【実施例1】
【0024】
図1及び
図2において、この車両用空調装置1の主たる構成をなすHVACユニット2が示されている。このHVACユニット2は、この発明の実施形態の一例に当たるもので、例えば車両のセンターコンソール部に搭載される縦型センター置きフル一体形式のものである。更に、このHVACユニット2は、エンジンルームと車室とを区画する仕切板よりも車室側に配されているもので、インテーク部3とユニット本体8とで基本的に構成されている。
【0025】
このうち、インテーク部3は、ユニット本体8に対して車両の左右方向の一方側に配置されているもので、外気導入口4と内気導入口5とがインテークケース6に開口していると共に、これらの内外気導入口4、5から内外気を適宜選択・導入するためのインテークドア7がこのインテークケース6内に収納されている。
【0026】
ユニット本体8は、内部に空気流路9が形成されたケース10内に、インテーク部3の内外気導入口4、5から導入された空気を下流側に送るための送風機11、この送風機11により送られてきた空気を冷却するエバポレータ等の冷却用熱交換器12、この冷却用熱交換器12で冷却された空気を加熱するヒータコア等の加熱用熱交換器13を収納している。尚、ユニット本体8のケース10は、インテーク部3のインテークケース6とは別体のものであっても、一体成形されたものであっても良い。
【0027】
そして、送風機11は、この実施形態では、遠心式多翼ファン(シロッコファン)と称されるファンと、このファンを駆動するモータとから構成されているもので、
図1に示されるように、インテークケース6に対し自動車等の車両の左右方向に開口した開口部を設けて、この開口部から車両の左右方向にモータの駆動軸が沿うように横倒し状態で挿入配置されている。
冷却用熱交換器12は、空気流路9内において導入される全ての空気が通過するように立設されており、この冷却用熱交換器12は例えばコルゲート状のフィンとチューブとを交互に複数段積層して形成されチューブの長手方向端にタンクを有するもので、膨張弁14等の他の空調機器と配管15a、15b等を介して接合されて冷凍サイクルを構成している。送風機11と冷却用熱交換器12とは相対的に近接して、送風機11が冷却用熱交換器12の直近上方に配置されている。
加熱用熱交換器13は、例えばコルゲート状のフィンとチューブとを交互に複数段積層して形成されチューブの長手方向端にタンクを有するものであり、かかる加熱用熱交換器13は配管17a、17bを介して例えば走行エンジンの冷却水等の温水が循環している。
【0028】
これに伴い、ユニット本体8は、空気流路9において、冷却用熱交換器12で冷却された冷却空気が加熱用熱交換器13で加熱されて加熱空気となる第1の流路18と、冷却用熱交換器12で冷却された冷却空気が加熱用熱交換器13をバイパスすることで冷却空気のままとなる第2の流路19とを有したものとなっている。
【0029】
また、ユニット本体8は、空気流路9の下記するドア収納領域29よりも更に下流側において、デフ吹出用開口部20、ベント吹出用開口部21、フット吹出用開口部22が、ケース10に適宜開口している。尚、図示しないがサイドベント吹出用開口部をケース10に対し所定の位置に更に開口させても良い。そして、空気流路9は、このデフ吹出用開口部20、ベント吹出用開口部21、フット吹出用開口部22を一方端(風下側)とし、後述する複合機能ドア30が回転可能に収納されたドア収納領域29を他方端(風上側)とするデフ吹出用通路23、ベント吹出用通路24、フット吹出用通路25を有している。この実施例では、デフ吹出用通路23とベント吹出用通路24とは車両の略上下方向に延びる内壁部26aにより仕切られており、デフ吹出用通路23、ベント吹出用通路24のドア収納領域29側の開口は内壁部26aを挟んで車両の前後方向に並んだ配置となっていると共に、ベント吹出用通路24とフット吹出用通路25のドア収納領域29側の開口は境界点27を中心に車両の略前後方向兼略上下方向に並んだ配置となっている。
【0030】
そして、この実施例では、
図1に示されるように、ケース10の冷却用熱交換器12よりも空気下流側でデフ吹出用通路23のデフ吹出用開口部20とは反対側開口に続くケース部位10aは、ある円の円周に沿うように円弧状に形成されており、加熱用熱交換器13の側面から車両の上下方向に沿って車両の略上側に延びる内壁部26bは、その上端が前記円の円周まで延びている。更に、デフ吹出用通路23とベント吹出用通路24とを仕切る内壁部26aの車両の下方側端は前記円の円周まで延び、また、境界点27は前記円の円周上に位置している。更にまた、加熱用熱交換器13とフット吹出用通路25とを仕切る内壁部28は、車両の上下方向の上方に略沿って前記円の円周まで延びた後、この円の円周に沿って車両の前後方向の後方に略沿って延び、その端部と前記境界点27との間でフット吹出用通路25のフット吹出用開口部22とは反対側の開口部が形成されている。
【0031】
これにより、ケース10の冷却用熱交換器12及び加熱用熱交換器13の下流側で、且つ各吹出用通路23、24、25の開口部20、21、22とは反対側の開口部よりも上流側において円筒状のドア収納領域29が画成され、このドア収納領域29に前記円の円周と略同じ(ケース部位10a、内壁部28等に対して摺動可能なように若干径寸法が小さい。)円を外周面とする複合機能ドア30が収納されている。
【0032】
この複合機能ドア30は、例えばロータリードア等とも称されるもので、ベントモード、バイレベルモード、フットモード、デフフットモード、及びフットモードの各吹出モードの切り換えを行う吹出モード切換機能と、加熱用熱交換器13を通過した空気と加熱用熱交換器13をバイパスした空気との割合を調整する温度調整機能とを有したものである。そして、この複合機能ドア30は、
図11に示されるように、周面部31とこの周面部31の軸方向の両側を閉塞する閉塞部32、32とで成るドア本体33を有して構成されている。
【0033】
周面部31は、この実施例では
図1や
図10等に示されるように基本的には3つの開口部34、35、36と、第1の大壁面部37と、小壁面部38と、第2の大壁面部39とを有して構成されている。そして、各開口部34、35、36は、
図10に示されるように、周面部31の円周をI線からVIII線で8等分した際のI線からII線までの範囲、IV線からV線までの範囲、VI線からVII線までの範囲というように、それぞれ円周の1/8の大きさをなしている。第1及び第2の大壁面部37、39は、
図10に示されるように、周面部31の円周をI線からVIII線で8等分した際のII線からIV線までの範囲、VII線からI線までの範囲というように、それぞれ円周の1/4の大きさをなしている。小壁面部38は、
図10に示されるように、周面部31の円周をI線からVIII線で8等分した際のV線からVI線までの範囲というように、円周の1/8の大きさをなしている。すなわち、第1の開口部34、35、36及び壁面部37、38、39は、第1の開口部34を起点及び終点とした場合には、第1の開口部34、第1の大壁面部37、第2の開口部35、小壁面部38、第3の開口部36、第2の大壁面部39、第1の開口部34の順となっている。
【0034】
そして、複合機能ドア30とインテークドア7とは、駆動機構40により連動するようになっている。この駆動機構40は、
図2に示されるように、複合機能ドア30に形成されたギア41と、ケース10の外面に配置されたメインカム42及び中継カム48とで基本的に構成されている。
【0035】
ギア41は、
図11にも示されるように、複合機能ドア30の少なくとも一方の閉塞部32の外面のうち円の中心点に形成されているもので、所定の歯数を有しており、閉塞部32と一体成形される等によりギア41の回転がそのまま閉塞部32ひいては複合機能ドア30に伝達されるようになっている。
【0036】
メインカム42は、ケース10に軸支された回転軸43に固着されて回転軸43と一体的に回転可能となっていると共に回転軸43の径方向の周縁部分にはギア44が形成されている。このギア44は、ギア41と噛合されることにより、メインカム42の回転をギア41に伝達することが可能となっている。また、メインカム42は、ピン45を介して中継カム48のピン摺動部49と摺動可能に係合されている。尚、メインカム42は、この実施例では、2股に延びる延出部を有し、一方の延出部の先端にピン45が設けられ、他方の延出部の先端に後述するワイヤーケーブル53を保持する保持部46が設けられている。
【0037】
中継カム48は、この実施例では直線状の板形状をなし、その長手方向の一方側でインテークドア7の回転軸47と連結されて回転軸47ひいてはインテークドア7と一体に回転することができるようになっている。そして、中継カム48は、ピン摺動部49が形成されており、このピン摺動部49は、回転軸47と連結された側とは反対側となる長手方向の他方側から回転軸47側に延びたものとなっている。ここで、ピン摺動部49は、貫通孔であっても窪みであっても良く、その短手方向の幅は、ピン45がピン摺動部49内を移動しつつガタツキなく係合することが可能なように、ピン45の外径寸法と同じか当該ピン45の外径寸法より僅かに大きくなっている。
【0038】
これにより、メインカム42が回転軸43を中心として回転することにより、ギア44及びギア41を介して複合機能ドア30を回転させると同時に、ピン45が中継カム48のピン摺動部49内を当該ピン摺動部49の内縁に摺接しつつ移動して、中継カム48について回転軸47を中心に回転させ、ひいてはインテークドア7を回転させることが可能となる。
【0039】
そして、メインカム42は、保持部46が操作部51を構成するダイヤル52から引き出されたワイヤーケーブル53の先端部分を保持することにより、ダイヤル52の回転が保持部46に対する引っ張りや押し出し作用として働くようになっている。
【0040】
このような構成により、例えばベントモードからバイレベルモードに移行する際には、
図4(b)から
図5(b)となる配置変化に示されるように、メインカム42がワイヤーケーブル53により車両前方に押されて、複合機能ドア30を時計回りに回転させると共に、ピン45が中継カム48のピン摺動部49の内縁面を車両後方に押しつつピン摺動部49内を摺動するので、中継カム48と連結されたインテークドア7を反時計回りに回転させる。このような駆動機構40による複合機能ドア30及びインテークドア7への回転動力の伝達は、バイレベルモードからフットモード、フットモードからデフフットモード、デフフットモードからデフモードに移行する場合でも略同様である。
一方で、バイレベルモードからベントモードに移行する場合には、
図5(b)から
図4(b)となる配置変化に示されるように、メインカム42がワイヤーケーブル53により車両後方に引っ張られて、複合機能ドア30を反時計回りに回転させると共に、ピン45が中継カム48のピン摺動部49の内縁面を車両前方に押しつつピン摺動部49内を摺動するので、中継カム48と連結されたインテークドア7を時計回りに回転させる。このような駆動機構40による複合機能ドア30及びインテークドア7への回転動力の伝達は、フットモードからバイレベルモード、デフフットモードからフットモード、デフモードからデフフットモードに移行する場合でも略同様である。
【0041】
ダイヤル52の周囲の表示は、
図3に示されるように複数の表示部55、56、57、58、59、60、61、62、63がダイヤル52を中心として重畳的に配置されたものとなっている。
【0042】
まず、ダイヤル52に最も近い周囲には、吹出モードのうち設定されたモードを示す表示部55、56、57、58、59が吹出モードの切り換え順に従って並んでいる。表示部55はベントモードを表示し、表示部56はバイレベルモードを表示し、表示部57はフットモードを表示し、表示部58はデフフットモードを表示すると共に、表示部59はデフモードを表示している。
【0043】
更に、これらの表示部55乃至59よりもダイヤル52から離れた位置に所定の幅の円弧状の帯状の表示部60が配置されている。この表示部60は、フルクールからフルホットまでのエアミックスによる吹出空気の温度設定状況及び温度制御可能領域を示しているもので、冷却用熱交換器12で冷却されて加熱用熱交換器13をバイパスした冷却空気の存在を示す表示部60aと、加熱用熱交換器13で加熱された加熱空気の存在を示す表示部60bとに塗り分けられている。例えば、表示部60aには青色が使用され、表示部60bには赤色が使用されている。そして、表示部60aは、
図3に示されるように、ダイヤル52の図中左側(ベントモードの表示部55側)に位置する基準線X1上にある部位では表示部60の幅と同じになっているが、ダイヤル52の図中上側(フットモードの表示部57側)に位置する基準線X3に向かうに従い徐々に表示部60の外周縁側に向かって細くなり、基準線X3を越えた位置ではなくなっている。このことは、基準線X1から基準線X3までの範囲が吹出空気の温度制御が可能な領域であり、基準線X3からダイヤル52の図中右側(デフモードの表示部59側)に位置する基準線X4までの範囲はフルホット領域であることを示すものとなっている。
【0044】
更にまた、表示部60よりもダイヤル52から離れた位置において、基準線X1の軸線上となる位置にRECの文字から成る表示部61が配置され、基準線X3の軸線上となる位置にFRESHの文字から成る表示部62が配置されていると共に、この表示部61と表示部62とを結ぶ円弧状で且つ双方に矢印を有する表示部63が配置されている。表示部61は内気のみが導入される内気導入(レック)モードになっていることを示し、表示部62は外気のみが導入される外気導入(フレッシュ)モードになっていることを示し、表示部63は内気導入モードと外気導入モードとの切り換えを案内していると共にこの表示部63の中間範囲にダイヤル52が向いている場合には内気・外気の双方が導入されている内外気双方導入モードになっていることを示している。尚、表示部61、62は、図示しないが文字で表示する代わりにアイコン等の図柄で表示するようにしても良い。
【0045】
そして、この実施例では、基準線X1から表示部55と表示部56との間に配置された基準線X2の範囲をACオン領域とし、ダイヤル52が基準線X1と基準線X2との間に位置した場合に冷凍サイクルを稼動するように構成している。もっとも、図示しないが、ACオンのスイッチを操作部51においてダイヤル52とは別個に設けるようにしても良い。
【0046】
しかるに、ダイヤル52を回転させる操作で、吹出モードの切り換えと、吹出空気の温度制御と、レックモード、フレッシュモード及び内外気双方導入モードの切り換えとを行うことが可能であり、ダイヤル52を1つに集約することができ、且つ、操作部51から駆動機構40に延びるワイヤーケーブル53の数もダイヤル52の数に対応して1つ(1組)にすることができるので、車両用空調装置全体として構成部品の部品点数の削除を図ることができる。
【0047】
次に、この車両用空調装置1のベントモード、バイレベルモード、フットモード、デフフットモード、デフモードの各吹出モードにおけるインテークドア7及び複合機能ドア30の状態について、
図4から
図8を用いて説明する。
【0048】
図4ではベントモードが示されており、このことは吹出空気温度設定がフルクールモード、内外気選択がレックモードであることも示したものとなっている。すなわち、
図4(a)に示される位置にダイヤル52を回転させると、
図4(b)に示されるように、インテークドア7は、外気導入口4を全て閉塞し、内気導入口5を全て開放する。また、複合機能ドア30は、第1の大壁面部37が第1の流路18の加熱用熱交換器13より下流側を全て閉塞し、第1の開口部34が第2の流路19と全開状態で接続され、第2の大壁面部39がデフ吹出用通路23の風上側を全て閉塞し、小壁面部38がフット吹出用通路25の風上側を全て閉塞し、第3の開口部36がベント吹出用通路24の風上側と全開状態にて接続される。これにより、
図4(b)の矢印に示されるように、全て内気導入口5から空気流路9内に導入された空気は、冷却用熱交換器12を通過した後、その全てが加熱用熱交換器13で加熱されずに、複合機能ドア30内に第1の開口部34から流入して、第3の開口部36からベント吹出用通路24内に入り、ベント吹出用開口部21から図示しないダクト等を介して車室内に吹き出される。なお、このモードにおいて冷凍サイクルを稼動し、空気流路9内に導入された空気を冷却用熱交換器12で冷却してもよい。以下、段落〔0049〕乃至〔0051〕における他のモードの説明についても同様である。
【0049】
図5ではバイレベルモードが示されており、このことは吹出空気温度設定が冷却空気と加熱空気との双方を取り込むエアミックスモード、内外気選択が内外気双方導入モードであることも示したものとなっている。すなわち、
図5(a)に示される位置にダイヤル52を回転させると、
図5(b)に示されるように、インテークドア7は、内気導入口5を相対的に大きく開放し、外気導入口4を相対的に小さく開放する。また、複合機能ドア30は、第1の大壁面部37が第1の流路18の加熱用熱交換器13よりも風下側の一部と第2の流路19の風下側の一部との双方にかかり、第1の開口部34が第2の流路19の風下側の一部と接続され、第2の開口部35が第1の流路18の加熱用熱交換器13よりも風下側の一部と接続され、第2の大壁面部39がデフ吹出用通路23の風上側を全て閉塞すると共にベント吹出用通路24の風上側の一部にかかり、小壁面部38がフット吹出用通路25の一部にかかり、第3の開口部36がベント吹出用通路24の風上側の一部及びフット吹出用通路25の風上側の一部の双方と接続される。これにより、
図5(b)の矢印に示されるように、内気導入口5と外気導入口4の双方から空気流路9内に導入された空気は、第2の流路19を流れる空気については、冷却用熱交換器12を通過した後、加熱用熱交換器13をバイパスして第1の開口部34から複合機能ドア30内に流入されると共に第1の流路18を流れる空気については冷却用熱交換器12を通過した後、加熱用熱交換器13で加熱されて加熱空気となって第2の開口部35から複合機能ドア30内に流入される。そして、加熱用熱交換器13をバイパスした空気と加熱空気とは、複合機能ドア30内で混合され又はそのままの状態で、第3の開口部36からベント吹出用通路24又はフット吹出用通路25に入り、ベント吹出用開口部21又はフット吹出用開口部22から図示しないダクトを介し、或いは直接的に車室内に吹き出される。
【0050】
図6ではフットモードが示されており、このことは吹出空気温度設定がフルホットモード、内外気選択が内外気双方導入モードであることも示したものとなっている。すなわち、
図6(a)に示される位置にダイヤル52を回転させると、
図6(b)に示されるように、インテークドア7は、内気導入口5と外気導入口4とを略半開きの状態にて開放する。また、複合機能ドア30は、第1の大壁面部37が第2の流路19の風下側を全て閉塞し、第2の開口部35が第1の流路18の加熱用熱交換器13よりも風下側と全開状態で接続され、第2の大壁面部39がデフ吹出用通路23の風上側とベント吹出用通路24の風上側との双方を全て閉塞し、第3の開口部36がフット吹出用通路25の風上側と全開状態で接続される。これにより、
図6(b)の矢印に示されるように、内気導入口5と外気導入口4の双方から空気流路9内に導入された空気は、その全てが冷却用熱交換器12を通過した後、加熱用熱交換器13で加熱されて加熱空気となるもので、この加熱空気は、複合機能ドア30内に第2の開口部35から流入して、第3の開口部36からフット吹出用通路25内に入り、フット吹出用開口部22から例えば直接的に車室内に吹き出される。
【0051】
図7はデフフットモードが示されており、このことは吹出空気温度設定がフルホットモード、内外気選択が内外気双方導入モードであることも示したものとなっている。なわち、
図7(a)に示される位置にダイヤル52を回転させると、
図7(b)に示されるように、インテークドア7は、外気導入口4を相対的に大きく開放し、内気導入口5を相対的に小さく開放する。また、複合機能ドア30は、第1の大壁面部37が第2の流路19の風下側を全て閉塞し、第2の開口部35が第1の流路18の加熱用熱交換器13よりも風下側と全開状態で接続され、第2の大壁面部39がデフ吹出用通路23の風上側の一部及びフット吹出用通路25の風上側の一部にかかりつつベント吹出用通路24の風上側を全て閉塞し、第1の開口部34がデフ吹出用通路23の風上側の一部と接続され、第3の開口部36がフット吹出用通路25の風上側の一部と接続される。これにより、
図7(b)の矢印に示されるように、外気導入口4と内気導入口5の双方から空気流路9内に導入された空気は、その全てが冷却用熱交換器12を通過した後、加熱用熱交換器13で加熱されて加熱空気となるもので、この加熱空気は、複合機能ドア30内に第2の開口部35から流入して、第1の開口部34からデフ吹出用通路23に入り又は第3の開口部36からフット吹出用通路25に入り、ベント吹出用開口部21又はフット吹出用開口部22から図示しないダクトを介し、或いは直接的に車室内に吹き出される。
【0052】
図8はデフモードが示されており、このことは吹出空気温度設定がフルホットモード、内外気選択がフレッシュモードであることも示したものとなっている。すなわち、
図8(a)に示される位置にダイヤル52を回転させると、
図8(b)に示されるように、インテークドア7は、内気導入口5を全て閉塞し、外気導入口4を全て開放する。また、複合機能ドア30は、第1の大壁面部37が第2の流路19の下流側を全て閉塞し、第2の開口部35が第1の流路18の風上側と全開状態で接続され、第2の大壁面部39がベント吹出用通路24の風上側とフット吹出用通路25の風上側とを全て閉塞し、第1の開口部34がデフ吹出用通路23の風上側と全開状態で接続される。これにより、
図8(b)の矢印に示されるように、外気導入口4のみから空気流路9内に導入された空気は、その全てが冷却用熱交換器12を通過した後、加熱用熱交換器13で加熱されて加熱空気となるもので、この加熱空気は、複合機能ドア30に第2の開口部35から流入して、第1の開口部34からデフ吹出用通路23内に入り、デフ吹出用開口部20から図示しないダクト等を介して車室内に吹き出される。
【0053】
以上で説明したように、第2の開口部35は第1の流路18を通過した空気が複合機能ドア30の内部に流入するためのものとして使用され、第3の開口部36は複合機能ドア30の内部から空気を流出するためのものとして使用されると共に、第1の開口部34は複合機能ドア30の位置に応じて第2の流路19を通過した空気が複合機能ドア30の内部に流入するため、もしくは複合機能ドア30の内部から空気を流出するためのものとして使用される。
【0054】
ところで、複合機能ドア30は、
図9及び
図10に示されるように一体成形されているものであり、例えば金型65、66、67及び68を少なくとも用いて射出成形等の手法によって形成される形状となっている。
【0055】
すなわち、第1の開口部34は、上記した壁面部37、38、39の配置構成や周面部31における割合に伴い、周面部31の中心軸Pを含むと共に基準面S1乃至S4と直交する方向に延びる基準面Lを採った場合にこの基準面Lの一方側に配置されていると共に、第1の開口部34について第2及び第3の開口部35、36側に基準面Lを基準位置として面対称となるように移した場合に、第1の開口部34と第2及び第3の開口部35、36とで一連の円弧を描くように配置されている。
【0056】
しかも、第1の開口部34の第1の大壁面部37側と第2の大壁面部39側の内側面70、71は、第1の開口部34の開口外縁と第2の開口部35及び第3の開口部36の開口外縁とを結んだ基準面S1、S2を採った場合に、この基準面S1、S2の一部となっていると共に、第1の開口部34の内側面70と内側面71との双方に連接する内側面72は基準面S1、S2と平行に延びる平面となっている。また、第2の開口部35の小壁面部38側の内側面73と第3の開口部36の小壁面部38側の内側面74とは基準面S1、S2の一部となっている、更に、第2の開口部35の第1の大壁面部37側の内側面75は、当該第1の大壁面部37側の開口外縁を通り、且つ基準面S1、S2と平行に延びる基準面S3を採った場合に、この基準面S3の一部となっていると共に、第2の開口部35の内側面73と内側面75との双方に連接する内側面76は基準面S1、S3と平行に延びる平面となっている。更にまた、第3の開口部36の第2の大壁面部39側の内側面77は、当該第2の大壁面部39側の開口外縁を通り、且つ基準面S1、S2と平行に延びる基準面S4を採った場合に、この基準面S4の一部となっていると共に、第3の開口部36の内側面74と内側面77との双方に連接する内側面78は基準面S2、S4と平行に延びる平面となっている。更にまた、第1の大壁面部37は、第2の開口部35の内側面75に連接する内面80について、基準面S3の一部となっている。そして、第2の大壁面部39は、第3の開口部36の内側面77に連接する内面81について、基準面S4の一部となっている。換言すると、第1の開口部34の内側面70、71、72、第2の開口部35の内側面73、75、76、第3の開口部36の内側面74、77、78、第1の大壁面部37の内面80及び第2の大壁面部39の内面81は、基準面Lと直交する方向に延びている。
【0057】
そして、
図10に示されるように、第1の大壁面部37の内面80とこの第1の大壁面部37の両側に位置する開口部34、35の内側面70、75とは、第2の開口部35が有する周面部31の周上にある開口縁に基準面Lと直交する方向にて投影した場合に、第2の開口部35が有する周面部31の周上にある開口縁の範囲以内に収まるものともなっている。また、第2の大壁面部39の内面81とこの第2の大壁面部39の両側に位置する開口部34、36の内側面71、77は、第3の開口部36が有する周面部31の周上にある開口縁に基準面Lと直交する方向にて投影した場合に、この第3の開口部36が有する周面部31の周上にある開口縁の範囲以内に収まるものともなっている。更に、小壁面部38の内面とこの小壁面部38の両側に位置する開口部35、36の内側面73、74は、第1の開口部34が有する周面部31の周上にある開口縁に基準面Lと直交する方向にて投影した場合に、この第1の開口部34が有する周面部31の周上にある開口縁の範囲以内に収まるものともなっている。
【0058】
金型65は、第1の開口部34、第1の大壁面部37の外面の大部分、第2の大壁面部39の外面の大部分、小壁面部38の内面並びにドア本体33内部空間を形成するためのもので、第1の開口部34の開口形状と同じ断面形状を有する突出部83を備えている。また、金型66は、第2の開口部35、第3の開口部36、第1の大壁面部37の内面80、第2の大壁面部39の内面81、第1の大壁面部37の外面の残り部分、及び第2の大壁面部39の外面の残り部分を形成するためのもので、第2の開口部35の開口形状と同じ断面形状を有する突出部84と第3の開口部36の開口形状と同じ断面形状を有する突出部85とを備えている。尚、金型65は、第1の大壁面部37の外面の大部分及び第2の大壁面部39の外面の大部分を形成するための部位よりも突出部83とは反対側に延びた部位を有し、金型66は、2つの突出部84、85よりも幅方向の外側に張り出した部位を有している。
【0059】
これにより、
図9に示されるように、金型65と金型66とを組み合わせて、その間に形成された隙間空間にプラスチック等の樹脂材、その他の素材を注入した後、金型65と金型66とを基準面S1乃至S4に沿って相対的に離れる方向に可動することで、金型65の突出部83が第1の開口部34からスムーズに抜け、金型66の突出部84、85が第2及び第3の開口部35、36からそれぞれスムーズに抜ける。
【0060】
よって、複合機能ドア30は単一の部材として簡易に製造することが可能となるので、部品点数が相対的に削減され、複合機能ドア30、HVACユニット2ひいては車両用空調装置1全体の製造コストの低減を図ることができる。
【0061】
そして、複合機能ドア30は、
図11に示されるように、その内部空間を1又は2以上の仕切り部87により仕切られたものとしても良い。この仕切り部87の形成は、例えば金型65の突出部83に対して、所定幅の切り込み86、86を形成して複数の突出部83a、83b、83cに分ける変更をすることで対応することができる。しかも、仕切り部87の拡がり方向寸法(延出方向寸法)L1は、例えば切り込み86の長さL2を調整することで可変することができる。尚、金型66の突出部84、85も図示しないが同様に切り込みを入れて複数の突出部に分ける変更をして仕切り部87の形成を図ることができる。
【0062】
また、複合機能ドア30は、
図11に示されるように、第1の開口部34に対し周面部31の円周上にある(円周方向に延びる)切欠き88が形成されたものとしても良い。このようにすることで、例えばバイレベルモードにおいて、一部の空気をデフ開口に供給すること(デフブリード)や、ベント吹出空気とフット吹出空気の温度差を所望する値に調整することができ、HVACユニット2の設計自由度を向上させることが可能である。そして、この切欠き88の形成は、例えば金型65の突出部83に対して、突出部83の一部について周面部31の軸方向から見た際の厚みL3を他の突出部83の部位よりも大きくなるように変更することで対応することができる。他の開口部35、36も、図示しないが金型66を同様に変更することで第1の開口部34の切欠き88と同じように切欠きを形成することができる。そして、各開口部34、35、36は、図示しないが、周面部31の円周上(円周方向)においてこれらの開口部34、35、36とは独立した開口部を形成するようにしても良く、この開口部の形成も金型65の突出部83や金型66の突出部84、85の変更で対応することができる。
【0063】
更に、複合機能ドア30は、
図11に示されるように、閉塞部32に内部空間と連通する通孔89を1又は2以上形成しても良い。この閉塞部32への通孔89の形成も、閉塞部32を形成するための金型の所定の箇所に突起部を形成する変更で対応することができる。
【0064】
しかるに、複合機能ドア30は、
図9及び
図10に示される金型による一体成形の方法で製造するようにすることにより、仕切り部87、切欠き88、通孔89等の形成を、複合機能ドア30を一体成形する工程の中で且つ金型の変更により行うことができるので、仕切り部87、切欠き88、通孔89を有する複合機能ドア30の製造についても簡易且つ低コストで行うことができる。
【0065】
なお、複合機能ドア30の周面部31を円筒状として示してきたがこれに限定されず、図示しないが、軸方向両側の閉塞部に対して円筒の中腹部の直径寸法を膨らませたり(樽状とする)、直径寸法を小さくしたり(鼓状とする)してもよいものであり、この点で、本件発明は複合機能ドア30の設計自由度が担保されている。
【0066】
また、本件発明について、型抜きにより複合機能ドア30を一体成形することが可能であれば、複合機能ドア30の構成について、その主旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更できることは勿論である。例えば、段落〔0033〕では、複合機能ドア30の周面部31を構成する3つの開口部34、35、36と、第1の大壁面部37と、小壁面部38と、第2の大壁面部39とを、
図10に示すように、周面部31の円周をI線からVIII線で8等分し、円周の1/4または1/8とするものとして例示したが必ずしもこれに限定されない。
【0067】
その複合機能ドア30の変形例について、以下において実施例2、実施例3、実施例4として説明する。