(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブロー成形用の金型(1)と、有底筒状のプリフォーム(31)を金型(1)に装着した状態で、該プリフォーム(31)の口筒部(32)に密に連通するブローノズル(4)と、延伸ロッド(8)を有し、前記延伸ロッド(8)による縦延伸と、前記ブローノズル(4)を介してプリフォーム(31)内に供給される加圧した液体(L)による膨張状の延伸により容器(41)を賦形するブロー成形装置であって、
前記ブローノズル(4)に軸方向に沿って円筒棒状の軸体(9a)を挿通、配設し、該軸体(9a)の下端部に短円筒状のシール筒片(9t)を同軸心状に嵌合組み付けし、該シール筒片(9t)の下端に同軸心状に円筒状のロッドガイド(9g)を連結し、前記、連結した軸体(9a)とシール筒片(9t)とロッドガイド(9g)に前記延伸ロッド(8)が挿通し、さらにロッドガイド(9g)には延伸ロッド(8)が摺動可能に周接状に挿通する構成とし、前記軸体(9a)とシール筒片(9t)とロッドガイド(9g)と延伸ロッド(8)でシール体(9)を構成し、前記ブローノズル(4)の内周面とシール体(9)の外周面で円筒状の液体(L)の供給路(Fs)を形成し、前記ブローノズル(4)の所定位置の内周面に下方に向けて縮径するシール段部(6s)を配設し、前記シール筒片(9t)の周縁部の前記シール段部(6s)への当接と脱当接により前記供給路(Fs)の開閉が可能にバルブ機構(Vm)を配設する構成とし、前記バルブ機構(Vm)の閉状態でロッドガイド(9g)が、ブローノズル(4)のシール段部(6s)直下の縮径部(6d)に嵌入し、前記バルブ機構(Vm)の開状態でロッドガイド(9g)が縮径部(6d)から上方に脱嵌入する構成としたブロー成形装置。
ブローノズル(4)の下端部にプリフォーム(31)の口筒部(32)に嵌入する嵌入筒片(5)を配設し、該嵌入筒片(5)の外周壁に下方に向かって縮径する周段部(5a)を周設し、該周段部(5a)と口筒部(32)の上端面のシール部材(7a)を介した当接により、前記ブローノズル(4)を口筒部(32)に密に連通する構成とした請求項1、2または3記載のブロー成形装置。
バルブ機構(Vm)の閉状態で、供給路(Fs)と加圧した液体(L)を供給する加圧液体供給部(22)で液体(L)の循環が可能に構成した請求項1、2、3または4記載のブロー成形装置。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製のブロー成形壜体(所謂、ペットボトル)が、数多くの優れた特性を発揮することから、壜体容器として多方面で使用されている。
この種の容器は、有底筒状に射出成形されたプリフォームを、延伸効果を発現させることのできる温度に加熱した状態で、膨張状に延伸させて成形されるのが一般的である。
【0003】
すなわち、
図8(特許文献1の
図12に相当する。)に示すように、延伸効果が発現する温度に加熱されたプリフォーム31を、口筒部32を上方に突き出させ、プリフォーム31の口筒部32の外周面下端に一体周設したネックリング33をネック支持鍔部103に係止させた状態でブロー金型101に装着し、
ブローノズル104の下端部であるガイド筒部110をプリフォーム31の口筒部32に緩く嵌入した状態で、
ブローノズル104の中央に貫通形成された挿通孔111を通して挿通される延伸ロッド108により軸方向に延伸すると共に、挿通孔111を通して加圧流体であるブローエアにより径方向に膨張状に延伸して、壜体41への成形を達成する。
【0004】
また、特許文献2には加圧媒体としてエアの替わりに液体を使用してプリフォームをブロー成形する方法に係る発明が記載されている。
このような成形方法では、液体として製品に最終的に充填される内容液を使用すれば、充填工程を省略することができ生産ラインを簡略化することが可能となる。
【0005】
図9(a)は加圧流体として液体を使用してプリフォームをブロー成形する、従来のブロー成形装置の概略説明図である。
この装置の主部Aは金型1、ブローノズル104、ブローノズル104に挿通しプリフォームを縦延伸するための延伸ロッド108を有し、この主要部Aに隣接して加圧流体を供給するための付属設備として加圧液体供給部122と液体循環部123を配置している。
【0006】
加圧液体供給部122はプランジャーポンプ状で、加圧ポンプやコンプレッサー等の加圧装置121から配管P1を介して供給される加圧流体Fpを動力源として作動し、加圧した液体Lを配管P2、電磁バルブV101を介してブローノズル104を経て、ブローノズル104の先端部に密に外嵌するプリフォーム31の内部に供給することができる。
そして、延伸ロッド108による縦延伸と加圧した液体Lによる膨張状の延伸によりプリフォーム31を金型1のキャビティ形状に沿って賦形し、容器41を成形する。
【0007】
ここで通常、ブローノズル104の下端部には縦延伸時における延伸ロッド108の姿勢を支持するため、円筒状のロッドガイド104gを配設する。
図9(b)はこのロッドガイド104gの平断面図であるが、この例では周方向の8カ所で花弁状に切込みを入れて、液体をプリフォーム内に流入するための流路Fcが形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、
図9(a)、(b)に示したようなロッドガイド104gを配設したブロー成形装置を使用し、加圧媒体として液体を使用して2軸延伸ブロー成形を実施する場合、ロッドガイド104gによりプリフォームの31の縦延伸工程における延伸ロッド108の姿勢をぶれることなく安定した姿勢で支持することができる。
しかしながら、ブローノズル104の先端部、すなわちプリフォーム31の口筒部32の内部と云う限定された領域に流路Fcが切欠き状に形成されたロッドガイド104gを配設するため、流路面積が狭くなり、プリフォーム内部への液体Lの供給速度を大きくすることができず、プリフォーム内の昇圧に時間を要するため、生産性が低下すると云う問題がある。
さらには、プリフォームの延伸性、延伸に伴う分子の配向挙動や結晶化挙動に悪影響が及ぶと云う問題がある。
【0010】
また、ロッドガイド104gの配設位置を口筒部32よりも上方位置とすることにより流路面積を大きくすることは可能ではあるが、液体Lの流路を確保しながら延伸ロッド108の支持機能を発揮させるために、流路を切欠き状に形成する必要があり、この切欠き構造のために液体が流動する際に泡が発生し、この泡のために膨張変形挙動が不安点になったり、最終製品の内容液中に気泡が残ったりすると云う問題が生じる。
【0011】
そこで本発明は、加圧媒体として飲料、化粧品、薬品等の、最終的に製品に充填される液体を使用し、延伸ロッドによる縦延伸と加圧した液体による膨張状の延伸により容器を成形するブロー成形装置において、
延伸ロッドの姿勢支持機能と液体の流動性を共に高いレベルで実現可能な、ロッドガイドおよびそのブローノズル内での配設方法を創出することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明のうち、主たる構成は、
ブロー成形用の金型と、有底筒状のプリフォームを金型に装着した状態で、プリフォームの口筒部に密に連通するブローノズルと、延伸ロッドを有し、延伸ロッドによる縦延伸と、ブローノズルを介してプリフォーム内に供給される加圧した液体による膨張状の延伸により容器を賦形するブロー成形装置において、
ブローノズルの軸方向に沿って移動可能に円筒棒状の軸体を挿通、配設し、
この軸体の下端部に短円筒状のシール筒片を同軸心状に嵌合組み付けし、
この
シール筒片(9t)の下端に同軸心状に円筒状のロッドガイドを連結し、
連結した軸体
とシール筒片とロッドガイドに延伸ロッドが挿通し、さらにロッドガイドには延伸ロッドが摺動可能に周接状に挿通する構成とし、
軸体
とシール筒片とロッドガイドと延伸ロッドでシール体を構成し、
ブローノズルの内周面とシール体の外周面で円筒状の液体の供給路を形成し、
ブローノズルの所定位置
の内周面に下方に向けて縮径するシール段部を配設し、
シール筒片の
周縁部のシール段部への当接と脱当接により供給路の開閉が可能にバルブ機構を配設する構成とし、
バルブ機構の閉状態でロッドガイドが、ブローノズルのシール段部直下の縮径部に嵌入し、
バルブ機構の開状態でロッドガイドが縮径部から上方に脱嵌入する構成とする、と云うものである。
【0013】
上記構成の装置によれば、
まず、軸体の下端に連結したロッドガイドに延伸ロッドが摺動可能に周接状に挿通する構成とすることにより、金属材料が使用される軸体と延伸ロッドの間に、耐磨耗性、滑り性等の観点から設ける必要のある隙間に起因する延伸ロッドの姿勢のガタツキ、所謂、芯ブレを抑制することができ、延伸ロッドによるプリフォームの縦延伸をスムーズに実施することが可能となる。
また、ロッドガイドは短円筒状とすることができ、延伸ロッドとの周接面積を小さくし、延伸ロッドの摺動抵抗を小さくして、摺動動作をスムーズに達成することができる。
【0014】
さらに、バルブ機構を閉状態として縦延伸する場合には、ロッドガイドをシール段部の直下の縮径部に嵌入した状態、すなわちロッドガイドをブローノズルの縮径部の周壁により支持された状態とすることができ、
ロッドガイドを介して、縮径部による延伸ロッドの姿勢を支持する機能が十分に発揮され、上記した延伸ロッドの芯ブレを抑制する作用効果が相俟って、延伸ロッドによるプリフォームの縦延伸を、芯ブレのない、また芯ズレのない状態で均一に実施することができる。
【0015】
そして、プリフォームを加圧した液体により膨張状に延伸する工程では、バルブ機構を開状態とすることにより、ロッドガイドをシール段部直下の縮径部から脱嵌入した状態とし、ブローノズルの内周面と延伸ロッドの外周面で形成され、切欠きがなく、かつ十分な流路面積を有する円筒状の、プリフォームの内部に連通する液体の流路を形成することができ、
上記したロッドガイドによる均一な縦延伸性と相俟って、容器の賦形を安定した状態、そして高い生産性で実施することができる。
【0016】
また、加圧液体として飲料、化粧品、薬品等の、最終的に製品に充填される液体を使用し、これら液体を最終的に充填した製品を製造する場合には、
成形と同時に、内容液が充填された容器におけるヘッドスペースを所定の量に高精度に制御する必要があり、
このヘッドスペースは、ブロー成形の最終段階で延伸ロッドを口筒部から脱挿入する分、供給路に残留した液が容器の内部に流入して決まるものであるが、
上記構成では、液の供給を停止するためのバルブ機構がブローノズル内に配設されているので、このバルブ機構をプリフォームの口筒部の直上にも配設することもでき、バルブ機構直下からプリフォームの口筒部の上端にかけての供給路部分に残留する液の量を少なくして高精度で計量することができ、ヘッドスペースをより高精度に制御することが可能となる。
【0017】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、ロッドガイドをポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製とする、と云うものである。
【0018】
ロッドガイドは延伸ロッドの芯ブレを抑制する機能を発揮するものであり、金属を使用する延伸ロッドが、周設状に挿通し、高速で繰り返し摺動するため、耐熱性、耐久性、耐摩耗性、滑り性が求められる部材であり、エンジニアリングプラスチックや、所謂、スーパーエンジニアリングプラスチックのなかから、用途によって食品衛生性等も考慮しながら適宜選ぶことができる。
この中でも、スーパーエンジニアリングプラスチックの一つであるPEEK樹脂はこれらの性能を十分発揮できる材料であり、ロッドガイドに適した材料である。
この他にも、ロッドガイドに適した材料として、エンジニアリングプラスチックであるポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等、スーパーエンジニアリングプラスチックであるポリスルフォン(PSF)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリフェニレンスルファイド(PPS)樹脂等を挙げることができる。
【0019】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、
軸体の下端部
に短円筒状のシール筒片が拡径同軸心状に嵌合組み付いて構成されており
、
このシール筒片の下端に縮径状にロッドガイドを連結する構成とする、と云うものである。
【0020】
上記構成によれば、軸体の下端部を拡径同軸心状の短円筒状のシール筒片で構成することにより、軸体の下端部の径を大きく調整することができシール体によるバルブ機構の構成の設計の自由度を大きくすることができ、シール機能を十分に発揮させることが可能となる。
また、軸体の下端部の径を大きくすることにより、その分ロッドガイドの径、そして縮径部の径を大きくすることができ、使用目的に応じて液体の流路設計の自由度を大きくすることが可能となる。
【0021】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、
ブローノズルの下端部にプリフォームの口筒部に嵌入する嵌入筒片を配設し、この嵌入筒片の外周壁に先端に向かって縮径する周段部を周設し、この周段部と口筒部の上端面のシール部材を介した当接により、ブローノズルを口筒部に密に連通する構成とする、と云うものである。
【0022】
上記構成は、ブローノズルを口筒部に密に連通するためのシール方法に係るものであるが、上記構成によりシンプルな構成でシール性を確実に保持することができ、またプリフォームの装着、脱装着についても高速で実施でき、さらにシール部材の交換を含む保守管理も容易に実施することができる。
勿論、上記シール方法に関する構成は一例であり、シール性、生産性等を考慮して適宜のシール方法を採用することができる。
【0023】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、バルブ機構の閉状態で、供給路と加圧した液体を供給する加圧液体供給部で液体の循環が可能に構成する、と云うものである。
【0024】
加圧流体として液体を使用するブロー成形では、プリフォームの口筒部を除く部分を延伸状のブロー成形に適した温度に予備加熱し、加圧した液体をプリフォーム内に供給し、膨張状に延伸して容器を賦形するが、液体の場合には気体に比較してプリフォームとの熱伝導が大きく、この液体の温度によってプリフォームの温度が大きく変化するため、プリフォーム内に供給する液体の温度を高い精度で制御する必要がある。
上記構成によれば、プリフォームを金型へセットする工程から成形した容器を金型から取り外す工程に至るブロー成形の全工程のうち、加圧した液体を、供給路を経てプリフォームの内部に供給し容器を賦形する工程を除いた他の工程で、加圧流体として使用する液体を常時、あるいは必要に応じて供給路と加圧液体供給部との間で循環させて所定の温度に調整することができ、
容器を賦形するためにプリフォーム内に供給する液体の温度を高い精度で制御することができ、容器の賦形を一定の温度条件で安定して達成することができ、容器の強度や耐熱性等の性能にばらつきが生じる、十分な賦形性が得られない等の問題を、生産性を損なうことなく効果的に解決することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のブロー成形装置は、上記した構成となっており、本発明の主たる構成を有する装置によれば、
まず、軸体の下端に連結したロッドガイドに延伸ロッドが摺動可能に周接状に挿通する構成とすることにより、金属を使用する軸体と延伸ロッドの間に、耐磨耗性、滑り性等の観点から設ける必要のある隙間に起因する延伸ロッドの芯ブレを抑制することができ、延伸ロッドによるプリフォームの縦延伸をスムーズに実施することができる。
また、ロッドガイドは短円筒状とすることができ、延伸ロッドとの周接面積を小さくし、延伸ロッドの摺動抵抗を小さくして延伸ロッドの摺動動作をスムーズに達成することができる。
【0026】
さらに、バルブ機構を閉状態として縦延伸する場合には、ロッドガイドを介して、縮径部による延伸ロッドの姿勢を支持する機能が十分に発揮され、上記したロッドガイドによる芯ブレを抑制する作用効果が相俟って、延伸ロッドによるプリフォームの縦延伸を、芯ブレのない、さらには芯ズレのない状態で均一に実施することができる。
【0027】
そして、プリフォームを加圧した液体により膨張状に延伸する工程では、バルブ機構を開状態とすることにより、ロッドガイドをシール段部直下の縮径部から脱嵌入した状態とし、ブローノズルの内周面と延伸ロッドの外周面で形成され、切欠きがなく、かつ十分な流路面積を有する円筒状の、プリフォームの内部に連通する液体の流路を形成することができ、
上記したロッドガイドによる均一な縦延伸性と相俟って、容器の賦形を安定した状態、そして高い生産性で実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1〜
図6は本発明のブロー成形装置およびこの装置を使用した合成樹脂製容器の製造方法を説明するためのものであり、以下、主として
図1、2により本発明のブロー成形装置の全体的な構成の一例を説明し、
図1〜
図6によりこの装置を使用した合成樹脂製容器の製造方法の一例、すなわち液体を圧力媒体としたブロー成形法の工程の一例を説明する。
【0030】
まず、
図1と
図2を参照しながら装置の全体的な構成を説明するが、
図1は本発明のブロー成形装置の全体的な構成の一例を示す説明図であり、
図2は
図1中、縦断面で示される装置の主部の下半部を拡大した断面図で、主部の細かい構成部位については
図2を参照する。
図1は、金型1にPET樹脂製のプリフォーム31を装着し、ブローノズル4の先端をこのプリフォーム31の口筒部32に嵌入した状態を示している。
使用するプリフォーム31の形状は全体として有底円筒の試験管状で、上端部に口筒部32を起立設し、この口筒部32の下端部にはネックリング33が配設されており、口筒部32を外部に(
図1、2中では上方に)突出させた状態で金型1内に装着されている。
【0031】
この装置の主部は金型1、隔壁部材11、ブローノズル4を有し、付属設備として加圧装置21、加圧液体供給部22、液体循環部23を配置している。
隔壁部材11は、
図2に示されるように金型1の上方に突出したプリフォーム31の口筒部32の外周面を、空間Sを介して囲繞するように金型1の上方に配設されている。
また、隔壁部材11には必要に応じて空間Sに加圧気体を供給するための通気孔13が配設されている。
また隔壁部材11の下端部に周設した支持鍔片12をプリフォーム31のネックリング33に上方から密に当接させて、プリフォーム31の装着姿勢を保持するようにしている。
【0032】
ブローノズル4は全体として筒状で、シール部材7bにより密に連結される嵌入筒片5と供給筒部6から構成されている。
嵌入筒片5は、上部はテーパー筒状で下部は円筒状であり、
図2に示されるように外周壁には下端に向かって縮径する周段部5aが周設されており、円筒状の下部がプリフォーム31の口筒部32に嵌入し、周段部5aと口筒部32の上端面のシール部材(Oリング)7aを介した当接により、ブローノズル4と口筒部32が密に連通状に連結するようにしている。
【0033】
供給筒部6は全体として内部が円柱状の中空部を有する部材で、
図1に示されるように、上端部に周壁を貫通して液体Lの導入路6aが配設されており、下端部近傍には同じく周壁を貫通して液体Lの排出路6bが配設されている。
また、この排出路6bのさらに下方、供給筒部6の下端部の内周面には下方に向かって縮径状に傾斜したシール段部6sが周設されており、このシール段部6s直下は直上の部分に比較して直径が小さな縮径部6dとなっている。
【0034】
また、上記のように嵌入筒片5と供給筒部6から構成されるブローノズル4の中には、軸方向(
図1、2中では上下方向)に、シール体9が挿通、配設されている。
ここで、シール体9は、下端部に短円筒状のシール筒片9tが同軸心状に嵌合組み付きして構成される細長い円筒棒状の金属性の軸体9aと、シール筒片9tの下端に胴軸心状に連結する円筒状のロッドガイド9gに、細長い円柱状の延伸ロッド8を挿通したものである。軸体9aの下端部は短円筒状のシール筒片9tが同軸心状に嵌合組み付いて構成されている。
ここで、耐摩耗性や滑り性等の観点から、延伸ロッド8は若干の隙間を介して軸体9aに挿通しており、一方、ロッドガイド9gには延伸ロッド8が摺動可能に周接状に挿通する構成としている。
なお、延伸ロッド8は供給筒部6の上端部で上部ロッドガイド6tgに摺動可能に周接状に挿通している。(
図1参照)
また、シール筒片9tの下端面の外周縁部は角取りしてテーパー縁部9taとなっている。
【0035】
また、ロッドガイド9gは縮径部6dへの摺動状の嵌入、脱嵌入が可能に配設されている。
ここで、このロッドガイド9gは、上記したように延伸ロッド8が周接状に挿通し高速に摺動が切返され、また縮径部6dに周接した状態で、摺動状の嵌入あるいは脱嵌入動作が高速で繰り返される部材で、本実施例では耐熱性、耐久性、耐磨耗性、滑り性の観点からこのロッドガイド9gをポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製としている。
勿論、使用条件等を考慮して、他のエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックから適宜の合成樹脂を選ぶこともできる。
なお、シール筒片9tとロッドガイド9gは、シール筒片9tをインサート材としたロッドガイド9gの射出成形により、アンダーカット状に強固に結合することができる。
【0036】
そして、ブローノズル4とシール体9によりブローノズル4内に、このブローノズル4の軸方向に沿って、プリフォーム31内に連通する円筒状の供給路Fsが形成され、
シール体9を下降変位させることにより
図1、2に示されるようにシール筒片9tのテーパー縁部9taが供給筒部6の下端部の内周面に周設されるシール段部6sに当接して供給路Fsのプリフォーム内部への連通を閉状態とすることができ、またシール体9を
図4に示されるように上昇変位させることにより開状態とすることができ、このテーパー縁部9taのシール段部6sへの当接と、脱当接によりバルブ機構Vmが構成される。
ここで、前述した導入路6aは供給路Fsの上流側端部に位置し、排出路6bは供給路Fsの下流側端部で上記シール段部6sの上流側直近に位置する。
【0037】
また、バルブ機構Vmの閉状態では、ロッドガイド9gが、ノズルガイド4のシール段部6s直下の縮径部6dに嵌入した状態となり、
バルブ機構Vmの開状態では、ロッドガイド9gが縮径部6dから上方に脱嵌入した状態となり、液体Lの流路が開放される。
【0038】
ここで、前述したように延伸ロッド8と軸体9aはいずれも金属を使用する部品で、両者の磨耗を防ぐため、あるいは両者の相対的な移動がスムーズに達成されるように、延伸ロッド8はシール筒片9tを含む軸体9aに、若干隙間ができるような状態で挿通、配設されており、縦延伸工程でこの隙間に起因する延伸ロッド8の芯ブレが生じる恐れがある。
この点、上記構成の場合、延伸ロッド8はロッドガイド9gに摺動可能に周接状に挿通しており、
図4に見られるように、バルブ機構Vmが開状態でロッドガイド9gが縮径部6dから上方に脱嵌入した状態であっても、ロッドガイド9gに対する縮径部6dによる支持はなくなるが、少なくとも延伸ロッド8とシール筒片9tを含む軸体9aとの隙間に起因する、延伸ロッド8の芯ブレを抑制することができる。
【0039】
さらに、バルブ機構Vmを閉状態として縦延伸する場合には、ロッドガイド9gをシール段部6sの直下の縮径部6dに嵌入した状態、すなわちロッドガイド9gをブローノズル4の縮径部6dの周壁により支持された状態とすることができ、ロッドガイド9gを介して、縮径部6dによる延伸ロッド8の姿勢を支持する機能が十分に発揮され、
上記したロッドガイド9gによる延伸ロッド8の芯ブレを抑制する作用効果も相俟って、延伸ロッド8によるプリフォームの縦延伸を、ブレのない、あるいは所謂、芯ズレのない状態で均一に実施することができる。
【0040】
次に、付属設備についてみると、加圧装置21は、従来からブロー成形では必須の設備であり、加圧ポンプやコンプレッサー等の大型の設備であり、この加圧装置21から配管P1を介して供給される加圧流体Fpが、加圧した液体Lを供給するプランジャーポンプ状の加圧液体供給部22を駆動するための動力源となる。
また、加圧液体供給部22には、図示したプランジャー等ポンプ状のものの他にも2部屋を有するピストン内蔵のシリンダー等のものを使用することができる。
【0041】
また、本実施例の装置では液体循環部23を配設し、液体Lを配管R1から新たに補給しながら所定の温度に調整して配管R2により加圧液体供給部22に供給すると共に、液体Lを、所定の温度に調整しながら加圧液体供給部22とブローノズル4内の供給路Fsとの間を循環させる機能を付与している。
すなわち、
図1に示される状態のようにバルブ機構Vmが閉状態にある際には、必要に応じて、液体Lを供給路Fs→排出路6b→配管R3→液体循環部23→配管R2→加圧液体供給部22→配管P2→導入路6a→供給路Fsと云うように構成される循環路CRを循環させることができる構成としている。
そして、このような循環機能を付与することにより、プリフォーム内に供給する液体Lの温度を高い精度で制御することでき、成形される容器の品質を安定化し、生産性を高めることが可能となる。
【0042】
次に、
図1〜
図6を参照しながら、上記説明したブロー成形装置を使用した合成樹脂製容器のブロー成形の工程の一例について説明する。(なお、
図1〜
図6中、
図2、3、4では装置の主部の下半部を拡大した断面図としている。)
ブロー成形は次の(1)〜(7)に記載した工程を順次、実施する。
(1)まず、口筒部32を除く部分をブロー成形に適した温度に加熱したプリフォーム31を、口筒部32を上方に突出させた状態でブロー成形用の金型1に装着し、型締めする。
(2)次に、組付け固定した隔壁部材11とブローノズル4を口筒部32の上方から下降させ、嵌合筒片5の先端部を口筒部32に嵌入し
図1、2に示す状態とする。
ここで、シール体9の下端部を構成するシール筒片9tのテーパー縁部9taは供給筒部6のシール段部6sに当接しており、バルブ機構Vmが閉状態となっており、また延伸ロッド8がプリフォーム31内に挿入した状態となっている。
この状態で、ロッドガイド9gはノズルガイド4のシール段部6s直下の縮径部6dに嵌入した状態となっている。
また、バルブV1、V2、V3はいずれも開状態とし、液体Lは、液体循環部23で温度調整されながら前述した循環路CRを循環している。
【0043】
(3)次に、
図2の状態から
図3に示されるように延伸ロッド8によりプリフォーム31を縦延伸し、プリフォーム31の底壁35の中央部を、延伸ロッド8の下端部と金型1の底壁1bで挟持した状態とする。
この縦延伸工程では、延伸ロッド8の姿勢は、上部に位置する上部ロッドガイド6tgと縮径部6dに支持されたロッドガイド9gにより確実に支持されており、プリフォーム31の縦延伸を、芯ブレおよび芯ズレのない状態で均一に実施することができる。
ここで、本実施例では延伸ロッド8によりプリフォーム31の底壁35が金型の底壁1bに当接するまで縦延伸する構成としているが、ブロー成形の生産性や、成形される容器の肉厚分布等を考慮して途中の高さまで縦延伸する構成とすることもできる。
【0044】
(4)次に、
図3の状態から
図4に示されるようにシール体9を構成する軸体9aを上昇変位させてバルブ機構Vmを開状態とすることにより、ロッドガイド9gを縮径部6dから脱嵌入させてプリフォーム31内部への液体Lの流路を、ブローズル4の供給筒部6および嵌入筒片5の内周面と延伸ロッド8の外周面で形成される円筒状のスムーズで十分な流路面積を有する流路を形成することができる。
そして、バルブV3を閉状態とし、またバルブV1を閉状態とし、加圧液体供給部22から加圧した液体Lを、ブローノズル4内の供給路Fsを介して口筒部32からプリフォーム31内に供給して金型1のキャビティ2の形状に沿って容器41を膨張状に延伸して賦形する。
ここで、
図4の状態では容器41は、肩部43や底部45近傍にキャビティ2面との間に隙間が見られるように賦形の完了の直前の状態であり、胴部44の周壁がキャビティ2面に緩く接した状態である。
【0045】
ここで、本実施例の装置では上記したように、プリフォーム31内部への液体Lの供給流路を、円筒状のスムーズで十分な流路面積を有する流路とすることができ、加圧した液体Lによるプリフォーム内部の昇圧時間を従来の装置に比較して短縮し、生産速度を高くすることができる。
因みに、
図1の成形装置により上記したブロー成形工程によれば、加圧した液体Lによるプリフォーム31の昇圧時間は334.23msecで、
図9に示されるように流路Fcが切欠き状に形成されたロッドガイド104gをプリフォーム31の口筒部32の内部に配設した場合の433.17msに比較して、昇圧時間を大幅に短縮することできることが確認された。
また、切欠きのない、円筒状のスムーズな流路のため、泡の発生に係る問題についても解消することができた。
【0046】
(5)次に、液体Lが加圧満注して容器41の賦形が完了する前の所定のタイミングで(
図4の状態)、加圧した液体Lの供給を継続した状態で、
図5に示すように延伸ロッド8を、その先端が容器41内部の所定の高さ位置Htpになるまで引上げる。
ここで、延伸ロッド8の引上げ動作に伴って、延伸ロッド8を上昇させた分、加圧した液体Lが容器41の内部に充填されるため、延伸ロッド8の引上げに伴う容器41の減容変形を防ぎながら、
図5中に示されるように金型1のキャビティ2に沿った容器41の賦形を完了し、さらに加圧した液体Lで容器41の周壁をキャビティ2面に押付けて、保圧、冷却することができる。
なお、
図5の状態で液体Lの圧力により口筒部32が拡径変形するような場合には、配管P3を介して隔壁部材11に配設した通気孔13から加圧気体を隔壁部材11内に導入し、口筒部32の外周面を囲繞する空間Sを加圧することにより、このような拡径変形を効果的に抑制することができる。
【0047】
(6)次に、延伸ロッド8の引上げ後の所定のタイミングで、
図5の状態から
図6に示されるように軸体9aを下降変位させてバルブ機構Vmにより供給路Fsを閉状態とし、延伸ロッド8を容器41内から脱挿入する。
この際、バルブV3を開状態として、液体Lを再び循環路CRに沿って循環させる。
そして、延伸ロッド8の脱挿入に伴って、バルブ機構Vmより下方の供給路Fsに残存する液体Lは全て容器41内に流入し、さらに容器41内で液面Lsが下降し、
図6に示されるように予め設定した所定のヘッドスペースHsに調整することができる。
【0048】
ここで、本実施例の記構成では、液体Lの供給を停止するためのバルブ機構Vmがブローノズル4の下端部近傍に配設されているので、このバルブ機構Vmが配設されている位置からプリフォームの口筒部の上端にかけての供給路Fs部分に残留する液体Lの量を少なくして高精度で計量することができ、ヘッドスペースHsをより高精度に制御することが可能となる。
一方、
図9に示される従来の装置ではブローノズル104の外側に配設されるバルブV101により液体Lの供給を停止するため、ヘッドスペースを高精度に制御することは難しい。
【0049】
(7)そして、図示は省略しているが、ブローノズル4と容器41の口筒部32を脱嵌合し、さらに金型1を型開きして液体Lが充填した容器41を取り出し、口筒部32をキャップでシールし製品とする。
【0050】
以上、実施例に沿って本発明のブロー成形装置の実施形態について説明したが、これまでも必要に応じて記載したように、本発明は上記した実施例に限定されるものではない。
さらに言及すると、上記実施例の装置では液体Lを循環路CRにより循環させる構成としたが、この循環回路のない装置とすることもできる。
また、上記実施例では加圧液体供給部22から導入路6aを介して供給路Fsへ液体Lを供給する構成としたが、この供給態様についても様々な態様の中から適宜選択することができる。
【0051】
また上記した工程の例では、延伸ロッドの下端を縦延伸後の位置から容器内部の所定の高さ位置になるまで引上げるタイミングを、
図4に示される容器41の賦形が完了する直前としたが、加圧した液体Lによる膨張状の延伸による容器の賦形中、賦形が完了すると同時、賦形が完了してから所定の時間後等、特に限定されるものではなく、生産性を含めたブロー成形性、減容変形の有無、成形した容器における残留歪みの有無、周壁の均一性等を考慮して適宜決めることができるものである。
【0052】
また上記した工程の例では、まず延伸ロッド8による縦延伸を実施し、その後にバルブ機構Vmを開状態として加圧した液体Lをプリフォーム31内に供給するものとしたが、
図7に示されるように加圧した液体Lのプリフォーム31内への供給を延伸ロッド8による縦延伸と共に実施することもできる。
ここで
図7の状態は、
図2の状態からバルブV3とバルブV1を閉状態とし、軸体9aを上昇させてバルブ機構Vmを開状態とし、延伸ロッド8による縦延伸と加圧した液体Lのプリフォーム31内への供給を同時に実施し、縦延伸が完了した状態である。
【0053】
なお、上記、
図7に示した工程は、ロッドガイド9gが縮径部6dから上方に脱嵌入した状態で縦延伸するものであるが、
前述したように、ロッドガイド9gに対する縮径部6dによる支持はないものの、ロッドガイド9gの作用効果により少なくとも延伸ロッド8の芯ブレを抑制することができる。