(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980510
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】差圧解消ドア及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
E06B 7/16 20060101AFI20160818BHJP
E06B 7/18 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
E06B7/16 Z
E06B7/18 D
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-5709(P2012-5709)
(22)【出願日】2012年1月14日
(65)【公開番号】特開2013-144893(P2013-144893A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391016886
【氏名又は名称】日本フネン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】村尾 均
(72)【発明者】
【氏名】和田 二三男
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−281155(JP,A)
【文献】
特開2006−089920(JP,A)
【文献】
特開2010−222848(JP,A)
【文献】
実開昭51−008647(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体(2)と、
ドア枠(3)と、
前記ドア本体(2)の室内側であって、前記ドア枠(3)の吊り元側、戸先側又は上枠、下枠のいずれかに設けられた、通常状態で前記ドア本体(2)の表面を押圧して気密性を発揮可能なエアタイトユニット(10)と、
前記エアタイトユニット(10)を、通常状態で前記ドア本体(2)の表面に押圧するよう付勢する押圧機構(11)と、
前記エアタイトユニット(10)を、押圧位置から待機位置に向かって水平方向に移動させる移動機構(12)と、
前記移動機構(12)を動作させるための制御機構(14)と、
を備えており、
前記ドア本体(2)の開放時に、前記制御機構(14)により前記移動機構(12)を作動させ、前記エアタイトユニット(10)を押圧位置から待機位置に移動させて気密状態を解除し、
前記ドア本体(2)を隔てた室内外の気圧差を解消可能に構成してなることを特徴とする差圧解消ドア。
【請求項2】
請求項1に記載の差圧解消ドアであって、
前記制御機構(14)の作動が、ドアノブ又は施錠機構と連動されてなることを特徴とする差圧解消ドア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の差圧解消ドアであって、
前記エアタイトユニット(10)が、前記ドア枠(3)の吊り元側に設けられてなることを特徴とする差圧解消ドア。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の差圧解消ドアであって、
前記移動機構(12)が、ソレノイドにより構成されてなることを特徴とする差圧解消ドア。
【請求項5】
ドア本体(2)と、
ドア枠(3)と、
前記ドア本体(2)の室内側であって、前記ドア枠(3)の吊り元側、戸先側又は上枠、下枠のいずれかに設けられた、通常状態で前記ドア本体(2)の表面を押圧して気密性を発揮可能なエアタイトユニット(10)と
を備える差圧解消ドアの使用方法であって、
前記ドア本体を閉塞した通常状態で、前記エアタイトユニット(10)を、前記ドア本体(2)の表面に押圧するよう押圧機構(11)で付勢する工程と、
前記ドア本体(2)を開放する際に、前記エアタイトユニット(10)を、押圧位置から待機位置に向かって水平方向に移動機構(12)で移動させるよう、制御機構(14)から指令を受けて、前記移動機構(12)を作動させ、前記エアタイトユニット(10)を押圧位置から待機位置に移動させて気密状態を解除させ、前記ドア本体(2)を隔てた室内外の気圧差を解消する工程と
を含む差圧解消ドアの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアの室内外の気圧差によってドアの開放時の負荷が大きくなる事態を解消した差圧解消ドア
及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のドアは密閉性が高く、このためドアを隔てた室内外の気圧に差が生じる。よって、ドアを閉塞状態から開放しようとすると、この気圧差によってドアが重くなる。気圧差が大きくなるほど、ドアを開けるのに要する力も大きくなり、高齢者や子供の力ではドアを容易に開放することができないこともある。
【0003】
このような問題を解消するために、ドアの開放時に室内外の気圧差を解消する構成が提案されている(例えば特許文献1から特許文献3)。例えば特許文献1のドアユニットは、
図9の水平断面図に示すような圧力差解消装置を有している。この例では、室外側からドアを開くことに先立って、ドア枠の袖部に設けられた圧力差解消装置を構成する室外プレート911のグリップ914を引っ張って、室外プレート911を袖部の室外側の表面プレート94Aから引き離す。室外プレート911が室外側の表面プレート94Aから離されると、室外側の表面プレート94Aに設けている通気穴96が開口される。この状態で、室外の空気は、室外側の表面プレート94Aに設けた通気穴96から袖部に流入し、さらに、袖部の室内側の表面プレート94Bに設けた通気穴から室内に流入する。すなわち、室外から室内に空気が流入して、室内と室外の圧力差は解消される。この状態でドアを軽く開くことができる。
【0004】
また特許文献2のドアの通気装置は、
図10の水平断面図に示すように、ドア100の表裏面に向けて開口する筒状本体101と、この筒状本体101の両端開口を閉鎖する2つのダンパ102A、102Bと、これら2つのダンパ102A、102Bをそれぞれ閉鎖方向に付勢するコイルばね103と、2つのダンパ102A、102Bを連結するリンク機構104とで構成されている。そして、一方のダンパ102Aが内部に向けて押し込まれると、リンク機構104によって他方のダンパ102Bも同時に内部に向けて移動し、筒状本体101の両端開口が開放されることとなる。すなわち、どちらか一方のダンパを指で押し込んで室外の空気を室内に取り入れることによって、室内外の圧力差を解消している。
【0005】
さらに特許文献3の差圧調整部材は、
図11の分解斜視図に示すように、ドア110に設けた通気可能な貫通孔113と位置合わせ可能な透孔部114を、ドア110のレバー116に設けている。そして、レバー116を回転させることによって、貫通孔113と透孔部114を連通させ、室内外の圧力差を解消している。
【0006】
また、ドアの開放時に、このドアの開放を補助する構成も提案されている(例えば特許文献4、特許文献5)。例えば特許文献4のドアシステムが備える扉体開放アシスト装置は、
図12の平面図に示すように、開口部閉鎖状態にあるドア120の開放時にドア120の戸先側を室外側に押し出してドア120の初動開放を行う押し出し部127と、押し出し部127を作動させる作動機構128と、作動機構128を制御する制御部とを備えている。制御部は、デッドボルトが解錠状態となり、かつ、ラッチが非係止状態となった時に作動機構128により押し出し部127を作動させてドア120の開放を補助している。
【0007】
さらに特許文献5の扉開放機構は、
図13の斜視図に示すように、扉本体130を囲う扉枠に設けられた枠側磁性体131と、扉本体130に設けられ枠側磁性体131に対向する位置に配置された扉本体側磁性体132とを備える。そして、ドアノブ133の作動に応じて磁性体を磁化させて、枠側磁性体131と扉本体側磁性体132との間に反発力を発生させることによって、扉本体130を開放方向に付勢して開くように構成している。
【0008】
さらに、室内外の気圧差を解消するものではないが、特許文献6には、
図14の斜視図に示すように、室内の出入口に設けられた扉140の下端に上下移動可能に設けられた気密材142を上下移動させることによって、常時は、扉140の下端と床との間に形成された隙間143により換気経路を確保し、必要時には、隙間143を封鎖して遮音性、気密性を確保することを可能とした24時間換気用遮音扉が開示されている。
【0009】
また一方、特許文献7には、
図15の斜視図に示すように、ドア150の長手方向に設けられた通気路151を、ドア150に設けられた収納部152に収納されている遮蔽部材153を出し入れ操作することによって遮断、開放するドア装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−209559号公報
【特許文献2】特開2007−92306号公報
【特許文献3】特開平11−166753号公報
【特許文献4】特開2011−208414号公報
【特許文献5】特開2010−222848号公報
【特許文献6】特開2006−057364号公報
【特許文献7】特開2009−46865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1や特許文献4の構成では、物理的に押圧のための機構が別途必要となり、構成が複雑化、大型化する上、システムが高価になるという問題があった。
【0012】
また、特許文献2の構成では、ドアの表面プレートに貫通孔を設けるので、この貫通孔がドア表面のデザインに影響を与える。このため、ドアの表面をすっきりと綺麗な意匠としながら大きな貫通孔を設けるのが難しい。また貫通孔を目立たないように小さくすると、室内に空気を流入して圧力差を解消するのに時間がかかり、ダンパを押し込んで直ちにドアを軽く開くことができない。
【0013】
また、特許文献3の構成によれば、ドアノブが回転式のレバー状となっているものにしか対応できず、近年一般的な縦方向に延長されたバーを傾ける動作のドアノブには適用できない。またドアノブ自体の交換が必要になる上、ドアノブのデザインも固定されてしまい、柔軟性に欠けるという問題もあった。
【0014】
また、特許文献5の扉開放機構は、構成自体は簡単であるが、室内外の気圧差は常に一定であるわけではないので、予め設定された電流値では十分な反発力が得られない場合がある。その解決手段として差圧センサを設け、気圧差の変動に応じて電流値を変化させることによって適切な反発力を発生させることも提案されている。しかしながら、このような構造では構成が複雑になると共に高価になるという問題があった。
【0015】
さらに、特許文献6や特許文献7の構成では、気密性、遮音性の確保と通気性の確保とを両立させるための機構が別途必要となり、同じく高価になる。また気密性、遮音性の確保の観点から、ドアとドア枠の建て付けに高精度が要求されるという問題もあった。
【0016】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、簡単な構成でドアの差圧を解消して開放時の負荷を軽減した差圧解消ドア
及びその使用方法を提供することにある。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の差圧解消ドアによれば、ドア本体2と、ドア枠3と、前記ドア本体2の室内側であって、前記ドア枠3の吊り元側、戸先側又は上枠、下枠のいずれかに設けられた、通常状態で前記ドア本体2の表面を押圧して気密性を発揮可能なエアタイトユニット10と、前記エアタイトユニット10を、通常状態で前記ドア本体2の表面に押圧するよう付勢する押圧機構11と、前記エアタイトユニット10を、押圧位置から待機位置に
向かって水平方向に移動させる移動機構12と、前記移動機構12を動作させるための制御機構14と、を備えており、前記ドア本体2の開放時に、前記制御機構14により前記移動機構12を作動させ、前記エアタイトユニット10を押圧位置から待機位置に移動させて気密状態を解除し、前記ドア本体2を隔てた室内外の気圧差を解消可能に構成できる。上記構成により、ドアの開放時にエアタイトユニットとドア本体の表面との間に隙間を形成することで、ドア本体とドア枠との隙間を介して室外から室内に空気が流入することによって差圧を解消することができ、気圧差でドアの開放応力が重くなる事態を解消できる。また、建て付け精度がまちまちでドア本体とドア枠に多少のばらつきがあっても、気密性、遮音性を常に確保することができる。さらに、気密性、遮音性を確保するためのエアタイトユニットを活用することによって、差圧解消のための別の機構を設ける必要が無く、低コストで簡易な構成により差圧を解消することができる。
【0018】
また、本発明の第2の差圧解消ドアによれば、前記制御機構14の作動が、ドアノブ又は施錠機構と連動させることができる。上記構成により、ラッチやデッドボルトの解除と連動させて差圧の解消を実行することができる。すなわち、ユーザは差圧解消機構の動作ON/OFFを意識することなく、ドアの開放時に差圧による負荷を低減することができる。
【0019】
さらに本発明の第3の差圧解消ドアによれば、前記エアタイトユニット10を、前記ドア枠3の吊り元側に設けることができる。上記構成によって、エアタイトユニットの設置スペースの確保が容易である。また、建て付け精度のばらつきへの対応も容易であり、気密性、遮音性を常に確保することができる。
【0020】
さらにまた本発明の第4の差圧解消ドアによれば、前記移動機構12を、ソレノイドにより構成することができる。上記構成により、ソレノイドに通電させて電磁石によってエアタイトユニットの移動を、簡易かつ安価に行えるという利点が得られる。
さらにまた本発明の第5の差圧解消ドアの使用方法によれば、ドア本体2と、ドア枠3と、前記ドア本体2の室内側であって、前記ドア枠3の吊り元側、戸先側又は上枠、下枠のいずれかに設けられた、通常状態で前記ドア本体2の表面を押圧して気密性を発揮可能なエアタイトユニット10とを備える差圧解消ドアの使用方法であって、前記ドア本体を閉塞した通常状態で、前記エアタイトユニット10を、前記ドア本体2の表面に押圧するよう押圧機構11で付勢する工程と、前記ドア本体2を開放する際に、前記エアタイトユニット10を、押圧位置から待機位置に向かって水平方向に移動機構12で移動させるよう、制御機構14から指令を受けて、前記移動機構12を作動させ、前記エアタイトユニット10を押圧位置から待機位置に移動させて気密状態を解除させ、前記ドア本体2を隔てた室内外の気圧差を解消する工程とを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例に係る差圧解消ドアの正面図である。
【
図3】
図2に示す差圧解消ドアの水平方向断面図である。
【
図4】
図3に示す差圧解消ドアのエアタイトユニットの平面図である。
【
図5】
図4に示すエアタイトユニットのV−V線における断面図である。
【
図6】
図4に示すエアタイトユニットのVI−VI線における断面図である。
【
図7】
図4に示すエアタイトユニットのVII−VII線における断面図である。
【
図8】本発明の一実施例に係る差圧解消ドアの概略説明図である。
【
図11】従来のさらに他のドアを示す分解斜視図である。
【
図12】従来のさらに別のドアを示す平面図である。
【
図13】従来のさらに別のドアを示す斜視図である。
【
図14】従来のさらに別のドアを示す斜視図である。
【
図15】従来のさらに別のドアを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための差圧解消ドア
及びその使用方法を例示するものであって、本発明は差圧解消ドア
及びその使用方法を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0023】
図1は、本発明の一実施例に係る差圧解消ドアを室外側から見た正面図、
図2は背面図(室内側から見た正面図)、
図3は水平方向断面図である。本実施例に係る差圧解消ドア1は、ドア本体2と、ドア本体2を囲うドア枠3と、ドア枠3にドア本体2を回動自在に取り付けるヒンジ4を含む。ドア枠3は、上枠3A、下枠3B、吊り元側枠3C及び戸先側枠3Dで構成され、吊り元側枠3Cに設けたヒンジ4によってドア本体2が取り付けられている。
【0024】
ドア本体2は、ドアノブ5を備える。ドアノブ5の種類は特に限定されず、プッシュバー、プッシュグリップ、プッシュ平板、レバーハンドル等、何れの態様であってもよい。ドア本体2には、ドアノブ5の操作によってドア本体2の戸先側端面2Aから出没可能なラッチ(図示せず)が設けられている。そして、このラッチが相対する戸先側枠3Dの位置には、戸先側端面2Aから出たラッチを挿入可能なラッチ用ストライク6が設けられている。すなわち、ラッチ用ストライク6にラッチが挿入されることによってドア本体2の回動が規制され、ドア本体2の閉鎖状態が維持される。反対に、ドアノブ5の操作によってラッチをドア本体2内に没入させ、ラッチとラッチ用ストライクとの係止状態が解除されることによって、ドア本体2を開放することが可能となる。
【0025】
また、ドアノブ5の上下には施錠機構7を備える。ドア本体2には、室外側に備える鍵穴7Aに鍵を差し込んで回動させる、或いは室内側に備えるつまみ7Bを回動させることによってドア本体2の戸先側端面2Aから出没可能なデッドボルト(図示せず)が設けられている。デッドボルトが相対する戸先側枠3Dの位置には、戸先側端面2Aから突出したデッドボルトを挿入可能なデッドボルト用ストライク(図示せず)が設けられている。すなわち、鍵穴7Aに差し込んだ鍵、或いはつまみ7Bを回動させてデッドボルト用ストライクにデッドボルトを挿入することによってドア本体2が施錠状態となる。反対に、デッドボルトをドア本体2内に没入させ、デッドボルトとデッドボルト用ストライクとの係止状態を解除することによって解錠状態となり、ドア本体2を開放することが可能となる。
【0026】
そして、ドア本体2の室内側であって、ドア枠3における吊り元側枠3Cの側面には、
図3から
図8に示すエアタイトユニット10が設けられている。エアタイトユニット10は、長尺のエアタイトゴム10Aと、エアタイトゴム10Aを嵌入可能な溝10Bを備える長尺のエアタイトバー10Cと、を含んで構成される。通常状態、すなわちドア本体2が閉鎖状態の時には、エアタイトバー10Cが備える溝10Bに嵌入されたエアタイトゴム10Aの先端部でドア本体2の表面を押圧することによって、気密性、遮音性が発揮される。エアタイトユニット10は、通常状態で押圧機構11により室内側からドア本体2側に向かって、ドア本体2の表面を押圧するように付勢されている。従って、通常状態、すなわちドア本体2が閉鎖状態の時には、押圧機構11によってエアタイトユニット10にかかるエアタイトゴム10Aが室内側からドア本体2側に向かってドア本体2の表面を押圧するように付勢されるため、エアタイトゴム10Aの先端部とドア本体2の表面とが密着し、気密性、遮音性が確実に発揮される。なお、押圧機構11としては図示したコイルスプリングが挙げられるが、エアタイトユニット10を室内側からドア本体2側に向かって、ドア本体2の表面を押圧するように付勢することが可能であればコイルスプリングに限定されるものではなく、油圧シリンダーやエアシリンダー、板バネ等であってもよい。
【0027】
また、エアタイトユニット10は、エアタイトユニット10をドア本体2側から室内側に向かって移動させる移動機構12を備える。上記の通り、エアタイトユニット10は、通常状態で押圧機構11により室内側からドア本体2側に向かって、ドア本体2の表面を押圧するように付勢されている。ドア本体2の表面を押圧している状態のエアタイトユニット10の位置、すなわち「押圧位置」にエアタイトユニット10が位置するとき、エアタイトゴム10Aの先端部とドア本体2の表面とが密着し、気密性、遮音性が確実に発揮される。そして、エアタイトユニット10を、移動機構12によって押圧位置から室内側に向かって移動させると、エアタイトゴム10Aとドア本体2の表面との密着状態が解除され、エアタイトゴム10Aとドア本体2の表面との間に隙間が形成される。この隙間が形成されることによって、ドア本体2とドア枠3にかかる吊り元側枠3Cとの隙間を介して室内外の通気が可能となる。なお、エアタイトユニット10を押圧位置から室内側に向かって移動させ、エアタイトゴム10Aとドア本体2の表面との間に隙間が形成されたときのエアタイトユニット10の位置を「待機位置」とする。すなわち、押圧位置にあるエアタイトユニット10は、移動機構12によって待機位置に移動させることができる。また、移動機構12によるエアタイトユニット10の移動距離は特に限定されないが、6〜10mm移動させることによって、エアタイトゴム10Aとドア本体2の表面との間に十分な隙間を形成することができる。
【0028】
エアタイトユニット10、押圧機構11及び移動機構12は、長尺のケーシング13内に配設され、ドア枠3にかかる吊り元側枠3Cに固定されている。エアタイトユニット10は、ケーシング13の長手方向に対して垂直方向に移動可能に取り付けられている。通常状態でのエアタイトユニット10は押圧機構11によって付勢されているため、エアタイトユニット10にかかるエアタイトゴム10Aの先端部は、ケーシング13から突出した状態となる。また、移動機構12によってエアタイトユニット10をケーシング13の長手方向に対して垂直方向に移動させることによって、エアタイトゴム10Aの先端部をケーシング13内に収めることができる。
【0029】
移動機構12としては、磁力でプランジャー12Bを往復運動させるソレノイド12Aが挙げられる。ソレノイド12Aはケーシング13に固定され、プランジャー12Bの先端をエアタイトユニット10に連結している。ソレノイド12Aはプル型のソレノイドであって、通電によりプランジャー12Bは磁気的な吸引力で引き込まれる。すなわち、通電しない状態ではプランジャー12Bに磁気的な吸引力は作用せず、エアタイトユニット10は押圧機構11によって付勢され、押圧位置に位置する。反対に、通電することによってプランジャー12Bに磁気的な吸引力が作用してプランジャー12Bがソレノイド12A内に引き込まれると、プランジャー12Bの移動に伴ってエアタイトユニット10は待機位置に移動することとなる。なお、エアタイトユニット10を押圧位置から待機位置に移動可能であれば、移動機構12は例示したソレノイド12Aに限定されず、油圧シリンダーやエアシリンダー、モータ、ギア等も適用できる。
【0030】
そして、本実施例の差圧解消ドア1は、移動機構12であるソレノイド12Aを動作させるための制御機構14を備えている。制御機構14は、差圧低減スイッチ14Aと、差圧低減スイッチ14Aからの信号によって移動機構12であるソレノイド12Aに通電を行う制御部14Bと、電源14Cと、を含んで構成される。差圧低減スイッチ14Aはドアノブ5と連動されており、ドアノブ5の操作によって差圧低減スイッチ14AがONとなる。また、制御部14Bは、差圧低減スイッチ14AからのON信号によってカウントを開始し、ソレノイド12Aへの通電時間を計測するためのタイマを備える。従って、ドアノブ5を操作して差圧低減スイッチ14AがONになると、このON信号が制御部14Bに送信される。制御部14Bでは、ON信号を受信することによって電源14Cから移動機構12であるソレノイド12Aへの通電を開始すると共に、タイマによって通電時間を計測する。ソレノイド12Aへの通電によってエアタイトユニット10は押圧位置から待機位置に移動する。タイマに記憶されている所定時間が経過すると通電は停止され、エアタイトユニット10は押圧機構11によって待機位置から押圧位置へ移動する。
【0031】
以上の構成からなる本実施例の差圧解消ドア1によれば、以下のように室内外の気圧差を解消することによって、ドア本体2の開放時の負荷を軽減することができる。まず、
図3に示す通常状態、すなわちドア本体2が閉鎖した状態では、エアタイトユニット10は押圧機構11によって室内側からドア本体2側に向かって押圧するように付勢され、押圧位置に位置している。このとき、エアタイトユニット10にかかるエアタイトゴム10Aの先端部はドア本体2の表面に密着しており、気密性、遮音性が確保されている。
【0032】
ドア本体2を開放するに当たって、施錠機構7による施錠を解錠し、ドアノブ5を操作する。ドアノブ5の操作によってラッチをドア本体2内に没入させ、ラッチとラッチ用ストライク6との係止状態を解除する。すると、ドアノブ5の操作、換言すればラッチとラッチ用ストライク6との係止状態の解除操作に連動して、制御機構14にかかる差圧低減スイッチ14AがONとなる。この差圧低減スイッチ14AのON信号は、制御機構14にかかる制御部14Bに送信される。ON信号を受信した制御部14Bは、電源14Cから移動機構12であるソレノイド12Aへの通電を開始すると共に、タイマによる通電時間の計測を開始する。
【0033】
ソレノイド12Aへの通電が開始されると、プランジャー12Bに磁気的な吸引力が作用してプランジャー12Bがソレノイド12A内に引き込まれる。すると、プランジャー12Bの移動に伴って、プランジャー12Bに連結されたエアタイトユニット10は待機位置に移動することとなる。エアタイトユニット10が待機位置に移動することによって、エアタイトゴム10Aはケーシング13内に収められ、エアタイトゴム10Aとドア本体2の表面との密着状態が解除される。エアタイトゴム10Aとドア本体2の表面との密着状態が解除されることによって、エアタイトゴム10Aとドア本体2の表面との間には隙間が形成される。この隙間が形成されることによって、ドア本体2とドア枠3にかかる吊り元側枠3Cとの隙間を介して室内外が導通し、通気が可能となる。この状態で室外の空気が室内に流入することによって室内外の気圧差は解消され、ドア本体2を容易に開放することができる。
【0034】
また、ドア本体2の開放動作と並行して、制御機構14が備えるタイマがソレノイド12Aへの通電時間を計測している。タイマに予め記憶されている通電時間(数秒間)が経過した時点で制御部14Bは電源14Cからソレノイド12Aへの通電を停止する。ソレノイド12Aへの通電が停止すると、プランジャー12Bに磁気的な吸引力は作用しなくなり、エアタイトユニット10は押圧機構11によって待機位置から押圧位置へ移動する。この状態で開放されたドア本体2が閉鎖されると、エアタイトユニット10におけるエアタイトゴム10Aがドア本体2の表面に密着し、再び気密性、遮音性が確保されることとなる。
【0035】
以上、本発明の差圧解消ドアの一実施例について詳述したが、本発明は上記の実施例に限定されない。例えば、上記の実施例にかかる差圧解消ドア1では、制御機構14にかかる差圧低減スイッチ14Aをドアノブ5と連動させたが、施錠機構7と連動させてもよい。すなわち、鍵穴7Aに差し込んだ鍵、或いはつまみ7Bを回動させてデッドボルトをドア本体2内に没入させ、デッドボルトとデッドボルト用ストライクとの係止状態を解除することによって、差圧低減スイッチ14AがONとなる構成としてもよい。通常はドアノブ5の操作に先だって施錠機構7による施錠の解錠操作が行われる。従って、施錠機構7と連動させることにより、ドアノブ5と連動させる場合に比べて、室内外の通気時間を若干長めに確保することができ、差圧解消効果をより高めることができる。さらには、ドアノブ5と施錠機構7の双方に連動させる構成であってもよい。すなわち、施錠機構7による施錠を解錠し、かつドアノブ5を操作した場合に差圧低減スイッチ14AがONとなる構成としてもよい。
【0036】
またさらに、制御機構14にかかる差圧低減スイッチ14Aを、ドア本体2の表面や袖部8に別途設けてもよい。例えば、押しボタン式の差圧低減スイッチ14Aをドア本体2の表面に設け、ドア本体2の開放時にこの押しボタンを押下することによって制御部14BにON信号を送信し、移動機構12を作動させる構成としてもよい。
【0037】
また、上記の実施例ではエアタイトユニット10、押圧機構11及び移動機構12を長尺のケーシング13内に配設し、ドア枠3にかかる吊り元側枠3Cに固定している。吊り元側枠3Cに設けることによって、エアタイトユニット10の設置スペースの確保が容易である。また、ドア本体2の表面を広く確保することができるため、建て付け精度にばらつきがあっても、エアタイトゴム10Aをドア本体2の表面へ密着させることが容易であり、気密性、遮音性を常に確保することができる。しかし、エアタイトユニット10等は、戸先側枠3Dの側面に設けられてもよい。
図3に示すように、戸先側枠3Dの側面にも気密性、遮音性の確保の観点からエアタイトゴム10Bが設けられている。すなわち、このエアタイトゴム10Bを、エアタイトユニット10等と同様の構成とすることも可能である。
【0038】
さらには、押圧機構11と移動機構12とを一体に構成してもよい。すなわち、往復運動が可能な要素、例えば油圧シリンダーやエアシリンダー、ギア、モータ等を採用し、エアタイトユニット10を押圧位置と待機位置との間で往復移動させることによって、ドア本体2の表面を押圧する方向への付勢と、待機位置への移動とを一の要素で実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る差圧解消ドア
及びその使用方法は、一般のマンション用ドアや、室内のガスが室外に漏れないようにするために、室内側の圧力を室外よりも低くしたドア等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1…差圧解消ドア
2…ドア本体;2A…戸先側端面
3…ドア枠;3A…上枠;3B…下枠;3C…吊り元側枠;3D…戸先側枠
4…ヒンジ
5…ドアノブ
6…ラッチ用ストライク
7…施錠機構;7A…鍵穴;7B…つまみ
8…袖部
10…エアタイトユニット
10A…エアタイトゴム;10B…溝;10C…エアタイトバー
11…押圧機構
12…移動機構;12A…ソレノイド;12B…プランジャー
13…ケーシング
14…制御機構;14A…差圧低減スイッチ;14B…制御部;14C…電源
94A…室外側の表面プレート;94B…室内側の表面プレート
96…通気穴
911…室外プレート
914…グリップ
100…ドア
101…筒状本体
102A…ダンパ;102B…ダンパ
103…コイルばね
104…リンク機構
110…ドア
113…貫通孔
114…透孔部
116…レバー
120…ドア
127…押し出し部
128…作動機構
130…扉本体
131…枠側磁性体
132…扉本体側磁性体
133…ドアノブ
140…扉
142…気密材
143…隙間
150…ドア
151…通気路
152…収納部
153…遮蔽部材