特許第5980329号(P5980329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980329
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】静電結合方式非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20160818BHJP
【FI】
   H02J50/05
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-523467(P2014-523467)
(86)(22)【出願日】2012年7月2日
(86)【国際出願番号】JP2012066923
(87)【国際公開番号】WO2014006685
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】野村 壮志
(72)【発明者】
【氏名】石浦 直道
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 慎二
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−110118(JP,A)
【文献】 特開2012−50314(JP,A)
【文献】 特開平8−214405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H04B 5/00−5/06
H05K 3/30
13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部に設けられた複数の非接触給電用電極と、
前記複数の非接触給電用電極の間に高周波電力を給電する高周波電源回路と、
前記固定部に移動可能に装架された可動部に設けられ、前記複数の非接触給電用電極にそれぞれ離隔対向して非接触で高周波電力を受け取る複数の非接触受電用電極と、
前記複数の非接触受電用電極が受け取った高周波電力を変換して前記可動部上の電気負荷に給電する受電回路とを備えた静電結合方式非接触給電装置であって、
前記非接触給電用電極および前記非接触受電用電極は、前記可動部の移動方向と直角な断面形状が基部および前記基部から延在する複数の歯部からなり、かつ前記複数の歯部同士が相互に離隔しつつ互い違いに嵌合した櫛型電極であり、
さらに、前記非接触受電用電極は、前記歯部の表面が導体層で覆われ、前記歯部の内部および前記基部が前記導体層よりも比重の小さい材質で形成された櫛型電極である静電結合方式非接触給電装置。
【請求項2】
固定部に設けられた複数の非接触給電用電極と、
前記複数の非接触給電用電極の間に高周波電力を給電する高周波電源回路と、
前記固定部に移動可能に装架された可動部に設けられ、前記複数の非接触給電用電極にそれぞれ離隔対向して非接触で高周波電力を受け取る複数の非接触受電用電極と、
前記複数の非接触受電用電極が受け取った高周波電力を変換して前記可動部上の電気負荷に給電する受電回路とを備えた静電結合方式非接触給電装置であって、
前記非接触給電用電極および前記非接触受電用電極は、前記可動部の移動方向と直角な断面形状が基部および前記基部から延在する複数の歯部からなり、かつ前記複数の歯部同士が相互に離隔しつつ互い違いに嵌合した櫛型電極であり、
さらに、前記非接触受電用電極は、前記歯部および前記基部の少なくとも一方の内部に空間を有して軽量化された櫛型電極である静電結合方式非接触給電装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記非接触給電用電極は、前記歯部の表面が導体層で覆われ前記歯部の内部および前記基部が前記導体層よりも比重の小さい材質で形成された櫛型電極、あるいは、前記歯部および前記基部の少なくとも一方の内部に空間を有して軽量化された櫛型電極である静電結合方式非接触給電装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記櫛型電極の歯部の断面形状は、前記基部に近い側で広く前記基部から離れるにしたがって狭くなる三角形断面または台形断面である静電結合方式非接触給電装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記可動部は、基板に所定の作業を行う基板用作業機器に装備されている静電結合方式非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部上の電気負荷に固定部から非接触で給電する非接触給電装置に関し、より詳細には、電極板を離隔対向して配置した静電結合方式非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が実装された基板を生産する基板用作業機器として、はんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、基板検査機などがあり、これらを基板搬送装置で連結して基板生産ラインを構築する場合が多い。これらの基板用作業機器の多くは基板の上方を移動して所定の作業を行う可動部を備えており、可動部を駆動する一手段としてリニアモータ装置を用いることができる。リニアモータ装置は、移動方向に沿い複数の磁石のN極およびS極が交互に列設された軌道部材と、コアおよびコイルを有する電機子を含んで構成された可動部とを備えるのが一般的である。リニアモータ装置を始めとする可動部上の電気負荷に給電するために、従来から変形可能な給電用ケーブルが用いられてきた。また、近年では、給電用ケーブルによる荷搬重量の増加や金属疲労による断線のリスクなどの弊害を解消するために、非接触給電装置の適用が提案されている。
【0003】
非接触給電装置の方式として、従来からコイルを用いた電磁誘導方式が多用されてきたが、最近では対向する電極板によりコンデンサを構成した静電結合方式も用いられるようになってきており、他に磁界共鳴方式なども検討されている。非接触給電装置の用途は、基板用作業機器に限定されるものではなく、他の業種の産業用機器や家電製品などの幅広い分野に広まりつつある。特許文献1には、非接触給電装置を自動車に装備した技術例が開示されている。
【0004】
特許文献1の信号電力の伝送装置は、ドアパネルとボディパネルとに対向して一対の電磁的結合器あるいは静電的結合器をそれぞれ取り付け、かつ、ドア側に充電装置およびバッテリーを備えている。そして、非接触給電によりバッテリーに蓄電して、ドア側の電装品に電源を供給できるように構成されている。これにより、車体とドアとの間のワイヤハーネスが不要となり、配索作業が簡単になって、コストの低下や省資源化を図ることができる、と記載されている。さらに、第2実施形態には、一対の静電的結合器の構造として複数枚の電極を互い違いに挿入した態様が開示されており、電極の対向面積を増加させて大きな静電容量のコンデンサが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−266643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板用作業機器に非接触給電装置を装備する場合に、電磁誘導方式ではコイルが重量化して可動部の総重量が大きくなり、また、リニアモータ装置との磁界干渉を避ける構成上の制約が生じるため、静電結合方式が有望と考えられる。静電結合方式の非接触給電における給電容量および給電効率は、固定部および可動部の電極により構成されるコンデンサの静電容量の大小に依存する。しかしながら、静電容量を大きくするために電極を大形化すれば、やはり可動部が大きくなって重量化しがちである。また、電極の全表面積のうち互いに対向して非接触給電に寄与できる有効面積の比率には限度があり、対向していない部分から無駄に放射される電界の分だけ給電効率が低下する。この意味で、特許文献1の第2実施形態の静電的結合器の態様は好ましいものであるが、一層の性能向上の余地が残されている。性能向上の問題点は基板用作業機器の用途に限定されず、幅広い分野に適用される非接触給電装置に共通している。
【0007】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、非接触給電の給電容量および給電効率を従来よりも向上するとともに、給電対象となる可動部を軽量化した静電結合方式非接触給電装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に係る静電結合方式非接触給電装置の発明は、固定部に設けられた複数の非接触給電用電極と、前記複数の非接触給電用電極の間に高周波電力を給電する高周波電源回路と、前記固定部に移動可能に装架された可動部に設けられ、前記複数の非接触給電用電極にそれぞれ離隔対向して非接触で高周波電力を受け取る複数の非接触受電用電極と、前記複数の非接触受電用電極が受け取った高周波電力を変換して前記可動部上の電気負荷に給電する受電回路とを備えた静電結合方式非接触給電装置であって、前記非接触給電用電極および前記非接触受電用電極は、前記可動部の移動方向と直角な断面形状が基部および前記基部から延在する複数の歯部からなり、かつ前記複数の歯部同士が相互に離隔しつつ互い違いに嵌合した櫛型電極であり、さらに、前記非接触受電用電極は、前記歯部の表面が導体層で覆われ、前記歯部の内部および前記基部が前記導体層よりも比重の小さい材質で形成された櫛型電極である。
【0009】
請求項2に係る発明は、固定部に設けられた複数の非接触給電用電極と、前記複数の非接触給電用電極の間に高周波電力を給電する高周波電源回路と、前記固定部に移動可能に装架された可動部に設けられ、前記複数の非接触給電用電極にそれぞれ離隔対向して非接触で高周波電力を受け取る複数の非接触受電用電極と、前記複数の非接触受電用電極が受け取った高周波電力を変換して前記可動部上の電気負荷に給電する受電回路とを備えた静電結合方式非接触給電装置であって、前記非接触給電用電極および前記非接触受電用電極は、前記可動部の移動方向と直角な断面形状が基部および前記基部から延在する複数の歯部からなり、かつ前記複数の歯部同士が相互に離隔しつつ互い違いに嵌合した櫛型電極であり、さらに、前記非接触受電用電極は、前記歯部および前記基部の少なくとも一方の内部に空間を有して軽量化された櫛型電極である。
【0010】
なお、請求項2に係る発明は、請求項1で、非接触受電用電極の導体層に機械的な強度を持たせ、歯部の内部および基部を形成する比重の小さい材質を省略した態様と見なすこともできる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2において、前記非接触給電用電極は、前記歯部の表面が導体層で覆われ前記歯部の内部および前記基部が前記導体層よりも比重の小さい材質で形成された櫛型電極、あるいは、前記歯部および前記基部の少なくとも一方の内部に空間を有して軽量化された櫛型電極である。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記櫛型電極の歯部の断面形状は、前記基部に近い側で広く前記基部から離れるにしたがって狭くなる三角形断面または台形断面である。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記可動部は、基板に所定の作業を行う基板用作業機器に装備されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る非接触給電装置の発明では、非接触給電用電極および非接触受電用電極は、複数の歯部同士が相互に離隔しつつ互い違いに嵌合した櫛型電極であり、さらに、非接触受電用電極は、歯部の表面が導体層で覆われ、歯部の内部および基部が導体層よりも比重の小さい材質で形成されている。したがって、2つの櫛型電極により大きな静電容量のコンデンサが構成され、平面電極を用いる従来技術と比較して、非接触給電の給電容量を向上できる。さらに、櫛型電極を用いることで、電極表面積のうち互いに対向して非接触給電に寄与できる有効面積の比率を高めることができ、無駄に放射される電界を低減して非接触給電の給電効率を向上できる。また、可動部側の非接触受電用電極の大部分が比重の小さい材質で形成されるので、給電対象となる可動部を軽量化できる。
【0015】
請求項2に係る発明では、請求項1と同様に、非接触給電の給電容量および給電効率を向上できる。また、可動部側の非接触受電用電極は内部に空間を有して軽量化されているので、給電対象となる可動部を軽量化できる。
【0016】
請求項3に係る発明では、固定部の非接触給電用電極は、大部分が比重の小さい材質で形成され、あるいは、内部に空間を有して軽量化されているので、固定部を軽量化できる。
【0017】
請求項4に係る発明では、櫛型電極の歯部の断面形状が三角形断面または台形断面であるので、鋳造や鍛造などによる製造が容易になり、製造コストを削減できる。
【0018】
請求項5に係る発明では、可動部は、基板に所定の作業を行う基板用作業機器に装備されている。本発明の静電結合方式非接触給電装置は、基板用作業機器に装備して、所定の作業を行う可動部を軽量化できる。これにより、非接触給電装置は小形軽量でコスト低廉となり、基板用作業機器の装置コストの低減に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の静電結合方式非接触給電装置を適用できる部品実装機の全体構成を示した斜視図である。
図2】一般的な静電結合方式非接触給電装置を概念的に説明する構成図である。
図3】本発明の第1実施形態の静電結合方式非接触給電装置に用いる櫛型電極の斜視図である。
図4】櫛型電極の断面構造を含んだ第1実施形態の静電結合方式非接触給電装置の全体構成を示す構成図である。
図5】第1実施形態を簡略化した参考形態の静電結合方式非接触給電装置で、非接触給電用電極および非接触受電用電極に用いる櫛型電極の断面図である。
図6】第2実施形態の静電結合方式非接触給電装置に用いる櫛型電極の断面図である。
図7】第2実施形態を応用した櫛型電極の断面図である。
図8】第3実施形態の静電結合方式非接触給電装置に用いる櫛型電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明を適用できる部品実装機10について、図1を参考にして説明する。図1は、本発明の第1実施形態の静電結合方式非接触給電装置1を適用できる部品実装機10の全体構成を示した斜視図である。部品実装機10は、基板に多数の部品を実装する装置であり、2セットの同一構造の部品実装ユニットが概ね左右対称に配置されて構成されている。ここでは、図1の右手前側のカバーを取り外した状態の部品実装ユニットを例にして説明する。なお、図中の左奥側から右手前側に向かう部品実装機10の幅方向をX軸方向とし、部品実装機10の長手方向をY軸方向とする。
【0021】
部品実装機10は、基板搬送装置110、部品供給装置120、2つの部品移載装置130、140などが機台190に組み付けられて構成されている。基板搬送装置110は、部品実装機10の長手方向の中央付近をX軸方向に横断するように配設されている。基板搬送装置110は、図略の搬送コンベアを有しており、基板をX軸方向に搬送する。また、基板搬送装置110は、図略のクランプ装置を有しており、基板を所定の実装作業位置に固定および保持する。部品供給装置120は、部品実装機10の長手方向の前部(図1の左前側)及び後部(図には見えない)に設けられている。部品供給装置120は、複数のカセット式フィーダ121を有し、各フィーダ121にセットされたキャリアテープから2つの部品移載装置130、140に連続的に部品を供給するようになっている。
【0022】
2つの部品移載装置130、140は、X軸方向およびY軸方向に移動可能ないわゆるXYロボットタイプの装置である。2つの部品移載装置130、140は、部品実装機10の長手方向の前側および後側に、相互に対向するように配設されている。各部品移載装置130、140は、Y軸方向の移動のためのリニアモータ装置150を有している。
【0023】
リニアモータ装置150は、2つの部品移載装置130、140に共通な軌道部材151および補助レール155と、2つの部品移載装置130、140ごとのリニア可動部153で構成されている。軌道部材151は、本発明の固定部2の一部に相当し、リニア可動部153を挟んで両側に平行配置され、リニア可動部153の移動方向となるY軸方向に延在している。軌道部材151の向かい合う内側の側面には、Y軸方向に沿って複数の磁石152が列設されている。リニア可動部153は、軌道部材151に移動可能に装架されている。
【0024】
リニア可動部153は、本発明の可動部3に相当し、可動本体部160、X軸レール161、および実装ヘッド170などで構成されている。可動本体部160は、Y軸方向に延在しており、その両側面には軌道部材151の磁石152に対向して推進力を発生する電機子が配設されている。X軸レール161は、可動本体部160からX軸方向に延在している。X軸レール161は、一端162が可動本体部160に結合され、他端163が補助レール155に移動可能に装架されており、可動本体部160と一体的にY軸方向に移動するようになっている。
【0025】
部品実装ヘッド170は、X軸レール161に装架され、X軸方向に移動するようになっている。部品実装ヘッド170の下端には図略の吸着ノズルが設けられている。吸着ノズルは、負圧を利用して部品供給装置120から部品を吸着採取し、実装作業位置の基板に実装する。X軸レール161上に設けられた図略のボールねじ送り機構は、ボールねじを回転駆動するX軸モータを有しており、部品実装ヘッド170をX軸方向に駆動する。部品実装ヘッド170を動作させるために可動部3に装備された複数の電装品は、本発明の電気負荷Lに相当する。なお、リニアモータ装置150の電機子も電気負荷Lに含まれている。
【0026】
部品実装機10は、他に、オペレータと情報を交換するための表示設定装置180および、基板や部品を撮像する図略のカメラなどを備えている。
【0027】
次に、一般的な静電結合方式非接触給電装置9について、図2を参考にして説明する。図2は、一般的な静電結合方式非接触給電装置9を概念的に説明する構成図である。図2の下側の固定部2には、2枚の給電用平面電極47、48および高周波電源回路5が設けられている。2枚の給電用平面電極47、48は、金属板などを用いて形成され、高周波電源回路5に電気接続される。高周波電源回路5は、例えば、100kHz〜MHz帯の高周波電力を2枚の給電用平面電極47、48の間に給電する。高周波電源回路5の出力電圧は調整可能とされており、出力電圧波形として正弦波や矩形波などを例示できる。
【0028】
また、図2の上側の可動部3には、2枚の受電用平面電極67、68および受電回路7が設けられ、電気負荷Lが搭載されている。2枚の受電用平面電極67、68は、金属板などを用いて形成され、固定部2側の給電用平面電極47、48に離隔対向して平行配置される。これにより、給電用平面電極47、48と受電用平面電極67、68との間に2つのコンデンサが構成され、静電結合方式の非接触給電が行われる。2枚の受電用平面電極67、68は受電回路7の入力側に電気接続され、受電回路7の出力側は電気負荷Lに電気接続されている。受電回路7は、受電用平面電極67、68が受け取った高周波電力を変換して、電気負荷Lに給電する。受電回路7は、電気負荷Lの電源仕様に合わせて回路構成されており、例えば、全波整流回路やインバータ回路などが用いられる。
【0029】
また通常、給電容量および給電効率の向上を図るために、直列共振回路が用いられる。つまり、高周波電源回路5の出力周波数で直列共振が発生するように、高周波電源回路5内または受電回路7内に適宜コイルが挿入接続され、さらに出力周波数自体も可変に調整される。
【0030】
一般的な静電結合方式非接触給電装置9で給電容量を大きくしたい場合に、給電用平面電極47、48および受電用平面電極67、68の対向面積を拡げてコンデンサの静電容量を大きくする必要が生じる。しかしながら、受電用平面電極67、68の大形化は、可動部3の重厚長大化に直結して好ましくない。そこで、本発明では、平面電極に代えて櫛型電極を用いる。
【0031】
図3は、本発明の第1実施形態の静電結合方式非接触給電装置1に用いる櫛型電極の斜視図である。図の下側に示された櫛型電極は、固定部2に設けられる非接触給電用電極41であり、図の上側に示された櫛型電極は、可動部3に設けられる非接触受電用電極61である。
【0032】
非接触給電用電極41は、部品実装機10の平行する軌道部材151の間でかつ可動部3よりも下方に配設され、Y軸方向に延在している。非接触給電用電極41は、図示されるように、可動部3の移動方向と直角なX軸方向の断面形状が櫛型形状になっている。詳述すると、X軸方向に水平に延在した基部411の上面から垂直上方に向けて、2つの矩形断面の歯部412が互いに離隔して立設されている。歯部412の表面は、導体層413で覆われている。導体層413は、基部411の上面をも覆い、非接触給電用電極41の上側でひとつに連なっている。歯部412の内部および基部411の下面は、芯体414として一体化されており、導体層413よりも比重の小さい材質で形成されている。
【0033】
一方、非接触受電用電極61は、可動部3の底面に下向きに配設されている。非接触受電用電極61も、X軸方向の断面形状が櫛型形状になっている。詳述すると、X軸方向に水平に延在した基部611の下面から垂直下方に向けて、3つの矩形断面の歯部612が互いに離隔して立設されている。歯部612の表面は、導体層613で覆われている。導体層613は、基部611の下面をも覆い、非接触受電用電極61の下側でひとつに連なっている。歯部612の内部および基部611の上面は、芯体614として一体化されており、導体層613よりも比重の小さい材質で形成されている。非接触受電用電極61のY軸方向の長さは非接触給電用電極41よりも小さい。可動部3のY軸方向の移動に伴い、非接触受電用電極61は、非接触給電用電極41の上方の範囲内で移動する。
【0034】
このとき、非接触給電用電極41と非接触受電用電極61とは、歯部412、612同士が相互に概ね一定の離間距離dで離隔しつつ互い違いに嵌合した状態が維持される。なお、図3を見易くするために、歯部412が2個で歯部612が3個の場合を例示しているが、実際には、より多数の歯部を設けて互い違いに嵌合させることができる。これにより、非接触給電用電極41と非接触受電用電極61とにより構成されるコンデンサは、平板電極47、48、67、68で構成されるコンデンサと比較して対向する表面積が格段に拡がり、静電容量が格段に大きくなる。
【0035】
非接触給電用電極41および非接触受電用電極61の導体層413、613は、高い導電性を有する金属材料、例えば銀や銅などの薄膜や薄板で形成することができる。非接触給電用電極41および非接触受電用電極61の芯体414、614は、導体層413、613よりも比重の小さい材質、例えばアルミニウムや合成樹脂で形成することができ、導電性は必須でない。芯体414、614と導体層413、613との結合は、金属メッキや金属蒸着、接着などの方法で行うことができる。
【0036】
図3に示された構成を2セット備えて、第1実施形態の静電結合方式非接触給電装置1が構成されている。図4は、櫛型電極の断面構造を含んだ静電結合方式非接触給電装置1の全体構成を示す構成図である。図4で、紙面の表裏方向が可動部3の移動するY軸方向である。図示されるように、固定部2側で、2つの非接触給電用電極41の導体層413は高周波電源回路5に電気接続されている。また、可動部3側で、2つの非接触受電用電極61の導体層613は受電回路7の入力側に電気接続され、受電回路7の出力側は電気負荷Lに電気接続されている。非接触給電用電極41と非接触受電用電極61とにより構成されるコンデンサの大きな静電容量に合わせて、高周波電源回路5および受電回路7は適正に設計されている。
【0037】
第1実施形態の静電結合方式非接触給電装置1では、櫛型電極である非接触給電用電極41と非接触受電用電極61とにより大きな静電容量のコンデンサが構成される。したがって、平面電極47、48.67、68を用いる従来技術と比較して、非接触給電の給電容量を向上できる。さらに、非接触給電用電極41および非接触受電用電極61を櫛型電極とすることで、電極表面積のうち互いに対向して非接触給電に寄与できる有効面積の比率を高めることができる。したがって、非接触給電用電極41から無駄に放射される電界を低減して非接触給電の給電効率を向上できる。
【0038】
また、図5は、第1実施形態を簡略化した参考形態の静電結合方式非接触給電装置で、非接触給電用電極42および非接触受電用電極62に用いる櫛型電極の断面図である。参考形態において、非接触給電用電極42および非接触受電用電極62は、外形形状が第1実施形態のそれら41、61と同一であり、単一の金属材料、例えば銅を用いて形成されている。参考形態のその他の部分の構成は、第1実施形態と同一になっている。したがって、非接触給電用電極42と非接触受電用電極62とにより構成されるコンデンサの静電容量は第1実施形態と同一になり、同等の給電容量および給電効率が得られる。
【0039】
しかしながら、参考形態では非接触受電用電極62が重量化してしまうため、可動部3の総重量が増加する。これによる弊害として、リニア可動部153の電機子を高パワー化したり、非接触給電の給電容量を大きくしたりする必要が生じ得る。これに比較して、第1実施形態では、可動部3側の非接触受電用電極61の大部分が比重の小さい材質で形成されるので、給電対象となる可動部3を軽量化できる。また、従来技術の平面電極47、48、67、68を用いて同等の静電容量を確保する場合と比較すれば、第1実施形態では可動部3を格段に小形軽量化できる。
【0040】
さらに、第1実施形態では、固定部2の非接触給電用電極41も大部分が比重の小さい材質で形成されるので、固定部2も軽量化できる。
【0041】
第1実施形態の静電結合方式非接触給電装置1は、部品実装機10に装備されており、部品実装ヘッド170を有するリニア可動部153を軽量化できる。これにより、リニア可動部153の駆動に要する所要電力を削減して、非接触給電の給電容量も削減でき、非接触給電装置1は小形軽量でコスト低廉となる。これらの総合的な効果で、部品実装機10の装置コストの低減に資することができる。
【0042】
次に、第2実施形態の静電結合方式非接触給電装置について、電極形状の違いを主に説明する。図6は、第2実施形態の静電結合方式非接触給電装置に用いる櫛型電極の断面図である。図の下側に示された櫛型電極は、固定部2に設けられる非接触給電用電極43であり、図の上側に示された櫛型電極は、可動部3に設けられる非接触受電用電極63である。
【0043】
図示されるように、第2実施形態の非接触給電用電極43は、複数の歯部432の断面形状が第1実施形態と異なっており、基部431に近い側で広く、基部431から離れるにしたがって狭くなる三角形断面になっている。基部431および歯部432は、銅などの単一の金属材料を用いて一体に形成されている。
【0044】
一方、第2実施形態の非接触受電用電極63も、複数の歯部632の断面形状が基部631に近い側で広く、基部631から離れるにしたがって狭くなる三角形断面になっている。歯部632の表面は、導体層633で覆われている。さらに、導体層633は、基部631の下面をも覆い、非接触給電用電極63の下側でひとつに連なっている。歯部632の内部および基部631の上面は、芯体634として一体化されており、導体層633よりも比重の小さい材質で形成されている。
【0045】
非接触給電用電極43と非接触受電用電極63とは、複数の歯部432、632の傾斜面同士が相互に概ね一定の離間距離で離隔しつつ互い違いに嵌合している。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同等の静電容量が確保されている。また、第2実施形態のその他の部分の構成は、第1実施形態と同一になっている。
【0046】
第2実施形態の静電結合方式非接触給電装置では、第1実施形態と同程度に非接触給電の給電容量および給電効率を向上でき、かつ可動部を軽量化できる。さらに、歯部432、632の断面形状が三角形断面であるので、非接触給電用電極43および非接触受電用電極63を鋳造したり鍛造したりする際に、第1実施形態の矩形断面と比較して製造が容易になり、製造コストを削減できる。なお、非接触給電用電極43は、単一の金属材料で形成されており、軽量化に代えて製造コスト削減の効果が生じる。
【0047】
さらに、図7に示される第2実施形態の応用例では、可動部3が一層顕著に軽量化されている。図7は、第2実施形態を応用した櫛型電極の断面図である。図示されるように、応用例では、非接触受電用電極64の導体層643は第2実施形態と同一形状であり、芯体644の基部641から歯部642へかけての内部に三角形断面の空間645が設けられた点が異なる。この空間645の分だけ応用例の非接触受電用電極64は、第2実施形態の非接触受電用電極63よりも一層顕著に軽量化されている。
【0048】
次に、第3実施形態の静電結合方式非接触給電装置について、電極形状の違いを主に説明する。図8は、第3実施形態の静電結合方式非接触給電装置に用いる櫛型電極の断面図である。図の下側に示された櫛型電極は、第2実施形態と同一の非接触給電用電極43であり、図の上側に示された櫛型電極は、可動部3に設けられる非接触受電用電極65である。
【0049】
図示されるように、第3実施形態の非接触受電用電極65は、金属製の板材が折り曲げられて、基部651と歯部652とが交互に形成されている。歯部652の断面形状は、基部651に近い側で広い空間655を有し、基部651から離れるにしたがって空間655が狭くなる三角形断面になっている。非接触受電用電極65は、芯体を有さずに金属製の板材自身により機械的強度が確保されており、撓みや変形が抑制されている。
【0050】
第3実施形態では、第2実施形態と同一の静電容量が確保されており、第2実施形態と同程度に非接触給電の給電容量および給電効率を向上できる。さらに、非接触受電用電極65が一層軽量化されているので、可動部を一層顕著に軽量化できる。また、非接触受電用電極65は、プレス成型法などにより容易に製造でき、製造コストを顕著に削減できる。
【0051】
なお、第1実施形態で固定部2側の非接触給電用電極41を単一の金属材料で形成してもよいし、逆に、第2および第3実施形態で非接触給電用電極43を導体層および芯体で形成してもよい。また、電極の歯部の断面形状は、対向面積を増加できればよいので、実施形態で示した以外の台形形状やその他の形状としてもよい。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の静電結合方式非接触給電装置は、部品実装機を始めとする基板用作業機器に利用でき、さらに、可動部を有して非接触給電を必要とする他の業種の産業用機器にも広く利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1:静電結合方式非接触給電装置
2:固定部 3:可動部
41、42、43:非接触給電用電極
411、431:基部 412、432:歯部
413:導体層 414:芯体
47、48;給電用平面電極
5:高周波電源回路
61、62、63、64、65:非接触受電用電極
611、631、641、651:基部
612、632、642、652:歯部
613、633、643:導体層
614、634、644:芯体
645、655:空間
67、68:受電用平面電極
7:受電回路
9:一般的な静電結合方式非接触給電装置
10:部品実装機
110:基板搬送装置 120:部品供給装置
130、140:部品移載装置 150:リニアモータ装置
160:可動本体部 161:X軸レール
170:実装ヘッド 180:表示設定装置 190:機台
L:電気負荷 d:離間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8