(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980507
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】適応インピーダンス整合ネットワーク
(51)【国際特許分類】
H03H 7/38 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
H03H7/38 Z
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-549437(P2011-549437)
(86)(22)【出願日】2009年2月17日
(65)【公表番号】特表2012-518298(P2012-518298A)
(43)【公表日】2012年8月9日
(86)【国際出願番号】EP2009001132
(87)【国際公開番号】WO2010094297
(87)【国際公開日】20100826
【審査請求日】2011年12月20日
【審判番号】不服2015-14341(P2015-14341/J1)
【審判請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】514106498
【氏名又は名称】クゥアルコム・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100194814
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 元宏
(72)【発明者】
【氏名】バン・ベゾーイェン,アドリアヌス
【合議体】
【審判長】
水野 恵雄
【審判官】
山本 章裕
【審判官】
吉田 隆之
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭63−16192(JP,Y2)
【文献】
特開昭61−186028(JP,A)
【文献】
特開平6−90186(JP,A)
【文献】
特開2002−252526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/38-7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節可能整合インピーダンスを提供するための調節可能インピーダンス整合ネットワークであって、
並列LCネットワークを含む第1のインピーダンス調節回路を備え、前記第1のインピーダンス調節回路は、周波数情報および目標基準値に基づいて、前記整合インピーダンスの虚数部の値を変更しながら、前記整合インピーダンスの実数部の値を調節するよう構成され、前記整合ネットワークは、さらに、
直列LCネットワークを含む第2のインピーダンス調節回路を備え、前記第2のインピーダンス調節回路は、前記整合インピーダンスの前記虚数部の値を、予め定められた値に実質的に等しくなるように調節するよう構成され、前記整合ネットワークは、さらに、
前記第1のインピーダンス調節回路および前記第2のインピーダンス調節回路の間に結合され、前記周波数情報を用いて制御ループの符号を設定する、ここにおいて、前記制御ループは、前記整合インピーダンスの前記実数部の値を前記調節する、よう構成された乗算器を備え、前記乗算器は、前記整合インピーダンスの前記実数部の値との差をとってゲインを出力するために前記目標基準値の符号を反転させるよう構成される第1の乗算器と、前記ゲインの傾斜を設定するためにループの前記ゲインの符号を反転させるよう構成される第2の乗算器とを含む、調節可能インピーダンス整合ネットワーク。
【請求項2】
前記予め定められた値はゼロに等しい、請求項1に記載の整合ネットワーク。
【請求項3】
前記第1および第2のインピーダンス調節回路のうちの少なくとも1つは、RF−MEMSデバイスのスイッチドキャパシタアレイを含む、請求項1に記載の整合ネットワーク。
【請求項4】
前記周波数情報は、動作周波数帯域を示す情報を含む、請求項1に記載の整合ネットワーク。
【請求項5】
前記第1および第2のインピーダンス調節回路は、前記周波数情報が低周波数帯域を示す場合には、スミスチャートの誘導性領域で整合インピーダンスの値を調節し、前記周波数情報が高周波数帯域を示す場合には、スミスチャートの容量性領域で整合インピーダンスの値を調節するよう適応されている、請求項4に記載の整合ネットワーク。
【請求項6】
請求項1に記載の調節可能インピーダンス整合ネットワークを含む、電子デバイス。
【請求項7】
無線通信ユニットとの間で信号を送受信するよう適応されたアンテナをさらに含み、前記目標基準値が前記アンテナのインピーダンスと実質的に整合している、請求項6に記載の電子デバイス。
【請求項8】
調節可能整合インピーダンスを提供するための調節可能インピーダンス整合ネットワークを制御する方法であって、
周波数情報および目標基準値に基づいて、整合インピーダンスの虚数部の値を変更しながら、前記整合インピーダンスの実数部の値を調節するステップを含み、前記整合インピーダンスの前記虚数部の値を変更しながら、前記整合インピーダンスの前記実数部の値を調節するステップは、並列LCネットワークの少なくとも1つの要素のパラメータを修正することを含み、前記方法は、さらに、
前記整合インピーダンスの前記虚数部の値を、予め定められた値に実質的に等しくなるように調節するステップを含み、前記整合インピーダンスの前記虚数部の値を、予め定められた値に実質的に等しくなるように調節するステップは、直列LCネットワークの少なくとも1つの要素のパラメータを修正することを含み、前記方法は、さらに、
前記周波数情報を用いて制御ループの符号を設定するステップ、ここにおいて、前記制御ループは、前記整合インピーダンスの前記実数部の値を前記調節する、を含み、前記制御ループの符号を設定するステップは、前記整合インピーダンスの前記実数部の値との差をとってゲインを出力するために前記目標基準値の符号を反転させるステップと、前記ゲインの傾斜を設定するために制御ループの前記ゲインの符号を反転させるステップとを含む、方法。
【請求項9】
前記予め定められた値はゼロに等しい、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記周波数情報は、動作周波数帯域を示す情報を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記整合インピーダンスの虚数部の値を調節するステップは、前記周波数情報が低周波数帯域を示す場合には、スミスチャートの誘導性領域で整合インピーダンスの値を調節し、前記周波数情報が高周波数帯域を示す場合には、スミスチャートの容量性領域で整合インピーダンスの値を調節することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行される際、請求項8のステップをすべて行なうよう構成されたソフトウェアを含む前記コンピュータプログラムを作動させるよう構成されたコンピュータ。
【請求項13】
コンピュータ読取可能媒体をさらに備え、前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータ読取可能媒体に保存される、請求項12に記載のコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子デバイスで使用するための適応インピーダンス整合ネットワークに関し、特に、無線周波数マイクロ電気機械システムデバイスとともに使用するためのマルチバンド適応インピーダンス整合ネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
適応インピーダンス整合ネットワークは、電気および電子工学の分野で公知である。そのようなネットワークは、適応整合ネットワークの制御アルゴリズムを簡略化するために、分散された作動および検出を利用する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのようなインピーダンス整合ネットワークに関連する問題は、インピーダンス整合範囲が制限される場合があることである。たとえば、インピーダンス整合ネットワークは、可変素子(キャパシタおよび/またはインダクタ)の同調範囲および動作周波数によって制限される整合範囲を有する可変LCネットワークを含む場合がある。
【0004】
図1は、適応アンテナ整合ネットワークと適応負荷線とを含む従来のGSM/UMTSフロントエンドのブロック図である。そのような構成には多数の欠点が関連している。(特にマルチバンド動作用の)インピーダンス同調範囲の制限は、特有の問題である。
【0005】
言い換えると、可変キャパシタ(およびインダクタ)の制限された同調範囲は、可変ネットワークのインピーダンス整合範囲を制限する。さらに、可変ネットワークのインピーダンス整合の範囲は、周波数依存性であることが多い。
【0006】
無線周波数マイクロ電気機械システム(RF−MEMS)デバイスのCon/Coff比は比較的大きいものの、整合範囲の改良が依然として望ましい。なぜなら、電子デバイス間のインピーダンス不整合(たとえばアンテナ不整合)が極端となり得るためである。負荷線適応の場合、インピーダンス同調範囲が大きいことが望ましい。なぜなら、出力パワーレベルが幅広い範囲にわたって変わるためである。マルチバンド用途の場合、追加の同調範囲が必要となる場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、調節可能整合インピーダンスを提供するための調節可能インピーダンス整合ネットワークであって、周波数情報および目標基準値に基づいて、整合インピーダンスの虚数部の値を変更しながら、整合インピーダンスの実数部の値を調節するよう適応された第1のインピーダンス調節手段と、整合インピーダンスの虚数部の値を、予め定められた値に実質的に等しくなるように調節するよう適応された第2のインピーダンス調節手段とを含む、調節可能インピーダンス整合ネットワークが提供される。
【0008】
この発明の別の局面によれば、調節可能整合インピーダンスを提供するための調節可能インピーダンス整合ネットワークを制御する方法であって、周波数情報および目標基準値に基づいて、整合インピーダンスの虚数部の値を変更しながら、整合インピーダンスの実数部の値を調節するステップと、整合インピーダンスの虚数部の値を、予め定められた値に実質的に等しくなるように調節するステップとを含む、方法が提供される。
【0009】
このため、この発明は、2つ以上の周波数帯域におけるインピーダンス整合範囲の改良を提供するために使用可能である。アンテナ不整合を補償するために、または最適なパワートランジスタ負荷インピーダンス(負荷線)を設定するために、実施例が使用可能である。
【0010】
この発明の実施例はしたがって、適応アンテナ整合、負荷線適応、および他のRF再構成可能ネットワークのために、RF−MEMSまたは他の同調可能素子を用いたマルチモード、マルチスタンダードの無線通信デバイス(電話、ラップトップ、PDA、ヘッドセット…)で使用されてもよい。
【0011】
この発明の実施例を、単なる例示として、添付図面を参照してここに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】適応アンテナ整合ネットワークと適応負荷線とを含む従来のGSM/UMTSフロントエンドのブロック図である。
【
図2a】この発明の一実施例による調節可能インピーダンス整合ネットワークを制御する方法を示すスミスチャートである。
【
図2b】この発明の一実施例による調節可能インピーダンス整合ネットワークを制御する方法を示すスミスチャートである。
【
図3a】低周波数帯域動作に関する、サセプタンスBtotに対する整合されたインピーダンスRmおよびリアクタンスXmの関係を示すグラフである。
【
図3b】高周波数帯域動作に関する、サセプタンスBtotに対する整合されたインピーダンスRmおよびリアクタンスXmの関係を示すグラフである。
【
図4a】この発明の一実施例による調節可能インピーダンス整合ネットワークのブロック図である。
【
図4b】この発明の代替的な一実施例による調節可能インピーダンス整合ネットワークのブロック図である。
【
図5】この発明のさらに別の実施例による調節可能インピーダンス整合ネットワークのブロック図である。
【
図6】この発明の一実施例による調節可能インピーダンス整合ネットワークに関するシミュレーション結果を示すスミスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
全体を通し、同様の参照符号は同様の要素を示す。
実施例は、キャパシタンス同調範囲に対する要件が緩和されるように、インピーダンスネットワークの特性を利用している。これは、整合インピーダンスの実数部を制御するための、周波数帯域に依存した基準を用いることによって達成される。言い換えると、整合インピーダンスの実数部は、動作周波数に基づいて、目標値に整合される。動作周波数は、最適な補償方法を決定するために使用され、それにより、可変キャパシタにとって必要とされるCmin/Cmax比などの要素要件を緩和させる。
【0014】
整合ネットワークを適応させる制御基準が周波数帯域に依存するようにすると、追加の自由度が得られる。
【0015】
インピーダンスの実数部の整合は、並列LCネットワークを用いた一定のコンダクタンスの円形セグメントにわたる回転を介して、
図2に示すようなスミスチャートの誘導側または容量側へと行なわれてもよい。スミスチャートの最適な側は、動作周波数に依存する。
【0016】
可変キャパシタの中間周波数範囲(中間位置)では、シャントLCネットワークは、低周波数帯域では誘導的に、高周波数帯域では容量的に挙動する。インピーダンスの実数部の整合が、低周波数帯域ではスミスチャートの誘導側を介して、高周波数帯域ではスミスチャートの容量側を介して行なわれる場合、必要とされるインピーダンス変換はより少なくなる。
【0017】
図2aの右側のスミスチャートに示すように、低周波数帯域については、整合インピーダンスの虚数部(Xm)の値に実質的に変更/影響を及ぼしながら、整合インピーダンスの実数部Rmの値が、スミスチャートの誘導側(上側)で調節される。スミスチャート上で視覚化すると、そのような調節は、たとえば矢印Aによって示されるような、一定のコンダクタンスの線に沿った、スミスチャートの上半分(誘導側)における回転として見られる。
【0018】
逆に、
図2bの右側のスミスチャートに示すように、高周波数帯域については、整合インピーダンスの虚数部(Xm)の値に実質的に変更/影響を及ぼしながら、整合インピーダンスの実数部Rmの値が、スミスチャートの容量側(下側)で調節される。スミスチャート上で視覚化すると、そのような調節は、たとえば矢印Cによって示されるような、一定のコンダクタンスの線に沿った、スミスチャートの下半分(容量側)における回転として見られる。
【0019】
そのような調節(スミスチャートの1セグメントにわたる回転)の後、整合インピーダンスはゼロでない虚数部を有する(なぜなら、それはスミスチャートの水平軸上にはないためである)ことが理解されるであろう。結果として生じるこのインピーダンスの虚数部は、たとえば可変直列キャパシタを有する直列LCネットワークを用いることによってチューンアウトされる(すなわち、ゼロに等しくなるよう調節される)。
【0020】
直列LCネットワークは、低周波数帯域では容量的に、高周波数帯域では誘導的に挙動する。したがって、低周波数帯域では、直列LCネットワークは誘導性インピーダンスを補償するのに最も適しており、一方、高周波数帯域では、直列LCネットワークは容量性インピーダンスを補償するのに最も適している。したがって、スミスチャートの比較的大部分が、2つ以上の周波数帯域におけるキャパシタの制限された同調範囲でカバー可能である。
【0021】
たとえば、
図2aの左側のスミスチャートに示すように、低周波数帯域については、整合インピーダンスの虚数部(Xm)の値は、実質的にゼロに等しくなるように、スミスチャートの誘導側で調節され、それにより、整合インピーダンスの実数部(Rm)を、目標基準値(Rref)に実質的に等しくなるよう維持する。スミスチャート上で視覚化すると、そのような調節は、たとえば矢印Bによって示されるような、スミスチャートの上半分における、一定の抵抗の円形セグメントにわたる回転として見られる。
【0022】
逆に、
図2bの左側のスミスチャートに示すように、高周波数帯域については、整合インピーダンスの虚数部(Xm)の値は、実質的にゼロに等しくなるように、スミスチャートの容量側で調節され、それにより、整合インピーダンスの実数部(Rm)を、目標基準値(Rref)に実質的に等しくなるよう維持する。スミスチャート上で視覚化すると、そのような調節は、たとえば矢印Dによって示されるような、スミスチャートの下半分(容量側)における回転として見られる。
【0023】
制御ループがスミスチャートの適切な側を介してインピーダンスを適応させることを確実にするために、Xmの符号/極性に関する情報を用いて、ループを制御し、必要であればそれを正しい方向に強制してもよい。
【0024】
上述のように、スミスチャートの最適な側は、動作周波数帯域に依存している。このため、動作周波数に関する、より特定的には動作周波数帯域に関する情報を用いて、強制の方向(すなわち、インピーダンスが調節されるスミスチャートの半分)を設定することができる。
【0025】
スミスチャートの誘導側では、ループゲインの符号は、スミスチャートの容量側のものとは反対である。このため、必要とされる解へのループの適正な収束を確実にするために、周波数情報を用いてループゲインの符号を設定することが可能である。
【0026】
図3には、整合インピーダンスの実数部Rmが、サセプタンスBtotの正の値または負の値で得られ得ることが示されている。これは、二次関係により、2つの解が存在するためである。しかしながら、整合されたリアクタンスXmの符号を用いると、これらの解を識別することができる。
【0027】
(物理的理由により)Rmは常に正であるため、Xmの符号/極性は、検出が行なわれる中間ノードにおけるインピーダンスZmの位相の符号/極性に等しい。
【0028】
整合インピーダンスRmの動作点の周囲の勾配または傾斜d(Rm)/d(Btot)は、グラフの各側で異なる(すなわち、整合されたリアクタンスXmの符号)。このため、勾配またはゲインの符号は、低周波数帯域動作と高周波数帯域動作とでは異なる。
【0029】
低周波数帯域動作について、サセプタンスBtotの値が正(すなわち容量性)である場合、制御ループを強制的にサセプタンスBtotの負の値(すなわち誘導性)にすることが望ましい。逆に、高周波数帯域動作について、サセプタンスBtotの値が負(すなわち誘導性)である場合、制御ループを強制的にサセプタンスBtotの正の値(すなわち容量性)にすることが望ましい。
【0030】
この発明の一実施例による調節可能インピーダンス整合ネットワークのブロック図を、
図4aに示す。
【0031】
時分割多重アクセス(TDMA)受信モード(Rxモード)では、適応用に利用可能な信号はない。送信(Tx)帯域と受信(Rx)帯域とで周波数が異なるため、記憶された送信モード(Txモード)設定を使用することが次善の策である。
【0032】
符号分割多重アクセス(CDMA)モードでは、RxおよびTxは異なる周波数で同時に起こる。適応はTx帯域で起こるため、Rxでの次善の性能が期待できる。
【0033】
たとえばデバイス間のハンドオーバーのために必要とされ得るバンドスイッチングは、最適になるまで新たに反復することを要する。
【0034】
アイドルモードでは、送信機は短期間の間、ほんの時たまオンとなる。これらの「オン」期間同士の間で、大きなアンテナインピーダンス変動が起こる場合がある。
【0035】
これらの問題は、(ベースバンドコントローラからの)演繹的知識を用いて整合ネットワークをプリセット、オフセット、または離調する場合に、より良好に対処可能であり、それは、アルゴリズムがソフトウェアで実現されている場合に容易に行なわれ得る。
【0036】
図4aの実施例は、完全にハードウェアで実現されたスタンドアロンの適応ネットワークを仮定している。
【0037】
整合インピーダンスの虚数部(Xm)の値を変更しながら、整合インピーダンスの実数部(Rm)の値を調節するための並列LCネットワークを、「10」と表示された点線のボックスで示す。
【0038】
インピーダンスの虚数部(Xm)をチューンアウトするための直列LCネットワークを、「12」と表示された点線のボックスで示す。
【0039】
周波数帯域に依存する制御基準を得るために、第1の乗算器14および第2の乗算器16(または、デジタル領域における排他的OR論理ユニット)が、点線のボックスで示されるようにネットワークに含まれている。これらの乗算器は、制御ループの符号を低/高周波数帯域情報の関数として設定するよう適応される。
【0040】
第1の乗算器14は、ループ制御に対して基準値の符号を反転させるよう構成されている。それは、必要に応じて適切な方向での強い押しを提供する。第2の乗算器16は、ゲインの傾斜を設定するために制御ループのエラー信号の符号を反転させるよう構成されている。
【0041】
インピーダンスZmの位相は、ノード電圧uの位相と分岐電流iの位相との間の位相差によって与えられる。この位相差は、両方の入力でリミッタを使用している平滑化キャパシタの左にある点線のミキサを用いて決定される。符号は、この平滑化キャパシタと乗算器14との間に図示された点線のリミッタを用いて決定される。
【0042】
可変キャパシタCparおよびCseriesは、RF−MEMSデバイスのスイッチドキャパシタアレイとして実現されている。それらの高電圧バイアシング(60/30V)は、3.5Vの供給電圧から、チャージポンプを用いて生成される。
【0043】
また、これに代えて、(BST)バラクタ、もしくはCMOSまたはpHEMT RFスイッチを用いた固定キャパシタが使用可能である。
【0044】
代替的な実行例は、たとえば、ベースバンド信号処理を利用可能である。そのような代替的な一実施例を
図4bに示す。これらの代替的な実行例は、たとえば、検出された情報をさらなる信号処理のためにデジタル領域に変換するために、A−D変換器を利用可能である。
【0045】
図4aおよび
図4bの実施例は、整合インピーダンス(Zm)の虚数部(Xm)の値を、実質的にゼロに等しくなるように調節するよう適応されていることが理解されるであろう。しかしながら、他の実施例では、整合インピーダンス(Zm)の虚数部(Xm)の値は、目標基準値(Rref)への実数部の調節と同様に、予め定められた基準値(Xref)に実質的に等しくなるように調節されてもよい。そのような一実施例を、(デュアルバンド制御基準が満たされていない)
図5に示す。
【0046】
図6では、この発明の一実施例による調節可能インピーダンス整合ネットワークに関するシミュレーション結果が、スミスチャート上に示されている。900MHzおよび1800MHzで、30、80、130+j(−100、0、100)の負荷インピーダンス(四角形)が、誘導側(スミスチャートの上半分の三角形)および容量側(スミスチャートの下半分の三角形)をそれぞれ介して、約25オームの目標基準値(菱形)に適応される。
【0047】
上述の実施例はこの発明を限定するというよりもむしろ例示しているということ、および、当業者であれば、添付された請求項によって定義されるようなこの発明の範囲から逸脱することなく、多くの代替的な実施例を設計可能であるということに留意されたい。
【0048】
たとえば、周波数の変更は、以下の2つの方法で満たされ得る。
1.可変キャパシタのプリセットは、周波数サブバンド毎の工場較正データから行なうことができる。または、
2.プリセットは、周波数帯域変更に関するシステムデータと組合わされた、周波数サブバンド毎の最近得られた適応データとから行なうことができる。
【0049】
第1の場合、適応ループは局所的に閉鎖可能であり、プリセットは、キャパシタ値を適応の初期化として規定するために使用されてもよい。
【0050】
第2の場合、適応情報は記憶され、ベースバンドコントローラによって定期的に更新され得る。したがって、適応ループはベースバンドコントローラを介して閉鎖可能である。自己学習ソフトウェアアルゴリズムを用いて、キャパシタにとって最適な初期値を決定することが可能である。受信中、キャパシタの制御信号には、送信中に適応して見出された値に対するオフセットが提供され得る。
【0051】
調節可能インピーダンス整合ネットワークの一実施例における除算器は、代替的に、対数領域における減算として実現可能であることも理解されるであろう。
【0052】
実施例は、(BST)バラクタ、もしくは(シリコン・オン・インシュレータ)CMOSまたはpHEMT技術で実現されるRFスイッチを用いた固定キャパシタを用いて実現され得る。
【0053】
上述の実施例(および添付図面2〜6)は、インピーダンスネットワークのダウンコンバートに言及してきた。したがって、インピーダンスネットワークのアップコンバート(すなわち、入力と出力とが逆)のために、インピーダンスを適応させるための同様のアプローチが使用されてもよいことが理解されるであろう。