(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の回転機械では、長時間の運転で、静翼が静翼保持環に固着してしまうことがある。このため、上記特許文献1に記載の回転機械を点検又は修理する際に、静翼を傷付けずに、静翼保持環の溝から静翼を取り外すことが困難になることがある。
【0006】
そこで、本発明は、翼を傷付けずに、溝から翼を容易に取り外すことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための発明に係る一態様としての翼の取外装置は、
軸線に対する径方向に向かって凹み且つ軸線に対する周方向に延びる溝に、翼根が嵌り込み周方向に並ぶ複数の翼の取外装置において、複数の前記翼のうちで前記周方向で隣接する第一翼と第二翼との間に配置され、前記第一翼の外面のうちで前記第二翼側の面に対向する対向面が形成されている第一部材と、前記第一翼と前記第二翼との間に配置され、前記第二翼の外面のうちで前記第一翼側の面に対向する対向面が形成されている第二部材と、前記第二部材に対して前記第一部材を相対的に離間する方向に移動させる離間機構と、を備える。
【0008】
当該取外装置では、離間機構により、第二部材に対して第一部材を相対的に離間する方向に移動させることで、第二翼に対して第一翼が相対的に離間する方向に移動する。よって、当該取外装置では、翼を容易に溝から外すことができる。
【0009】
また、当該取外装置では、第一部材又は第二部材を介して、翼を離間方向に押してこの翼を離間方向に移動させるので、取外過程における翼の損傷を抑えることができる。
【0010】
ここで、前記一態様としての前記翼の取外装置において、前記第二部材に対する前記第一部材の相対移動方向を前記周方向に規制するガイド機構を備えてもよい。
【0011】
当該取外装置では、第一部材が第二部材に対して相対的に周方向に移動するので、翼を容易に周方向に移動させることができる。
【0012】
前記一態様としての前記翼の取外装置において、前記第一部材の前記対向面と前記第二部材の前記対向面とのうち、一方の対向面は、前記翼における翼体の腹側面に対向し、前記腹側面の形状に対応して、少なくとも一部が凸曲面を有する腹側対向面を成し、他方の対向面は、前記翼における前記翼体の背側面に対向し、前記背側面の形状に対応して、凹曲面を有する背側対向面を成してもよい。
【0013】
当該取外装置では、翼の翼面に、この翼面の形状に対応した形状の対向面を対向させ、この対向面で翼面を押すので、対向面に対する翼面の相対移動を抑制することができる。すなわち、第一部材に対する第一翼の相対移動、及び第二部材に対する第二翼の相対移動を抑制することができる。このため、第二部材に対する第一部材の相対移動により、第一翼を効率的に且つ容易に移動させることができる。
【0014】
前記腹側対向面及び前記背側対向面を有する前記翼の取外装置において、前記対向面は、前記翼における翼体の前縁と後縁とのうち、一方の縁である翼縁と前記対向面の前記翼縁の側の部分とを含む翼縁部に対向し、前記翼縁部の形状に対応した凹曲面を有してもよい。
【0015】
具体的には、前記腹側対向面は、前記翼における翼体の前縁と前記腹側面の前縁側の部分とを含む前縁部に対向し、前記前縁部の形状に対応した凹曲面を有してもよい。この場合、腹側対向面が、翼体の前縁を含む翼体の前縁部に対向し、この前縁部の形状に対応した凹曲面を有するので、腹側対向面に対して翼体が軸方向上流側、つまり前側に移動するのを抑制することができる。また、前記背側対向面は、前記翼における翼体の後縁と前記背側面の後縁側の部分とを含む後縁に対向し、前記後縁部の形状に対応した凹曲面を有してもよい。この場合、当該取外装置では、背側対向面が、翼体の後縁を含む翼体の後縁部に対向し、この後縁部の形状に対応した凹曲面を有するので、背側対向面に対して翼体が軸方向下流、つまり後側に移動するのを抑制することができる。
【0016】
前記腹側対向面及び前記背側対向面を有する、以上のいずれかの前記翼の取外装置において、前記腹側対向面と仮想円との接点と前記背側対向面と前記仮想円との接点を結ぶ線分に対して角度を持つ前記周方向に、前記第二部材に対する前記第一部材の相対移動方向を規制するガイド機構を備えてもよい。
【0017】
翼体の腹側面を腹側対向面で押す際における腹側面から腹側対向面が受ける反力の作用方向、及び、翼体の背側面を背側対向面で押す際における背側面から背側対向面が受ける反力の作用方向は、周方向に対して傾いた方向である。当該取外装置では、作用方向が周方向に対して傾いた反力を翼体から各部材が受けても、第二部材に対して第一部材を相対的に周方向に移動させることができる。
【0018】
前記ガイド機構を備える前記翼の取外装置において、前記ガイド機構は、前記第一部材と前記第二部材とのうち、少なくとも一方に固定され、前記周方向に延びるガイド棒と、前記第一部材と前記第二部材とのうちの他方に形成され、前記軸線に対する径方向に凹み、前記周方向に延びて前記ガイド棒が挿通可能なガイド溝と、を有してもよい。
【0019】
当該取外装置では、ガイド溝が延びている方向からのみならず、この方向に対して垂直な方向からも、ガイド棒をガイド溝に入れることができる。よって、当該取外装置では、ガイド棒をガイド溝に入れる際に必要なスペースを小さくすることができる。
【0020】
前記ガイド棒及び前記ガイド溝を有する前記翼の取外装置において、前記ガイド機構は、前記第一部材に固定された前記ガイド棒としての第一ガイド棒と、前記第二部材に固定された前記ガイド棒としての第二ガイド棒と、前記第一部材に形成され前記第二ガイド棒が挿通可能な前記ガイド溝としての第二ガイド溝と、前記第二部材に形成され前記第一ガイド棒が挿通可能な前記ガイド溝としての第一ガイド溝と、を有し、前記第一ガイド溝の溝底に対する開口の向きは、前記第二ガイド溝の溝底に対する開口の向きと逆向きであってもよい。
【0021】
前記第一ガイド棒及び前記第二ガイド棒を有する前記翼の取外装置において、前記第一ガイド棒は、前記第一部材のうち、前記対向面を基準にして前記軸線が延びる軸方向の一方側の領域に固定され、前記第二ガイド棒が入る前記第二ガイド溝は、前記第一部材のうち、前記対向面を基準にして前記軸方向の他方側の領域に形成されていてもよい。
【0022】
当該取外装置では、翼を押す対向面の両側にガイド棒及びこのガイド棒が挿通されるガイド溝があるので、第二部材に対する第一部材の相対移動過程で、第二部材に対して第一部材が傾くことを抑制することができる。
【0023】
前記一態様としての前記翼の取外装置において、前記第一部材の前記対向面は、前記第一翼の翼根に対向する面であり、前記第二部材の前記対向面は、前記第二翼の翼根に対向する面であってもよい。
【0024】
前記対向面が前記翼根に対向する面である前記翼の取外装置において、前記第二部材に対する前記第一部材の相対移動方向を前記周方向に規制するガイド機構を備え、前記ガイド機構は、前記第一部材の前記対向面が前記第一翼の翼根に対向し、前記第二部材の前記対向面が前記第二翼の翼根に対向している状態で、前記第一翼の翼根と前記第二翼の翼根との間に位置してもよい。
【0025】
前記対向面が前記翼根に対向する面である、以上のいずれかの前記翼の取外装置において、前記第二部材に対する前記第一部材の相対移動方向を前記周方向に規制するガイド機構を備え、前記ガイド機構は、前記第一部材と前記第二部材とのうち、少なくとも一方に固定され、前記周方向に延びるガイド棒と、前記第一部材と前記第二部材とのうちの他方に形成され、前記周方向に延びて前記ガイド棒が挿通可能なガイド孔と、を有してもよい。
【0026】
前記対向面が前記翼根に対向する面であり、且つ前記ガイド棒と前記ガイド孔とを有する前記翼の取外装置において、前記ガイド機構は、前記第一部材に固定された前記ガイド棒としての第一ガイド棒と、前記第二部材に固定された前記ガイド棒としての第二ガイド棒と、前記第一部材に形成され前記第二ガイド棒が挿通可能な前記ガイド孔としての第二ガイド孔と、前記第二部材に形成され前記第一ガイド棒が挿通可能な前記ガイド孔としての第一ガイド孔と、を有し、前記第一ガイド棒は、前記第一部材のうち、前記対向面を基準にして前記軸線が延びる軸方向の一方側の領域に固定され、前記第二ガイド孔は、前記第一部材のうち、前記対向面を基準にして前記軸方向の他方側の領域に形成されていてもよい。
【0027】
以上のいずれかの前記翼の取外装置において、前記第一部材及び前記第二部材は、前記溝の溝底面に対向する溝底対向面を有し、前記離間機構は、前記第一部材と前記第二部材とのうち、少なくとも一方の部材に形成され、前記一方の部材の前記溝底対向面に近づくに連れて次第に他方の部材に近付くテーパ面と、前記テーパ面と前記他方の部材で前記テーパ面に対向するテーパ対向面との間に配置される楔と、を有してもよい。
【0028】
前記テーパ面を有する前記翼の取外装置において、前記他方の部材の前記テーパ対向面は、前記他方の部材の前記溝底対向面に近づくに連れて次第に前記一方の部材に近づくテーパ面であってもよい。
【0029】
前記テーパ面を有する、以上のいずれかの前記翼の取外装置において、前記テーパ面に沿った方向であって前記溝底対向面に最短距離で近づくテーパ傾斜方向に対して垂直で、且つ前記テーパ面に沿った方向であるテーパ延在方向は、前記軸線が延びる軸方向及び前記周方向に対して交差する方向であってもよい。
【0030】
前記テーパ面を有する、以上のいずれかの前記翼の取外装置において、前記一方の部材には、前記軸線が延びる軸方向に対して交差する方向に広がる第一面と、前記第一面から前記軸方向及び前記周方向にずれた位置で前記軸方向に対して交差する方向に広がる第二面と、が形成され、前記他方の部材には、前記軸方向に対して交差する方向に広がる第一面と、前記他方の部材の前記第一面から前記軸方向及び前記周方向にずれた位置で前記軸方向に対して交差する方向に広がる第二面と、が形成され、前記他方の部材の前記第一面は、前記一方の部材の前記第一面に対して前記軸方向で対向し得る位置に形成され、前記他方の部材の前記第二面は、前記他方の部材の前記第二面に対して前記軸方向で対向し得る位置に形成され、前記一方の部材における前記第一面と前記第二面との間に、前記テーパ面が形成され、前記他方の部材における前記第一面と前記第二面との間に、前記テーパ対向面が形成されていてもよい。
【0031】
また、以上のいずれかの前記翼の取外装置において、前記離間機構は、前記第二部材に対して前記第一部材を相対的に離間する方向に移動させるための力を発するアクチュエータを有してもよい。
【0032】
以上のいずれかの前記翼の取外装置において、前記第一部材及び前記第二部材よりも柔らかい軟質材料で形成され、前記第一翼と前記第一部材の前記対向面との第一の間と、前記第二翼と前記第二部材の前記対向面との第二の間とのうち、少なくとも一方の間に配置される緩衝部材を備えてもよい。
【0033】
前記目的を達成するための発明に係る一態様としての翼セットは、
以上のいずれかの翼の取外装置と、前記溝が形成されている翼保持部材と、前記溝に嵌め込まれている前記翼と、を備える。
【0034】
前記目的を達成するための発明に係る一態様としての治具は、
周方向で隣接する複数の翼の間に配置される、第一部材及び第二部材の一対の部材からなる治具であって、翼の腹側面の凹曲面に対応する凸曲面、又は翼の背側面の凸曲面に対応する凹曲面を少なくとも一部に有する対向面と、
前記第一部材と前記第二部材とを互いに離間する方向に移動させる離間機構とを有し、前記離間機構は、前記対向面と平行でないテーパ面を
含む。
【0035】
ここで、前記治具において、前記対向面と実質的に垂直な面に沿った方向
に延びるガイド棒及び/又はガイド溝を有してもよい。なお、対向面と実質的に垂直な面とは、対向面に対する垂直面のみならず、この垂直面に対して0°〜45°の角度を成す面も含む。
【0036】
前記目的を達成するための発明に係る一態様としての翼の取外方法は、
軸線に対する径方向に向かって凹み且つ軸線に対する周方向に延びる溝に、翼根が嵌り込み周方向に並ぶ複数の翼の取外方法において、前記周方向で隣接する第一翼と第二翼とのうち、前記第一翼の外面の一部に対向する対向面が形成されている第一部材と、前記第二翼の外面の一部に対向する対向面が形成されている第二部材と、前記第二部材に対して前記第一部材を相対的に離間する方向に移動させる離間機構と、を備える取外装置を準備する準備工程と、前記第一翼の外面のうちで前記第二翼側の面に、前記第一部材の前記対向面を対向させ、前記第二翼の外面のうちで前記第一翼側の面に、前記第二部材の前記対向面を対向させる配置工程と、前記離間機構により、前記第二部材に対して前記第一部材を相対的に離間する方向に移動させる離間工程と、を実行する。
【0037】
当該取外方法では、前述の取外装置と同様、翼の損傷を抑えつつも翼を容易に溝から外すことができる。
【0038】
前記翼の取外方法において、前記溝が成形されている翼保持部材には、前記軸線が延びる軸方向で互いに相反する側を向き且つ周方向に延びる一対の面が形成されており、前記第一部材及び前記第二部材には、前記配置行程の実行で前記一対の面に接する規制面が形成され、前記離間工程では、前記翼保持部材の前記一対の面に前記第一部材及び前記第二部材の前記規制面を接触させつつ、前記第二部材に対して前記第一部材を相対移動させてもよい。
【0039】
当該取外方法では、離間工程で、翼保持部材に対する第一部材の相対移動方向を周方向に規制することができる。
【0040】
以上のいずれかの前記翼の取外方法において、前記取外装置は、前記第二部材に対する前記第一部材の相対移動方向を前記配置行程の実行で前記周方向になる方向に規制するガイド機構を備えてもよい。
【0041】
当該取外方法では、離間工程で、前記第二部材に対する前記第一部材の相対移動方向を周方向に規制することができる。
【0042】
また、以上のいずれかの前記翼の取外方法において、前記準備工程では、前記取外装置としての第一取外装置を準備し、前記配置工程は、前記第一翼と前記第二翼との間に前記第一取外装置を配置する第一配置工程を含み、前記離間工程は、前記第一配置工程後に、前記第一取外装置の前記離間機構により、前記第二部材に対して前記第一部材を相対的に離間する方向に移動させる第一離間工程を含み、前記第一取外装置における、前記第一部材の前記対向面と前記第二部材の前記対向面とのうち、一方の対向面が、前記第一配置工程の実行で前記翼における翼体の腹側面に対向し、前記腹側面の形状に対応して、少なくとも一部が凸曲面を有する腹側対向面を成し、他方の対向面が、前記第一配置工程の実行で前記翼における前記翼体の背側面に対向し、前記背側面の形状に対応して、凹曲面を有する背側対向面を成してもよい。
【0043】
当該取外方法では、翼の翼面に、この翼面の形状に対応した形状の対向面を対向させ、この対向面で翼面を押すので、対向面に対する翼面の相対移動を抑制することができる。すなわち、第一部材に対する第一翼の相対移動、及び第二部材に対する第二翼の相対移動を抑制することができる。このため、第二部材に対する第一部材の相対移動により、第一翼を効率的に且つ容易に移動させることができる。
【0044】
前記準備工程で前記第一取外装置を準備する前記翼の取外方法において、前記腹側対向面は、前記翼における翼体の前縁と前記腹側面の前縁側の部分とを含む前縁部に対向し、前記前縁部の形状に対応した凹曲面を有してもよい。
【0045】
前記準備工程で前記第一取外装置を準備する、以上のいずれかの前記翼の取外方法において、前記第一取外装置は、前記腹側対向面と仮想円との接点と前記背側対向面と前記仮想円との接点を結ぶ線分に対して角度を持ち、前記第一配置行程の実行で前記周方向になる方向に、前記第二部材に対する前記第一部材の相対移動方向を規制する第一ガイド機構を備えてもよい。
【0046】
翼体の腹側面から腹側対向面が受ける反力の作用方向、及び翼体の背側面から背側対向面が受ける反力の作用方向は、周方向に対して傾いた方向である。当該取外方法では、作用方向が周方向に対して傾いた反力を翼体から各部材が受けても、第二部材に対して第一部材を相対的に周方向に移動させることができる。
【0047】
前記準備工程で準備する前記第一取外装置が第一ガイド機構を有する、前記翼の取外方法において、前記第一ガイド機構は、前記第一部材と前記第二部材とのうち、少なくとも一方に固定され、前記周方向に延びるガイド棒と、前記第一部材と前記第二部材とのうちの他方に形成され、前記軸線に対する径方向に凹み、前記周方向に延びて前記ガイド棒が挿通可能なガイド溝と、を有し、前記第一配置工程では、前記第一部材と前記第二部材とのうち、一方の部材を前記第一翼と前記第二翼との間に配置した後、他方の部材を径方向に移動させて、前記他方の部材を前記第一翼と前記第二翼との間に配置すると共に、前記一方の部材の前記ガイド棒を前記他方の部材の前記ガイド溝に入れてもよい。
【0048】
ガイド棒がガイド溝に入って第一部材と第二部材とが組み付けられた組み付け状態で、第一部材及び第二部材を第一翼と第二翼との間に配置できない場合がある。当該取外方法では、ガイド溝が延びている方向からのみならず、この方向に対して垂直な径方向からも、ガイド棒をガイド溝に入れることができる。よって、当該取外方法では、第一配置行程で、第一部材と第二部材とを個別に配置しても、第一部材と第二部材とを前述の組み付け状態にすることができる。
【0049】
前記準備工程で前記第一取外装置を準備する、以上のいずれかの前記翼の取外方法において、前記第一配置工程では、前記翼、前記第一部材及び前記第二部材よりも柔らかい緩衝部材を前記第一翼の前記翼体と前記第一部材の前記対向面との間に配置すると共に、前記緩衝部材を前記第二翼の前記翼体と前記第二部材の前記対向面との間に配置してもよい。
【0050】
当該取外方法では、第一離間工程の実行中における翼面の損傷をより抑えることができる。
【0051】
前記準備工程で前記第一取外装置を準備する、以上のいずれかの前記翼の取外方法において、前記翼の翼根は、前記翼における翼体の背側面に対して腹側面が形成されている腹側の腹側端面と、前記腹側端面とは反対側を向く背側端面とを有し、前記準備工程では、前記取外装置としての前記第一取外装置の他に、前記取外装置としての第二取外装置を準備し、前記配置工程は、前記第一離間工程後に、前記第一翼と前記第二翼との間に前記第二取外装置における前記第一部材と前記第二部材とを配置する第二配置工程を含み、前記離間工程は、前記第二配置工程後に、前記第二取外装置の前記離間機構により、前記第二取外装置の前記第二部材に対して前記第二取外装置の前記第一部材を相対的に離間する方向に移動させる第二離間工程を含み、前記第二取外装置おける、前記第一部材の前記対向面と前記第二部材の前記対向面とのうち、一方の対向面が、前記第一翼における前記翼根の前記腹側端面に、前記第二配置工程の実行で対向する腹側対向面を成し、他方の対向面が、前記第二翼における前記翼根の前記背側端面に、前記第二配置工程の実行で対向する背側対向面を成してもよい。
【0052】
当該取外方法では、仮に、第一翼が溝に強く固着していたとしても、第二離間工程の実行で、第一翼を溝に対して周方向に容易に移動できるようになる。
【0053】
前記準備工程で前記第二取外装置を準備する前記翼の取外方法において、前記第二取外装置は、前記第二部材に対する前記第一部材の相対移動方向を前記周方向に規制する第二ガイド機構を備え、前記第二ガイド機構は、前記第二配置工程の実行で、前記溝内であって、前記第一翼の前記翼根と前記第二翼の翼根との間に配置されてもよい。
【0054】
前記準備工程で準備する前記第一取外装置が前記第二ガイド機構を備える前記翼の取外方法において、前記第二ガイド機構は、前記第一部材と前記第二部材とのうち、少なくとも一方に固定され、前記周方向に延びるガイド棒と、前記第一部材と前記第二部材とのうちの他方に形成され、前記周方向に延びて前記ガイド棒が挿通可能なガイド孔と、を有してもよい。
【0055】
以上のいずれかの前記翼の取外方法において、前記第一部材及び前記第二部材は、前記溝の溝底面に対向する溝底対向面を有し、前記離間機構は、前記第一部材と前記第二部材とのうち、少なくとも一方の部材に形成され、前記一方の部材の前記溝底対向面に近づくに連れて次第に他方の部材に近付くテーパ面と、前記テーパ面と前記他方の部材で前記テーパ面に対向するテーパ対向面との間に配置される楔と、を有し、前記離間工程では、前記テーパ面と前記テーパ対向面との間に、前記楔を打ち込んでもよい。
【発明の効果】
【0056】
本発明の一態様によれば、翼を傷付けずに、周方向に延びる溝から翼を容易に取り外すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の一実施形態及びその変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0059】
「回転機械の実施形態」
回転機械の実施形態について、
図1〜
図3を参照して説明する。
【0060】
本実施形態の回転機械は、ガスタービンの圧縮機である。
図1に示すように、ガスタービン1は、空気Aを圧縮する圧縮機30と、圧縮機30で圧縮された空気A中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成する燃焼器20と、燃焼ガスGにより駆動するタービン10と、を備えている。
【0061】
圧縮機30は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ31と、圧縮機ロータ31を覆う圧縮機車室35と、複数の静翼列37と、を有する。タービン10は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ11と、タービンロータ11を覆うタービン車室15と、複数の静翼列17と、を有する。
【0062】
圧縮機ロータ31とタービンロータ11とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ2を成す。このガスタービンロータ2には、例えば、発電機GENのロータが接続される。また、圧縮機車室35とタービン車室15とは、互いに接続されてガスタービン車室5を成す。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸方向Daでタービン10を基準にして圧縮機30側を上流側Dau、その反対側を下流側Dadとする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0063】
タービンロータ11は、
図2に示すように、軸線Arを中心として軸方向Daに延びるロータ軸12と、このロータ軸12に取り付けられている複数の動翼列13と、を有する。複数の動翼列13は、軸方向Daに並んでいる。各動翼列13は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列13の各上流側Dauには、静翼列17が配置されている。各静翼列17は、タービン車室15の内側に設けられている。各静翼列17は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0064】
圧縮機ロータ31は、軸線Arを中心として軸方向Daに延びるロータ軸32と、このロータ軸32に取り付けられている複数の動翼列33と、を有する。複数の動翼列33は、軸方向Daに並んでいる。各動翼列33は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列33の各下流側Dadには、静翼列37が配置されている。各静翼列37は、圧縮機車室35の内側に設けられている。各静翼列37は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。ロータ軸32の外周側と圧縮機車室35の内周側との間の環状の空間は、空気が流れつつ圧縮される空気圧縮流路39を形成する。
【0065】
圧縮機車室35は、各静翼列37が取り付けられる静翼保持環36を有する。静翼保持環36は、複数の分割保持環60を有する。複数の分割保持環60は、周方向Dcに並んで、軸線Arを中心として環状の一の静翼保持環36を構成する。この静翼保持環36は、環状の空気圧縮流路39の径方向外側の縁の一部を画定する。
【0066】
静翼列37を構成する複数の静翼40は、
図3に示すように、いずれも、径方向Drに延びる翼体41と、翼体41の径方向外側Droに設けられている翼根50と、を有する。
【0067】
翼体41は、翼形を成す。この翼体41の上流側Dauの端が前縁42を成し、下流側Dadの端が後縁43を成す。この翼体41の表面で、周方向Dcを向く面のうち、凸状の面が背側面(負圧面)45を成し、凹状の面が腹側面(正圧面)44を成す。なお、以下の説明の都合上、周方向Dcで翼体41の腹側(=正圧面側)を周方向腹側Dcp、翼体41の背側(=負圧面側)を周方向背側Dcnとする。また、軸方向Daの上流側Dauを前側、軸方向Daの下流側Dadを後側ということもある。
【0068】
翼根50は、ガスパス面51と、周面52と、底面57と、前段差面58、後段差面59と、を有する。ガスパス面51は、径方向内側Driを向き、空気圧縮流路39内を流れる空気に接する。ガスパス面51は、径方向Drから見ると長方形を成す。翼体41は、このガスパス面51上に形成されている。周面52は、第一前端面53a、第二前端面53b、第一後端面54a、第二後端面54b、腹側端面55、背側端面56、を有する。
【0069】
第一前端面53aは、ガスパス面51の前側Dauの縁から径方向外側Droに広がっている。この第一前端面53aは、前側Dauを向いている。第一後端面54aは、ガスパス面51の後側Dadの縁から径方向外側Droに広がっている。この第一後端面54aは、後側Dadを向いている。第一後端面54aは、第一前端面53aと実質的に平行である。前段差面58は、第一前端面53aの径方向外側Droの縁から前側Dauに広がっている。後段差面59は、第一後端面54aの径方向外側Droの縁から後側Dadに広がっている。前段差面58及び後段差面59は、いずれも、径方向内側Driを向き、ガスパス面51と実質的に平行である。第二前端面53bは、前段差面58の前側Dauの縁から径方向外側Droに広がっている。この第二前端面53bは、前側Dauを向いている。第二後端面54bは、後段差面59の後側Dadの縁から径方向外側Droに広がる。この第二後端面54bは、後側Dadを向いている。第二後端面54bは、第二前端面53bと実質的に平行である。第二前端面53bと第二後端面54bとの間の軸方向Daの距離は、第一前端面53aと第一後端面54aとの間の軸方向Daの距離より大きい。
【0070】
腹側端面55は、ガスパス面51の周方向腹側Dcpの縁から径方向外側Droに広がっている。この腹側端面55は、周方向腹側Dcpを向いている。この腹側端面55は、第一前端面53a、前段差面58、第二前端面53b、第一後端面54a、後段差面59、第二後端面54bの周方向腹側Dcpの各縁とつながっている。背側端面56は、ガスパス面51の周方向背側Dcnの縁から径方向外側Droに広がっている。この背側端面56は、周方向背側Dcnを向いている。この腹側端面55は、第一前端面53a、前段差面58、第二前端面53b、第一後端面54a、後段差面59、第二後端面54bの周方向背側Dcnの各縁とつながっている。背側端面56は、腹側端面55と実質的に平行である。底面57は、径方向外側Droを向き、ガスパス面51と実質的に平行である。この底面57は、第二前端面53b、第二後端面54b、腹側端面55、背側端面56の径方向外側Droの各縁とつながっている。
【0071】
分割保持環60には、径方向外側Droに凹み且つ周方向Dcに延びる溝70が形成されている。この分割保持環60は、外面として、前内周面61と、後内周面62と、前側面63と、後側面64と、外周面65と、一対の分割面66と、を有する。
【0072】
前内周面61及び後内周面62は、いずれも、径方向内側Driを向き周方向Dcに広がっている。後内周面62は、前内周面61に対して後側Dadに離間している。前内周面61及び後内周面62は、いずれも、空気圧縮流路39内を流れる空気に接する。前内周面61の後側Dadの縁は、分割保持環60の溝70における開口の前開口縁を成す。後内周面62の前側Dauの縁は、分割保持環60の溝70における開口の後開口縁を成す。前側面63は、前内周面61の前側Dauの縁から径方向外側Droに広がっている。この前側面63は、前側Dauを向いている。後側面64は、後内周面62の後側Dadの縁から径方向外側Droに広がっている。この後側面64は、後側Dadを向いている。後側面64は、前側面63と実質的に平行である。一対の分割面66のうち、一方の分割面66は、周方向Dcの一方側を向き、前内周面61及び後内周面62における周方向Dcの一方側の縁から径方向外側Droに広がっている。また、他方の分割面66は、周方向Dcの他方側を向き、前内周面61及び後内周面62における周方向Dcの他方側の縁から径方向外側Droに広がっている。各分割面66の前側Dauの縁は、いずれも、前側面63につながっている。また、各分割面66の後側Dadに縁は、いずれも、後側面64につながっている。外周面65は、径方向外側Droを向き周方向Dcに広がっている。この外周面65は、前側面63、後側面64、外周面65、一対の分割面66の径方向外側Droの各縁とつながっている。
【0073】
分割保持環60の溝70は、前開口面73、後開口面74、溝前段差面78、溝後段差面79、溝前側面75、溝後側面76、溝底面77により画定される。前開口面73、後開口面74、溝前段差面78、溝後段差面79、溝前側面75、溝後側面76、溝底面77は、いずれも、周方向Dcに延びる面である。前開口面73は、前内周面61の後側Dadの縁、つまり前開口縁から径方向外側Droに広がっている。この前開口面73は、後側Dadを向いている。後開口面74は、後内周面62の前側Dauの縁、つまり後開口縁から径方向外側Droに広がっている。この後開口面74は、前側Dauを向いている。後開口面74は、軸方向Daで間隔をあけて前開口面73と対向している。この後開口面74は、前開口面73と実質的に平行である。
【0074】
溝前段差面78は、前開口面73の径方向外側Droの縁から前側Dauに広がっている。溝後段差面79は、後開口面74の径方向外側Droの縁から後側Dadに広がっている。溝前段差面78及び溝後段差面79は、いずれも、径方向外側Droを向いている。溝前側面75は、溝前段差面78の前側Dauの縁から径方向外側Droに広がっている。この溝前側面75は、後側Dadを向いている。溝後側面76は、溝後段差面79の後側Dadの縁から径方向外側Droに広がっている。この溝後側面76は、前側Dauを向いている。溝後側面76は、軸方向Daで間隔をあけて溝前側面75と対向している。この溝後側面76は、溝前側面75と実質的に平行である。溝底面77は、径方向内側Driを向き周方向Dcに広がっている。この溝底面77は、溝前側面75、溝後側面76の径方向外側Droの各縁とつながっている。
【0075】
分割面66は、前開口面73、後開口面74、溝前段差面78、溝後段差面79、溝前側面75、溝後側面76、溝底面77の周方向Dcの各縁とつながっている。よって、分割面66には、開口の縁が形成されている。この開口は、翼根50を溝70に対して出し入れするための翼根出入口69を成す。
【0076】
静翼40の翼根50は、以上で説明した分割保持環60の溝70内に入る。この翼根50が溝70内に入っている装着状態では、この翼根50のガスパス面51と、分割保持環60の前内周面61及び後内周面62とは、実質的に面一である。この装着状態では、翼根50の第一前端面53aが分割保持環60の前開口面73と対向し、この前開口面73と実質的に接している。さらに、翼根50の第一後端面54aが分割保持環60の後開口面74と対向し、この後開口面74と実質的に接している。
【0077】
さらに、この装着状態では、翼根50の前段差面58が分割保持環60の溝前段差面78と対向し、この溝前段差面78と実質的に接している。さらに、翼根50の後段差面59が分割保持環60の溝後段差面79と対向し、この溝後段差面79と実質的に接している。この装着状態では、翼根50の第二前端面53bが分割保持環60の溝前側面75と対向し、この溝前側面75と実質的に接している。さらに、翼根50の第二後端面54bが分割保持環60の溝後側面76と対向し、この溝後側面76と実質的に接している。この装着状態では、翼根50の底面57が分割保持環60の溝底面77と対向し、この溝底面77と実質的に接している。
【0078】
また、装着状態では、周方向Dcで隣接する二つの静翼40のうち、第一静翼40aの腹側端面55が第二静翼40bの背側端面56と対向し、この第二静翼40bの背側端面56と実質的に接している。
【0079】
以上のように、装着状態では、翼根50の各面と、分割保持環60の溝70を画定する各面とが実質的に接している。このため、回転機械の長期間運転していると、翼根50が分割保持環60の溝70内に固着してしまうことがある。
【0080】
なお、以上で説明した静翼40の翼根50は、ダブテイルと呼ばれることもある。このため、分割保持環60の溝70は、ダブテイル溝と呼ばれることもある。分割保持環60の溝70は、蟻溝として機能すれば、以上の形状に限らない。また、静翼40の翼根50は、蟻溝のほぞとして機能すれば、以上の形状に限らない。
【0081】
「第一取外装置の実施形態」
第一取外装置の実施形態について、
図4〜
図7を参照して説明する。
【0082】
図4に示すように、本実施形態の第一取外装置100は、第一静翼40aと第二静翼40bとの間に配置される第一部材110a及び第二部材110bと、第二部材110bに対して第一部材110aを相対的に離間する方向に移動させる離間機構150と、第二部材110bに対する第一部材110aの相対移動方向を規制するガイド機構160と、を備える。
【0083】
第一部材110a及び第二部材110bは、
図4及び
図7に示すように、いずれも、互いに相反する側を向く径方向外側面111a,111b及び径方向内側面118a,118bと、径方向外側面111a,111bと径方向内側面118a,118bとをつなぐ部材側面121a,121b及び翼側面131a,131bと、を有する。なお、第一部材110aの構成要素については、符号の添え字として「a」を付し、第二部材110bの構成要素については、符号の添え字として「b」を付す。
【0084】
翼側面131a,131bは、対向面132a,132bと、前翼側面135a,135bと、後翼側面136a,136bと、を有する。対向面132a,132bは、翼体41の翼面形状に対応し、実質的にこの翼面形状の反転形状を成している。対向面132a,132bは、翼体41の前縁42の側に対向する前縁側対向部133a,133bと、翼体41の後縁43の側に対向する後縁側対向部134a,134bと、を有する。前翼側面135a,135bは、対向面132a,132bの前縁側対向部133a,133bにつながっている。後翼側面136a,136bは、対向面132a,132bの後縁側対向部134a,134bにつながっている。よって、対向面132a,132bは、前翼側面135a,135bと後翼側面136a,136bとの間に位置する。前翼側面135a,135bは、後翼側面136a,136bと実質的に平行である。第一部材110aにおいて、前翼側面135aは、後翼側面136aよりも部材側面121aの側に位置している。また、第二部材110bにおいて、後翼側面136bは、前翼側面135bよりも部材側面121bの側に位置している。
【0085】
部材側面121a,121bは、前部材側面122a,122bと、テーパ面125a,125bと、後部材側面123a,123bと、第一ガイド面126a,126bと、第二ガイド面127a,127bと、を有する。前部材側面122a,122bと前翼側面135a,135bとは、背合わせの位置関係である。この前部材側面122a,122bは、前翼側面135a,135bと実質的に平行である。後部材側面123a,123bと後翼側面136a,136bとは、背合わせの位置関係である。この後部材側面123a,123bは、後翼側面136a,136b及び前部材側面122a,122bと実質的に平行である。後部材側面123a,123bは、前部材側面122a,122bよりも翼側面131a,131bの側に位置している。
【0086】
第一部材110aにおいて、第一ガイド面126aは、前部材側面122aの後側Dadの縁から翼側面131aの側に広がる。また、第二部材110bにおいて、第一ガイド面126bは、前部材側面122bの後側Dadの縁から翼側面131bとは反対側に広がる。これら第一ガイド面126a,126bは、軸方向Daに対して交差する方向に広がり、前部材側面122a,122bに対して垂直である。第一部材110aにおいて、第二ガイド面127aは、後部材側面123aの前側Dauの縁から翼側面131aとは反対側に広がる。第二部材110bにおいて、第二ガイド面127bは、後部材側面123bの前側Dauの縁から翼側面131bに広がる。これら第二ガイド面127a,127bは、軸方向Daに対して交差する方向に広がり、後部材側面123a,123bに対して垂直で且つ第一ガイド面126a,126bに対して平行である。第二ガイド面127a,127bは、第一ガイド面126a,126bより後側Dadに位置している。すなわち、第二ガイド面(第二面)127a,127bは、第一ガイド面(第一面)126a,126bに対して、軸方向Da及び周方向Dcにずれた位置に形成されている。
【0087】
テーパ面125a,125bは、第一ガイド面(第一面)126a,126bと第二ガイド面(第二面)127a,127bとの間に位置している。このテーパ面125a,125bは、径方向内側面118a,118bから径方向外側面(溝底対向面)111a,111bの側に近づくに連れて次第に翼側面131a,131bから遠ざかるよう傾斜している。このテーパ面125a,125bの前側Dauの縁は、第一ガイド面126a,126bにつながっている。このテーパ面125a,125bの後側Dadの縁は、第二ガイド面127a,127bにつながっている。
【0088】
径方向内側面118a,118bは、前部材側面122a,122b及び後部材側面123a,123bに対して垂直な平面である。
【0089】
径方向外側面111a,111bは、前径方向外側面112a,112bと、翼根対向面114a,114bと、後径方向外側面113a,113bと、前規制面115a,115bと、後規制面116a,116bと、を有する。前径方向外側面112a,112b、翼根対向面114a,114b、後径方向外側面113a,113bは、いずれも、前部材側面122a,122b及び後部材側面123a,123bに対して実質的に垂直な平面である。前径方向外側面112a,112bは、前部材側面122a,122bの径方向外側面111a,111bの側の縁につながっている。後径方向外側面113a,113bは、後部材側面123a,123bの径方向外側面111a,111bの側の縁につながっている。翼根対向面114a,114bは、前径方向外側面112a,112bと後径方向外側面113a,113bとの間に位置している。この翼根対向面114a,114bは、前径方向外側面112a,112b及び後径方向外側面113a,113bよりも、径方向内側面118a,118bの側に位置している。
【0090】
前規制面115a,115bは、前径方向外側面112a,112b及び翼根対向面114a,114bにつながっている。前規制面115a,115bは、前径方向外側面112a,112bに対して実質的に垂直である。後規制面116a,116bは、後径方向外側面113a,113b及び翼根対向面114a,114bにつながっている。後規制面116a,116bは、後径方向外側面113a,113bに対して実質的に垂直である。後規制面116a,116bは、前規制面115a,115bと向か合い、且つこの前規制面115a,115bと平行である。前規制面115a,115bと後規制面116a,116bとの間の間隔寸法は、分割保持環60の前側面63と後側面64との間の間隔寸法よりも若干長いものの、分割保持環60の前側面63と後側面64との間の間隔寸法と実質的に同じである。前述の第一ガイド面126a,126b及び第二ガイド面127a,127bは、いずれも、前規制面115a,115b及び後規制面116a,116bと平行である。
【0091】
第一部材110aの対向面132aは、翼体41の腹側面44に対向する腹側対向面132aを成す。この腹側対向面132aにおける前縁側対向部133aは、翼体41の前縁42と腹側面44の前縁42側の部分とを含む前縁部42aに対向する。翼体41の前縁部42aは、凸曲面を成している。このため、前縁側対向部133aは、この凸曲面の反転形状である凹曲面を成している。この腹側対向面132aにおける後縁側対向部134aは、翼体41の腹側面44における前縁部42aよりも後側Dadの部分である後縁部43aに対向する。翼体41の後縁部43aは、凹曲面を成している。このため、後縁側対向部134aは、この凹曲面の反転形状である凸曲面を成している。
【0092】
第二部材110bの対向面132bは、翼体41の背側面45に対向する背側対向面132bを成す。翼体41の背側面45は、凸曲面を成している。このため、この背側対向面132bにおける前縁側対向部133b及び後縁側対向部134bは、この凸曲面の反転形状である凹曲面を成している。
【0093】
ガイド機構160は、第一部材110aに固定された第一ガイド棒161aと、第二部材110bに固定された第二ガイド棒161bと、第一部材110aに形成され第二ガイド棒161bが挿通可能な第二ガイド溝162aと、第二部材110bに形成され第一ガイド棒161aが挿通可能な第一ガイド溝162bと、を有する。第一ガイド棒161aは、第一部材110aの後部材側面123aに設けられている。第二ガイド棒161bは、第二部材110bの前部材側面122aに設けられている。第一ガイド溝162bは、第二部材110bの後径方向外側面113bから径方向内側面118bの側に凹んでいる。第二ガイド溝162aは、第一部材110aの径方向内側面118aから前径方向外側面112aの側に凹んでいる。第一部材110aに設けられている第一ガイド棒161a、第一部材110aに形成されている第二ガイド溝162aは、いずれも、第一部材110aの前規制面115a及び後規制面116a、さらに第一ガイド面126a及び第二ガイド面127aと平行な方向に延びている。第二部材110bに設けられている第二ガイド棒161b、第二部材110bに形成されている第一ガイド溝162bは、いずれも、第二部材110bの前規制面115b及び後規制面116b、さらに第一ガイド面126b及び第二ガイド面127bと平行な方向に延びている。
【0094】
第一部材110aの腹側対向面132a及びテーパ面125aは、第一部材110aの第一ガイド棒161aと第二ガイド溝162aとの間に形成されている。また、第二部材110bの背側対向面132b及びテーパ面125bは、第二部材110bの第二ガイド棒161bと第一ガイド溝162bとの間に形成されている。
【0095】
ここで、第一部材110aの第一ガイド棒161aを第二部材110bの第一ガイド溝162bに挿入し、第二部材110bの第二ガイド棒161bを第一部材110aの第二ガイド溝162aに挿入した組付け状態について考察する。
【0096】
この組付け状態では、第一ガイド棒161a、第二ガイド棒161b、第一ガイド溝162b、第二ガイド溝162a、第一部材110aの前規制面115a及び後規制面116a、第一部材110aの第一ガイド面126a及び第二ガイド面127a、第二部材110bの前規制面115b及び後規制面116b、第二部材110bの第一ガイド面126b及び第二ガイド面127bは、互いに平行である。
【0097】
この組付け状態では、第一部材110aのテーパ面125aと第二部材110bのテーパ面125bとが、対向している。また、第一部材110aの第一ガイド面126aと第二部材110bの第一ガイド面126bとが対向し、且つ互いに面接触している。さらに、第一部材110aの第二ガイド面127aと第二部材110bの第二ガイド面127bとが対向し、且つ互いに面接触している。前述したように、第一部材110aの第一ガイド面126a及び第二ガイド面127aは、第一ガイド棒161aと平行である。また、第二部材110bの第一ガイド面126b及び第二ガイド面127bは、第二ガイド棒161bと平行である。このため、第一部材110aの第一ガイド面126a及び第二ガイド面127a、第二部材110bの第一ガイド面126b及び第二ガイド面127bは、いずれも、第二部材110bに対する第一部材110aの相対移動方向を規制するガイド機構160の一部として機能する。
【0098】
この組付け状態で、
図5に示すように、第一部材110aの腹側対向面132aと第二部材110bの背側対向面132bとに接する仮想円Cを想定する。本実施形態では、この仮想円Cと腹側対向面132aとの接点Caとこの仮想円Cと背側対向面132bの接点Cbとを結ぶ線分Lに対して、第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161b等は傾いている。言い換えると、この線分Lに対して、第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161b等は、角度を持った方向に延びている。
【0099】
離間機構150は、第一部材110aのテーパ面125aと、第二部材110bのテーパ面125bと、楔151と、を有する。楔151は、組付け状態での第一部材110aのテーパ面125aと第二部材110bのテーパ面125bとの間に配置される。楔151は、第一楔面152aと第二楔面152bとを有する。第一楔面152aに対して第二楔面152bがなす角度は、組付け状態での第一部材110aのテーパ面125aに対して第二部材110bのテーパ面125bがなす角度と実質的に等しい。
【0100】
第一取外装置100は、
図5及び
図7に示すように、さらに、第一部材110aの腹側対向面132aと静翼40の腹側面44との間に配置される緩衝板(緩衝部材)170と、第二部材110bの背側対向面132bと静翼40の背側面45との間に配置される緩衝板(緩衝部材)170と、を備える。緩衝板170は、静翼40、第一部材110a及び第二部材110bよりも柔らかい軟質材で形成されている。静翼40は、例えば、ステンレスで形成されている。また、第一部材110a及び第二部材110bは、例えば、鋼で形成されている。一方、緩衝板170は、ステンレスや鋼よりも柔らかい銅で形成されている。
【0101】
なお、本実施形態において、第一部材110aと、これに固定された第一ガイド棒161aと、第一部材110aに形成されている第二ガイド溝162aとで、治具が構成される。また、本実施形態において、第二部材110bと、これに固定された第二ガイド棒161bと、第二部材110bに形成されている第一ガイド溝162bとで、治具が構成される。
【0102】
「第二取外装置の実施形態」
第二取外装置の実施形態について、
図8及び
図9を参照して説明する。
【0103】
図8及び
図9に示すように、本実施形態の第二取外装置200は、第一静翼40aと第二静翼40bとの間に配置される第一部材210a及び第二部材210bと、第二部材210bに対して第一部材210aを相対的に離間する方向に移動させる離間機構250と、第二部材210bに対する第一部材210aの相対移動方向を規制するガイド機構260と、を備える。
【0104】
第一部材210a及び第二部材210bは、同形状及び同サイズの直方体形状を成している。第一部材210a及び第二部材210bは、互いに相反する側を向く径方向外側面211a,211b及び径方向内側面218a,218bと、互いに相反する側を向く部材側面221a,221b及び翼側面231a,231bと、互いに相反する側を向く前面215a,215b及び後面216a,216bと、を有する。
【0105】
後面216a,216bは、前面215a,215bに対して平行である。前面215a,215bと後面216a,216bとの間の間隔寸法は、分割保持環60の前開口面73と後開口面74との間の間隔寸法より若干短いものの、分割保持環60の前開口面73と後開口面74との間の間隔寸法と実質的に同じである。径方向内側面218a,218bと径方向外側面211a,211bとの間の間隔寸法は、分割保持環60の溝70の溝深さ寸法よりも大きい。なお、溝深さ寸法とは、分割保持環60の前内周面61から溝底面77までの寸法である。
【0106】
第二取外装置200の第一部材210a及び第二部材210bの翼側面231a,231bは、第一取外装置100の第一部材110a及び第二部材110bの翼側面131a,131bとは異なり、一の平面で形成されている。この翼側面231a,231bは、径方向内側面218a,218bの縁から径方向外側面211a,211bの縁にかけて連なって形成されている。第一部材210aの翼側面231aのうち、径方向外側面211aの側の面は、第一静翼40aにおける翼根50の腹側端面55に対向する対向面232aを形成する。また、第二部材210bの翼側面231bのうち、径方向外側面211bの側の面は、第二静翼40bにおける翼根50の背側端面56に対向する対向面232bを形成する。
【0107】
部材側面221a,221bは、主部材側面222a,222bと、テーパ面225a,225bと、を有する。主部材側面222a,222bは、一の平面で形成されている。この主部材側面222a,222bは、径方向内側面218a,218bの縁から径方向外側面211a,211bの縁にかけて連なって形成されている。テーパ面225a,225bは、主部材側面222a,222b中で前面215a,215bと後面216a,216bとの間の実質的に中間の位置に形成されている。このテーパ面225a,225bは、径方向内側面218a,218bから径方向外側面211a,211bに向かうに連れて、次第に翼側面231a,231bから遠ざかるよう傾斜している。
【0108】
ガイド機構260は、第一部材210aに固定された第一ガイド棒261aと、第二部材210bに固定された第二ガイド棒261bと、第一部材210aに形成され第二ガイド棒261bが挿通可能な第二ガイド孔262aと、第二部材210bに形成され第一ガイド棒261aが挿通可能な第一ガイド孔262bと、を有する。第一ガイド棒261aは、第一部材210aの主部材側面222a中でテーパ面225aよりも後面216a側の位置に設けられている。第二ガイド棒261bは、第二部材210bの主部材側面222b中でテーパ面225bよりも前面215b側の位置に設けられている。第一ガイド孔262bは、第二部材210bの主部材側面222b中でテーパ面225bよりも後面216b側に位置から翼側面231bの側に凹んでいる。第二ガイド孔262aは、第一部材210aの主部材側面222a中でテーパ面225aよりも前面215a側の位置から翼側面231aの側に凹んでいる。第一部材210aに設けられている第一ガイド棒261a、第一部材210aに形成されている第二ガイド孔262aは、いずれも、第一部材210aの前面215a及び後面216aと平行な方向に延びている。第二部材210bに設けられている第二ガイド棒261b、第二部材210bに形成されている第一ガイド孔262bは、いずれも、第二部材210bの前面215b及び後面216bと平行な方向に延びている。
【0109】
第一部材210aのテーパ面225aは、第一部材210aの第一ガイド棒261aと第二ガイド孔262aとの間に形成されている。また、第二部材210bのテーパ面225bは、第二部材210bの第二ガイド棒261bと第一ガイド孔262bとの間に形成されている。
【0110】
ここで、第一部材210aの第一ガイド棒261aを第二部材210bの第一ガイド孔262bに挿入し、第二部材210bの第二ガイド棒261bを第一部材210aの第二ガイド孔262aに挿入した組付け状態について考察する。
【0111】
この組付け状態では、第一ガイド棒261a、第二ガイド棒261b、第一ガイド孔262b、第二ガイド孔262a、第一部材210aの前面215a及び後面216a、第二部材210bの前面215b及び後面216bは、互いに平行である。
【0112】
この組付け状態では、第一部材210aのテーパ面225aと第二部材210bのテーパ面225bとが、対向している。
【0113】
離間機構250は、第一部材210aのテーパ面225aと、第二部材210bのテーパ面225bと、楔151と、を有する。楔151は、組付け状態での第一部材210aのテーパ面225aと第二部材210bのテーパ面225bとの間に配置される。楔151は、第一楔面152aと第二楔面152bとを有する。第一楔面152aに対して第二楔面152bがなす角度は、組付け状態での第一部材210aのテーパ面225aに対して第二部材210bのテーパ面225bがなす角度と実質的に等しい。
【0114】
第一取外装置100の楔151と、第二取外装置200の楔151とは、同一のものである。このため、第二取外装置200における組付け状態での第一部材210aのテーパ面225aに対する第二部材210bのテーパ面225bの角度は、第一取外装置100における組付け状態での第一部材110aのテーパ面125aに対する第二部材110bのテーパ面125bの角度と実質的に等しい。
【0115】
なお、第一取外装置100の楔151に対して、第二取外装置200の楔が同一でなくてもよい。この場合、第二取外装置200における組付け状態での第一部材210aのテーパ面225aに対する第二部材210bのテーパ面225bの角度は、第一取外装置100における組付け状態での第一部材110aのテーパ面125aに対する第二部材110bのテーパ面125bの角度と等しくなくてもよい。
【0116】
「静翼の取外方法の実施形態」
静翼40の取外方法の実施形態について、
図10に示すフローチャートに従って説明する。
【0117】
まず、以上で説明した第一取外装置100及び第二取外装置200、さらに緩衝板170を準備する(S1:準備工程)。
【0118】
次に、
図5〜
図7に示すように、周方向Dcで隣接する第一静翼40aと第二静翼40bとの間に、第一取外装置100の第一部材110a、第二部材110b、及び緩衝板170を配置する(S2a:第一配置工程)。
【0119】
この第一配置工程(S2a)では、まず、第一静翼40aの腹側面44のほぼ全体が覆われるよう、緩衝板170を第一静翼40aの翼体41に巻き付ける。また、第二静翼40bの背側面45のほぼ全体が覆われるよう、緩衝板170を第二静翼40bの翼体41に巻き付ける。
【0120】
次に、第一部材110aを第一静翼40aと第二静翼40bとの間に配置する。この際、
図5及び
図7に示すように、第一部材110aの腹側対向面132aを第一静翼40aの腹側面44のうち、翼根側(径方向外側Dro)の部分に対向させると共に、第一部材110aの翼根対向面114aを第一静翼40aのガスパス面51に対向させる。さらに、
図6に示すように、第一部材110aの前規制面115aを分割保持環60の前側面63に対向させると共に、第一部材110aの後規制面116aを分割保持環60の後側面64に対向させる。第一部材110aの前規制面115aは分割保持環60の前側面63に接触する。第一部材110aの後規制面116aは、分割保持環60の後側面64に接触する。分割保持環60の前側面63及び後側面64は、軸方向Daに対して垂直で且つ周方向Dcに延びている。このため、以上のように、第一部材110aを配置すると、第一部材110aの前規制面115a及び後規制面116aも、軸方向Daに対して垂直で周方向Dcに延びることになる。よって、第一部材110aの第一ガイド棒161a及び第二ガイド溝162aも、軸方向Daに対して垂直な面内で周方向Dcに延びることになる。
【0121】
次に、第二部材110bを第一静翼40aと第二静翼40bとの間に配置する。この際、
図5及び
図7に示すように、第二部材110bの背側対向面132bを第二静翼40bの背側面45のうち、翼根側(径方向外側Dro)の部分に対向させると共に、第二部材110bの翼根対向面114bを第二静翼40bのガスパス面51に対向させる。さらに、
図6に示すように、第二部材110bの前規制面115bを分割保持環60の前側面63に対向させると共に、第二部材110bの後規制面116bを分割保持環60の後側面64に対向させる。第二部材110bの前規制面115bは分割保持環60の前側面63に接触する。第二部材110bの後規制面116bは、分割保持環60の後側面64に接触する。さらに、第二部材110bの第二ガイド棒161bを第一部材110aの第二ガイド溝162aに入れると共に、第二部材110bの第一ガイド溝162b内に第一部材110aの第一ガイド棒161aを入れる。第二部材110bの第二ガイド棒161bを第一部材110aの第二ガイド溝162aに入れる際には、
図4及び
図6に示すように、第一部材110aの径方向内側面118aにおける第二ガイド溝162aの開口から第二ガイド棒161bを入れる。また、第二部材110bの第一ガイド溝162b内に第一部材110aの第一ガイド棒161aを入れる際には、第二部材110bの後径方向外側面113bにおける第一ガイド溝162bの開口から第一ガイド棒161aを入れる。すなわち、本実施形態では、第二部材110bを径方向内側Driから径方向外側Droに移動させることで、配置済みの第一部材110aに対して第二部材110bを組み付けることができる。
【0122】
以上で、第二部材110bが第一静翼40aと第二静翼40bとの間に配置されると共に、配置済みの第一部材110aに対して組み付けられ、第一配置工程(S2a)が完了する。この状態では、第一部材110aの第一ガイド棒161a及び第二ガイド溝162aも、軸方向Daに対して垂直な面内で周方向Dcに延びることになる。また、第一静翼40aの腹側面44と第一部材110aの腹側対向面132aとにより、緩衝板170が挟み込まれ、第二静翼40bの背側面45と第二部材110bの背側対向面132bとにより、緩衝板170が挟み込まれた状態になる。
【0123】
静翼40の翼体41を周方向Dcに押す場合、翼体41の先端側よりも翼体41の翼根側を押す方が、同じ力で翼体41を押しても、静翼40にかかるモーメントを小さくすることができる。このため、本実施形態では、翼体41の翼根側の部分に各部材110a,110bの対向面132a,132bを対向させている。また、本実施形態では、第一部材110aと第二部材110bとの組付け状態において、第一部材110aと第二部材110bとを合わせたものの周方向Dcの寸法は、各部材110a,110bの対向面132a,132bが翼体41の翼根50側の部分に対向している状態に合わせて設定されている。
【0124】
ところで、第一静翼40aの翼体41と第二静翼40bの翼体41との間の周方向Dcの隔寸法は、翼根側よりも先端側の方が小さい。言い換えると、この間隔寸法は、径方向外側Droよりも径方向内側Driの方が小さい。このため、第一静翼40aの翼体41と第二静翼40bの翼体41との間に、径方向内側Driから組付け状態の第一部材110aと第二部材110bとを入れることは困難、又は不可能である。
【0125】
本実施形態では、ガイド棒161a,161bが入る部分をガイド溝162a,162bにしている。このため、本実施形態では、前述したように、ガイド棒161a,161bが延びる方向である周方向Dcではなく、径方向Drに、第二部材110bを移動させても、各ガイド棒161a,161bを各ガイド溝162a,162bに入れることができる。よって、本実施形態では、第一静翼40aの翼体41と第二静翼40bの翼体41との間で翼根側の部分に、第一部材110aと第二部材110bとを個別に配置できる。
【0126】
次に、離間機構150により、第二部材110bに対して第一部材110aを相対的に離間する方向に移動させる(S3a:第一離間工程)。具体的には、楔151の第一楔面152aを第一部材110aのテーパ面125aに接触させ、楔151の第二楔面152bを第二部材110bのテーパ面125bに接触させた状態で、この楔151を翼根側に打ち込む。楔151が打ち込まれることにより、第一部材110aと第二部材110bとには、双方を離間させる力が作用する。よって、第一静翼40aと第二静翼40bとにも、双方を離間させる力が作用する。この結果、第一静翼40aは、第二静翼40bに対して相対的に離間する方向に移動する。この移動過程で、第一部材110aは、ガイド棒161a,161b及びガイド溝162a,162bが延びている周方向Dcに移動する。
【0127】
本実施形態では、楔151を打ち込んだ衝撃力が、第一部材110a及び第二部材110bを介して、第一静翼40aの翼体41及び第二静翼40bの翼体41に作用する。翼体41の表面形状の変化は、圧縮機30の性能に大きく影響する。このため、本実施形態では、第一部材110aと第一静翼40aとの間、及び、第二部材110bと第二静翼40bとの間に、緩衝板170を配置し、第一静翼40aの翼体41及び第二静翼40bの翼体41に作用する衝撃力を緩和している。
【0128】
ところで、
図5に示すように、第一部材110aの腹側対向面132aから第一静翼40aの腹側面44に力Fが作用すると、第一静翼40aの腹側面44から第一部材110aの腹側対向面132aに対して反力Nが作用する。この反力Nは、腹側面44の接線に対して垂直な力である。腹側面44に対する接線は、軸方向Daに対して傾いている。よって、この反力Nの作用方向は、周方向Dcに対して傾いた方向になる。すなわち、この反力Nの作用方向は、周方向Dc成分の他に軸方向Da成分を含む。言い換えると、第一部材110aと第一静翼40aとの間には、周方向Dcに対して傾いた力が作用する。このため、第一部材110aは、この反力Nを受けると、軸方向Daにも移動しようとする。そこで、本実施形態では、ガイド機構160を設けて、第二部材110bに対する第一部材110aの相対移動方向を周方向Dcに規制している。さらに、本実施形態では、第一部材110aの前規制面115aを分割保持環60の前側面63に接触させると共に、第一部材110aの後規制面116aを分割保持環60の後側面64に接触させて、分割保持環60に対する第一部材110aの相対移動方向を周方向Dcに規制している。
【0129】
この反力Nの作用方向は、
図5を用いて前述した仮想円Cと腹側対向面132aとの接点Caと、この仮想円Cと背側対向面132bの接点Cbとを結ぶ線分Lが延びる方向に近似する。このため、本実施形態では、第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161b等が周方向Dcに延びるように、この線分Lに対して第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161bを傾けている。
【0130】
また、第一静翼40aが第一部材110aから受ける力Fの作用方向も、周方向Dcに対して傾いた力である。より具体的には、この力Fの方向は、周方向Dc成分の他に、軸方向上流側Dauへの成分を含む。このため、第一静翼40aは、第一部材110aに対して軸方向上流側Dauにも移動しようとする。そこで、本実施形態では、第一静翼40aにおける翼体41の前縁42を含む翼体41の前縁部42aに、第一部材110aの腹側対向面132aにおける前縁側対向部133aを対向させ、第一静翼40aが第一部材110aに対して軸方向上流側Dauにも移動しようとするのを規制している。
【0131】
第一離間工程(S3a)が終了すると、第一静翼40aと第二静翼40bとの間から第一部材110a及び第二部材110bを取り除く(S4a:第一配置解除工程)。第一離間工程(S3a)が終了すると、第一静翼40aと第二静翼40bとの間の周方向Dcの間隔は広がっている。このため、この第一配置解除工程(S4a)では、第一静翼40aと第二静翼40bとの間から組付け状態のままで第一部材110a及び第二部材110bを取り除くことができる。
【0132】
次に、
図8及び
図9に示すように、第一静翼40aと第二静翼40bとの間に、第二取外装置200の第一部材210a及び第二部材210bを配置する(S2b:第二配置工程)。
【0133】
この第二配置工程(S2b)では、まず、第二取外装置200の第一部材210aと第二部材210bとを組み付け状態にする。すなわち、第一部材210aの第一ガイド棒261aを第二部材210bの第一ガイド孔262bに入れ、第二部材210bの第二ガイド棒261bを第一部材210aの第二ガイド孔262aに入れる。
【0134】
第一離間工程(S3a)の実行で、第一静翼40aの翼根50における腹側端面55と第二静翼40bの翼根50における背側端面56とは、周方向Dcに離れている。そこで、ここでは、組付け状態の第一部材210aと第二部材210bとを第一静翼40aの翼根50と第二部材210bの翼根50との間に配置する。この際、第一部材210aの対向面232aを第一静翼40aの翼根50における腹側端面55に対向させると共に、第二部材210bの対向面232bを第二静翼40bの翼根50における背側端面56に対向させる。さらに、第一部材210a及び第二部材210bの径方向外側面211a,211bを分割保持環60の溝底面77に近接させる。このように、組付け状態の第一部材210a及び第二部材210bを分割保持環60の溝70内に入れると、第一部材210a及び第二部材210bの前面215a,215bが分割保持環60の前開口面73に接触すると共に、第一部材210a及び第二部材210bの後面216a,216bが分割保持環60の後開口面74に接触する。分割保持環60の前開口面73及び後開口面74は、軸方向Daに対して垂直で且つ周方向Dcに延びている。このため、以上のように、第一部材210a及び第二部材210bを配置すると、第一部材210aの第一ガイド棒261a及び第二ガイド孔262a、第二部材210bの第二ガイド棒261b及び第一ガイド孔262bが、軸方向Daに対して垂直な面内で周方向Dcに延びることになる。
【0135】
次に、離間機構250により、第二部材210bに対して第一部材210aを相対的に離間する方向に移動させる(S3b:第二離間工程)。具体的には、楔151の第一楔面152aを第一部材210aのテーパ面225aに接触させ、楔151の第二楔面152bを第二部材210bのテーパ面225bに接触させた状態で、この楔151を翼根側に打ち込む。楔151が打ち込まれることにより、第一部材210aと第二部材210bとには、双方を離間させる力が作用する。よって、第一静翼40aと第二静翼40bとにも、双方を離間させる力が作用する。この結果、第一静翼40aは、第二静翼40bに対して相対的に離間する方向に移動する。この移動過程で、第一部材210aは、第二部材210bに対して、各ガイド棒261a,261b及び各ガイド孔262a,262bが延びている周方向Dcに移動する。また、第一部材210a及び第二部材210bの前面(規制面)215a,215bが分割保持環60の前開口面73に接触していると共に、第一部材210a及び第二部材210bの後面(規制面)216a,216bが分割保持環60の後開口面74に接触しているので、第一部材210aは、分割保持環60に対して、前開口面73及び後開口面74が延びている周方向Dcに移動する。
【0136】
第二離間工程(S3b)の実行により、仮に、第一静翼40aが分割保持環60に強く固着していたとしても、第一静翼40aを分割保持環60に対して周方向Dcに容易に移動できるようになる。
【0137】
第二離間工程(S3b)が終了すると、第一部材210a及び第二部材210bを径方向内側Driに移動させて、第一静翼40aと第二静翼40bとの間から第一部材210a及び第二部材210bを取り除く(S4b:第二配置解除工程)。
【0138】
次に、分割保持環60に対して周方向Dcに簡単に移動できるようになった第一静翼40aを周方向Dcに移動させ、分割保持環60の溝70内に収まっていた第一静翼40aの翼根50を分割保持環60の翼根出入口69(
図3参照)から翼根50を出す(S5:静翼引抜工程)。以上で、第一静翼40aの取り外しが完了する。以下、必要に応じて、他の静翼40も以上と同様の手順で分割保持環60から取り外す。但し、他の静翼40を続けて取り外す際には、改めて準備工程(S1)を行う必要はない。
【0139】
以上のように、本実施形態では、離間機構150,250により、第二部材110b,210bに対して第一部材110a,210aを相対的に離間する方向に移動させることで、第二静翼40bに対して第一静翼40aが相対的に離間する方向に移動する。よって、本実施形態では、静翼40を容易に分割保持環60に対して相対移動させることができる。しかも、本実施形態では、分割保持環60に対する第一部材110a,210aの移動方向を周方向Dcに規制すると共に、第二部材110b,210bに対する第一部材110a,210aの相対移動方向を周方向Dcに規制するので、静翼40をより容易に分割保持環60に対して相対移動させることができる。
【0140】
さらに、本実施形態では、仮に、第一静翼40aが溝70に強く固着していたとしても、第二離間工程(S3b)の実行で、第一静翼40aを溝70に対して周方向Dcに容易に移動できるようになる。
【0141】
また、本実施形態では、第一部材110a,210a又は第二部材110b,210bを介して、静翼40を離間方向に押してこの静翼40を離間方向に移動させるので、取外過程における静翼40の損傷を抑えることができる。しかも、本実施形態では、第一配置行程(S2a)で、第一静翼40aの腹側面44と第一部材110aの腹側対向面132aとの間、及び第二静翼40bの背側面45と第二部材110bの背側対向面132bとの間に、緩衝板170を配置するので、翼面の第一離間工程(S3a)の実行中における翼面の損傷を抑えることができる。
【0142】
なお、第一離間工程(S3a)の実行で、第一静翼40aが分割保持環60に対して周方向Dcに容易に移動できる状態になっていれば、第二配置行程(S2b)、第二離間工程(S3b)、及び第二配置解除行程(S4b)を実行する必要はない。
【0143】
また、以上の実施形態において、翼セットは、第一取外装置100、分割保持環60と、複数の静翼40とを有して構成される。また、この翼セットは、必要に応じて、さらに、第二取外装置200を有してもよい。
【0144】
「離間機構の第一変形例」
図11を参照して、第一取外装置100における離間機構150の第一変形例について説明する。
【0145】
本変形例の離間機構150aは、第一部材110aのテーパ面125aと、第二部材110baのテーパ対向面125baと、楔151aと、を有する。本変形例における第一部材110aは、上記実施形態の第一部材110aと同一形状であり、前述のテーパ面125aを有する。一方、本変形例における第二部材110baは、上記実施形態の第二部材110bの形状と一部異なり、テーパ面125bを有しておらず、この替りに前述のテーパ対向面125baを有する。このテーパ対向面125baは、第一部材110aと第二部材110baとの組付け状態で、第一部材110aのテーパ面125aと対向する。また、このテーパ対向面125baは、翼根対向面114bに対して実質的に垂直である。
【0146】
楔151aは、第一楔面152aと第二楔面152baとを有する。第一楔面152aに対して第二楔面152baがなす角度は、組付け状態での第一部材110aのテーパ面125aに対して第二部材110baのテーパ対向面125baがなす角度と実質的に等しい。
【0147】
本変形例でも、上記実施形態と同様、第一離間工程(S3a)で、楔151aの第一楔面152aを第一部材110aのテーパ面125aに接触させ、楔151aの第二楔面152baを第二部材110baのテーパ対向面125baに接触させた状態で、この楔151aを翼根側に打ち込む。この結果、第一部材110aと第二部材110baとには、双方を離間させる力が作用し、第一静翼40aは、第二静翼40bに対して相対的に離間する方向に移動する。
【0148】
本変形例では、楔151aの第一楔面152aに対する第二楔面152baが成す角度を小さくすることができる。このため、上記実施形態の楔151の幅よりも、本変形例の楔151aの幅を小さくすることができる。よって、第一静翼40aの翼体41の先端と第二静翼40bの翼体41の先端との間の周方向Dcの間隔寸法が狭い場合でも、この間に容易に楔151aを通すことができる。
【0149】
本変形例では、第一部材110aにテーパ面125aが形成され、第二部材110baにテーパ対向面125baが形成されている。しかしながら、第一部材にテーパ対向面が形成され、第二部材にテーパ面が形成されてもよい。
【0150】
また、本変形例の離間機構150aは、第一取外装置100における離間機構150の変形例である。しかしながら、第二取外装置200における離間機構250も、本変形例と同様に構成してもよい。
【0151】
「離間機構の第二変形例」
図12を参照して、第一取外装置100における離間機構150の第二変形例について説明する。
【0152】
本変形例の離間機構150xは、油圧シリンダ153を有する。油圧シリンダ153は、シリンダケーシング154と、シリンダケーシング154に対して相対移動するシリンダヘッド155と、を有する。
【0153】
第一部材110axは、上記実施形態の第一部材110aと同様の、径方向外側面111aと、径方向内側面118aと、翼側面131aと、を有する。また、第二部材110bxも、上記実施形態の第二部材110bと同様の、径方向外側面111bと、径方向内側面118bと、翼側面131bと、を有する。本変形例の第一部材110axの部材側面121aの側には、シリンダヘッド155が接するヘッド受け面125axが形成されている。また、第二部材110bxの部材側面121bの側には、シリンダケーシング154を収納する収納溝125bxが形成されている。
【0154】
本変形では、第一配置工程(S2a)後に油圧シリンダ153を駆動することで、上記実施形態と同様に、第一離間工程(S3a)が実行される。
【0155】
なお、本変形例では、離間機構150xとして油圧シリンダ153を用いているが、空気圧シリンダや、電磁アクチュエータ等、他のアクチュエータを用いてもよい。また、本変形例は、前述したように、第一取外装置100における離間機構150の変形例である。しかしながら、第二取外装置200における離間機構250に関しても、本変形例と同様にアクチュエータを用いてもよい。
【0156】
「離間機構の第三変形例」
図13を参照して、第一取外装置100における離間機構150の第三変形例について説明する。
【0157】
本変形例の離間機構150yは、両ネジボルト156と、第一部材110ayに形成されている第一ネジ穴125ayと、第二部材110byに形成されている第二ネジ穴125byと、を有する。両ネジボルト156は、第一雄ネジ部157aと、第二雄ネジ部157bと、ボルト頭部158と、を有する。第一雄ネジ部157aのネジ軸線と第二雄ネジ部157bのネジ軸線とは、同一直線上に位置する。ボルト頭部158は、第一雄ネジ部157aと第二雄ネジ部157bとの間に形成されている。第二雄ネジ部157bは、第一雄ネジ部157aに対して逆ネジである。
【0158】
第一部材110ayは、上記実施形態の第一部材110aと同様の、径方向外側面111aと、径方向内側面118aと、翼側面131aと、を有する。また、第二部材110byも、上記実施形態の第二部材110bと同様の、径方向外側面111bと、径方向内側面118bと、翼側面131bと、を有する。第一部材110ayの部材側面121aの側には、翼側面131aの側に凹む第一ネジ穴125ayが形成されている。この第一ネジ穴125ayは、両ネジボルト156の第一雄ネジ部157aが螺合可能なネジ穴である。第二部材110byの部材側面121bの側には、翼側面131bの側に凹む第二ネジ穴125byが形成されている。この第二ネジ穴125byは、両ネジボルト156の第二雄ネジ部157bが螺合可能なネジ穴である。
【0159】
本変形例では、第一配置工程(S2a)後に両ネジボルト156のボルト頭部158を工具で操作し、この両ネジボルト156を回転させることで、上記実施形態と同様に、第一離間工程(S3a)が実行される。
【0160】
なお、本変形例では、離間機構150yとして両ネジボルト156を用いているが、一般的な片ネジボルトを用いてもよい。この場合、第一部材110aと第二部材110bとのうち、一方の部材に雄ネジ穴を形成し、他方に、片ネジボルトの一部が回転可能で、且つ片ネジボルトをネジ軸方向Daに移動不能に支持する支持穴又は支持溝を形成する。また、本変形例は、前述したように、第一取外装置100における離間機構150の変形例である。しかしながら、第二取外装置200における離間機構250に関しても、本変形例と同様に両ネジボルト156又は片ネジボルトを用いてもよい。
【0161】
「第一部材及び第二部材の第一変形例」
図14を参照して、第一取外装置100における第一部材110a及び第二部材110bの第一変形例について説明する。
【0162】
上記実施形態における第一部材110a及び第二部材110bでは、第一ガイド面(第一面)126a,126bと第二ガイド面(第二面)127a,127bとの間にテーパ面125a,125bが形成されている。一方、本変形例における第一部材110ab及び第二部材110bbには、第一ガイド面126a,126b及び第二ガイド面127a,127bが形成されていない。すなわち、本変形例における第一部材110ab及び第二部材110bbの部材側面121ab,121bbは、主部材側面122ab,122bbと、テーパ面125a,125bとを有し、上記実施形態における第一ガイド面126a,126b及び第二ガイド面127a,127bを有していない。よって、本変形例における第一部材110ab及び第二部材110bbの部材側面121ab,121bbは、テーパ面125a,125bを除き、平坦な面であり、且つ第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161bが延びる方向に対して垂直な面である。
【0163】
以上のように、本変形例では、第一部材110ab及び第二部材110bbの部材側面121ab,121bbを単純化したので、第一部材110ab及び第二部材110bbの製造コストを抑えることができる。
【0164】
また、本変形例における第二部材110bbの対向面132bb、つまり、背側対向面132bbにおける後縁側対向部134bbは、翼体41の後縁43と背側面45の後縁43側の部分とを含む後縁部43aに対向する。翼体41の後縁部43aは、凸曲面を成している。このため、後縁側対向部134bbは、この凸曲面の反転形状である凹曲面を成している。この背側対向面132bbにおける前縁側対向部133bは、上記実施形態と同様、翼体41の背側面45における後縁部43aよりも前側Dauの部分である前部42aに対向する。背側面45における前縁部42aは、凸曲面を成している。このため、背側対向面132bbにおける前縁側対向部133bは、この凸曲面の反転形状である凹曲面を成している。
【0165】
前述したように、第一静翼40aが第一部材110abから受ける力の作用方向、及び第二静翼40bが第二部材110bbから受ける作用方向は、周方向Dcに対して傾いた力である。このため、第二静翼40bは、周方向Dcのみならず、第二部材110bbに対して軸方向下流側Dadにも移動しようとする。そこで、本変形例では、第二静翼40bにおける翼体41の後縁43を含む翼体41の後縁部43aに、第二部材110aの背側対向面132bbにおける後縁側対向部134bbを対向させ、第二静翼40bが第二部材110bに対して軸方向上流側Dadにも移動しようとするのを規制している。
【0166】
「第一部材及び第二部材の第二変形例」
図15を参照して、第一取外装置100における第一部材及び第二部材の第二変形例について説明する。
【0167】
本変形例の第一部材110ac及び第二部材110bcの部材側面121ac,121bcは、前部材側面122a,122bと、テーパ面125ac,125bcと、後部材側面123a,123bと、傾斜面128a,128bと、を有する。後部材側面123a,123bは、上記実施形態と同様、前部材側面122a,122bに対して、間隔をあけて後側Dadに形成されている。傾斜面128a,128bは、前部材側面122a,122bと後部材側面123a,123bとをつなぐため、前部材側面122a,122bと後部材側面123a,123bとの間に形成されている。
【0168】
前部材側面122a,122b及び後部材側面123a,123bは、いずれも、第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161bが延びる方向に対して垂直な面である。第一部材110acにおいて、後部材側面123aは、前部材側面122aよりも翼側面131aの側に位置している。また、第二部材110bcにおいて、後部材側面123aは、前部材側面122aよりも翼側面131bとは反対側に位置している。このため、部材側面122a,122bと後部材側面123a,123bとをつなぐ傾斜面128a,128bは、径方向内側面118a,118bと垂直な面であるものの、第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161bが延びる方向に対して傾斜し、且つ第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161bが延びる方向に対して垂直な面にも傾斜した面である。
【0169】
傾斜面128a,128b中には、テーパ面125ac,125bcが形成されている。このテーパ面125ac,125bcは、径方向内側面118a,118bから径方向外側面(溝底対向面)111a,111bの側に近づくに連れて次第に翼側面131a,131bから遠ざかるよう傾斜している。
【0170】
ここで、テーパ面125ac,125bcに沿った方向であって径方向外側面(溝底対向面)111a,111bに最短距離で近づく方向をテーパ傾斜方向Dtiとする。さらに、このテーパ傾斜方向Dtiに対して垂直で、且つテーパ面125ac,125bcに沿った方向をテーパ延在方向Dteとする。テーパ面125ac,125bcは、前述したように、傾斜面128a,128b中に形成されているため、このテーパ延在方向Dteは、第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161bが延びる方向に対して傾斜し、且つ第一ガイド棒161a及び第二ガイド棒161bが延びる方向に対して垂直な面にも傾斜した方向になる。言い換えると、本変形例のテーパ面125ac,125bcにおけるテーパ延在方向Dteは、軸方向Da及び周方向Dcに対して傾斜した方向になる。
【0171】
以上のように、本変形例では、テーパ面125ac,125bcにおけるテーパ延在方向Dteが軸方向Da及び周方向Dcに対して交差する方向になるため、軸方向Da及び周方向Dcに対して翼弦が傾斜している翼体41の翼面に対して垂直に力を加え易くなる。
【0172】
なお、本変形例でも、上記第一変形例と同様、背側対向面132bbにおける後縁側対向部134bbは、翼体41の後縁43と背側面45の後縁43側の部分とを含む後縁部43aに対向する。翼体41の後縁部43aは、前述したように、凸曲面を成している。このため、後縁側対向部134bbは、この凸曲面の反転形状である凹曲面を成している。この背側対向面132bbにおける前縁側対向部133bは、上記実施形態と同様、翼体41の背側面45における後縁部43aよりも前側Dauの部分である前縁部42aに対向する。
【0173】
「その他の変形例」
上記実施形態では、第一取外装置100における第一部材110aの腹側対向面132a及び第二部材110bの背側対向面132bに、緩衝板170を配置する。すなわち、上記実施形態では、第一取外装置100における第一部材110a及び第二部材110bと、緩衝板(緩衝部材)170とは、独立した部材である。しかしながら、第一部材と緩衝部材とが一体であり、第二部材と緩衝部材とが一体であってもよい。この場合、例えば、第一部材の中間品を鋼等で形成し、この中間品の対向面側に銅等で形成された緩衝部材を貼り付け又は圧着し、これを第一部材としてもよい。この場合、緩衝部材の表面が第一部材の対向面になる。
【0174】
上記実施形態の第一取外装置100における第一部材110aの対向面は腹側対向面132aで、第二部材110bの対向面は背側対向面132bである。しかしながら、第一部材110aの対向面が背側対向面で、第二部材110bの対向面が腹側対向面であってもよい。
【0175】
上記実施形態及び上記各変形例では、静翼保持環(翼保持部材)36の溝70に嵌り込んでいる静翼40を溝70から取り外す例である。しかしながら、ロータ軸(翼保持部材)12の溝に嵌り込んでいる動翼を溝から外す場合も、以上と同様の取外装置を用いることで、動翼を溝から容易に外すことができる。なお、ロータ軸12の溝は、静翼保持環36の溝70と同様に周方向Dcに延びている。但し、この溝には、軸方向Da又は径方向Drに向かって開口し、この溝から動翼の翼根を引き出すための開口が形成されている。
【0176】
上記実施形態は、ガスタービン1の圧縮機30における静翼40を取り外す例である。しかしながら、本発明の取外対象は、ガスタービン1の圧縮機30における静翼40に限定されない。すなわち、軸線Arに対する径方向外側Droに向かって凹み且つ軸線Arに対する周方向Dcに延びる溝に、複数の静翼の翼根が嵌り込んでいれば、この静翼を取外対象にしてよい。
【解決手段】取外装置は、周方向Dcで隣接する第一翼40aと第二翼40bとの間に配置され、第一翼40aの外面に対向する対向面132aが形成されている第一部材110aと、第一翼40aと第二翼40bとの間に配置され、第二翼40bの外面に対向する対向面132bが形成されている第二部材110bと、第二部材110bに対して第一部材110aを相対的に離間する方向に移動させる離間機構150と、を備える。