特許第5980360号(P5980360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社牧野フライス製作所の特許一覧

<>
  • 特許5980360-フライス工具 図000002
  • 特許5980360-フライス工具 図000003
  • 特許5980360-フライス工具 図000004
  • 特許5980360-フライス工具 図000005
  • 特許5980360-フライス工具 図000006
  • 特許5980360-フライス工具 図000007
  • 特許5980360-フライス工具 図000008
  • 特許5980360-フライス工具 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5980360
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】フライス工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/06 20060101AFI20160818BHJP
   B23C 3/00 20060101ALI20160818BHJP
   B23C 5/24 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   B23C5/06 A
   B23C3/00
   B23C5/24
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-39472(P2015-39472)
(22)【出願日】2015年2月27日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】前田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】太田 修介
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許発明第10344549(DE,B3)
【文献】 国際公開第2014/181842(WO,A1)
【文献】 特開平09−323211(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008027941(DE,A1)
【文献】 英国特許出願公告第01587399(GB,A)
【文献】 スイス国特許発明第00650177(CH,A5)
【文献】 米国特許第3555644(US,A)
【文献】 特開昭57−8011(JP,A)
【文献】 澤 武一,絵ときフライス加工基礎のきそ,日本,日刊工業新聞社,2007年 3月30日,初版,55,65−66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 3/00
B23C 5/06
B23C 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するワーク(116)の外周面に回転するフライス工具(10)の底刃(16c)を接触させて、前記ワークの外周面を加工するフライス工具(10)において、
工作機械の回転主軸に装着するシャンクを有する円筒状の工具本体(12)と、
前記工具本体の先端面及び外周面に開口する複数の凹所(14)にそれぞれ取り付ける切削インサート(16)と、
前記各切削インサートの先端に形成され、前記工具本体の回転軸線(O)に垂直な所定長さ(Wt)を持った直線状の切れ刃(16b)を有する底刃(16c)と、
前記各切削インサートを前記工具本体の回転軸線方向に進退可能にすると共に、前記各切れ刃を半径方向に配向し、かつ、切れ刃の傾きを規制する、前記工具本体の凹所に形成されたV溝(14b)と、
前記各切削インサートに形成され、前記V溝に係合するV形凸部を有した五角形状のシャンク部(16a)と、
前記V溝の直下に配設され前記各切削インサートを前記工具本体の回転軸線方向に位置決めし、複数の前記底刃の高さを一致させる高さ調節ねじ(18)と、
前記工具本体の各凹所に設けられ、前記工具本体の内側へ押し込まれることによって、前記切削インサートのシャンク部を前記V溝へ押圧するくさび駒(20)でなり、前記各切削インサートを前記工具本体に固定する固定機構と、
を具備することを特徴としたフライス工具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを回転させつつ、その外周面を効率良く高品質に切削可能フライス工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワーク主軸に隣接してフライス主軸を有し、フライス主軸の先端に取り付けた工具をワークに対して揺動可能にした複合旋盤で用いる工具として複数の第1の切削インサートと、少なくとも1つの第2の切削インサートとを有し、最外周部が工具の回転軸線に対して円周上に位置するように第1の切削インサートを配置し、第2の切削インサートを第1の切削インサートの円周よりも外側に配置した工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−525942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の複合旋盤及び工具では、通常の旋削加工と同様に、回転するワークの円筒面に静止した第2の切削インサートのシングルポイントの切れ刃を押圧して該円筒面を切削するようになっているので、加工面には周方向に延びる螺旋溝が形成され、加工精度が高くても、多数のカスプが形成されてしまう。
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、回転するワークの外周面を高い加工効率、高品質に切削可能なフライス工具を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
また、本発明の他の特徴によれば、回転するワーク(116)の外周面に回転するフライス工具(10)の底刃(16c)を接触させて、前記ワークの外周面を加工するフライス工具(10)において、工作機械の回転主軸に装着するシャンクを有する円筒状の工具本体(12)と、前記工具本体の先端面及び外周面に開口する複数の凹所(14)にそれぞれ取り付け切削インサート(16)と、前記各切削インサートの先端に形成され、前記工具本体の回転軸線(O)に垂直な所定長さ(Wt)を持った直線状の切れ刃(16b)を有する底刃(16c)と、前記各切削インサートを前記工具本体の回転軸線方向に進退可能にすると共に、前記各切れ刃を半径方向に配向し、かつ、切れ刃の傾きを規制する、前記工具本体の凹所に形成されたV溝(14b)と、前記各切削インサートに形成され、前記V溝に係合するV形凸部を有した五角形状のシャンク部(16a)と、前記V溝の直下に配設され前記各切削インサートを前記工具本体の回転軸線方向に位置決めし、複数の前記底刃の高さを一致させる高さ調節ねじ(18)と、前記工具本体の各凹所に設けられ、前記工具本体の内側へ押し込まれることによって、前記切削インサートのシャンク部を前記V溝へ押圧するくさび駒(20)でなり、前記各切削インサートを前記工具本体に固定する固定機構とを具備するフライス工具が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フライス工具の回転軸線がワークの回転軸線と交差しないように、フライス工具をワークに対してオフセット配置し、回転するワークの外周面に直線状の切れ刃を接触させて、ワークとフライス工具とをワークの母線に平行な工具経路に沿って相対移動させてワークの外周面を加工するようにしたため、あたかも幅広でフラットな切れ刃を有したバイトで高送りの旋削加工をしているのと同等の作用が得られ、従来の旋削加工に比べて高い加工効率を得ることが可能となる。
【0009】
また、フライス工具は、その回転軸線に対して垂直な直線状の切れ刃(フラットな切れ刃)を有しており、該切れ刃がワークの加工面に接する平面内に配置されるので、従来の旋削加工のような加工面にカスプがまたは螺旋状の小さな溝が形成されることがない。
【0010】
更に、本発明では、切れ刃が断続的にワークと係合して、該ワークの外周面を加工するので、常時、ワーク表面に切れ刃が係合している従来の旋削加工に比べ、加工中に発生する熱量が小さく、かつ、間欠的に空気やクーラントによる冷却を受けるため、加工熱に基づく切れ刃の損傷が小さくなる。しかも、断続切削のため切りくずが細かく分断されるので、旋削のような螺旋状の切りくずが絡み合うことがなく、切りくず処理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好ましい実施形態によるフライス工具の略示斜視図である。
図2図1のフライス工具の切削インサートを斜め上から略接線方向に見た部分拡大図である。
図3図1のフライス工具のチップポケットの周辺を斜め上から略半径方向に見た部分拡大図である。
図4図1のフライス工具のチップポケットの周辺を上方から軸方向に見た部分拡大平面図である。
図5】本発明を適用する工作機械の一例を示す側面図である。
図6】本発明の好ましい実施形態による切削加工方法、特にオフセット配置を説明する略図である。
図7】本発明の好ましい実施形態による切削加工方法、特にセンタ配置を説明する略図である。
図8】オフセット量に対する加工幅の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
先ず、図5を参照すると、本発明による切削加工方法を適用する工作機械の一例が図示されている。工作機械100は、横形マシニングセンタを構成しており、工場の床面に固定された基台としてのベッド102、ベッド102の前方部分(図1では左側)の上面で前後方向またはZ軸方向(図1では左右方向)に移動可能に設けられたZ軸スライダ112、Z軸スライダ112の上面で鉛直な軸線を中心としてB軸方向に回転送り可能に設けられワーク116が固定されるテーブル114、ベッド102の後端側(図1では右側)の上面で左右方向またはX軸方向(図1では紙面に垂直な方向)に移動可能に設けられたコラム104、該コラム104の前面で上下方向またはY軸方向に移動可能に設けられ、主軸108を水平な中心軸Osを中心として回転可能に支持する主軸頭106を具備している。更に、工作機械100は、コラム104をX軸方向に駆動するX軸送り装置(図示せず)、主軸頭106をY軸方向に駆動するY軸送り装置(図示せず)、及びZ軸スライダ112をZ軸方向に駆動するZ軸送り装置(図示せず)を具備している。
【0013】
主軸108の先端には、工具ホルダ110を介して、本発明の好ましい実施形態によるフライス工具10が装着される。本実施形態では、工具ホルダ110が、フライス工具10のシャンクを形成している。図1図4を参照すると、フライス工具10は、シャンクとしての工具ホルダ110を挿入するための中心穴12aを有した略円筒状の工具本体としてのカッターボディ12を具備している。カッターボディ12は、中心軸線Oに関して周方向に等角度間隔に形成された複数の、図1の例では4つの凹所たるチップポケット14を有している。チップポケット14の各々には切削インサート16が取り付けられる。
【0014】
より詳細には、切削インサート16は五角柱状の部材より成るシャンク部16aと、切れ刃16bを有した切れ刃部16cから成る。切れ刃部16cは、例えば超硬合金、セラミックス、cBN焼結体等の材料から形成することができ、切れ刃16bが五角柱状のシャンク部16aの長手方向に対して垂直となるようにシャンク部16aの先端に例えばロー付けのような適当な固定方法によって固定される。こうして、フライス工具10は、工具ホルダ110と共に正面フライス工具を形成しており、切削インサート16が中心軸線Oに垂直な直線状の切れ刃16bを有した底刃を形成する。
【0015】
また、カッターボディ12のチップポケット14(本実施の形態では4箇所)は、カッターボディ12の一方の端面、図1図4では上面及びカッターボディ12の外周面の双方に開口している。各チップポケット14の周方向に互いに対面する側面14a、14cの一方14aには、切削インサート16のシャンク部16aを受容するV溝14bが形成されている。V溝14bは、シャンク部16aにおいて切れ刃部16cが固定される側面とは反対側の∨字形の2つの側面を受容する。∨溝14bは、装着される切削インサート16のシャンク部16aをカッターボディ12の中心軸線Oの方向に規制すると共に、切れ刃16bを半径方向に配向するように形成されている。他方の側面14cは、カッターボディ12の中心側が対面する側面14aに接近するように半径方向に対して傾斜している。
【0016】
チップポケット14には、更に、くさび駒20が装着される。より詳細には、くさび駒20は、V溝14bに装着されたシャンク部16aと、該シャンク部16aに対面するチップポケット14の側面14cとの間に装着される。くさび駒20は、カッターボディ12の半径方向に延びるボルト22によってチップポケット14の半径方向内方へ押圧される。ボルト22を締め付けることによって、くさび駒20は半径方向内方へ押し込まれ、そのとき傾斜した側面14cによって、周方向に切削インサート16のシャンク部16aに押圧される。これによって、切削インサート16のシャンク部16aがV溝14b内に押圧される。こうして切削インサート16はチップポケット14内に着脱可能に固定される。
【0017】
チップポケット14には、また、中心軸線O方向に延びる高さ調節ねじ18が取り付けられている。高さ調節ねじ18は、チップポケット14の底面において∨溝14bの直下に形成されたねじ穴に螺合される。高さ調節ねじ18は、その頭部18aにおいて∨溝14bに装着された切削インサート16のシャンク部16aの下端面に当接することによって、切削インサート16をカッターボディ12の中心軸線O方向に支持する。高さ調節ねじ18の頭部18aにはレンチ穴18bが形成されており、工作機械100のオペレーターが、レンチ穴18bに棒状の適当なレンチまたはツール(図示せず)を挿入し、手操作によって高さ調節ねじ18をねじ穴内で回転させることによって、切削インサート16を図3の矢印UDの方向に微動させ、切削インサート16の高さ、つまり切れ刃16bのカッターボディ12に対する軸方向の位置を調節することができる。切れ刃16bは、全ての切削インサート16について同一の高さに調節される。
【0018】
以下、図5図8を参照して、本実施形態の作用を説明する。
先ず、円筒状のワーク116が、図5図7に示すように、その中心がテーブル114のB軸方向の回転送りの回転軸線Owと一致するように、テーブル114に取り付けられる。次いで、加工プログラムに従い、テーブル114及び主軸108が所定の回転速度で回転すると共に、工作機械100のX軸、Y軸、Z軸の送り装置によって、フライス工具10が所定の加工開始位置に移動する。この加工開始位置は、例えば、X軸方向にフライス工具10の回転中心である主軸108の回転軸線Osが、ワークの回転軸線Ow(B軸方向の回転送りの回転軸線)に対して所定の長さ(オフセット量)δ(図6参照)を以ってオフセットされた位置、Y軸方向にワーク116よりも上方の位置、かつ、Z軸方向に切れ刃16bがワーク116の表面に対して所望の切込み量を以って係合する位置とすることができる。
【0019】
加工開始位置から、フライス工具10を図6の矢印Fで示すようにY軸方向に送り、ワーク116の外周面を切削加工する。このとき、フライス工具10の切れ刃16bは、Y軸方向つまりワーク116の軸方向に長さ(加工幅)Wの範囲で係合する。ここで、図6に示す2つの同心円120、122は、回転軸線Osを中心として旋回する切れ刃16bの外縁と内縁が描く円である。加工幅Wは、ワーク116の回転軸線Owが、2つの同心円120、122に対して形成する弦の長さの差分に等しくなり、オフセット量δによって変化する。
【0020】
図8は、オフセット量δに対する加工幅Wの変化を示すグラフである。図8のグラフは、切れ刃16bの長さWtが5mmで、フライス工具10の工具径d(切れ刃16bの外縁が描く円の直径(図6、7では外側の円120の直径))が80mmの場合を示している。加工幅Wは、0≦δ≦(d−Wt)/2の範囲では、ワーク116の回転軸線Ow(B軸の回転軸線)が2つの円120、122に対して形成する弦の長さの差分として、一般的に
W=2((d/2)2−δ21/2−((d−Wt)/2)2−δ21/2
で表すことができる。(d−Wt)/2≦δ≦d/2では、ワーク116の回転軸線Owが外側の円120に対して形成する弦の長さとして
W=2((d/2)2−δ21/2
となる。
【0021】
オフセット量δ=0は、主軸108の回転軸線Osがワークの回転軸線Owと交差するように主軸108が配置されている(図7)ことを示している。δ=0では、切削幅Wは切れ刃16bの長さWt(図7ではWt=5mm)に等しくなる。切削幅Wは、δ=0からδの増加と共に漸増し、δが工具径dの1/2から切れ刃16bの長さWt(図7ではWt=5mm)を減じた値となるとき最大となる。切削幅Wは、その後急激に減少して、オフセット量δが工具径の1/2になるとW=0となり、フライス工具10は切削できなくなる。なお、本明細書では、主軸108の回転軸線Osがワークの回転軸線Owに対してX軸方向(回転軸線Os、Owの双方に対して垂直な方向)にオフセットされた配置をオフセット配置、回転軸線Osがワークの回転軸線Owに交差する配置をセンタ配置と称する。
【0022】
切削幅Wが最大となるとき、つまり、δが工具径dの1/2から切れ刃16bの長さWtを減じた値となるとき、フライス工具10の回転軸線方向から見て(図6、7参照)、回転する切れ刃16bの内縁が形成する円122にワーク116の回転軸線Owが接し、このとき切削効率も最大となる。一方、破線で示すδ=δ1よりもオフセット量δが大きくなると、切削幅Wが、δ=0のときの切削幅Wである切れ刃16bの長さWtよりも小さくなり、フライス工具10をオフセット配置する意味がなくなる。
【0023】
また、フライス工具10の回転軸線Osの方向から見て、回転する切れ刃16bの内縁が形成する円122の内側にワーク116の回転軸線Owが配置される場合には、フライス工具10が1回転する間に、切れ刃16bがワーク116に2回係合する。一方、フライス工具10の回転軸線方向から見て、切れ刃16bの外縁と内縁が回転することによって形成される2つの同心円120、122の間に、ワーク116の回転軸線Owが連続して配置されるようにオフセット量δを決定することによって、フライス工具10が1回転する間に、切れ刃16bがワーク116に1回だけ係合するようになる。
【0024】
Y軸方向の送りの終点、例えば図示する例では、切れ刃16bがワーク116の下端部のフランジ部118に接する位置では、図6に示すように、フライス工具10をワーク116に対してオフセットしたままでは切削できない領域ができる。このオフセット配置したフライス工具10によって切削できない領域は、フライス工具10をセンタ配置して加工することとなる。
【0025】
以下、本実施形態による切削加工方法で円筒面を切削加工するのに要する時間を従来の旋削加工と比較する。
先ず、切削加工において、1ストロークに要する時間Ts、つまりワーク116が1回転するのに要する時間は以下の式にて与えられる。
Ts=πD/V
ここで、
D:ワーク直径(mm)
V:切削速度(m/min)
【0026】
ワークが1回転する間の軸方向の送り量をP1(mm)としたとき、ストローク数Nは以下の式にて与えられる。
N=L/P1
ここで、
L:ワークの軸方向長さ(加工面の軸方向長さ)(mm)
【0027】
従って、ワークの円筒面を旋削加工するのに要する時間Tは以下の式にて与えられる。
T=TsN=(πD/V)(L/P1)=πDL/VP1
【0028】
直径100mm、軸方向長さ150mmのワークを切削加工する場合の一般的な値として、V=1000m/min(主軸回転速度で約3000min-1)、P1=0.2mmとすると、T≒14.1秒となる。
【0029】
一方、本実施形態の切削加工方法では、工具は(V/πD)min-1で回転しながら、1回転でZS進むので、1ストロークに要する時間Tsは以下の式にて与えられる。
Ts=(πD/V)/((nS)/πd)=π2Dd/VnS
ここで、
n:刃数
S:1刃当たりの送り量(mm)
【0030】
ワークが1回転する間のワークの軸方向の送り量をP2とすると、ストローク数Nは以下の式にて与えられる。
N=L/P2
従って、加工時間Tは以下の式にて与えられる。
T=TsN=(π2Dd/VZS)(L/P2)=π2DdL/VZSP2
【0031】
ここで、フライス工具10につき、工具径d=80mm、刃数4枚、オフセット量δ=35mmとすると、ワークが1回転する間のワークの軸方向の送り量は、P2=((80/2)2−((80−5×2)/2)21/2×2≒38mmとなる。すなわち、このときフライス工具10とワーク116との接触幅Wmは約38mmである。
【0032】
また、加工条件としてV=1000m/min(主軸回転速度で約4000min-1)、S=0.5mm(主軸108の回転速度4000min-1)、B軸の回転速度を約25min-1とすると、T≒9.4秒となる。但し、ワーク116が、図6、7に示すようなフランジ部118を有しているような場合には、オフセット配置では加工できない領域が生じるので、フライス工具10をオフセット配置からセンタ配置に移動させつつ、未加工領域を更に切削加工するのに要する時間が必要となる。つまり、ワーク116を更に1周分加工する時間として、T′=π2Dd/VZS≒2.4秒を加えた計11.8秒必要となるが、本実施形態による切削加工方法は、従来の旋削加工よりも短時間でワークの円筒面を加工することが可能となる。これは、あたかも刃幅38mmのバイトで、ワーク1回転当たり38mmの送り量で高送り加工していると見なすことができ、加工効率の高い切削加工が実現できる。
【0033】
また、既述したように、切削インサート16は、フライス工具10の中心軸線O、つまり主軸108の回転軸線Osに対して垂直な直線状の切れ刃16bを有しており、該切れ刃16bがワーク116の加工面に接する平面内に配置されるので、従来の旋削加工のような加工面にカスプがまたは螺旋状の小さな溝が形成されることがない。旋削用のバイトの刃先は、ノーズ半径(通常1mm以下)を以って尖った形状をしており、この刃先がワーク1回転当たり0.2mmの送り量で送られるので、ワーク外周面には0.2mmピッチのカスプまたは螺旋溝が形成される。本発明では、直線状の切れ刃16bのおかげで、このカスプまたは螺旋溝が形成されず、加工面品質が向上する。しかも、オフセット配置からセンタ配置に変更した部分にも段差は生じない。従来のフライス工具の底刃の刃先は、ノーズ半径を以って尖った形状をしている(回転軸線に垂直な直線状の切れ刃を有していない)。また、2枚刃以上の多刃の場合、刃先の高さを揃える機構がなかった。よって、ターンミリング(旋削フライス削り)した場合、加工面にカスプや段差が生じていた。本発明のフライス工具によれば、回転軸線に垂直な直線状の切れ刃を有する底刃、旋削インサートを規制するV溝構造、旋削インサートの高さ調節ねじ、くさび駒の協働作用によって、高品質な加工面を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態では、4つの切れ刃16bが断続的にワーク116と係合してワーク116の外周面を加工するので、常時、ワーク表面に切れ刃が係合している従来の旋削加工に比べ、本実施形態では、個々の切れ刃16bでは、加工中に発生する熱量が小さく、かつ、間欠的に冷却を受けるため、加工熱に基づく切れ刃16bの損傷が小さくなる。また、上述のように、切りくず処理が容易になる。
【0035】
既述の実施形態では、ワーク116を回転させつつ、フライス工具10をY軸方向に送ることによって、ワーク116の外周面を円筒形状に加工するようになっている。この場合、Y軸方向はワーク116の外周面の母線に平行な方向となっている。ここで、母線は、回転体をその中心軸線を含む平面で切断したときの回転体の外周面と平面との間の交線である。
【0036】
本発明は、このような円筒面を切削加工する場合に限定されず、例えば、円錐面やカムの外周面を加工する場合にも適用することが可能である。本発明の切削加工方法及びフライス工具を用いることによって、旋削主軸を有さないマシニングセンタで、従来の旋盤以上の加工効率及び加工面品質で、回転するワークの外周面の切削加工が行える。
【符号の説明】
【0037】
10 フライス工具
12 カッターボディ
14 チップポケット
16 切削インサート
16b 切れ刃
18 高さ調節ねじ
20 くさび駒
22 ボルト
100 工作機械
108 主軸
110 工具ホルダ
114 テーブル
116 ワーク
【要約】
【課題】回転するワークの外周面を回転するフライス工具を用いて高い加工効率、高品質で切削加工する。
【解決手段】回転軸線Oに垂直な直線状の切れ刃16bを有したフライス工具10を回転させ、フライス工具10の回転軸線Oがワーク116の回転軸線Owと交差しないように、フライス工具10をワーク116に対してオフセット配置し、回転するワーク116の外周面にフライス工具10の底刃16cを接触させて、ワーク116とフライス工具10とをワーク116の母線に平行な工具経路に沿って相対移動させてワーク10の外周面を加工する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8