特許第5980586号(P5980586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5980586安全帯使用状態確認システム及び安全帯使用状態確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980586
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】安全帯使用状態確認システム及び安全帯使用状態確認方法
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20160818BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20160818BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20160818BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A62B35/00 D
   G08B21/02
   G08B25/04 F
   G08B25/04 G
   G08B25/10 B
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-139911(P2012-139911)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-4006(P2014-4006A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年11月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000223687
【氏名又は名称】藤井電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(72)【発明者】
【氏名】山田 徹
(72)【発明者】
【氏名】上月 章智
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−034374(JP,A)
【文献】 実開平04−011050(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/120022(WO,A1)
【文献】 特開2003−111856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00 − 35/02
E04G 21/32
F16B 45/02
G08B 21/02
G08B 25/04
G08B 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全帯のフックが被取付部に取り付けられたことを確認する安全帯使用状態確認システムであって、
前記フックの前記被取付部への取付が必要とされるエリアへの前記安全帯の使用者の入退場を検出する入退場検出部と、
前記フックに設けられ、前記安全帯の個別情報を発信するICタグと、
前記フックに設けられ、当該フックと前記被取付部との接触を検知するセンサと、
前記センサの検知結果を前記ICタグが受信したことにより前記ICタグが発信するセンサ作動情報に基づいて前記被取付部に前記フックが取り付けられたことを検出するフック取付検出部と、
前記入退場検出部の検出結果及び前記フック取付検出部の検出結果に基づいて、前記使用者が前記エリアに入場しており、且つ、前記被取付部に前記フックが取り付けられていない場合に、警告を発する警告部と、
を備え、
前記フックはアクティブ型のICタグを備え、
前記フック取付検出部は、前記エリア内の前記ICタグの情報を受信することにより、前記被取付部に前記フックが取り付けられたことを検出し、
前記入退場検出部は、
前記エリアの出入口に設けられ、前記エリアへの入場時に前記使用者によって前記フックがかざされて前記ICタグが近接されることで前記エリアへ入場する前記使用者の前記フックの前記ICタグの情報を受信することにより前記使用者の入場を検出する入場検出部と、
前記エリアの出入口に設けられ、前記エリアからの退場時に前記使用者によって前記フックがかざされて前記ICタグが近接されることで前記エリアから退場する前記使用者の前記フックの前記ICタグの情報を受信することにより前記使用者の退場を検出する退場検出部と、を備え、
前記入場検出部及び前記退場検出部の検出結果に基づいて、前記使用者の入退場を検出し、
前記入場検出部は、前記ICタグを前記退場検出部にかざす過程において前記ICタグの情報を誤って受信しない程度に前記ICタグに対する受信範囲を抑えることで、前記入場検出部に前記ICタグが近接することによって、当該ICタグの情報を受信可能であり、
前記退場検出部は、前記ICタグを前記入場検出部にかざす過程において前記ICタグの情報を誤って受信しない程度に前記ICタグに対する受信範囲を抑えることで、前記退場検出部に前記ICタグが近接することによって、当該ICタグの情報を受信可能であり、
前記フック取付検出部は、前記入場検出部及び前記退場検出部のように受信範囲が抑えられていない受信アンテナを有し、
前記ICタグは、前記センサの検知結果を受信していないときは、前記個別情報のみを前記受信アンテナに所定の時間間隔にて発信し、前記センサの検知結果を受信しているときは、前記個別情報と前記センサ作動情報を前記受信アンテナに前記所定の時間間隔にて発信する自己発信型であることを特徴とする安全帯使用状態確認システム。
【請求項2】
前記フックには、前記安全帯の使用者の前記個別情報を保持した個別情報保持部が設けられていることを特徴とする請求項記載の安全帯使用状態確認システム。
【請求項3】
前記個別情報保持部が保持する前記個別情報に基づいて、前記フックを前記被取付部に取り付けていない使用者を特定する特定部を更に備えることを特徴とする請求項記載の安全帯使用状態確認システム。
【請求項4】
前記特定部の特定結果に基づいて、前記使用者の前記安全帯の使用状態を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項記載の安全帯使用状態確認システム。
【請求項5】
前記警告部は、前記特定部の特定結果に基づいて、前記使用者に個別に警告を行うことを特徴とする請求項または記載の安全帯使用状態確認システム。
【請求項6】
前記特定部の特定結果に基づいた情報を、外部端末へ送信することを特徴とする請求項の何れか一項記載の安全帯使用状態確認システム。
【請求項7】
前記入退場検出部は、前記使用者を検知する人感センサを備えることを特徴とする請求項1〜の何れか一項記載の安全帯使用状態確認システム。
【請求項8】
安全帯のフックが被取付部に取り付けられたことを確認する安全帯使用状態確認方法であって、
前記フックの前記被取付部への取付が必要とされるエリアへの前記安全帯の使用者の入退場を検出する入退場検出ステップと、
前記フックに設けられ、当該フックと前記被取付部との接触を検知するセンサの検知結果を、前記フックに設けられ前記安全帯の個別情報を発信するアクティブ型のICタグが受信したことにより、前記ICタグが発信するセンサ作動情報に基づいて前記エリア内の前記ICタグの情報を受信することにより、前記被取付部に前記フックが取り付けられたことを検出するフック取付検出ステップと、
前記入退場検出ステップの検出結果及び前記フック取付検出ステップの検出結果に基づいて、前記使用者が前記エリアに入場しており、且つ、前記被取付部に前記フックが取り付けられていない場合に、警告を発する警告ステップと、
前記エリアの出入口に設けられ、前記ICタグを退場検出部にかざす過程において前記ICタグの情報を誤って受信しない程度に前記ICタグに対する受信範囲が抑えられることで前記エリアへの入場時に前記使用者によって前記フックがかざされて前記ICタグが近接されることで当該ICタグの情報を受信可能に構成された入場検出部に、前記エリアへ入場する前記使用者の前記フックの前記ICタグの情報を受信させることにより前記使用者の入場を検出する入場検出ステップと、
前記エリアの出入口に設けられ、前記ICタグを前記入場検出部にかざす過程において前記ICタグの情報を誤って受信しない程度に前記ICタグに対する受信範囲が抑えられることで前記エリアからの退場時に前記使用者によって前記フックがかざされて前記ICタグが近接されることで当該ICタグの情報を受信可能に構成された退場検出部に、前記エリアから退場する前記使用者の前記フックの前記ICタグの情報を受信させることにより前記使用者の退場を検出する退場検出ステップと、
を備え、
前記入退場検出ステップは、前記入場検出ステップ及び前記退場検出ステップにおける検出結果に基づいて、前記使用者の入退場を検出し、
前記フック取付検出ステップでは、前記入場検出部及び前記退場検出部のように受信範囲が抑えられていない受信アンテナにより前記ICタグが発信する前記個別情報及び前記センサ作動情報を受信し、
前記ICタグは、前記センサの検知結果を受信していないときは、前記個別情報のみを前記受信アンテナに所定の時間間隔にて発信し、前記センサの検知結果を受信しているときは、前記個別情報と前記センサ作動情報を前記受信アンテナに前記所定の時間間隔にて発信する自己発信型であることを特徴とする安全帯使用状態確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全帯使用状態確認システム及び安全帯使用状態確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場等の高所の作業の際には、作業者には、落下防止のための安全帯の使用が求められている。安全帯は、作業者の体に装着される人体ベルトと、人体ベルトに連結されたロープと、ロープの先端に設けられたフックと、を備えている。作業者は、作業場所に設置された親綱やタラップなどにフックを取り付けることにより作業時の安全を確保する。安全帯の使用の際に用いられるシステムとして、特許文献1に示すものが知られている。このシステムは、フックにかかる荷重に基づいて作業者の落下を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−104339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、安全性の確保のためには、作業場所で各作業者が安全帯のフックを確実に被取付部に取り付ける必要がある。上記システムでは、フックを取り付けた後の状況を検出することは可能であるが、そもそもフックの取付自体を検出することはできない。従って、作業現場で安全帯を使用していることを確実に確認することができるシステムが従来より求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、作業現場で安全帯を使用していることを確実に確認することができる安全帯使用状態確認システム及び安全帯使用状態確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る安全帯使用状態確認システムは、安全帯のフックが被取付部に取り付けられたことを確認する安全帯使用状態確認システムであって、フックの被取付部への取付が必要とされるエリアへの安全帯の使用者の入退場を検出する入退場検出部と、フックに設けられ、当該フックと被取付部との接触を検知するセンサと、センサの検知結果に基づいて、被取付部にフックが取り付けられたことを検出するフック取付検出部と、入退場検出部の検出結果及びフック取付検出部の検出結果に基づいて、使用者がエリアに入場しており、且つ、被取付部にフックが取り付けられていない場合に、警告を発する警告部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る安全帯使用状態確認システムによれば、フックには、当該フックと被取付部との接触を検知するセンサが設けられている。すなわちフックが実際に被取付部に取り付けられ、被取付部とフックとが接触することによってセンサが当該接触を検知する。従って、使用者が特別な操作をしなくとも、使用者が実際にフックを被取付部に取り付ければ自動的にセンサが接触を検知し、実際にフックを被取付部に取り付けなければセンサは接触を検知しない。これによりフック取付検出部は、簡単にフックの取り付けを検出することが可能となり、使用者がエリアに入場しており、且つ、フックが被取付部に取り付けられていない場合は警告部が警告を発することで、安全帯の使用状態を確認することができる。このように、フックを実際に被取付部に取り付けない限り警告が発せられるため、作業現場で安全帯を使用していることを確実に確認することができる。
【0008】
また、本発明に係る安全帯使用状態確認システムにおいて、フックはアクティブ型のICタグを備え、フック取付検出部は、エリア内のICタグの情報を受信することにより、被取付部にフックが取り付けられたことを検出し、入退場検出部は、エリアへ入場する使用者のフックのICタグの情報を受信することにより使用者の入場を検出する入場検出部と、エリアから退場する使用者のフックのICタグの情報を受信することにより使用者の退場を検出する退場検出部と、を備え、入場検出部は、ICタグに対する受信範囲を抑えることで、入場検出部にICタグが近接することによって、当該ICタグの情報を受信可能であり、退場検出部は、ICタグに対する受信範囲を抑えることで、退場検出部にICタグが近接することによって、当該ICタグの情報を受信可能であることが好ましい。フックが広い範囲に情報を飛ばすことができるアクティブ型のICタグを備えているため、フック取付検出部は、ICタグと距離が離れている状態であっても、エリア内のICタグの情報を受信することで、フックの使用状態を検出することが可能である。一方、入場検出部及び退場検出部は、ICタグが近接することによって受信可能となっている。すなわち、アクティブ型のICタグに対して、入場検出部及び退場検出部のICタグに対する受信範囲を積極的に抑制することで、例えば使用者が入場時には入場検出部にICタグをかざすことで入場検出部のみが受信し(すなわち、退場検出部は受信せず、誤検出しない)、退場時には退場検出部にICタグをかざすことで退場検出部のみが受信(このとき、入場検出部は受信せず、誤検出しない)構成とすることができる。これにより、使用者の入退場を正確に検出することができる。
【0009】
また、本発明に係る安全帯使用状態確認システムにおいて、フックには、安全帯の使用者の個別情報を保持した個別情報保持部が設けられていることが好ましい。このように、フックが個別情報保持部を有することによって、複数の使用者が作業現場に居る場合に、各使用者の状況を個別で管理することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る安全帯使用状態確認システムにおいて、個別情報保持部が保持する個別情報に基づいて、フックを被取付部に取り付けていない使用者を特定する特定部を更に備えることが好ましい。これによって、エリア内に使用者が複数存在する場合であっても、各使用者の安全帯の使用状態を把握することが可能となり、当該使用状態に応じた適切な対応をとることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る安全帯使用状態確認システムにおいて、特定部の特定結果に基づいて、使用者の安全帯の使用状態を表示する表示部を備えることが好ましい。これにより、表示部を確認することにより、複数の使用者の中で、どの使用者が安全帯を使用していないかを直ちに認識することができる。
【0012】
また、本発明に係る安全帯使用状態確認システムにおいて、警告部は、特定部の特定結果に基づいて、使用者に個別に警告を行うことが好ましい。これにより、安全帯を使用していない使用者に対して確実に警告を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る安全帯使用状態確認システムにおいて、特定結果に基づいた情報を、外部端末へ送信することが好ましい。これにより、監督者や外部の関係者が当該情報を用いて管理を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る安全帯使用状態確認システムにおいて、入退場検出部は、前記使用者を検知する人感センサを備えることが好ましい。人感センサを用いることによって、入退場検出部は、入退場する使用者に対して、入退場を登録するための操作を行うように注意喚起することが可能となる。これにより、入退場検出部は、より正確に使用者の入退場を検出することができる。
【0015】
本発明に係る安全帯使用状態確認方法は、安全帯のフックが被取付部に取り付けられたことを確認する安全帯使用状態確認方法であって、フックの被取付部への取付が必要とされるエリアへの安全帯の使用者の入退場を検出する入退場検出ステップと、フックに設けられ、当該フックと被取付部との接触を検知するセンサの検知結果に基づいて、被取付部にフックが取り付けられたことを検出するフック取付検出ステップと、入退場検出ステップの検出結果及びフック取付検出ステップの検出結果に基づいて、使用者がエリアに入場しており、且つ、被取付部にフックが取り付けられていない場合に、警告を発する警告ステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る安全帯使用状態確認方法によれば、上述の安全帯使用状態確認システムと同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業現場で安全帯を使用していることを確実に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る安全帯使用状態確認システムの構成を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る安全帯使用状態確認システムの構成を示す系統図である。
図3】本発明の実施形態に係る安全帯のフックを正面から見た図である。
図4】安全帯の使用者が危険エリアに入退場する際の処理内容を示すシーケンス図である。
図5】安全帯の使用者がフックを被取付部に取り付ける際、及び取り外す際の処理内容を示すシーケンス図である。
図6】危険エリアに安全帯の使用者が入退場する様子を示す模式図である。
図7】変形例に係る安全帯使用状態確認システムの構成を示す概略構成図である。
図8】変形例に係る安全帯使用状態確認システムの処理の一部の内容を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る安全帯使用状態確認システム及び安全帯使用状態確認方法の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1の構成を示す概略構成図である。図2は、本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1の構成を示す系統図である。安全帯使用状態確認システム1は、安全帯100の使用者WPが危険エリアWS内で安全帯を使用しているかどうかを確認するシステムである。危険エリアWSとは、工事現場等の高所の作業場所であり、安全帯100の使用が必要とされるエリアである。危険エリアWSは、例えば柵や手摺などで区画されている。本実施形態では、危険エリアWSの外側のエリアを安全エリアと称する。使用者WPは、危険エリアWS内で作業を行う作業者である。使用者WPは安全帯100を使用しており、安全帯100は、使用者WPが装着している人体ベルトに連結されたロープ102と、ロープ102の先端に設けられたフック101と、を備えている。
【0021】
図1を参照して安全帯使用状態確認システム1の物理的な構成を説明すると共に、図3を参照してフック101の物理的な構成を説明する。図1に示すように、安全帯使用状態確認システム1は、フック101を有する安全帯100と、フック101を取り付けるための被取付部2と、使用者の危険エリアWSに対する入退場を登録するための入退登録ボード3と、システム内の各種電子ユニットが格納される制御ボックス4と、回転灯によって構成される警告機(警告部)5と、を備えている。入退登録ボード3、制御ボックス4及び警告機5は、出入口GTに設けられている。被取付部2は、危険エリアWS内において使用者WPがフック101を取り付ける場所であり、例えば、親綱や手摺などが挙げられる。また、危険エリアWS内には、フック101のICタグ104からの情報を受信するための受信アンテナ17が配置されている。
【0022】
入退登録ボード3は、危険エリアWSの出入口GTに配置されており、使用者が危険エリアWSへ入場したことを登録すると共に、危険エリアWSから退場したことを登録するためのボードである。入退登録ボード3は、一枚のボードの中に、入場時にフック101をタッチさせることで使用者の入場を検出するための入場検出部8として区画される領域と、退場時にフック101をタッチさせることで使用者の退場を検出するための退場検出部11として区画される領域を有している。ボード内において、安全エリア側に入場検出部8が形成され、危険エリアWS側に退場検出部11が形成されている。また、入退登録ボード3の上部には、使用者の接近を検知することができる人感センサ13が設けられている。入場検出部8、退場検出部11、人感センサ13の機能については後述する。
【0023】
図3は、安全帯100のフック101を正面から見た図である。図3に示すように、フック101は、開口部106aを有するフック本体部106と、開口部106aを開閉する開閉部107と、を備えている。フック本体部106は、略逆J字状(鉤状)の形状を有しており、基端部106bと先端部106cとの間に開口部106aが形成されている。フック本体部106は、基端部106bにロープ102が接続されている。開閉部107は、フック本体部106の基端部106bから先端部106cに向かって延在しており、基端部106bに回動可能に接続されている。開閉部107を閉じたとき、フック101の内側領域Eは、全周が閉鎖されている。フック101を被取付部2に取り付ける際は、開閉部107を内側領域Eへ押込むことで開口部106aを開き、当該開口部106aを介して被取付部2をフック101の内側領域Eへ通す。その後、開閉部107を戻して開口部106aを塞ぐことで取り付けが完了する。
【0024】
また、フック本体部106の内側縁部の上側の部分(フック101を被取付部2に掛止してぶら下げた場合に上側に位置する部分で、鉤状の鉤部内側上縁部)には、スイッチ部108が設けられている。スイッチ部108は、フック本体部106の内側上縁部を覆うように、当該内側縁部の湾曲形状に沿って湾曲する部材である。スイッチ部108は、フック本体部106の内側の縁面106dと対向する対向面108aを有している。スイッチ部108は、先端部106cとは反対側の端部が軸部109によって、フック本体部106に軸支されている。フック101が被取付部2に掛止されていない状態では、スイッチ部108の対向面108aとフック本体部106の縁面106dとは離隔された(僅かに隙間を空けた)状態となっている。フック101を被取付部2に掛止してぶら下げた状態とすると(図2の右下に示すような状態)、スイッチ部108が軸部109を中心として回動し、フック本体部106の自重が作用することにより、スイッチ部108の対向面108aは被取付部2に当接する。フック101を被取付部2から外すと、スイッチ部108は再び、フック本体部106の縁面106dから対向面108aが離隔した(隙間を空けた)状態となる。
【0025】
フック101は、フック101と被取付部2との接触を検知するセンサ103と、ICタグ104と、を備えている。センサ103は、フック本体部106の内側縁部のうち、スイッチ部108に覆われる部分に設けられている。センサ103は、フック101が被取付部2に取り付けられることによりスイッチ部108がフック本体部106の縁面106dに近接することによって反応し、当該反応によってフック101と被取付部2に接触したことを検知する。センサ103は、ホール素子などの近接センサで構成されていることが好ましい。または、物理的にスイッチ部108と接触することで検知するスイッチセンサなどを用いてもよい。ICタグ104は、フック本体部106の基端部106b側に設けられており、センサ103と電気的に接続されている。ICタグ104は、フック101が被取付部2に取り付けられることによりフック101と被取付部2の接触をセンサ103が検知した場合、センサ103からの検知結果を受信することができる。また、ICタグ104には、安全帯100の個別情報が保持されている。当該ICタグ104の個別情報に基づいて、どの使用者WPがいつ危険エリアWSに入っているのかなどの情報管理をすることが可能となる。また、フック101にはバッテリ(不図示)が設けられている。ICタグ104及びバッテリは、フック本体部106に設けてもよく、フック本体部106の外側に設けてもよい。本実施形態では、ICタグ104として、アクティブ型のICタグが採用されている。従って、広い範囲に亘って情報を飛ばすことができる。
【0026】
次に、図2を参照して安全帯使用状態確認システム1の機能的なブロック構成について説明する。図2に示すように、安全帯使用状態確認システム1は、主に、入退場検出部20と、フック取付情報取得部30と、制御ユニット6と、警告機5と、を備えて構成されている。なお、請求項における「フック取付検出部」は、制御ユニット6の一部、及びフック取付情報取得部30によって構成されている。
【0027】
入退場検出部20は、安全帯100を使用する使用者WPの危険エリアWSへの入退場を検出する機能を有している。入退場検出部20は、受信アンテナ9が設けられた入場検出部8と、受信アンテナ12が設けられた退場検出部11と、使用者WPの進入を検知する人感センサ13と、音声案内を行うための音声を合成する音声合成ユニット14と、入場検出部8の受信アンテナ9で受信した情報及び退場検出部11の受信アンテナ12で受信した情報を受信する第1受信ユニット7と、を備えている。なお、入退場検出部20のうち、入場検出部8、退場検出部11、人感センサ13及び音声合成ユニット14は、入退登録ボード3に設けられている。第1受信ユニット7は、制御ボックス4に設けられている。
【0028】
入場検出部8は、使用者WPが入場時にフック101を入退登録ボード3の入場検出部8に該当する領域にかざしてICタグ104を近接させることで、当該ICタグ104の情報を受信可能であり、当該受信によって入場を検出する。具体的には、入場検出部8にフック101をかざすことにより、フック101のICタグ104が受信アンテナ9を介して当該ICタグ104の個別情報を第1受信ユニット7に発信する。また、第1受信ユニット7は、受信アンテナ9を介して個別情報を受信することによって、当該個別情報を有する使用者WPが入場したことを検出する。退場検出部11は、使用者WPが退場時にフック101を入退登録ボード3の退場検出部11に該当する領域にかざしてICタグ104を近接させることで、当該ICタグ104を受信可能であり、当該受信によって退場を検出する。具体的には、退場検出部11にフック101をかざすことにより、フック101のICタグ104が受信アンテナ12を介して当該ICタグ104の個別情報を第1受信ユニット7に発信する。また、第1受信ユニット7は、受信アンテナ12を介して個別情報を受信することによって、当該個別情報を有する使用者WPが退場したことを検出する。
【0029】
ここで「ICタグを近接させることで受信可能」な構成とは、ICタグ104に対する受信範囲を狭くすることで、入場検出部8又は退場検出部11にICタグ104を近づけなくては、当該入場検出部8又は退場検出部11が受信しない構成である。具体的には、入場検出部8(退場検出部11)にICタグ104をかざす過程において、退場検出部11(入場検出部8)が誤って受信しない程度まで受信範囲を抑えることが好ましく、例えば、パッシブ型のICタグと同等の受信範囲まで抑えることが好ましい。すなわち、ICタグ104を入場検出部8又は退場検出部11の表面と略接触する程度の距離まで近づけなくては、受信しないようにすることが好ましい。入場検出部8及び退場検出部11は、受信アンテナ9,12の受信範囲を遮蔽板などを用いて積極的に狭くすることによって構成されている。これにより、使用者WPが入退登録ボード3の前を通過しただけでは入場検出部8及び退場検出部11は受信せず、使用者WPが積極的にフック101を入退登録ボード3にかざさなくては受信しなくなっている。本実施形態では、危険エリアWS内でICタグ104と受信アンテナ17が所定距離離れていても受信するように、ICタグ104としてアクティブ型のものを用いている。一方、出入口GTを通過する使用者WPが入場しようとしているのか、退場しようとしているのかを精度よく検出するためには、誤検知(例えば、入場時に退場検出用の受信アンテナが受信してしまい、または退場時に入場検出用の受信アンテナが受信してしまう)が生じないことが好ましい。従って、受信アンテナ9,12の受信範囲を積極的に狭くすることにより、アクティブ型のICタグ104を用いつつも、精度よく入退場を検出することができる。
【0030】
人感センサ13は、出入口GTで入退登録ボード3の前に存在する使用者WPを検知することができる。これにより、当該使用者WPに対して、フック101を入場検出部8または退場検出部11にかざすように、音声合成ユニット14で音声案内用の音声を合成し、警告機5にて音声案内を行うことができる。人感センサ13は、人間から発せられる赤外線を検知することができる装置である。
【0031】
フック取付情報取得部30は、センサ103の検知結果に基づいて、被取付部2に対するフック101の取付状態に関する情報を取得する機能を有している。フック取付情報取得部30は、危険エリアWS内に存在するフック101のICタグ104からの情報を受信する受信アンテナ17と、受信アンテナ17で受信した情報を受信する第2受信ユニット16と、を備えている。なお、フック取付情報取得部30のうち、第2受信ユニット16は、制御ボックス4に設けられている。
【0032】
受信アンテナ17は、危険エリアWS内のフック101のICタグ104から情報を受信することが可能であり、危険エリアWS内に複数フック101が存在する場合でも、全てのフック101の情報を取得可能である。受信アンテナ17は、入退場検出部20の受信アンテナ9,12のように受信範囲が抑えられておらず、広い受信範囲を有している。受信アンテナ17の受信範囲は、危険エリアWS内の略全域を網羅していることが好ましく、少なくとも被取付部2付近の領域を網羅していることが好ましい。一方、危険エリアWSより外側に存在するフック101のICタグ104の情報を受信しないように、受信範囲を極力、危険エリアWS内に抑えるように、受信アンテナ17の配置や強度を調整することが好ましい。フック101が被取付部2に取り付けられているときは、センサ103が検知するため、ICタグ104は、個別情報とセンサ作動情報を受信アンテナ17に発信する。一方、フック101が被取付部2に取り付けられていないときは、センサ103が検知していないため、ICタグ104は、個別情報のみを受信アンテナ17に発信する。第2受信ユニット16は、所定の時間間隔にてICタグ104からの情報を取得する。受信アンテナ17の設置個数は特に限定されないが、複数個配置することによって、受信の安定化を図ることができる。
【0033】
警告機5は、フック101の被取付部2への取り付けの検出結果、及び使用者WPの危険エリアWSへの入退場の検出結果に基づいて、警告を発する。具体的に、警告機5は、使用者WPが危険エリアWS内に入っているときであって、フック101が被取付部2に取り付けられていない場合に警告を発し、フック101が取り付けられている場合に警告を停止する。また、警告機5は、使用者WPが危険エリアWSの外に出ているときは、警告を停止する。警告機5は、例えば、警告灯の点滅による警告、音声やブザー音による警告、ディスプレイ上の画像による警告、管理事務所への警告通報、あるいはそれらの組み合わせによる警告を行う。
【0034】
制御ユニット6は、安全帯使用状態確認システム1の各処理を制御する機能を主に有している。制御ユニット6は、警告機5、第1受信ユニット7、人感センサ13、音声合成ユニット14、第2受信ユニット16に電気的に接続されている。制御ユニット6は、第1受信ユニット7から発信される情報に基づいて、警告のオン・オフを切り替える機能を有している。また、制御ユニット6は、第2受信ユニット16から発信される情報に基づいて、フック101が被取付部2に取り付けられていることを検出すると共に、それらの検出結果に基づいて警告のオン・オフを切り替える機能を有している。
【0035】
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1の具体的な処理内容について説明する。図4は、使用者WPが危険エリアWSに入退場する際の処理内容を示すシーケンス図である。図5は、使用者WPがフック101を被取付部2に取り付ける際、及び取り外す際の処理内容を示すシーケンス図である。
【0036】
まず、使用者WPが危険エリアWSへ入場するときの処理について説明する。図4に示すように、安全帯100の使用者WPが安全エリアから危険エリアWSへ向かって進入し、入退登録ボード3に接近すると、人感センサ13が検知する(ステップS100)。人感センサ13は、使用者WPの接近情報を制御ユニット6に伝送する(ステップS110)。制御ユニット6は、第1受信ユニット7からのICタグ104の個別情報の受信が確認できない場合、音声警告を行うように警告機5に通知する(ステップS120)。通知を受けた警告機5は、音声警告を開始する(ステップS130)。使用者WPがフック101を入場検出部8にかざすと、ICタグ104は、入場検出部8を介して第1受信ユニット7に個別情報を発信する(ステップS140)。第1受信ユニット7は、S140の信号に基づいて、使用者WPの危険エリアWSへの入場を検出する(ステップS150)。それに続き、第1受信ユニット7は、制御ユニット6に使用者WPの入場情報を伝送する(ステップS160)と同時にICタグ104から送られてくる個別情報により、どの使用者WPが入場したのかを制御ユニット6に記録させる。これにより、どの使用者WPがどの時間に危険エリアWSに入場したかを管理することが可能となる。制御ユニット6は、使用者WPの入場の通知を受けて、警告機5に警告を発するよう通知を行う(ステップS170)。通知を受けた警告機5は警告を開始する(ステップS180)。その後、警告機5は、対象となるフック101が被取付部2に取り付けられるまで警告を継続する。なお、使用者WPは個別認識されることから、使用者WPが危険エリアWS内に複数存在する場合は、全ての使用者WPのフック101が取り付けられるまで警告を継続する。
【0037】
次に、入場した使用者WPがフック101を被取付部2に取り付けたときの処理について説明する。図5に示すように、安全帯100の使用者WPがフック101を被取付部2に取り付けると、フック101と被取付部2との接触を検知するセンサ103が反応することにより、フック101が被取付部2に取り付けられたことを検出する(ステップS300)。これにより、ICタグ104は、自らの有する個別情報にセンサ作動情報を載せて第2受信ユニット16へ発信する(ステップS310)。第2受信ユニット16は、S310で受信した情報の検出を行う(ステップS320)。それに続き、第2受信ユニット16は、制御ユニット6に個別情報とセンサ作動情報を伝送する(ステップS330)。これにより、制御ユニット6は、使用者WPがフック101を使用していることを検出する(ステップS340)と同時にICタグ104から送られてくる個別情報により、どの使用者WPが安全帯を使用したのかを管理することが可能となる。制御ユニット6は、警告機5に警告停止の命令を送信し(ステップS350)、警告機5は警告を停止する(ステップS360)。なお、使用者WPは個別認識されることから、使用者WPが危険エリアWS内に複数存在する場合は、全ての使用者WPのフック101が取り付けられたときに警告が停止する。なお、ICタグ104から第2受信ユニット16への情報伝送は所定の時間間隔(例えば、1秒毎)で繰り返し行われ、ICタグ104から個別情報とセンサ動作情報が発信され続けている限り、S320〜S360は繰り返し実行され、警告機5の警告停止状態が維持され続ける。
【0038】
次に、使用者WPがフック101を被取付部2から取り外したときの処理について説明する。図5に示すように、安全帯100の使用者WPがフック101を被取付部2から取り外すと、フック101のセンサ103の検知が解除されることにより、ICタグ104は、個別情報のみを第2受信ユニット16に発信する(ステップS400)。
【0039】
第2受信ユニット16は、S400で受信した情報の検出を行う(ステップS410)。それに続き、第2受信ユニット16は、制御ユニット6に個別情報のみを伝送する(ステップS420)。これにより、制御ユニット6は、使用者WPがフック101を被取付部2からはずし、フック101が不使用状態となっていることを検出する(ステップS430)。ここで、制御ユニット6は、直ちに次の処理へは移行せずに、一定時間待機し、当該一定時間内にフック101の使用を再検出した場合は、S340へ移行し、警告停止状態を維持する(ステップS440)。危険エリアWS内でフック101を使用している場合であっても、例えば、フック101の揺れや移動などによって一時的にセンサ103の反応が解除される場合や、使用者WPがフック101の取付場所を変更するために、一時的にフック101をはずす場合がある。このような場合に直ちに警告を発すると、不要に使用者WPの疑問や煩わしさを招く可能性がある。従って、センサ動作情報が途切れた場合であっても、一定時間待機することで、フック101が本当に不使用となったことを正確に検出できる。一定時間経過してもICタグ104から個別情報のみが発信される場合、制御ユニット6は、使用者WPのフック101の不使用を検出する(ステップS430)と同時にICタグ104から送られてくる個別情報により、どの使用者WPが安全帯の使用を停止したかを管理することが可能となる。制御ユニット6は、警告機5に警告再開の命令を送信し(ステップS450)、警告機5は警告を再開する(ステップS460)。なお、使用者WPは個別認識されることから、使用者WPが危険エリアWS内に複数存在する場合は、一人でも使用者WPがフック101を取り外すと警告が開始する。
【0040】
次に、使用者WPが危険エリアWSから退場するときの処理について説明する。図4に示すように、使用者WPがフック101を退場検出部11にかざすと、ICタグ104は、退場検出部11を介して第1受信ユニット7に個別情報を発信する(ステップS200)。第1受信ユニット7は、S200の信号に基づいて、使用者WPの危険エリアWSからの退場を検出する(ステップS210)。それに続き、第1受信ユニット7は、制御ユニット6に使用者WPの退場情報を伝送する(ステップS220)と同時にICタグ104から送られてくる個別情報により、どの使用者WPが退場したのかを制御ユニット6に記録させる。これにより、どの使用者WPがどの時間に危険エリアWSから退場したかを管理することが可能となる。制御ユニット6は、使用者WPの退場の通知を受けて、警告機5の警告を停止するよう通知を行う(ステップS230)。通知を受けた警告機5は警告を停止する(ステップS240)。以上によって図4に示す処理が終了する。なお、使用者WPが危険エリアWS内に複数存在する場合は、フック101を取り外した全ての使用者WPが退場するまで警告を継続する。
【0041】
次に、本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1及び安全帯使用状態確認方法の作用・効果について説明する。
【0042】
本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1及び安全帯使用状態確認方法によれば、フック101には、当該フック101と被取付部2との接触を検知するセンサ103が設けられている。すなわちフック101が実際に被取付部2に取り付けられ、被取付部2とフック101とが接触することによってセンサ103が当該接触を検知する。従って、使用者WPが特別な操作をしなくとも、使用者WPが実際にフック101を被取付部2に取り付ければ自動的にセンサ103が接触を検知し、実際にフック101を被取付部2に取り付けなければセンサ103は接触を検知しない。これにより制御ユニット6はフック取付情報取得部30で取得した情報に基づいて、簡単にフック101の取り付けを検出することが可能となり、使用者WPが危険エリアWSに入場しており、且つ、フック101が被取付部2に取り付けられていない場合は警告機5が警告を発することで、安全帯100の使用状態を確認することができる。このように、フック101を実際に被取付部2に取り付けない限り警告が発せられるため、作業現場で安全帯100を使用していることを確実に確認することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1において、フック101には、安全帯100の使用者WPの個別情報を保持したICタグ104が設けられている。このように、フック101がICタグ104を有することによって、複数の使用者WPが作業現場に居る場合に、各使用者WPの状況を個別で管理することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1において、入退場検出部20は、使用者WPを検知する人感センサ13を備える。人感センサ13を用いることによって、入退場検出部20は、入退場する使用者WPに対して、入退場を登録するための操作を行うように注意喚起することが可能となる。入退場検出部20は、より正確に使用者WPの入退場を検出することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1において、フック101はアクティブ型のICタグ104を備えている。また、フック取付情報取得部30の受信アンテナ17は、危険エリアWS内のICタグ104の情報を受信し、当該受信に基づいて制御ユニット6は、被取付部2にフック101が取り付けられたことを検出する。一方、入退場検出部20の入場検出部8は、当該入場検出部8にICタグ104が近接することによって、当該ICタグ104を受信可能であり、退場検出部11は、当該退場検出部11にICタグ104が近接することによって、当該ICタグ104の情報を受信可能である。フック101が広い範囲に情報を飛ばすことができるアクティブ型のICタグ104を備えているため、フック取付情報取得部30の受信アンテナ17は、ICタグ104と距離が離れている状態であっても、危険エリアWS内のICタグ104の情報を受信することで、フック101の使用状態を検出することが可能である。一方、入場検出部8及び退場検出部11は、ICタグ104が近接することによって受信可能となっている。すなわち、アクティブ型のICタグ104に対して、入場検出部8及び退場検出部11のICタグ104との受信範囲を積極的に抑制することで、例えば使用者WPが入場時には入場検出部8にICタグ104をかざすことで入場検出部8のみが受信し(すなわち、退場検出部11は受信せず、誤検出しない)、退場時には退場検出部11にICタグ104をかざすことで退場検出部11のみが受信(このとき、入場検出部8は受信せず、誤検出しない)構成とすることができる。これにより、使用者の入退場を正確に検出することができる。
【0046】
本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1では、フック101と被取付部2との接触を検知するセンサ103を用いている。従って、フック101の掛止対象物である被取付部2は、親綱には限定されず、あらゆる掛止対象物(親綱や単管パイプ等のあらゆる構造物)を採用することができる。なお、安全帯に関するシステムとして、作業者の情報を監督者へ伝達するシステムも考えられるが、本実施形態に係る安全帯使用状態確認システム1は、安全帯の不使用を作業者に警告することを主たる目的としている。このように、作業者に警告することで、実際に安全帯を使用する者に対して、リアルタイムで直接的に安全帯の使用を促すことができるため、より確実に安全性を確保することができる。なお、後述の変形例で説明するように、監督者に情報を送信する機能を追加してもよい。
【0047】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、入退場を検出するために入場検出部8及び退場検出部11を有する入退登録ボード3を用いたが、使用者WPの入退場を検出できるものであればどのような構成のものを用いてもよい。
【0048】
また、図1の例では、危険エリアWSの出入口が一つであったが、複数の出入口を設けており、使用者WPがあらゆる出入口から入退場可能としてもよい。このとき、一つの出入口に対して入退登録ボード3を用いて入退場を登録可能な構成としており、更にフック101がICタグ104で個別情報を有しているため、複数の使用者WPが入場と退場で異なる出入口を使用するような場合であっても、容易に入退場管理を行うことができる。例えば、図6に示すように、使用者WP1は、出入口GT1から入場して同じ出入口GT1から退場している。このような動作に対し、本システムは、入退登録ボード3Aにおいて入場を検出すると共にICタグ104から個別情報を取得することで、当該個別情報を有する者が危険エリアWSに入場したことを検出する。一定時間経過後、入退登録ボード3Aにおいて退場を検出すると共にICタグ104から個別情報を取得することで、先ほど入場したのと同一人物が退場したことを検出できる。使用者WP2は、出入口GT2から入場し、出入口GT1から退場しているが、入退登録ボード3Bにおいて入場を検出すると共に個別情報を取得することで、ある使用者が出入口GT2から入場し、入退登録ボード3Aにおいて退場を検出すると共に個別情報を取得することで、同一の使用者が出入口GT1から退場したことを検出できる。使用者WP3も同様に、出入口GT3から入場し、出入口GT2から退場したことを、各入退登録ボードとICタグ104からの個別情報によって検出することができる。
【0049】
また、警告機5の警告のためのライトの色は単色でもよいが、ライトの色を複数に増やしてもよい(例えば、赤色と黄色等)。また、警告音(ブザー音)の種類も単一であってもよいが、複数種類に増加させてもよい。これにより、例えば、入退場検出の警告音と、フック不使用の警告音を変えることができる。複数人(例えば、5人等)が危険エリアWSに入って作業を行う場合、入退場の度に警告音が鳴るので、フック不使用時で本当に危険な場合と単なる入退場の場合が紛らわしくなるが、警告音を変えることでこのような紛らわしさを低減することができる。また、フック101を被取付部2から取り外した後、一定時間警告音が鳴らないようにしてもよいが、警告音(ブザー音)の音量を徐々に大きくするようにしてもよい。
【0050】
また、作業者WP(使用者WP)が入退場する際に入場検出部8または退場検出部11にフック101をかざしたときに(登録確認のための)ブザー音などの音を鳴らしてよい。このとき、ブザー音または鳴り方を、作業者WPによって変えてもよい。例えば、5人で作業を行う場合、1人目が入場したときは一回ブザー音を鳴らし、2人目が入場したときは二回ブザー音を鳴らし、順次ブザー音を増やし、5人目は五回ブザーを鳴らすというように、各人のブザー音の鳴らし方を変える。これによって、各作業者WPの入場(又は退場)を検出したことを、音で識別することができる。
【0051】
また、各フックのICタグが保持している個別情報に基づいて、安全帯100を使用していない作業者WPを特定し、当該特定結果を作業者WPや監督者にフィードバックしてもよい。このとき、制御ユニット6は、危険エリアWS内に作業者WPが複数存在する場合に、ICタグ104が保持する個別情報に基づいて、フック101を被取付部2に取り付けていない作業者WPを特定する特定部として機能する。制御ユニット6は、危険エリアWSに入場したにも関わらず、個別情報のみ受信してセンサ作動情報を受信できない場合、当該個別情報に対応する作業者WPが、安全帯100を使用していないものと特定する。当該特定結果に基づいて、複数の作業者WPが存在する場合に、各作業者WPの安全帯100の使用状態を把握することができる。このように作業者WPの安全帯100の使用状態をフィードバックする場合の一例について、図7及び図8を用いて説明する。
【0052】
例えば、図7に示すように、表示ボードや液晶パネルなどの表示部40及び外部端末50等を設け、作業中の作業者WPの安全帯100の使用状態を表示してもよい。なお、表示部40や外部端末50の設置位置は、図7に示す位置に限られず、現場に合わせてあらゆる場所に設置してよい。具体的には、作業者Aが安全帯100を使用しており、作業者Bが安全帯100を使用していないときは、表示部40や外部端末50に「作業者A:〇、作業者B:×」などと表示してよい。例えば、複数の使用者が危険エリア内で作業している場合、一人でも安全帯を使用していなければ警告が発せされるが、作業者WPや監督者としては誰が安全帯100を使用していないのかを即座に認識できない。しかし、作業者状態を表示することで、当該表示を見れば即座にどの作業者WPが安全帯100を使用していないかを認識することができる。
【0053】
また、作業者WPの安全帯100の使用状態を把握することで、使用していない作業者WPに対して個別に警告を行ってもよい。例えば、フックまたはランヤードに個別警告部60(ブザー音や振動など)を設け、フックの不使用時に、各人の個別警告部60が作動し、ブザー音や振動が個別に大きくなるような構成を採用してもよい。このとき、フックまたはランヤードに受信機を設け、受信アンテナを介して制御ユニット6と双方向通信する構成を採用してもよい。なお、個別警告部60を設ける場所は、図7に示す場所に限らず、作業者WPに個別で警告を発することができる限り、あらゆる場所に設けてよい。例えば、一の作業者WPの安全帯100の不使用を検出したら、制御ユニット6は当該不使用状態にある安全帯100の受信機に信号を発信して個別警告部60でブザー音を鳴らす。これにより、安全帯100を使用していない作業者WPは、ブザー音を聞くことで、自分が使用していないことを即座に認識できる。このように、作業者WPに対して個別に警告することができる。なお、入退登録ボード3の上部に設けられる警告機5に加えて、個別警告部60を設けてもよい。あるいは、警告機5を省略して個別警告部60のみを設けてもよい。ただし、入退登録ボード3の上部に警告機5を設けた場合、作業者WPや監督者に広く警告を発することができる。
【0054】
また、制御ユニット6から責任者に各作業者WPの個別情報や各作業者WPの安全帯100の使用状態を外部端末50(例えば責任者が有するタブレットパソコン等)へ送信することで、責任者がリアルタイムで監視可能にしてもよい。また、関係者が有するタブレットパソコン等の外部端末50へ情報を送信し、当該タブレットパソコン等を介して関係者と作業員状態情報を共有可能としてもよい。これにより、どの作業者がいつ作業を開始し、いつ作業を終えたかなどを管理することが可能となる。
【0055】
このような変形例に係る安全帯使用状態確認システム1の処理内容を図8に示す。図8に示す処理は、例えば、図4におけるS180の処理(入場時の警告開始の処理)と同時に実行されてよく、図5におけるS460の処理(フック101を外したときの警告再開の処理)と同時に実行されてよい。その他の部分における処理内容は図4,5と同様の処理がなされる。図8に示すように、制御ユニット6は、危険エリアWS内に複数の作業者WPが存在する場合、各作業者WPのフック101のICタグ104が保持する個別情報に基づいて、フック101を被取付部2に取り付けていない作業者WPを特定する(ステップS500)。具体的には、制御ユニット6は、ICタグ104から個別情報に加えてセンサ作動情報を検出した場合は、当該ICタグ104を備えたフック101に係る作業者WPが安全帯100を使用している作業者WPであると特定し、ICタグ104から個別情報のみを検出した場合は、当該ICタグ104を備えたフック101に係る作業者WPが安全帯100を使用していない作業者WPであると特定する。制御ユニット6は、S500での特定処理に基づいた作業者状態情報を、表示部40、外部端末50及び個別警告部60へ伝送する(ステップS510)。表示部40は、S510で伝送された作業者状態情報を表示する(ステップS520)。外部端末50は、S510で伝送された作業者状態情報をディスプレイなどに表示する(ステップS530)。フック101を使用していないと特定された作業者WPの個別警告部60は、当該作業者WPに対して個別に警告を発する(ステップS540)。
【0056】
また、上述の実施形態では、入場検出部8と退場検出部11をそれぞれ異なるボードに分離していたが、入退場検出と退場検出を一つのボードで行ってもよい。例えば、当該ボードの1回目のタッチ(入場時のタッチ)でONとし、2回目のタッチ(退場時のタッチ)でOFFとする。また、スイッチによる入退場識別方法を採用してもよい。
【0057】
また、制御ユニット6とデータベースとを連結し、ICタグ104の情報(シリアルナンバー等)によって、各種の管理(耐用年数の管理等)をしてもよい。
【0058】
また、警告部(警告機5や個別警告部60)は、あらゆる事態に対応して警告を行ってよい。例えば、作業者WPが入場検出部8にフック101をかざして登録しただけで、実際に危険エリアWSに入らず、エリア外で安全帯101を使用したような場合は、警告部は、音声案内と警報によって警告を行ってよい。また、入場の登録をすべき作業者WPが、登録をせずに危険エリアWSに入場した場合に、音声案内によって警告を行ってよい。
【符号の説明】
【0059】
1…安全帯使用状態確認システム、2…被取付部、3…入退登録ボード、4…制御ボックス、5…警告機(警告部)、6…制御ユニット(フック取付検出部、特定部)、7…第1受信ユニット、8…入場検出部、11…退場検出部、13…人感センサ、16…第2受信ユニット、20…入退場検出部、30…フック取付情報取得部(フック取付検出部)、100…安全帯、101…フック、103…センサ(フックと被取付部の接触を検知するセンサ)、104…ICタグ(個別情報保持部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8