【実施例】
【0037】
以下に実施例、比較例、製剤例および試験例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの例は単なる実施であって本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0038】
(加熱混練溶融による固体分散体の調製)
実施例1.固体分散体(メタクリル酸コポリマーS、0.5倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))500gとメタクリル酸コポリマーS(商品名:Eudragit S 100、エボニックデグサジャパン(株))250gをポリエチレン袋に入れ、数分間混合した。
この混合粉体を、口径2mmφのダイを装着した二軸エクストルーダー(KEX-25、(株)栗本鐵工所)を用いて混練部のバレル温度を100〜180℃に設定し、100〜150rpmの押し出し速度で成形処理を行い、棒状の成形体(固体分散体)を得た。
この成形体を室温で冷まし、粉砕機(パワーミルP−3S型、(株)ダルトン)及び粉砕機(ファインインパクトミル 100UPZ、ホソカワミクロン(株))を用いて微粉砕し、得られた微粒子を篩にかけて任意の粒度分布の試料とした。
【0039】
実施例2.固体分散体(メタクリル酸コポリマーS、1倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))500gとメタクリル酸コポリマーS(商品名:Eudragit S 100、エボニックデグサジャパン(株))500gをポリエチレン袋に入れ、数分間混合した。
この混合粉体を、口径2mmφのダイを装着した二軸エクストルーダー(KEX-25、(株)栗本鐵工所)を用いて混練部のバレル温度を100〜180℃に設定し、100〜150rpmの押し出し速度で成形処理を行い、棒状の成形体(固体分散体)を得た。
この成形体を室温で冷まし、粉砕機(パワーミルP−3S型,(株)ダルトン)及び粉砕機(ファインインパクトミル 100UPZ、ホソカワミクロン(株))を用いて微粉砕し、得られた微粒子を篩にかけて任意の粒度分布の試料とした。
【0040】
実施例3.固体分散体(メタクリル酸コポリマーS、2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))500gとメタクリル酸コポリマーS(商品名:Eudragit S 100、エボニックデグサジャパン(株))1000gをポリエチレン袋に入れ、数分間混合した。
この混合粉体を、口径2mmφのダイを装着した二軸エクストルーダー(KEX-25、(株)栗本鐵工所)を用いて混練部のバレル温度を100〜180℃に設定し、100〜150rpmの押し出し速度で成形処理を行い、棒状の成形体(固体分散体)を得た。
この成形体を室温で冷まし、粉砕機(パワーミルP−3S型,(株)ダルトン)及び粉砕機(ファインインパクトミル 100UPZ、ホソカワミクロン(株))を用いて微粉砕し、得られた微粒子を篩にかけて任意の粒度分布の試料とした。
【0041】
実施例4.固体分散体(メタクリル酸コポリマーS、3倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))500gとメタクリル酸コポリマーS(商品名:Eudragit S 100、エボニックデグサジャパン(株))1500gをポリエチレン袋に入れ、数分間混合した。
この混合粉体を、口径2mmφのダイを装着した二軸エクストルーダー(KEX-25、(株)栗本鐵工所)を用いて混練部のバレル温度を100〜200℃に設定し、100〜150rpmの押し出し速度で成形処理を行い、棒状の成形体(固体分散体)を得た。
この成形体を室温で冷まし、粉砕機(パワーミルP−3S型、(株)ダルトン)及び粉砕機(ファインインパクトミル 100UPZ、ホソカワミクロン(株))を用いて微粉砕し、得られた微粒子を篩にかけて任意の粒度分布の試料とした。
【0042】
実施例5.固体分散体(メタクリル酸コポリマーL、2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))500gとメタクリル酸コポリマーL(商品名:Eudragit L 100、エボニックデグサジャパン(株))1000gをポリエチレン袋に入れ、数分間混合した。
この混合粉体を、口径2mmφのダイを装着した二軸エクストルーダー(KEX-25、(株)栗本鐵工所)を用いて混練部のバレル温度を100〜190℃に設定し、100〜150rpmの押し出し速度で成形処理を行い、棒状の成形体(固体分散体)を得た。
この成形体を室温で冷まし、粉砕機(パワーミルP−3S型、(株)ダルトン)及び粉砕機(ファインインパクトミル 100UPZ、ホソカワミクロン(株))を用いて微粉砕し、得られた微粒子を篩にかけて任意の粒度分布の試料とした。
【0043】
比較例1.固体分散体(メタクリル酸コポリマーS 1倍量、ポリエチレングリコール 0.2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))500gとメタクリル酸コポリマーS(商品名:Eudragit S 100、エボニックデグサジャパン(株))500g及びポリエチレングリコール(マクロゴール6000、三洋化成工業(株))100gをポリエチレン袋に入れ、数分間混合した。
この混合粉体を、口径2mmφのダイを装着した二軸エクストルーダー(KEX-25、(株)栗本鐵工所)を用いて混練部のバレル温度を100〜170℃に設定し、100〜150rpmの押し出し速度で成形処理を行い、棒状の成形体(固体分散体)を得た。
この成形体を室温で冷まし、粉砕機(パワーミルP−3S型、(株)ダルトン)及び粉砕機(ファインインパクトミル 100UPZ、ホソカワミクロン(株))を用いて微粉砕し、得られた微粒子を篩にかけて任意の粒度分布の試料とした。
【0044】
比較例2.固体分散体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、1倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))500gとヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(商品名:信越AQOAT、品種:AS-HF、信越化学工業(株))500gをポリエチレン袋に入れ、数分間混合した。
この混合粉体を、口径2mmφのダイを装着した二軸エクストルーダー(KEX-25、(株)栗本鐵工所)を用いて混練部のバレル温度を100〜160℃に設定し、100〜150rpmの押し出し速度で成形処理を行い、棒状の成形体(固体分散体)を得た。
この成形体を室温で冷まし、粉砕機(パワーミルP−3S型,(株)ダルトン)及び粉砕機(ファインインパクトミル 100UPZ、ホソカワミクロン(株))を用いて微粉砕し、得られた微粒子を篩にかけて任意の粒度分布の試料とした。
【0045】
比較例3.固体分散体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))500gとヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(商品名:信越AQOAT、品種:AS-HF、信越化学工業(株))1000gをポリエチレン袋に入れ、数分間混合した。
この混合粉体を、口径2mmφのダイを装着した二軸エクストルーダー(KEX-25、(株)栗本鐵工所)を用いて混練部のバレル温度を100〜150℃に設定し、100〜150rpmの押し出し速度で成形処理を行い、棒状の成形体(固体分散体)を得た。
この成形体を室温で冷まし、粉砕機(パワーミルP−3S型,(株)ダルトン)及び粉砕機(ファインインパクトミル 100UPZ、ホソカワミクロン(株))を用いて微粉砕し、得られた微粒子を篩にかけて任意の粒度分布の試料とした。
【0046】
(噴霧乾燥による固体分散体の調製)
比較例4.固体分散体(ヒプロメロースフタル酸エステル 2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))5gとヒプロメロースフタル酸エステル(商品名:HPMCP、グレード:HP-50、信越化学工業(株))10gをジクロロメタンとエタノールの混合溶媒300g(ジクロロメタン/エタノール=8/2(w/w))に溶解させた。この溶液をスプレードライヤー(GS310、ヤマト科学(株))を用いて噴霧乾燥し、固体分散体を得た。噴霧条件は入口温度70℃、スプレー速度20g/分、風量0.4〜0.5m
3/分で行った。得られた固体分散体は残留溶媒を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で50℃/24時間、追加で乾燥し試料とした。
【0047】
比較例5.固体分散体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート 2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))5gとヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(商品名:信越AQOAT、グレード:AS-HF、信越化学工業(株))10gをジクロロメタンとエタノールの混合溶媒300g(ジクロロメタン/エタノール=8/2(w/w))に溶解させた。この溶液をスプレードライヤー(GS310、ヤマト科学(株))を用いて噴霧乾燥し、固体分散体を得た。噴霧条件は入口温度70℃、スプレー速度20g/分、風量0.4〜0.5m
3/分で行った。得られた固体分散体は残留溶媒を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で50℃/24時間、追加で乾燥し試料とした。
【0048】
比較例6.固体分散体(メタクリル酸コポリマーS 2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))5gとメタクリル酸コポリマーS(商品名:Eudragit S 100、エボニックデグサジャパン(株))10gをジクロロメタンとエタノールの混合溶媒800g(ジクロロメタン/エタノール=8/2(w/w))に溶解させた。この溶液をスプレードライヤー(GS310、ヤマト科学(株))を用いて噴霧乾燥し、固体分散体を得た。噴霧条件は入口温度70℃、スプレー速度20g/分、風量0.4〜0.5m
3/分で行った。得られた固体分散体は残留溶媒を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で50℃/24時間、追加で乾燥し試料とした。
【0049】
比較例7.固体分散体(ヒドロキシプロピルセルロース 2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))5gとヒドロキシプロピルセルロース(商品名:NISSO HPC、グレード: SL、日本曹達(株))10gをジクロロメタンとエタノールの混合溶媒300g(ジクロロメタン/エタノール=8/2(w/w))に溶解させた。この溶液をスプレードライヤー(GS310、ヤマト科学(株))を用いて噴霧乾燥し、固体分散体を得た。噴霧条件は入口温度70℃、スプレー速度20g/分、風量0.4〜0.5m
3/分で行った。得られた固体分散体は残留溶媒を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で50℃/24時間、追加で乾燥し試料とした。
【0050】
比較例8.固体分散体(ヒプロメロース 2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))5gとヒプロメロース(商品名:TC-5、グレード:TC-5E、信越化学工業(株))10gをジクロロメタンとエタノールの混合溶媒300g(ジクロロメタン/エタノール=8/2(w/w))に溶解させた。この溶液をスプレードライヤー(GS310、ヤマト科学(株))を用いて噴霧乾燥し、固体分散体を得た。噴霧条件は入口温度70℃、スプレー速度20g/分、風量0.4〜0.5m
3/分で行った。得られた固体分散体は残留溶媒を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で50℃/24時間、追加で乾燥し試料とした。
【0051】
比較例9.固体分散体(ポリビニルピロリドンK25 2倍量)
シロスタゾール(ハンマーミル粉砕末、大塚製薬(株))5gとポリビニルピロリドンK25(商品名:コリドン25、BASFジャパン(株))10gをジクロロメタンとエタノールの混合溶媒300g(ジクロロメタン/エタノール=8/2(w/w))に溶解させた。この溶液をスプレードライヤー(GS310、ヤマト科学(株))を用いて噴霧乾燥し、固体分散体を得た。噴霧条件は入口温度70℃、スプレー速度20g/分、風量0.4〜0.5m
3/分で行った。得られた固体分散体は残留溶媒を除くため、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)で50℃/24時間、追加で乾燥し試料とした。
【0052】
固体分散体を適切な方法により調製した時点で、医薬製剤(例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等)を、周知のさらなる加工技術を使用して調製することができる。医薬製剤は、適切な任意の経路により投与可能であるが、投与後の生体内でのシロスタゾールの結晶状態の変化を予測するため、固体分散体を水に懸濁させ結晶状態の変化を、粉末X線回折装置を用いて評価した。
【0053】
試験例1
実施例1〜5、比較例1〜3および比較例4〜9で得られた固体分散体の製造直後および水に懸濁させた時の結晶状態の変化を、粉末X線回折装置を用いて評価した。
【0054】
粉末X線回折の測定条件を以下に示す。
測定装置:X' Pert PRO MPD(スペクトリス(株))
光学系:集中光学系(透過法)
ゴニオメータ半径:240 mm
管電圧、管電流:45 kV、40 mA
入射側スリット:ソーラースリット ソーラー 0.04 rad
ダイバージェンススリット 1/2 deg
受光側スリット:ソーラースリット ラージソーラー 0.04 rad
アンチスキャッタースリット 5.5 mm
測定範囲:2θ 3〜40 deg
走査速度:1.11 deg/s
サンプリング間隔:0.02 deg/step
Wobbled scan:ステップ回数5、ステップサイズ0.02 deg
【0055】
上記、実施例1〜5および比較例1〜3で得られた微粉砕粒子(<150μm)について粉末X線回折パターンを測定した。
また、実施例1〜5および比較例1〜3で得られた微粉砕粒子(150μmメッシュ通過)を各々約2g量り取り、サンプル管に投入後、精製水を30mL加えて懸濁液を調製し、37℃で1時間、5時間および24時間振とうした。振とう後、サンプル管から懸濁試料を取り出し、余分な水分を除いた後に粉末X線回折パターンを測定し、結晶性の変化を観察した。
【0056】
測定結果を以下の表1に示す。
また、実施例3で製造された固体分散体(<150μm)、実施例5で製造された固体分散体(<150μm))、比較例3で製造された固体分散体(<150μm)における粉末X線回折の分析結果を
図1から
図3に示した。
加熱混練溶融によって得られた製造直後の各固体分散体においては、シロスタゾールは非晶質状態で存在しているが、水に懸濁すると、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートとの固体分散体はいずれも僅か1時間で急速に結晶化を起こした。これに対し、メタクリル酸コポリマーSおよびメタクリル酸コポリマーLをシロスタゾールに対して等量以上配合した固体分散体では24時間後も非晶質を維持していた。また、メタクリル酸コポリマーSの場合でもポリエチレングリコールを添加した場合には結晶化が促進されるという結果が得られており、可塑剤や吸水性の高い添加剤などは結晶化を促進させる傾向が確認されており、本発明の固体分散体には添加すべきではない。
【表1】
【0057】
上記、比較例4〜9で得られた各スプレードライ粉末について粉末X線回折パターンを測定した。また、上記比較例4〜9で得られた各スプレードライ粉末を約2g量り取り、サンプル管に投入後、精製水を約30mL加えて懸濁させ、37℃で1時間振とうさせた。振とう後、サンプル管から懸濁試料を取り出し、余分な水分を除いた後に粉末X線回折パターンを測定し、結晶性の変化を観察した。
粉末X線回折の測定結果を以下の表2に示す。噴霧乾燥法によって調製された高分子とシロスタゾールの固体分散体は水中に懸濁させることにより急速に結晶化を起こした。比較例4、5は僅か1時間後に結晶化が認められ、比較例6においても僅かではあるが結晶化が認められた。比較例7、8、9では懸濁液調製直後に結晶化が確認された。
【表2】
【0058】
試験例2
実施例3で得られた固体分散体の微粒子(<150μm)からのシロスタゾール溶出特性を、試験液として以下の6種類の試験液を用いた溶出試験を行い評価した。
1)0.3%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(0.30% SLS)
2)pH1.2の日本薬局方崩壊試験液第一液にラウリル硫酸ナトリウムを0.2%溶解した溶液
3)pH5.0のMcIlvaine緩衝液にラウリル硫酸ナトリウムを0.2%溶解した溶液
4)pH6.8のMcIlvaine緩衝液
5)pH6.8のMcIlvaine緩衝液にラウリル硫酸ナトリウムを0.2%溶解した溶液
6)pH7.4のMcIlvaine緩衝液
【0059】
溶出試験は、日本薬局方溶出試験第二法(パドル法)にて実施した。試料としてはシロスタゾールとして100mg相当量の固体分散体を乳糖で5倍散し、シンカーは使用せず、パドル回転速度100rpmで試験した。サンプリングポイント毎に分光光度計(UV1200、(株)島津製作所)により溶液中のシロスタゾール濃度を測定した。
結果を
図4に示した。
水(0.3%SLS)、pH1.2(+0.2%SLS)およびpH5.0(+0.2%SLS)では、シロスタゾールはほとんど溶出しなかった。消化管下部のpHを想定した試験液であるpH6.8(+0.2%SLS)では速やかな溶出を示すことから、実際に人に投与した場合でも消化管下部では速やかに溶解し、シロスタゾールを放出することが予測された。
【0060】
試験例3
試験液としてpH7.4のMcIlvaine緩衝液を用い、試験例2と同様の試験方法により、中性領域における固体分散体からのシロスタゾール溶出特性を評価した。
試験試料として以下を用いた。
1)シロスタゾール結晶ジェットミル粉砕末(JM、ジェットミル粉砕機(スパイラルジェットル50AS、ホソカワミクロン(株))で粉砕、以下同じ)
2)実施例1で得られた固体分散体の微粒子(<150μm)
3)実施例2で得られた固体分散体の微粒子(<150μm)
4)実施例3で得られた固体分散体の微粒子(<150μm)
【0061】
結果を
図5に示した。
シロスタゾールとメタクリル酸コポリマーSを1:2の割合で混合し加熱混練溶融法により製造された固体分散体(実施例3、<150μm)からのシロスタゾールの溶出は、シロスタゾール結晶ジェットミル粉砕末に比べて5倍以上高い数値を示した。
【0062】
試験例4
試験液としてpH7.4のMcIlvaine緩衝液を用い、上記試験例2と同様の試験方法により、中性領域における固体分散体からのシロスタゾール溶出特性を評価した。
試験試料として以下を用いた。
1)シロスタゾール結晶ジェットミル粉砕末
2)実施例3で得られた固体分散体の微粒子(<150μm)
3)実施例3で得られた固体分散体の微粒子(250〜500μm)
【0063】
結果を
図6に示した。
固体分散体を粉砕した微粒子の粒子径により溶出速度がコントロールできることが示された。
【0064】
製剤例1
固体分散体微粒子、ヒプロメロース、軽質無水ケイ酸をポリエチレン袋で混合後、ステアリン酸マグネシウムを添加して更に混合する。混合粉末はカプレット(13.6×6.8 mm)の臼杵を付けたロータリー打錠機(クリーンプレス (株)菊水製作所)を用い、打錠圧1800kgで打錠し、1錠あたり100mgのシロスタゾールを含有するカプレット錠を得た。
【0065】
製剤例2
固体分散体微粒子、ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸をポリエチレン袋で混合後、ステアリン酸マグネシウムを添加して更に混合する。混合粉末はカプレット(13.6×6.8 mm)の臼杵を付けたロータリー打錠機(クリーンプレス (株)菊水製作所)を用い、打錠圧1800kgで打錠し、1錠あたり100mgのシロスタゾールを含有するカプレット錠を得た。
【0066】
製剤例3
固体分散体微粒子、ポリエチレンオキサイド、軽質無水ケイ酸をポリエチレン袋で混合後、フマル酸ステアリルナトリウムを添加して更に混合する。混合粉末はカプレット(13.6×6.8 mm)の臼杵を付けたロータリー打錠機(クリーンプレス (株)菊水製作所)を用い、打錠圧1800kgで打錠し、1錠あたり100mgのシロスタゾールを含有するカプレット錠を得た。
【0067】
製剤例4
固体分散体微粒子、ポリエチレンオキサイド、軽質無水ケイ酸をポリエチレン袋で混合後、フマル酸ステアリルナトリウムを添加して更に混合する。混合粉末はカプレット(13.6×6.8 mm)の臼杵を付けたロータリー打錠機(クリーンプレス (株)菊水製作所)を用い、打錠圧1800kgで打錠し、1錠あたり100mgのシロスタゾールを含有するカプレット錠を得た。
【0068】
製剤例5
固体分散体微粒子、ポリエチレンオキサイド、軽質無水ケイ酸をポリエチレン袋で混合後、ステアリン酸マグネシウムを添加して更に混合する。混合粉末はカプレット(13.6×6.8 mm)の臼杵を付けたロータリー打錠機(クリーンプレス (株)菊水製作所)を用い、打錠圧1800kgで打錠し、1錠あたり100mgのシロスタゾールを含有するカプレット錠を得た。
【0069】
製剤例6
一層目の打錠用粉末は、固体分散体微粒子、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール6000、軽質無水ケイ酸をドラム混合機で混合後、ステアリン酸マグネシウムを添加し、更に混合して得た。二層目の打錠用顆粒は、シロスタゾール、微結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(粉末添加)を攪拌造粒機(ニーダー NSK-350SR、岡田精工(株))に投入後、ヒドロキシプロピルセルロースの10%溶液を結合液として練合造粒後、フローコーター(FLO-5、フロイント産業(株))で乾燥した後にパワーミル(P−3S型,(株)ダルトン)で整粒し、その後ステアリン酸マグネシウムを添加して更に混合して得た。
打錠はカプレット(13.6×6.8 mm)の臼杵を付けた二層錠打錠機(PICCOLA BI-LAYER、RIVA)を用いた。一層目の顆粒を臼に充填後軽く圧縮後,連続して同じ臼中に二層目の顆粒を充填し、打錠圧約2000kgで圧縮成形して1錠あたり100mgのシロスタゾールを含有する二層錠を得た。
【0070】
製剤例7
一層目の打錠用粉末は、固体分散体微粒子、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルセルロース、ジブチルヒドロキシトルエン、軽質無水ケイ酸をドラム混合機で混合後、フマル酸ステアリルナトリウムを添加して更に混合して得た。二層目の打錠用顆粒は、シロスタゾール、微結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(粉末添加)を攪拌造粒機(ニーダー NSK-350SR、岡田精工(株))に投入後、ヒドロキシプロピルセルロースの10%溶液を結合剤として練合造粒後、フローコーター(FLO-5、フロイント産業(株))で乾燥した後にパワーミル(P−3S型,(株)ダルトン)で整粒し、その後ステアリン酸マグネシウムを添加して更に混合して得た。
打錠はカプレット(13.6×6.8 mm)の臼杵を付けた二層錠打錠機(PICCOLA BI-LAYER、RIVA)を用いた。一層目の顆粒を臼に充填後軽く圧縮後,連続して同じ臼中に二層目の顆粒を充填し、打錠圧約2000kgで圧縮成形して1錠あたり100mgのシロスタゾールを含有する二層錠を得た。
【0071】
製剤例8
固体分散体微粒子、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルセルロース、ジブチルヒドロキシトルエン、軽質無水ケイ酸をドラム混合機で混合後、フマル酸ステアリルナトリウムを添加して更に混合した。混合粉末はカプレット(13.6×6.8 mm)の臼杵を付けたロータリー打錠機(クリーンプレス 菊水製作所)を用い、打錠圧1800kgで打錠し、1錠あたり100mgのシロスタゾールを含有するカプレット錠を得た。
【0072】
試験例5:シロスタゾール固体分散体ミニブタ投与(in vivoにおける効果)
摂餌終了1時間後のミニブタ(約9月齢、体重15−24kg、NIBS、日生研(株))に、実施例2、3及び比較例3で得られた固体分散体をシロスタゾールとして200mg(実施例2は固体分散体として400mg、実施例3及び比較例3は固体分散体として600mg)をゼラチンカプセルに入れ、強制経口投与した。投与後直ちに注射用水50mLをゾンデで強制経口投与した。
対照として、同様にシロスタゾール錠(製品名:プレタール錠)100mgを投与した。
血液は前大静脈洞に挿入したカテーテルより採取した。採血時点は、投与前、投与後0.5、1、2、3、4、6、8、12、16、及び24時間とし(プレタール錠では投与後16時間の採血は行わなかった。)、採血量は約1.5mLとした(n=4)。得られた血液を、15分間3000rpmで遠心分離し、血漿を得た。この血漿中のシロスタゾール濃度をLC−MSにより測定した。得られた血漿中濃度推移から最大血漿中濃度(Cmax)及び血漿中濃度曲線下面積(AUC)、最高血漿中濃度到達時間(Tmax)、平均滞留時間(MRT
last)を算出した。
【0073】
試験例5の結果を表3及び
図7に示した。
実施例2および3のメタクリル酸コポリマーSを用いたシロスタゾールの固体分散体ではプレタール錠に比べ、Cmax、AUCともに高い吸収改善効果を示した。また、Tmax、MRT
lastはともにプレタール錠に比べて顕著な上昇が見られたことから、小腸下部及び大腸での吸収改善効果が示された。
以上の結果より、シロスタゾールが非晶質状態で保持されているメタクリル酸コポリマーの固体分散体は、溶解性の改善に伴い、小腸下部及び大腸での吸収性が改善されることが明らかとなった。
【表3】
【0074】
試験例6:シロスタゾール固体分散体製剤イヌ投与(in vivoにおける効果)
雄性ビーグル犬(約30月齢、体重8.0−12.0kg、ノーサンビーグル、(株)ナルク)に、製剤例6のハイドロゲル二層錠を強制経口投与し投与直後に、0.1Nの塩酸40mLを強制投与した。投薬30分前にCD5(オリエンタル酵母工業(株))を約50g給餌し、最後の採血まで絶食とした。対照として、プレタール錠(製品名)100mgを使用した。
採取時点は、投与前、投与後0.5、1、2、3、4、6、8、10、12、及び24時間とし(プレタール錠では投与後12時間以降の採血は行わなかった。)、試料採取は約1mLとした(n=6)。得られた血液を10分間3000rpmで遠心分離し、血清を得た。この血清中のシロスタゾール濃度をLC−MSにより測定した。
得られた血清中濃度推移から最大血清中濃度(C
max)及び血清中濃度曲線下面積(AUC)、最高血漿中濃度到達時間(T
max)、平均滞留時間(MRT
last)を算出した。
試験例6の結果を表4及び
図8に示した。
【表4】
【0075】
試験例7:シロスタゾール固体分散体製剤イヌ投与(食餌の影響)
雄性ビーグル犬(約30月齢、体重8.0−12.0kg、ノーサンビーグル、(株)ナルク)に、固体分散体を強制経口投与し、食餌の影響を評価した。実施例3で調製した固体分散体(250〜500μm)をシロスタゾールとして100mg相当量量り取り、等量の乳糖で倍散後イヌ用カプセルに充填し投与した。投与直後に、0.1Nの塩酸40mLを強制投与した。
絶食条件下では投薬前約18時間から最後の採血まで絶食とした。
摂食条件下では投薬30分前にCD5(オリエンタル酵母工業(株))を約50g給餌し、最後の採血まで絶食とした。
採取時点は、投与前、投与後0.5、1、2、3、4、6、8、10、12、及び24時間とし、試料採取は約1mLとした(n=6)。得られた血液を10分間3000rpmで遠心分離し、血清を得た。この血清中のシロスタゾール濃度をLC−MSにより測定した。
得られた血清中濃度推移から最大血清中濃度(C
max)及び血清中濃度曲線下面積(AUC)、最高血漿中濃度到達時間(T
max)、平均滞留時間(MRT
last)を算出した。
試験例7の結果を表5に示した。
【表5】
【0076】
試験例8
製剤例6、7、8で得られた錠剤およびプレタール錠100mgからのシロスタゾール溶出特性を評価した。
試験液としてpH6.8のリン酸緩衝液にセチルトリメチルアンモニウムブロミドを0.3%加えた溶液を用い、日本薬局方溶出試験第二法(パドル法)にて実施した。各錠剤をシンカーに入れ、パドル回転速度150rpmで試験を行った。サンプリングポイント毎に分光光度計(UV1200、(株)島津製作所)により溶液中のシロスタゾール濃度を測定した。
【0077】
結果を
図9に示した。
製剤例6、7、8の錠剤は、プレタール錠100mgに比べ、徐放性を示す溶出プロファイルを示した。