特許第5980248号(P5980248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンナイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5980248-温風暖房機 図000002
  • 特許5980248-温風暖房機 図000003
  • 特許5980248-温風暖房機 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980248
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】温風暖房機
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/04 20060101AFI20160818BHJP
   F23N 5/02 20060101ALI20160818BHJP
   F23N 5/20 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   F24H3/04 305A
   F24H3/04 301
   F23N5/02 350K
   F23N5/20 G
   F23N5/20 H
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-12697(P2014-12697)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-140941(P2015-140941A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝俊
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−002064(JP,A)
【文献】 特開2004−003771(JP,A)
【文献】 特開昭63−315828(JP,A)
【文献】 特開2006−242521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/00 − 3/04
F24D 5/00 − 5/12
F23N 1/02 − 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナと、該ガスバーナにより加熱された空気を室内に送出するファンと、室温を検出する室温センサと、前記ガスバーナに供給する燃料ガスの供給量を調節可能なガス量調節手段と、前記ガスバーナに点火して暖房運転を開始した後、前記室温センサの検出温度に応じて、前記ガスバーナの燃焼停止と点火とによる温調制御を行う制御手段とを備える温風暖房機において、
前記制御手段は、前記温調制御時に前記ガスバーナに点火するときの臭気の発生を抑制するために、該ガスバーナへの燃料ガスの供給量と前記ファンの回転数とが、暖房運転開始時における前記ガスバーナへの点火時よりも小となるように前記ガス量調節手段と前記ファンとを制御することを特徴とする温風暖房機。
【請求項2】
請求項1記載の温風暖房機において、
操作により設定温度を入力する設定温度入力手段と、該設定温度入力手段に入力された設定温度に基づいて目標温度を設定する目標温度設定手段とを備え、
前記制御手段の温調制御においては、前記室温センサの検出温度が前記目標温度を超えたとき前記ガスバーナの燃焼を停止させ、前記検出温度が前記設定温度以下となったとき前記ガスバーナに点火することを特徴とする温風暖房機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナの燃焼により加熱した空気をファンにより室内に送出することで室内の暖房を行う温風暖房機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の温風暖房機においては、一般に、使用者が設定した温度に基づく目標温度と実際の室温とが略一致するように、ガスバーナの燃焼量(ガスバーナへのガス燃料の供給量)及びファンの回転数を調節する温調制御が行われる。このような温調制御では、室温が目標温度に達した時、これ以上の室温の上昇を抑えるべく、ガスバーナの燃焼量を最小に維持することも行われている。
【0003】
また、この種の温風暖房機においては、ガスバーナの燃焼量を最小にしても室温が上昇し続けた場合に、ガスバーナの燃焼を一時的に停止させることで、室温を使用者が設定した温度の近傍に維持する温調制御が選択的に行えるものも知られている(下記特許文献1参照)。このものでは、室温が目標温度に達したとき、ガスバーナの燃焼運転を停止させ、その後、室温が目標温度以下まで下がったときにガスバーナに点火して燃焼運転を再開する。このように、室温が十分に上昇した際にガスバーナの燃焼を停止させ、その後の室温の低下に応じてガスバーナへの点火を行うことで、過剰な暖房を防止することができ、暖房にかかる燃料費を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−2064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスバーナの燃焼停止と点火との繰り返しによって温調制御を行っているとき、ガスバーナへの点火の際に温風と共に臭気が送出されることがあり、使用者に対して臭気による不快感を与える不都合があった。
【0006】
本発明は、このような不都合を解消し、ガスバーナの燃焼と点火とを繰り返す温調制御時に臭気の発生を抑制することができる温風暖房機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガスバーナと、該ガスバーナにより加熱された空気を室内に送出するファンと、室温を検出する室温センサと、前記ガスバーナに供給する燃料ガスの供給量を調節可能なガス量調節手段と、前記ガスバーナに点火して暖房運転を開始した後、前記室温センサの検出温度に応じて、前記ガスバーナの燃焼停止と点火とによる温調制御を行う制御手段とを備える温風暖房機において、前記制御手段は、前記温調制御時に前記ガスバーナに点火するときの臭気の発生を抑制するために、該ガスバーナへの燃料ガスの供給量と前記ファンの回転数とが、暖房運転開始時における前記ガスバーナへの点火時よりも小となるように前記ガス量調節手段と前記ファンとを制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明においては、操作により設定温度を入力する設定温度入力手段と、該設定温度入力手段に入力された設定温度に基づいて目標温度を設定する目標温度設定手段とを備えることが好ましい。そして、前記制御手段の温調制御においては、前記室温センサの検出温度が前記目標温度を超えたとき前記ガスバーナの燃焼を停止させ、前記検出温度が前記設定温度以下となったとき前記ガスバーナに点火する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の温風暖房機は、ガスバーナに点火して暖房運転を開始した後、前記制御手段の温調制御により、前記ガスバーナの燃焼停止と点火とが行われる。
【0010】
暖房運転開始時は、通常、室温が低い状態であるため、ガスバーナを確実に点火して迅速に室温を上昇させる必要性から、燃料ガスの供給量とファンの回転数とが比較的大きく設定される。一方、温調制御によってガスバーナの燃焼が停止したときには、室温が十分に上昇した状態であって、ガスバーナ自体の温度も比較的高い。このような状態でガスバーナに点火するとき、暖房運転開始時と同じ燃料ガスの供給量とファンの回転数とを採用すると、点火時のガスバーナから臭気の発生量が大きく室内への拡散も大きくなる。
【0011】
そこで、本発明においては、温調制御時に室温の上昇に伴いガスバーナの燃焼を停止させた後の点火の際に、前記制御手段がガス量調節手段とファンとを制御して、ガスバーナに供給する燃料ガスの量とファンの回転数とを、暖房運転開始時の点火時よりも小とする。これによれば、ガスバーナの点火時における臭気の発生量と拡散とを共に抑制することができ、臭気による使用者の不快感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る温風暖房機の構成を模式的に示す図。
図2】温風暖房機の制御ブロック図。
図3】温風暖房機の作動フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。温風暖房機1は、図1に模式的に示すように、本体ケーシング2内に、ガスバーナ3と、ファン4と、コントローラ5(制御手段)とを備えている。
【0014】
本体ケーシング2には、複数のスイッチや表示部からなる操作パネル6が露出して設けられている。本体ケーシング2の一側(図中上側)には空気取り入れ口7が形成され、本体ケーシング2の他側(図中下側)には温風吹出し口8が形成されている。
【0015】
本体ケーシング2の内部には、隔壁板9により仕切られた空気通路10が形成されている。空気通路10は、上流端が空気取り入れ口7により開放され、下流端が温風吹出し口8により開放されている。ガスバーナ3とファン4とは、空気通路10内部に配設されている。
【0016】
本体ケーシング2の空気取り入れ口7の近傍には、サーミスタにより構成された室温センサ11が取付けられている。室温センサ11は、空気取り入れ口7近傍の空気の温度を室温として検出し、検出温度(室温)を示す信号をコントローラ5に出力する。
【0017】
ガスバーナ3は、燃焼室12内に収容されており、ガス供給管13により燃料ガスが供給される。ガス供給管13には、電磁弁14,15及び比例弁16(ガス量調節手段)が配設されている。電磁弁14,15は通電されることにより開弁するものであり、通電を停止すると閉弁状態となって燃料ガスの通過を遮断する。比例弁16は、通電電流の大きさに伴って開度が増大するようになっており、コントローラ5により通電電流が制御されてガスバーナ3への燃料ガスの供給量が調節される。なお、本実施形態においては、最小開度から最大開度まで複数段に切り換えることにより燃料ガスの供給量を選択的に変更する比例弁16を採用した。本実施形態において採用した比例弁16は、7つの開度を有しており、最も小さい1開度から順次開度が大きくなって7開度が最も大きい開度となる。比例弁16の開度に比例してガスバーナ3に供給される燃料ガスが増加する。
【0018】
また、燃焼室12内におけるガスバーナ3の上方位置には点火電極17と熱電対18とが設けられている。点火電極17は、イグナイタ19を介してコントローラ5に電気的に接続され、コントローラ5の指示によりガスバーナ3に点火する。熱電対18は、ガスバーナ3の炎に接した際の熱起電力ををコントローラ5に出力する。
【0019】
ガスバーナ3の燃焼排気は、燃焼室12の上部から放出される。この燃焼排気は、空気取り入れ口7から取り入れた比較的低い温度の空気と混合され、空気通路10内において適度に加熱された暖房用空気が生成される。空気通路10内で生成された暖房用空気は、ファン4によって温風として温風吹出し口8から室内に送出される。
【0020】
ファン4は、通電電流により回転数が変更可能なファンモータ20を備えている。ファンモータ20はコントローラ5に電気的に接続されており、コントローラ5が指示する回転数でファン4を回転させる。ファン4の回転数は、ファン4の大きさや形状及びファンモータ20の能力によって適宜設定されるが、本実施形態においては、0rpm(停止)から最大1030rpmの範囲の回転数が用いられる。ファン4の回転により、空気取り入れ口7から室内空気を空気通路10に取り入れ、ガスバーナ3によって加熱された空気を温風として温風吹出し口8から送出する。
【0021】
コントローラ5は、図2に示すように、マイクロコンピュータ等を用いて構成されたものであり、プログラム等が格納された記憶部21と、目標温度を設定する目標温度設定部22と、ファンモータ20の回転数を制御する送風制御部23と、ガスバーナ3の点火及び燃焼量(比例弁16の開度)を制御する燃焼制御部24とを機能として備えている。また、燃焼制御部24は通常温調制御部25とエコロジー運転(以下、エコ運転という。)制御部26とを機能として備えている。
【0022】
コントローラ5は、操作パネル6からの入力状況に応じて暖房運転を行う。操作パネル6には、暖房運転の開始を指示するための運転スイッチ27、希望室温を入力するための温度設定スイッチ28(設定温度入力手段)、後述のエコロジー運転を指示するエコ運転スイッチ29等の各種スイッチが配設されている。
【0023】
目標温度設定部22は、温度設定スイッチ28により入力された設定温度に基づいて目標温度を設定する。目標温度は、例えばガスバーナ3の能力等に応じて、設定温度よりも高い温度に予め設定されるものであり、本実施形態における目標温度設定部22は、設定温度よりも1℃高い温度を目標温度として設定する。
【0024】
燃焼制御部24は、室温センサ11の検出温度(室温)が、目標温度設定部22により設定された目標温度と一致するように、ガスバーナ3の燃焼量(空気通路10内部の空気の加熱量)を制御する。
【0025】
送風制御部23は、燃焼制御部24に連動して、ファン4がガスバーナ3の燃焼量に応じた回転数となるようにファンモータ20を制御する。
【0026】
また、燃焼制御部24は、通常温調制御部25による温調制御と、エコ運転制御部26による温調制御とを選択的に行うことが可能とされている。通常温調制御部25による温調制御は、操作パネル6のエコ運転スイッチ29がオフとされている状態で行われる温調制御である。エコ運転制御部26による温調制御は、操作パネル6のエコ運転スイッチ29がオンとされている状態で行われる温調制御である。
【0027】
次に、図3のフローチャートを参照して、コントローラ5による温風暖房機1の制御動作について説明する。
【0028】
運転スイッチ27による暖房運転の開始が指示されると、コントローラ5はSTEP1で燃焼制御部24を介してガスバーナ3への点火(通常点火)処理を行う。STEP1は暖房運転開始時におけるガスバーナ3への点火処理である。STEP1の点火は暖房運転開始時であるから、送風制御部23がファン4を通常点火時の回転数(150rpm)で回転させ、燃焼制御部24の通常温調制御部25が比例弁16を2開度に開弁させる。これにより、暖房運転開始時であるため室温が低くガスバーナ3自体の温度が低くても、確実にガスバーナ3に点火して迅速に燃焼を安定させることができる。
【0029】
STEP1の点火処理を行ってガスバーナ3の燃焼が確認されると、コントローラ5はSTEP2へ進み、通常温調制御部25による温調制御を行う。STEP2における温調制御では、目標温度設定部22によって設定された目標温度を用い、室温センサ11の検出温度が目標温度より極度に低いとき、比例弁16の開度を増加させ(6開度或いは7開度等の大きな開度を選択し)、ガスバーナ3の燃焼量を大とする。その後、室温センサ11の検出温度が目標温度になったときには、比例弁16の開度を減少させ(2開度或いは1開度等の小さな開度を選択し)てガスバーナ3の燃焼量を小とする。これにより、一定の室温が保持されるようにするが、更にその後、室温センサ11の検出温度が目標温度よりも低下した場合には、比例弁16の開度を増加させてガスバーナ3の燃焼量を大とする。
【0030】
次いで、コントローラ5は、STEP3でエコ運転スイッチ29のオン・オフを確認し、エコ運転スイッチ29がオフである時には、STEP2に戻って通常温調制御部25による温調制御を継続させる。
【0031】
一方、STEP3においてエコ運転スイッチ29がオンであるときには、コントローラ5は、エコ運転制御部26によってSTEP4〜STEP7の温調制御を行う。即ち、エコ運転制御部26は、STEP4で室温(室温センサ11の検出温度)と目標温度とを比較し、室温が目標温度以下である場合にはSTEP2に戻って通常温調制御部25による制御と同じ温調制御を行うが、室温が目標温度を超えた場合には、STEP5へ進んでガスバーナ3の燃焼を停止させる。
【0032】
STEP4において室温が目標温度を超えた場合、通常温調制御部25による温調制御が行われ、例えば比例弁16を1開度(最小の開度)に維持してガスバーナ3を最小燃焼量としても、室温が上昇を続けてしまっていることが考えらえる。そこで、エコ運転制御部26がSTEP5でガスバーナ3の燃焼を停止させることで、過剰な暖房が継続されることを防止して、燃料消費を低減する。
【0033】
次いで、エコ運転制御部26は、STEP6に進み、室温が設定温度以下になるまでガスバーナ3の燃焼停止を維持させる。そして、室温が設定温度以下になったとき、ガスバーナ3への点火(エコロジー点火)処理を行う。このときの点火においては、エコ運転制御部26は、STEP1の通常点火よりも低い回転数(本実施形態では100rpm)でファン4を回転させるよう送風制御部23に指示すると共に、比例弁16の開度をSTEP1の通常点火よりも小さい1開度とする。
【0034】
その後コントローラ5は、使用者が運転スイッチ27をオフにしない限り、STEP2〜STEP7を繰り返す。この間、STEP5におけるガスバーナ3の燃焼停止とSTEP7におけるエコロジー点火とが繰り返される。そして、STEP7におけるエコロジー点火では、STEP1の通常点火よりも低い回転数(本実施形態では100rpm)でファン4が回転され、比例弁16の開度がSTEP1の通常点火よりも小さい1開度とされることにより、点火時の臭気の発生が少なく、室内への拡散も小さい。しかも、STEP7における点火時には、暖房運転開始時と異なり、室温及びガスバーナ3自体の温度が比較的高くなっているので、燃料ガスの供給量を少なくしファンの回転数を低くしても支障なく点火することができ、これによっても燃料の消費量を低減させることができる。
【0035】
本発明者は、エコ運転制御部26による温調制御での点火(STEP7)において、暖房運転開始時の点火(STEP1)と同じ燃料ガスの供給量(比例弁16開度が2開度)とファン4の回転数(150rpm)とを用いた場合(従来の点火条件)と、暖房運転開始時の点火時(STEP1)よりも少ない燃料ガスの供給量(比例弁16開度が1開度)とファン4の回転数(100rpm)とを用いた場合(本実施形態の点火条件)とで、臭気の発生状況を比較した。その結果、エコ運転制御部26による温調制御でのSTEP7の点火時においては、本実施形態の点火条件を採用した場合に、従来の点火条件に比べて臭気の発生が飛躍的に少なくなることを確認した。更に、エコ運転制御部26による温調制御での点火(STEP7)において、従来の点火条件と本実施形態の点火条件とで、点火直後の温風に混入している燃料ガスの構成成分(炭化水素等)の濃度を計測したところ、本実施形態の点火条件によれば従来の点火条件に対して30%以上減少することを確認した。
【0036】
以上のように、本実施形態の温風暖房機1によれば、ガスバーナ3の燃焼と点火とを繰り返す温調制御時(エコ運転制御部26による温調制御時)の点火に伴う臭気の発生を抑制することができ、臭気による使用者の不快感を軽減することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…温風暖房機、3…ガスバーナ、4…ファン、5…コントローラ(制御手段)、11…室温センサ、16…比例弁(ガス量調節手段)、22…目標温度設定部(目標温度設定手段)、28…温度設定スイッチ(設定温度入力手段)。
図1
図2
図3