(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)の水溶性イオン性高分子の重量平均分子量が1万以上であり、(B)の水溶性イオン性高分子の重量平均分子量が50万以上であり、(B)の水溶性イオン性高分子の重量平均分子量は、(A)の水溶性イオン性高分子の重量平均分子量より高いことを特徴とする請求項1記載のダイラタンシー性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のダイラタンシー性組成物は、水溶性カチオン性高分子と、水溶性アニオン性高分子、および水中油型エマルジョンを含有するものである。
本発明の特徴は、下記成分(A)及び(B)の二つの水溶性イオン性高分子を混合した場合だけでなく、これら二つの水溶液に水中油型エマルジョンを含む場合にも、強いダイラタンシー性を示し、流動によりゲル化する。
(A)イオン性基密度が2meq/g以上である水溶性イオン性高分子。
(B)(A)とは反対のイオン性を有し、イオン性基密度が1meq/g以下である水溶性イオン性高分子。
【0009】
ここでイオン性基密度とは、水溶性イオン性高分子1gあたりのイオン当量値meq/gを表す。水溶性イオン性高分子のイオン性基密度は、pH滴定、コロイド滴定等で求めることができる。(A)の水溶性イオン性高分子、(B)の水溶性イオン性高分子は合成高分子であっても良いし、イオン性の天然高分子又は天然高分子にイオン性基を導入したものであっても良い。
【0010】
通常、水溶性カチオン性高分子と水溶性アニオン性高分子を混合すると、イオンコンプレックスを形成し、イオンバランスが等しい中和点付近で、不溶化、沈殿する。特にイオン性基密度が高く、分子量の大きい高分子同士の場合にはイオンバランスに関わらず、混合により瞬時に不溶物を形成する。しかしながら、水溶性イオン性高分子と、これと逆の電荷を持つ水溶性イオン性高分子が、それぞれ一定のイオン性基密度を有する場合には、不溶性イオンコンプレックス形成しにくく、混合水溶液がダイラタンシー性を示し、流動によりゲル化することを見出した。このイオン性高分子水溶液系はエマルジョンを含有する場合にも同様のダイラタンシー性を示す。
【0011】
(A)の水溶性イオン性高分子は、合成高分子の場合には、イオン性単量体と非イオン性親水性単量体を、2meq/g以上のイオン性基を有するように重合することにより得られる。イオン性単量体のみから得られたものであってもよい。イオン性単量体のうちアニオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、及びそれらの塩などがあげられる。
【0012】
イオン性単量体のうちカチオン性単量体の例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びそれらの塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミン、ジアリルメチルアミンなどがあげられる。
【0013】
非イオン性親水性単量体の例としては(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0014】
また、(A)の水溶性イオン性高分子は、イオン性基密度が2meq/g以上であれば、イオン性の天然高分子、または天然高分子等にイオン性基を導入したものであっても良い。例としてはカルボキシメチルセルロース、カチオン化澱粉、アルギン酸あるいはその塩、ヒアルロン酸あるいはその塩、ペクチン、キトサン、カチオン変性したヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、メチルセルロース、エチルセルロース、イソプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、シアノエチルセルロース、エチル−ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアガム、ヒドロキシプロピルグアガム等があげられる。
【0015】
その他(A)の水溶性イオン性高分子としては、ポリビニルアミンやポリビニルアミンジン、前記ポリビニルアミンやポリビニルアミンジンの無機、有機酸塩も使用することができる。従ってこれら(A)の水溶性イオン性高分子のイオン性基密度は、2meq/g以上、13.9meq/g以下であり、好ましくは2meq/g以上、10.6meq/g以下である。
【0016】
(B)の水溶性イオン性高分子は、合成高分子の場合には、イオン性単量体と非イオン性親水性単量体を、1meq/g以下のイオン性基を有するように共重合することにより得られる。イオン性単量体のうちアニオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、及びそれらの塩などがあげられる。
【0017】
イオン性単量体のうちカチオン性単量体の例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノロピル(メタ)アクリルアミド、及びそれらの塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミン、ジアリルメチルアミンなどがあげられる。
【0018】
非イオン性親水性単量体の例としては(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0019】
また、(B)の水溶性イオン性高分子は、イオン性基密度が1meq/g以下であれば、イオン性の天然高分子、または天然高分子等にイオン性基を導入したものであっても良い。例としてはカルボキシメチルセルロース、カチオン化澱粉等があげられる。従ってこれら(B)の水溶性イオン性高分子のイオン性基密度は、1meq/g以下、0.03meq/g以上であり、好ましくは1meq/g以下、0.05meq/g以上である。
【0020】
(A)の水溶性イオン性高分子および(B)の水溶性イオン性高分子は合成高分子の場合には通常のラジカル重合法により得ることができる。以下に溶液重合の場合の方法について説明する。
【0021】
(A)の水溶性イオン性高分子および(B)の水溶性イオン性高分子を重合する場合は通常、使用する単量体や重合開始剤等により適宜決めていく。重合の温度は0〜100℃の範囲で行う。単量体の濃度が1〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%になるように単量体水溶液を調整し、窒素置換する。その後重合を開始させる。
【0022】
重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は水溶性であることが好ましく、アゾ系、レドックス系、過酸化物系いずれでも重合することが可能である。水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などが挙げられる。またレドックス系の例としては、過硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせが挙げられる。さらに過酸化物の例としては、過硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素などを挙げることができる。これらのうち、水溶性アゾ系開始剤が好ましい。
【0023】
(A)の水溶性イオン性高分子の光散乱法による重量平均分子量は1万から1500万、より好ましくは10万から1000万である。(B)の水溶性イオン性高分子の光散乱法による重量平均分子量は50万から1500万、より好ましくは100万から1000万である。(B)の水溶性イオン性高分子の分子量は(A)の水溶性イオン性高分子の分子量よりも高いほうがより強いダイラタンシー性を示す。
【0024】
(A)の水溶性イオン性高分子、(B)の水溶性イオン性高分子を一定の比率で混合することにより、本発明のダイラタンシー性組成物が得られる。混合の比率は、(A)の水溶性イオン性高分子に由来するイオン性基のイオン当量ameqと、(B)の水溶性イオン性高分子に由来するイオン性基のイオン当量bmeqと表すと、その比が、0.01≦b/a≦1.3であることが好ましい。混合比が0.01より小さくなるとダイラタンシー性を示さず、混合比が1.3よりも大きくなると不溶性沈殿物を生成しダイラタンシー性を示さなくなる。更に好ましくは0.03≦b/a≦1.1である。また(A)の水溶性イオン性高分子と(B)の水溶性イオン性高分子の混合物は水で希釈しトータルの高分子濃度を0.01〜5質量%とすることでダイラタンシー性を示す。また、本組成物に他の水溶性高分子、微粒子、メタノール等の有機物等の成分を添加することも可能である。
【0025】
エマルジョンは、オイルと乳化剤と水を混合し、ホモジナイザーで乳化することにより得られる水中油型エマルジョンである。オイルとしては、オリーブオイル、アーモンド油、ツバキオイル、パームオイル、スクワラン等の動植物由来のもの、鉱油等が使用できる。乳化剤としては、オイルを乳化する作用を持つものであれば使用可能であるが、ノニオン性のものが特に好ましい。例えばTween85(トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等が使用できる。
【0026】
(A)の水溶性イオン性高分子と(B)の水溶性イオン性高分子の混合物水溶液と水中油型エマルジョンを混合した場合、混合後の全質量に対する油相の濃度は、0.1質量%〜30質量%であり、好ましくは0.5質量%〜15質量%である。この時、(A)の水溶性イオン性高分子と(B)の水溶性イオン性高分子混合物のトータル高分子濃度は0.01〜5質量%であり、好ましくは0.1〜5質量%である。(A)の水溶性イオン性高分子と(B)の水溶性イオン性高分子及び水中油型エマルジョンの混合順序は特には問わず、何れの順番でも良い。例えば(A)の水溶性イオン性高分子と(B)の水溶性イオン性高分子を混合した後、水中油型エマルジョンを混合する、あるいは(A)の水溶性イオン性高分子と水中油型エマルジョンを混合した後、(B)の水溶性イオン性高分子を混合しても良い。
【0027】
(実施例)
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。実施例中、粘度はブルックフィールド粘度計を用い回転数100rpm、No.3ローターで測定した。重量平均分子量は、Wyatt Technology社製DAWN HELEOSを用いて分析した。アニオン性高分子のイオン性基密度はpH滴定により、カチオン性高分子のイオン性基密度はコロイド滴定により求めた。エマルジョン粒子径の測定は、大塚電子製DLS装置を用いキュミュラント法により行った。
【0028】
(製造例1)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水225.0g、80%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液75.0g、を加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により45℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.06g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。これをカチオン性高分子A1とする。光散乱法による重量平均分子量は約90万であった。イオン性基密度は4.69meq/gであった。
【0029】
(製造例2)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水138.5g、65%ジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液161.5gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により50℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物1.05g添加し重合を開始させた。8時間重合を継続し反応を終了した。これをカチオン性高分子A2とする。光散乱法による重量平均分子量は約30万であった。イオン性基密度は5.85meq/gであった。
【0030】
(製造例3)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水228.0g、80%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液30.3g、50%アクリルアミド41.6gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により33〜35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。これをカチオン性高分子A3とする。光散乱法による重量平均分子量は約490万であった。イオン性基密度は2.65meq/gであった。
【0031】
(製造例4)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水224.2g、80%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液23.6g、50%アクリルアミド52.2gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。これをカチオン性高分子A4とする。光散乱法による重量平均分子量は約630万であった。イオン性基密度は2.08meq/gであった。
【0032】
(製造例5)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水255.0g、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム45.0gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.05g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。これをアニオン性高分子A5とする。光散乱法による重量平均分子量200万であった。イオン性基密度は4.2meq/gであった。
【0033】
(製造例6)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口200mlセパラブルフラスコに脱イオン水79.2g、60%アクリル酸水溶液0.83g、50%アクリルアミド19.0gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により45℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.01gを添加し重合を開始させた。22時間重合を継続し反応を終了した。光散乱法による重量平均分子量は約550万であった。イオン基密度は0.54meq/gであった。これをアニオン性高分子B1とする。
【0034】
(製造例7)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに脱イオン水120.3g、60%アクリル酸水溶液0.25g、50%アクリルアミド29.5gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により40℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.02gを添加し重合を開始させた。22時間重合を継続し反応を終了した。光散乱法による重量平均分子量は約650万であった。イオン性基密度は0.12meq/gであった。これをアニオン性高分子B2とする。
【0035】
(製造例8)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに脱イオン水119.1g、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム0.48g、50%アクリルアミド29.52gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により40℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。光散乱法による重量平均分子量は520万であった。イオン性基密度は0.06meq/gであった。これをアニオン性高分子B3とする。
【0036】
(製造例9)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに脱イオン水119.8g、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト0.96g、50%アクリルアミド28.1g、96%硫酸0.31gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により40℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。光散乱法による重量平均分子量は約520万であった。イオン性基密度は0.37meq/gであった。これをカチオン性高分子B4とする。
【0037】
(比較製造例1)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水214.5g、80%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液7.5g、50%アクリルアミド水溶液78.0gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.05g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。重量平均分子量は約620万であった。イオン性基密度は0.53meq/gであった。これを比較カチオン性高分子A6とする。
【0038】
(比較製造例2)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水218.2g、80%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液13.8g、50%アクリルアミド68.0gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。これを比較カチオン性高分子A7とする。重量平均分子量は約680万であった。イオン性基密度は1.05meq/gであった。
【0039】
(比較製造例3)攪拌機、還流冷却管、および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに60%アクリル酸水溶液3.4g、1N−NaOH12.0g、50%アクリルアミド水溶液16.0g、脱イオン水67.7g、ホスフィン酸ナトリウム一水和物0.01gを添加し均一な混合溶液とした。温度を20℃に保ち、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し、系内を窒素置換した。次に2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.01gを添加し、温度を50℃になるようにフラスコを加熱し、重合を開始させた。10時間後に重合を終了した。重量平均分子量は70万であった。イオン性基密度は2.6meq/gであった。これを比較アニオン性高分子B5とする。
【0040】
(比較製造例4)攪拌機、還流冷却管、および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに60%アクリル酸水溶液1.7g、1N−NaOH6.0g、50%アクリルアミド水溶液18.0g、脱イオン水74.3g、ホスフィン酸ナトリウム一水和物0.01gを添加し均一な混合溶液とした。温度を20℃に保ち、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し、系内を窒素置換した。次に2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物0.01gを添加し、温度を50℃になるようにフラスコを加熱し、重合を開始させた。10時間後に重合を終了した。重量平均分子量は80万であった。イオン性基密度は1.32meq/gであった。これを比較アニオン性高分子B6とする。以上の結果を表1に示す。
【0041】
(水中油型エマルジョンの作製)
脱塩水80.0g、オイルとしてモレスコホワイトP−70(株式会社MORESCO製)20.0g、Tween85(クローダジャパン製)2.0gを200mLビーカに入れホモジナイザイザーで4000rpm、2分間乳化した。得られたエマルジョンの粒子径を測定し、キュミュラント法で解析した結果、平均粒子径は1.3マイクロメートルであった。
【実施例1】
【0043】
製造例1から9までのイオン性高分子およびエマルジョンを、表2に記載の条件で混合した。エマルジョン濃度は、オイル分の濃度(g/ml)として表した。1日静置後の粘度と、50mLのサンプル瓶に入れ、振幅約10cm、振動数4回/Sで5秒間手動によりシェイクした後の粘度を測定し、その比からダイラタンシー性を評価した。また、シェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着の有無を観察した。各試料の混合比を表2に、結果を表3に示す。製造例のイオン性高分子からなる混合物はダイラタンシー性を示し、シェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着が観察された。
【0044】
(比較例1)比較製造例1から4のイオン性高分子を表2の条件で混合した。ここにエマルジョンをイオン性高分子水溶液に対し表2に記載されたように添加した。1日静置後の粘度と、50mLのサンプル瓶に入れ、振幅約10cm、振動数4回/Sで5秒間シェイク後の粘度を測定し、その比からダイラタンシー性を評価した。また、シェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着の有無を観察した。混合比を表2に、結果を表3に示す。
【0045】
比較例1−1では、アニオン性高分子B1/比較カチオン性高分子A6(質量比)を0.05〜1.0の範囲で混合したが、ダイラタンシー性は起こらなかった。またシェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着も観察されなかった。混合比を表2に、結果を表3に示す。
【0046】
比較例1−2では、アニオン性高分子B1/比較カチオン性高分子A7(質量比)を0.1〜1.0の範囲で混合したが、ダイラタンシー性は起こらなかった。またシェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着も観察されなかった。混合比を表2に、結果を表3に示す。
【0047】
比較例1−3では、比較アニオン性高分子B5/カチオン性高分子A1(質量比)を0.1〜5.0の範囲で混合したが、ダイラタンシー性は起こらなかった。混合比を表2に、結果を表3に示す。
【0048】
比較例1−4では、比較アニオン性高分子B6/カチオン性高分子A1(質量比)を0.2〜5.0の範囲で混合したが、ダイラタンシー性は起こらなかった。またシェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着も観察されなかった。混合比を表2に、結果を表3に示す。
【0049】
(表2)
イオン性基モル比=混合液中の(B成分イオン当量/A成分イオン当量)
【0050】
(表3)