力を入力とするインバータ回路INV1はLレベルを出力する。よって、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP1がオン、P型MOSトランジスタMP2がオフするので、全てのメモリセル電源VDDM0,VDDM1は電源VDDレベルを出力する。
【0040】
ライト動作時、ワード線が活性状態になる時に、ライト制御信号WENはHレベル(活性状態)になる。このとき、カラムアドレス信号AD0,AD1は、いずれかがHレベルとなっている。ワード線WLxとビット線BL0,/BL0とに接続したメモリセル10(
図1の左上のメモリセル)に対して書き込みを行う場合を例にすると、カラムアドレス信号AD0がHレベル、AD1がLレベルである。
【0041】
よって、カラムアドレス信号AD0を入力とするNAND回路NAND1はLレベルを出力し、次段のインバータ回路INV1はHレベルを出力する。メモリセル電源回路20のP型MOSトランジスタMP1がオフ、P型MOSトランジスタMP2がオンするので、メモリセル電源VDDM0の電位は、電源VDDレベルからP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値である|Vtp|に低下していく。メモリセル電源VDDM0の電位が|Vtp|になると、P型MOSトランジスタMP2はオフする。P型MOSトランジスタMP1がオフ、更に、P型MOSトランジスタMP2もオフするので、メモリセル電源回路20を流れる電流はなくなる。
【0042】
これに対して、書き込みを行わないビット線BL1,/BL1上に接続したメモリセル10のメモリセル電源VDDM1は、カラムアドレス信号AD1がLレベルであるため、電源VDDレベルを出力している。書き込みを行わないビット線上に接続したメモリセル10のメモリセル電源は、電源VDDレベルから低下させる必要はない。書き込みを行わないビット線上に接続したメモリセル10のメモリセル電源を電源VDDレベルから低下させても問題はないけれども、メモリセル電源に不要な充放電電流が発生する。よって、上記構成のように、カラムアドレス信号に基づく信号によって、メモリセル電源を電源VDDレベルに固定するように制御しておくべきである。
【0043】
以上のとおり、ライト動作時に、書き込み対象のメモリセル10のメモリセル電源が電源VDDレベルから低下するように構成されているため、メモリセル10への書き込み特性が改善される。また、メモリセル電源を生成するメモリセル電源回路20において、電源VDDから接地電源にかけて貫通電流が発生しない構成である。
【0044】
しかし、上記構成の場合、書き込みを行うビット線BL0,/BL0上に接続したメモリセル10のメモリセル電源VDDM0の電位は、P型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値|Vtp|まで低下する。このため、書き込みを行うビット線BL0,/BL0上に接続した書き込みを行わないメモリセル(ワード線WLx以外の非活性なワード線に接続したメモリセル)のメモリセル電源VDDM0が、メモリセル10のリテンション電圧より低くなってしまい、メモリセル10に記憶保持していたデータが破壊されてしまうといった問題が生じる。
【0045】
上記問題を解決するために、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2の基板端子にメモリセル電源より高い電圧を印加する。例えば、電源VDDを印加してもよいし、或いは、電源VDD以上の電位を印加してもよい。P型MOSトランジスタMP2の基板バイアス効果によって、しきい値電圧の絶対値がロードトランジスタのしきい値電圧の絶対値|Vtp|より大きくなり、メモリセル電源がメモリセル10のリテンション電圧よりも低下することがなく、メモリセル10のデータ破壊を生じさせない半導体記憶装置が可能となる。
【0046】
上記問題を解決する別の方法は、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2のトランジスタのチャネル長を、メモリセル10を構成するロードトランジスタ及びドライブトランジスタのチャネル長より大きくすることである。リテンション電圧は、ロードトランジスタ又はドライブトランジスタのしきい値電圧の絶対値で決定している。トランジスタのしきい値電圧は、トランジスタのチャネル長に依存し、チャネル長が小さいほど、しきい値電圧の絶対値は低くなる。よって、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2のトランジスタのチャネル長を、メモリセル10を構成するロードトランジスタ又はドライブトランジスタのチャネル長より大きくすると、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値が|Vtp|より大きくなる。よって、メモリセル電源がメモリセル10のリテンション電圧よりも低下することがなく、メモリセル10のデータ破壊を生じさせない半導体記憶装置が可能となる。
【0047】
上記問題を解決する更に別の方法は、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2の拡散領域に注入する不純物濃度を、メモリセル10を構成するロードトランジスタの拡散領域に注入する不純物濃度よりも高くすることである。トランジスタのしきい値電圧は、トランジスタの拡散領域に注入する不純物濃度に依存し、不純物濃度が高いほど、しきい値電圧の絶対値は高くなる。よって、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2の拡散領域に注入する不純物濃度を、メモリセル10を構成するロードトランジスタの拡散領域に注入する不純物濃度よりも高くすると、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値が|Vtp|より大きくなる。よって、メモリセル電源がメモリセル10のリテンション電圧よりも低下することがなく、メモリセル10のデータ破壊を生じさせない半導体記憶装置が可能となる。
【0048】
〈リーク電流補償回路〉
ここでは、リーク電流補償回路25について説明する。
図1の半導体記憶装置では、ライト動作時、書き込み対象のメモリセル10と同一ビット線上(例えば、ビット線BL0,/BL0)に接続したメモリセル10のメモリセル電源VDDM0の電位は、電源VDDレベルからP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値である|Vtp|に低下していく。メモリセル電源VDDM0の電位が|Vtp|になると、メモリセル電源回路を構成するP型MOSトランジスタMP2はオフする。このとき、P型MOSトランジスタMP1もオフしているため、メモリセル電源VDDM0はハイインピーダンス状態となり、メモリセル電源VDDM0に対して電荷を供給する手段がなくなる。
【0049】
メモリセル10には微小なリーク電流が流れており、また、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2自体にもリーク電流が流れている。このため、メモリセル電源VDDM0の電位は、時間の経過とともに|Vtp|から低下していく。よって、これらのリーク電流に相当する電流を供給すれば、メモリセル電源VDDM0のレベル低下が起きない。
図3に示したリーク電流補償回路25は、この微小なリーク電流に相当する電流を供給するための回路の一例である。
【0050】
メモリセル10は、ロードトランジスタL1とドライブトランジスタD1、また、ロードトランジスタL2とドライブトランジスタD2とにより各々インバータを構成し、各々のインバータの入出力端子を接続してフリップフロップを構成している。例えば、ロードトランジスタL1がオンでドライブトランジスタD1がオフの時は、ロードトランジスタL2がオフでドライブトランジスタD2がオンの状態となる。よって、メモリセル10を流れるリーク電流は、オフ状態のロードトランジスタL2を流れるリーク電流とオフ状態のドライブトランジスタD1を流れるリーク電流の合計となる。
【0051】
ロードトランジスタはP型MOSトランジスタで、ドライブトランジスタはN型MOSトランジスタである。よって、例えば、
図3の構成のように、メモリセル10のオフ状態のロードトランジスタ(P型MOSトランジスタ)とオフ状態のドライブトランジスタ(N型MOSトランジスタ)とを模倣した構成をメモリセル電源に接続する。更に、リーク電流補償回路25を構成するMOSトランジスタのチャネル幅やチャネル長、或いは、MOSトランジスタの数を調整することで、メモリセル10が流すリーク電流に相当する電流を供給することが可能である。
【0052】
このとき、リーク電流補償回路25を構成するP型MOSトランジスタMP6の拡散領域に注入する不純物濃度は、メモリセル10のロードトランジスタの不純物濃度と同等であることが望ましく、また、N型MOSトランジスタMN1の拡散領域に注入する不純物濃度は、メモリセル10のドライブトランジスタの不純物濃度と同等であることが望ましい。不純物濃度が同等であれば、温度や電源電圧の変化に対するリーク電流の変化に対して、追随性のよいリーク電流補償回路25を構成することが可能となる。
【0053】
同様に、リーク電流補償回路25を構成するP型MOSトランジスタMP6のチャネル長は、メモリセル10のロードトランジスタのチャネル長と同等であることが望ましく、また、N型MOSトランジスタMN1のチャネル長は、メモリセル10のドライブトランジスタのチャネル長と同等であることが望ましい。トランジスタのチャネル長が同等であれば、温度や電源電圧の変化に対するリーク電流の変化に対して、追随性のよいリーク電流補償回路25を構成することが可能となる。
【0054】
以上のとおり、リーク電流を補償する回路をメモリセル電源に接続すれば、メモリセル電源がメモリセル10のリテンション電圧よりも低下することがなく、メモリセル10のデータ破壊を生じさせない半導体記憶装置が可能となる。
【0055】
リーク電流が、メモリセル10のロードトランジスタのリーク電流でほぼ決定するような場合には、リーク電流補償回路25をP型MOSトランジスタのみで構成すればよく、リーク電流が、メモリセル10のドライブトランジスタのリーク電流でほぼ決定するような場合には、リーク電流補償回路25をN型MOSトランジスタのみで構成すればよい。
【0056】
また、リーク電流が、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2でほぼ決定するような場合には、リーク電流補償回路25をP型MOSトランジスタで構成すればよく、このときには、電源VDDとメモリセル電源との間に挿入するP型MOSトランジスタをダイオード型にゲート接続する(ゲート端子にメモリセル電源を接続する)ように構成すれば、温度や電源電圧の変化に対するリーク電流の変化に対して、追随性のよいリーク電流補償回路25を構成することが可能となる。このとき、更に、P型MOSトランジスタMP2と同一のトランジスタ幅とトランジスタ長で構成すれば、温度や電源電圧の変化に対するリーク電流の変化に対して、更に追随性のよいリーク電流補償回路25を構成することが可能となる。
【0057】
図3のリーク電流補償回路25を構成するMOSトランジスタは、P型MOSトランジスタとN型MOSトランジスタをそれぞれ1個ずつで構成した場合を例として示したが、各々を複数個並列或いは直列に接続した構成であってもよい。
【0058】
また、
図3のリーク電流補償回路25を構成するMOSトランジスタは、オフ状態で構成した場合を例として示したが、オン状態で構成してあってもよい。具体的には、P型MOSトランジスタMP6のゲート端子に接地電源やメモリセル電源を接続した構成、或いは、N型MOSトランジスタMN1のゲート端子に電源VDDやメモリセル電源を接続した構成である。
【0059】
結局、リーク電流補償回路25は、メモリセル10のリーク電流に相当する電流分をメモリセル電源に供給できればよい。よって、VDD電源とメモリセル電源との間に接続したMOSトランジスタのチャネル長やチャネル幅を調節したり、VDD電源とメモリセル電源との間に接続するMOSトランジスタの数を増減させることで、メモリセル電源に供給する電流を調節すればよい。そして、最終的にメモリセル10のリーク電流に相当する電流がメモリセル電源に供給されるように、リーク電流補償回路25中のMOSトランジスタを構成すればよい。
【0060】
一般的な半導体記憶装置では、複数のメモリセル10で構成されるメモリセルアレイ領域に隣接してビット線をHレベル(電源VDDレベル)にプリチャージするためのビット線プリチャージ回路15がレイアウト配置される。ビット線プリチャージ回路15はビット線をHレベル(電源VDDレベル)にプリチャージする動作を実施する必要があるため、電源VDDと各ビット線との間に挿入したP型MOSトランジスタMP3〜5で構成される。よって、ビット線プリチャージ回路15をレイアウトするための基板領域(Nウェル領域)と同一の基板領域内に、リーク電流補償回路25を構成するP型MOSトランジスタをレイアウト配置すれば、ビット線プリチャージ回路15を構成するP型MOSトランジスタ
MP3〜5とリーク電流補償回路25を構成するP型MOSトランジスタ
MP6とを別々の基板領域にレイアウトする場合と比較して、半導体記憶装置を小面積にレイアウトすることが可能である。
【0061】
〈電源電圧検知回路〉
電源電圧検知回路30は、半導体記憶装置や当該半導体記憶装置を含む半導体集積回路に印加される電源電圧の状態を判断する回路である。例えば、半導体記憶装置や当該半導体記憶装置を含む半導体集積回路に印加される電源電圧が1Vより高ければLレベルを、電源電圧が1Vより低ければHレベルを出力するように構成されている。
【0062】
電源電圧検知回路30がLレベルを出力する場合は、NAND回路NAND1は、カラムアドレス信号AD0〜1とライト制御信号WENとの状態によらず、Hレベルを出力し、インバータ回路INV1はLレベルを出力する。よって、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP1がオン、P型MOSトランジスタMP2がオフするため、メモリセル電源VDDM0〜1は、常に電源VDDレベルを出力する。
【0063】
メモリセル10の書き込み特性は、半導体記憶装置の電源電圧が低いほど悪化する。つまり、ライト動作時に、メモリセル電源を低下させてメモリセル10の書き込み特性を改善させる動作は、半導体記憶装置の電源電圧が低いとき(例えば、半導体記憶装置に印加される電源電圧が1Vより低いとき)だけ実施すればよい。
【0064】
半導体記憶装置の電源電圧が高いとき(例えば、半導体記憶装置に印加される電源電圧が1Vより高いとき)、ライト動作時にメモリセル電源を低下させてメモリセル10の書き込み特性を改善させても問題はないけれども、ライト動作時にメモリセル電源が変動するため、メモリセル電源に不必要な充放電電流が流れてしまう。
【0065】
よって、本実施形態のように電源電圧検知回路30を配置し、半導体記憶装置の電源電圧が特定の電圧より高くなると、メモリセル電源回路20を構成するメモリセル電源を電源VDDレベルに固定する(メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2を常時オフする)ように制御できれば、半導体記憶装置の消費電力が抑制できる。
【0066】
本実施形態では、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2を、電源電圧検知回路30の出力信号に基づいた信号で、常時オフするように構成した場合を例に示したが、
図1に示したNAND回路NAND1を2入力NAND回路に変更し、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2と接地電源との間に、更にN型MOSトランジスタを挿入し、このN型MOSトランジスタのゲート端子を電源電圧検知回路30の出力信号に基づいた信号で制御しても、本実施形態と同等の動作及び効果が得られる。
【0067】
なお、電源電圧検知回路30は、
図1のように半導体記憶装置の中に各々配置する必要はない。半導体集積回路中に複数個の半導体記憶装置が配置される場合には、半導体集積回路中に電源電圧検知回路30を1個配置して、その出力信号を各半導体記憶装置にそれぞれ接続する。1つの電源電圧検知回路30で、全ての半導体記憶装置を制御するように構成すれば、半導体集積回路をより小面積に構成することが可能となる。
【0068】
〈第1のタイミングチャート〉
図4は、
図1の半導体記憶装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4において、CLKは半導体記憶装置に入力されるクロック信号、WLxはワード線、AD0はカラムアドレス信号、WENはライト制御信号、VDDM0はメモリセル電源を示す。各信号名は、
図1中に記載されている信号名にそれぞれ対応する。
【0069】
図4に示すタイミングチャートは、ワード線WLxとビット線BL0,/BL0とに接続したメモリセル10(
図1中の左上のメモリセル)に対して書き込みを行う場合の動作を示している。
【0070】
半導体記憶装置は、クロック信号CLKに同期してワード線WL0〜WLxのいずれか1つのワード線を活性化するように制御される。よって、クロック信号CLKのHレベルの期間とほぼ同等の時間、ワード線WLxは活性状態(Hレベル)となる。
【0071】
クロック信号CLKがLレベルからHレベルになると、時刻T1でワード線WLxがHレベル(活性状態)になり、同時に、ライト制御信号WENもHレベル(活性状態)になる。カラムアドレス信号AD0はクロック信号CLKのHレベルの期間、電位が変化しないように構成され、この場合、クロック信号CLKのHレベルの期間、カラムアドレス信号AD0はHレベル状態(選択状態)になる。
図4には図示していないが、カラムアドレス信号AD1はLレベルの状態(非選択状態)である。
【0072】
カラムアドレス信号AD0がHレベル(選択状態)でライト制御信号WENがHレベル(活性状態)になると、メモリセル電源VDDM0は電圧VDD(時刻T1)から、電圧V1(時刻T2)に変化していく。電圧V1は、
図1におけるP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値|Vtp|より少し高い電位である。
図1の構成の場合、メモリセル電源VDDM0の電位は、メモリセル10に流れる微小なリーク電流によって、時間の経過とともに電圧V1から低下していく。
【0073】
時刻T3でライト制御信号WENがHレベル(活性状態)からLレベル(非活性状態)に変化するようにライト制御信号WENのタイミングが設定されている場合、メモリセル電源VDDM0は、時刻T3で電圧V2より低い電位になっている。ここで、電圧V2はメモリセル10のリテンション電圧である。よって、時刻T1から時刻T3の期間でライト制御信号WENが活性状態となる場合には、メモリセル電源VDDM0の電位がメモリセル10のリテンション電圧V2より低くなってしまい、その結果、メモリセル10データの破壊が発生する。
【0074】
そこで、
図4に示すように、時刻T1から時刻T4の期間でライト制御信号WENが活性状態となるようにライト制御信号WENのタイミングを設定する。この場合、メモリセル電源VDDM0の電位はリテンション電圧V2以下にならない。よって、メモリセル10のデータ破壊が発生しない半導体記憶装置が可能となる。
【0075】
以上のとおり、ライト制御信号WENの活性状態の期間に上限を持たせて、メモリセル電源がメモリセル10のリーク電流によってメモリセル10のリテンション電圧以下にならないように、ライト制御信号WENのタイミングを設定してもよい。
【0076】
図5は、ライト制御信号WENの生成方法の一例を示した回路図である。
図5に示す回路図は、バッファ回路BUF1、インバータ回路INV2、AND回路AND1を備える。WRITEはライト判定信号を示す。
【0077】
ライト判定信号WRITEは、半導体記憶装置に入力されるクロック信号CLKに同期した信号で、ライト動作時にクロック信号CLKのH期間と同等の時間だけ活性状態(Hレベル)となる信号である。また、バッファ回路BUF1は、インバータ回路を偶数段接続して構成した回路で、バッファ回路BUF1に入力した信号を一定時間遅延させて出力する回路である。
【0078】
ライト制御信号WENは、ライト判定信号WRITEと、ライト判定信号WRITEを一定時間遅延させた信号の反転信号との論理積で生成される信号である。よって、ライト制御信号WENは、ライト判定信号WRITEがHレベルになるとライト制御信号WENがHレベル(活性状態)となり、複数のバッファ回路BUF1とインバータ回路INV2とで決定する遅延時間後にLレベル(非活性状態)となる信号である。よって、
図5に示した回路構成で生成したライト制御信号WENは、
図4に示したタイミングチャートのライト制御信号WENと同等な信号である。
【0079】
図5に示した回路構成において、例えば、バッファ回路BUF1の接続段数を増減させれば、ライト制御信号WENの活性期間を容易に変更させることが可能である。
【0080】
以上のとおり、
図5に示した回路構成でライト制御信号WENを生成すれば、ライト制御信号WENの活性期間の調節が容易に実現可能である。よって、ライト制御信号WENの活性状態の期間に上限を持たせて、メモリセル電源がメモリセル10のリーク電流によってメモリセル10のリテンション電圧以下にならないように、ライト制御信号WENの活性期間のタイミングを設定するための手段として、
図5に示した回路構成を用いればよい。
【0081】
〈第2のタイミングチャート〉
図6は、
図1の半導体記憶装置の他の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図6に示すタイミングチャートも、ワード線WLxとビット線BL0、/BL0とに接続したメモリセル10(
図1中の左上のメモリセル)に対して書き込みを行う場合の動作を示している。
【0082】
半導体記憶装置は、クロック信号CLKに同期してワード線WL0〜WLxのいずれか1つのワード線を活性化するように制御され、更に、ライト制御信号WENも、ライト動作時に、クロック信号CLKに同期して活性状態となるように制御される。よって、クロック信号CLKのHレベルの期間とほぼ同等の時間、ワード線WLxは活性状態(Hレベル)となり、同様に、ライト動作時、クロック信号CLKのHレベルの期間とほぼ同等の時間、ライト制御信号WENも活性状態(Hレベル)となる。
【0083】
クロック信号CLKがLレベルからHレベルになると、時刻T1でワード線WLxがHレベル(活性状態)になり、同時に、ライト制御信号WENもHレベル(活性状態)になる。カラムアドレス信号AD0はクロック信号CLKのHレベルの期間、電位が変化しないように構成され、この場合、クロック信号CLKのHレベルの期間、カラムアドレス信号AD0はHレベル状態(選択状態)になる。図示していないが、カラムアドレス信号AD1はLレベルの状態(非選択状態)である。
【0084】
カラムアドレス信号AD0がHレベル(選択状態)でライト制御信号WENがHレベル(活性状態)になると、メモリセル電源VDDM0は電圧VDD(時刻T1)から、電圧V1(時刻T2)に変化していく。電圧V1は、
図1におけるP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値|Vtp|より少し高い電位である。
図1の構成の場合、メモリセル電源VDDM0の電位は、メモリセル10に流れる微小なリーク電流によって、時間の経過とともに電圧V1から低下していく。
【0085】
クロック信号CLKがHレベルからLレベルになると、時刻T3でワード線WLxがHレベル(活性状態)からLレベル(非活性状態)になり、同時に、ライト制御信号WENがHレベル(活性状態)からLレベル(非活性状態)に変化する。このとき、メモリセル電源VDDM0は、時刻T3で電圧V2より低い電位になっている。ここで、電圧V2はメモリセル10のリテンション電圧である。よって、時刻T1から時刻T3の期間でライト制御信号WENが活性状態となる場合には、メモリセル電源VDDM0の電位がメモリセル10のリテンション電圧V2より低くなってしまい、その結果、メモリセルデータの破壊が発生する。
【0086】
そこで、
図6に示すように、時刻T1から時刻T4の期間でライト制御信号WENが活性状態となるようにライト制御信号WENのタイミングを設定する。本実施形態の半導体記憶装置の場合、クロック信号CLKに同期してライト制御信号WENの活性状態の期間が設定されるため、クロック信号CLKのHレベル期間を短くすることでライト制御信号WENの活性状態の期間を変更することが可能である。
【0087】
時刻T1から時刻T4の期間でライト制御信号WENが活性状態となるよう、クロック信号CLKのHレベル期間を設定すると、メモリセル電源VDDM0の電位はリテンション電圧V2以下にならない。よって、メモリセル10のデータ破壊が発生しない半導体記憶装置が可能となる。
【0088】
以上のとおり、半導体記憶装置に入力されるクロック信号CLKのHレベル期間に上限を持たせることで、メモリセル電源がメモリセル10のリーク電流によってメモリセル10のリテンション電圧以下にならないように、クロック信号CLKに同期したライト制御信号WENのタイミングを設定する必要がある。
【0089】
本実施形態では、半導体記憶装置に入力されるクロック信号CLKがHレベルの時にワード線が活性化する場合を例に説明したが、半導体記憶装置に入力されるクロック信号CLKがLレベルの時にワード線が活性化するような半導体記憶装置の場合には、半導体記憶装置に入力されるクロック信号CLKのLレベル期間に上限を持たせればよい。
【0090】
〈第3のタイミングチャート〉
図7は、
図1の半導体記憶装置の更に他の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図7において、メモリセル記憶ノードN1,N2は、具体的には、メモリセル10を構成するアクセストランジスタA1,A2のそれぞれのソース端子の状態を示す。
【0091】
図7に示すタイミングチャートも、ワード線WLxとビット線BL0,/BL0とに接続したメモリセル10(
図1中の左上のメモリセル)に対して書き込みを行う場合の動作を示している。
【0092】
半導体記憶装置は、時刻T1でワード線WLxがHレベル(活性状態)になり、同時に、ライト制御信号WENもHレベル(活性状態)になる。
図7に図示していないが、カラムアドレス信号AD0はHレベル状態(選択状態)、カラムアドレス信号AD1はLレベルの状態(非選択状態)である。
【0093】
カラムアドレス信号AD0がHレベル(選択状態)でライト制御信号WENがHレベル(活性状態)になると、メモリセル電源VDDM0は電圧VDD(時刻T1)から、電圧V1(時刻T2)に変化していく。電圧V1は、
図1におけるP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値|Vtp|より少し高い電位である。
【0094】
ライト動作前に、書き込み対象のメモリセル10のアクセストランジスタA1のソース端子側にHレベル、アクセストランジスタA2のソース端子側にLレベルが記憶保持されていたとし、ライト動作時にビット線BL0側がHレベルからLレベルになるとする。
【0095】
時刻T2付近で、メモリセル10の書き換えが発生する。この場合、ビット線BL0側がLレベルであるため、書き込み対象のメモリセル10のアクセストランジスタA1のソース端子側は、HレベルからLレベル側に電位が変化する。アクセストランジスタA1のソース端子は、ロードトランジスタL2とドライブトランジスタD2とで構成したインバータの入力である。よって、アクセストランジスタA1のソース端子の電位が、このインバータのスイッチング電圧を越えると、メモリセル10のデータが反転してデータの書き換えが完了する。このとき、書き込み対象のメモリセル10のアクセストランジスタA1のソース端子側が0V、アクセストランジスタA2のソース端子側が電圧V1になっている。
【0096】
実際には、メモリセル10の微小なリーク電流によってメモリセル電源VDDM0は電圧V1から低下するが、説明を簡単にするため、メモリセル10のリーク電流は流れないとする。
【0097】
時刻T3で、ライト制御信号WENはLレベル(非活性状態)になり、メモリセル電源VDDM0の電位は、電圧V1から電源VDDレベルに復帰する(時刻T4)。これに合わせて、メモリセル記憶ノードN1,N2である、アクセストランジスタA2のソース端子側の電位も、電圧V1から電源VDDレベルに復帰する(時刻T4)。その後、時刻T5でワード線WLxがLレベル(非活性状態)となり、ライト動作は完了する。
【0098】
以上のとおり、
図7に示したワード線WLxとライト制御信号WENのタイミングで、
図1の半導体記憶装置を動作させれば、正常なライト動作が実施できる。
【0099】
これに対し、ライト制御信号WENが活性状態から非活性状態に変化するタイミングの前に、ワード線WLxが活性状態から非活性状態に変化するように構成されていると、ワード線WLxがLレベル(非活性状態)になった時点で、メモリセル電源VDDM0は電圧V1であり、|Vtp|近傍の電位であるため、メモリセル10を構成するフリップフロップ(2つのインバータ)の電源(ロードトランジスタのソース端子とドライブトランジスタのソース端子間の電位差)が極めて低く、フリップフロップ(メモリセル)のノイズ耐性(ノイズマージン)が悪化する。このため、ワード線WLxがHレベルからLレベルに変化した際のカップリングノイズ(具体的には、アクセストランジスタのゲート端子とソース端子間の容量で生じるノイズや、ワード線とメモリセル記憶ノードN1,N2間の配線容量で生じるノイズ等)の影響により、フリップフロップ(メモリセル)の記憶データは簡単に反転してしまう。
【0100】
ところが、
図7のタイミングチャートによれば、ライト動作時に、メモリセル電源を電源VDDよりも低い電位に制御してメモリセル10の書き込み特性を改善する半導体記憶装置において、ワード線WLxが活性状態から非活性状態に変化するタイミングの前に、ライト制御信号WENが活性状態から非活性状態に変化するように構成されている。言い換えれば、ワード線WLxが活性状態から非活性状態に変化するタイミングの前に、メモリセル電源が電源VDDレベルになるように構成されている。これにより、ライト動作時にメモリセル電源を低下させる構成の半導体記憶装置において、正常なライト動作を実現することが可能である。
【0101】
図8は、本実施形態の半導体記憶装置における、ワード線制御信号を生成し、かつメモリセル電源を制御する制御回路の具体的な構成の一例を示した回路図である。
図8の制御回路は、インバータ回路INV3〜5と、NAND回路NAND2,3と、NOR回路NOR1と、バッファ回路BUF2とを備える。ADxはロウアドレス信号、WLxはワード線、CLKは半導体記憶装置に入力されるクロック信号、WRITEはライト判定信号、WENはライト制御信号を示す。
【0102】
クロック信号CLKは、NOR回路NOR1とNAND回路NAND2にそれぞれ入力されている。NAND回路NAND2にはクロック信号CLKとライト判定信号WRITEとが入力され、その出力がインバータ回路INV3に入力される。インバータ回路INV3の出力がライト制御信号WENとなる。
【0103】
一方、クロック信号CLKとライト制御信号WENとがNOR回路NOR1に入力され、その出力がインバータ回路INV4に入力される。インバータ回路INV4の出力がバッファ回路BUF2に入力され、バッファ回路BUF2の出力信号とロウアドレス信号ADxとがNAND回路NAND3に入力される。NAND回路NAND3の出力はインバータ回路INV5に入力され、インバータ回路INV5の出力をワード線WLxとして出力する。
【0104】
ここで、ライト判定信号WRITEは、半導体記憶装置に入力されるクロック信号CLKに同期した信号で、ライト動作時にクロック信号CLKのH期間と同等の時間だけ活性状態(Hレベル)となる信号である。また、ロウアドレス信号ADxは、クロック信号CLKのHレベルの期間、電位が変化しないように構成され、この場合、クロック信号CLKのHレベルの期間、ロウアドレス信号ADxはHレベル状態(選択状態)である。また、バッファ回路BUF2は、インバータ回路を偶数段接続して構成した回路で、バッファ回路BUF2に入力した信号を一定時間遅延させて出力する回路である。
【0105】
まず、クロック信号CLKがLベルの時、NAND回路NAND2はライト判定信号WRITEの状態によらずHレベルを出力する。よって、インバータ回路INV3の出力であるライト制御信号WENはLレベル(非活性状態)となる。クロック信号CLKがLレベル、ライト制御信号WENもLレベルであるので、NOR回路NOR1の出力はHレベル、インバータ回路INV4の出力がLレベル、更に、BUF2の出力もLレベルである。よって、NAND回路NAND3はロウアドレス信号ADxの状態によらずHレベルを出力する。よって、インバータ回路INV5の出力であるワード線WLxはLレベル(非活性状態)である。また、
図1を参照すると、ライト制御信号WENがLレベルであるので、NAND回路NAND1はカラムアドレス信号AD0の状態によらずHレベルを出力し、インバータ回路INV1はLレベルを出力する。よって、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP1がオン、P型MOSトランジスタMP2がオフとなり、メモリセル電源VDDM0は電源VDDレベルを出力する。
【0106】
次に、クロック信号CLKがHレベルになると、NOR回路NOR1は、ライト制御信号WENの入力によらず出力がLレベルになる。よって、インバータ回路INV4の出力がHレベルに、更に、バッファ回路BUF2の出力がHレベルになる。ロウアドレス信号ADxはHレベルとなっているので、NAND回路NAND3の出力がLレベルになる、よって、インバータ回路INV5の出力であるワード線WLxがHレベル(活性状態)となる。また、ライト動作時、クロック信号CLKがHレベルになると、ライト判定信号WRITEはHレベルになっているので、NAND回路NAND2に出力はLレベルに、よって、インバータ回路INV3の出力であるライト制御信号WENはHレベル(活性状態)になる。再び
図1を参照すると、カラムアドレス信号AD0がHレベルとなっているので、NAND回路NAND1の出力がLレベルに、インバータ回路INV1の出力がHレベルになる。よって、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP1がオフ、P型MOSトランジスタMP2がオンし、メモリセル電源VDDM0は電源VDDレベルから低下していく。一定時間経過後、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値|Vtp|に電位が変化する。
【0107】
次に、クロック信号CLKがHからLレベルに変化すると、NAND回路NAND2はライト判定信号WRITEの状態によらずHレベルに変化する。よって、インバータ回路INV3の出力であるライト制御信号WENはLレベル(非活性状態)に変化する。クロック信号CLKがLレベル、ライト制御信号WENもLレベルであるので、NOR回路NOR1の出力はHレベル、インバータ回路INV4の出力がLレベル、更に、バッファ回路BUF2の出力がLレベルに変化する。よって、NAND回路NAND3はロウアドレス信号ADxの状態によらずHレベルを出力し、インバータ回路INV5の出力であるワード線WLxはLレベル(非活性状態)に変化する。また、再び
図1を参照すると、ライト制御信号WENがLレベルに変化したため、NAND回路NAND1はカラムアドレス信号AD0の状態によらずHレベルに変化し、インバータ回路INV1の出力はLレベルに変化する。よって、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP1がオン、P型MOSトランジスタMP2がオフに変化し、メモリセル電源VDDM0は|Vtp|レベルから電源VDDレベルに復帰する。
【0108】
ワード線とメモリセル電源を生成する制御回路の具体的な構成の一例の動作は、以上のとおりである。
【0109】
ライト動作時にメモリセル電源を低下させる構成の半導体記憶装置において正常なライト動作を実現するためには、ワード線が活性状態から非活性状態に変化するタイミングの前に、ライト制御信号で制御されるメモリセル電源が電源VDDレベルに復帰していればよいことは、
図7で説明したとおりである。
【0110】
図1及び
図8の構成では、クロック信号CLKがHからLレベルになると、ワード線がH(活性状態)からLレベル(非活性状態)に変化し、同時に、メモリセル電源が|Vtp|レベルから電源VDDレベルに復帰する。
【0111】
論理回路を1段通過する遅延時間はほぼ等しいので、
図1及び
図8の構成において、ワード線が活性状態から非活性状態に変化するタイミングの前に、ライト制御信号で制御されるメモリセル電源を電源VDDレベルに復帰させるには、クロック信号CLKの初段入力からメモリセル電源VDDM0を電源VDDレベルに変化させるために必要な論理段数が、クロック信号CLKの初段入力からワード線WLxをLレベル(非活性状態)に制御するために必要な論理段数より少なく構成されていればよい。
【0112】
図1及び
図8の場合、クロック信号CLKの初段入力からメモリセル電源VDDM0を電源VDDレベルに変化させるために必要な論理段数は5段で、クロック信号CLKからの具体的な経路は、NAND回路NAND2、インバータ回路INV3、NAND回路NAND1、インバータ回路INV1、P型MOSトランジスタMP1である。
【0113】
これに対して、クロック信号CLKの初段入力からワード線WLxをLレベル(非活性状態)に制御するために必要な論理段数は8段で、クロック信号CLKからの具体的な経路は、NAND回路NAND2、インバータ回路INV3、NOR回路NOR1、インバータ回路INV4、バッファ回路BUF2、NAND回路NAND3、インバータ回路INV5である。バッファ回路BUF2はインバータ回路2個で計算している。
【0114】
以上に説明した構成であれば、ライト動作時に、メモリセル電源を電源VDDよりも低い電位に制御してメモリセル10の書き込み特性を改善する半導体記憶装置において、ワード線が活性状態から非活性状態に変化するタイミングの前に、メモリセル電源が電源VDDレベルになるように構成できるため、正常なライト動作を実施することが可能となる。
【0115】
なお、本実施形態では、メモリセル10がシングルポートの場合を例として説明したが、複数ポートのメモリセルであっても、同等の動作や効果を有する。
【0116】
一般的な半導体記憶装置では、複数のメモリセル10を有して構成されるメモリセルアレイ領域と隣り合う位置にビット線をHレベル(電源VDDレベル)にプリチャージするためのビット線プリチャージ回路15がレイアウト配置される。ビット線プリチャージ回路15はビット線をHレベル(電源VDDレベル)にプリチャージする動作を実施する必要があるため、電源VDDと各ビット線との間に挿入したP型MOSトランジスタMP3〜5で構成される。メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP1,MP2もそれぞれP型MOSトランジスタで構成されている。よって、ビット線プリチャージ回路15をレイアウトするための基板領域(Nウェル領域)と同一の基板領域内に、メモリセル電源回路20を構成する両P型MOSトランジスタMP1,MP2をレイアウト配置すれば、ビット線プリチャージ回路15を構成するP型MOSトランジスタMP3〜5と、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP1,MP2とを別々の基板領域にレイアウト配置する場合と比較して、半導体記憶装置を小面積にレイアウトすることが可能である。
【0117】
《実施形態2》
図9は、本発明の実施形態2に係る半導体記憶装置の構成図である。
図9に示す半導体記憶装置は、実施形態1の
図1の構成に対して、メモリセル電源回路21を構成するMOSトランジスタの構成が異なるだけである。具体的には、P型MOSトランジスタMP2と接地電源との間に、N型MOSトランジスタMN2が追加されている。更に、P型MOSトランジスタMP2のゲート端子がN型MOSトランジスタMN2のドレイン端子に接続され、N型MOSトランジスタMN2のゲート端子には、P型MOSトランジスタMP1のゲート端子に入力する信号と同じ信号が入力されている。
【0118】
ライト動作時以外は、ライト制御信号WENはLレベル(非活性状態)である。よって、カラムアドレス信号AD0,AD1の状態によらず、NAND回路NAND1はHレベルを出力し、NAND回路NAND1の出力を入力とするインバータ回路INV1はLレベルを出力する。よって、メモリセル電源回路21を構成するP型MOSトランジスタMP1がオン、N型MOSトランジスタMN2がオフするので、全てのメモリセル電源VDDM0,VDDM1は電源VDDレベルを出力する。
【0119】
ライト動作時、ワード線が活性状態になる時に、ライト制御信号WENはHレベル(活性状態)になる。このとき、カラムアドレス信号AD0,AD1は、いずれかがHレベルとなっている。ワード線WLxとビット線BL0,/BL0とに接続したメモリセル10(
図9の左上のメモリセル)に対して書き込みを行う場合を例にすると、カラムアドレス信号AD0がHレベル、AD1がLレベルである。
【0120】
よって、カラムアドレス信号AD0を入力とするNAND回路NAND1はLレベルを出力し、次段のインバータ回路INV1はHレベルを出力する。メモリセル電源回路21のP型MOSトランジスタMP1がオフ、N型MOSトランジスタMN2がオンするので、メモリセル電源VDDM0の電位は、電源VDDレベルからP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値である|Vtp|に低下していく。メモリセル電源VDDM0の電位が|Vtp|になると、P型MOSトランジスタMP2はオフする。P型MOSトランジスタMP1がオフ、更に、P型MOSトランジスタMP2もオフするので、メモリセル電源回路21を流れる電流はなくなる。
【0121】
これに対して、書き込みを行わないビット線BL1,/BL1上に接続したメモリセル10のメモリセル電源VDDM1は、カラムアドレス信号AD1がLレベルであるため、電源VDDレベルを出力している。書き込みを行わないビット線上に接続したメモリセル10のメモリセル電源は、電源VDDレベルから低下させる必要はない。書き込みを行わないビット線上に接続したメモリセル10のメモリセル電源を電源VDDレベルから低下させても問題はない。しかし、この場合、メモリセル電源に不要な充放電電流が発生する。よって、上記構成のように、カラムアドレス信号に基づく信号によって、メモリセル電源を電源VDDレベルに固定するように制御しておくべきである。
【0122】
以上に説明したとおり、本実施形態の
図9の半導体記憶装置は、実施形態1の
図1と同等の動作を行う。よって、実施形態1と同等の効果を有する。しかも、本実施形態のメモリセル電源回路21は、1つの信号(カラムアドレス信号とライト制御信号の論理積)だけで制御できる。よって、半導体記憶装置をレイアウトする時に信号配線本数が削減でき、レイアウト設計の自由度が上がるため、半導体記憶装置の小面積化が可能である。
【0123】
なお、本実施形態では、メモリセル電源回路21を構成するP型MOSトランジスタMP2のゲート端子にN型MOSトランジスタMN2のドレイン端子を接続した構成であったが、P型MOSトランジスタMP2のゲート端子に接地電源を接続した構成であっても、同等の動作や効果を有する。
【0124】
《実施形態3》
図10は、本発明の実施形態3に係る半導体記憶装置の構成図である。
図10に示す半導体記憶装置は、実施形態1の
図1の構成に対して、メモリセル電源回路20の制御が異なるだけである。具体的には、全てのメモリセル電源回路20のP型MOSトランジスタMP1のゲート端子にライト制御信号WENが接続されている点である。
【0125】
ライト動作時以外は、ライト制御信号WENはLレベル(非活性状態)である。よって、カラムアドレス信号AD0,AD1の状態によらず、NAND回路NAND1はHレベルを出力する。よって、メモリセル電源回路20を構成するP型MOSトランジスタMP1がオン、P型MOSトランジスタMP2がオフするので、全てのメモリセル電源VDDM0,VDDM1は電源VDDレベルを出力する。
【0126】
ライト動作時、ワード線が活性状態になる時に、ライト制御信号WENはHレベル(活性状態)になる。このとき、カラムアドレス信号AD0,AD1は、いずれかがHレベルとなっている。ワード線WLxとビット線BL0,/BL0とに接続したメモリセル10(
図10の左上のメモリセル)に対して書き込みを行う場合を例にすると、カラムアドレス信号AD0がHレベル、AD1がLレベルである。
【0127】
よって、カラムアドレス信号AD0を入力とするNAND回路NAND1はLレベルを出力する。メモリセル電源回路20のP型MOSトランジスタMP1がオフ、P型MOSトランジスタMP2がオンするので、メモリセル電源VDDM0の電位は、電源VDDレベルからP型MOSトランジスタMP2のしきい値電圧の絶対値である|Vtp|に低下していく。メモリセル電源VDDM0の電位が|Vtp|になると、P型MOSトランジスタMP2はオフする。P型MOSトランジスタMP1がオフ、更に、P型MOSトランジスタMP2もオフするので、メモリセル電源回路20を流れる電流はなくなる。
【0128】
これに対して、書き込みを行わないビット線BL1,/BL1上に接続したメモリセル10のメモリセル電源VDDM1は、ライト制御信号WENがHレベルとなり、P型MOSトランジスタMP1がオフする直前の電位である電源VDDレベルで、ハイインピーダンス状態である。実施形態1では、メモリセル電源VDDM1は、ローインピーダンス状態の電源VDDレベルであるが、動作的には実施形態1と同等である。書き込みを行わないビット線上に接続したメモリセル10のメモリセル電源は、電源VDDレベルから低下させる必要はない。書き込みを行わないビット線上に接続したメモリセル10のメモリセル電源を電源VDDレベルから低下させても問題はない。しかし、この場合、メモリセル電源に不要な充放電電流が発生する。よって、上記構成のように、メモリセル電源を電源VDDレベルと同等になるように制御しておくべきである。
【0129】
以上に説明したとおり、本実施形態の
図10の半導体記憶装置は、実施形態1の
図1と同等の動作を行う。よって、実施形態1と同等の効果を有する。
【0130】
また、本実施形態の場合、ライト動作時に、書き込みを行わないビット線BL1,/BL1上に接続したメモリセル10のメモリセル電源VDDM1はハイインピーダンス状態である。つまり、本実施形態の場合、書き込みを行わないビット線上に接続したメモリセル10のメモリセル電源が遮断されている状態(ハイインピーダンス状態)であるため、不要な電力消費がなくなり、実施形態1の半導体記憶装置と比較して、低消費電力である。
【0131】
更に、本実施形態の場合、実施形態1の
図1におけるインバータ回路INV1が不要となるため、実施形態1の半導体記憶装置よりも小面積にレイアウトが可能である。
【0132】
なお、実施形態2及び3においても、実施形態1における説明と同様の動作及び変形が可能であることは言うまでもない。