特許第5980243号(P5980243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980243
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20160818BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20160818BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
   H05B3/10 Z
   F16C13/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-8280(P2014-8280)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-138073(P2015-138073A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−305203(JP,A)
【文献】 特開平11−329700(JP,A)
【文献】 特開平08−286542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00− 3/86
F16C 13/00−13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から交流電流が供給される一次側巻線と、
電流が供給されることにより発熱する熱源を備え、トナー像が形成されたシートに対し予め定められた定着温度で前記熱源の熱を用いた定着処理を行う定着部と、
前記熱源に電気的に接続された二次側巻線と、
前記一次側巻線及び前記二次側巻線が巻き付けられ、前記熱源の熱を受けることにより前記予め定められた定着温度以上になると透磁率が小さくなる予め定められた材料からなり、前記熱源に接触された磁芯体と、
を備える定着装置。
【請求項2】
前記定着部は、前記シートに接触して前記シートを加熱する円筒部を備え、
前記磁芯体は、前記円筒部と前記熱源との間に設けられている請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記一次側巻線と前記二次側巻線とは、互いに隣接して前記磁芯体に巻き付けられている請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記予め定められた材料は、感温磁性材料であり、
前記感温磁性材料のキュリー温度が、前記予め定められた定着温度に設定されている請求項1乃至の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか一項に記載の定着装置を備える画像形成装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像が形成されたシートに対して定着処理を行う定着装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の印刷機構を備えた複写機、プリンター、ファクシミリー、及びこれらの各機能が搭載された複合機などの画像形成装置には定着装置が設けられている。定着装置は、熱源によって表面が加熱される加熱ローラーと、回転軸がこの加熱ローラーの回転軸に平行に設けられた加圧ローラーとを備える。この定着装置を表面にトナー画像が形成されたシートが通過すると、加圧ローラーと加熱ローラーとによりシートが所定の圧力で挟持されつつ加熱される。これにより、トナーがシートに溶着して、シートに画像が定着される。
【0003】
ところで、ウォームアップ時間の短縮化によるユーザーの利便性向上等の観点から、この定着装置に対しては、できるだけ速やかに温度上昇する性能が要求される。従来、定着装置の温度をできるだけ速やかに上昇させるため、例えばシート及び前記シートに形成されたトナー像に熱を与える部材として厚みの薄いベルトを採用するなどして、定着装置の熱容量を小さくした定着装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−125407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、定着装置には、その定着装置の温度を検知するセンサーが備えられ、そのセンサーの検知信号が示す温度に基づいて、前記定着装置の温度制御が行われる。ここで、上記のように熱容量が小さくて温度の上昇速度が大きい定着装置にあっては、僅かな時間で温度が大きく変化することにより、前記定着装置の温度が目標温度を瞬間的に超える場合が生じる。これは、例えば前記センサーの温度検知に要する時間、温度制御を行うCPUの処理時間、前記熱源への供給電流を遮断するのに要する時間などに起因して、定着装置の温度制御が実際の定着装置の温度変化に対して遅延するためである。
【0006】
本発明の目的は、前記定着装置の温度が目標温度を超えるのを回避することのできる定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る定着装置は、一次側巻線と、定着部と、二次側巻線と、磁芯体とを備える。前記一次側巻線には、交流電源から交流電流が供給される。前記定着部は、電流が供給されることにより発熱する熱源を備え、トナー像が形成されたシートに対し予め定められた定着温度で前記熱源の熱を用いた定着処理を行う。前記二次側巻線は、前記熱源に電気的に接続されている。前記磁芯体には、前記一次側巻線及び前記二次側巻線が巻き付けられ、前記熱源の熱を受けることにより前記予め定められた定着温度以上になると透磁率が小さくなる予め定められた材料からなる。
【0008】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、前記定着装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記定着装置の温度が目標温度を超えるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の内部構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る定着装置の構成を示す図である。
図3図3は、図2に示す定着装置の加熱ローラーの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
まず、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の概略構成について説明する。画像形成装置1は、画像読取機能、ファクシミリー機能及び画像形成機能などを備えた複合機である。図1に示されるように、画像形成装置1は、画像読取部2、原稿カバー3、自動原稿送り装置ADF(Auto Document Feeder)4、画像形成部5、給紙カセット7を備えている。なお、本発明に係る画像形成装置の一例として複合機である画像形成装置1を例示して説明するが、本発明はこれに限られず、例えばプリンター、ファクシミリー装置、複写機あるいはスキャナー装置も本発明に係る画像形成装置に該当する。
【0013】
画像読取部2は、原稿から画像データを読み取る画像読取処理を実行する。図1に示されるように、画像読取部2は、コンタクトガラス10、読取ユニット11、ミラー12,13、光学レンズ14及びCCD(Charge Coupled Device)15などを備えている。
【0014】
読取ユニット11は、LED光源16及びミラー17を備えており、ステッピングモーター等の駆動モーターを用いた移動機構(不図示)により副走査方向18(図1における左右方向)へ移動可能に構成されている。そして、前記駆動モーターにより読取ユニット11が副走査方向18へ移動されると、LED光源16から画像読取部2の上面に設けられたコンタクトガラス10へ向けて照射される光が副走査方向18へ走査される。
【0015】
ミラー17は、LED光源16から光が照射されたときに、原稿又は原稿カバー3の裏面で反射した反射光をミラー12へ向けて反射させる。ミラー17で反射した光は、ミラー12,13により光学レンズ14に導かれる。光学レンズ14は、入射した光を集光してCCD15に入射させる。
【0016】
CCD15は、受光した光をその光量(輝度の強度)に応じた電気信号(電圧)に変換して制御部(不図示)へ出力する光電変換素子である。前記制御部では、CCD15からの電気信号を画像処理することにより原稿の画像データを生成する。なお、本実施形態では、撮像素子としてCCD15を用いた例について説明するが、CCD15による読取機構に代えて、CCD15よりも焦点距離の短い密着型のイメージセンサーCIS(Contact Image Sensor)を用いた読取機構を適用することも可能である。
【0017】
画像読取部2には、原稿カバー3が回動自在に設けられている。原稿カバー3が回動操作されることにより、画像読取部2の上面のコンタクトガラス10が開閉される。原稿カバー3の回動支持部には、リミットスイッチなどのカバー開検出センサー(不図示)が設けられており、ユーザーが原稿の画像を読み取らせようとして原稿カバー3が開けられると、そのカバー開検出センサーが作動して、その検出信号(カバー開検出信号)が前記制御部に出力される。
【0018】
ここで、画像読取部2による原稿画像の読み取りは、以下の手順で行われる。まず、原稿がコンタクトガラス10上に載置され、その後、原稿カバー3が閉姿勢にされる。その後、操作表示部(不図示)から画像読取指示が入力されると、読取ユニット11を副走査方向18の右向きへ移動させつつLED光源16から連続して順次1ライン分の光が照射される。そして、原稿又は原稿カバー3の裏面からの反射光がミラー17,12,13及び光学レンズ14を介してCCD15に導かれ、CCD15にて受光した光量に応じた光量データが順次前記制御部に出力される。前記制御部は、光が照射された領域全体における光量データが得られると、その光量データを処理することにより、前記光量データから原稿の画像データを生成する。
【0019】
なお、原稿カバー3にADF4が設けられている。ADF4は、原稿セット部19にセットされた一以上の原稿を複数の搬送ローラーにより順次搬送して、コンタクトガラス10上に定められた自動原稿読取位置を副走査方向18の右向きへ通過するように原稿を移動させる。ADF4による原稿の移動時は、前記自動原稿読取位置の下方に読取ユニット11が配置され、この位置で読取ユニット11により移動中の原稿の画像が読み取られる。原稿セット部19には、接点信号を出力可能な機械的なシートセンサー(不図示)が設けられており、原稿セット部19に原稿がセットされると、前記シートセンサーが作動して、その検出信号(原稿検出信号)が前記制御部に出力される。
【0020】
図1に示されるように、画像形成部5は、画像読取部2で読み取られた画像データ、又は外部のパーソナルコンピューター等の情報処理装置から入力された印刷ジョブに基づいて画像形成処理(印刷処理)を実行する電子写真方式の画像形成手段である。具体的には、画像形成部5は、感光体ドラム20、帯電部21、現像部22、トナーコンテナ23、転写ローラー24、除電部25、定着装置26などを備えている。なお、本実施形態では、電子写真方式の画像形成部5を例にして説明するが、画像形成部5は電子写真方式のものに限られず、インクジェット記録方式のものであっても、或いはそれ以外の記録方式又は印刷方式のものであってもかまわない。
【0021】
画像形成部5では、給紙カセット7から供給されるシートに対する画像形成処理が以下の手順で行われる。まず、外部の装置から印刷指示を含む印刷ジョブが入力されると、帯電部21により感光体ドラム20が所定の電位に一様に帯電される。次に、レーザスキャナユニット(不図示)により感光体ドラム20の表面に印刷ジョブに含まれる画像データに基づく光が照射される。これにより、感光体ドラム20の表面に静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム20上の静電潜像は現像部22によりトナー像として現像(可視像化)される。なお、現像部22には、トナーコンテナ23からトナー(現像剤)が補給される。続いて、感光体ドラム20に形成されたトナー像は転写ローラー24によりシートに転写される。なお、感光体ドラム20の電位は除電部25で除電される。その後、シートに転写されたトナー像は、そのシートが定着装置26を通過して排出される際に加熱されて溶融定着する。
【0022】
図2に示されるように、定着装置26は、シートに転写されたトナー像を加熱して溶融定着させるものであり、加熱ローラー27及び加圧ローラー28を有する定着部29を備える。
【0023】
加熱ローラー27は、画像形成装置1の前後方向(図1の紙面表裏方向)に延びる長尺状の部材である。加熱ローラー27は、円筒形状に形成されたローラー本体27Aを備える。ローラー本体27Aの周面が定着時にシートの画像面(トナー像が付着している面)に接触される。ローラー本体27Aは、シートに接触して前記シートを加熱する円筒部である。
【0024】
ローラー本体27Aは、熱伝導率の高い材料、例えばアルミニウムなどの金属で形成されている。ローラー本体27Aは、両端が定着装置26のフレーム(不図示)に支持された長尺のガイド部材により回転可能に支持されている。加熱ローラー27は、加圧ローラー28の回転に伴って従動回転する。
【0025】
ローラー本体27Aは、定着装置26で定着可能な最大幅のシートと接触可能な長さに形成されている。本実施形態では、A3サイズ(420mm×297mm)のシートが定着装置26で定着可能であり、ローラー本体27Aは、A3サイズの短辺寸法(297mm)よりも長く形成されている。
【0026】
加圧ローラー28は、加熱ローラー27に対向配置されている。加圧ローラー28は、加熱ローラー27に平行であって、加熱ローラー27の表面に圧接された状態で回転可能に支持されている。加圧ローラー28は、中心に支軸28A(図2参照)を有しており、支軸28Aが定着装置26のフレーム(不図示)に回転可能に支持されている。これにより、加圧ローラー28が回転可能となる。加圧ローラー28は、モーター(不図示)が回転駆動されることによって、その回転駆動力が伝達されて、所定方向へ回転する。本実施形態では、加圧ローラー28は、図2において反時計周り(矢印47参照)に回転される。加圧ローラー28の支軸28Aには弾性を有するシリコンや多孔質ゴムなどの筒形状の弾性部28Bが設けられている。加圧ローラー28は、加熱ローラー27に対してバネなどによって圧接されている。これにより、弾性部28Bがローラー本体27Aによって弾性変形して湾曲状に凹まされたニップ部50が形成される。
【0027】
加熱ローラー27の内部には、電流が供給されることにより発熱する熱源としてのヒーター33が固設されている。図2に示されるように、ヒーター33は、両端が定着装置26のフレーム(不図示)に支持された長尺の支持部材38に取り付けられている。ヒーター33は、例えばハロゲンヒーターやセラミックヒーター等によって構成され、通電されることによって熱を放射する。これにより、加熱ローラー27のローラー本体27A全体がヒーター33によって内部から加熱される。本実施形態では、ヒーター33は、ローラー本体27Aの断面中心よりニップ部50寄りの位置に固設されている。
【0028】
定着装置26においては、シートがニップ部50を右から左へ抜けるように搬送される。回転駆動される加圧ローラー28の圧接により、加熱ローラー27が従動して、図2において時計回転方向(矢印46参照)へ回転される。このため、ニップ部50に進入したシートは、加熱ローラー27及び加圧ローラー28によって挟持されつつ、熱の供給を受けながら左方へ搬送される。このときに、加熱ローラー27から供給された熱によって、シートのトナー像が溶融して、シートに定着する。
【0029】
ところで、このような定着装置26に対しては、加熱ローラー27が冷えた状態から所定の定着温度になるまでのウォームアップ時間の短縮化によるユーザーの利便性向上等の観点から、できるだけ速やかに温度上昇する性能が要求される。従来、定着装置の温度をできるだけ速やかに上昇させるために、例えば熱容量の低い薄いベルトを採用するなどして定着装置の熱容量を下げ、このベルトを介してトナー及びシートに熱を与える場合がある。
【0030】
通常、定着装置には、その定着装置の温度を検知するセンサーが備えられ、そのセンサーの検知信号が示す温度に基づいて、前記定着装置の温度制御が行われる。ここで、上記のように温度の上昇速度が大きい定着装置にあっては、僅かな時間で温度が大きく変化することにより、前記定着装置の温度が目標温度(定着に適した温度)を瞬間的に超える場合が生じる。これは、例えば前記センサーの温度検知に要する時間、温度制御を行うCPUの処理時間、前記熱源への供給電流を遮断するのに要する時間などに起因して、定着装置の温度制御が実際の定着装置の温度変化に対して遅延するためである。
【0031】
本実施形態では、定着装置26の温度が前記目標温度を超える状況が生じるのを可及的に防止するため、定着装置26は、過昇温防止機構100を備える。過昇温防止機構100は、磁芯体101と、一次側巻線102と、二次側巻線103とを備える。
【0032】
磁芯体101は、薄形直方体形状を有し、加熱ローラー27の一端から他端まで延びる長尺体である。磁芯体101は、ヒーター33に取り付けられてヒーター33に接触する。これにより、磁芯体101は、ヒーター33から発せられる熱を受けて加熱される。また、磁芯体101は、ローラー本体27Aのニップ部50近傍とヒーター33との間に設けられている。
【0033】
磁芯体101は、温度によって透磁率が変化する感温磁性材料からなる。本実施形態における感温磁性材料は、磁気特性が温度に応じ強磁性と非磁性(常磁性)との間で可逆的に遷移する。具体的には、感温磁性材料は、キュリー温度以下の範囲では透磁率が略一定若しくは温度上昇に応じて若干大きくなり、キュリー温度以上になると磁性を失う。なお、感温磁性材料が磁性を失うとは、透磁率がきわめて小さい値になることを含む。このような感温磁性材料として、例えば、鉄とニッケルとの合金、鉄とニッケルとクロムとの合金、或いは銅とニッケルとの合金などが用いられる。前記感温磁性材料のキュリー温度は、合金を組成する各金属の組成比率に応じて決定される。
【0034】
ここで、本実施形態では、前記組成比率が調整されることにより、前記感温磁性材料のキュリー温度が前記目標温度、すなわち定着装置26によってトナー像をシートに定着させるのに適した定着温度に設定されている。前記目標温度は、例えば160℃〜180℃に設定されている。
【0035】
磁芯体101には、ワイヤー状の所定の金属線材が所定巻き数巻回された一次側巻線102と二次側巻線103とが巻き付けられている。一次側巻線102には、画像形成装置1内に備えられる交流電源500が接続されており、この交流電源500から周波数や振幅が予め定められた所定の交流電流が一次側巻線102の両端に印加される。二次側巻線103の一端は、定着部103のヒーター33の端子T1に電気的に接続されており、二次側巻線103の他端は、ヒーター33の端子T2に電気的に接続されている。したがって、二次側巻線103に電流が流れると、ヒーター33にも電流が流れる。このとき、ヒーター33から熱が発せられる。
【0036】
交流電源500から一次側巻線102に交流電流が供給されると、その交流電流に伴い一次側巻線102で磁力線が生じ、且つ、その交流電流の周波数等に応じてその磁力線の数が変化する。したがって、二次側巻線103内を通る磁力線の数も変化し、この磁力線数の変化による電磁誘導によって二次側巻線103に誘導起電力が生じる。これに伴い、二次側巻線103に交流電流が発生する。これにより、二次側巻線103に発生した交流電流がヒーター33に供給され、そのヒーター33からジュール熱が発せられる。
【0037】
本実施形態では、一次側巻線102と二次側巻線103とは、磁芯体101が延びる長手方向に近接して巻き付けられている。これにより、一次側巻線102と二次側巻線103とが離間して磁芯体101に巻き付けられる構成に比して、交流電源500から供給される交流電流により一次側巻線102で生じる磁力線のうち二次側巻線103内を通る磁力線の密度が大きくなる。その結果、電磁誘導によって二次側巻線103に生じる誘導起電力が大きくなり、一次側巻線102に供給する電流の大きさに対するヒーター33の発熱量の比率、すなわち電力効率を可及的に大きくすることができる。
【0038】
磁芯体101は、ヒーター33により加熱され、やがて前記キュリー温度に達する。磁芯体101の温度がキュリー温度に達すると、磁芯体101の透磁率が急激に低下し磁性を失う。そのため、二次側巻線103内を通る磁力線が無くなる。よって、誘導起電力が発生しなくなり、二次側巻線103には電流が流れなくなる。二次側巻線103にはヒーター33が接続されているため、二次側巻線103に電流が流れなくなることに伴ってヒーター33にも電流が流れなくなる。これにより、ヒーター33の発熱が止まる。その結果、磁芯体101の温度上昇が止まり、磁芯体101の温度が低下していく。
【0039】
そして、磁芯体101の温度が前記キュリー温度を下回ると、磁芯体101は、非磁性(常磁性)から強磁性に戻る。一次側巻線102には交流電源500から交流電流が供給され続けているので、一次側巻線102で生じた磁力線の多くが二次側巻線103内を通る状態となり、電磁誘導によって二次側巻線103にも再び電流が発生する。よって、二次側巻線103に電流が流れることに伴い、ヒーター33にも電流が流れる。これにより、ヒーター33が発熱し、加熱ローラー27の温度が上昇し、やがて再び前記キュリー温度に達する。磁芯体101の温度がキュリー温度に達すると、磁芯体101の透磁率が再び急激に低下し磁性を失う。よって、上記と同様に、二次側巻線103には電流が流れなくなる。以上の状態変化が繰り返される。
【0040】
このように、本実施形態では、磁芯体101の温度が前記キュリー温度以上になると、ヒーター33への供給電流が遮断され、磁芯体101の温度が前記キュリー温度より低くなると、ヒーター33への電流供給が再開される。よって、磁芯体101の温度は、前記キュリー温度、ひいては定着温度付近で安定化される。よって、ローラー本体27Aの温度が目標温度を超えるのを回避することができる。その結果、シートを加熱する温度が定着温度で安定化される。
【0041】
すなわち、本実施形態では、ヒーター33に対する電流供給のオンオフが、キュリー温度が定着温度に設定された磁芯体101によって行われる。そのため、センサーの検知温度に基づいて前記定着装置の温度制御が行われる従来技術のように、ヒーター33に対する電流供給のオンオフ制御に、前記センサーの温度検知に要する時間、CPUの処理時間等が介在しない。すなわち、従来に比して、ヒーター33に対する電流供給のオンオフの応答性が高い。よって、ローラー本体27Aの温度が目標温度を超えるのを回避することができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は前述した内容のものに限られず、種々の変形例が適用可能である。
【0043】
前記実施形態では、磁芯体101がヒーター33に接触されているが、これは必須ではない。ただし、磁芯体101がヒーター33に接触させる形態が好ましい。なぜなら、磁芯体101がヒーター33に接触することで、磁芯体101の温度がヒーター33の実際の温度に最も近似した温度となる。つまり、磁芯体101が磁性を失う温度(ヒーター33への供給電流が遮断されるときの磁芯体101の温度)と、ヒーター33の実際の温度との誤差が最小となり、ヒーター33に対する電流供給のオンオフ制御を正確に行うことができるからである。また、前記実施形態では、磁芯体101がローラー本体27Aとヒーター33との間に設けられているが、この形態に限定されるものではなく、例えば、ヒーター33のニップ側とは反対側の面に設けられていてもよい。
【0044】
前記実施形態では、一次側巻線102と二次側巻線103とが互いに隣接して磁芯体101に巻き付けられているが、一次側巻線102と二次側巻線103とが磁気的に結合していれば、両巻線102、103が互いに隣接することは必須ではなく、磁芯体101の延びる方向に離間していてもよい。ただし、両巻線102、103が互いに隣接する形態が最も好ましい。なぜなら、一次側巻線102に発生した磁力線のうち二次側巻線103内を通る磁力線の密度(本数)が最も大きくなり、二次側巻線103に生じる誘導起電力、ひいてはヒーター33に流れる電流を大きくすることができるからである。すなわち、ヒーター33を発熱させる際の電力効率が最大となるからである。
【0045】
前記実施形態では、磁芯体101が感温磁性材料で構成されているが、定着温度になると磁性を失う性質を有する材料で構成されていれば、磁芯体101の材質は、感温磁性材料でなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 画像形成装置
26 定着装置
27 加熱ローラー
27A ローラー本体
28 加圧ローラー
29 定着部
100 過昇温防止機構
101 磁芯体
102 一次側巻線
103 二次側巻線
図1
図2
図3