特許第5980610号(P5980610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980610
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】木製防護柵用の継手
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   E01F15/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-164579(P2012-164579)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-25218(P2014-25218A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390015358
【氏名又は名称】大日本木材防腐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒔田 章
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 裕一
(72)【発明者】
【氏名】水上 武
(72)【発明者】
【氏名】大島 英嗣
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−162360(JP,A)
【文献】 特開2007−247149(JP,A)
【文献】 特開2006−291546(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3149142(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3144706(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/00〜 15/14
E04F 11/00〜 11/18
E04H 17/00〜 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で立設された複数の木製支柱間に、木製のビームが架設された木製防護柵用の継手であって、
前記支柱へ貫通状に穿設された軸孔へ挿通される寸切ボルトと、
該寸切ボルトの両端部へそれぞれ螺合され、頭部に羽子板部を有する2つの袋ネジと、
前記羽子板部に挿通される軸棒を回転中心として前記袋ネジに対して回動自在に連結され、前記ビームの両端部に形成されたスリットへ挿嵌固定される2つの連結プレートと、
を有し、
前記2つの連結プレートのうち、一方は一枚板からなる平板状であり、
他方は、前記羽子板部と連結される連結部と、該連結部の先端に連続するプレート部とを備え、
前記連結部の平面方向と前記プレート部の平面方向とが十字状に交差していることを特徴とする、木製防護柵用の継手。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道、歩道、公園、遊歩道、橋梁等に沿って配される木製防護柵用の継手に関するものであって、特に、斜面やコーナーにも対応可能な木製防護柵用の継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両や歩行者の転落防止や交通事故防止等のために、いわゆるガードレールと称される防護柵が道路等に沿って配されている。防護柵にも種々の形態があるが、景観の向上や環境負荷の低減等を目的として、木製の支柱及びビーム(横棒)からなる木製防護柵の設置が増加しつつある。具体的には、所定間隔で並設された木製の支柱間に、木製のビームが上下複数段架設された防護柵がある。この場合、支柱とビームとは、継手を介して互いに連結されることになる。
【0003】
このような木製の防護柵として、例えば下記特許文献1が開示されている。特許文献1の木製防護柵は、道路の路側に沿って立設された複数の支柱の地上部内側に、支柱の単位スパンに合わせて定めた長さの木製ビームを連続的に継ぎ合わせ横架して成る。そして、木製ビームの継ぎ合わせの位置を中心として、木製ビームの長さの9〜27%長さを規定値とし、これより大きな長さで、かつ拡張力2トン以上のジョイントプレートを水平方向に配置している。そして、ジョイントプレートの規定値に対応して木製ビームに明けた取付穴を介して、ジョイントプレート及び木製ビーム相互を連結し、これらを支柱に固定している。
【0004】
また、木製の防護柵用ではないが、斜面やコーナーに合わせてビームの連結角度を上下及び左右に調節可能な防護柵用継手として、特許文献2が開示されている。特許文献2では、支柱の挿入孔に係止部を挿入して取付金具を支柱に係止し、ボルト孔に挿通し雌ネジ孔に螺合されたボルトによって、取付金具を支柱に固定する。次いで、ビームの端部を上半筒体と下半筒体とによって上下から挟持し、ボルト孔を挿通して雌ネジに螺合されたボルトによって、ビームを上半筒体および下半筒体に固定する。次いで、支柱に固定された取付金具の半球形凸部に下半筒体の半球形凹部を嵌合し、ボルト孔を挿通して雌ネジに螺合されたボルトによって、取付金具、上半筒体、および下半筒体を固定している。これによれば、半球形凸部と半球形凹部との摺接嵌合作用により、ビームの角度を容易に可変可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−27825号公報
【特許文献2】特開平9−13749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、単に一枚板からなるジョイントプレートを介して連結しているだけなので、支柱に対するビームの連結角度を自由に調節することができない。これでは、斜面やコーナーにおいて防護柵を的確に設置することができない。
【0007】
一方、特許文献2では支柱に対するビームの連結角度を上下及び左右へ自在に調節できるので、斜面やコーナーに合わせて的確に防護柵を設置できる。しかし、特許文献2では取付金具をボルトによって支柱へ固定しているだけである。この場合、金属製の防護柵であればある程度対候性が高いので問題が生じることは少ないとしても、木製の防護柵であれば風雨による浸食や腐朽菌による腐朽など、金属製の防護柵に比して劣化し易いので、取付金具が支柱から脱落してしまうおそれがある。また、特許文献2の継手は上下左右へ可変自在とするために取付金具に半球形凸部を、下半筒体に半球形凹部を形成した複雑な構造となっている。これでは、生産コストが高く、歩留まりも悪化してしまう。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、簡素な構成で支柱に対するビームの連結角度を上下左右へ調節自在であり、木材が腐朽等しても安易に脱落することがない、木製防護柵用の継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段として、本発明は、所定間隔で立設された複数の木製支柱間に、木製のビームが架設された木製防護柵用の継手であって、前記支柱へ貫通状に穿設された軸孔へ挿通される寸切ボルトと、該寸切ボルトの両端部へそれぞれ螺合され、頭部に羽子板部を有する2つの袋ネジと、前記羽子板部に挿通される軸棒を回転中心として前記袋ネジに対して回動自在に連結され、前記ビームの両端部に形成されたスリットへ挿嵌固定される2つの連結プレートと、を有することを特徴とする。
【0010】
これによれば、継手の基本軸となる寸切ボルトが支柱へ貫通状に挿通されているので、木製の支柱が腐朽等により劣化しても、継手が容易に脱落することを避けることができる。そのうえで、寸切ボルトへ螺合された羽子板付き袋ネジに対して回動自在に連結された連結プレートをビームへ固定している。これにより、袋ネジに対する連結プレートの角度を変更することで、支柱に対するビームの連結角度を自由に調節することができる。このとき、寸切ボルトに対する袋ネジの回転位相を変更することで、連結プレート延いてはビームの角度調節方向を上下又は左右へ自由に変更することができる。しかも、2つの袋ネジの回転位相を互いに異ならせることで、各連結プレートの角度調節方向も互いに異ならせることができる。また、基本的構成が寸切ボルトと、羽子板付き袋ネジと、連結プレートとによって構成された簡素な構成となっているので、コスト削減にも有利である。
【0011】
なお、前記2つの連結プレートのうち、一方を一枚板からなる平板状としたうえで、他方は、前記羽子板部と連結される連結部と、該連結部の先端に連続するプレート部とを有し、前記連結部の平面方向と前記プレート部の平面方向とが十字状に交差している構成とすることもできる。これによれば、地面の起伏やコーナーが入り混じった複雑な地形などにおいて各ビームの連結角度を独立して調節することが容易となり、複雑な地形においても的確に防護柵を設置し易くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の木製防護柵用の継手によれば、簡素な構成で支柱に対するビームの連結角度を上下左右へ調節自在であり、且つ木材が腐朽等により劣化しても安易に脱落することがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】継手の斜視図である。
図2】継手の分解斜視図である。
図3】平坦面へ防護柵を直線状に連結した継手周辺の正面図である。
図4】平坦面へ防護柵を直線状に連結した継手周辺の平面図である。
図5】平坦面へ防護柵を屈曲して連結した継手周辺の平面図である。
図6】斜面へ防護柵を直線状に連結した継手周辺の正面図である。
図7】斜面へ防護柵を屈曲して連結した継手周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の代表的な実施形態について説明する。適用対象たる防護柵は、車両や歩行者の転落防止や交通事故防止等のために車道、歩道、公園、遊歩道、橋梁等に沿って設置されるものであって、所定間隔で並べて立設された複数の木材からなる支柱間に、横棒としての木材からなるビームが上下複数段架設されてなり、各支柱と各ビームとが、本実施形態の継手を介して連結されている。
【0015】
そのうえで、本実施形態の継手は、図1に示すように、基本軸となる寸切ボルト10と、該寸切ボルト10の軸方向両端部へそれぞれ螺合される2つの袋ネジ11と、各袋ネジ11に対して回動自在に連結される2つの連結プレート12・13とを有する。寸切ボルト10、袋ネジ11、及び連結プレート12・13を含めて、本実施形態の継手を構成する全ての部材は、鉄(合金含む)などの金属製である。
【0016】
図2に示すように、寸切ボルト10は支柱20の直径より僅かに短く、支柱20の径方向に貫通状に穿設された軸孔21へ挿通可能な直径となっている。袋ネジ11は寸切ボルト10の両端部を覆う長さを有し、寸切ボルト10を中心軸として周回転自在に螺合される。また、袋ネジ11の頭部には、プレート状の羽子板部11aを連続して有する。なお、袋ネジ11は、寸切ボルト10の両端部へ最奥方まで螺合した場合でも、少なくとも羽子板部11aが支柱20の外方に位置する程度の長さ寸法に設定されている(図3等参照)。
【0017】
袋ネジ11の羽子板部11aには、連結プレート12・13と連結するための連結孔11bが穿設されている。一方、連結プレート12・13の長手方向一端部にも、それぞれ袋ネジ11と連結するための連結孔12a・13aが穿設されている。そのうえで、袋ネジ11の連結孔11bと連結プレート12の連結孔12a、及び袋ネジ11の連結孔11bと連結プレート13の連結孔13aをそれぞれ重ね合わせ、当該連結孔11b・12a/11b・13aへ挿通された連結ボルト14を介して袋ネジ11と連結プレート12・13とが連結されている。連結ボルト14は、スプリングワッシャ15を介して袋ナット16により固定される。なお、連結ボルト14の長さ寸法は、羽子板部11aと連結プレート12・13の合計厚み寸法より大きい。これにより、連結プレート12・13は、連結ボルト14を回転中心として回動自在となっている。すなわち、連結ボルト14が、本発明の軸棒に相当する。
【0018】
本実施形態では、形状の異なる二種類の連結プレート12・13を使用している。一方の連結プレート12は一枚板からなる平板状であり、各ビーム22の軸方向端部に形成された薄溝状のスリット23へ挿嵌可能な厚み寸法となっている。また、連結プレート12には、当該連結プレート12をビーム22へ強固に固定する固定ボルト24挿通用の固定孔12bが穿設されている。本実施形態では、固定孔12bを二箇所に設けている。
【0019】
一方、他方の連結プレート13は、連結ボルト14を介して袋ネジ11の羽子板部11aと連結される連結部13bと、該連結部13bの先端に連続するプレート部13cとを有する。そのうえで、連結部13bの平面方向とプレート部13cの平面方向との位相は90度ズレており、長手方向視において互いの平面方向は十字状に交差している。なお、連結孔13aは連結部13bに形成されている。プレート部13cの形状は連結プレート12とほぼ同じであり、各ビーム22のスリット23へ挿嵌可能な厚み寸法で、固定ボルト24挿通用の二箇所の固定孔13dを有する。符号25は、ワッシャである。
【0020】
続いて、図2を参照しながら、本実施形態の継手を用いて支柱20とビーム22とを連結する手順について説明する。先ず、ビーム22の軸孔21へ寸切ボルト10を相通する。次いで、寸切ボルト10の両端部へそれぞれ袋ネジ11を螺合する。このとき、袋ネジ11の螺合量は厳密に調節しておく必要は無い。続いて、連結孔11b・12aと連結孔11b・13aにそれぞれ連結ボルト14を挿通して袋ナット16で固定することで、袋ネジ11に対して連結プレート12・13をそれぞれ回動自在に連結する。そして、連結プレート12と連結プレート13のプレート部13cをそれぞれビーム22のスリット23へ挿嵌し、固定ボルト24及び袋ナット16によって連結プレート12・13をビーム22に対して確りと固定する。なお、必要に応じてビーム22と共に袋ネジ11の螺合量を調節することで、支柱20とビーム22との連結距離の調節が可能である。
【0021】
平坦な地面に防護柵を直線状に設置する場合は、上記手順で完了である。これにより、図3,4に示すように、ビーム22が継手を介して支柱20へ連結される。しかし、防護策は、起伏のある地面(傾斜面)やコーナーに設置される場合もある。この場合は、上記手順のみでは防護柵を的確に設置できない。そこで、ビーム22を傾斜面やコーナーに合わせて的確に設置するためには、上記手順に加えて、袋ネジ11に対する連結プレート12・13の連結角度を調節すればよい。
【0022】
例えば、コーナーに沿って防護柵を屈曲(全体的に見れば湾曲)した状態で設置したい場合は、図5に示すように、ビーム22と共に連結プレート12・13を、連結ボルト14を中心として水平方向へ回動することで、連結角度を調節することができる。このとき、袋ネジ11の周方向角度を調節して、連結ボルト14を垂直方向としておく。
【0023】
また、傾斜面へ防護柵を設置する場合は、図6に示すように、袋ネジ11の周方向角度を調節して連結ボルト14を水平方向としたうえで、ビーム22と共に連結プレート12・13を連結ボルト14を中心として上下方向に回動することで、連結角度を調節することができる。
【0024】
さらに、起伏のある地面へ防護柵を屈曲して設置する場合など複雑な地形へ設置する場合でも、図7に示すように、一方を水平方向に、他方を上下方向に連結角度を調節するなど、別個独立して異なる方向へ連結角度を調節することもできる。
【0025】
(変形例)
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれに限られることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、2つの連結プレートを共に同じ形状とすることもできる。2つとも連結プレート13のような形状とすることもできるが、コスト的には2つとも一枚板からなる連結プレート12のような形状とすることが好ましい。また、固定孔12b・13dは、二箇所に限らず一箇所または三箇所以上設けることもできる。
【符号の説明】
【0026】
10 寸切ボルト
11 袋ネジ
11a 羽子板部
12・13 連結プレート
13b 連結部
13c プレート部
14 連結ボルト(軸棒)
20 支柱
22 ビーム
23 スリット

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7