(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高速用受信系は、低速フレームをも受信可能なように構成されており、前記通信制御部には、前記高速用受信系により受信された低速フレームの電気信号も入力される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ビーコン。
前記通信制御部は、前記低速用受信系と前記高速用受信系との双方で低速フレームが受信されたときに、前記低速用受信系から入力された電気信号のみから低速フレームを再生する、請求項4に記載の光ビーコン。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の路車間通信システムは、インフラ側の交通管制システム1と、道路Rを走行する車両20に搭載された車載機2とを備えている。
【0040】
交通管制システム1は、交通管制室等に設けられた中央装置3と、道路Rの各所に多数設置された光ビーコン(光学式車両感知器)4とを備え、光ビーコン4は、近赤外線を通信媒体とした光通信によって車載機2との間で無線通信を行うことができる。
光ビーコン4は、ビーコン制御機7と、このビーコン制御機7のセンサ用インタフェースに接続された複数(
図1では4つ)のビーコンヘッド(投受光器ともいう。)8とを有している。
【0041】
ビーコン制御機7は、インフラ側の通信部6に接続されており、通信部6は電話回線等の通信回線5によって中央装置3と接続されている。
通信部6は、例えば、信号灯器の灯色を制御する交通信号制御機や、インフラ側における交通情報の中継処理を行う情報中継装置等より構成することができる。
【0042】
本実施形態の光ビーコン4は、全二重通信方式を採用している。すなわち、後述のビーコン制御機7は、光送信部10に対するダウンリンク方向の送信制御と、光受信部11に対するアップリンク方向の受信制御とを同時に行うことができる。
これに対して、本実施形態の車載機2は、半二重通信方式を採用している。すなわち、後述の車載制御機21は、光送信部23に対するアップリンク方向の送信制御と、光受信部24に対するダウンリンク方向の受信制御とを同時には行わない。
【0043】
なお、光送信部23に対するアップリンク方向の送信制御と、光受信部24に対するダウンリンク方向の受信制御は同時に行われていても良いが、実態として、どちらかのみしか機能しないように構成されているものとする。すなわち、アップリンクの送信中にはダウンリンクを受信することが困難な構成である。
【0044】
〔光ビーコンの構成〕
光ビーコン4のビーコンヘッド8は、電気光変換が可能な光送信部10と、光電気変換が可能な光受信部11とを筐体の内部に有している。
このうち、光送信部10は、近赤外線よりなるダウンリンク光(ダウンリンク方向の光信号)をダウンリンク領域DA(
図3参照)に送出する発光素子を有し、光受信部11は、アップリンク領域UA(
図3参照)にある車載機2からの近赤外線よりなるアップリンク光(アップリンク方向の光信号)を受光する受光素子を有する。
【0045】
光送信部10は、ビーコン制御機7から送出される下りフレームを所定の伝送速度のシリアルな送信信号に変換する送信回路と、出力された送信信号をダウンリンク方向の光信号に変換する、発光ダイオード等よりなる発光素子とから構成されている。
本実施形態の光ビーコン4では、光送信部10が送信する光信号の伝送速度は、従来の旧光ビーコンと同様に1024kbpsである。
【0046】
光受信部11は、フォトダイオード等よりなる受光素子と、この受光素子が出力する電気信号を増幅してデジタルの受信信号を生成する受信回路とを備えている。
本実施形態の光ビーコン4では、光受信部11は、高低2種類の伝送速度での光電気変換が可能なマルチレート対応であり、低い方の伝送速度は従来の旧光ビーコンと同様に64kbpsである。高い方の伝送速度は、128kbps、192kbps、256kbps、384kbps、512kbps、1024kbpsなどの速度を採用し得るが、本実施形態では256kbpsであるとする。
【0047】
図2は、本実施形態の光ビーコン4の設置部分を上から見た道路Rの平面図である。
図2に示すように、本実施形態の光ビーコン4は、同じ方向の複数(図例では4つ)の車線R1〜R4を有する道路Rに設置されており、車線R1〜R4に対応して設けられた複数のビーコンヘッド8と、これらのビーコンヘッド8を一括制御する制御部である1台のビーコン制御機7とを備えている。
【0048】
ビーコン制御機7は、信号処理部、CPU及びメモリなどを有するコンピュータ装置よりなり、通信部6(
図1参照)を介した中央装置3との双方向通信と、車載機2との路車間通信を行う通信制御部としての機能を有する。
また、ビーコン制御機7は、通信制御のためのコンピュータプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムをCPUが読み出して実行することにより、当該CPUが上記通信制御部として機能する。
【0049】
ビーコン制御機7は、道路脇に立設した支柱13に設置されている。また、各ビーコンヘッド8は、支柱13から道路R側に水平に架設した架設バー14に取り付けられ、道路Rの各車線R1〜R4の直上に配置されている。
ビーコンヘッド8の発光素子は、車線R1〜R4の直下よりも車両進行方向の上流側に向けて近赤外線を発光しており、これにより、車載機2との間で路車間通信を行うための通信領域Aが当該ヘッド8の上流側に設定されている。
【0050】
〔光ビーコンの通信領域〕
図3は、光ビーコン4の通信領域Aを示す側面図である。
図3に示すように、光ビーコン4の通信領域Aは、ダウンリンク領域(
図3において実線のハッチングを設けた領域)DAと、アップリンク領域(
図3において破線のハッチングを設けた領域)UAとからなる。
【0051】
このうち、ダウンリンク領域DAは、ビーコンヘッド8が送出するダウンリンク方向の光信号を、車載機2の投受光器である車載ヘッド22にて受信できる領域であり、ビーコンヘッド8の投受光位置d、地上1m高さの位置a及びcを頂点とする△dacで示された範囲である。
また、アップリンク領域UAは、車載ヘッド22が送出するアップリンク方向の光信号を、ビーコンヘッド8にて受信できる領域であり、上記投受光位置dと、地上1m高さの位置b及びcを頂点とする△dbcで示された範囲である。
【0052】
従って、ダウンリンク領域DAとアップリンク領域UAの上流端cは互いに一致し、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の上流部分(
図3の右側部分)に重複している。また、ダウンリンク領域DAの車両進行方向長さは、通信領域A全体の同方向長さと一致している。
旧光ビーコン(光学式車両感知器)の場合、ダウンリンク領域DA及びアップリンク領域UAの正式な領域寸法が規約によって規定されている。
【0053】
例えば、一般道向けの旧光ビーコンの場合、ダウンリンク領域DAの下流端aが、ビーコンヘッド8の直下の1.0〜1.3m上流側に位置し、ダウンリンク領域DAの下流端aからアップリンク領域UAの下流端bまでの距離が2.1mと規定されている。
また、アップリンク領域UAの下流端bから同領域UAの上流端cまでの距離は1.6mと規定されている。従って、正式な通信領域Aの車両進行方向の全長(ac間の長さ)は3.7mとなる。
【0054】
これに対して、本実施形態の光ビーコン4(新光ビーコン)では、ダウンリンク領域DAの下流端aをビーコン直下まで延ばし上流端cを上記規定よりも上流側に延ばすことにより、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の範囲を、高速アップリンク受信に非対応の旧光ビーコンの場合よりも広く設定している。
【0055】
具体的な数値で例示すると、ビーコンヘッド8の真下を0m(原点)として、そこから上流方向を正の方向とした場合、本実施形態のダウンリンク領域DAの範囲(
図3の位置aから位置cまでの範囲)は、0.70〜6.04mとなっている。
このようにダウンリンク領域DAを広めに設定すると、車載機2がダウンリンク方向の光信号を受信する確実性が増すとともに、通信時間が長くなるのでダウンリンク方向の通信容量を拡大することができる。
【0056】
また、本実施形態のアップリンク領域UAの範囲(
図3の位置bから位置cまでの範囲)は、3.04〜6.04mとなっており、上流端cの位置が従来よりも1.04mだけ上流側に拡張されている。
このようにアップリンク領域UAを広めに設定すると、光ビーコン4がアップリンク方向の光信号を受信する確実性が増とともに、通信時間が長くなるのでアップリンク方向の通信容量を拡大することができる。
【0057】
〔車載機の構成〕
図3に示すように、本実施形態の車載機2は、車載制御機21と車載ヘッド22とを備えており、車載ヘッド22の内部には、光送信部23と光受信部24が収容されている。
このうち、光送信部23は、近赤外線よりなるアップリンク光(アップリンク方向の光信号)を発光する発光素子を有し、光受信部24は、ダウンリンク領域DAに送出された近赤外線よりなるダウンリンク光(ダウンリンク方向の光信号)を受光する受光素子を有する。
【0058】
光送信部23は、車載制御機21から出力される上りフレームを所定の伝送速度のシリアルな送信信号に変換する送信回路と、出力された送信信号をアップリンク方向の光信号に変換する、発光ダイオード等よりなる発光素子とから構成されている。
本実施形態の車載機2では、光送信部23は、高低2種類の伝送速度での電気光変換が可能なマルチレート対応であり、低い方の伝送速度は従来の旧車載機と同様に64kbpsである。高い方の伝送速度は、128kbps、192kbps、256kbps、384kbps、512kbps、1024kbpsなどの速度を採用し得るが、本実施形態では256kbpsであるとする。
【0059】
光受信部24は、フォトダイオード等よりなる受光素子と、この受光素子が出力する電気信号を増幅してデジタルの受信信号を生成する受信回路とを備えている。
本実施形態の車載機2では、光受信部24が受信する光信号の伝送速度は、従来の旧車載機と同様に1024kbpsである。
【0060】
車載制御機21は、信号処理部、CPU及びメモリなどを有するコンピュータ装置よりなり、光ビーコン4との路車間通信を行う通信制御部としての機能を有する。
また、車載制御機21は、通信制御のためのコンピュータプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムをCPUが読み出して実行することにより、当該CPUが上記通信制御部として機能する。
【0061】
更に、車載制御機21は、アップリンクデータとして、自車両の走行データ(例えば、通過位置と通過時刻を時系列に並べた走行軌跡データであるプローブ情報など)を生成して、光送信部23にアップリンク送信させる機能も有する。
この場合、アップリンク速度を高速化することで、より多くのプローブ情報(走行軌跡を記録する道路区間を長くしたり、同一道路区間における通過位置と通過時刻の記録密度を高くしたりした情報)を送信することが可能になる。
【0062】
なお、本実施形態の車載制御機21は、上記CPUを含む本体制御部とは別に、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )等を含む簡易制御部を設けた回路構成であってもよい。
この簡易制御部は、例えば、光受信部24が何らかの下りフレームを受信した場合に、自機の車両20の識別情報(以下、「車両ID」という。)を含む低速の上りフレームを生成する機能を有する。
【0063】
〔用語の定義等〕
ここで、本明細書で用いる用語の定義を行う。
下りフレームDL1:光ビーコン4が、後述するダウンリンク切り替え前に、ダウンリンク領域DAに向けて繰り返し送信する下りフレームのことをいう。
上りフレームUL1:下りフレームDL1の受信に応じて車載機2が送信する上りフレームのうち、伝送速度が低速のものをいう。「低速フレームUL1」ともいう。
【0064】
上りフレームUL2:下りフレームDL1の受信に応じて車載機2が送信する上りフレームのうち、伝送速度が高速のものをいう。「高速フレームUL2」ともいう。
車載機2が高速アップリンク送信に対応する新車載機2A(
図5参照)の場合は、上りフレームとして、低速フレームUL1と高速フレームUL2の双方を送信でき、車載機2が高速アップリンク送信に非対応の旧車載機2B(
図5参照)の場合には、上りフレームとして低速フレームUL1しか送信できない。
【0065】
下りフレームDL2:光ビーコン4が、後述するダウンリンク切り替え後に、ダウンリンク領域DAに向けて繰り返し送信する下りフレーム(一連のフレーム群の場合を含む。)のことをいう。
ID格納フレーム:車載機2が、自車両の車両IDの値を所定の格納領域(例えば、アップリンク情報のヘッダ部の「車両ID」(
図7参照))に記して生成した、「低速」の上りフレームUL1のことをいう。
【0066】
折り返しフレーム:光ビーコン4が、ID格納フレームを受信した場合に、そのフレームに含まれる車両IDと同じ値を所定の格納領域に記して生成した下りフレームDL2のことをいう。
ID折り返し:光ビーコン4が、ID格納フレームを受信した場合に、折り返しフレームを生成してダウンリンク送信する処理のことをいう。
【0067】
なお、光ビーコン4が、ID格納フレームを受信した場合に、折り返しフレームの連送を行わずにダウンリンク切り替えを行ってもよい。
車両IDのループバック:車載機2がID格納フレームを生成し、生成したID格納フレームをアップリンク送信し、光ビーコン4がID折り返しを行うことにより、車両IDを送信元の車載機2にループバックさせる一連の処理のことをいう。
【0068】
ダウンリンク切り替え:光ビーコン4が繰り返して送信する下りフレームDL1,DL2に含める実質的なデータ内容を、当該切り替えの前後で変化させることをいう。
本実施形態では、ダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2には、折り返しフレームと、車両IDに対応する車両向けの提供情報を含む下りフレームDL2とが含まれる。この提供情報には、例えば、渋滞情報、区間旅行時間情報及び事象規制情報などの情報を含めることができる。
【0069】
これらの情報は、高速アップリンク送信に非対応の旧車載機に対しても提供されるものである。
もっとも、本実施形態の光ビーコン4(新光ビーコン)では、高速アップリンク送信に対応する新車載機を搭載した車両向けの提供情報として、例えば、交差点における信号灯色の切り替えタイミングを含む信号情報や、車両20が電気自動車の場合に有用な情報である直近の充電ステーションまでの経路を示す充電ステーション情報など、新車載機用として予め定めた専用情報を提供することもできる(
図9及び
図10参照)。
【0070】
上りフレームUL1及び下りフレームDL1,DL2における車両IDのデータ格納領域は、どの領域を使用してもよいが、例えば「ヘッダ部」や「車線通知情報」を使用することができる。
下りフレームDL1,DL2の車線通知情報には、車線R1〜R4(
図2)ごとに車両IDを格納するフィールドがあり、各車両IDに対して車線番号を付与できる。このため、異なる車線R1〜R4を走行する車両20の車載機2は、格納フィールド内のいずれに自車両の車両IDが含まれるかを読み取ることで、自車両がどの車線R1〜R4を走行中かを判定できる。
【0071】
〔上りフレームのフレーム構成〕
図7は、アップリンク情報(上りフレーム)のフレーム構成図である。
図7に示すように、上りフレームUL1は、先頭から順に、受信側と同期を取るための同期用の伝送制御部(以下、「同期部」という。)、ヘッダ部、実データ部及びCRC(Cyclic Redundancy Check )用の伝送制御部(以下、「CRC部」という。)を有する。
【0072】
図7に示すように、上りフレームUL1の場合は、同期部に1バイトが割り当てられ、ヘッダ部に10バイトが割り当てられ、実データ部に最大59バイトが割り当てられ、CRC部には4バイト(1バイトのアイドル部+2バイトのCRC+1バイトの最終同期部)が割り当てられている。
アップリンク情報のヘッダ部には、「サブシステムキー情報数」、「車両ID」、「車載機種別」、「情報種別」及び「最終フレームフラグ」などの格納領域が含まれる。
【0073】
「サブシステムキー情報数」(以下、「情報数」と略記することがある。)には、実データ部の先頭から順に格納する「サブシステムキー情報」の数が格納される。
すなわち、情報数がゼロの場合は、実データ部に「サブシステムキー情報」が含まれず、情報数が「1」の場合は、実データ部に1つの「サブシステムキー情報」が含まれ、情報数が「n」の場合は、実データ部にn個の「サブシステムキー情報」が含まれる。
【0074】
上記「サブシステムキー情報」は、光ビーコン4が、公共車両優先システム(PTPS)、車両運行管理システム(MOCS)、現場急行支援システム(FAST)及び安全運転支援システム(DSSS)などのダウンリンク情報の付加情報を選択するためのキー情報である。
車載機2は、自車両がUTMS規格のどのシステムに対応しているかに応じて、「サブシステムキー情報数」と「サブシステムキー情報」の内容を決定する。
【0075】
例えば、車載機2は、自車両がUTMS規格の1つのシステムに対応する場合は、ヘッダ部の「サブシステムキー情報数」の値を「1」に設定し、当該1つのシステムの規格に従った内容の「サブシステムキー情報(1)」を、実データ部に格納する。
また、車載機2は、自車両がUTMS規格の2つのシステムに対応する場合は、ヘッダ部の「サブシステムキー情報数」の値を「2」に設定し、当該2つのシステムの規格にそれぞれ従った内容の「サブシステムキー情報(1)」及び「サブシステムキー情報(2)」を、実データ部に格納する。
【0076】
なお、「サブシステムキー情報」のデータ形式は、各々のシステムの規格によって相違するので詳細は割愛するが、例えば、安全運転支援システム(DSSS)の場合には、ブレーキ状態、ターンシグナル状態、ハザード状態、車速、進行方向、加減速度及びアクセルペダル位置などの情報が含まれる。
【0077】
一方、光ビーコン4は、アップリンク情報に含まれる「サブシステムキー情報」の種別により、車載機2が、UTMS規格に含まれるどのシステムに対応するかを判断し、当該システムの規格に応じた提供情報を、ダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2に格納してダウンリンク送信する。なお、この提供情報は、サブシステムキー情報の対価として提供されるという意味で、「対価サービス情報」ということがある。
このように、「サブシステムキー情報」は、ダウンリンク切り替え後の提供情報の種類を新旧の光ビーコン4が決定するのに使用される。
【0078】
「車両ID」は、車載機2が自身で生成した、或いは、光ビーコン4が自動生成した車両IDの値を格納する領域であり、車載機2は、アップリンク送信時に記憶している車両IDの値を、上りフレームUL1のヘッダ部の車両IDに格納する。
「車載機種別」は、車載機2の種別を格納する領域であり、「情報種別」は、アップリンク情報の種別を格納する領域であり、本実施形態では、これらの領域の値により、アップリンク送信主体の新旧と、アップリンク情報が高速か低速かを表す。
【0079】
具体的には、本実施形態の車載機2(新車載機2A)は、低速の上りフレームUL1を送信する場合は、「車載機種別」に新車載機2Aを示す所定値(例えば、「6」)を格納し、「情報種別」に低速であることを示す所定値(例えば、「1」)を格納する。
また、新車載機2Aは、高速の上りフレームUL2を送信する場合は、「車載機種別」に新車載機2Aを示す所定値(例えば、「6」)を格納し、「情報種別」に高速であることを示す所定値(例えば、「4」)を格納する。
【0080】
従って、本実施形態の光ビーコン4(新光ビーコン4A)は、受信した上りフレームULの車載機種別の値が「6」でかつ情報種別の値が「1」の場合は、新車載機2Aからの低速フレームUL1であると判定でき、受信した上りフレームULの車載機種別の値が「6」でかつ情報種別の値が「4」の場合は、新車載機2Aからの高速フレームUL2であると判定することができる。
なお、旧車載機2Bの場合は、車載機種別の値を「6」以外に設定するので、新光ビーコン4Aは、「車載機種別」の値が「6」以外の上りフレームULを受信した場合は、旧車載機2Bからの低速フレームUL1であると判定することができる。
【0081】
新光ビーコン4Aは、新車載機2A及び旧車載機2Bからの低速フレームUL1の受信を完了すると、ヘッダ部に含まれる車両IDの値を車線通知情報に格納した折り返しフレームを生成し、このフレームの連続送信を伴うダウンリンク切り替えを行う。
一方、本実施形態では、新光ビーコン4Aは、新車載機2Aからの高速フレームUL2の受信を完了した場合には、ダウンリンク切り替えを行わない。もっとも、高速フレームUL2の受信完了に応じて、ダウンリンク切り替えを行う規約を採用してもよい。
【0082】
このように、本実施形態では、新車載機2A及び旧車載機2Bからの低速フレームUL1の受信完了は、新光ビーコン4Aが折り返しフレームの連続送信を伴うダウンリンク切り替えを行うための条件(契機ないしトリガー)となっている。
また、新車載機2Aからの高速フレームUL2の受信完了は、新光ビーコン4Aが折り返しフレームの連続送信やダウンリンク切り替えを行うための条件(契機ないしトリガー)になっていない。
【0083】
「最終フレームフラグ」は、車載機2(新旧いずれでもよい。)が複数の上りフレームULよりなる上りフレーム群を送信する場合に、その上りフレーム群のどれが最終フレームであるかを示すための格納領域である。
すなわち、車載機2は、上りフレーム群を構成する複数の上りフレームULのうち、最終フレームの「最終フレームフラグ」にのみ所定のフラグ値(例えば、「1」)を格納し、それ以外の上りフレームULにはそのフラグ値を格納しない。
【0084】
〔下りフレームのフレーム構成〕
図8は、ダウンリンク情報(下りフレーム)のフレーム構成図である。
図8に示すように、下りフレームDL1,DL2のフレーム構成も、上りフレームUL1のフレーム構成(
図7)の場合と同様に、先頭から順に、同期部、ヘッダ部、実データ部及びCRC部とからなる。
【0085】
下りフレームDL1,DL2の場合は、同期部に1バイトが割り当てられ、ヘッダ部に5バイトが割り当てられ、実データ部に123バイトが割り当てられ、CRC部に4バイト(1バイトのアイドル部+2バイトのCRC+1バイトの最終同期部)が割り当てられている。
下りフレームDL1,DL2の実データ部には、車両20向けの提供情報として、
図9に示す各種情報のうちのいずれか1つが格納される。
【0086】
具体的には、光ビーコン4(新旧いずれでもよい。)は、ダウンリンク切り替え前の下りフレームDL1の実データ部には、「車線通知情報」を含める。
また、光ビーコン4は、ダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2の実データ部には、その下りフレームDL2が折り返しフレームである場合を除き、車載機2からアップリンクされたサブシステムキー情報に対応する提供情報を選択し、選択した提供情報を実データ部に含める。
【0087】
なお、光ビーコン4は、提供情報が実データ部の容量(123バイト)に収まる場合は、1つの下りフレームDL2で提供情報を送信するが、収まらない場合は、複数の下りフレームDL2にて提供情報を送信することもある。
【0088】
図8に示すように「車線通知情報」の格納領域には、「車両ID」、「車線番号」及び「ビーコン識別フラグ」などが含まれる。
光ビーコン4は、ダウンリンク切り替え前の下りフレームDL1の場合は、「車線通知情報」の「車両ID」に値を格納せず、車載機2からID格納フレームを受信すると、そのヘッダ部に含まれる車両IDの値を、「車線通知情報」の「車両ID」に格納して折り返しフレームを生成する。光ビーコン4は、アップリンク情報を取得したビーコンヘッド8に対応する車線番号値を「車線番号」に記す。
【0089】
「ビーコン識別フラグ」は、自機が高速アップリンク受信に対応するか否かを示す格納領域である。
すなわち、光ビーコン4は、自機が高速アップリンク受信に対応する「新光ビーコン4Aの場合は、下りフレームDL1,DL2の「ビーコン識別フラグ」に所定のフラグ値(例えば、「01」)を格納し、自機が高速アップリンク受信に対応しない旧光ビーコン4Bの場合は、下りフレームDL1,DL2の「ビーコン識別フラグ」にそれ以外の値(例えば、「00」)を格納する。
【0090】
従って、高速アップリンク送信に対応する本実施形態の車載機2(新車載機2A)は、下りフレームDL1,DL2の「車線通知情報」に含まれる「ビーコン識別フラグ」の値により、通信相手の光ビーコン4が、新光ビーコン4Aであるか旧光ビーコン4Bであるかを判定することができる。
【0091】
ダウンリンク切り替え後に光ビーコン4の光送信部10から繰り返し送信される下りフレーム群は、1〜80個の下りフレームDL2で構成され、その繰り返し送信の送信可能時間は250msである。
また、下りフレームDL2は、ダウンリンク方向に送出すべきデータ量に応じた任意数のフレームで構成され、上記送信可能時間の範囲内で繰り返し送信される。また、下りフレームDL2の送信周期は約1msである。
【0092】
従って、例えば、3つの下りフレームDL2で1つの有意なデータを構成する場合は、その送信周期が約3msになるので、そのデータは所定の送信可能時間(250ms)内に約80回繰り返して送信されることになる。
もっとも、本実施形態のように、ダウンリンク領域DAをビーコンヘッド8の直下付近まで拡大すれば(
図3参照)、繰り返し送信する下りフレームDL2の個数を最大200個程度まで増加させることができる。
【0093】
なお、後述の
図10の路車間通信に示すように、光ビーコン4がID格納フレームに応じてダウンリンク切り替えを行う場合には、後続フレームのアップリンク送信の時間とダウンリンク切り替え後のダウンリンク送信の時間が重複し得るので、ダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2の送信可能期間は(250+α)ms(例えば、350ms)とすることが好ましい。
【0094】
〔従来の路車間通信〕
図4は、通信領域Aで行われる従来の通信手順を示すシーケンス図である。
ここで、
図4において、白丸を付したフレームは、車両IDを含まないフレーム(車両IDなしの車線通知情報を有するフレーム)であることを示し、黒丸を付したフレームは、路車間のID折り返しに利用するフレーム(上りの「ID格納フレーム」又は下りの「折り返しフレーム」)であることを示す。
図9及び
図10においても同様である。
【0095】
また、以下の路車間通信の説明では、動作主体が光ビーコン4と車載機2であるとして説明するが、実際の通信制御は、光ビーコン4のビーコン制御機(通信制御部)7と、車載機2の車載制御機(通信制御部)21が実行する。この点も、
図9及び
図10の路車間通信においても同様である。
【0096】
図4に示すように、光ビーコン4(
図4の場合は旧光ビーコン4B)は、車線R1〜R4ごとに設けられたビーコンヘッド8から、下りフレームDL1を所定の送信周期で送信し続けている。この段階では、車線通知情報に車両IDが格納されていない。
車両20がダウンリンク領域DAに入ると、車載機2(
図4の場合は旧車載機2B)が車線通知情報(車両ID無し)を含む下りフレームDL1或いはその他の下りフレームDL1を受信し、車両20が光ビーコン4の通信領域A内に入ったことを察知する。
【0097】
この際、車載機2は、ヘッダ部に車両IDを格納した低速の上りフレームUL1(
図4のID格納フレームU1)を生成し、自機の通信をいったん受信から送信に切り替えて、生成した低速の上りフレームUL1をアップリンク送信し、その後、自機の通信を送信から受信に戻す。
なお、旅行時間情報などの光ビーコン4に提供すべき情報がある場合には、ID格納フレームU1の実データ部にその情報が格納される。
【0098】
受信フレームのCRCチェック等を経てID格納フレームU1が光ビーコン4において正規に受信されると、光ビーコン4は、遅くとも10m秒以内でダウンリンク切り替えを行ったあと、下りフレームDL2の繰り返し送信を開始する。
ダウンリンク切り替えの後に繰り返し送信させる複数の下りフレームDL2は、先頭部分で連送される複数の折り返しフレーム(黒丸付きの下りフレームDL2)と、その後に繰り返し送信される所定の提供情報を含む下りフレームDL2とからなる。
【0099】
この下りフレームDL2の繰り返し送信は、前記した所定時間内において可能な限り繰り返される。
また、
図4に示すように、折り返しフレーム(黒丸付きの下りフレームDL2)は、提供情報の送信期間中においてダウンリンク情報を構成する一連の複数の下りフレームDL2(例えば5個の下りフレームDL2)の1つであり、従来は、一連の複数の下りフレームDL2の先頭にのみ含まれて繰り返し(
図4の例では5フレームごと)送信される。
【0100】
なお、ダウンリンク情報を構成する一連の下りフレームDL2は最大で80個まで格納できるため、折り返しフレーム(黒丸付きの下りフレームDL2)は、最も少ない頻度の場合には80フレームに1つの割合で格納されることとなる。
車載機2は、光ビーコン4から複数の下りフレームDL2を受信し、その複数の下りフレームDL2の中で、自車両の車両IDが記された車線通知情報を含むものがあるか否かを判定する。
【0101】
車載機2は、その判定結果が肯定的である場合に、自車両の車両IDのループバックが成功したことを確認し、この時点で自機の通信を受信のままに維持する。
逆に、車載機2は、その判定結果が否定的である間は、自車両の車両IDのループバックが成功していないと判断し、自機の通信を受信から送信に切り替えて、上りフレームUL1を再送する。この場合、車載機2は、例えば、先に送信した上りフレームU1の送信後所定時間(例えば30ms)後に、再び上りフレームUL1を送信する。車載機2は、この再送の動作を車両IDのループバックが成功するまで繰り返す。
【0102】
〔混在状況における問題点〕
図5は、新旧の光ビーコン4A,4Bと車載機2A,2Bの混在状態を示す図である。
図5に示すように、新光ビーコン4Aは、低速の伝送速度(64kbps)だけでなく高速の伝送速度(例えば256kbps)でのアップリンク受信に対応している。本実施形態の光ビーコン4は、新光ビーコン4Aに該当する。
同様に、新車載機2Aは、低速の伝送速度(64kbps)だけでなく高速の伝送速度(例えば256kbps)でのアップリンク送信に対応している。本実施形態の車載機2は新車載機2Aに該当する。
【0103】
これに対して、旧光ビーコン4Bは、低速の伝送速度(64kbps)でのアップリンク受信のみを行う光ビーコン、すなわち、高速の伝送速度(例えば256kbps)でのアップリンク受信に非対応の光ビーコンである。
同様に、旧車載機2Bは、低速の伝送速度(64kbps)でのアップリンク送信のみを行う車載機、すなわち、高速の伝送速度(例えば256kbps)でのアップリンク送信に非対応の車載機である。
【0104】
上述の用語の定義で記載した通り、
図5の「DL1」は、ダウンリンク切り替え前に新旧の光ビーコン4A,4Bが送信する下りフレームを示し、
図5の「UL1」は、下りフレームDL1の受信を契機として、新旧の車載機2A,2Bが送信可能な低速フレームを示し、
図5の「UL2」は、新車載機2Aのみが送信可能な高速フレームを示している。
また、
図5の「DL2」は、ダウンリンク切り替え後に新旧の光ビーコン4A,4Bが送信する下りフレームを示している。
【0105】
ここで、新光ビーコン4Aと新車載機2Aが路車間通信する場合を想定する。そして、光ビーコン4の新旧タイプを判別不能な場合は、新車載機2Aは、上りフレームを確実に受信して貰うために低速でアップリンク送信を行うとする。
この場合、ダウンリンク方向の伝送速度は、新旧いずれの場合も「1024kbps」であるから、新車載機2Aは、新光ビーコン4Aから下りフレームDL1を受信しただけでは、通信相手が新光ビーコン4Aであることを察知できない。
【0106】
このように、新車載機2Aが、新光ビーコン4Aのダウンリンク領域DAを通過する間に新光ビーコン4Aと通信していることを認識できなければ、高速のアップリンク送信が可能である筈の新車載機2Aが、新光ビーコン4Aに対しても低速でアップリンク送信を行ってしまい、アップリンク速度の高速化が実現できなくなる。
そこで、本実施形態では、自機が高速アップリンク受信に対応する新光ビーコン4Aである旨のビーコン識別情報(例えば、
図8の「ビーコン識別フラグ」)を、ビーコン制御機7が下りフレームDL1,DL2に含めることができる。
【0107】
具体的には、前述の通り、光送信部10にダウンリンク送信させる下りフレームDL1,DL2の「車線通知情報」(「ヘッダ部」でもよい。)に、光ビーコン4の新旧タイプを示すフラグフィールドを予め定義しておく。
そして、ビーコン制御機7は、自機を新光ビーコン4Aとして動作させる場合には、繰り返し送信するすべての下りフレームDL1,DL2又は所定周期ごとの下りフレームDL1,DL2のフラグフィールドをオンにし、自機を旧光ビーコン4Bとして動作させる場合には、その下りフレームDL1,DL2のフラグフィールドをオフにする。
【0108】
このため、新車載機2Aは、受信した下りフレームDL1,DL2のフラグフィールドがオンである場合には、通信相手が新光ビーコン4Aであると判定でき、オフの場合や当該フラグフィールドが検出できなかった場合には、通信相手が旧光ビーコン4Bであると判定できる。
【0109】
もっとも、上りフレーム群に必ず低速フレームUL1が含まれておれば、通信相手の光ビーコン4の新旧タイプを判定しなくても、両タイプの光ビーコン4との通信が可能である。
その理由は、低速フレームUL1を利用すれば新旧双方の光ビーコン4A,4Bと従来通りの通信ができるし、上りフレーム群の他のフレームを一律に高速フレームUL2としても、旧光ビーコン4Bがそれを受信できないだけで、特に問題はないからである。
【0110】
本実施形態では、新車載機2Aは、光ビーコン4の新旧判定を行わないタイプであると仮定するが、新車載機2Aは、下りフレームDL1のフラグフィールドに基づいて光ビーコン4の新旧判定を行った結果、通信相手が新光ビーコン4Aであると判明した場合に限り、高速フレームUL2を送信するものであってもよい。
【0111】
〔新光ビーコンの上位互換制御〕
図6は、本実施形態の光ビーコン4である、新光ビーコン4Aのビーコン制御機7が行う上位互換制御を示すフローチャートである。
図6に示すように、新光ビーコン4Aのビーコン制御機7は、フラグフィールドをオンに設定した下りフレームDL1を所定周期で繰り返しダウンリンク送信することにより(
図6のステップST1)、自機が新光ビーコン4Aであることを外部に通知している。
【0112】
この状態で、ビーコン制御機7は、上りフレームUL1を受信したか否かを判定し(
図6のステップST2)、その受信を検出するまで、ステップST1のダウンリンク送信を継続する。
上りフレームUL1の受信を検出すると、ビーコン制御機7は、受信した上りフレームUL1の送信主体が、高速の伝送速度(本実施形態では、256kbps)に対応する新車載機2Aであるか否かを判定する(
図6のステップST3)。
【0113】
このステップST3の判定は、例えば、光受信部11で受信された上りフレームUL1の伝送速度が、高速であったか低速であったかによって行うことができる。この場合、受信した上りフレームUL1が高速であれば、送信主体が新車載機2Aであると判定でき、低速であれば、送信主体が旧車載機2Bであると判定できる。
また、新車載機2Aの車載制御機21が、自機が高速アップリンク送信対応の新車載機2Aである旨の車載機識別情報を、上りフレームUL1に含める規約を採用してもよい。
【0114】
具体的には、光送信部23がアップリンク送信する上りフレームUL1のヘッダ部に、車載機2の新旧タイプを示すフラグフィールド(例えば、
図7の「車載機種別」)を予め定義しておく。
そして、新車載機2Aの車載制御機21は、自機を新車載機2Aとして動作させる場合は、高速で送信する上りフレームUL1のフラグフィールドをオンにし、自機を旧車載機2Bとして動作させる場合は、上りフレームUL1のフラグフィールドをオフにする。
【0115】
このため、かかる規約を採用すれば、ビーコン制御機7は、受信した上りフレームUL1のフラグフィールドがオンである場合には、その送信主体が新車載機2Aであると判定でき、上りフレームUL1のフラグフィールドがオフの場合や当該フラグフィールドが検出できなかった場合には、その送信主体が旧車載機2Bであると判定できる。
【0116】
ステップST3の判定結果が肯定的である場合、すなわち、上りフレームUL1の送信主体が新車載機2Aの場合は、ビーコン制御機7は、ダウンリンク切り替え後に新車載機用のダウンリンク送信を行う(
図6のステップST4)。
新車載機用のダウンリンク送信は、渋滞情報、区間旅行時間情報及び事象規制情報などの旧車載機向けの提供情報に加え、信号情報や充電ステーション情報などの新車載機向けの提供情報を含む下りフレームDL2を、繰り返し送信することによって行われる。
【0117】
ステップST3の判定結果が否定的である場合、すなわち、上りフレームUL1の送信主体が旧車載機2Bの場合は、ビーコン制御機7は、ダウンリンク切り替え後に旧車載機用のダウンリンク送信を行う(
図6のステップST5)。
この旧車載機用のダウンリンク送信は、渋滞情報、区間旅行時間情報及び事象規制情報などの旧車載機向けの提供情報を含む下りフレームDL2だけを、繰り返し送信することによって行われる。
【0118】
なお、前述の通り、ダウンリンク切り替え後に行われるステップST4,ST5の下りフレームDL2のダウンリンク送信は、ダウンリンク切り替え時点から所定時間(例えば、250ms)が経過するまで行われる。
【0119】
〔送信中断期間を設けない場合の路車間通信〕
図9は、新車載機2Aが「送信中断期間」を設けずに上りフレームUL1,UL2を送信するため、新車載機2AがID確認を失敗する場合の路車間通信を示すシーケンス図である。
【0120】
図9において、U0〜U3は、下りフレームDL1を検出した新車載機2Aがアップリンク送信する、複数の上りフレーム(上りフレーム群)UL1,UL2を示している。
図9では、上りフレーム群のフレーム数が4フレームになっているが、そのフレーム数は4つに限定されるものではなく、例えば、高速フレームUL2が3つ以上送信される場合もあるし、比較的長いデータ長である高速フレームUL2が1つだけ送信される場合もあり得る。
【0121】
また、ハッチングを付していない上りフレームU0は、伝送速度が低速(本実施形態では64kbps)の「低速フレーム」であることを示し、ハッチングを付した上りフレームU1〜U3は、伝送速度が高速(本実施形態では256kbps)の「高速フレーム」であることを示している。
なお、低速フレームU0と高速フレームU1〜U3の図示上の区別については、
図10の路車間通信においても同様である。
【0122】
プローブ情報などの大容量のデータをアップリンク送信する場合には、低速フレームU0にデータを格納しきれないことが多い。そこで、
図9の例では、新車載機2Aが合計3つの高速フレームU1〜U3を低速フレームU0の後に続けて送信している。
具体的には、新車載機2Aは、ダウンリンク領域DAにおいて下りフレームDL1を受信すると、低速フレームU0を即座に低速でアップリンク送信し、それに続けて高速フレームU1〜U3をアップリンク送信する。
【0123】
なお、本実施形態では、新車載機2Aが通信相手の新旧を判定しない場合を想定しているので、低速フレームU0と高速フレームU1〜U3の連続送信は、新車載機2Aの通信相手が新光ビーコン4Aか旧光ビーコン4Bかに拘わらず実行される。
新車載機2Aの通信相手の光ビーコン4は、上りフレーム群に含まれる低速フレームU0の受信完了を契機として、そのヘッダ部から車両ID値を抽出し、その値を車線通知情報に格納した折り返しフレームの連送とダウンリンク切り替えを行う。
【0124】
すなわち、光ビーコン4が新光ビーコン4Aの場合は、低速フレームU0の「車載機種別」の値が「6」でかつ「情報種別」の値が「1」であることを検出すると、折り返しフレームの連送とダウンリンク切り替えを行う。
また、光ビーコン4が旧光ビーコン4Bの場合は、上記のような種別判定を行うことができないので、低速フレームU0の受信が完了すると、従来通り、即座に折り返しフレームの連送とダウンリンク切り替えを行う。
【0125】
このように、旧光ビーコン4Bは、大容量のアップリンク送信はされないという想定の下で、ID格納フレームである低速フレームU0を受信すると、即座に折り返しフレームを連送してダウンリンク切り替えを出来るだけ素早く行う運用になっており、新光ビーコン4Aも、旧車載機2Bとの互換性を維持するため、低速フレームU0の受信完了を契機としてダウンリンク切り替えを即座に行うようになっている。
従って、
図9に示すように、高速フレームU1〜U3の送信期間(
図9の例ではU3)によっては、その送信中に折り返しフレームが新車載機2Aに到達することがある。
【0126】
この場合、新車載機2Aが半二重通信方式を採用している場合には、光受信部24に折り返しフレームが届いているにも拘わらず、新光ビーコン4Aが車両IDを認識済みであることを新車載機2Aが察知できない。
また、この場合、
図9に破線で示すように、新車載機2Aは、ID格納フレームである低速フレームU0を含む大容量の上りフレーム群U0〜U3を再送信する。
【0127】
この現象は、ダウンリンク情報に含めるべき車線通知情報以外の提供情報のデータ量が多いほど発生しやすくなる。
その理由は、提供情報のデータ量が多くなるほど、新光ビーコン4Aが繰り返し送信する下りフレームDL2に折り返しフレームを含める頻度が少なくなるため、新車載機2Aがループバックを認識できない確率が高くなるためである。
【0128】
従って、ダウンリンク切り替え後に定期的(
図9の例では5フレームごと)にダウンリンク送信される折り返しフレームについても、上りフレーム群U0〜U3の送信期間と重なるタイミングになって、新車載機2Aが受信できる可能性が低くなることがある。
この場合、上りフレーム群U0〜U3を再送信した後でも、新車載機2Aが折り返しフレームに気付かず、上りフレーム群U0〜U3のアップリンク送信(再送)が無駄に継続されることになる。
【0129】
そして、新車載機2Aがアップリンク送信するフレーム数が多いほど、折り返しフレームに気付かないままアップリンク領域UAにおいて上りフレーム群U0〜U3の送信が継続される可能性が増すことになる。
従って、より多くのデータを新光ビーコン4Aにアップリンクしようとする新車載機2Aほど、限られた期間(例えば250ms)にしか送信されない下りフレームDL2の受信機会を大幅に喪失したり、極端な場合は、下りフレームDL2を受信できずに通信領域Aを通過したりするという、不合理な結果になるおそれがある。
【0130】
〔送信中断期間を設ける場合の路車間通信〕
図10は、新車載機2Aが「送信中断期間」を設けて上りフレームUL1,UL2を送信するため、新車載機2Aが、ID確認を成功する場合の路車間通信を示すシーケンス図である。
図10の例では、新車載機2Aが低速フレームU0の後に高速フレームU1〜U3を連送する場合に、最初の低速フレームU0と高速フレームU1の間に「送信中断期間」を設けることにより、折り返しフレームの不達に伴う上述の問題点を解決している。
【0131】
この「送信中断期間」は、新車載機2Aが、自機が行う車両IDのループバックの成功を確認するとともに、高速フレームU1の送信の準備をするために必要な所定の時間長に設定される。
例えば、新光ビーコン4AがID格納フレームU0の受信から下りフレームDL2の送信開始までに5〜10m秒程度要すると仮定し、さらに、新車載機2Aが自車の車両IDのループバックを確認し、高速フレームU1の送信を開始するのに必要な遅延時間を10m秒と仮定すれば、送信中断期間は概ね15〜20m秒の範囲で設定すればよい。
【0132】
かかる送信中断期間を設けることにすれば、ダウンリンク切り替え後に連送される折り返しフレームが当該期間中に新車載機2Aの光受信部24に到達し、新車載機2Aは、受信した折り返しフレームに含まれる車両IDが自機のものと一致するか否かを判定することにより、車両IDのループバックの成功を確認できる。
上記の確認の後、新車載機2Aは、高速フレームU1〜U3を連送し、その連送が終了したあと、自機の通信を受信に切り替える。
【0133】
このように、低速フレームU0と高速フレームU1の間に送信中断期間を設ける新車載機2Aによれば、送信中断期間に新光ビーコン4Aから受信した折り返しフレームにより、新光ビーコン4Aが車両IDを認識済みであることを確実に察知することができる。
このため、複数の上りフレームU0〜U3の送信を新車載機2Aが無駄に継続することによる、下りフレームDL2の受信機会の喪失を未然に防止することができる。
【0134】
送信中断期間を設定する方法としては、車載制御機21が消灯状態を示す信号をその期間中に光送信部23に出力し続ける方法や、その期間の始期に光送信部23の発光素子への電源供給を停止して消灯させ、その期間の終期に発光素子への電源供給を再開して再発光させる方法がある。
また、光信号が光ビーコン4に到達できない程度に、発光素子のパワーを低下させる方法を採用してもよい。このようにすれば、発光素子の再発光時のパワーの復帰を迅速に行え、上りフレームU1の先頭側の同期部の乱れを抑制できるという利点がある。
【0135】
一方、何らかの原因(車両20のフロントガラスの曇り等)で、ID格納フレームである低速フレームU0が新光ビーコン4Aに届かなかった場合には、光ビーコン4が折り返しフレームを返して来ないので、新車載機2Aはループバックの成功を確認できない。
そこで、新車載機2Aは、送信中断期間にループバックの成功を確認できなかった場合には、
図10に破線で示すように、ID格納フレームである低速フレームU0のみを光送信部23に再送信させ、再送信した低速フレームU0の後を送信中断期間とする。
【0136】
従って、再送信した低速フレームU0を新光ビーコン4Aが正規に受信できた場合は、上述と同様に、送信中断期間に新光ビーコン4Aから受信した折り返しフレームにより、車両IDのループバックの成功を確認することができる。
【0137】
図10の例において、最初の上りフレームである低速フレームU0のデータサイズは、できるだけ小さいことが好ましい。例えば、多くとも高速フレームU1〜U4のいずれか1つよりも小さいことが好ましい。
より好ましくは、例えば、低速フレームU0に格納するデータを、車両ID情報、ビーコン間の旅行時間や新車載機2Aが対応するサービス種別等の必要最小限とすることにより、低速フレームU0のデータサイズを、1回の通信で送信する複数の上りフレームU0〜U3の中で最小(例えば、実データ部で5バイト程度)に設定することが好ましい。
【0138】
その理由は、再送信の可能性がある低速フレームU0のフレーム長が長ければ、その分だけ、低速フレームU0を再送信した場合の、アップリンク送信が可能な残り時間が少なくなり、アップリンク送信する予定の複数の高速フレームU1〜U3のうちの、例えば最後の高速フレームU3が新光ビーコン4Aに正常に到達しなくなる可能性があるからである。
【0139】
なお、
図10の例において、新車載機2Aが、下りフレームDL1や送信中断期間中に受信した下りフレームDL2に含まれるビーコン識別フラグに基づいて、通信相手が高速アップリンク受信に対応する新光ビーコン4Aか非対応の旧光ビーコン4Bかを判定し、その判定結果に応じて、送信中断期間の後に高速フレームU1〜U3を送信するか否かを決定するようにしてもよい。
【0140】
上記の通り、新光ビーコン4Aの通信相手としては、低速フレームU0と高速フレームU1〜U3の間に送信中断期間を設けてアップリンク送信する新車載機2A(
図10)であることが好ましいが、送信中断期間を設けずに上りフレームU0〜U3を連続送信する新車載機2A(
図9)であってもよい。
その理由は、高速フレームUL2のフレーム数や送信時間を少なめに設定すれば、特に送信中断期間を設けなくても、低速フレームUL1に対応してダウンリンクされた折り返しフレームを、新車載機2Aが適切に受信し得るからである。
【0141】
〔高速フレームの不感領域による問題点〕
図11は、高速フレームUL2の不感領域の一例を示す説明図である。
図11において、実線のエリアRA1は、光受信部11が低速フレームUL1を実際に受信可能なエリアを示し、仮想線のエリアRA2は、光受信部11が高速フレームUL2を実際に受信可能なエリアを示している。
【0142】
また、
図11において、P1は、低速フレームUL1を受信可能なエリアRA1の所定高さH(例えば、H=1.0m)における最上流端(以下、「第1上流端」という。)であり、P2は、高速フレームUL2を受信可能なエリアRA2の所定高さHにおける最上流端(以下、「第2上流端」という。)である。
なお、この場合の「受信可能」とは、上りフレームUL1,UL2を、所定のビットエラーレート(例えば、規格値では10
−5)以下で受信できることを意味する。
【0143】
ここで、
図11に示すように、エリアRA1の車両進行方向の範囲は、エリアRA2の同方向の範囲よりも広くなる。
かかる範囲の広狭差を、第1上流端P1と第2上流端P2の位置関係で換言すると、上りフレームUL1,UL2の受光に同じレンズを用いる通常の光受信部11では、第1上流端P1が第2上流端P2よりも上流側に位置するということになる。その理由は、次の通りである。
【0144】
すなわち、新光ビーコン4Aに搭載する光受信部11のフィルタ34(
図12参照)では、上りの電気信号を外乱(ダウンリンク光や太陽光の反射光を受光素子が感知して生じた電気信号)と分離するために、上り帯域の電気信号(本実施形態では64kbpsと256kbps)は通過させるが、下り帯域の電気信号(本実施形態では1024kbps)を含む約500kHz以上の帯域成分を遮断する周波数特性を有するものを用いる必要がある。
【0145】
従って、遮断周波数に近い高速フレームUL2の方が低速フレームUL1よりもフィルタ34に対する透過性がやや落ち、その結果、新光ビーコン4Aの受信性能としては、高速フレームUL2の方が低速フレームUL1よりも若干悪くなる。
かかる伝送速度の差による受信性能の差が、そのまま低速フレームUL1と高速フレームUL2の受信可能な範囲の広狭となって表れ、低速フレームUL1を実際に受信可能な「物理的」な最上流端である第1上流端P1が、高速フレームUL2を実際に受信可能な「物理的」な最上流端である第2上流端P2よりも上流側になる。
【0146】
このため、
図11における第1上流端P1から第2上流端P2までの領域は、低速フレームUL1を受信可能であるが高速フレームUL2を受信不能な領域(以下、「不感領域」という。)Fとなる。
ところで、例えば
図10の路車間通信のように、新車載機2Aが最初に低速フレームUL1を送信し、その後に受信する折り返しフレームで自身車両IDを確認してから、高速フレームUL2を送信する通信規約を採用すると、車両20の走行速度によっては、不感領域Fにおいて新車載機2Aが高速フレームUL2を送信することもあり得る。
【0147】
特に、車両20が例えば10km/h以下の低速で通信領域Aを通過するような場合には、新車載機2Aが、低速フレームUL1のアップリンク送信→ダウンリンク切り替え後の折り返しフレームのダウンリンク受信→高速フレームUL2のアップリンク送信までの一連の送受信を、すべて不感領域Fで行う場合がある。
【0148】
このように、新車載機2Aが不感領域Fにおいて高速フレームUL2を送信すると、その高速フレームUL2を新光ビーコン4Aが受信できない。
また、新車載機2Aがダウンリンク受信する時間を確保するために、高速フレームUL2に再送チャンスを与えない通信規約を採用する場合には、新車載機2Aが不感領域Fで送信した高速フレームUL2を新光ビーコン4Aが取り逃がすと、その高速フレームUL2を取得できる可能性がなくなってしまう。
【0149】
そこで、本実施形態では、第2上流端P2が第1上流端P1(或いは、後述の見かけの第1上流端P1’でもよい。)よりも上流側又は実質的に同じ位置にする位置設定を行うことにより、不感領域Fの発生を防止し、新光ビーコン4Aが高速フレームUL2を確実に受信できるようにしている。
以下、かかる位置設定の方法には幾つかの具体例が存在する。以下、その具体例ごとに新光ビーコン4Aの実施形態を説明する。
【0150】
〔第1実施形態〕
第1実施形態では、不感領域Fにて送信された低速フレームUL1によるダウンリンク切り替えを禁止する「受信制限処理」を実行することにより、「物理的」な最上流端である第1上流端P1の代わりに、それより下流側の「論理的」な最上流端である見かけの第1上流端P1’を採用し、上述の位置設定を行っている。
【0151】
図12は、第1実施形態に係る新光ビーコン4Aの回路構成図である。
図12に示すように、第1実施形態の新光ビーコン4Aでは、光受信部11は、通信用の受光系(受光回路)である第1受光系26と、測定用の受光系(受光回路)である第2受光系27とを含む。
また、ビーコン制御機7は、通信IC(通信処理部)28と、位置IC(位置処理部)29と、メインCPU(判定処理部)30とを含む。
【0152】
図12では図示していないが、ビーコン制御機7は、各IC28,29が出力する「位置データ」や「上りデータ」を一時的に記憶するメモリも備えている。
第1受光系26は、
図12の左側から順に、通信用の変換素子32、増幅器33、フィルタ34及びコンパレータ35を有する。通信用の変換素子32は、受光したアップリンク方向の光信号を電気信号に変換する受光素子(例えば、フォトダイオード(Photo Diode ):以下、「PD」ともいう。)よりなる。
【0153】
増幅器33は、高速帯域(本実施形態では、256kbps)で動作する高速用増幅回路よりなる。増幅器33は、PD32にて変換された電気信号を高速帯域で動作して増幅し、増幅後の電気信号を後段のフィルタ34に出力する。
フィルタ34は、少なくとも高速帯域(本実施形態では、256kbps)の成分を抽出できるローパスフィルタよりなる。フィルタ34は、低速成分から高速成分までをカバーするバンドパスフィルタであってもよい。
【0154】
フィルタ34は、増幅された電気信号から低速成分又は高速成分を抽出し、抽出した低速信号又は高速信号を後段のコンパレータ35出力する。
コンパレータ35は、高速信号と閾値との比較が可能な高速用コンパレータよりなる。コンパレータ35は、入力された低速信号又は高速信号を閾値と比較し、この比較によって抽出したデジタルの受信信号(ビットデータ)を後段の通信IC28に出力する。
【0155】
通信IC28は、先頭5バイトのアイドルパターンを用いて受信信号の伝送速度を判定し、判定した伝送速度にてビットデータをサンプリングし、上りフレームUL1,UL2に含まれる上りデータを再生する。通信IC28は、再生した上りデータを後段のメインCPU30に送る。
【0156】
第2受光系27は、
図12の左側から順に、測定用の変換素子36、増幅器37及びピークホールド回路38を有する。
通信用の変換素子36は、上りフレームUL1,UL2の受光面内の入力位置に応じた電気信号を信号する位置検出素子(Position Sensitive Detector:以下、「PSD」ともいう。)よりなる。なお、PSD36を用いたアップリンク位置の測定原理(
図13)ついては後述する。
【0157】
本実施形態のPSD36は、2次元PSDよりなり、受光面に入射されたスポット光の2次元座標の演算に必要となる4つの電流値を出力可能である。
PSD36の4つの出力端子から出力される電流値は、その後段の増幅器37にてそれぞれ増幅される。増幅器37が増幅した電気信号は、その後段のピークホールド回路38にそれぞれ入力される。ピークホールド回路38は、増幅信号の最大振幅を所定時間だけ保持して測定データを生成し、生成した測定データを後段の位置IC29に送る。
【0158】
位置IC29は、各ピークホールド回路38から入力された測定データ(PSD36の各出力端子の電流値)を用いてアップリンク位置を測定する。位置IC29は、その測定結果である位置データをメインCPU30に送る。
位置IC29が出力する位置データは、PSD36の受光面上の座標(x,y)又は道路側の座標(X,Y)(
図13参照)のいずれに基づくものであってもよい。
【0159】
本実施形態では、位置データは座標(x,y)に基づいている。この場合、メインCPU30にて、座標(x,y)を座標(X,Y)に変換する演算を行う必要がある。
メインCPU30は、位置IC29からの「位置データ」で表された低速フレームUL1のアップリンク位置が、第2上流端P2を表す閾値(定点位置)の下流側であったか否かにより、低速フレームUL1をダウンリンク切り替えの対象とするか否かを判定する「受信制限処理」を行う。なお、この受信制限処理の詳細(
図14のフローチャート)については後述する。
【0160】
〔アップリンク位置の測定原理〕
図13は、位置検出素子(PSD)36を用いたアップリンク位置の測定原理の説明図である。
図13に示すように、道路側の座標(X,Y)は、道路Rの路面から所定高さH(例えば、H=1.0m)の平面内の2次元座標であり、X方向は道路Rの延長方向(車両進行方向)に沿い、Y方向は道路Rの幅方向に沿っている。
【0161】
2次元のPSD36は、その受光面のx方向が道路側のX方向に対応し、その受光面のy方向が道路側のY方向に対応するように、ビーコンヘッド8の内部に配置されている。
2次元のPSD36では、出力端子x1,x2,y1,y2の電流値を、それぞれIx1,Ix2,Iy1,Iy2とすると、受光面に入射されたスポット光の入射位置の座標(x,y)を、次の関係式によって算出することができる。
2x/Lx={(Ix2+Iy1)-(Ix1+Iy2)}/(Ix1+Ix2+Iy1+Iy2)
2y/Ly={(Ix2+Iy2)-(Ix1+Iy1)}/(Ix1+Ix2+Iy1+Iy2)
【0162】
なお、上記関係式において、Lxは受光面のx方向の長さであり、Lyは受光面のy方向の長さである。
そこで、位置IC29は、光受信部24のピークホールド回路38から得られた測定データIx1,Ix2,Iy1,Iy2の値が所定の閾値を超えると、それらの値に上記関係式に代入して、スポット光の入射位置の座標(x,y)の値を算出する。本実施形態では、この座標値が位置データである。
【0163】
一方、
図13に示すように、アップリンク領域UA内の任意の位置(X,Y)でビーコンヘッド8に向けて送出された光信号は、レンズで集光されて、PSD36の受光面内のいずれかの1つの位置(x,y)にスポット光となって入射される。
従って、アップリンク領域UAで送信される上りの光信号(アップリンク光)の入射位置(x,y)は、道路側の送信位置(X,Y)と1対1で対応しており、入射位置(x,y)の値が判明すれば、幾何学的な線形関係に基づく座標変換により、光信号の送信位置(X,Y)(アップリンク位置の道路側の座標値)を求めることができる。
【0164】
そこで、メインCPU30は、位置ICから位置データを取得すると、その位置データの座標(x,y)の値を上記座標変換によって道路側の座標(X,Y)の値に変換し、アップリンク位置を求める。
なお、位置IC29にて道路側の座標(X,Y)を求める場合には、上記の座標変換についても位置IC29が行う。この場合、位置IC29が出力する位置データは、道路側の座標(X,Y)に基づく値となる。
【0165】
〔メインCPUによる受信制限処理〕
図14は、メインCPU30による受信制限処理の一例を示すフローチャートである。
図14に示すように、メインCPU30は、通信IC28から上りデータを取得したか否かを常に判定しており(ステップST11)、上りデータを取得した場合は、更に、位置IC29から位置データを取得したか否かを判定する(ステップST12)。
【0166】
ステップST12の判定結果が否定的である場合は、メインCPU30は、処理をステップST11の前に戻す。
ステップST12の判定結果が肯定的である場合は、メインCPU30は、取得した上りデータが高速フレームUL2か否かを判定する(ステップST13)。なお、この判定は、上りフレームの車載機種別の値が「6」でかつ情報種別の値が「4」であるか否かによって行われる。
【0167】
ステップST13の判定結果が否定的である場合、つまり、上りフレームがダウンリンク切り替えの契機となる低速フレームUL1である場合は、メインCPU30は、その時点でメモリが記憶している最新の位置データの座標値(X,Y)を採用した上で(ステップST14)、その座標値(X,Y)で示される低速フレームUL1のアップリンク位置が「定点位置」よりも下流側か否かを判定する(ステップST16)。
【0168】
上記「定点位置」は、第2上流端P2(
図11参照)を表す閾値として予め定義された位置である。
また、この「定点位置」は、例えば、規約上のアップリンク領域UAの上流端(ビーコン直下から6.04mの位置)から、それより更に上流側にある第2上流端P2までの範囲(両端位置を含む。)の中から選択すればよい。物理的な第1及び第2上流端P1,P2が、規約上のアップリンク領域の上流端よりも下流側に位置することはないので、かかる範囲の中から定点位置を選択すれば、受信制限処理を適切に実行できるからである。
【0169】
ステップST16の判定結果が否定的である場合、つまり、低速フレームUL1のアップリンク位置が、定点位置よりも上流側か或いは同じ位置である場合には、処理がステップST11の前に戻される。
従って、この場合の低速フレームUL1は、メインCPU30での情報処理において受信されなかったことになる。
【0170】
ステップST16の判定結果が肯定的である場合、つまり、低速フレームUL1のアップリンク位置が定点位置よりも下流側である場合には、メインCPU30は、下りフレームDL2を生成する(ステップST17)。
この場合、ダウンリンク切り替えの契機となる低速フレームUL1の受信に対応するため、メインCPU30は、ダウンリンク切り替えと折り返しフレームの連続送信を行った上で、今回取得した低速フレームUL1に記されたサブシステムキー情報に対応する提供情報を下りフレームDL2に含める。
【0171】
ステップST13の判定結果が肯定的である場合、つまり、上りフレームがダウンリンク切り替えの契機とならない高速フレームUL2である場合は、メインCPU30は、その時点でメモリが記憶している位置データの座標値(X,Y)を破棄した上で(ステップST15)、下りフレームDL2を生成する(ステップST17)。
この場合、ダウンリンク切り替えの契機とならない高速フレームUL2の受信に対応するため、メインCPU30は、ダウンリンク切り替えを行わずに、前回取得したサブシステムキー情報に対応する提供情報を下りフレームDL2に含める。
【0172】
〔第1実施形態の効果〕
以上の通り、本実施形態の新光ビーコン4Aによれば、メインCPU30が、低速フレームUL1のアップリンク位置が定点位置(第2上流端P2を表す閾値)よりも下流側である場合に限り、当該低速フレームUL1に基づくダウンリンク切り替えを行う受信制限処理(
図14)を実行する。
【0173】
すなわち、新車載機2Aが不感領域Fで低速フレームUL1を送信してもダウンリンク切り替えが行われず、新車載機2Aが第2上流端P2又はそれより下流側で低速フレームUL1を送信した場合に限り、ダウンリンク切り替えが行われる。
かかる受信制限処理の実行により、低速フレームUL1を受信可能なエリアの最上流端が、「物理的」な最上流端である第1上流端P1ではなく、第2上流端P2より下流側の「論理的」な最上流端である第1上流端P1’に設定されることになる(
図11参照)。
【0174】
このため、低速フレームUL1を受信可能であるが高速フレームUL2を受信不能な領域(
図11の「不感領域F」)で低速フレームUL1が送信されても、メインCPU30がその低速フレームUL1を無視し、不感領域Fを過ぎた場所で送信された低速フレームUL1であった場合に限り、ダウンリンク切り替えが行われる。
従って、低速フレームUL1を受信できれば必ず高速フレームUL2も受信できるようになり、新車載機2Aが低速フレームUL1の後に送信される高速フレームUL2を、新光ビーコン4Aが適切に受信可能となる。
【0175】
また、本実施形態の新光ビーコン4Aによれば、メインCPU30が受信制限処理(
図14)を実行するようにコンピュータプログラムを変更するだけで、物理的な最上流端P1を論理的な最上流端P1’に切り替える位置設定を行うことができる。
このため、第2実施形態の回路設計や第3実施形態の光学的設定によって、最上流端P1の位置設定を行う場合に比べて、比較的容易に実装できるという利点がある。
【0176】
更に、本実施形態の新光ビーコン4Aによれば、低速フレームUL1の受信を契機としてダウンリンク切り替えが行われるので、新光ビーコン4Aの通信相手が新車載機2Aか旧車載機2Bかに関係なく、適切に路車間通信を行うことができる。
また、高速フレームUL2でのダウンリンク切り替えが行われないので、高速フレームUL2を受信した時もダウンリンク切り替えを行う場合に比べて、新光ビーコン4Aの処理負荷を軽減できるし、ダウンリンク切り替えの時期が遅くなって、その後にダウンリンク送信される下りフレームDL2の受信機会が減少するのを防止できる利点がある。
【0177】
また、本実施形態の新光ビーコン4Aによれば、通信用の第1受光系26の受光素子としてPD32を採用し、測定用の第2受光系27の受光素子として、PD32とは別個の測定用の変換素子であるPSD36を採用している。
このため、後述の変形例(
図15及び
図16)のように、分割PD40を用いた第2受光系27の場合に比べて、位置標定の分解能を高めることができる。
【0178】
また、PSD36を用いた第2受光系27では、分割PD40を用いた第2受光系27に比べて、道路側のアップリンク領域UAとの位置合わせが容易になり、光ビーコン4の設置手間が少なくて済むという利点もある。
すなわち、分割PDよりなる受光素子では、複数のPD1〜PD4の受光面が各分割領域UA1〜UA4に正しく対応するようにビーコンヘッド8を位置合わせする必要があるので、ビーコンヘッド8の設置に手間がかかるという欠点がある。
【0179】
これに対して、PSD36では、受光面の座標(x,y)と道路側の座標(X,Y)との変換式の補正係数をコンピュータプログラムにて調整することにより、道路側との対応付けを微調整できるので、ビーコンヘッド8の位置合わせをそれほど厳密に行う必要がない。従って、かかるソフトウェア上の微調整ができない分割PDの場合に比べて、ビーコンヘッド8の設置手間を省ける。
【0180】
また、本実施形態の新光ビーコン4Aによれば、光受信部11が、第1受光系26と第2受光系27とで別個の変換素子32,36を使用しているので、例えばPSD36のように、高速帯域の追従性が比較的悪い変換素子を第2受光系27に採用しても、第1受光系26が出力する電気信号の品質に影響が及ばない。
従って、アップリンク位置を測定可能な光ビーコン4を構成する場合において、上りフレームUL2の高速化に適切に対応することができ、アップリンク方向の受信性能に優れた新光ビーコン4Aが得られる。
【0181】
〔第1実施形態の変形例〕
上述の第1実施形態では、位置測定用のPSD36として2次元PSDを採用しているが、受光面のx方向が車両進行方向に沿うように配置された、1次元PSDを採用することにしてもよい。
その理由は、受信制限処理に必要な上りフレームのアップリンク位置は、車両進行方向におけるアップリンク位置であり、道路幅方向(Y方向)の位置は特に問題にならないからである。
【0182】
もっとも、2次元PSDを使用すれば、道路幅方向(Y方向)のアップリンク位置につても測定できるので、予め定めたY方向の所定範囲を逸脱する位置データについては、別の車線を走行する車両20からのアップリンク光であると判断し、当該位置データを破棄するなどの、より精度の高い運用が可能となる。
上述の第1実施形態において、PSD36を測定用のみに使用し、その出力信号を通信用の第1受光系26に入力しない理由は、次の通りである。
【0183】
すなわち、現状では、高速(256kbps)の光信号に対して良好に追従するPSDが見あたらず、PSD36の出力信号を通信用にも使用すると、高速アップリンク受信に対応する新光ビーコン4Aを構成できないからである。
従って、高速(256kbps)の光信号に対して、立ち上がりと立ち下がりがさほど鈍らない高性能なPSDが実現すれば、PSD36の出力を第1受光系26にも使用する回路構成を採用することにより、PD32を省略することができる。
【0184】
なお、上述の第1実施形態において、第2上流端は、高速フレームUL2を実際に受信可能な「物理的」な最上流端P2(
図11参照)だけでなく、高速フレームUL2のアップリンク位置の標定結果に基づく「論理的」な最上流端P2’であってもよい。
【0185】
〔第1実施形態の他の変形例〕
図15は、第1実施形態の変形例に係る新光ビーコン4Aの回路構成図である。
図15の変形例が
図12の第1実施形態と異なる主な相違点は、測定用の変換素子として、PSD36の代わりに分割PD40を採用している点にある。
以下、第1実施形態と実質的に同じ機能部については、
図15に同じ参照符号を付して詳細な説明を省略し、第1実施形態との相違点を重点的に説明する。
【0186】
図15に示すように、第2受光系27の分割PD40は、4つのPD1〜PD4を幅方向に接合することにより面一な受光面が構成されている。
各PD1〜PD4の出力端子はそれぞれ後段の増幅器37に接続され、各PD1〜PD4が光電変換した電気信号は、増幅器37で増幅されてピークホールド回路38に入力される。ピークホールド回路38は、増幅信号の最大振幅を所定時間だけ保持して測定データを生成し、生成した測定データを後段の位置IC29に送る。
【0187】
位置IC29は、各ピークホールド回路38から入力された測定データ(各PD1〜PD4の出力端子の電圧値)を用いてアップリンク位置を測定する。位置IC29は、その測定結果である位置データをメインCPU30に送る。
なお、分割PD40を構成するPD1〜PD4の出力端子の電圧値(測定データ)からアップリンク位置を測定する場合の測定原理(
図16)については後述する。
【0188】
図15に示すように、第1受光系26は加算器41を有する。各増幅器37の出力端子加算器41に接続され、加算器41の出力端子は後段のフィルタ34に接続されている。
すなわち、受光素子がPDの場合は、比較的高速(本実施形態では、256kpbs)の光信号に対しても、良好な立ち上がりと立ち下がりとなる追従性能を有する。そこで、本実施形態では、PD1〜PD4の増幅信号を加算した加算信号を、第1受光系26のフィルタ34に送る回路構成を採用し、分割PD40を通信用の変換素子としても共用するようにしている。
【0189】
このように、分割PDよりなる変換素子40を採用すれば、第1受光系26と第2受光系27とで用いる受光素子を1種類の変換素子40で共用できる。
このため、第1及び第2受光系26,27について異なる変換素子32,36を採用する第1実施形態(
図12)の場合に比べて、回路規模をコンパクト化することができ、実装基板をサイズダウンできるという利点がある。
【0190】
なお、第1受光系26におけるフィルタ34及びコンパレータ35の機能と、ビーコン制御機7の通信IC28の機能は、
図12の第1実施形態の場合と同様であるから、その詳細な説明を省略する。
また、ビーコン制御機7のメインCPU30が行う判定処理についても、
図14の第1実施形態の場合と同様であるから、その詳細な説明を省略する。
【0191】
〔アップリンク位置の測定原理〕
図16は、分割PDを用いたアップリンク位置の測定原理の説明図である。
図16に示すように、道路側の分割領域UA1〜UA4は、道路Rの路面から所定高さH(例えば、H=1.0m)の平面を車両進行方向に沿ってほぼ等分した領域であり、分割PD40を構成するPD1〜PD4は、その受光領域が分割領域UA1〜UA4とほぼ対応するように、ビーコンヘッド8の内部に配置されている。
【0192】
このため、例えば
図16に示すように、分割PD40に入射されたスポット光がPD1の受光面にて検出された場合には、そのスポット光の送信位置は、アップリンク領域UAの分割領域UA1であったことが判明する。
同様に、スポット光の照射位置がPD2,PD3又はPD4であれば、その送信位置が分割領域UA2,UA3又はUA4であったことが判明する。
【0193】
そこで、位置IC29は、光受信部24のピークホールド回路38から得られた測定データV1,V2,V3,V4の値が所定の閾値を超えると、それらの電圧値がどのPDi(i=1〜4)で生じたかを判定し、判定されたPDiに対応する分割領域UAiの基準位置を光信号のアップリンク位置とする。
従って、本実施形態では、各々の分割領域UAiの代表点として予め定められた基準位置が、位置IC29から出力される位置データとなる。
【0194】
なお、本出願と同じ発明者による特開2012−84072号に示すように、PD1〜PD4のうちの隣接するもの同士の電圧値の比率に対応する、更に細かい分割領域を予め設定しておけば、分割PD40の分割数(本実施形態では、4つ)を超えた車両進行方向の領域数にて、光信号のアップリンク位置を特定することができる。
【0195】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の新光ビーコン4Aでは、メインCPU30の情報処理にて見かけの第1上流端P1’を設定するのではなく、光受信部11の受信回路を構成する回路素子に対する定数を設定する回路設計により、「物理的」な最上流端である第2上流端P2が「物理的」な最上流端である第1下流端P1よりも上流側となるように、それらの上流端P1,P2の位置設定を行うようにしている。
【0196】
図17(a)は、第2実施形態の新光ビーコン4Aに用いるフィルタ34の回路構成例を示す図であり、
図17(b)は、フィルタ34の周波数特性を示すグラフである。
なお、第2実施形態の新光ビーコン4Aにおいても、アップリンク位置を測定するタイプである
図12や
図15と同様の回路構成を採用できる。もっとも、第2実施形態では、回路素子の定数設定によって上流端P1,P2の位置設定を行うことから、必ずしもアップリンク位置を測定する必要はない。このため、通信用である第1受光系26のみを有する回路構成の光受信部11であってもよい。
【0197】
本実施形態のフィルタ34は、増幅器33が出力する増幅信号から下りフレームDL1,DL2の帯域の信号成分を除去する機能を有し、
図17(a)に示すように、第1コイルL1と第1コンデンサC1とから構成された第1トラップ回路43と、第2コイルL2と第2コンデンサC2とから構成された第2トラップ回路44とを含む。
第1及び第2トラップ回路43,44は、それぞれ並列LC回路を構成している。
【0198】
第1トラップ回路43は、一端が増幅器33に接続されるとともに、他端が第2トラップ回路44に接続されている。第2トラップ回路44は、一端が第1トラップ回路43に接続されるとともに、他端がコンパレータ35に接続されている。従って、第1トラップ回路43及び第2トラップ回路44は、それぞれ互いに直列に接続されている。
【0199】
フィルタ34は、一端が第1トラップ回路43の前段に接続され他端が接地された第3コンデンサC3と、一端が両トラップ回路43,44の接続部に接続され他端が接地された第4コンデンサC4と、一端が第2トラップ回路44の後段に接続され他端が接地された第5コンデンサC5とを更に備えている。
【0200】
これらの第3〜第5コンデンサC3〜C5と両コイルL1,L2とは、5次のバタワース型のローパスフィルタを構成している。
すなわち、本実施形態のフィルタ34は、第3〜第5コンデンサC3〜C5と、両コイルL1,L2とによって構成されたローパスフィルタ回路45を更に有する回路構成となっている。つまり、フィルタ34は、コイルL1,L2を兼用した状態となるように重畳された、ローパスフィルタ回路45と両トラップ回路43,44とを備えている。
【0201】
上記回路構成のフィルタ34によれば、コイルL1,L2のインダクタンスとコンデンサC1〜C5のキャパシタンスを適当な値に設定することにより、例えば
図17(b)に示す周波数特性を示すアナログフィルタを構成できる。
図17(b)の周波数特性では、約600kHzの部分と、約1.1MHzの部分において利得が極小であり、約500kHz付近で急激な利得の低下が見られ、500kHzより高い周波数帯域では利得が低い値で現れ、電力が遮断されている。
【0202】
また、
図17(b)の周波数特性では、低速フレームUL1の伝送速度である64kbpsでの利得が、高速フレームUL2の伝送速度である256kbpsでの利得よりも小さくなっている。
このため、低速フレームUL1の方が高速フレームUL2よりもフィルタ34に対する透過性がやや落ち、その結果、低速フレームUL1の受信性能の方が高速フレームUL2の受信性能よりも若干悪くなる。
【0203】
この伝送速度の差による受信性能の差は、そのまま、低速フレームUL1と高速フレームUL2を受信可能なエリアの差となって表れる。
従って、
図17(b)の周波数特性を有する
図17(a)のフィルタ34を採用すれば、
図11に示すP1とP2の位置関係が逆転し、高速フレームUL2を実際に受信可能なエリアRA2の最上流端である第2上流端P2が、低速フレームUL1を実際に受信可能なエリアRA1の最上流端である第1上流端P1よりも上流側になる。
【0204】
このように、第2実施形態の新光ビーコン4Aによれば、光受信部11の受信回路を構成する回路素子の定数を適切に設定することにより、「物理的」な最上流端である第2上流端P1が「物理的」な最上流端である第1上流端P1よりも上流側(或いは、実質的に同じ位置でもよい。)に設定されているので、低速フレームUL1は受信できるが高速フレームUL2を受信できない不感領域Fが生じない。
【0205】
従って、不感領域Fにて低速フレームUL1が送信されることによって、後続の高速フレームUL2が受信できなくなるのを未然に防止でき、低速フレームUL1の後に送信される高速フレームUL2を適切に受信できる、アップリンク方向でマルチレート対応の新光ビーコン4Aが得られることになる。
【0206】
また、第2実施形態の新光ビーコン4Aによれば、フィルタ34などを構成する回路素子の定数を定める回路設計をするにはある程度の手間がかかるものの、アップリンク位置を測定しないために測定用の第2受光系27を搭載しないタイプ(例えば、
図12の回路構成において、光受信部11を第1受光系26のみから構成するタイプ)を採用する場合には、低速用と高速用の2つの受信系26A,26Bを必要とする後述の第3実施形態(
図19及び
図20)の場合に比べて、回路規模が小さくて済むという利点もある。
【0207】
図18は、第2実施形態に係る新光ビーコン4Aに用いる増幅器33の周波数特性の一例を示すグラフである。
図17に示すフィルタ34の代わりに、
図18に示す周波数特性の増幅器33を採用することにしても、上記と同様の作用効果が得られる。すなわち、
図18に実線で示すように、マルチレート対応の増幅器33では、低速域(64kbps)から高速域(256kpbs)を含む周波数帯域でほぼ同じ利得が得られるように、アンプを構成する回路素子の定数を設定するのが通常である。
【0208】
この点、本実施形態の増幅器33では、仮想線に示すように、低速域(64kbps)での利得が高速域(256kpbs)での利得よりも小さくなるように、アンプを構成する回路素子の定数が設定されている。
従って、この場合も、コンパレータ35に入力される電気信号に関して、低速フレームUL1の受信性能の方が高速フレームUL2の受信性能よりも若干悪くなるので、低速フレームUL1のエリアRA1を高速フレームUL2のエリアRA2よりも狭めることができる。
【0209】
なお、第2実施形態の特徴は、低速フレームUL1よりも高速フレームUL2の方がコンパレータ35における電気信号の利得を大きくする点にあるので、フィルタ34及び増幅器33のうちのいずれか一方を構成する回路素子の定数を設定するだけでなく、それらの双方の回路素子の定数を適切に設定することにより、コンパレータ35における利得に差を付けることにしてもよい。
【0210】
〔第3実施形態〕
第3実施形態の新光ビーコン4Aでは、メインCPU30の情報処理にて見かけの第1上流端P1’を設定するのではなく、光受信部11に設けた2系統の受信系26A,26Bに対する光学的設定を行うことにより、「物理的」な最上流端である第2上流端P2が「物理的」な最上流端である第1下流端P1よりも上流側となるように、それらの上流端P1,P2の位置設定を行うようにしている。
【0211】
図19は、第3実施形態に係る新光ビーコン4Aの回路構成図である。
図19に示すように、本実施形態の新光ビーコン4Aでは、光受信部11が、低速フレームUL1を受信するための低速用受信系26Aと、高速フレームUL2を受信するための高速用受信系26Bとを備えており、光受信部11の受信系26A,26Bが低速用と高速用の2系統になっている。
【0212】
両受信系26A,26Bのうち、低速用受信系26Aは、
図19の左側から順に、レンズ31A、PDよりなる変換素子32A、増幅器33A、フィルタ34A及びコンパレータ35Aを有する。
増幅器33Aは、低速帯域(本実施形態では、64kbps)で動作する低速用増幅回路よりなり、フィルタ34Aは、低速帯域の成分を抽出できるフィルタ回路よりなり、コンパレータ35Aは、低速信号と閾値との比較が可能な低速用コンパレータよりなる。
【0213】
高速用受信系26Bは、
図19の左側から順に、レンズ31B、PDよりなる変換素子32B、増幅器33B、フィルタ34B及びコンパレータ35Bを有する。
増幅器33Bは、高速帯域(本実施形態では、256kbps)で動作する高速用増幅回路よりなり、フィルタ34Bは、高速帯域の成分を抽出できるフィルタ回路よりなり、コンパレータ35Bは、高速信号と閾値との比較が可能な高速用コンパレータよりなる。
【0214】
図20は、両受信系26A,26Bが上りフレームUL1,UL2をそれぞれ受信可能なエリアRA1,RA2を示す側面図である。
図20に示すように、低速用のレンズ31Aは、PD32Aの受光面に対向した状態でビーコンヘッド8に取り付けられ、同様に、高速用のレンズ31Bは、PD32Bの受光面に対向した状態でビーコンヘッド8に取り付けられている。
【0215】
各レンズ31A,31Bは、それらの光軸方向がいずれも斜め下方に向くように、各レンズ31A,31Bがビーコンヘッド8に取り付けられており、それらの光軸方向を互いに非平行にセットしたり、焦点距離が異なるレンズ31A,31Bを採用したり、あるいは変換素子32A,32Bとレンズ31A,31Bとの相対位置(中心軸の位置等)を低速用と高速用との間で相互にずらしたりすることにより、エリアRA1の上流側斜辺の傾斜角度がエリアRA2の上流側斜辺の傾斜角度よりも大きくなっている。
【0216】
このため、高速用受信系26BのエリアRA2の最上流端P2が、低速用受光系26AのエリアのRA1の最上流端P1よりも上流側となるように、各受信系26A,26Bのレンズ31A,31Bに対する光学的設定が行われている。
なお、エリアRA2の最上流端P2は、必ずしもエリアRA1の最上流端P1の上流側でなくてもよく、その最上流端P1と実質的に同じ位置となるように、光学的設定を行うことにしてもよい。もっとも、エリアRA1,RA2の下流端を一致させる必要はない。
【0217】
このように、第3実施形態の新光ビーコン4Aによれば、低速用受信系26Aと高速用受信系26Bに対して上記の光学的設定を行うことにより、「物理的」な最上流端である第2上流端P2が「物理的」な最上流端である第1上流端P1よりも上流側(或いは、実質的に同じ位置でもよい。)に設定されているので、低速フレームUL1は受信できるが高速フレームUL2を受信できない不感領域Fが生じない。
【0218】
従って、不感領域Fにて低速フレームUL1が送信されることによって、後続の高速フレームUL2が受信できなくなるのを未然に防止でき、低速フレームUL1の後に送信される高速フレームUL2を適切に受信できる、アップリンク方向でマルチレート対応の新光ビーコン4Aが得られることになる。
【0219】
また、第3実施形態の新光ビーコン4Aによれば、両受信系26A,26Bのレンズ31A,32Bの受光方向を定める光学的設定により、各々のエリアRA1,RA2の上流端P1,P2の位置設定を行うので、第1実施形態の受信制限処理による位置設定や、第2実施形態の回路設計による位置設定の場合に比べて、当該位置設定をより確実に行うことができる。
【0220】
〔第4実施形態〕
図21は、第4実施形態に係る新光ビーコン4Aの回路構成図である。
図21に示すように、第4実施形態の新光ビーコン4Aは、
図12を参照して説明した第1実施形態と同様に、光受信部11は、通信用の受光系(受光回路)である第1受光系26と、測定用の受光系(受光回路)である第2受光系27とを含む。以下、第1実施形態と実質的に同じ機能部については、
図21に同じ参照符号を付して詳細な説明を省略し、第1実施形態との相違点を重点的に説明する。
【0221】
また、通信用の受光系である第1受光系26は、さらに低速フレームUL1を受信するための低速用受信系(低速用受光系)26Aと、高速フレームUL2を受信するための高速用受信系(高速用受光系)26Bとの2系統で構成されている。
第2受光系27は、第1実施形態の第2受光系27(
図12参照)と同様の構成であり、PSDよりなる変換素子36、増幅器37,及びピークホールド回路38を有している。また、第2受光系27におけるアップリンク位置の測定原理は、
図13を参照して説明した通りである。
【0222】
なお、上述の第1実施形態においては、第2受光系27により取得された位置データは、低速フレームUL1のアップリンク位置が、第2上流端P2(
図11参照)を表す閾値として予め定義された定点位置よりも下流側か否かによって、「論理的」な第1上流端P1’を設定するために用いられているが、本実施形態においては、第2受光系27により取得された位置データは、例えば安全運転支援システム(DSSS)に用いられる位置情報としてダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2に含めることができる。
【0223】
一方、第1受光系26における高速用受信系26Bは、第1実施形態の第1受光系26(
図12参照)と略同様の構成を含み、PDよりなる変換素子32、増幅器33、フィルタ34B、及びコンパレータ35Bを有している。そして、第1実施形態と同様の手順により、PD32から出力された電気信号を処理し、コンパレータ35Bからデジタルの受信信号(ビットデータ)を通信IC28に出力する。
【0224】
ただし、高速用受信系26Bのフィルタ34Bは、高速フレームUL2の受信に適した利得の設定がなされている。すなわち、
図12の回路構成を用いた上述の第2実施形態のフィルタ34においては、
図17(b)に示されるように、低速フレームUL1の伝送速度である64kbpsでの利得が、高速フレームUL2の伝送速度である256kbpsでの利得よりも小さくなるような複雑な調整が必要であったが、本実施形態の高速用受信系26Bのフィルタ34Bは、少なくとも高速フレームUL2の伝送速度での利得が、後述する低速用受信系26Aのフィルタ34Aにおける低速フレームUL1の伝送速度での利得よりも大きくなるように所定の値に設定される。
【0225】
一方、第1受光系26における低速用受信系26Aは、第2受光系27に用いられているPSD36が共用されている。また、低速用受信系26Aは、PSD36に加えて、加算器41、フィルタ34A、及びコンパレータ35Aを更に備えている。加算器41は、増幅器37の出力端子に接続されている。加算器41の出力端子はフィルタ34Aに接続されている。そして、PSD36から出力された信号は、増幅器37によって増幅された後に加算器41において加算される。加算器41において生成された信号は、フィルタ34Aにおいて所定の速度成分が抽出された後にコンパレータ35Aに出力される。コンパレータ35Aは入力された信号を閾値と比較し、この比較によって抽出したデジタルの受信信号(ビットデータ)を通信IC28に出力する。
【0226】
低速用受信系26Aのフィルタ34Aは、低速フレームUL1の受信に適した調整がなされている。すなわち、
図12の回路構成を用いた上述の第2実施形態のフィルタ34においては、
図17(b)に示されるように、低速フレームUL1の伝送速度である64kbpsでの利得が、高速フレームUL2の伝送速度である256kbpsでの利得よりも小さくなるような複雑な調整が必要であったが、本実施形態の低速用受信系26Aのフィルタ34Aは、少なくとも低速フレームUL1の伝送速度での利得が、前述の高速用受信系26Bのフィルタ34Bにおける高速フレームUL2の伝送速度での利得よりも小さくなるように所定の値に設定されている。
つまり、高速用受信系26Bのフィルタ34Bと低速用受信系26Aのフィルタ34Aとは、前者の利得が後者の利得よりも大きくなるように、それぞれ個別に利得が設定される。したがって、いずれのフィルタ34A,34Bに対しても、
図17(b)に示すような複雑な調整が不要となり、各フィルタ34A,34Bに対する利得の設定を容易に行うことができる。
【0227】
そして、高速用受信系26Bのフィルタ34Bと低速用受信系26Aのフィルタ34Aとに個別に行われた利得の設定によって、
図11に示すように、高速フレームUL2を受信可能なエリアRA2の最上流端である第2上流端P2が、低速フレームUL1を実際に受信可能なエリアRA1の最上流端である第1上流端P1よりも上流側、或いは実質的に同じ位置になり、低速フレームUL1は受信できるが、高速フレームUL2を受信できない不感領域Fが生じないようにすることができる。
【0228】
第1実施形態において説明したように、PSD36は高速帯域(256kbps)における追従性能が比較的悪く、受信した高速帯域の光信号から上りデータを再生することは困難であるが、低速帯域(64kbps)の光信号に対しては十分な追従性能を有しているので、受信した低速帯域の光信号から上りデータを再生することが可能である。
従って、本実施形態では、低速帯域(64kbps)の光信号、つまり低速フレームUL1に対してはPSD36を測定用としてだけでなく通信用としても利用し、高速帯域(256kpbs)の光信号である高速フレームUL2に対しては、PD32を通信用として利用することによって、別個の受光素子を用いて高速用及び低速用の2系統の受信系を好適に構築することができる。
【0229】
なお、本実施形態において、高速用受信系26Bは、高速フレームUL2だけでなく低速フレームUL1をもPD32により受信して、その電気信号からビットデータを抽出することが可能であるが、高速用受信系26Bから出力された低速フレームUL1のビットデータに基づいて通信IC28が上りデータを再生したとすると、従来と同様の不感領域F(
図11参照)が生じてしまい、2系統の受信系26A,26Bを用いることによって第2上流端P2を第1上流端P1よりも上流側又は実質的に同じ位置に設定するという回路設計が生かされなくなる。したがって、高速用受信系26Bにより受信された低速フレームUL1からは上りデータを再生しない方法を適用する必要が生じる。
【0230】
そのような方法として、例えば以下のいずれかを採用することができる。
(1)通信IC28が、低速用受信系26Aと高速用受信系26Bとの双方からビットデータを受信している場合には、低速用受信系26Aからのビットデータのみを採用して上りデータを再生し、高速用受信系26Bからのビットデータは破棄する。
(2)通信IC28において、高速用受信系26Bからの通信経路については、高速帯域の信号のみを読み取り可能に構成し、低速帯域の信号を読み取ることができない(読み取ったとしてもエラー処理を行う)ように構成する。
(3)PD32が受光した低速フレームUL1に基づく電気信号を、フィルタ34Bにおいて遮断する。
【0231】
以上のいずれかの方法を採用すれば、高速用受信系26BのPD32によって受信された低速フレームUlの光信号は、上りデータとして再生されることが無くなり、第1上流端P1と第2上流端P2との「物理的」な位置関係が崩れることによって不感領域Fが生じてしまうこともなくなる。
なお、以上の各方法は、後述する第4実施形態の各変形例において、高速用受信系26Bが低速フレームUL1を受信した場合にも、その低速フレームUL1から上りデータを再生しないようにするために採用することができる。
【0232】
図22には、本実施形態におけるメインCPUによる処理の一例を示すフローチャートを示している。なお、
図22に示す例では、第2受光系27及び位置ICによって取得された位置データが、ダウンリンク切り替えの契機となる低速フレームUL1のアップリンク位置である場合にのみ、その位置データを下りフレームDL2に含ませ、高速フレームUL2のアップリンク位置である場合には当該位置データを破棄する規約を採用した場合について示している。
【0233】
図22に示すように、メインCPU30は、通信IC28から上りデータを取得したか否かを常に判定しており(ステップST21)、上りデータを取得した場合は、更に、位置IC29から位置データを取得したか否かを判定する(ステップST22)。
【0234】
ステップST22の判定結果が否定的である場合は、位置データの採用可否を判定する必要がないので、メインCPU30は、後述のステップST23〜ST25の処理を行わずに、所定の提供情報を格納した下りフレームDL2を生成する(ステップST26)。
ステップST22の判定結果が肯定的である場合は、メインCPU30は、取得した上りデータが高速フレームUL2か否かを判定する(ステップST23)。なお、この判定は、上りフレームの車載機種別の値が「6」でかつ情報種別の値が「4」であるか否かによって行われる。或いは、この判定は、上りデータが、低速用受信系26A及び高速用受信系26Bのいずれの出力から得られたものであるかによっても行うことができる。
【0235】
ステップST23の判定結果が否定的である場合、つまり、上りフレームがダウンリンク切り替えの契機となる低速フレームUL1である場合は、メインCPU30は、その時点でメモリが記憶している最新の位置データの座標値(X,Y)をアップリンク位置として採用した上で(ステップST24)、下りフレームDL2を生成する(ステップST26)。このように低速フレームUL1のアップリンク位置を下りフレームDL2に含めることによって安全運転支援システム(DSSS)のための位置情報として第2受光系27による測定結果を好適に利用することができる。
【0236】
ステップST23の判定結果が肯定的である場合、つまり、上りフレームがダウンリンク切り替えの契機とならない高速フレームUL2である場合は、メインCPU30は、その時点でメモリが記憶している位置データの座標値(X,Y)を破棄した上で(ステップST25)、下りフレームDL2を生成する(ステップST26)。
【0237】
〔第4実施形態の変形例〕
図19を参照して説明した第3実施形態では、光受信部11が、低速用受信系26Aと高速用受信系26Bとを備えており、各受信系26A,26Bに用いるレンズ31A,31Bには、高速フレームUL2を受信可能なエリアRA2の最上流端である第2上流端P2が、低速フレームUL1を実際に受信可能なエリアRA1の最上流端である第1上流端P1よりも上流側或いは実質的に同じ位置になるような光学的設定が施されている。これに対して本変形例においては、レンズ31A,31Bの光学的設定によるのではなく、
図21を参照して説明した第4実施形態と同様に、各フィルタ34A,34Bにおける利得設定をそれぞれ低速フレームUL1及び高速フレームUL2の受信に適した設定とすることによって、第1,第2上流端P1,P2の物理的な位置関係を所定に設定するものである。すなわち、高速用受信系26Bのフィルタ34Bと低速用受信系26Aのフィルタ34Aとは、前者の利得が後者の利得よりも大きくなるように、それぞれ個別に利得が設定される。これにより、いずれのフィルタ34A,34Bに対しても、
図17(b)に示すような複雑な調整が不要となり、各フィルタ34A,34Bにおける利得の設定を容易に行うことができる。
【0238】
また、各フィルタ34A,34Bにおける利得の設定に加えて(又は代えて)、各増幅器33A,33Bにおける利得の設定によっても、第1,第2上流端P1,P2の位置関係を設定することが可能である。すなわち、高速用受信系26Bの増幅器33Bと低速用受信系26Aの増幅器33Aとは、前者の利得が後者の利得よりも大きくなるように、それぞれ個別に利得が設定されてもよい。これにより、低速用受信系26Aの増幅器33Aには、低速フレームUL1の受信に適した利得の設定を行い、高速用受信系26Bにおける増幅器33Bには、高速フレームUL2の受信に適した利得の設定を行うことができる。そのため、
図18を参照して説明した第2実施形態のように、一つの増幅器33に対して低速帯域(64kpbs)での利得が高速帯域(256kpbs)での利得よりも小さくなるようにアンプを構成する回路素子の定数を設定するといった複雑な調整が不要となり、増幅器33A,33B毎に適切な利得の設定を容易に行うことができる。
【0239】
〔第4実施形態の他の変形例〕
図23は、第4実施形態の他の変形例に係る新光ビーコンの回路構成図である。本実施形態の光受信部11は、
図19に示す例と同様に、低速用受信系26Aと高速用受信系26Bとの2系統で構成されているが、低速用受信系26Aと高速用受信系26Bとの間で、レンズ31、受光素子(PD)32、及び増幅器33が共用され、増幅器33の下流側で電気信号の経路が分岐し、フィルタ34A,34B及びコンパレータ35A,35Bがそれぞれ低速用受信系26Aと高速用受信系26Bとに個別に備わっている。そして、本変形例においても、高速用受信系26Bのフィルタ34Bと低速用受信系26Aのフィルタ34Aとは、前者の利得が後者の利得よりも大きくなるように、それぞれ個別に利得が設定される。このように、低速用受信系26Aのフィルタ34Aと、高速用受信系26Bのフィルタ34Bとに対してそれぞれ低速用及び高速用の利得の設定を個別に行うことによって、不感領域Fが生じないような第1上流端P1と第2上流端P2との物理的な位置関係を設定することができ、
図17(b)に示すような複雑な調整も不要となる。
【0240】
なお、更なる変形例として、低速用受信系26Aと高速用受信系26Bとでレンズ31及び受光素子32を共用し、増幅器33以降の回路素子を受信系26A,26B毎に個別に備えた回路構成とすることができる。また、増幅器が複数段階で設けられる場合には、例えば、1つ目の増幅器は低速用受信系26Aと高速用受信系26Bとで共用し、2つ目の増幅器以降の回路素子を受信系26A,26B毎に個別に備えた回路構成とすることも可能である。
【0241】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態(変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0242】
例えば、上述の実施形態では、新車載機2Aが複数の高速フレームU1〜U3を連続して送信することになっているが、フレーム間に所定時間長のインターバルを設けてバースト送信することにしてもよい。
また、本明細書において、「車載機」とは、車両20に搭載されたあと常にその状態に固定されるものを含むことは勿論、ドライバが利用したい時だけ車両20に持ち込まれ、一時的に車両20に搭載されるものも含まれる。