特許第5980440号(P5980440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5980440-フィナフロキサシン懸濁組成物 図000017
  • 特許5980440-フィナフロキサシン懸濁組成物 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980440
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】フィナフロキサシン懸濁組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5383 20060101AFI20160818BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61K31/5383
   A61K31/573
   A61P31/04
   A61P29/00
   A61K9/08
   A61K9/10
   A61K47/02
   A61K47/38
   A61P27/16
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-543163(P2015-543163)
(86)(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公表番号】特表2016-500079(P2016-500079A)
(43)【公表日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】US2013071397
(87)【国際公開番号】WO2014088838
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2015年5月18日
(31)【優先権主張番号】61/734,268
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ブードロー, ブレント ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリドル, マーク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フィン, ブライアン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ, マレイ
(72)【発明者】
【氏名】チョーハン, マスード エー.
(72)【発明者】
【氏名】アラーニ, ラマン
(72)【発明者】
【氏名】カブラ, バーグワティ ピー.
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/003091(WO,A1)
【文献】 特開2010−083901(JP,A)
【文献】 特表平11−514984(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/119942(WO,A1)
【文献】 特表2002−525317(JP,A)
【文献】 特表2000−514825(JP,A)
【文献】 特開平02−264724(JP,A)
【文献】 特開2011−093919(JP,A)
【文献】 特表2011−512362(JP,A)
【文献】 Antimicrobial Agents And Chemotherapy,2011年,Vol.55, No.9,p.4394-4397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61P 27/16
A61P 29/00
A61P 31/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィナフロキサシン、可溶化剤、および懸濁化剤を含む局所用懸濁組成物であって、ここで、前記フィナフロキサシンが、フィナフロキサシン遊離塩基A型である、組成物
【請求項2】
前記組成物が、18:1〜1:1の懸濁化されたフィナフロキサシンの可溶化されたフィナフロキサシンに対する比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フィナフロキサシンの可溶性濃度が、0.05w/v%を超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
フィナフロキサシンまたはその薬学的に許容される塩を0.15〜2.0w/v%の濃度で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、5.8〜6.2のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記可溶化剤が、0.98〜4.9mMの濃度のマグネシウム塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記可溶化剤が、0.05〜0.07w/v%の濃度の塩化マグネシウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記懸濁化剤が、ヒドロキシエチルセルロースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記懸濁化剤が、0.1〜0.3w/v%の濃度のヒドロキシエチルセルロースであり、前記組成物が、25℃で8時間を超えて実質的均一性を維持する、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
抗炎症剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗炎症剤が、デキサメタゾンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、デキサメタゾンを0.05〜1.0w/v%の濃度で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
眼、耳、または鼻の感染を治療するための、請求項1〜1のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記感染が、中耳腔換気用チューブによる急性外耳炎または急性中耳炎である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、前記患部組織に1日1回滴下注入されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
フィナフロキサシン懸濁液を調製するための方法であって、
水性スラリーを形成するために、水と一緒にフィナフロキサシン遊離塩基、粉砕剤、および粉砕ビーズを加えることによって、フィナフロキサシンスラリーを生成することと、
前記スラリーを加熱して、フィナフロキサシン遊離塩基A型を形成することと、を含む方法。
【請求項17】
前記フィナフロキサシンスラリーが、1つ以上の抗炎症剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記フィナフロキサシンスラリーが、デキサメタゾンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、フルオロキノロンを含む懸濁組成物に関する。本発明は、具体的には、フィナフロキサシンまたはフィナフロキサシン誘導体を含む懸濁組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キノロン抗生物質は、望ましい広域スペクトルの抗菌特性を有するものとして既知である。例えば、眼、耳、および鼻の症状の治療における使用のためのキノロン化合物が、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,716,830号に開示されている。
【0003】
医薬治療剤における使用については、キノロン抗生物質は、安定で有効な組成物として製剤化されねばならない。不安定な組成物は、一定の期間保存される場合、粒状物質を沈殿させることがあるか、または活性医薬成分もしくは賦形剤の分解を経験することがある。このような組成物は、安全性に関する懸念および他の考慮事項のために、規制当局によって承認される可能性は低い。
フィナフロキサシンは、眼、耳、および鼻の感染の治療用に米国特許出願第12/829,973号で先に開示された広域スペクトルのフルオロキノロンである。フィナフロキサシン抗生物質の活性は、5〜6のpH範囲でピークに達する。しかしながら、このpHでのフィナフロキサシンの水溶液は、安定性試験において沈殿形態を有することが確認された。したがって、良好な安定特性を有するフィナフロキサシンの新しい組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,716,830号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フィナフロキサシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、鏡像異性体、もしくは水和物を含む懸濁組成物に関する。このようなフィナフロキサシン組成物は、眼、耳、および鼻の感染を含める微生物感染の治療のためのものである。
【0006】
上述したように、フィナフロキサシンは、低いpHで最大の抗菌効果を有する。しかしながら、フィナフロキサシンの溶液組成物は、最適なpHでの低い溶解度および安定性に苦しみ、多くの場合望ましくない沈殿物を生成する。本発明は、安定で有効なフィナフロキサシン懸濁組成物を提供する。好ましいフィナフロキサシン懸濁液は、0.05w/v%を超えるフィナフロキサシンの可溶性画分を有し、18対1〜1対1の懸濁されたフィナフロキサシンの可溶性フィナフロキサシンに対する比を有する。
【0007】
本発明の一実施形態は、感染組織を治療するための方法であり、この方法は、フィナフロキサシンを含む局所用懸濁組成物で感染組織を治療することを含む。好ましい実施形態では、局所用懸濁液の1日1回投与が、感染組織を治療するために使用される。本発明の懸濁製剤は、フィナフロキサシンの懸濁させた画分が経時的に溶解し、延長された作用持続時間をもたらすと同時に、高可溶性画分が即時抗菌活性をもたらすことができるため、特に低頻度投与計画で有用である。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態は、フィナフロキサシン遊離塩基を含む懸濁組成物に関する。特に好ましいフィナフロキサシン遊離塩基懸濁組成物は、フィナフロキサシン遊離塩基A型を含み、これは、このような組成物を加熱滅菌するために使用される高温で安定である。好ましい懸濁液はまた、組成物中の可溶性フィナフロキサシン画分を増加させるために、二価のカチオン種などの可溶化剤を含む。
【0009】
前述の発明の概要は、本発明の特定の実施形態の特徴および技術的利点を広く説明するものである。追加の特徴および技術的利点は、以下の発明を実施するための形態で説明される。本発明の特性であると考えられる新規な特徴は、任意の添付の図面と関連付けて考察するとき、発明を実施するための形態からより良く理解されるであろう。しかしながら、本明細書に提供される図面は、本発明を例示するのを助けるようまたは本発明の理解を深めることを補助するよう意図するものであり、本発明の範囲を定義することを意図するものではない。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
フィナフロキサシン、可溶化剤、および懸濁化剤を含む局所用懸濁組成物。
(項目2)
前記組成物が、18:1〜1:1の懸濁化されたフィナフロキサシンの可溶化されたフィナフロキサシンに対する比を有する、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記フィナフロキサシンの可溶性濃度が、0.05w/v%を超える、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記フィナフロキサシンが、フィナフロキサシン遊離塩基である、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記フィナフロキサシンが、フィナフロキサシン遊離塩基A型である、項目1に記載の組成物。
(項目6)
フィナフロキサシンまたはその薬学的に許容される塩を0.15〜2.0w/v%の濃度で含む、項目1に記載の組成物。
(項目7)
前記組成物が、5.8〜6.2のpHを有する、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記可溶化剤が、0.98〜4.9mMの濃度のマグネシウム塩である、項目1に記載の組成物。
(項目9)
前記可溶化剤が、0.05〜0.07w/v%の濃度の塩化マグネシウムである、項目1に記載の組成物。
(項目10)
前記懸濁化剤が、ヒドロキシエチルセルロースである、項目1に記載の組成物。
(項目11)
前記懸濁化剤が、0.1〜0.3w/v%の濃度のヒドロキシエチルセルロースであり、前記組成物が、25℃で8時間を超えて実質的均一性を維持する、項目10に記載の組成物。
(項目12)
抗炎症剤をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目13)
前記抗炎症剤が、デキサメタゾンである、項目12に記載の組成物。
(項目14)
前記組成物が、デキサメタゾンを0.05〜1.0w/v%の濃度で含む、項目13に記載の組成物。
(項目15)
眼、耳、または鼻の感染を治療するための方法であって、
薬学的有効量の項目1〜14に記載の組成物で前記感染を治療することを含む、方法。
(項目16)
前記感染が、中耳腔換気用チューブによる急性外耳炎または急性中耳炎である、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記方法が、前記組成物を、前記患部組織に1日1回滴下注入することを含む、項目15に記載の方法。
(項目18)
フィナフロキサシン懸濁液を調製するための方法であって、
水性スラリーを形成するために、水と一緒にフィナフロキサシン遊離塩基、粉砕剤、および粉砕ビーズを加えることによって、フィナフロキサシンスラリーを生成することと、
前記スラリーを加熱して、フィナフロキサシン遊離塩基A型を形成することと、を含む方法。
(項目19)
前記フィナフロキサシンスラリーが、1つ以上の抗炎症剤をさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記フィナフロキサシンスラリーが、デキサメタゾンをさらに含む、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のより完全な理解およびその利点は、参照番号が同様な特徴を示す添付の図面の図と兼ね併せて、以下の説明を参照することによって得ることができる。
【0011】
図1】フィナフロキサシン遊離塩基のA型の結晶形態のX線回折パターンを図示する。
図2】フィナフロキサシン遊離塩基のB型およびC型のオーバーレイX線回折パターンを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、微生物組織感染を有するまたは微生物の組織感染のリスクを有する哺乳動物およびヒト対象を治療することを特に目的とする。本発明の方法により治療される、または予防されることができる微生物組織感染は、J.P.Sanford et al.,”The Sanford Guide to Antimicrobial Therapy 2007”37th Edition(Antimicrobial Therapy,Inc.)に言及されている。本発明の実施形態によって治療可能であり得る特定の微生物組織感染としては、細菌、原生動物、真菌、酵母、胞子、および寄生虫によって引き起こされる微生物組織感染が挙げられる。本発明はまた、特に、眼、耳、および鼻/副鼻腔感染を治療するための抗菌懸濁組成物ならびにこれらを治療する方法を目的とする。
【0013】
本発明の懸濁組成物は、フィナフロキサシンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、鏡像異性体、もしくは水和物を含む。フィナフロキサシン(8−シアノ−1−シクロプロピル−6−フルオロ−7−[(4aS,7aS)−ヘキサヒドロピロロ[3,4−b]−1,4−オキサジン−6(2H)−イル]−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸)は、以下の構造を有する。
【化1】
【0014】
本発明の実施形態において使用するためのフィナフロキサシンの好ましい形態は、フィナフロキサシン遊離塩基である。フィナフロキサシン遊離塩基の少なくとも3つの多形(A型、B型、およびC型)が同定されている。実質的に純粋なフィナフロキサシン遊離塩基A型が、加熱滅菌中に経験する温度などの高温で最も安定であることが発見されたため、これが好ましい実施形態で利用される。フィナフロキサシン遊離塩基A型の結晶形は、図1に示すX線粉末回折スペクトルと実質的に同一のX線回折スペクトルを有する。フィナフロキサシン遊離塩基のB型およびC型のX線粉末回折析スペクトルを図2に示す。
【0015】
本明細書で使用される、特定の多形形態に関する用語「実質的に純粋」は、多形形態が、10重量%未満の、好ましくは5重量%未満の、より好ましくは3重量%未満の、最も好ましくは1重量%未満の化合物の任意の他の物理的形態を含むことを意味する。
【0016】
本明細書で使用される、X線回折ピーク位置に関する用語「本質的に同一」は、典型的なピーク位置および強度の変動を考慮に入れることを意味する。例えば、当業者であれば、ピーク位置(2θ)が典型的には0.2°程度のいくらかの装置間変動を示すことを理解するであろう。さらに、当業者であれば、相対的ピーク強度が装置間変動ならびに結晶化度、好ましい配向、調製された試料表面、および当業者に既知の他の要因に起因する変動を示し、質的測度としてだけとらえるべきであることを理解するであろう。
【0017】
ジアステレオマー的におよび鏡像異性体的に純粋なフィナフロキサシンもまた、本発明の実施形態での使用に好ましい。本明細書で使用される、「フィナフロキサシン」は、フィナフロキサシンおよびその薬学的に許容される塩、誘導体、鏡像異性体、もしくは水和物を包含するよう意図する。フレーズ「薬学的に許容される」は、当該技術分野において認識されており、当業者によって決定されるような妥当な利益/リスク比率と比例して、過度の毒性、刺激性、アレルギー応答性、または他の問題もしくは合併症がなく、ヒトおよび動物の組織と接触する使用に好適である組成物、ポリマーならびに他の材料および/または剤形を指す。
【0018】
フィナフロキサシンおよびその誘導体は、その内容が全体において参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,133,260号に記載される方法に従って合成されることができる。フィナフロキサシン遊離塩基A型は、フィナフロキサシン塩酸塩を水酸化物塩で処理し、次いで、乾燥の前に水中で加熱することによって生成される。フィナフロキサシンA型は、加熱および/または真空乾燥を用いてフィナフロキサシン遊離塩基B型から固体状態で得られてもよい。さらに、製剤配合プロセスにおいて、フィナフロキサシン遊離塩基A型は、水相中で加熱することにより、フィナフロキサシン遊離塩基B型から同様に得ることができる。
【0019】
本発明の懸濁組成物は、一般的に、0.001w/v%以上の濃度でフィナフロキサシンを含む。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、0.15〜2.0w/v%の濃度でフィナフロキサシンを含む。より好ましい実施形態では、本発明の組成物は、0.20〜1.0w/v%の濃度でフィナフロキサシンを含み、別の好ましい実施形態では、0.25〜0.60w/v%の濃度でフィナフロキサシンを含む。列記された濃度は、懸濁組成物中の重量でのフィナフロキサシンの総量を指し、組成物の懸濁画分中に溶解されたフィナフロキサシンおよび懸濁液画分中の粒子状のフィナフロキサシンを含む。
【0020】
懸濁組成物中の懸濁されたフィナフロキサシンの可溶化フィナフロキサシンに対する比は様々であってもよいが、典型的には、18:1〜1:1である。好ましい実施形態では、この比は、8:1〜1:1である。より好ましい実施形態では、この比は、4:1〜2:1である。
【0021】
懸濁液の可溶性フィナフロキサシン濃度は種々であってもよいが、典型的には、0.05w/v%を超える。好ましい実施形態では、可溶性フィナフロキサシン濃度は0.075w/v%を超え、最も好ましい実施形態では、可溶性フィナフロキサシン濃度は0.1w/v%を超える。特定の好ましい実施形態では、高可溶性画分は、5.6〜6.5の好ましいpHならびに5.8〜6.2の最も好ましいpHおよび0.02〜0.1w/v%の可溶化剤(塩化マグネシウムなど)の濃度を有する安定した懸濁液で維持される。この範囲を外れるpHを有する懸濁液は、多くの場合、以下の実施例10に示すように、望ましくない多形変化または粒子状物質の成長を有する。本発明の好ましい実施形態では、フィナフロキサシン懸濁液は、フィナフロキサシン遊離塩基A型から実質的に構成され(例えば、95%を超えるA型が好ましく、99%を超えるA型が特に好ましい)、安定性基準を満たすのに十分な期間にわたって(例えば、好ましい実施形態では12ヶ月以上、他の実施形態では、12ヶ月〜18ヶ月、またはさらに他の実施形態では6ヶ月〜18ヶ月)、室温(15〜25℃)でこの多形形態を維持する。
【0022】
可溶性フィナフロキサシン濃度を最大にすることが一般的に望ましく、溶解されたフィナフロキサシンの量を増加させるために、可溶化剤を懸濁組成物に添加することができる。当該技術分野において既知の可溶化剤を使用することができるが、好ましい実施形態では、マグネシウムおよびカルシウムなどの二価のカチオンを使用することができる。このような二価のカチオンの濃度は、様々であり得るが、一般的には0.98〜4.9mMである。好ましい実施形態では、二価のカチオンの濃度は、2.0〜3.9mMであり、最も好ましい実施形態では、二価のカチオンの濃度は、2.5〜3.4mMである。特に好ましい可溶化剤は、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムおよび酸化マグネシウムなどのマグネシウム塩である。特に好ましいマグネシウムの塩は、塩化マグネシウムである。塩化マグネシウムの濃度は様々であってよいが、0.02〜0.10w/v%の濃度が好ましく、0.04〜0.08w/v%の濃度がより好ましく、0.05〜0.07の濃度が特に好ましい。
【0023】
本発明の懸濁組成物は、組成物を約5.6〜7のpHで維持する緩衝系を用いて調製される。好ましいフィナフロキサシン組成物は、5.6〜6.5のpHを有し、特に好ましい組成物は、5.8〜6.2のpHを有する。
【0024】
均一のフィナフロキサシン粒径を生成する粉砕剤もまた、本発明の特定の実施形態で利用される。好ましい実施形態では、チロキサポールを粉砕剤として使用し、10μm未満のフィナフロキサシン平均体積粒径を、最も好ましい実施形態では、5μm未満のフィナフロキサシン平均体積粒径を生成する。
【0025】
均一の懸濁液を維持するために、懸濁化剤が特定の実施形態で使用されてもよい。懸濁液均一性は、製剤を25℃で50mLのメスシリンダーに注ぎ、製剤が沈降するにつれて、製剤の透明部分および非透明部分を経時的に計量することによって測定することができる。均一性は、メスシリンダー中の非透明製剤の比(百分率で表わされる)である。好ましい実施形態では、このような薬剤は、4時間を超える時間にわたって、最も好ましい実施形態では8時間を超える時間にわたって、実質的に均一のフィナフロキサシン懸濁液を維持することができる(すなわち、95%以上の非透明の懸濁された製剤の状態で)。好ましい実施形態では、懸濁化剤は、0.1〜0.3w/v%の濃度のヒドロキシエチルセルロース(HEC)であり、最も好ましくは、0.2パーセントの濃度のHECである。
【0026】
本発明のフィナフロキサシン懸濁液は、好ましい実施形態では30秒未満で、最も好ましい実施形態では15秒未満で、25℃にて振蕩することで再分散することができる。
【0027】
本発明の特定の実施形態は、眼組織感染を治療するために特に有用である。本発明の組成物および方法を用いて治療することができる眼の症状の例としては、結膜炎、角膜炎、眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫および角膜潰瘍が挙げられる。本発明の方法および組成物は、感染のリスクを引き起こす種々の眼の外科的処置において予防的に使用されてもよい。
【0028】
耳および鼻/副鼻腔組織感染も、本発明の実施形態により治療されてもよい。本発明の組成物および方法で治療することができる耳の症状の例としては、急性外耳炎および中耳炎(鼓膜が破れているかまたは中耳換気チューブが埋め込まれている場合)が挙げられる。本発明の組成物および方法で治療することができる鼻/副鼻腔症状の例としては、鼻炎、副鼻腔炎、鼻腔内保菌および鼻もしくは副鼻腔組織が手術によって影響を受ける状態が挙げられる。
【0029】
本発明の実施形態は、感染因子による組織の感染を阻止するために予防的に使用されてもよい。このような実施形態では、感染のリスクがある組織は、本発明の組成物に接触される。
【0030】
特別な実施形態では、本発明の組成物は、1日1回投与される。しかしながら、本発明の組成物は、1週間に1回、5日毎に1回、3日毎に1回、2日毎に1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日8回、毎時間、または任意のより高い頻度を含む投与の任意の頻度で、投与のために製剤化されてもよい。このような投与頻度はまた、治療計画に応じて異なる持続期間にわたって維持される。特定の治療計画の持続期間は、1回の投与から数週間にわたる投薬計画まで変化してもよい。当業者であれば、フィナフロキサシンまたはその組成物の薬学的有効量を組み込む具体的な適応のために治療計画を決定することに熟知していると思われる。フレーズ「薬学的有効量」とは、当該技術分野において認められている用語であり、本発明の医薬組成物に組み込まれる場合、任意の医療処置に適用可能な妥当な利益/リスク比率でいくらかの所望の効果を発揮する作用物質の量を指す。有効量は、治療される疾患もしくは感染因子などの要因、投与される特定の組成物、または疾患もしくは感染因子の重篤性に応じて変化してもよい。
【0031】
フィナフロキサシンに加えて、本発明の組成物は、必要に応じて1つ以上の賦形剤を含む。通常、医薬組成物で使用する賦形剤としては、浸透圧調節剤、防腐剤、キレート剤、緩衝剤、界面活性剤および抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の賦形剤は、可溶化剤、安定化剤、快適化増強剤、ポリマー、緩和剤、pH調節剤および/または滑沢剤を含む。水、水および水混和性溶媒(C1−C7アルカノールなど)の混合物、0.5〜5%の非毒性水溶性ポリマーを含む植物性油もしくは鉱油、アルギン酸塩、ペクチン、トラガカント、カラヤゴム、キサンタンゴム、カラゲーニン、寒天およびアラビアゴムなどの天然産物、酢酸デンプンおよびヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン誘導体、さらにポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、酸化ポリエチレン、好ましくは架橋ポリアクリル酸およびこれらの産物の混合物などの他の合成産物を含む、種々の賦形剤のいずれかを本発明の組成物で使用してもよい。好ましい実施形態では、賦形剤(複数可)の濃度は、典型的には、フィナフロキサシンの濃度の0.01〜100倍であり、賦形剤(複数可)は、フィナフロキサシンに対するそれらの不活性に基づいて選択される。
【0032】
好適な毒性調節剤としては、マンニトール、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール等が挙げられるが、これらに限定されない。好適な緩衝剤としては、リン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。好適な界面活性剤としては、限定されるものではないが、イオン性および非イオン性界面活性剤が挙げられるが、非イオン性界面活性剤が好ましい(RLM 100、Procol(登録商標)CS20などのPOE 20セチルステアリルエーテル、およびPluronic(登録商標)F68などのポロキサマー)。好適な抗酸化剤としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびブチルヒドロキシトルエン(BHT)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書に記載される組成物は、1つ以上の防腐剤を含んでもよい。このような防腐剤の例としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、チオメルサールなどのチオサリチル酸のアルキル−水銀塩、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコールもしくはフェニルエタノールなどのアルコール、ポリヘキサメチレンビグアニジンなどのグアニジン誘導体、過ホウ酸ナトリウムまたはソルビン酸が挙げられる。特定の実施形態では、この組成物は、防腐剤を必要としない自己防衛型であってもよい。好ましい実施形態では、懸濁組成物は、0.004〜0.012w/v%の塩化ベンザルコニウム(BAC)濃度で、最も好ましくは0.005w/v%のBAC濃度で、ヨーロッパ薬局方(Ph.Eur)標準を満たすように保存される。
【0034】
副鼻腔適用における使用については、組成物は、噴霧器または当業者に周知の他のこのような装置を用いて、エアゾール形成に好適な賦形剤を含んで使用されてもよい。
【0035】
本発明のいくつかの組成物は、対象の目への適用に眼科的に好適である。好ましい態様では、フィナフロキサシンを含む組成物は、液滴の形態で、水性懸濁液中で目への局所適用のために製剤化されるであろう。用語「水性」は、典型的には、賦形剤が>50重量%、より好ましくは>75重量%、特に>90重量%の水である水性組成物を指す。これら液滴は、好ましくは無菌であるので、組成物の静菌剤成分を不必要にさせることができる単回投与アンプルから送達されてもよい。あるいは、液滴は、好ましくはそれが送達されると同時に、いかなる防腐剤も組成物から抽出する装置を備えることができる複数回投与瓶から送達されてもよく、このような装置は、当該技術分野において既知である。
【0036】
他の態様では、本発明の構成成分は、濃縮ゲルもしくは同様のビヒクルとして、または瞼の近くに配置される速溶性インサートとして目に送達されてもよい。さらに他の態様では、本発明の構成成分は、軟膏剤、油中水ならびに水中油乳剤として目に送達されてもよい。
【0037】
目への局所用組成物については、組成物は、蒸発および/または疾患によって引き起こされる涙のあらゆる高張性と戦うために、等張性であるか、またはわずかに低張性であることが望ましい。このことは、組成物の浸透圧を210〜420ミリオスモル毎キログラム(mOsm/kg)のまたはこの近辺のレベルに持っていくために、浸透圧調節剤を必要とする。本発明の組成物は、概ね、220〜420mOsm/kgの浸透圧を有し、好ましくは、260〜330mOsm/kgの浸透圧を有する。
【0038】
特定の実施形態では、フィナフロキサシンは、1つ以上の涙代替品を含む組成物で製剤化される。種々の涙代替品が当該技術分野において既知であり、これらは、グリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールなどのモノマーポリオール;ポリエチレングリコールなどのポリマーポリオール;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエステル;デキストラン70などのデキストラン;ポリビニルアルコールなどのビニルポリマー;およびカルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、ならびにカルボマー974Pなどのカルボマーが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の組成物は、コンタクトレンズまたは他の眼科用製品と一緒に使用されてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、0.5〜100cps、好ましくは0.5〜50cps、最も好ましくは1〜20cpsの粘度を有する。この比較的低い粘度は、この製剤が快適であり、ぼやけを生じることがなく、製造、移送および充填操作の間に容易に処理されることを確実にする。
【0040】
本明細書に記載される方法では、フィナフロキサシンを含む組成物の薬学的有効量の対象への投与は、当業者に既知の任意の方法によるものであってよい。例えば、この組成物は、局在的、局所的、皮内、病巣内、鼻腔内、経皮、経口、吸入により、注射により、直接的に、カテーテルを介して、または洗浄を介して標的細胞を浸す局在的潅流により投与されてもよい。
【0041】
特別な実施形態では、組成物は、眼球表面に局所的に投与される。眼投与に関しては、局所、結膜下、眼周囲、眼球後、テノン嚢下、眼球内、網膜下、強膜近傍、および脈絡膜上投与を含む目への全ての局所経路を使用できることが想定される。
【0042】
本発明の組成物はまた、抗炎症剤を含んでもよい。本発明の組成物は、1つ以上の抗炎症剤を含有してもよい。本発明で利用される抗炎症剤は、ステロイド性または非ステロイド性として幅広く分類される。好ましいステロイド性抗炎症剤は、グルココルチコイドである。眼、耳、または鼻における使用のためのグルココルチコイドとしては、デキサメタゾン、ロテプレドノール、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソニド、トリアムシノロン、およびブデゾニドが挙げられる。
【0043】
非ステロイド性抗炎症剤としては、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ケトロラック、スプロフェン、ネパフェナク、アムフェナク、インドメタシン、ナプロキセン、イブプロフェン、ブロムフェナク、ケトプロフェン、メクロフェナメート、ピロキシカム、スリンダック、メフェナム酸、ジフルシナール、オクサプロジン、トルメチン、フェノプロフェン、ベノキサプロフェン、ナブメトン、エトドラック、フェニルブタゾン、アスピリン、オキシフェンブタゾン、NCX−4016、HCT−1026、NCX−284、NCX−456、テノキシカムおよびカルプロフェンなどのプロスタグランジンHシンターゼ阻害薬(Cox IまたはCox I)(シクロオキシゲナーゼI型およびII型阻害薬とも呼ばれる);NS−398、vioxx、セレコキシブ、P54、エトドラック、L−804600およびS−33516などのシクロオキシゲナーゼII型選択的阻害薬;SR−27417、A−137491、ABT−299、アパファント、ベパファント、ミノパファント、E−6123、BN−50727、ヌパファント、およびモジパファントなどのPAF拮抗薬;アリフロ、トルバフィリン、ロリプラム、フィラミナスト、ピクラミラスト、シパムフィリン、CG−1088、V−11294A、CT−2820、PD−168787、CP−293121、DWP−205297、CP−220629、SH−636、BAY−19−8004およびロフルミラストなどのPDE IV阻害薬;NFカッパB転写因子の阻害薬などのサイトカイン産生の阻害薬;または当業者に既知の他の抗炎症剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の組成物中の抗炎症剤の濃度は、選択される薬剤(複数可)または治療される炎症のタイプに基づいて変化するであろう。この濃度は、これらの組織への組成物の局所適用後に、標的とした眼、耳または鼻組織において炎症を低減するのに十分である濃度であろう。このような量は、本明細書では「抗炎症有効量」と呼ぶ。本発明の組成物は、典型的には、約0.01〜約2.0w/v%、好ましくは0.05〜1.0w/v%、最も好ましくは0.05〜0.2w/v%の量で、1つ以上の抗炎症剤を含有するであろう。特に好ましい実施形態では、抗炎症化合物は、0.1w/v%の濃度のデキサメタゾンである。
【0045】
種々の耳投与技術も想定される。特別な実施形態では、組成物は耳道に直接送達されてもよい(例えば、局所的耳用滴剤または軟膏剤;耳内または耳に隣接して埋め込まれた徐放性装置)。局所投与経路としては、耳の筋肉内、中耳内空洞および蝸牛内の組成物のための注射経路が挙げられる。本発明の特定の組成物は、耳内インサートまたはインプラント装置に製剤化されてもよいことがさらに想定される。例えば、Tsue et al.,Amer.J.Otolaryngology,Vol.16(3):158−164,1995、Silverstein et al.,Ear Nose Throat,Vol.76:674−678,1997、Silverstein et al.,Otolaryngol Head Neck Surg,Vol.120:649−655,1999に記載されるように、鼓室への内視鏡補助の(鼓膜に切開部を設けるためのレーザー補助内視鏡を含む)注射により達成することができる。局所投与はまた、細針(EMG記録)を用いる鼓膜を通しての注射によって、鼓膜切開術の切開部を経て配置された留置カテーテルの使用を通して、および小さい耳管カテーテルを用いるエウスタキオ管を通しての注射もしくはインフュージョンによっても達成することができる。さらに、熟練した医師により、しかるべき考慮および注意を払うことによって、組成物で浸漬させたゲルフォームもしくは類似の吸収材および粘着性製品を中耳/内耳または隣接する構造に対して配置することで、組成物を内耳に投与することができる。例えば、カテーテルまたはヒトの対象の内耳を治療および/または診断する際に使用するために特別に設計された多機能装置を提供する米国特許第5,476,446号に例示されているものを介して、種々の他の装置が組成物を侵された耳の区画に送達するよう使用することができる。この目的のための他の装置については、米国特許第6,653,279号も参照されたい。
【0046】
本発明の組成物は、ボールミル粉砕などの既知のサイジング技術を用いて薬剤をサイジングすること含む、水性医薬懸濁組成物を調製する従来の方法によって調製することができる。例えば、フィナフロキサシンを含有するスラリー、チロキソポールなどのミリング剤およびミリングビーズが、所望の粒径の薬剤を得るのに十分な時間で混転される。次いで、サイジングビーズがスラリーから分離され、スラリーが残りの水性成分に加えられる。しかしながら、本発明の組成物は、特定の方法で製造されることが好ましい。好ましい方法によると、フィナフロキサシンが、純水中1%のチロキソポールとビーズとの混合物に先ず初めに加えられる。混合物を滅菌するために(およびフィナフロキサシンの多形A型への変換を確実にするために)、混合物をオートクレーブ内で加熱する。スラリーを無菌条件で摩砕し、10μmの平均体積よりも小さいフィナフロキサシン粒子を生成することが好ましい。ミリングビーズの除去後、フィナフロキサシンスラリーを懸濁液構成成分の残部と混合し、pHを調節する。
【0047】
鼻感染の治療のための本明細書に記載される組成物の投与は、当業者に既知の多数の方法を介してのものであり得る。例えば、このような組成物は、液滴形態でまたはエアゾール構造によって投与することができる。
【実施例】
【0048】
実施例
以下の実施例1〜7を、本発明の実施形態に従って調製した。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
実施例8−インビトロ抗菌効果試験
【0049】
pH5.8および7.3のフィナフロキサシン溶液組成物を、標準インビトロ抗菌感受性試験(参照により本明細書に組み込まれる、M07−08細菌のための希釈抗菌感受性試験の方法(Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria that Grow Aerobically);許可基準−第8版(2009年1月、 臨床検査標準委員会))を用いて、シプロフロキサシンおよびオフロキサシン組成物と比較した。耳および目の感染で通常見出される微生物を用いて、最小阻止濃度(MIC50)を決定した。MIC50は、混濁が存在しないことで目視により決定されるような、試験微生物の増殖を阻止する抗生物質の最低濃度であった。
【0050】
実験の結果を以下の表1〜5に示す。酸性pHでは、フィナフロキサシンは、一般的に、グラム陰性およびグラム陽性微生物に対して、双方ともに耳の感染の治療のために使用されるフルオロキノロン系のシプロフロキサシンおよびオフロキサシンよりも大きな活性を有した。低pH製剤が細菌および真菌の増殖の速度を低下させるために好ましいために、ならびに外耳道のpH環境が約pH6であるという事実のために、酸性条件下のより高い活性は、耳用製剤に重要である。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
実施例9−インビボ急性外耳炎(AOE)モデル
【0051】
フィナフロキサシン試験組成物(0.045〜0.3%の総フィナフロキサシン)を、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を用いて、急性外耳炎(AOE)のモルモットモデルで評価した。モルモットの耳をわずかに剥離し、緑膿菌(P.aeruginosa)の細菌培養物(10CFU)200μlを各耳に注入した。耳を生理食塩水で洗浄し、シュードモナス(Pseudomonas)単離培地にプレートした。表6は、これら試験の結果を要約する。一般的に、両耳の殺菌を達成するために、0.05w/v%のフィナフロキサシンの可溶性画分が必要とされた。組成物9、17および18は、0.05w/v%を超える可溶性画分を有したが、フィナフロキサシンより低い全濃度を有した(それぞれ、0.075、0.075、および0.1w/v%)。
【表6】
実施例10−安定性試験
【0052】
本発明の製剤の物理的および化学的安定特性に関して探査的安定性試験を行った。試験された製剤を下表7に列記する。
【表7】
【0053】
5.5のpHを有する製剤1は、2週間後のフィナフロキサシン塩酸塩の針様粒子の形成のために、安定性要件を満たさないことを決定した。しかしながら、それぞれ6.0のpHおよび6.2のpHを有する製剤2ならびに3は、試験中にフィナフロキサシン塩酸塩粒子状物質の形成を示さなかった。本発明の他の製剤(例えば、上記の実施例1)が試験され、低いpHで見られるフィナフロキサシン塩酸塩の粒子状物質の形成を示さなかった。
【0054】
本発明およびその実施形態を詳細に説明した。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書に記載されるいずれかのプロセス、製造、物質組成、化合物、手段、方法、および/またはステップの特定の実施形態に限定することを意図するものではない。本発明の主旨および/または本質的特性から逸脱することなく、種々の修正、置換、および変形を、開示された材料に対して行うことができる。したがって、当業者であれば、本明細書に記載される実施形態と実質的に同一の機能を実施するか、または実質的に同一の結果を達成する後の修正、置換、および/または変形が、本発明のこのような関連する実施形態に従って利用されてもよいことを容易に理解されるであろう。このため、以下の特許請求の範囲は、それらの範囲内にある本明細書に開示されるプロセス、製造、物質組成、化合物、手段、方法、および/またはステップの修正、置換、および変更を包含することを意図するものである。
図1
図2