特許第5980488号(P5980488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980488
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】口角炎の治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/44 20060101AFI20160818BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61K31/44
   A61P1/02
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-207778(P2011-207778)
(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2013-67589(P2013-67589A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】510273178
【氏名又は名称】有限会社 キーロード
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100158528
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 芳隆
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】小椿 英明
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−069109(JP,A)
【文献】 特開2003−095943(JP,A)
【文献】 特開2001−163783(JP,A)
【文献】 歯科医学大辞典,歯科医学大事典 縮刷版,藤田 勝治 医歯薬出版株式会社,1989年10月10日,第1版,793頁
【文献】 治療薬マニュアル2007,2007年,p.1652,1653
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/44
A61P 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リラナフタートを有効成分として含む、口角炎の治療用医薬組成物。
【請求項2】
外用薬である、請求項1に記載の治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口角炎を治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口角炎は口角の皮膚および粘膜に炎症等が生じる皮膚疾患である。口角炎は、ビタミンの欠乏などの種々の誘因によって、口角部の皮膚が損傷し、細菌、真菌などの2次感染が起こったものであると考えられている。2次感染を起こすものとして、ブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌、カンジダ属菌などの真菌などが知られている。
【0003】
また、亀裂性湿疹は、「あかぎれ」とも呼ばれ、冬などの寒い時期に、血行の不良、皮脂不足などの原因によって、手足等に生じる湿疹の一つである。
【0004】
特許文献1には、皮膚の損傷等を改善または治療するための、創傷治癒促進剤、ケラチン親和性の高い抗真菌剤および保湿剤を含有する外用医薬組成物が記載されている。また、特許文献2には、抗真菌性物質を有効成分として含有するうがい剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-69109号公報
【特許文献2】特開2003-335700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、創傷治癒促進剤の効果を亢進させる目的で抗真菌剤を使用しており、抗真菌剤が口角炎または亀裂性湿疹に対する効果を有することは、特許文献1には全く記載も示唆もされていない。
【0007】
また、上述したように、口角炎には、カンジダ属菌などの真菌以外の原因のものも存在する。しかし、特許文献2には、抗真菌剤がこのような口角炎全般に対する効果を有することについては、全く記載も示唆もされていない。また、亀裂性湿疹についても、特許文献2には全く記載されていない。
【0008】
本発明は、上述した従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、
口角炎の治療に好適に用いることができる新規な医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、抗真菌剤が、口角炎および亀裂性湿疹に対して効果を発揮することを見出した。抗真菌剤が、真菌に対する効果以外に、このような口角炎および亀裂性湿疹に対する効果を有することについては、これまで知られていなかった。本発明者は、この知見に基づいて本発明を完成させた。
【0013】
また、本発明は、リラナフタートを有効成分として含む、口角炎の治療用医薬組成物を提供する。
また、外用薬である、上記治療用医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、口角炎の治療に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る医薬組成物は、抗真菌剤を有効成分として含む。
【0016】
抗真菌剤とは、カンジダ属菌および白癬菌等の真菌の生育を阻害する物質である。抗真菌剤は、真菌全般に対して効果のある物質であってもよいし、一部の真菌に対して効果のある物質であってもよい。なお、本発明に係る医薬組成物は、1種類の抗真菌剤を含んでいてもよいし、複数種類の抗真菌剤を含んでいてもよい。
【0017】
本発明に係る医薬組成物による治療の対象となる口角炎または亀裂性湿疹は、真菌に起因したものであってもよいし、なくてもよい。すなわち、本発明に係る医薬組成物は、真菌に起因する口角炎または亀裂性湿疹だけでなく、真菌に起因しない口角炎または亀裂性湿疹の治療用医薬組成物としても用いることができる。
【0018】
抗真菌剤としては、特に限定されないが、たとえばチオカルバメート系、イミダゾール系、アリルアミン系、ポリエンマクロライド系、ピリミジン系、トリアゾール系、キャンディン系、チオカルバメート系、ベンジルアミン系およびモルホミン系等の薬剤、抗生物質などが挙げられる。なかでも、本発明における抗真菌剤は、チオカルバメート系薬剤、イミダゾール系薬剤およびアリルアミン系薬剤からなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0019】
チオカルバメート系薬剤としては、たとえばリラナフタートおよびトルナフタートなどを挙げることができる。イミダゾール系薬剤としては、たとえばクロトリマゾール、ミコナゾール、スルコナゾール、オキシコナゾール、ケトコナゾール、ビホナゾール、エコナゾール、イソコナゾール、クロコナゾール、ネチコナゾールおよびラノコナゾールなどを挙げることができる。アリルアミン系薬剤としては、たとえば塩酸テルビナフィンなどを挙げることができる。
【0020】
本発明に係る医薬組成物は、これらの抗真菌剤を、真菌に対して治療的な効果を有することが従来から知られている量にて含んでいてもよい。
【0021】
本発明に係る医薬組成物は、抗真菌剤以外の他の物質をさらに含んでいてもよい。たとえば医薬組成物は、抗真菌剤を保持するための基剤をさらに含んでいてもよく、基剤としては、水、アルコール等の有機溶媒、油脂およびゲル化剤などが挙げられる。また、医薬組成物は、他の薬効成分をさらに含んでいてもよい。
【0022】
本発明に係る医薬組成物は、たとえば外用薬、内服薬、注射薬等であってもよく、なかでも外用薬であることが好ましい。外用薬としては、たとえば塗布剤、貼付剤およびエアゾール剤等が挙げられる。塗布剤としては、たとえばクリーム剤、軟膏剤、液剤、ゲル剤、ローション剤およびチック剤等が挙げられる。
【0023】
本発明に係る医薬組成物は、従来の抗真菌活性を有する医薬品と同様に製造することができる。たとえば、本発明に係る医薬組成物は、上記の既存の抗真菌剤と同じ成分の医薬品として製造することができる。
【0024】
本発明に係る医薬組成物を患者に投与する場合には、投与する頻度および期間などは、患者の年齢、症状などに応じて適宜設定することが好ましい。たとえば投与する頻度は、特に限定されないが、1日あたり1〜数回、好ましくは1日あたり1または2回であることが好ましい。また投与する期間は、症状が治まるまでであってもよく、たとえば1日〜数か月であってもよい。
【0025】
本発明は、上述した実施形態および下記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0026】
〔実施例1〕
口角炎を患っている患者(40代男性)の患部に対し、チオカルバメート系薬剤であるリラナフタートを含む医薬組成物(商品名:ゼフナートクリーム(鳥居薬品株式会社製))を塗布した。その結果、1回塗布したのみで、口角炎が治った。
【0027】
〔実施例2〕
口角炎を患っている10人の患者(0〜5歳)の各患部に対し、チオカルバメート系薬剤であるリラナフタートを含む医薬組成物(商品名:ゼフナートクリーム(鳥居薬品株式会社製))を塗布した。その結果、全ての患者において、口角炎が完治した。
【0028】
〔実施例3〕
手にあかぎれ(亀裂性湿疹)を患っている患者(37歳女性)の患部に対し、イミダゾール系薬剤であるビホナゾールを含む医薬組成物(商品名:マイコスポールクリーム(バイエル薬品株式会社製))を塗布した。塗布するタイミングは朝および入浴後の1日2回とし、2ヶ月続けた。その結果、亀裂性湿疹が完治した。
【0029】
〔実施例4〕
手にあかぎれ(亀裂性湿疹)を患っている患者(40歳女性)の患部に対し、アリルアミン系薬剤である塩酸テルビナフィンを含む医薬組成物(商品名:ラミシールクリーム(ノバルティスファーマ株式会社製))を塗布した。塗布するタイミングは1日1回とし、約4ヶ月続けた。その結果、亀裂性湿疹が完治した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、口角炎の治療に好適に用いることができるため、口角炎を治療するための医薬品などに好適に利用することができる。