(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980571
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】無線通信アンテナを備えたキュービクル
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20160818BHJP
H02B 1/04 20060101ALI20160818BHJP
H01Q 1/44 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
H02B1/04 A
H01Q1/44
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-119731(P2012-119731)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-247504(P2013-247504A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌幸
【審査官】
米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−172269(JP,A)
【文献】
実開昭62−026912(JP,U)
【文献】
特開昭62−139401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 1/44
H02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュービクルの筺体に、補強用の金網が埋設された窓ガラスが装着されて成り、
当該窓ガラスの周面において前記金網の露出部が接続されたアンテナ端子と、前記アンテナ端子に接続された給電線とを有し、
前記給電線を介して筐体内部の無線通信ユニットが前記金網に接続されて、前記金網が無線通信ユニットのアンテナとして使用されることを特徴とするキュービクル。
【請求項2】
前記アンテナ端子が窓ガラスの周縁に沿って延びる導線を含み、導線が窓ガラスの周面に露出する金網の露出部に接続される請求項1記載のキュービクル。
【請求項3】
前記アンテナ端子が筐体と窓ガラスとの間の空隙部に配置され、金属製の筐体から電気的に絶縁されている請求項1または2記載のキュービクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筺体の一部に無線通信用のアンテナを装備したキュービクルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部機器の計測データや動作情報を無線で外部に送信するために、無線通信ユニットを装備したキュービクルが知られている。この種のキュービクルは、内部機器を保護するために筺体が金属板で形成されているため、電波が金属板で遮蔽され、通信に支障を来たすことがある。そこで従来、電波を中継するアンテナを筺体の外部に立設したキュービクルが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、
図6に示すようなキュービクル51において、筺体52の内部に無線装置(図示略)を設置し、筺体52の外部に支持柱一体型アンテナ53を立て、アンテナ53の給電線(フィーダ線)を筺体52に開けた穴(通線口)に通して無線装置に接続する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−316713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のキュービクル51によると、筺体52の外部に長大なアンテナ53が露出するため、キュービクル51の外観の見栄えが悪くなる不都合があった。また、筺体52の一部に穴を開けるため、筺体52の剛性が低下し、内部機器の保護機能に悪影響を及ぼすという問題点もあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、内部機器の保護機能を低下させることなく、無線通信用のアンテナを筐体に見栄えよく装備できるキュービクルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は次のようなキュービクルを提供する。
(1)
キュービクルの筺体に、補強用の金網が埋設された窓ガラスが装着されて成り、
当該窓ガラスの周面において金網の露出部が接続されたアンテナ端子
と、アンテナ端子に接続された給電線
とを有し、給電線を介して筐体内部の無線通信ユニット
が金網に接続
されて、金網
が無線通信ユニットのアンテナとして使用
されることを特徴とするキュービクル。
【0009】
(
2)アンテナ端子が窓ガラスの周縁に沿って延びる導線を含み、導線が金網の露出部に接続されていることを特徴とするキュービクル。
【0010】
(
3)窓ガラスの周面と筐体との間に、アンテナ端子を筐体から電気絶縁するための空隙部が形成されていることを特徴とするキュービクル。
【発明の効果】
【0011】
本発明のキュービクルによれば、筐体の窓ガラスにアンテナ端子を設けたので、窓ガラスの補強用金網をアンテナとして兼用でき、筐体に穴を開けたり、専用アンテナを立てたりする必要がなくなり、機器保護機能を維持し、外観の見栄えを向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態を示すキュービクルの斜視図である。
【
図2】窓ガラスの取付構造を示す前面扉の部分断面図である。
【
図3】窓ガラス周面のアンテナ端子を示す前面扉の部分拡大図である。
【
図4】キュービクルの一使用例を示す店舗施設の斜視図である。
【
図5】店舗との無線通信形態を示すキュービクルの側面図である。
【
図6】従来のアンテナ付きキュービクルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すキュービクル1は金属製の筺体2を備え、筺体2の前面扉3に窓ガラス4が装着されている。窓ガラス4の全域には補強用の金網5が埋設され、窓ガラス4の周面にアンテナ端子6が設けられている。そして、アンテナ端子6が金網5と給電線7に接続され、給電線7が筐体2の内側に設置された無線通信ユニット8(
図5参照)に接続されている。
【0014】
なお、キュービクル1の窓には、JIS R 3204に規定する厚さ6.8mm以上の金網入りガラスまたは同等以上の機械的強度と防火性能を持つものを用いる必要がある(日本配電盤工業規格 JSIA200 キュービクル式高圧受電設備通則 抜粋)。
【0015】
図2に示すように、窓ガラス4は、前面扉3の開口部10を塞ぐように配置され、ゴム等の非導電性柔軟材料からなる窓枠11によって押え金具12に押圧保持されている。押え金具12は前面扉3の裏面に固定され、ガラス窓4の周面と押え金具12との間に空隙部13が形成されている。そして、アンテナ端子6が押え金具12と非接触の状態で空隙部13に配置され、筐体2の前面扉3から電気的に絶縁されている。
【0016】
図3(a),(b)に示すように、金網5の一部は窓ガラス4の周面から空隙部13に露出し、アンテナ端子6が金網5の露出部5aに接続されている。
図3(a)に示すアンテナ端子6は、金網5の一部の露出部5aに点状に接続されている。
図3(b)に示すアンテナ端子6は、窓ガラス4の周縁に沿って延びる導線15を備え、導線15が金網5の複数の露出部5aに連続的に接続されている。
【0017】
上記のように構成されたキュービクル1は、例えば、
図4に示すような店舗21の敷地内に設置される。店舗21には照明、冷凍、冷蔵、空調等の各種負荷機器22(代表的に空調室外機を図示)が設備されている。キュービクル1は、筺体2の内部に受配電機器(図示略)を装備し、配電線路23から受電した高圧を所要の低圧に変圧したのち、低圧電力を負荷機器22に供給する。
【0018】
図5に示すように、キュービクル1の筐体2内には計測機能を備えた無線通信ユニット8が設置され、店舗21内にデマンド制御ユニット24が設置されている。そして、無線通信ユニット8が電力使用情報、環境情報、機器動作情報等の計測データを無線で送信し、窓ガラス4が無線電波をキュービクル1から店舗21に中継し、デマンド制御ユニット24が受信データに基づいて負荷機器22の稼動を制御するようになっている。
【0019】
したがって、この実施形態のキュービクル1によれば、次のような作用効果が得られる。
(a)窓ガラス4の金網5をアンテナとして利用することで、筐体2に穴を開けたり、専用アンテナを立てたりする必要がなくなり、本来の機器保護機能を維持でき、外観の見栄えも向上する。
(b)金網5の露出部5aにアンテナ端子6を設けたので、窓ガラス4に特別な加工をしなくても、金網5をアンテナとして利用できる。
(c)特に、窓ガラス4の周縁に沿って延びる導線15を露出部5aに接続した場合は、この導線15を窓ガラス4の外部アンテナとしても使用できる利点がる。
(d)アンテナ端子6を窓ガラス4と押え金具12との間の空隙部13に配置したので、金網5と給電線7を金属製の筐体2から電気絶縁することができる。
【0020】
なお、上記実施形態では、金網入りの窓ガラス4が前面扉3に装備されているが、筐体2の側面や背面に窓ガラスを装備したキュービクルの場合でも、その窓ガラスの補強用金網をアンテナとして兼用することができる。その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 キュービクル
2 筺体
3 前面扉
4 窓ガラス
5 金網
6 アンテナ端子
7 給電線
9 無線通信ユニット
13 空隙部
15 導線