(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
(構成)
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す分解斜視図である。
図1に示すように、誘導加熱調理器100の上部には、鍋などの被加熱物5が載置される天板4を有している。天板4には、被加熱物5を誘導加熱するための加熱口として、第一の加熱口1、第二の加熱口2、第三の加熱口3とを備え、各加熱口に対応して、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、第三の加熱手段13を備えており、それぞれの加熱口に対して被加熱物5を載置して誘導加熱を行うことができるものである。
本実施の形態1では、本体の手前側に左右に並べて第一の加熱手段11と第二の加熱手段12が設けられ、本体の奥側ほぼ中央に第三の加熱手段13が設けられている。
なお、各加熱口の配置はこれに限るものではない。例えば、3つの加熱口を略直線状に横に並べて配置しても良い。また、第一の加熱手段11の中心と第二の加熱手段12の中心との奥行き方向の位置が異なるように配置しても良い。
【0011】
天板4は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等の赤外線を透過する材料で構成されており、誘導加熱調理器100本体の上面開口外周との間にゴム製パッキンやシール材を介して水密状態に固定される。天板4には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12及び第三の加熱手段13の加熱範囲(加熱口)に対応して、鍋の大まかな載置位置を示す円形の鍋位置表示が、塗料の塗布や印刷等により形成されている。
【0012】
天板4の手前側には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、及び第三の加熱手段13で被加熱物5を加熱する際の火力や調理メニュー(湯沸しモード、揚げ物モード等)を設定するための入力装置として、操作部40a、操作部40b、及び操作部40c(以下、操作部40と総称する場合がある)が設けられている。また、操作部40の近傍には、報知手段42として、誘導加熱調理器100の動作状態や操作部40からの入力・操作内容等を表示する表示部41a、表示部41b、及び表示部41cが設けられている。なお、操作部40a〜40cと表示部41a〜41cは加熱口毎に設けられている場合や、加熱口を一括して操作部40と表示部41を設ける場合など、特に限定するものではない。
【0013】
天板4の下方であって本体の内部には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、及び第三の加熱手段13を備えており、各々の加熱手段は加熱コイル(図示せず)で構成されている。
【0014】
誘導加熱調理器100の本体の内部には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、及び第三の加熱手段13の加熱コイルに高周波電力を供給する駆動回路50と、駆動回路50を含め誘導加熱調理器100全体の動作を制御するための制御部45とが設けられている。
なお、本実施の形態における制御部45は、本発明における「制御部」および「負荷判定手段」を構成する。
【0015】
加熱コイルは、略円形の平面形状を有し、絶縁皮膜された任意の金属(例えば銅、アルミなど)からなる導電線が円周方向に巻き付けることにより構成されており、駆動回路50により高周波電力が各加熱コイルに供給されることで、誘導加熱動作が行われている。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。なお、駆動回路50は加熱手段毎に設けられその構成は同一である。
図2では1つの駆動回路50のみを図示する。
図2に示すように、駆動回路50は、直流電源回路22と、インバータ回路23と、共振コンデンサ24aとを備える。
【0017】
入力電流検出手段25aは、交流電源(商用電源)21から直流電源回路22へ入力される電流を検出し、入力電流値に相当する電圧信号を制御部45へ出力する。
【0018】
入力電流検出手段25aと制御部45との間には、増幅部48a、48b、および切替部49が設けられている。増幅部48a、48bは、入力電流検出手段25aから出力された電圧信号(検出値)を増幅する。増幅部48a、48bは、入力された電圧信号を増幅して出力する増幅回路によって構成される。また、増幅部48a、48bは、それぞれ増幅率が異なっており、切替部49によって、入力電流検出手段25aとの接続が切り換えられる。本実施の形態1では、増幅部48bが、増幅部48aより増幅率が大きい場合を説明する。
なお、本実施の形態1では、2つの増幅部48a、48bを設ける場合を説明するが、本発明はこれに限定されず、増幅率が異なる3つ以上の増幅部を設けても良い。また、増幅部を1つのみ設け、増幅部を介さずに検出値を制御部45に入力する場合と、増幅部を介して増幅した検出値を制御部45に入力する場合とを切り換えるようにしても良い。また、増幅率が可変できる増幅部を設け、制御部45によって増幅率を設定するようにしても良い。
【0019】
直流電源回路22は、ダイオードブリッジ22a、リアクタ22b、平滑コンデンサ22cとを備え、交流電源21から入力される交流電圧を直流電圧に変換して、インバータ回路23へ出力する。
【0020】
インバータ回路23は、スイッチング素子としてのIGBT23a、23bが直流電源回路22の出力に直列に接続された、いわゆるハーフブリッジ型のインバータであり、フライホイールダイオードとしてダイオード23c、23dがそれぞれIGBT23a、23bと並列に接続されている。インバータ回路23は、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜50kHz程度の高周波の交流電力に変換して、加熱コイル11aと共振コンデンサ24aからなる共振回路に供給する。
【0021】
このように構成することで、加熱コイル11aには数十A程度の高周波電流が流れ、流れる高周波電流により発生する高周波磁束によって加熱コイル11aの直上の天板4上に載置された被加熱物5を誘導加熱する。スイッチング素子であるIGBT23a、23bは、例えばシリコン系からなる半導体で構成されているが、炭化珪素、あるいは窒化ガリウム系材料などのワイドバンドギャップ半導体を用いた構成でも良い。
【0022】
コイル電流検出手段25bは、加熱コイル11aと共振コンデンサ24aとの間に接続されている。コイル電流検出手段25bは、例えば、加熱コイル11aに流れる電流のピークを検出し、加熱コイル電流のピーク値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
【0023】
温度検知手段30は、例えばサーミスタにより構成され、被加熱物5から天板4に伝熱した熱により温度を検知する。なお、サーミスタに限らず赤外線センサなど任意のセンサを用いても良い。
【0024】
(動作)
次に実施の形態1に係る誘導加熱調理器100の動作について説明する。
まず、天板4の加熱口に載置された被加熱物5を、操作部40により設定された火力により誘導加熱する場合の動作について説明する。
【0025】
使用者により加熱口に被加熱物5が載置され、加熱開始(火力投入)の指示が操作部40に行われると、制御部45(負荷判定手段)は負荷判定処理を行う。
【0026】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器における加熱コイル電流と入力電流の関係に基づく被加熱物の負荷判別特性図である。
ここで、負荷となる被加熱物5(鍋)の材質は、鉄やSUS430等の磁性材と、SUS304等の高抵抗非磁性材と、アルミや銅等の低抵抗非磁性材と、に大別される。
【0027】
図3に示すように、天板4に載置された鍋負荷の材質によってコイル電流と入力電流の関係が異なる。制御部45は、
図3に示すコイル電流と入力電流との関係をテーブル化した負荷判定テーブルを予め内部に記憶している。負荷判定テーブルを内部に記憶することで安価な構成で負荷判定手段を構成することができる。
【0028】
負荷判定処理において、制御部45は、負荷判定用の特定の駆動信号でインバータ回路23を駆動し、入力電流検出手段25aの出力信号から入力電流を検出する。また同時に制御部45は、コイル電流検出手段25bの出力信号からコイル電流を検出する。制御部45は検出したコイル電流および入力電流と、
図3の関係を表した負荷判定テーブルから、載置された被加熱物(鍋)5の材質を判定する。このように、制御部45(負荷判定手段)は、入力電流とコイル電流との相関に基づいて、加熱コイル11aの上方に載置された被加熱物5の材質を判定する。
【0029】
以上の負荷判定処理を行った後、制御部45は、負荷判定結果に基づいた制御動作を行う。
【0030】
負荷判定結果が、低抵抗非磁性材であった場合、本実施の形態1の誘導加熱調理器100では加熱不可能であるため、加熱不可能であることを報知手段42に報知して、使用者に鍋の変更を促す。
【0031】
また、負荷判定結果が、無負荷であった場合も、加熱不可能であることを報知手段42に報知して、使用者に鍋の載置を促す。
【0032】
負荷判定結果が、磁性材、または高抵抗非磁性材であった場合、これらの鍋は本実施の形態1の誘導加熱調理器100で加熱可能な材質であるため、制御部45は、判定した鍋材質に応じた駆動周波数を決定する。この駆動周波数は、入力電流が過大とならないよう共振周波数よりも高い周波数とする。この駆動周波の決定は、例えば被加熱物5の材質と設定火力とに応じた周波数のテーブル等を参照することで決定することができる。
制御部45は、決定した駆動周波数を固定してインバータ回路23を駆動して誘導加熱動作を開始する。なお、駆動周波数を固定した状態においては、インバータ回路23のスイッチング素子のオンデューティ(オンオフ比率)も固定した状態とする。
【0033】
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の被加熱物の温度変化時の駆動周波数に対する入力電流の相間図である。
図4において、細線は被加熱物5(鍋)が低温のときの特性であり、太線は被加熱物5が高温のときの特性である。
図4に示すように、被加熱物5の温度によって特性が変化するのは、温度上昇によって被加熱物5の抵抗率が上昇し、また透磁率が低下することで、加熱コイル11aと被加熱物5の磁気結合が変化するためである。
【0034】
本実施の形態1に係る誘導加熱調理器100の制御部45においては、
図4に示す入力電流が最大となる周波数よりも高い周波数を駆動周波数として決定し、この駆動周波数を固定してインバータ回路23を制御する。
【0035】
図5は、
図4の破線で示した部分を拡大した図である。
前述の負荷判定処理で判定した鍋材質に応じた駆動周波数を固定してインバータ回路23を制御すると、被加熱物5が低温から高温になるにつれて、当該駆動周波数における入力電流値(動作点)が、点Aから点Bに変化し、被加熱物5の温度上昇に伴い、入力電流が徐々に低下していく。
このとき、制御部45は、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で、入力電流の所定時間当たりの変化量(時間変化)を求め、この所定時間当たりの変化量に基づき、被加熱物5の温度変化を検知する。
【0036】
このため、被加熱物5の材質によらず、被加熱物5の温度変化を検知することができる。また、入力電流の変化により被加熱物5の温度変化を検知することができるので、温度センサ等と比較して高速に温度変化を検知することができる。
【0037】
また、加熱コイル11aの上方に載置された被加熱物5の材質を判定し、被加熱物5の材質に応じて、インバータ回路23の駆動周波数を決定し、該駆動周波数によりインバータ回路23を駆動させる。このため、被加熱物5の材質に応じた駆動周波数によりインバータ回路23を固定して駆動させることができ、入力電流の増加を抑制することができる。よって、インバータ回路23の高温化を抑制でき、信頼性を向上することができる。
【0038】
(湯沸しモード1)
次に、操作部40により調理メニュー(動作モード)として、被加熱物5に投入された水の湯沸し動作を行う湯沸しモードが選択された場合の動作について説明する。
【0039】
制御部45は、上述した動作と同様に、負荷判定処理を行い、判定した鍋材質に応じた駆動周波数を決定し、決定した駆動周波数を固定してインバータ回路23を駆動して誘導加熱動作を実施する。そして、制御部45は、入力電流の時間変化により沸騰完了を判断する。ここで、水の湯沸かしを行う際の経過時間と各特性の変化について
図6により説明する。
【0040】
図6は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の駆動周波数、温度、入力電流と時間との関係を示す図である。
図6においては、被加熱物5内に水が投入され湯沸しを行った際の経過時間と各特性の変化を示しており、
図6(a)は駆動周波数、
図6(b)は温度(水温)、
図6(c)は入力電流を示す。
【0041】
図6(a)に示すように、駆動周波数を固定してインバータ回路23の制御を行う。
図6(b)に示すように、被加熱物5の温度(水温)は沸騰するまで徐々に上昇し、沸騰すると温度が一定となる。
図6(c)に示すように、被加熱物5の温度の上昇に応じて、入力電流は徐々に低下していき、水が沸騰して温度が一定となると、入力電流も一定となる。すなわち、入力電流が一定となれば、水が沸騰して湯沸しが完了したこととなる。
【0042】
このようなことから、本実施の形態における制御部45は、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で入力電流の所定時間当たりの変化量(時間変化)を求め、この所定時間当たりの変化量が所定値以下となった場合、湯沸かしが完了したと判断する。
なお、所定値の情報は予め制御部45に設定しても良いし、操作部40等から入力可能としても良い。
【0043】
そして、制御部45は、報知手段42を用いて湯沸かしが完了した旨を報知する。ここで報知手段42としては、表示部41に沸騰完了などの表示を行ったり、スピーカ(図示せず)を用いて音声で使用者に報知したり、その方式は特に限定しない。
【0044】
以上のように、水の湯沸し動作を設定する湯沸しモードにおいて、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で、入力電流の所定時間当たりの変化量を求め、この所定時間当たりの変化量が、所定値以下となったとき、湯沸しが完了した旨を報知手段42により報知させる。
このため、水の湯沸かし完了を速やかに報知することができ、使い勝手の良い誘導加熱調理器を得ることができる。
【0045】
(湯沸かしモード2)
次に、操作部40により湯沸しモードが選択された場合の別の制御動作について説明する。
【0046】
入力電流の大きさは、加熱コイル11aに供給される高周波電力(火力)の大きさに依存し、火力が大きければ入力電流が大きく、火力が小さければ入力電流も小さくなる。また、火力が小さい場合には、火力が大きい場合と比較して、温度上昇が緩やかであり、入力電流もゆっくりと低下する。このため、加熱コイル11aに供給される高周波電力(火力)が小さい場合には、入力電流の所定時間当たりの変化量が小さくなり、湯沸し完了を検知できない場合がある。
【0047】
湯沸しモード2において、制御部45は、入力電流検出手段25aで検出した入力電流の検出値に応じて、切替部49を切り換えることによって、増幅部48aまたは48bのいずれかを選択する。ここで、制御部45は、入力電流の検出値が小さいほど、増幅部の増幅率が大きくなるように選択する。制御部45は、選択した増幅部によって増幅された検出値の所定時間当たりの変化量を求める。そして、所定時間当たりの変化量が所定値以下(ほぼ一定)となったときに、水が沸騰して湯沸しが完了したと判断する。このような動作の詳細を
図7により説明する。
【0048】
図7は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の駆動周波数、温度、入力電流、および増幅部出力と時間との関係を示す図である。
図7においては、被加熱物5内に水が投入され湯沸しを行った際の経過時間と各特性の変化を示しており、
図7(a)は駆動周波数、
図7(b)は温度(水温)、
図7(c)は入力電流、
図7(d)は増幅部48a、48bによって増幅された入力電流値(以下「増幅部出力」という)を示す。また、
図7の各図において、実線は高火力で動作(制御)した場合の特性を示し、破線は低火力で制御した場合の特性を示す。
なお、以下の説明において、駆動周波数、入力電流等の高低および時間の長短については、特に絶対的な値との関係で定まっているものではなく、設定火力が高火力の場合と低火力との場合の比較によって、相対的に定まるものとする。
【0049】
高火力の場合、インバータ回路23の駆動周波数を低く設定し、駆動周波数を固定して加熱を開始する(
図7(a)の実線)。この場合、高火力であるため、被加熱物5の温度(水温)が短時間で上昇する(
図7(b)の実線)。
図7(c)の実線に示すように、被加熱物5の温度の上昇に伴い、入力電流が低下する。入力電流が低下し、水が沸騰して温度が一定となると、入力電流も一定となる。このように、高火力時は、加熱コイル11aに供給される高周波電力も高く、入力電流の値も高いため、水の沸騰に至るまでの入力電流の変化量も大きくなる。
一方、低火力の場合、インバータ回路23の駆動周波数を高く設定し、駆動周波数を固定して加熱を開始する(
図7(a)の破線)。この場合、低火力であるため、被加熱物5の温度(水温)は、高火力時と比較して穏やかに上昇する(
図7(b)の破線)。
図7(c)の破線に示すように、被加熱物5の温度の上昇に伴い、高火力時と比較して、入力電流がゆっくりと低下し、水が沸騰して温度が一定となると、入力電流も一定となる。
このように、低下力時は、加熱コイル11aに供給される高周波電力が低く、入力電流の値も低いため、水の沸騰に至るまでの入力電流の変化量も小さくなる。
【0050】
このようなことから、湯沸しモード2において、制御部45は、湯沸しモード2の制御開始時に設定した火力、すなわち最初に検出した入力電流の値に応じて、増幅部48a、48bのうち入力電流を増幅する増幅部を切り替える。つまり、入力電流が、予め設定した閾値より低い場合は、増幅部48a、48bのうち増幅率が高い増幅部48bにて入力電流を増幅させる(
図7(d)の破線)。これによって、入力電流の単位時間当たりの変化量が大きくなる。また、入力電流が、予め設定した閾値以上の場合は、増幅部48a、48bのうち増幅率が低い増幅部48aにて入力電流を増幅させる(
図7(d)の実線)。なお、使用する増幅部の選択は、湯沸しモード2の制御開始直後が望ましい。
【0051】
なお、ここでは、2つの増幅部48a、48bのいずれかに切り換える場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、入力電流の検出値が小さいほど、入力電流を増幅する増幅率を大きくする構成であれば良い。例えば、増幅率が異なる3つ以上の増幅部のいずれかに切り換えても良いし、1つの増幅部によって増幅の有無を切り換えるようにしても良い。また、増幅率が可変できる増幅部によって、無段階に増幅率を設定しても良い。
【0052】
制御部45は、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で、増幅された検出値の所定時間当たりの変化量(時間変化)を求め、この所定時間当たりの変化量が所定値以下となった場合、湯沸かしが完了したと判断する。
なお、閾値および所定値の情報は予め制御部45に設定しても良いし、操作部40等から入力可能としても良い。
【0053】
そして、制御部45は、報知手段42を用いて湯沸かしが完了した旨を報知する。ここで報知手段42としては、表示部41に沸騰完了などの表示を行ったり、スピーカ(図示せず)を用いて音声で使用者に報知したり、その方式は特に限定しない。
【0054】
以上のように、水の湯沸し動作を設定する湯沸しモードにおいて、入力電流の検出値に応じて、検出値を増幅する増幅部を選択し、増幅された検出値の所定時間当たりの変化量を求め、この所定時間当たりの変化量が、所定値以下となったとき、湯沸しが完了したと判断する。
このため、加熱コイル11aに供給される高周波電力(火力)にかかわらず、水の湯沸し完了を精度良く検知することができ、信頼性の高い誘導加熱調理器を得ることができる。また、使い勝手の良い誘導加熱調理器を得ることができる。
【0055】
なお、制御部45は、湯沸かしが完了したと判断した場合、駆動周波数の固定を解除し、インバータ回路23の駆動周波数を上昇させることで入力電流を低下させ、加熱コイル11aに供給される高周波電力(火力)を低下させるようにしても良い。湯沸し(水の沸騰)の場合では、必要以上に火力を上げても水温が100℃以上になることはないため、駆動周波数を上げて火力を低下させても、水温を保持することができる。
このように、入力電流補正値の所定時間当たりの変化量が、所定値以下となった場合、インバータ回路23の駆動を制御して、加熱コイル11aに供給される高周波電力を低下させるので、入力電力を抑えて省エネルギー化を図ることができる。
【0056】
(別の駆動回路の構成例)
続いて別の駆動回路を使用した例について説明する。
図8は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の別の駆動回路を示す図である。
図8に示す駆動回路50は、
図2に示した構成に、共振コンデンサ24bを付加したものである。なお、その他の構成は
図2と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0057】
前述の通り、加熱コイル11aと共振コンデンサにより共振回路を構成しているため、誘導加熱調理器に必要とされる最大火力(最大入力電力)によって、共振コンデンサの容量は決定される。
図8に示す駆動回路50では、共振コンデンサ24aおよび24bを並列接続することで、それぞれの容量を半分にすることができ、共振コンデンサを2個使用した場合でも安価な制御回路を得ることができる。
【0058】
またコイル電流検出手段25bを並列接続した共振コンデンサのうちの共振コンデンサ24a側に配置することで、コイル電流検出手段25bに流れる電流は、加熱コイル11aに流れる電流の半分になるため、小型・小容量のコイル電流検出手段25bを用いることが可能となり、小型で安価な制御回路を得ることができ、安価な誘導加熱調理器を得ることができる。
【0059】
なお、本実施の形態1では、増幅部48a、48bと、制御部45とを分けて説明したが、増幅部48a、48bを制御部45の一部として構成しても良い。
【0060】
実施の形態2.
操作部40により湯沸しモードが選択された場合の別の制御動作について説明する。
なお、本実施の形態2における誘導加熱調理器100の構成は、上記実施の形態1の構成と同様である。
【0061】
(湯沸かしモード3)
加熱開始から水が沸騰に至るまでの間における入力電流の変化量(以下「電流変化量」という)は、被加熱物5の負荷(材質)によっても変化する。すなわち、同じ火力であっても、電流変化量が大きい材質と小さい材質とが存在する。このため、電流変化量が小さい被加熱物5を誘導加熱して、水の湯沸しを行う場合には、被加熱物5の材質によっては、入力電流の所定時間当たりの変化量が小さくなり、湯沸し完了を検知できない場合がある。
本実施の形態2では、制御部45(負荷判定手段)は、湯沸しモードの制御開始直後に、被加熱物5の電流変化量の大小を判定し、この判結果に応じて、増幅部48aまたは48bのいずれかを選択する。このような動作の詳細を
図9により説明する。
【0062】
図9は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の駆動周波数、温度、入力電流、および増幅部出力と時間との関係を示す図である。
図9においては、被加熱物5内に水が投入され湯沸しを行った際の経過時間と各特性の変化を示しており、
図9(a)は駆動周波数、
図9(b)は温度(水温)、
図9(c)は入力電流、
図9(d)は増幅部48a、48bによって増幅された入力電流値(以下「増幅部出力」という)を示す。また、
図9(c)および(d)において、実線は電流変化量が小さい負荷(材質)を加熱した場合の特性を示し、破線は電流変化量が大きい負荷(材質)を加熱した場合の特性を示す。
なお、以下の説明において、入力電流等の高低および電流変化量の大小については、特に絶対的な値との関係で定まっているものではなく、被加熱物5の負荷(材質)の比較によって、相対的に定まるものとする。
【0063】
駆動周波数を固定して加熱を開始すると(
図9(a))、被加熱物5の温度(水温)は沸騰するまで徐々に上昇する(
図9(b))。
図9(c)に示すように、被加熱物5の温度の上昇に応じて、入力電流は徐々に低下していき、水が沸騰して温度が一定となると、入力電流も一定となる。この際、被加熱物5が入力電流変化量の大きい材質の場合、
図9(c)の実線で示すように入力電流が低下するのに対し、被加熱物5が、入力電流の小さい材質の場合には、
図9(d)の破線で示すように入力電流の低下量は小さくなる。
【0064】
このようなことから、湯沸しモード3において、制御部45(負荷判定手段)は、湯沸しモード3の制御開始直後に、被加熱物5の電流変化量の大小を判定する。
【0065】
ここで、制御部45(負荷判定手段)における、被加熱物5の電流変化量の判定の一例について説明する。
図10は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器における加熱コイル電流と入力電流の関係に基づく被加熱物の電流変化量の判定処理を説明する図である。
上記実施の形態1で説明したように、入力電流とコイル電流との相関に基づいて、負荷となる被加熱物5(鍋)の材質の種類を判定することができるが、同じ種類の被加熱物5であっても、電流変化量が大きい被加熱物5と電流変化量が小さい被加熱物5とが存在する。そこで、制御部45(負荷判定手段)は、
図10に示すように、予め実験データなどにより、入力電流の値とコイル電流との値とに対応して、電流変化量の大小関係を記憶しておく。そして、制御部45(負荷判定手段)は、入力電流検出手段25aによって検出された入力電流、および、コイル電流検出手段25bによって検出されたコイル電流に基づき、予め記憶した電流変化量の大小関係の情報を参照することで、当該被加熱物5を加熱した際における電流変化量の大小を判定する。
なお、
図10の例では、電流変化量が「大」の場合と「小」の場合を示すが、本発明はこの2つの場合に限定されるものではなく、3つ以上の複数の段階で判定しても良い。
【0066】
次に、制御部45は、電流変化量の判定結果に応じて、増幅部48a、48bのうち入力電流を増幅する増幅部を切り替える。
つまり、電流変化量が小さいと判定した場合は、増幅部48a、48bのうち増幅率が高い増幅部48bにて入力電流を増幅させる(
図9(d)の破線)。これによって、入力電流の単位時間当たりの変化量が大きくなる。また、電流変化量大きいと判定した場合は、増幅部48a、48bのうち増幅率が低い増幅部48aにて入力電流を増幅させる(
図9(d)の実線)。なお、使用する増幅部の選択は、湯沸しモード2の制御開始直後が望ましい。
【0067】
制御部45は、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態で、増幅された検出値の所定時間当たりの変化量(時間変化)を求め、この所定時間当たりの変化量が所定値以下となった場合、湯沸かしが完了したと判断する。
なお、所定値の情報は予め制御部45に設定しても良いし、操作部40等から入力可能としても良い。
【0068】
そして、制御部45は、報知手段42を用いて湯沸かしが完了した旨を報知する。ここで報知手段42としては、表示部41に沸騰完了などの表示を行ったり、スピーカ(図示せず)を用いて音声で使用者に報知したり、その方式は特に限定しない。
【0069】
以上のように、水の湯沸し動作を設定する湯沸しモードにおいて、被加熱物5の電流変化量に応じて、検出値を増幅する増幅部を選択し、増幅された検出値の所定時間当たりの変化量を求め、この所定時間当たりの変化量が、所定値以下となったとき、湯沸しが完了したと判断する。
このため、被加熱物5を誘導加熱する際の電流変化量の大小にかかわらず、水の湯沸し完了を精度良く検知することができ、信頼性の高い誘導加熱調理器を得ることができる。また、使い勝手の良い誘導加熱調理器を得ることができる。
【0070】
なお、制御部45は、湯沸かしが完了したと判断した場合、駆動周波数の固定を解除し、インバータ回路23の駆動周波数を上昇させることで入力電流を低下させ、加熱コイル11aに供給される高周波電力(火力)を低下させるようにしても良い。湯沸し(水の沸騰)の場合では、必要以上に火力を上げても水温が100℃以上になることはないため、駆動周波数を上げて火力を低下させても、水温を保持することができる。
このように、入力電流補正値の所定時間当たりの変化量が、所定値以下となった場合、インバータ回路23の駆動を制御して、加熱コイル11aに供給される高周波電力を低下させるので、入力電力を抑えて省エネルギー化を図ることができる。
【0071】
なお、上記の説明では、駆動周波数を変更することで火力を制御する方式について述べたが、インバータ回路23のスイッチング素子のオンデューティ(オンオフ比率)を変更することで火力を制御する方式を用いても良い。
【0072】
なお、実施の形態1および2では、入力電流検出手段25aで検出した入力電流の変化量を検知する例について説明したが、入力電流に代えて、コイル電流検出手段25bで検出したコイル電流の変化量を検知しても良いし、入力電流とコイル電流の両方の変化量を検知しても良い。コイル電流を用いる場合には、コイル電流検出手段25bと制御部45との間に、増幅部48a、48b、および切替部49を設け、上述した動作と同様に、選択した増幅部によって検出値を増幅する。
【0073】
なお、実施の形態1および2では、ハーフブリッジ型のインバータ回路23について説明したが、フルブリッジ型や一石電圧共振型のインバータなどを用いた構成でも良い。
【0074】
更に鍋材質の負荷判定でコイル電流と一次電流の関係を用いる方式について説明したが、共振コンデンサの両端の共振電圧を検出することで負荷判定を行う方式を用いても良く、負荷判定の方式は特に問わない。
【0075】
実施の形態3.
本実施の形態3では、上記実施の形態1及び2における駆動回路50の詳細について説明する。
【0076】
図11は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器の駆動回路の一部を示す図である。なお、
図11においては、上記実施の形態1及び2の駆動回路50の一部の構成のみを図示している。
図11に示すように、インバータ回路23は、正負母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(IGBT23a、23b)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード23c、23dとによって構成されるアームを1組備えている。
【0077】
IGBT23aとIGBT23bは、制御部45から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。
制御部45は、IGBT23aをオンさせている間はIGBT23bをオフ状態にし、IGBT23aをオフさせている間はIGBT23bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。
これにより、IGBT23aとIGBT23bとにより、加熱コイル11aを駆動するハーフブリッジインバータを構成する。
【0078】
なお、IGBT23aとIGBT23bとにより本発明における「ハーフブリッジインバータ回路」を構成する。
【0079】
制御部45は、投入電力(火力)に応じて、IGBT23aおよびIGBT23bに高周波の駆動信号を入力し、加熱出力を調整する。IGBT23aおよびIGBT23bに出力される駆動信号は、加熱コイル11aおよび共振コンデンサ24aにより構成される負荷回路の共振周波数よりも高い駆動周波数の範囲で可変して、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御する。
【0080】
次に、インバータ回路23の駆動周波数とオンデューティ比とによる投入電力(火力)の制御動作について説明する。
【0081】
図12は、実施の形態3に係るハーフブリッジ回路の駆動信号の一例を示す図である。
図12(a)は高火力状態における各スイッチの駆動信号の例である。
図12(b)は低火力状態における各スイッチの駆動信号の例である。
制御部45は、インバータ回路23のIGBT23aおよびIGBT23bに、負荷回路の共振周波数よりも高い高周波の駆動信号を出力する。
この駆動信号の周波数を可変することにより、インバータ回路23の出力が増減する。
【0082】
例えば、
図12(a)に示すように、駆動周波数を低下させると、加熱コイル11aに供給される高周波電流の周波数が、負荷回路の共振周波数に近づき、加熱コイル11aへの投入電力が増加する。
また、
図12(b)に示すように、駆動周波数を上昇させると、加熱コイル11aに供給される高周波電流の周波数が、負荷回路の共振周波数から離れ、加熱コイル11aへの投入電力が減少する。
【0083】
さらに、制御部45は、上述した駆動周波数の可変による投入電力の制御とともに、インバータ回路23のIGBT23aおよびIGBT23bのオンデューティ比を可変することで、インバータ回路23の出力電圧の印加時間を制御し、加熱コイル11aへの投入電力を制御することも可能である。
火力を増加させる場合には、駆動信号の1周期におけるIGBT23aのオン時間(IGBT23bのオフ時間)の比率(オンデューティ比)を大きくして、1周期における電圧印加時間幅を増加させる。
また、火力を低下させる場合には、駆動信号の1周期におけるIGBT23aのオン時間(IGBT23bのオフ時間)の比率(オンデューティ比)を小さくして、1周期における電圧印加時間幅を減少させる。
【0084】
図12(a)の例では、駆動信号の1周期T11におけるIGBT23aのオン時間T11a(IGBT23bのオフ時間)と、IGBT23aのオフ時間T11b(IGBT23bのオン時間)との比率が同じ場合(オンデューティ比が50%)の場合を図示している。
また、
図12(b)の例では、駆動信号の1周期T12におけるIGBT23aのオン時間T12a(IGBT23bのオフ時間)と、IGBT23aのオフ時間T12b(IGBT23bのオン時間)との比率が同じ場合(オンデューティ比が50%)の場合を図示している。
【0085】
制御部45は、上記実施の形態1及び2で説明した、増幅された検出値の所定時間当たりの変化量を求める際に、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態においては、インバータ回路23のIGBT23aおよびIGBT23bのオンデューティ比を固定した状態にしている。
これにより、加熱コイル11aへの投入電力が一定の状態で、増幅された検出値の所定時間当たりの変化量を求めることができる。
【0086】
実施の形態4.
本実施の形態4においては、フルブリッジ回路を用いたインバータ回路23について説明を行う。
図13は、実施の形態4に係る誘導加熱調理器の駆動回路の一部を示す図である。なお、
図13においては、上記実施の形態1及び2の駆動回路50との相違点のみを図示している。
本実施の形態4では、1つの加熱口に対して2つの加熱コイルが設けられている。2つの加熱コイルは、例えば、それぞれ直径が異なり、同心円状に配置されている。ここでは、直径の小さい加熱コイルを内コイル11bと称し、直径の大きい加熱コイルを外コイル11cと称する。
なお、加熱コイルの数及び配置は、これに限定されない。例えば、加熱口の中央に配置した加熱コイルの周囲に複数の加熱コイルを配置する構成でも良い。
【0087】
インバータ回路23は、正負母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(IGBT)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオードとによって構成されるアームを3組備えている。なお、これ以降、3組のアームのうち1組を共通アーム、他の2組を内コイル用アームおよび外コイル用アームと呼ぶ。
【0088】
共通アームは、内コイル11bおよび外コイル11cに接続されたアームで、IGBT232a、IGBT232b、ダイオード232c、及びダイオード232dで構成されている。
内コイル用アームは、内コイル11bが接続されたアームで、IGBT231a、IGBT231b、ダイオード231c、及びダイオード231dで構成されている。
外コイル用アームは、外コイル11cが接続されたアームで、IGBT233a、IGBT233b、ダイオード233c、及びダイオード233dで構成されている。
【0089】
共通アームのIGBT232aとIGBT232b、内コイル用アームのIGBT231aとIGBT231b、外コイル用アームのIGBT233aとIGBT233bは制御部45から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。
【0090】
制御部45は、共通アームのIGBT232aをオンさせている間はIGBT232bをオフ状態にし、IGBT232aをオフさせている間はIGBT232bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。
同様に、制御部45は、内コイル用アームのIGBT231aとIGBT231b、外コイル用アームのIGBT233aとIGBT233bを交互にオンオフする駆動信号を出力する。
これにより、共通アームと内コイル用アームとにより、内コイル11bを駆動するフルブリッジインバータを構成する。また、共通アームと外コイル用アームとにより、外コイル11cを駆動するフルブリッジインバータを構成する。
【0091】
なお、共通アームと内コイル用アームとにより本発明における「フルブリッジインバータ回路」を構成する。また、共通アームと外コイル用アームとにより本発明における「フルブリッジインバータ回路」を構成する。
【0092】
内コイル11bおよび共振コンデンサ24cにより構成される負荷回路は、共通アームの出力点(IGBT232aとIGBT232bの接続点)と、内コイル用アームの出力点(IGBT231aとIGBT231bの接続点)との間に接続される。
外コイル11cおよび共振コンデンサ24dにより構成される負荷回路は、共通アームの出力点と、外コイル用アームの出力点(IGBT233aとIGBT233bの接続点)との間に接続されている。
【0093】
内コイル11bは、略円形に巻回された外形の小さい加熱コイルであり、その外周に外コイル11cが配置されている。
内コイル11bに流れるコイル電流は、コイル電流検出手段25cにより検出する。コイル電流検出手段25cは、例えば、内コイル11bに流れる電流のピークを検出し、加熱コイル電流のピーク値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
外コイル11cに流れるコイル電流は、コイル電流検出手段25dにより検出する。コイル電流検出手段25d、例えば、外コイル11cに流れる電流のピークを検出し、加熱コイル電流のピーク値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
【0094】
制御部45は、投入電力(火力)に応じて、各アームのスイッチング素子(IGBT)に高周波の駆動信号を入力し、加熱出力を調整する。
共通アーム及び内コイル用アームのスイッチング素子に出力される駆動信号は、内コイル11bおよび共振コンデンサ24cにより構成される負荷回路の共振周波数よりも高い駆動周波数の範囲で可変して、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御する。
また、共通アーム及び外コイル用アームのスイッチング素子に出力される駆動信号は、外コイル11cおよび共振コンデンサ24dにより構成される負荷回路の共振周波数よりも高い駆動周波数の範囲で可変して、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御する。
【0095】
次に、インバータ回路23のアーム相互間の位相差による投入電力(火力)の制御動作について説明する。
【0096】
図14は、実施の形態4に係るフルブリッジ回路の駆動信号の一例を示す図である。
図14(a)は高火力状態における各スイッチの駆動信号と各加熱コイルの通電タイミングの例である。
図14(b)は低火力状態における各スイッチの駆動信号と各加熱コイルの通電タイミングの例である。
なお、
図14(a)及び(b)に示す通電タイミングは、各アームの出力点(IGBTとIGBTの接続点)の電位差に関係するものであり、内コイル用アームの出力点および外コイル用アームの出力点に対して共通アームの出力点が低い状態を「ON」で示している。また、内コイル用アームの出力点および外コイル用アームの出力点に対して共通アームの出力点が高い状態および同電位の状態を「OFF」で示している。
【0097】
図14に示すように、制御部45は、共通アームのIGBT232aおよびIGBT232bに、負荷回路の共振周波数よりも高い高周波の駆動信号を出力する。
また、制御部45は、共通アームの駆動信号より位相の進んだ駆動信号を、内コイル用アームのIGBT231aとIGBT231b、外コイル用アームのIGBT233aとIGBT233bに出力する。なお、各アームの駆動信号の周波数は同一周波数であり、オンデューティ比も同一である。
【0098】
各アームの出力点(IGBTとIGBTの接続点)には、IGBTとIGBTのオンオフ状態に応じて、直流電源回路の出力である正母線電位、あるいは負母線電位が高周波で切り替わって出力される。これにより、内コイル11bには、共通アームの出力点と、内コイル用アームの出力点との電位差が印加される。また、外コイル11cには、共通アームの出力点と、外コイル用アームの出力点との電位差が印加される。
したがって、共通アームへの駆動信号と、内コイル用アームおよび外コイル用アームへの駆動信号との位相差を増減することにより、内コイル11bおよび外コイル11cに印加する高周波電圧を調整することができ、内コイル11bと外コイル11cに流れる高周波出力電流と入力電流を制御することができる。
【0099】
火力を増加させる場合には、アーム間の位相αを大きくして、1周期における電圧印加時間幅を大きくする。なお、アーム間の位相αの上限は、逆相(位相差180°)の場合であり、このときの出力電圧波形はほぼ矩形波となる。
図14(a)の例では、アーム間の位相αが180°の場合を図示している。また、各アームの駆動信号のオンデューティ比が50%の場合、つまり、1周期T13におけるオン時間T13aとオフ時間T13bとの比率が同じ場合を図示している。
この場合、駆動信号の1周期T14における、内コイル11b、外コイル11cの通電オン時間幅T14aと、通電オフ時間幅T14bとが同じ比率となる。
【0100】
火力を低下させる場合には、高火力状態と比較してアーム間の位相αを小さくして、1周期における電圧印加時間幅を減少させる。なお、アーム間の位相αの下限は、例えば、ターンオン時に負荷回路に流れる電流の位相等との関係でスイッチング素子に過大電流が流れて破壊してしまわないレベルに設定する。
図14(b)の例では、アーム間の位相αを
図14(a)と比較して小さくした場合を図示している。なお、各アームの駆動信号の周波数及びオンデューティ比は、
図14(a)と同じである。
この場合、駆動信号の1周期T14における、内コイル11b、外コイル11cの通電オン時間幅T14aは、アーム間の位相αに応じた時間となる。
このように、アーム相互間の位相差によって、内コイル11b、外コイル11cへの投入電力(火力)を制御することができる。
【0101】
なお、上記の説明では、内コイル11bおよび外コイル11cを共に加熱動作させる場合を説明したが、内コイル用アーム又は外コイル用アームの駆動を停止し、内コイル11b又は外コイル11cの何れか一方のみを加熱動作させるようにしても良い。
【0102】
制御部45は、上記実施の形態1及び2で説明した、増幅された検出値の所定時間当たりの変化量を求める際に、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態においては、アーム間の位相αと、各アームのスイッチング素子のオンデューティ比とを固定した状態にする。なお、その他の動作は上記実施の形態1又は2と同様である。
これにより、内コイル11b、外コイル11cへの投入電力が一定の状態で、増幅された検出値の所定時間当たりの変化量を求めることができる。
【0103】
なお、本実施の形態4では、内コイル11b流れるコイル電流と、外コイル11c流れるコイル電流とを、コイル電流検出手段25cとコイル電流検出手段25dによってそれぞれ検出している。
このため、内コイル11bおよび外コイル11cを共に加熱動作させた場合において、コイル電流検出手段25c又はコイル電流検出手段25dの何れか一方が、故障などでコイル電流値が検出できない場合であっても、他方の検出値を増幅することによって、検出値の所定時間当たり変化量を検出することが可能となる。
また、制御部45は、コイル電流検出手段25cの検出値が増幅された検出値の所定時間当たりの変化量と、コイル電流検出手段25dの検出値が増幅された検出値の所定時間当たりの変化量とをそれぞれ求め、それぞれ変化量のうち大きい方を用いて、上記実施の形態1及び2で説明した各判断動作を行うようにしても良い。また、それぞれの変化量の平均値を用いて、上記実施の形態1及び2で説明した各判断動作を行うようにしても良い。
このような制御を行うことで、コイル電流検出手段25c又はコイル電流検出手段25dの何れか検出精度が低い場合であっても、検出値の所定時間当たりの変化量を、より精度良く求めることができる。
【0104】
なお、上記実施の形態1〜4においては、本発明の誘導加熱調理器の一例として、IHクッキングヒーターを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、誘導加熱により加熱調理を行う炊飯器など、誘導加熱方式を採用する任意の誘導加熱調理器に適用することが可能である。