(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980581
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20160818BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20160818BHJP
B60C 11/01 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
B60C9/18 N
B60C9/18 K
B60C9/22 G
B60C11/01 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-133929(P2012-133929)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256221(P2013-256221A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下村 和生
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−166818(JP,A)
【文献】
特開平06−106913(JP,A)
【文献】
特表2005−507335(JP,A)
【文献】
特開2011−068324(JP,A)
【文献】
特開平05−238206(JP,A)
【文献】
特開平5−238206(JP,A)
【文献】
特開2002−337509(JP,A)
【文献】
特表2002−506403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/18,9/20,9/22,11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部の間に設けられたカーカス層と、
トレッド部における前記カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるベルトコードをゴム被覆してなる複数のベルトプライにより構成されたベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられて接地面を構成し、その接地面にタイヤ周方向に延びる複数の主溝と前記主溝により区分される陸部とが形成されたトレッドゴムと、
前記カーカス層と前記トレッドゴムとの間に設けられ、タイヤ赤道面に対して10°以下の角度で延びる補強コードをゴム被覆してなる補強プライにより構成されたベルト補強層とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト補強層が、複数の前記主溝のうち最もタイヤ幅方向外側に位置するショルダー主溝よりもタイヤ幅方向内側に位置する陸部の内方域では、複数の前記ベルトプライのうち最もタイヤ径方向外側に位置する最外ベルトプライのタイヤ径方向内側に配され、前記主溝の内方域では、前記最外ベルトプライのタイヤ径方向外側に配されていて、
前記陸部の内方域と前記主溝の内方域との間で前記最外ベルトプライが分断され、その分断の隙間を通って前記ベルト補強層が前記陸部の内方域から前記主溝の内方域に至ることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ベルト補強層が、タイヤ幅方向の一方側の端部から他方側の端部まで連続して延在し、その端部の各々が前記ショルダー主溝よりもタイヤ幅方向外側に配されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
一対のビード部の間に設けられたカーカス層と、
トレッド部における前記カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるベルトコードをゴム被覆してなる複数のベルトプライにより構成されたベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられて接地面を構成し、その接地面にタイヤ周方向に延びる複数の主溝と前記主溝により区分される陸部とが形成されたトレッドゴムと、
前記カーカス層と前記トレッドゴムとの間に設けられ、タイヤ赤道面に対して10°以下の角度で延びる補強コードをゴム被覆してなる補強プライにより構成されたベルト補強層とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト補強層が、複数の前記主溝のうち最もタイヤ幅方向外側に位置するショルダー主溝よりもタイヤ幅方向内側に位置する陸部の内方域では、複数の前記ベルトプライのうち最もタイヤ径方向外側に位置する最外ベルトプライのタイヤ径方向内側に配され、前記主溝の内方域では、前記最外ベルトプライのタイヤ径方向外側に配されていて、
前記ショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に位置する陸部の内方域では、前記ベルト補強層が前記最外ベルトプライのタイヤ径方向内側に配されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に位置する陸部の内方域では、前記ベルト補強層が前記最外ベルトプライのタイヤ径方向外側に配されて且つ前記最外ベルトプライの端部を覆う請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部にベルト層とベルト補強層が設けられた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速耐久性を改善するために、ベルト層のタイヤ径方向外側にベルト補強層を設けた空気入りタイヤが知られている。ベルト補強層は、タイヤ赤道面に対して略平行に延びる補強コードをゴム被覆してなる補強プライにより構成され、ベルト層の両端部のみを覆うように配置される場合もあるが、ベルト層の全体を覆うように配置された構造、いわゆるキャップ構造が慣用されている。
【0003】
ベルト層は、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるベルトコードをゴム被覆してなる複数のベルトプライにより構成され、箍効果によってカーカス層を補強する。また、内圧によるベルト層の径成長に応じてベルトコードに作用する張力が増し、それに起因して面内曲げ変形に対する剛性(以下、面内曲げ剛性)が高められる。その結果、コーナリングフォースやセルフアライニングトルクが高められ、操縦安定性が向上する。
【0004】
ベルト補強層がベルト層を拘束することで、高速走行時の耐久性は向上するものの、その反面、通常走行時の操縦安定性は低下する傾向にある。これは、ベルト補強層がベルト層の径成長を妨げることでベルトコードに付与される張力が抑制され、面内曲げ剛性の向上効果が小さくなって、コーナリングフォースやセルフアライニングトルクが低くなるためと考えられる。このように、ベルト補強層による高速耐久性の確保と、ベルト層による操縦安定性の向上とは背反する関係にあった。
【0005】
特許文献1〜3では、それぞれベルト層またはベルト補強層の構造を改変した空気入りタイヤが提案されているが、いずれも上述のような背反事象に関して高速耐久性と操縦安定性を両立しうる解決手段を開示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−35030号公報
【特許文献2】特開2004−359145号公報
【特許文献3】特開2011−173438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高速耐久性を確保しながら操縦安定性を向上できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、一対のビード部の間に設けられたカーカス層と、トレッド部における前記カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるベルトコードをゴム被覆してなる複数のベルトプライにより構成されたベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられて接地面を構成し、その接地面にタイヤ周方向に延びる複数の主溝と前記主溝により区分される陸部とが形成されたトレッドゴムと、前記カーカス層と前記トレッドゴムとの間に設けられ、タイヤ赤道面に対して10°以下の角度で延びる補強コードをゴム被覆してなる補強プライにより構成されたベルト補強層とを備える空気入りタイヤにおいて、前記ベルト補強層が、複数の前記主溝のうち最もタイヤ幅方向外側に位置するショルダー主溝よりもタイヤ幅方向内側に位置する陸部の内方域では、複数の前記ベルトプライのうち最もタイヤ径方向外側に位置する最外ベルトプライのタイヤ径方向内側に配され、前記主溝の内方域では、前記最外ベルトプライのタイヤ径方向外側に配されているものである。
【0009】
この空気入りタイヤでは、コーナリングフォースやセルフアライニングトルクを生じる陸部の内方域において、ベルト補強層が最外ベルトプライのタイヤ径方向内側に配されており、その最外ベルトプライのベルトコードに付与される張力がベルト補強層によって抑制されることがない。それでいて、最外ベルトプライは、複数のベルトプライの中でも内圧による径成長の影響を受けやすく、そのベルトコードに作用する張力が相対的に大きくなる傾向にある。これにより、コーナリングフォースやセルフアライニングトルクを高めて、操縦安定性を向上できる。
【0010】
また、この空気入りタイヤでは、コーナリングフォースやセルフアライニングトルクに対する寄与が小さい主溝の内方域において、ベルト補強層が最外ベルトプライのタイヤ径方向外側に配されており、ベルト補強層がベルト層を拘束しうる。これにより、高速走行時におけるベルト層の浮き上がりを抑制して、高速耐久性を確保できる。主溝の内方域では、ゴム厚みが小さくて曲がりやすいため、この部位でベルト層を拘束することは、耐久性を向上するうえで合理的である。
【0011】
ショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に位置する陸部は、舵角が大きい場合におけるコーナリングフォースやセルフアライニングトルクとの関係が深く、その陸部の内方域において、本発明ではベルト補強層がどちら側に配されるかは特に限定されない。但し、後述するように、タイヤ径方向内側であれば操縦安定性の改善効果が更に高められ、タイヤ径方向外側であれば高速耐久性の改善効果が更に高められる。
【0012】
本発明では、前記陸部の内方域と前記主溝の内方域との間で前記最外ベルトプライが分断され、その分断の隙間を通って前記ベルト補強層が前記陸部の内方域から前記主溝の内方域に至るものが好ましい。かかる構成では、主溝及び陸部の内方域ごとに別個の補強プライを設ける場合に比べて、補強プライが幅広になる。これにより、主溝の内方域でのベルト層に対する拘束力が高められるとともに、部品点数を減らしてベルト補強層を成形する際の工数を低減できる。
【0013】
上記においては、前記ベルト補強層が、タイヤ幅方向の一方側の端部から他方側の端部まで連続して延在し、その端部の各々が前記ショルダー主溝よりもタイヤ幅方向外側に配されているものが好ましい。かかる構成であれば、ベルト補強層を単一の補強プライで構成することが可能となり、高速耐久性を効果的に確保できるとともに、ベルト補強層を簡便に成形できる。
【0014】
本発明では、前記ショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に位置する陸部の内方域では、前記ベルト補強層が前記最外ベルトプライのタイヤ径方向内側に配されているものが好ましい。この場合、コーナリングフォースやセルフアライニングトルクを更に高めて、操縦安定性を効果的に向上できる。
【0015】
本発明では、前記ショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に位置する陸部の内方域では、前記ベルト補強層が前記最外ベルトプライのタイヤ径方向外側に配されて且つ前記最外ベルトプライの端部を覆うものが好ましい。この場合、高速走行時におけるベルト層の端部の浮き上がりがベルト補強層によって抑えられ、高速耐久性を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を概略的に示すタイヤ子午線断面図
【
図4】別実施形態におけるトレッド部の構造を示す模式図
【
図5】別実施形態におけるトレッド部の構造を示す模式図
【
図6】別実施形態におけるトレッド部の構造を示す模式図
【
図7】比較例3におけるトレッド部の構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示した空気入りタイヤは、一対のビード部1と、そのビード部1からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aが埋設され、硬質ゴムからなるビードフィラー1bがビードコア1aのタイヤ径方向外側に配されている。
【0018】
更に、この空気入りタイヤは、一対のビード部1の間に設けられたカーカス層4と、トレッド部3におけるカーカス層4のタイヤ径方向外側に設けられたベルト層5と、そのベルト層5のタイヤ径方向外側に設けられて接地面を構成するトレッドゴム7と、カーカス層4とトレッドゴム7との間に設けられたベルト補強層6とを備える。
【0019】
カーカス層4は、タイヤ赤道面CEに対して略直角に延びるカーカスコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のカーカスプライにより構成されている。カーカス層4は、その両端部がビード部1で折り返されつつ、全体としてトロイド状に成形されている。カーカスコードとしては、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維コードが好適に使用される。
【0020】
ベルト層5は、
図2のように、タイヤ赤道面CEに対して傾斜して延びるベルトコード5Cをゴム被覆してなる複数の(本実施形態では2枚の)ベルトプライ51,52により構成されている。タイヤ赤道面CEに対するベルトコードの傾斜角度θ5は、例えば15〜70°、好ましくは20〜60°、更に好ましくは25±5°であり、ベルトプライ51とベルトプライ52とでベルトコード5Cが互いに逆向きに傾斜している。ベルトコード5Cとしては、スチールコードが好適に使用される。
【0021】
トレッドゴム7の接地面には、タイヤ周方向に延びる複数の主溝8と、主溝8により区分される陸部9とが形成されている。主溝8の本数は、3本または4本が一般的であるが、これに限られるものではない。陸部9は、リブ及びブロックの何れでも構わない。ショルダー主溝8sは、複数の主溝8のうち最もタイヤ幅方向外側に位置する主溝である。ショルダー陸部9sは、その一対のショルダー主溝8sのタイヤ幅方向外側に位置する陸部である。
【0022】
ベルト補強層6は、タイヤ赤道面CEに対して10°以下の角度で延びる補強コード6Cをゴム被覆してなる補強プライにより構成されている。タイヤ赤道面CEに対する補強コードの傾斜角度θ6は、好ましくは5°以下であり、これが10°を越える場合には、ベルト層5に対する拘束力が弱まって高速耐久性の改善効果が小さくなる。本実施形態では、角度θ6が0°である例を示す。補強コード6Cとしては、上述した有機繊維コードが好適に使用される。
【0023】
通常のキャップ構造ではベルト補強層がベルト層の全体を覆うのに対し、このタイヤでは、ベルト補強層6がベルトプライ52を部分的に覆っている。具体的には、
図1〜3のように、ベルト補強層6が、ショルダー主溝8sよりもタイヤ幅方向内側に位置する陸部9の内方域において、複数のベルトプライ51,52のうち最もタイヤ径方向外側に位置するベルトプライ52(最外ベルトプライに相当)のタイヤ径方向内側に配され、主溝8の内方域において、ベルトプライ52のタイヤ径方向外側に配されている。
【0024】
このように、主溝8の内方域ではベルト補強層6がベルト層5を拘束しうるため、高速耐久性を確保できる。それでいて、ショルダー主溝8sよりもタイヤ幅方向内側の陸部9の内方域では、ベルト補強層6がベルトプライ52の下に潜り込んで、ベルトプライ51とベルトプライ52との間に介在するため、ベルトプライ52のベルトコード5Cに付与される張力がベルト補強層6によって抑制されない。その結果、コーナリングフォースやセルフアライニングトルクを高めて、操縦安定性を向上できる。
【0025】
耐久性の改善効果を高める観点から、主溝8の内方域においてベルトプライ52のタイヤ径方向外側に配されるベルト補強層6の幅W6は、6mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態では、陸部9の内方域と主溝8の内方域との間でベルトプライ52が分断されており、その分断の隙間を通ってベルト補強層6が陸部9の内方域から主溝8の内方域に至る。また、ベルト補強層6は、タイヤ幅方向の一方側の端部から他方側の端部まで連続して延在し、その端部の各々がショルダー主溝8sよりもタイヤ幅方向外側に配されている。かかる構成に基づき、ベルト補強層6は単一の補強プライで構成されている。
【0027】
ショルダー主溝8sのタイヤ幅方向外側に位置する陸部9、即ちショルダー陸部9sの内方域では、ベルト補強層6がベルトプライ52のタイヤ径方向外側に配されて且つベルトプライ51,52の端部を覆っている。このため、高速走行時におけるベルト層5の端部の浮き上がりをベルト補強層6によって抑えて、高速耐久性を効果的に高めることができる。
【0028】
このような構造は、例えば、ベルトプライ51を設けた後、その外周に、ベルト補強層6のタイヤ径方向内側に配されるベルトプライ52を設け、それらを覆うようにしてベルト補強層6を配置してから、ベルト補強層6のタイヤ径方向外側に配されるベルトプライ52を設けることにより作製される。ベルト補強層6を構成する補強プライは、1本の補強コード6Cをゴム被覆した長尺状のゴム被覆コード、または複数本の補強コード6Cをゴム被覆した帯状プライをタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻回することで形成される。
【0029】
操縦安定性を重視する場合には、
図4のように、ショルダー陸部9sの内方域において、ベルト補強層6をベルトプライ52のタイヤ径方向内側に配することが好適である。かかる構成によれば、ショルダー陸部9sで生じるコーナリングフォースやセルフアライニングトルクが高められ、特に舵角が大きい場合の操縦安定性を効果的に向上できる。この場合においても、ベルト補強層6がベルトプライ51の端部を覆うことが好ましく、それにより高速耐久性の確保に寄与しうる。
【0030】
図5は、ベルト補強層6を3つの補強プライで構成した例である。ベルトプライ52は陸部9の内方域と主溝8の内方域との間で分断され、その分断の隙間を通ってベルト補強層6が陸部9の内方域から主溝8の内方域に至る。かかる構成によれば、前述の実施形態に比べてベルトプライ52の分断箇所を減らすことができる。
【0031】
図6は、主溝8及び陸部9の内方域ごとに別個の補強プライを設けた例であり、各主溝8の内方域と各陸部9の内方域とに配された複数の補強プライでベルト補強層6が構成されている。かかる構成ではベルトプライ52の分断が不要であるため、既存のベルトプライを利用できる。
【0032】
本発明の空気入りタイヤは、ベルト層とベルト補強層が上記の如く構成されていること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造、製法などが何れも本発明に採用することができる。
【0033】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【実施例】
【0034】
本発明の構成と効果を具体的に示すため、下記の評価を行ったので説明する。
【0035】
(1)高速耐久性
ドラム表面が平滑な鋼製で且つ直径が1707mmのドラム試験機を使用し、試験タイヤを走行させた。試験タイヤには、180kPaの内圧と、JATMAが規定する最大荷重の120%の荷重を与え、周辺温度は38±3℃とした。試験では、120km/hで2時間の走行後、150km/hで2時間の走行を行い、次いで同一荷重で150km/hで30分の走行を行った。以降は、30分毎に速度を10km/hずつ上げていき、タイヤが故障したときの速度を評価した。比較例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど高速耐久性に優れることを示す。
【0036】
(2)操縦安定性(コーナリングパワー、セルフアライニングパワー)
直径が2500mmのドラム試験機を使用し、試験タイヤに発生するコーナリングフォースとセルフアライニングトルクを測定し、スリップ角1°におけるコーナリングパワー(CP)及びセルフアライニングパワー(SAP)を求めて、これらを操縦安定性の指標とした。比較例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど操縦安定性に優れることを示す。
【0037】
評価に供した試験タイヤのサイズは195/65R15であり、ベルト層とベルト補強層を除いて、各例におけるタイヤ構造やゴム配合、コードの素材などは共通している。ベルト補強層を具備しないものを比較例1、ベルト補強層でベルト層の全体を覆うキャップ構造を採用したものを比較例2、
図7の構造を有するものを比較例3とした。また、
図3の構造を有するものを実施例1、
図4の構造を有するものを実施例2とした。表1に評価結果を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示すように、実施例1,2では、比較例1〜3よりも高い水準で、高速耐久性と操縦安定性を両立できている。このうち、実施例1では、ショルダー陸部の内方域でベルト補強層が最外ベルトプライのタイヤ径方向外側に配されていることで、高速耐久性が相対的に優れており、実施例2では、ショルダー陸部の内方域でベルト補強層が最外ベルトプライのタイヤ径方向内側に配されていることで、操縦安定性が相対的に優れている。
【符号の説明】
【0040】
1 ビード部
3 トレッド部
4 カーカス層
5 ベルト層
5C ベルトコード
6 ベルト補強層
6C 補強コード
7 トレッドゴム
8 主溝
8s ショルダー主溝
9 陸部
51 ベルトプライ
52 ベルトプライ(最外ベルトプライ)