特許第5980336号(P5980336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980336
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】自動車の調節エレメント用の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/63 20150101AFI20160818BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20160818BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20160818BHJP
   F16D 55/08 20060101ALI20160818BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20160818BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20160818BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20160818BHJP
   F16D 121/16 20120101ALN20160818BHJP
   F16D 127/02 20120101ALN20160818BHJP
【FI】
   E05F15/63
   F16D41/06 Z
   F16D41/08 Z
   F16D55/08
   F16D65/18
   B60J5/10 K
   B60J5/04 C
   F16D121:16
   F16D127:02
【請求項の数】21
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-532276(P2014-532276)
(86)(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公表番号】特表2014-534361(P2014-534361A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012004062
(87)【国際公開番号】WO2013045099
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年5月23日
(31)【優先権主張番号】202011106110.1
(32)【優先日】2011年9月27日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500549065
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト コーブルク
【氏名又は名称原語表記】Brose Fahrzeugteile GmbH & Co. KG,Coburg
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ハインツェ
(72)【発明者】
【氏名】アルヴィン マハト
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−206573(JP,A)
【文献】 特開2002−085469(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0211500(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0046418(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/79
B60J 5/04
B60J 5/10
F16D 41/06
F16D 41/08
F16D 55/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の調節エレメント(1)用の駆動装置であって、駆動接続部(9)と被駆動接続部(10)とを備えた、動力伝達系統に接続されたクラッチ装置(8)が設けられており、該クラッチ装置(8)は駆動側から導入される運動を被駆動接続部(10)へと伝え、被駆動側から導入された運動を制動するブレーキ装置(11)を有している、自動車の調節エレメント用の駆動装置において、
前記ブレーキ装置(11)は、ブレーキ力として摩擦力を発生させるブレーキエレメント(12)を有しており、前記クラッチ装置(8)は、前記被駆動接続部(10)と前記ブレーキエレメント(12)との間に、互いに逆の運動方向に作用する2つのクランプ体・ワンウェイクラッチ(15)を備えた少なくとも1対のワンウェイクラッチ対(14)から成るワンウェイクラッチ装置(13)を有しており、
前記クランプ体・ワンウェイクラッチ(15)は、該クランプ体・ワンウェイクラッチ(15)が第1の運動方向では遮断し、即ち、前記クランプ体・ワンウェイクラッチ(15)に接続された構成部分を互いに連結し、この第1の運動方向とは逆方向の第2の運動方向では前記構成部分を互いに解放し、即ち、前記クランプ体・ワンウェイクラッチ(15)に接続された構成部分の間で自由回転を可能にするように形成されており、被駆動側から導入された運動は常に、少なくとも1つのクランプ体・ワンウェイクラッチ(15)を遮断させ、相応にブレーキ装置(11)を介して制動され、駆動側から導入された運動は常に、クランプ体・ワンウェイクラッチ(15)を解放させることを特徴とする、自動車の調節エレメント用の駆動装置。
【請求項2】
前記ブレーキエレメント(12)は、少なくとも1つのブレーキディスク(16,17)に連結されていて、該ブレーキディスク(16,17)はばねエレメント(18)によって摩擦接続的に、定置の摩擦構成体(19)に対して押し付けられる、請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記摩擦構成体(19)は、当該駆動装置のケーシングの部分である、請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記ブレーキエレメント(12)が少なくとも所定の区分でポット状に形成されていて、前記ワンウェイクラッチ装置(13)を実質的に収容している、請求項1から3までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項5】
前記クランプ体・ワンウェイクラッチ(15)はそれぞれ1つの、転動体として形成されたクランプ体(21)を有しており、1つのワンウェイクラッチ対(14)のクランプ体(21)は、内側の回転体(23)と外側の回転体(24)との間の機能区分(22)に挿入されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項6】
前記転動体は、クランプローラ又はクランプ球である、請求項5記載の駆動装置。
【請求項7】
前記クラッチ装置(8)は形状に関するクラッチ軸線(8a)を有しており、前記内側の回転体(23)と前記外側の回転体(24)とは前記クラッチ軸線(8a)に対して同心的であり、かつ/又は、前記ブレーキエレメント(12)及び/又は前記少なくとも1つのブレーキディスク(16,17)が前記クラッチ軸線(8a)に対して同心的である、請求項5又は6記載の駆動装置。
【請求項8】
1つの機能区分(22)において、それぞれ横断面で一方の前記回転体(24)が円形であって、他方の前記回転体(23)が円形ではなく、周方向で中央領域(25)の両側にそれぞれ1つのクランプ領域(26)が形成されるようになっていて、前記中央領域(25)に、前記両クランプ体(21)を互いに反対方向に押し、ひいては前記クランプ領域(26)内へと押すばねエレメント(25a)が配置されている、請求項5から7までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項9】
前記両回転体(23,24)の互いに相対的な回動により、1対のワンウェイクラッチ対(14)の1つのクランプ体(21)が前記両回転体(23,24)に沿って転動させられ、これにより前記クランプ体(21)は前記クランプ領域(26)において、前記両回転体(23,24)とクランプ係合してロックされる、請求項5から8までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項10】
横断面円形の一方の前記回転体(24)に前記ブレーキエレメント(12)が配設されていて、他方の回転体(23)に前記被駆動接続部(10)が配設されている、請求項5から9までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項11】
クラッチ軸線(8a)に同心的な第3の回転体(27)が設けられており、該第3の回転体(27)の回転の際に、前記クランプ体(21)をクランプ係合によるロックから解除させ、ひいてはクランプ体・ワンウェイクラッチ(15)を解放する駆動力(28)が周方向で前記クランプ体(21)に作用する、請求項5から10までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項12】
前記駆動力(28)の力作用線は、前記クランプ体(21)の中心軸線若しくは中心点を通って延びている、請求項11記載の駆動装置。
【請求項13】
前記第3の回転体(27)はその回転の際に、前記別の両回転体(23,24)の一方を、前記クランプ体(21)を介して連行する、請求項11又は12記載の駆動装置。
【請求項14】
前記別の両回転体(23,24)の一方は、前記被駆動接続部(10)に配設された回転体(23)である、請求項13記載の駆動装置。
【請求項15】
前記第3の回転体(27)は前記駆動接続部(9)に配設されている、請求項13又は14記載の駆動装置。
【請求項16】
前記駆動側の回転体(27)は前記被駆動側の回転体(23)と、遊びを含んだ形状接続を形成していて、これにより前記遊びを含む区分(30)を通過する前に、クランプ係合解除のための、及び、前記クランプ体(21)を介した被駆動側の回転体(23)の連行のための相対回動を可能にし、前記遊びを含む区分(30)を通過した後は、前記被駆動側の回転体(23)の連行は形状接続により可能となる、請求項15記載の駆動装置。
【請求項17】
調節エレメント(1)と、該調節エレメント(1)に配設された、請求項1から16までのいずれか1項記載の駆動装置とを備えた調節エレメント装置。
【請求項18】
前記調節エレメント(1)が、フラップとして形成されている、請求項17記載の調節エレメント装置。
【請求項19】
前記調節エレメント(1)が、自動車のテールゲートとして、又はドアとして、又はサイドドアとして形成されている、請求項17又は18記載の調節エレメント装置。
【請求項20】
ブレーキ装置(11)が、前記調節エレメント(1)を保持し、さらに、前記ブレーキ装置(11)のブレーキ力に抗した前記調節エレメント(1)の手動による調節を可能にするように構成されている、請求項17から19までのいずれか1項記載の調節エレメント装置。
【請求項21】
ブレーキ装置(11)が、前記調節エレメント(1)を各中間位置で、重力又は存在するばね力に抗して保持し、さらに、前記ブレーキ装置(11)のブレーキ力に抗した前記調節エレメント(1)の手動による調節を可能にするように構成されている、請求項17から20までのいずれか1項記載の調節エレメント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念に記載の形式の自動車の調節エレメント用の駆動装置及び、請求項13記載の、調節エレメントと該調節エレメント用の駆動装置とを備えた調節エレメント装置に関する。
【0002】
「調節エレメント」という概念はこの明細書では広範囲の意味を持つ。この概念には、自動車のテールゲート、トランクリッド、ボンネット、ドア、特にサイドドア、トランク底面等が含まれる。
【0003】
しかしながらまずは、ここに記載する駆動装置は、自動車のテールゲート及びサイドドアで使用されるものである。この駆動装置は、閉鎖方向及び開放方向への各調節エレメントのモータによる調節のために用いられる。この場合、通常、重要であるのは、駆動装置が、モータによる調節運転以外に、手動による調節運転も可能であることである。この場合、さらに重要であるのは、予期せぬ、ひいては使用者にとって危険であるテールゲート運動若しくはドア運動を回避するために、電源故障の際にその都度のテールゲート位置若しくはドア位置が確実に保持されることである。
【0004】
本発明の起点である公知の駆動装置(WO2007/014686A1号)には、駆動接続部と被駆動接続部とを備えた、動力伝達系統に接続されたクラッチ装置が設けられていて、このクラッチ装置はラップスプリングばねである。ラップスプリング装置は、駆動側から導入された運動を駆動接続部へと伝え、被駆動側から導入された運動を制動する。これによりテールゲートを各中間位置で確実に保持することができる。ラップスプリング装置を備えた公知の駆動装置は構造的に単純で堅牢に構成されている。ラップスプリングを適当に設計すれば、駆動運転と制動運転との間の切替に関して良好な切替特性が得られる。
【0005】
先行技術により、駆動側から導入された運動を駆動接続部へと伝え、被駆動側から導入された運動を遮断するクラッチ装置も公知である(DE19581436C1)。このような遮断装置は、3対の逆方向に作用するクランプローラ・ワンウェイクラッチを備えている。上述した意味での制動運転はこのようなクランプ遮断装置によっては実現されない。
【0006】
本発明の課題は、公知の駆動装置を改良して、駆動運転と制動運転との間の切替に関する切替挙動を改善するように構成することである。
【0007】
上記課題は、請求項1の上位概念に記載の形式の駆動装置において、請求項1の特徴部に記載の特徴を備えた駆動装置により解決される。
【0008】
ブレーキ力に抗して調節可能なブレーキエレメントを備えたブレーキ装置を、クランプ体・ワンウェイクラッチから成るワンウェイクラッチ装置と組み合わせ、駆動側から導入された運動を駆動接続部へと伝え、被駆動側から導入された運動を制動するという思想が本質である。
【0009】
詳しく言うと、ワンウェイクラッチ装置が、被駆動接続部とブレーキエレメントとの間に配置されており、以下で「ワンウェイクラッチ対」と記載する、少なくとも一対の反対方向に作用するクランプ体・ワンウェイクラッチを有している。
【0010】
本発明では、クランプ体・ワンウェイクラッチは第1の運動方向では遮断し、即ち、クランプ体・ワンウェイクラッチに接続された構成部分を互いに連結し、この第1の運動方向とは逆方向の第2の運動方向では前記構成部分を互いに解放し、即ち、クランプ体・ワンウェイクラッチに接続された構成部分の間で自由回転を可能にすると、クランプ体・ワンウェイクラッチは規定されている。遮断と解放とは公知のように、クランプ体の自動的な方向に依存した調節により行われる。
【0011】
逆方向に作用するクランプ体・ワンウェイクラッチの少なくとも一対のワンウェイクラッチ対が設けられていることにより、被駆動側から導入された運動は常に、少なくとも一方のクランプ体・ワンウェイクラッチを遮断させ、このワンウェイクラッチ対のその都度他方のクランプ体・ワンウェイクラッチは解除されている。被駆動接続部と、ブレーキ力に抗してのみ調節可能なブレーキエレメントとの間の遮断により、被駆動側から導入された運動は常にブレーキ装置を介して制動される。この場合「常に」という記載は、被駆動側の両運動方向で遮断が行われることを意味する。
【0012】
駆動側から導入された運動もブレーキ装置によって制動されないことを保証するために、提案によればさらに、駆動側から導入された運動が常に、全てのクランプ体・ワンウェイクラッチを解除させるようになっている。この場合も「常に」という記載は、上記作用が駆動側の両運動方向について行われることを意味する。
【0013】
請求項4に記載の特に好適な構成では、クランプ体・ワンウェイクラッチとはそれぞれ、クランプローラとして形成された複数のクランプ体を備えたクランプローラ・ワンウェイクラッチである。上記クランプローラ・ワンウェイクラッチを実現する際には、駆動側で発生した運動がほぼ制動されずに被駆動側へと伝えられるという事実が特に有利である。従って、クラッチ装置は、駆動装置の効率全体に対してネガティブな作用はしない。
【0014】
通常運転による使用時には、駆動接続部と被駆動接続部との間の若しくは被駆動接続部とブレーキエレメントとの間の連結は、最小の遊びを備えるように設計することができるので、駆動運転と制動運転との切替の際にはノイズの発生が相応に僅かであることが期待される。
【0015】
独立請求項である請求項13に記載した別の技術によれば、調節エレメントと、該調節エレメントに配設された上述した駆動装置とを備えた調節エレメント装置が特許請求の範囲とされる。調節エレメント装置全体を説明するのに適当である、提案された駆動装置についての全ての説明を参照することができる。
【0016】
請求項15に記載した特に好適な構成では、ブレーキ装置は、一方では調節エレメントを各区中間位置で保持し、他方ではブレーキ装置のブレーキ力に抗して手動で調節できるように設計されている。このような構成では、自動的な調節エレメント運動に場合によっては影響を与える全ての要素が考慮されている。この要素には、重力、ばね力、摩擦力等が含まれる。
【0017】
以下に、1つの実施例のみを示した図面につき本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】テールゲートと、該テールゲートをモータにより調節する提案された駆動装置とを備えた自動車の後部を示した側面図である。
図2図1の駆動装置の両駆動部材のうちの一方を示した部分縦断面図である。
図3図1の駆動装置のクラッチ装置を示した縦断面図である。
図4図3のIV−IV線に沿ったクラッチ装置の断面図である。
図5図4のクラッチ装置を、運動が駆動側から導入された状態(図5a)と、被駆動側から導入された状態(図5b)とにおいて示した図である。
【0019】
図1に示された駆動装置は、自動車のテールゲート1をモータにより調節するために使用される。しかしながら、明細書冒頭で言及した他の全ての調節エレメントも好適に使用することができる。テールゲートに関する以下の全ての説明は、ここで言及した他の全ての調節エレメントにも同様に当てはまる。
【0020】
図1に示された駆動装置には対応した2つの同一の駆動部材2が設けられており、この駆動部材2はそれぞれ1つの駆動モータ3を有している。駆動部材2は、テールゲート開口4の両側方領域に配置されている。図1には両駆動部材2のうち一方のみが示されている。図2にはこの駆動部材2が部分縦断面図で示されている。
【0021】
以下の説明は、図1に示された一方の駆動部材2にのみ関する。しかしながら、場合によっては設けられている他方の駆動装置にも同様に該当する。
【0022】
図2に示された駆動部材2はスピンドル駆動装置として形成されていて、駆動モータ3と、中間伝動装置5と、スピンドル・スピンドルナット伝動装置6とを備えており、ばね装置7は、スピンドル・スピンドルナット伝動装置6を走出位置に位置させるようにプレロードがかけられている。スピンドル駆動装置の組み付け状態は図1に示されている。
【0023】
中間伝動装置5とスピンドル・スピンドルナット伝動装置6との間の動力伝達系統にはクラッチ装置8が接続されており、このクラッチ装置8には通常、駆動接続部9と、被駆動接続部10とが設けられている。
【0024】
提案によれば、クラッチ装置8は、駆動側から導入された運動を被駆動接続部10へと伝えるだけでなく、制動機能も有している。詳しく言うならば、被駆動側から導入された運動を制動するためのブレーキ装置11が設けられており、この装置は、制動力に抗して調節可能なブレーキエレメント12を有している。
【0025】
重要であるのは、被駆動側から導入された運動はブレーキ装置11によって制動されるが、駆動側から導入された運動は制動されずに被駆動接続部10へと伝えられることである。このために、駆動接続部9とブレーキエレメント12との間のクラッチ装置8は、この場合、好適には3対の逆方向に作用するクランプ体・ワンウェイクラッチ15から成るワンウェイクラッチ装置13を有しており、これら3対のクランプ体・ワンウェイクラッチ15は、クラッチ軸線8aに関して120°ずつずらされて配置されている。これら3対の逆方向に作用するクランプ体・ワンウェイクラッチ15は、この場合、既に言及したように「ワンウェイクラッチ対」と記載される。ワンウェイクラッチ対14の基本的な構成は、図3及び図4の概要に基づいて後述する。
【0026】
この装置は、被駆動側から導入された運動は常に、クランプ体・ワンウェイクラッチ15の少なくとも1つを遮断させ、相応にブレーキ装置11を介して制動される(図5b))ように、かつ、駆動側から導入された運動は常に、クランプ体・ワンウェイクラッチ15を解除させる(図5a))ようになっている。これについても後述する。
【0027】
ブレーキ装置11は、図示した、好適な実施例では極めて特に単純な構成である。ブレーキエレメント12は、この場合、好適には2つのブレーキディスク16,17に連結されていて、これらのブレーキディスク16,17はばねエレメント18によって摩擦接続的に(摩擦接触して)、定置の摩擦構成体19に対して、この実施例では好適にはケーシング部分に対して押し付けられている。ここで重要であるのは、ブレーキエレメント12はピン状区分12aを有しており、該区分は、摩擦構成体19を成しているケーシング部分の孔内に導入されていることである。摩擦構成体19の両側にはブレーキディスク16,17が配置されており、これらのブレーキディスク16,17は回動不能にピン状区分12aに、例えば形状接続(嵌め合いなどの形状的関係に基づく結合又は束縛)により結合されている。図3の下方のブレーキディスク17は、スナップリング又は類似のものによって、摩擦構成体19とは反対の側で保持されていることにより、図3で上に向かって作用するばね力が、両ブレーキディスク16,17を摩擦構成体19に対して押し付ける。ばねエレメント18は単純な圧縮コイルばねである。
【0028】
図示のブレーキ装置11では、ブレーキエレメント12が少なくとも所定の区分でポット状に形成されていて、ワンウェイクラッチ装置13を実質的に収容しているという事実も重要である。これにより極めてコンパクトな構成が得られる。
【0029】
被駆動側で発動された制動運動を可能にするために、クラッチ装置8の駆動接続部9と調節エレメント1との間の動力伝達系統はいずれにせよセルフロック式ではないように構成しなければならないことがわかる。さらに示されているように、被駆動側で発動された制動運動はクラッチ装置8の駆動接続部9にも伝えられるので、好適には動力伝達系統全体はセルフロック式に形成されていない。
【0030】
図3図5の互いに関連している図面には、クランプ体・ワンウェイクラッチ15はそれぞれ1つの転動体として形成された、この場合、好適にはクランプローラとして形成されたクランプ体21を有している。クランプ体21がクランプ球として形成されていることも考えられる。1つのワンウェイクラッチ対14のクランプ体21は、内側の回転体23と外側の回転体24との間の機能区分22に封じ込められている。機能区分22は、クランプ体21が離れることができない容積を成している。
【0031】
今、既に、機能区分22が被駆動接続部10の運動と一緒に動くことを示唆することができる。
【0032】
この個所で、提案されているクラッチ装置8は高いコンパクト性を示している。クラッチ装置8はクラッチ軸線8aを有しており、ここでは好適には、内側の回転体23、外側の回転体24、ブレーキエレメント12、ブレーキディスク16,17がクラッチ軸線8aに合わせて方向付けられている。原則的には、上記の個々の構成部分を別の方向付けとすることも考えられる。
【0033】
図4には拡大図で、ここの機能区分22において横断面で、一方の回転体24が円形であって、他方の回転体23が円形ではなく、周方向で中央領域25の両側にそれぞれ1つのクランプ領域26が形成されるようになっていることが示されている。図4によれば点線で図示された接線が示すように、クランプ領域26において、それぞれ横断面で、両回転体23,24の、クランプ体21に面した壁区分が中央領域25を基点として周方向でそれぞれ1つの楔状の狭隘部を形成するので、クランプ体21は各機能区分22を離れられない。
【0034】
図4には、中央領域25にばねエレメント25aが配置されていて、このばねエレメント25aが、1つのワンウェイクラッチ対14の両側のクランプ体21を互いに逆方向に押し、ひいてはクランプ領域26内へと押していることが示されている。ばねエレメント25aは、圧縮コイルばね、又はここで示されているようにエラストマ構成体等であって良い。
【0035】
クラッチ装置13の遮断は、この場合、被駆動側から導入された運動に起因する、両回転体23,24の相対回動により生じる。図5b)の拡大図では、内側の回転体23が左回りで回転することにより、この図面において右側にあるクランプ体21が、両回転体23,24に沿って転動し、これにより該クランプ体21はクランプ領域26において、両回転体23,24とクランプ係合してロックされる。
【0036】
横断面円形の、ここでは外側の一方の回転体24にブレーキエレメント12が配設されており、ここでは内側の他方の回転体23に被駆動接続部10が配設されていることにより、被駆動側から導入された運動がブレーキ装置11によって制動される。同じことは、逆方向で被駆動側から導入された運動にも当てはまる。この場合、図5の拡大図で左側に示されたクランプ体21が、両回転体23,24とクランプ係合してロックされる。
【0037】
重要であるのは、この場合、ワンウェイクラッチ装置13の解除は駆動側から導入された運動により行われることである。このために、好適にはクラッチ軸線8aに合わせて方向付けられた第3の回転体27が設けられており、第3の回転体27の回転の際には駆動力28が周方向でクランプ体21に作用し、これによりクランプ体21はクランプ係合からはずれ、クランプ体21はクランプ体・ワンウェイクラッチ15を解放する。この場合、駆動力28の力作用線は好適にはクランプ体21の中心軸線若しくは中心点を通って延びている。このことは図5a)の図面に最もよく示されている。ここに示された拡大図には、第3の回転体27の駆動力28が、拡大図で右側のクランプ体21に作用し、これによりこのクランプ体21がクランプ領域26から出て拡大図で左に向かって押されることが示されている。僅かに圧縮されたばねエレメント25aを介して駆動力28は図5の拡大図で左側のクランプ体21にも作用する。しかしながらこのクランプ体21についてはクランプ係合によりロックさせることはできない。何故ならば、回転体23,24の上記壁区分に沿って行われる転動が常に、クランプ体21をクランプ領域26から外に出させるからである。図5a)の拡大図で左側に示されたクランプ体21は、上述した通り、所属の機能区分22から出ることはできないので、結果として平衡状態が生じ、この場合、第3の回転体27はその回転の際に、内側の、ここでは被駆動側の回転体23を、クランプ体21を介して連行する。
【0038】
この場合、好適には、第3の回転体27は、クラッチ装置8の駆動接続部9に配設されているので、上述したように、駆動側から導入された運動は制動されずに被駆動接続部10へと伝達される。
【0039】
図示した好適な実施例で重要であるのは、第3の回転体27は、被駆動側の回転体23と遊びを伴う形状接続をしているという事実である。このために第3の回転体27には、上述した2つの機能区分22の間で係合する少なくとも1つのツメ29が設けられている。このような装置は、特に少なくとも1つのツメ29は、遊び区分30を通過する前に、クランプ係合解除のために、そしてクランプ体21を介した被駆動側の回転体23の上述した連行のために、駆動側の回転体27と被駆動側の回転体23との相対回動を可能にする。そして、遊び区分30を通過した後は、被駆動側の回転体23の連行は形状接続により可能となる。即ちこの場合、形状接続は、遊び区分30を通過してから初めて行われ、この形状接続はばねエレメント25aの相応の圧縮を伴う。このような状態は、ばねエレメント25aのばね係数及び予負荷に応じて、駆動接続部9と被駆動接続部10との間の運転モーメントが相応の高さになって初めて得られる。
【0040】
基本的に、上記形状接続は過負荷の際にのみ行われ、通常運転による使用時には行われないように構成することができる。この場合特に、ばねエレメント25aが緩衝エレメントとして動力伝達系統の内側で作用し、このことは好適にはノイズの発生を減じることができるという事実が有利である。
【0041】
独立した意味を持つ別の技術によれば、特にテールゲートとして構成された調節エレメント1と、該調節エレメント1に配設された上述した駆動装置とを備えた調節エレメント装置が特許請求の範囲に記載される。提案された駆動装置についての全ての構成を参照することができる。
【0042】
提案された手段は、自動車の全ての可能な調節エレメント1について使用することができる。好適には、調節エレメント1は、自動車のテールゲート、トランクリッド、ボンネット、ドア、特にサイドドア、又はトランク底面である。
【0043】
提案された調節エレメント装置は好適には極めて特別に設計されている。即ちブレーキ装置11は好適には、調節エレメント1を好適には各中間位置で、特に重力及び場合によっては存在するばね力に抗して保持し、ブレーキ装置11のブレーキ力に抗した調節エレメント1の手動による調節を可能にするように構成されている。ばね力は例えば上述したばね装置7の力に起因する。
【0044】
上記好適な構成により、電源故障の際にも調節エレメント1の不都合な調節は行われず、ブレーキ装置11のブレーキ力に抗した手動による調節の可能性は常に維持されていることが保証される。
【0045】
最後に、別の好適な構成では、駆動装置の動力伝達系統にケーブル駆動装置、ケーブル伝動装置、ボーデンケーブルを接続することができることを指摘しておく。
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】