(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転体が、前記回転駆動部からの駆動力が伝達される硬性の円筒部材と、該円筒部材の外側に設けられた軟性の弾性部材とから構成されている請求項1に記載の医療器具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に開示されている医療器具では、湾曲部を湾曲させて、挿入部の先端部を首振りさせることにより観察位置や処置位置の向きを変えている。しかしながら、先端部の向きを変えるだけでは、心膜腔内のように心臓側と心膜側の両方向から圧力が加えられる空間では、意図した位置に挿入部の先端部を誘導することが難しいという不都合がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、挿入部の操作性を向上させて、意図した位置に挿入部の先端部を誘導することができる医療器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、体腔内に
挿入方向に挿入される挿入部と、前記挿入部の外周面に設けられ、前記挿入部の
前記挿入方向の中心軸線に
平行に回転軸線が配置され
、体腔内壁に接触する接触面積を有する回転体と、該回転体を前記回転軸線回りに回転させる回転駆動部とを備え、該回転駆動部が前記回転体を前記回転軸線回りに回転させることにより
前記体腔内壁
駆動力を伝達して、前記挿入部を
前記体腔内壁に
沿って前記挿入部の
前記中心軸線に直交する方向へ移動させ
、前記回転体の回転軸線と前記挿入部の中心軸線とが偏心位置に配置されている医療器具を採用する。
【0008】
本発明によれば、例えば心膜腔内等の体腔内に挿入部を挿入すると、挿入部の外周面に設けられた回転体が、心臓と心膜のいずれか一方に接触する。この状態において回転駆動部を動作させると、回転体が、挿入部の軸線に沿う方向に配置された回転軸線回りに回転される。これにより、心臓と心膜のいずれか一方に駆動力が伝達され、挿入部は軸線に直交する方向に移動する。
【0009】
上記のように、本発明によれば、挿入部を軸線に直交する方向に移動することができるため、例えば心膜腔内等の体腔内において、意図した位置に挿入部の先端部を誘導することができる。
【0010】
上記発明において、前記回転体が、前記挿入部の外周面に一部が露出して設けられていることとしてもよい。
このように構成することで、回転体は、挿入部の外周面に一部のみが露出しているため、例えば心膜腔内のように心臓側と心膜側の両方向から圧力が加えられる空間においても、心臓と心膜の両方に接触して反対方向の駆動力が伝達されてしまうことを防止することができ、効率的に挿入部を軸線に直交する方向に移動することができる。
【0011】
上記発明において、前記挿入部に設けられ、該挿入部を湾曲させる湾曲部を備えていることとしてもよい。
このように構成することで、回転体による挿入部の軸線に直交する方向への移動だけでなく、湾曲部を湾曲させることによって挿入部を移動させることができる。これにより、挿入部の移動範囲を広げるとともに、挿入部の操作性を向上することができる。
【0012】
上記発明において、前記挿入部の前記湾曲部よりも先端側に硬性部が設けられ、前記回転体が、前記硬性部に設けられていることとしてもよい。
このように構成することで、挿入部の先端部にかかる外力の影響を小さくすることができ、より確実に意図した位置に挿入部の先端部を誘導することができる。また、挿入部先端側の硬性部に回転体を設けることで、挿入部の先端部の位置の微調整を行うことができる。
【0013】
上記発明において、前記挿入部の前記硬性部に前記回転体が複数設けられていることとしてもよい。
このように構成することで、例えば心膜腔内等の体腔内に挿入部を挿入した際に、心臓と心膜の両方に回転体を接触させることができる。これにより、心臓と心膜の両方に対して回転体の駆動力を加えることができるため、より確実に意図した位置に挿入部を誘導することができる。
【0014】
上記発明において、複数の前記回転体が前記挿入部の軸対称に配置されていることとしてもよい。
このように構成することで、いずれかの回転体を体腔内壁に確実に接触させることができ、効率的に挿入部を軸線に直交する方向に移動することができる。
【0015】
上記発明において、前記挿入部の前記湾曲部よりも基端側に軟性部が設けられ、前記回転体が、前記軟性部に設けられていることとしてもよい。
挿入部先端側の硬性部と軟性部の両方に回転体を設けることにより、より複雑な操作を可能とし、心膜腔内で誘導可能な範囲をさらに広くすることができる。
【0016】
また、回転体を、硬性部には設けずに、軟性部のみに設けることとしてもよい。ここで、例えば挿入部が心臓の周囲を半周から一周以上巻き付いている場合、挿入部全体が湾曲しているためにテンションが掛かり、挿入部の湾曲機構は可動範囲が小さくなってしまう。このような場合に、心臓に接するような軟性部に回転体を設けることにより、挿入部の誘導範囲を広げることができる。
【0017】
上記発明において、前記回転体が、前記挿入部の外周面よりも半径方向外方に張り出していることとしてもよい。
このように構成することで、回転体を体腔内壁により確実に接触させることができ、回転体の駆動力を体腔内壁に効率的に伝えて、挿入部を軸線に直交する方向に移動することができる。
【0018】
上記発明において、前記挿入部の外周面と前記回転体の外周面との間に形成された傾斜面を備えることとしてもよい。
このように構成することで、挿入部を軸線方向に動かす際の抵抗を小さくするとともに、回転体が体腔内壁に引っ掛かってしまうことを防止することができ、よりスムーズに挿入部を軸線方向に動かすことが可能となる。
【0019】
上記発明において、前記回転体の回転軸線と前記挿入部の中心軸線とが偏心位置に配置されている
。
このように構成することで、回転体の一部のみを挿入部の外周面よりも半径方向外方に張り出すように容易に構成することができ、それによって回転体の駆動力を体腔内壁に効率的に伝えて、挿入部を軸線に直交する方向に移動することができる。
【0020】
上記発明において、前記回転体の露出部分が、前記挿入部の周方向において、前記挿入部の外周の略半分であることとしてもよい。
回転体の露出部分が挿入部の外周の半分以上であると、回転体が、例えば心膜と心臓といった対向する体腔内壁の両方に同時に接触することとなる。この状態では、回転体の駆動力を挿入部の移動に効率的に使うことができないため、望ましくない。また、回転体と体腔内壁との接触面積が少ないほど、体腔内壁に伝わる駆動力が小さくなる。したがって、回転体の露出部分が挿入部の外周の半分程度とすることで、効率よく回転体の駆動力を挿入部の移動に使うことができる。
【0021】
上記発明において、前記回転体が、前記回転駆動部からの駆動力が伝達される硬性の円筒部材と、該円筒部材の外側に設けられた軟性の弾性部材とから構成されていることとしてもよい。
このように構成することで、硬性の円筒部材で回転駆動部からの駆動力を確実に受け取るとともに、外側に設けられた弾性部材により体腔内壁に傷を付けることなく駆動力を伝えることができる。
【0022】
上記発明において、前記回転体が、軟性の弾性部材から構成された無限軌道帯であることとしてもよい。
このように構成することで、挿入部における回転体の占める断面積をより小さくすることが可能となり、挿入部をより細径化することができる。
【0023】
上記発明において、前記回転体の外周面に突起部が設けられていることとしてもよい。
このように構成することで、回転体と体腔内壁との摩擦抵抗を大きくすることができ、回転体の駆動力を効率的に体腔内壁に伝達することができる。
【0024】
上記発明において、前記突起部が、前記挿入部の軸線に沿う方向に形成されていることとしてもよい。
このように構成することで、挿入部を軸線方向に移動させるときには(挿入時)、体腔内壁との摩擦抵抗を小さくして、スムーズな挿入を行うことができる。また、回転体を回転させて挿入部を軸線に直交する方向に移動させるときには、体腔内壁との摩擦抵抗を大きくして回転体の駆動力を効率的に体腔内壁に伝達して、挿入部を移動させることができる。
【0025】
上記発明において、前記挿入部内に軸線方向に配置され、前記回転体の回転軸に接続されたワイヤを備えることとしてもよい。
このように構成することで、回転駆動部からの駆動力をワイヤを介して回転体に確実に伝達することができる。
【0026】
上記発明において、前記挿入部の基端側に配置され、前記ワイヤを軸線回りに回転させる回転操作部を備えることとしてもよい。
このように構成することで、挿入部の基端側に配置されたダイアル等の回転操作部を操作することにより、ワイヤを軸線回りに回転させ、該ワイヤに接続された回転体を軸線回りに回転させることができる。このように非常に単純な構成で挿入部を軸線に直交する方向に移動させることができ、直感的な操作が可能なので操作ミスを防止することができる。
【0027】
上記発明において、前記挿入部が扁平形状を有し、前記挿入部の横断面の短軸方向に回転体が露出していることとしてもよい。
挿入部を扁平形状に構成することで、挿入部の横断面の長軸方向が、体腔内壁と平行となりやすくすることができる。この状態において、挿入部の横断面の短軸方向に回転体を露出させることで、確実に体腔内壁に回転体を接触させて駆動力を伝達することができる。
【0028】
上記発明において、前記回転体が、前記挿入部の半径方向外方に膨張することとしてもよい。
このように構成することで、回転体を収縮させることにより、挿入部を体腔内にスムーズに挿入することができる。また、体腔内において回転体を膨張させることで、回転体を体腔内壁により確実に接触させることができ、回転体の駆動力を体腔内壁に効率的に伝えて、挿入部を軸線に直交する方向に移動することができる。
【0029】
上記発明において、前記回転駆動部が、前記回転体に駆動力を伝達する歯数の異なる複数のギアを備えることとしてもよい。
このように構成することで、目的に応じて歯数の異なる複数のギアを使い分けて挿入部を移動することができる。具体的には、歯数の大きなギアにより回転体に駆動力を伝達することにより、挿入部を軸線に直交する方向に迅速に移動することができる。また、歯数の小さなギアにより回転体に駆動力を伝達することにより、挿入部を軸線に直交する方向に精密に移動することができる。
【0030】
上記発明において、該挿入部の先端に設けられ、体腔内の画像を取得する撮像部を備えることとしてもよい。
このように構成することで、意図した位置に挿入部の先端部を誘導して、撮像部により体腔内の画像を取得し、所望の観察対象の内視鏡観察を行うことができる。
【0031】
上記発明において、前記撮像部により取得した画像を表示する表示部を備え、該表示部が、前記撮像部により取得した画像において前記回転体の位置を示すマーキングを表示することとしてもよい。
このように構成することで、表示部に表示された画像において回転体の位置を視認することができ、体腔内壁に回転体を確実に接触させて、意図した位置に挿入部の先端部を誘導することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、挿入部の操作性を向上させて、意図した位置に挿入部の先端部を誘導することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る内視鏡1は、体腔内に挿入される細長い挿入部10と、挿入部10の動作を操作する回転操作部14と、挿入部10により取得された画像を表示する表示部(図示略)とを備えている。
【0035】
挿入部10は、先端側から順に、硬性材料で構成された硬性部45と、後述する湾曲操作部をユーザが操作することによって3次元的に湾曲される湾曲部46と、軟性材料で構成された長尺な軟性部47とが連続して一体的に形成されている。また、軟性部47の基端部は、例えばダイアル等の回転操作部14に接続されている。
【0036】
挿入部10の硬性部45の外周面には、一部が露出して設けられ、挿入部10の軸線(
図4における符号L0)に沿う方向に回転軸線(
図4における符号L1)が配置された回転体11が設けられている。
また、挿入部10には、
図2に示すように、回転体11を回転軸線回りに回転させる回転駆動部20が設けられている。
【0037】
挿入部10の先端面には、
図4に示すように、図示しない照明装置からの照明光を導いて観察領域に照射するライトガイド13aと、ライトガイド13aにより照明された観察領域の像を取得する例えばCCD等のカメラ(撮像部)12と、鉗子等の処置具が挿通される鉗子チャネル13bとが設けられている。
【0038】
ライトガイド13aは、挿入部10の軸線方向に挿通され、基端側に配置された照明装置(図示略)に接続されている。鉗子チャネル13bは、挿入部10の軸線方向に形成されており、基端側に配置された導入口(図示略)から導入された処置具を導出するようになっている。カメラ12からの信号線は、挿入部10の軸線方向に挿通され、基端側に配置された制御部(図示略)および表示部(図示略)に接続されている。
【0039】
回転駆動部20は、
図2に示すように、回転操作部14の回転軸に接続されたギア21と、ギア21に嵌合するギア22と、ギア22の回転軸に接続された駆動伝達ワイヤ23と、駆動伝達ワイヤ23の先端側に配置された駆動伝達ギア24とを備えている。
【0040】
ギア21は、その回転軸線が挿入部10の軸線に直交する方向に配置されている。
ギア22は、その回転軸線が挿入部10の軸線に沿う方向に配置されている。ギア21およびギア22は、それぞれの回転軸線に対して45°の角度で形成された嵌合面を有している。
【0041】
すなわち、ギア21とギア22とは、互いに直交する方向に回転軸線が配置されており、互いに嵌合している。このような構成を有することで、ギア21の回転軸線(挿入部10の軸線に直交する回転軸線)回りの回転を、ギア22の回転軸線(挿入部10の軸線に沿う回転軸線)回りの回転に変換するようになっている。
【0042】
駆動伝達ワイヤ23は、挿入部10の軸線に沿う方向に配置されており、基端側に接続されたギア22の回転を、先端側に接続された駆動伝達ギア24に伝達するようになっている。
駆動伝達ギア24は、
図4に示すように、その外周面が、回転体11の円筒部材15の内周面に嵌合するようになっている。
【0043】
上記構成を有する回転駆動部20によれば、回転操作部14を回転させることにより、その駆動力がギア21からギア22に伝達され、挿入部10の軸線に沿う回転軸線回りの回転に変換される。この回転は、駆動伝達ワイヤ23により駆動伝達ギア24に伝達され、回転体11の円筒部材15を回転させる。これにより、回転体11に接触する体腔内壁に対して駆動力が加えられ、
図3に示すように、体腔内壁の表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に挿入部10を移動することができる。
【0044】
回転体11は、
図4に示すように、回転駆動部20からの駆動力が伝達される硬性の円筒部材15と、円筒部材15の外側に設けられた軟性の弾性部材16とから構成されている。円筒部材15の内周面には、駆動伝達ギア24に嵌合する歯が形成されている。
【0045】
このように構成することで、硬性の円筒部材15で確実に回転駆動部20からの駆動力を受け取るとともに、外側に設けられた弾性部材16により体腔内壁に傷を付けることなく駆動力を伝えることができる。これにより、体腔内壁の表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に挿入部10を移動させ、意図した位置に挿入部10の先端部を誘導することができる。
【0046】
ここで、回転体11は、挿入部10の硬性部45に設けられている。
このように構成することで、挿入部10の先端部にかかる外力の影響を小さくすることができ、より確実に意図した位置に挿入部10の先端部を誘導することができる。また、挿入部10先端側の硬性部45に回転体11を設けることで、挿入部10の先端部の位置の微調整を行うことができる。
【0047】
また、回転体11は、
図4に示すように、挿入部10の外周面よりも半径方向外方(
図4における矢印Yに示す方向)に張り出している。
このように構成することで、回転体11を体腔内壁により確実に接触させることができ、回転体11の駆動力を体腔内壁に効率的に伝えて、挿入部10を軸線に直交する方向に移動することができる。
【0048】
より具体的には、回転体11の回転軸線と挿入部10の中心軸線とが偏心位置に配置されている。具体的には、
図4に示すように、挿入部10の中心軸線は符号L0で示されており、回転体11の回転軸線は符号L1で示されており、これら軸線は偏心位置に配置されている。
このように構成することで、回転体11の一部のみを挿入部10の外周面よりも半径方向外方に張り出すように容易に構成することができ、それによって回転体11の駆動力を体腔内壁に効率的に伝えて、挿入部10を軸線に直交する方向に移動することができる。
【0049】
さらに、回転体11の露出部分が、挿入部10の周方向において、挿入部10の外周の略半分となるように構成されている。
回転体11の露出部分が挿入部10の外周の半分以上であると、回転体11が、例えば心膜と心臓といった対向する体腔内壁の両方に常に同時に接触することとなる。この状態では、回転体11の駆動力を挿入部10の移動に効率的に使うことができないため、望ましくない。また、回転体11と体腔内壁との接触面積が少ないほど、体腔内壁に伝わる駆動力が小さくなる。したがって、回転体11の露出部分が挿入部10の外周の半分程度とすることで、効率よく回転体11の駆動力を挿入部10の移動に使うことができる。
【0050】
軟性部47の基端部には、例えば操作レバー等の湾曲部46の湾曲動作を操作する湾曲操作部(図示略)を設けることとしてもよい。この湾曲操作部は、ユーザにより操作レバーが操作されることによって、挿入部10内に挿通された湾曲操作ワイヤ(図示略)を長手方向に引っ張るように動作させ、湾曲部46を3次元方向に湾曲動作させるようになっている。より具体的には、湾曲操作部は、ユーザにより例えば操作レバーが傾けられた方向に、その傾き角度に応じた角度で湾曲部46を湾曲させるようになっている。
【0051】
このように構成することで、回転体11によって挿入部10の軸線に直交する方向へ移動させるだけでなく、湾曲部46を湾曲させることによって挿入部10を移動させることができる。これにより、挿入部10の移動範囲を広げるとともに、挿入部10の操作性を向上することができる。
【0052】
上記構成を有する内視鏡1の挿入部10の作用について以下に説明する。ここでは、
図5から
図7に示すように、本実施形態に係る内視鏡1の挿入部10を、心臓Aと心膜Bとの間の心膜腔内に挿入した際の動作について以下に説明する。
【0053】
本実施形態に係る内視鏡1の挿入部10を心膜腔内に挿入すると、挿入部10の外周面に一部が露出して設けられた回転体11が、心臓Aと心膜Bのいずれか一方に接触する。この状態において回転駆動部20を動作させると、回転体11が、挿入部10の軸線に沿う方向に配置された回転軸線回りに回転される。これにより、心臓Aと心膜Bのいずれか一方に駆動力が伝達され、挿入部10は、心臓Aまたは心膜Bの表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に移動する。
【0054】
ここで比較例として、従来の内視鏡のように、内視鏡1に湾曲動作のみをさせた場合の動作について以下に説明する。
この場合には、
図5に示すように、湾曲部を湾曲させて、挿入部の先端部を首振りさせることにより観察位置や処置位置の向きを変化させる。しかしながら、先端部の向きを変えるだけでは、心膜腔内のように心臓A側と心膜B側の両方向から圧力が加えられる空間では、意図した位置に挿入部の先端部を誘導することが難しい。
【0055】
この場合において、本実施形態に係る内視鏡1によれば、
図6に示すように、挿入部10を、挿入部10の軸線に直交する方向に移動することができるため、心膜腔内のように心臓A側と心膜B側の両方向から圧力が加えられる空間においても、意図した位置に挿入部10の先端部を誘導することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る内視鏡1において、回転体11は、挿入部10の外周面に一部のみが露出しているため、心臓Aと心膜Bの両方に接触して反対方向の駆動力が伝達されてしまうことを防止することができ、効率的に挿入部10を心臓Aまたは心膜Bの表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に移動することができる。
【0057】
また、
図7に示すように、本実施形態に係る内視鏡1において、回転体11よる挿入部10の軸線に直交する方向の移動動作と、湾曲部46による湾曲動作を併用することとしてもよい。
このようにすることで、回転体11による挿入部10の軸線に直交する方向への移動だけでなく、湾曲部46を湾曲させることによって挿入部10を移動させることができる。これにより、挿入部10の移動範囲を広げるとともに、挿入部10の操作性を向上することができる。
【0058】
(第1の変形例)
なお、本実施形態に係る内視鏡1の第1の変形例として、
図8および
図9に示すように、回転駆動部20が、回転体11に駆動力を伝達する歯数の異なる複数のギアと、これらギアを切り替えるギア切替機構(図示略)とを備えることとしてもよい。
【0059】
本変形例に係る内視鏡1において、回転駆動部20は、
図9に示すように、回転操作部14aの回転軸に接続された歯数の大きなギア21aと、回転操作部14bの回転軸に接続された歯数の小さなギア21bと、これらギア21a,21bに嵌合するギア22と、ギア22の回転軸に接続された駆動伝達ワイヤ23と、駆動伝達ワイヤ23の先端側に配置された駆動伝達ギア24とを備えている。
【0060】
このように構成することで、用途に応じて歯数の異なるこれらギア21a,21bを切り替えて挿入部10を移動することができる。具体的には、回転操作部14aを操作して、歯数の大きなギア21aにより回転体11に駆動力を伝達することにより、挿入部10を軸線に直交する方向に迅速に移動することができる。また、回転操作部14bを操作して、歯数の小さなギア21bにより回転体11に駆動力を伝達することにより、挿入部10を軸線に直交する方向に精密に移動することができる。
【0061】
ギア21bは2列の歯車が並列に並んで構成され、回転方向を一度逆転させている。これによって回転操作部14aと回転操作部14bとは同じ方向に回転させると駆動伝達ワイヤ23が同じ方向に回転する。したがって、回転体11を駆動する際、回転操作部14aを操作する際も回転操作部14bを操作する際も移動方向と操作部の回転方向は同じになり、操作に混乱を来すことがない。
【0062】
(第2の変形例)
また、本実施形態に係る内視鏡1の第2の変形例として、
図10に示すように、駆動伝達ワイヤ23のテンション緩和機構を備えることとしてもよい。
本変形例に係る内視鏡1において、駆動伝達ワイヤ23とギア22との接続部分は接合されておらず、ギア22には四角形の穴が開けられている。また、駆動伝達ワイヤ23のギア22とかみ合う部分の横断面は、ギア22の穴よりもわずかに小さな四角形に形成されている。
【0063】
ギア22の回転は、ギア22の四角形の穴と駆動伝達ワイヤ23の四角形の軸とがかみ合うことによって伝えられるが、軸方向には互いに自由に動くことができる。このため、駆動伝達ワイヤ23が軸方向にシフト可能となっており、これによって駆動伝達ワイヤ23に掛かるテンションを緩和することができ、回転体11に駆動力を効率よく伝えることができる。
【0064】
なお、本変形例において、ギア22の穴および駆動伝達ワイヤ23の横断面を四角形に形成した例を説明したが、この形状に限定されるものではなく、軸線回りにかみ合うことができれば、他の多角形や長円形状、あるいは突起や切り欠きのある円形状でもよい。
【0065】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。以降では、各実施形態の内視鏡について、前述の実施形態と共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0066】
本実施形態に係る内視鏡2は、
図11に示すように、挿入部10の硬性部45に回転体が2つ設けられており、これら回転体が挿入部10の軸対称に配置されている。
具体的には、挿入部10の硬性部45の外周面において、挿入部10の軸線に沿う方向に回転軸線が配置された回転体11と回転体31とが、挿入部10の軸線に対して対称となる位置に設けられている。
【0067】
回転体31は、
図11に示すように、回転体11と同様の構成を有しており、回転駆動部20からの駆動力が伝達される硬性の円筒部材35と、円筒部材35の外側に設けられた軟性の弾性部材36とから構成されている。円筒部材35の内周面には、駆動伝達ギア24に嵌合する歯が形成されている。また、
図11のB部断面に示すように、駆動伝達ギア24に嵌合する駆動伝達ギア25が、回転体11の円筒部材15に嵌合している。
【0068】
このように構成することで、回転操作部14を回転させることにより、その駆動力が駆動伝達ワイヤ23により駆動伝達ギア24に伝達され、回転体31の円筒部材35を回転させる。また、この駆動力が、駆動伝達ギア24から駆動伝達ギア25に伝達され、回転体11の円筒部材15を、回転体31の円筒部材35とは逆方向に回転させる。
【0069】
本実施形態に係る内視鏡2によれば、上記構成を有することで、例えば心膜腔内等の体腔内に挿入部10を挿入した際に、心臓Aと心膜Bの両方に回転体11,31を接触させることができる。これにより、心臓Aと心膜Bの両方に対して回転体11,31の駆動力を加えることができるため、より確実に意図した位置に挿入部10を誘導することができる。
【0070】
また、回転体11と回転体31を逆方向に回転させることで、挿入部10自体が回転してしまうことを防止することができ、挿入部10を心臓Aまたは心膜Bの表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に確実に移動することができる。
【0071】
(変形例)
なお、本実施形態に係る内視鏡2の変形例として、
図12に示すように、回転体11と回転体31とを同一方向に回転させることとしてもよい。
このようにすることで、回転体11と回転体31との境界線を境に逆方向の力を加えて、より小さな回転半径で内視鏡2を旋回させることが可能となる。これにより、
図13に示すように、例えば心膜腔内等の狭い空間においても内視鏡2の細かい操作を行うことができる。
【0072】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡3は、
図14に示すように、回転体11と回転体31の前後方向(挿入部10の軸線に沿う方向)に、テーパ部(傾斜面)41,42がそれぞれ設けられている。
【0073】
回転体11,31は、挿入部10の外周面よりも半径方向外方に張り出している。
テーパ部41,42は、挿入部10の外周面と回転体11,31の外周面との間に形成された傾斜面である。
【0074】
ここで、回転体11,31が挿入部10の外周面よりも半径方向外方に張り出している場合には、挿入部10を軸線方向に動かす際、これら回転体11,31が抵抗となってスムーズに移動できない場合がある。また、回転体11,31が体腔内壁に引っ掛かってしまう場合もある。
【0075】
これに対して、本実施形態に係る内視鏡3によれば、回転体11と回転体31の前後方向にテーパ部41,42をそれぞれ設けることで、挿入部10を軸線方向に動かす際の抵抗を小さくするとともに、回転体11,31が体腔内壁に引っ掛かってしまうことを防止することができ、よりスムーズに軸線方向に動かすことが可能となる。
【0076】
(第1の変形例)
なお、本実施形態に係る内視鏡3の第1の変形例として、
図15に示すように、回転体11自体に、回転体11の前後方向(挿入部10の軸線に沿う方向)において、回転体11の外周面(半径方向外方に張り出した面)から挿入部10の外周面に近接するテーパ部41を設けることとしてもよい。
【0077】
(第2の変形例)
また、本実施形態に係る内視鏡3の第2の変形例として、
図16に示すように、回転体11,31自体に、回転体11,31の前後方向(挿入部10の軸線に沿う方向)において、回転体11,31の外周面(半径方向外方に張り出した面)から挿入部10の外周面に近接するテーパ部41,42をそれぞれ設けることとしてもよい。
【0078】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡4は、
図17に示すように、回転体11が挿入部10の硬性部45に設けられているとともに、回転体31が挿入部10の軟性部47に設けられている。
本実施形態に係る内視鏡4では、回転操作部14のダイアルが2つ設けられており、回転体11,31をそれぞれ独立に回転させることができるようになっている。
【0079】
本実施形態に係る内視鏡4によれば、上記構成を有することで、挿入部10先端側の硬性部45に設けられた回転体11と、挿入部10基端側の軟性部47に設けられた回転体31とを、必要に応じてそれぞれ独立で回転させることができる。これにより、より複雑に挿入部10を操作することができ、心膜腔内における挿入部10の誘導可能な範囲をさらに広くすることができる。
【0080】
(変形例)
なお、本実施形態に係る内視鏡4の変形例として、
図18に示すように、回転体を挿入部10の硬性部45には設けずに、回転体11,31を挿入部10の軟性部47のみに設けることとしてもよい。
ここで、例えば挿入部10が心臓Aの周囲を半周から一周以上巻き付いている場合、挿入部10全体が湾曲しているためにテンションが掛かり、挿入部10の湾曲機構は可動範囲が小さくなってしまう。このような場合に、心臓Aに接するような軟性部47に回転体11,31を設けることにより、挿入部10の誘導可能な範囲を広げることができる。
【0081】
なお、本変形例において、回転体11,31を挿入部10の軟性部47に設けた例を説明したが、回転体11,31のいずれか一方のみを挿入部10の軟性部47に設けることとしてもよい。
【0082】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡5では、
図19に示すように、回転体11が、ソリッドな円筒部材ではなく、軟性の弾性部材16からなる無限軌道帯(キャタピラ(登録商標))で構成されている。
具体的には、弾性部材16は、挿入部10の外周面に一部が露出され、残りの部分が挿入部10の内部に配置されている。弾性部材16の露出部分は、挿入部10の周方向において、挿入部10の外周の略半分である。
【0083】
また、弾性部材16の内周面には、駆動伝達ギア24に嵌合する凹部(図示略)が形成されている。
このように構成することで、弾性部材16の内周面の凹部で確実に回転駆動部20からの駆動力を受け取るとともに、軟性の弾性部材16により体腔内壁に傷を付けることなく駆動力を伝えることができる。これにより、体腔内壁の表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に挿入部10を移動させ、意図した位置に挿入部10の先端部を誘導することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る内視鏡5によれば、上記構成を有することで、挿入部10における回転体11の占める断面積をより小さくすることが可能となり、挿入部10をより細径化することができる。
【0085】
(第1の変形例)
なお、本実施形態に係る内視鏡5の第1の変形例として、
図20に示すように、複数の回転体を挿入部10の軸対称に配置することとしてもよい。
具体的には、本変形例に係る内視鏡5は、軟性の弾性部材16からなる無限軌道帯で構成された回転体11と、軟性の弾性部材36からなる無限軌道帯で構成された回転体31とを備えている。
【0086】
回転体11および回転体31は、挿入部10の硬性部45の外周面において、それぞれ挿入部10の外周面に一部が露出され、残りの部分が挿入部10の内部に配置されている。弾性部材16,36の露出部分は、挿入部10の周方向において、それぞれ挿入部10の外周の略半分である。また、弾性部材16と弾性部材36とは、挿入部10の内部において、その外周面が密着させられている。
【0087】
このように構成することで、回転操作部14を回転させることにより、その駆動力が駆動伝達ワイヤ23により駆動伝達ギア24に伝達され、回転体11(弾性部材16)を回転させる。また、この駆動力が、回転体11(弾性部材16)から回転体31(弾性部材36)に伝達され、回転体31(弾性部材36)を回転体11(弾性部材16)とは逆方向に回転させる。
【0088】
本変形例に係る内視鏡5によれば、上記構成を有することで、例えば心膜腔内等の体腔内に挿入部10を挿入した際に、心臓Aと心膜Bの両方に回転体11,31を接触させることができる。これにより、心臓Aと心膜Bの両方に対して回転体11,31の駆動力を加えることができるため、より確実に意図した位置に挿入部10を誘導することができる。
【0089】
また、回転体11と回転体31を逆方向に回転させることで、挿入部10自体が回転してしまうことを防止することができ、挿入部10を心臓Aまたは心膜Bの表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に確実に移動することができる。
【0090】
(第2の変形例)
また、本実施形態に係る内視鏡5の第2の変形例として、
図21に示すように、回転体11と回転体31の前後方向(挿入部10の軸線に沿う方向)に、円筒形のテーパ部(傾斜面)41をそれぞれ設けることとしてもよい。
【0091】
本変形例に係る内視鏡5によれば、回転体11と回転体31の前後方向にテーパ部41をそれぞれ設けることで、挿入部10を軸線方向に動かす際の抵抗を小さくするとともに、回転体11,31が体腔内壁に引っ掛かってしまうことを防止することができ、よりスムーズに軸線方向に動かすことが可能となる。
【0092】
(第3の変形例)
また、本実施形態に係る内視鏡5の第3の変形例として、
図22に示すように、弾性部材16,31の内周面だけでなく、弾性部材16,31の外周面にも凹凸部を設けることとしてもよい。
【0093】
本変形例に係る内視鏡5において、弾性部材16の内周面には駆動伝達ギア24に嵌合する凹部が形成されている。
このように構成することで、弾性部材16の内周面の凹部で確実に回転駆動部20からの駆動力を受け取ることができる。これにより、体腔内壁の表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に挿入部10を移動させ、意図した位置に挿入部10の先端部を誘導することができる。
【0094】
また、本変形例に係る内視鏡5において、弾性部材16,31の外周面には、互いに嵌合する凹凸部が形成されている。また、この凹凸部は、挿入部10の軸線に沿う方向に形成されている。
このように構成することで、回転駆動部20からの駆動力を、弾性部材16,31の外周面に形成された凹凸部により、回転体11(弾性部材16)から回転体31(弾性部材36)に効率的に伝達することができる。
【0095】
また、本変形例に係る内視鏡5によれば、上記構成を有することで、回転体11,31の外周面と体腔内壁との摩擦抵抗を大きくすることができ、回転体11,31の駆動力を効率的に体腔内壁に伝達することができる。
【0096】
さらに、弾性部材16,31の外周面の凹凸部を、挿入部10の軸線に沿う方向に形成することで、挿入部10を軸線方向に移動させるときには(挿入時)、体腔内壁との摩擦抵抗を小さくして、スムーズな挿入を行うことができる。また、回転体11,31を回転させて挿入部10を軸線に直交する方向に移動させるときには、体腔内壁との摩擦抵抗を大きくして回転体11,31の駆動力を効率的に体腔内壁に伝達して、挿入部10を移動させることができる。
【0097】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡6は、
図23に示すように、回転体11が挿入部10の外周面よりも内側に収められている。
【0098】
本実施形態に係る内視鏡6において、回転体11は、その外径が挿入部10の外径よりも小さく構成され、その回転軸線が挿入部10の中心軸線と一致するように配置されている。
挿入部10の外周面には、挿入部10の内部に配置された回転体11の一部を露出させる窓が形成されている。
【0099】
本実施形態に係る内視鏡6によれば、挿入部10の外周面に形成された窓を介して、心臓Aと心膜Bのいずれか一方に対して回転体11の駆動力を加えて、挿入部10を心臓Aまたは心膜Bの表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に移動させることができ、意図した位置に挿入部10を誘導することができる。
【0100】
また、本実施形態に係る内視鏡6によれば、回転体11が挿入部10の外周面よりも内側に収められているため、挿入部10を軸線方向に動かす際の抵抗を小さくするとともに、回転体11が体腔内壁に引っ掛かってしまうことを防止することができ、よりスムーズに挿入部10を軸線方向に動かすことが可能となる。
【0101】
(変形例)
なお、本実施形態に係る内視鏡6の変形例として、
図24に示すように、挿入部10の外周面の窓に代えて、回転体11の一部を遮蔽板44により覆うこととしてもよい。
本変形例に係る内視鏡6において、回転体11は、その外径が挿入部10の外径とほぼ同じ大きさに構成されている。
【0102】
遮蔽板44は、挿入部10の周方向において、回転体11の露出部分が挿入部10の外周の略半分となるように、回転体11を覆っている。また、遮蔽板44には、回転体11の前後方向(挿入部10の軸線に沿う方向)に、テーパ部(傾斜面)41が設けられている。
【0103】
このような構成を有することで、挿入部10を軸線方向に動かす際の抵抗を小さくするとともに、回転体11が体腔内壁に引っ掛かってしまうことを防止することができ、よりスムーズに挿入部10を軸線方向に動かすことが可能となる。
なお、本変形例に係る内視鏡6において、回転体11を挿入部10の外径よりも大きく構成することとしても良い。
【0104】
[第7の実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡7は、
図25に示すように、挿入部10が扁平形状を有し、挿入部10の横断面の短軸方向(
図25における矢印Yに示す方向)に回転体11が露出するように構成されている。
【0105】
挿入部10を扁平形状に構成することで、心膜腔内のように心臓A側と心膜B側の両方向から圧力が加えられる空間において、両方向からの圧力によって挿入部10の横断面の長軸方向が、体腔内壁(心臓Aまたは心膜Bの表面)と平行となりやすくすることができる。この状態において、挿入部10の横断面の短軸方向に回転体11を露出させることで、確実に体腔内壁に回転体11を接触させて駆動力を伝達することができる。
【0106】
(変形例)
なお、本実施形態に係る内視鏡7の変形例として、
図26に示すように、回転体11に加えて、回転体11と挿入部10の軸線に対して対称となる位置(挿入部10の横断面の短軸方向)に、回転体31を設けることとしてもよい。
【0107】
上記構成を有することで、例えば心膜腔内等の体腔内に挿入部10を挿入した際に、心臓Aと心膜Bの両方に回転体11,31を接触させることができる。これにより、心臓Aと心膜Bの両方に対して回転体11,31の駆動力を加えることができるため、より確実に意図した位置に挿入部10を誘導することができる。
【0108】
また、回転体11と回転体31を逆方向に回転させることで、挿入部10自体が回転してしまうことを防止することができ、挿入部10を心臓Aまたは心膜Bの表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に確実に移動することができる。
【0109】
[第8の実施形態]
次に、本発明の第8の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡8において、
図27に示すように、回転体11の外周面には凹凸部が形成されている。また、この凹凸部は、挿入部10の軸線に沿う方向に形成されている。
【0110】
このように構成することで、挿入部10を軸線方向に移動させるときには(挿入時)、体腔内壁との摩擦抵抗を小さくして、スムーズな挿入を行うことができる。また、回転体11を回転させて挿入部10を軸線に直交する方向に移動させるときには、体腔内壁との摩擦抵抗を大きくして回転体11の駆動力を効率的に体腔内壁に伝達して、挿入部10を移動させることができる。
【0111】
なお、本実施形態に係る内視鏡8の第1の変形例として、
図28に示すように、挿入部10の軸線に対して対称となる位置に回転体11,31を設けた場合に、これら回転体11,31の外周面に凹凸部を形成することとしてもよい。
また、本実施形態に係る内視鏡8の第2の変形例として、
図29に示すように、回転体11,31の前後方向(挿入部10の軸線に沿う方向)にテーパ部41,42をそれぞれ設けることとしてもよい。
【0112】
[第9の実施形態]
次に、本発明の第9の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡9は、
図30に示すように、表示部150が、カメラ12により取得した画像において回転体11の位置を示すマーキングを表示する。
【0113】
具体的には、
図30に示すように、表示部150に表示されるカメラ12により取得した画像153内において、回転体11の位置を示すマーキング151を表示する。
マーキング151の挿入方法としては、光学系内やCCD上にマーク(具体的には、カラーフィルターを1色にする、画素に切り欠きをつける等)してもよく、表示部150に表示する際にマーキングデータを重畳しても良い。
【0114】
本実施形態に係る内視鏡9によれば、表示部150に表示された画像において回転体11の位置を視認することができ、体腔内壁に確実に回転体11を接触させて、意図した位置に挿入部10の先端部を誘導することができる。
【0115】
なお、本実施形態に係る内視鏡9の変形例として、複数の回転体11,31を備えている場合には、
図31に示すように、これら複数の回転体11,31の位置に対応したマーキング151,152を表示すればよい。
【0116】
[第10の実施形態]
次に、本発明の第10の実施形態に係る内視鏡について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡100は、
図32に示すように、挿入部10の硬性部45に4つの回転体が設けられており、これら回転体が挿入部10の軸対称に配置されている。
具体的には、挿入部10の硬性部45の外周面において、挿入部10の軸線に沿う方向に回転軸線が配置された回転体51,52,53,54が、挿入部10の周方向において均等間隔をあけて配置されている。
【0117】
回転体51,52,53,54には、挿入部10内において、挿入部10の軸線に沿う方向に延在するワイヤ61,62,63,64がそれぞれ接続されている。
これらワイヤ61,62,63,64は、
図33に示すように、回転方向選択装置70および回転軸65を介して回転操作部66に接続されている。また、これらワイヤ61,62,63,64は、湾曲機構80を介して湾曲操作部55,56に接続されている。
【0118】
回転方向選択装置70は、
図34に示すように、ワイヤ61,62,63,64の挿入部10の軸線方向の同位置に設けられたクラッチ71a,72a,73a,74aと、これらクラッチとそれぞれ軸線方向に間隔を空けて配置されたクラッチ71b,72b,73b,74bと、クラッチ71a〜74aと軸線方向の同位置に設けられた回転駆動板75aと、クラッチ71b〜74bと軸線方向の同位置に設けられた回転駆動板75bと、回転駆動板75aと回転駆動板75bとの間に設けられた反転ギア76と、これらの半径方向外方に配置された円環状の回転方向セレクタ77(
図33参照)とを備えている。
【0119】
回転駆動板75bは、回転軸65により回転操作部66と接続された円板形状の部材であり、回転操作部66を操作することで、挿入部10の軸線回りに回転するようになっている。
回転駆動板75aは、反転ギア76を介して回転駆動板75bと接続された円板形状の部材であり、反転ギア76の動作により、回転駆動板75bが回転することで回転駆動板75bとは逆方向に回転するようになっている。
【0120】
クラッチ71a〜74aは、後述するように、回転方向セレクタ77により半径方向内方に付勢されることで、回転駆動板75aに接触し、回転駆動板75aとは逆方向に回転するようになっている。
クラッチ71b〜74bは、後述するように、回転方向セレクタ77により半径方向内方に付勢されることで、回転駆動板75bに接触し、回転駆動板75bとは逆方向に回転するようになっている。
【0121】
回転方向セレクタ77は、
図33に示すように、挿入部10の外周面に配置され、挿入部10の軸線回りに回転可能に構成されている。
回転方向セレクタ77の横断面図(
図34におけるC部の横断面図)が
図38に示されている。回転方向セレクタ77の内周面には、
図38に示すように、部分的に半径方向内方に突出する突出部(
図38において太線で示した部分)が設けられている。
【0122】
この突出部により、クラッチ71a〜74aは、半径方向内方に付勢されて回転駆動板75aに押し付けられるようになっている。同様に、この突出部により、クラッチ71b〜74bは、半径方向内方に付勢されて回転駆動板75bに押し付けられるようになっている。すなわち、突出部が半径方向外方に配置されたクラッチは回転駆動板に接続される一方、突出部が半径方向外方に配置されていないクラッチはその接続が解除されるようになっている。
【0123】
上記構成を有することで、回転方向セレクタ77を挿入部10の軸線回りに回転させることにより、クラッチ毎に回転駆動板への接続/解除が行われる。これにより、どのワイヤが右回転し、どのワイヤが左回転するか、あるいはどのワイヤの回転を停止するかが決められる。なお、湾曲動作時にはすべてのクラッチを解除する。
【0124】
湾曲機構80は、
図34に示すように、ワイヤ61,62,63,64に設けられたワイヤ牽引用ギア81,82,83,84と、ワイヤ牽引用ギア81,83に嵌合する円板形状のギア85と、ワイヤ牽引用ギア82,84に嵌合する円板形状のギア86とを備えている。ギア85と湾曲操作部55とは回転軸87により接続されている。ギア86と湾曲操作部56とは回転軸88により接続されている。
【0125】
図34におけるA部の横断面図とB部の横断面図が
図36と
図37にそれぞれ示されている。
上記構成を有する湾曲機構80において、例えば
図37に示すように、湾曲操作部55を回転させると、その回転が回転軸87を介してギア85に伝達される。これにより、
図35に示すように、ギア85に嵌合するワイヤ牽引用ギア81,83が軸線方向に移動させられる。具体的には、ワイヤ牽引用ギア81(ワイヤ61)が基端側に移動させられるとともに、ワイヤ牽引用ギア83(ワイヤ63)が先端側に移動させられる。これにより、挿入部10の湾曲部46が湾曲させられる。
【0126】
同様に、湾曲操作部56を回転させることで、ワイヤ牽引用ギア82(ワイヤ62)およびワイヤ牽引用ギア84(ワイヤ64)を軸線方向に移動させることができ、挿入部10の湾曲部46が湾曲させることができる。
【0127】
以上のように、本実施形態に係る内視鏡100によれば、複数の回転体を備えた内視鏡(例えば第2の実施形態に係る内視鏡2)と同様の効果に加えて、湾曲動作と軸線に直交する移動動作とを同じワイヤを用いて操作することができるので、挿入部10の断面積を小さくすることができる。これにより、細径の挿入部とすることができ、低侵襲な処置が可能となる。
【0128】
[第11の実施形態]
次に、本発明の第11の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明を処置具導入用シースに適用した実施形態について説明する。
本実施形態に係るシース101は、
図39に示すように、体腔内に挿入される処置具等を誘導する筒状の部材である。
図40は
図39のB部断面、
図41は
図39のC部断面を示している。
【0129】
本実施形態に係るシース101は、
図40および
図41に示すように、筒状のシース本体110と、シース本体110の内部に配置された筒状の回転体111とを備えている。
シース本体110と回転体111とは、その軸線回りに相対回転可能に構成されている。回転体111は、その回転軸線がシース本体110の中心軸線と一致するように配置されている。
【0130】
シース本体110の先端側の外周面には、シース本体110の内部に配置された回転体111の一部を露出させる窓115が形成されている。
また、シース本体110の基端側の外周面には、開口部116が設けられている。回転体111の基端側には、半径方向外方に張り出して、シース本体110の開口部116から露出する回転操作部114が設けられている。
【0131】
このような構成を有することで、回転操作部114をシース本体110の軸線回りに回転させることにより、シース本体110内部の回転体111を、シース本体110に対してその軸線回りに相対回転させるようになっている。
【0132】
本実施形態に係るシース101によれば、シース本体110の外周面に形成された窓115を介して、体腔内壁に対して回転体111の駆動力を加えて、シース本体110を体腔内壁の表面に沿う方向(挿入部10の軸線に直交する方向)に移動させることができ、意図した位置にシース本体110を誘導することができる。
【0133】
また、本実施形態に係るシース101によれば、回転体111がシース本体110の外周面よりも内側に収められているため、シース本体110を軸線方向に動かす際の抵抗を小さくするとともに、回転体111が体腔内壁に引っ掛かってしまうことを防止することができ、よりスムーズにシース本体110を体腔内に挿入することが可能となる。
【0134】
なお、本実施形態に係るシース101において、シース本体110は全体が硬性の素材で構成されていても良く、合成樹脂などの軟性の素材で構成されていても良い。シース本体110が軟性の素材で構成されている場合には、回転体111の軟性部に相当する部分はワイヤをコイル状にしたものを用いることにより、良好に駆動力を伝えると共に、回転操作を確実なものとすることができる。
【0135】
[第12の実施形態]
次に、本発明の第12の実施形態について図面を参照して説明する。以降では、本実施形態のシースについて、前述の実施形態と共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0136】
本実施形態に係るシース102は、
図42から
図44に示すように、筒状のシース本体110と、シース本体110の内部に配置された回転体111とを備えている。
シース本体110と回転体111とは、その軸線回りに相対回転可能に形成されている。回転体111は、その回転軸線がシース本体110の中心軸線と一致するように配置されている。
【0137】
シース本体110の先端側の外周面には、シース本体110の内部に配置された回転体111の一部を露出させる窓115が形成されている。
回転体111は、内部にエアを吹き込むことにより体積を増加させるようなバルーンにより構成されている。回転体111の内部にエアを送るための送風管117は、回転体111の基端側端部に接続されており、必要な圧力を印可可能となっている。
【0138】
このような構成を有することで、回転体111は、送風管117を介して内部にエアを吹き込むことにより、シース本体110の外周面に形成された窓115から、シース本体110の半径方向外方(
図42における矢印Yに示す方向)に膨張するようになっている。
これにより、回転体111と処置具外径の軸が同一であっても、回転体111を処置具外径よりも外側に張り出すことが可能となり、シース本体110と回転体111の軸をずらすための特別な仕掛けを設けることなく、回転体111からの力を効率よく外部に伝えることが可能となる。
【0139】
本実施形態に係るシース102によれば、回転体111を収縮させることにより、シース本体110を体腔内にスムーズに挿入することができる。また、体腔内において回転体111を膨張させることで、回転体111を体腔内壁により確実に接触させることができ、回転体111の駆動力を体腔内壁に効率的に伝えて、シース本体110を軸線に直交する方向に移動することができる。
【0140】
以上、本発明の実施形態および変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態および各変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよい。
【0141】
また、各実施形態において、本発明を内視鏡およびシースに適用した例を説明したが、この例に限定されるものではなく、本発明を、例えば超音波処置装置、処置具、カテーテル等の体腔内に挿入される挿入部を備える他の医療器具に適用することも可能である。
また、各実施形態において、回転体を1つ、2つまたは4つ設けた例を説明したが、回転体を3つまたは5つ以上設けることとしてもよい。