(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
旋回用電動機と、該旋回用電動機の回転駆動力を旋回体に伝達する旋回減速機と、前記旋回体を旋回停止状態に保持するブレーキ装置とを有する旋回駆動装置を搭載するショベルであって、
潤滑油で潤滑される前記旋回減速機と該潤滑油で潤滑される前記ブレーキ装置とを収容する空間を形成するケースを備え、
前記ケースは、前記空間の底面を構成する部分に凹部を有する、
ショベル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の一実施形態による旋回駆動装置が組み込まれたショベルの全体構成及び駆動系の構成について説明する。
図1は本発明の一実施形態による旋回駆動装置が組み込まれたショベルを示す側面図である。なお、ショベルは建設機械の一例であり、本発明の一実施形態による旋回駆動装置は、旋回体を旋回する機構を有する建設機械に組み込むことができる。
【0010】
図1に示すショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0011】
なお、
図1に示すショベルは、旋回駆動装置に供給する電力を蓄積する蓄電装置を有するショベルである。しかしながら、本発明は、電動旋回を採用したショベルであれば、例えば外部電源から充電電力が供給される電気駆動式ショベルにも適用され得る。
【0012】
図2は
図1に示すショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。
【0013】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。
【0014】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、並びにバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
【0015】
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系(蓄電装置)120が接続される。蓄電系120には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の出力軸21bには、レゾルバ22、及び旋回減速機24が接続される。旋回減速機24の出力軸24Aにはメカニカルブレーキ23が接続される。旋回用電動機21と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回減速機24とにより、負荷駆動系として旋回駆動装置40が構成される。ここで、旋回用電動機21は、上部旋回体3を旋回駆動するための旋回用電動モータに相当し、メカニカルブレーキ23は、上部旋回体3を旋回停止状態に保持するために上部旋回体3に機械的にブレーキをかけておくブレーキ装置に相当する。
【0016】
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
【0017】
コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0018】
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
【0019】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、蓄電系120の昇降圧コンバータを駆動制御することによりキャパシタの充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタの充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、蓄電系120の昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタの充放電制御を行う。また、コントローラ30は、後述のようにキャパシタに充電する量(充電電流又は充電電力)の制御も行なう。
【0020】
上述のような構成のショベルによる作業では、上部旋回体3を旋回駆動するために、インバータ20を介して供給される電力により旋回用電動機21が駆動される。旋回用電動機21の出力軸21bの回転力は、旋回減速機24とメカニカルブレーキ23を介して旋回駆動装置40の出力軸40Aに伝達される。
【0021】
図3は本発明の一実施形態による旋回駆動装置40の構成を示すブロック図である。上述のように、旋回駆動装置40は、駆動源としての電動モータである旋回用電動機21を含む。旋回用電動機21の出力軸側に旋回減速機24が接続される。
【0022】
具体的には、旋回減速機24は、第1旋回減速機24−1、第2旋回減速機24−2、及び第3旋回減速機24−3の3段構成を有する。第1旋回減速機24−1、第2旋回減速機24−2、及び第3旋回減速機24−3は、それぞれ遊星減速機で構成される。より具体的には、第1段の第1旋回減速機24−1は、旋回用電動機21に組み付けられる。また、第1旋回減速機24−1の出力軸となる遊星キャリア46には、メカニカルブレーキ23としてのディスクブレーキが設けられる。また、第2段の第2旋回減速機24−2は、メカニカルブレーキ23を間に挟んで第1旋回減速機24−1に組み付けられ、第3段の第3旋回減速機24−3は第2旋回減速機24−2に組み付けられる。そして、第3旋回減速機24−3の出力軸が旋回駆動装置40の出力軸40Aとなる。なお、図示はしないが、旋回駆動装置40の出力軸40Aは旋回機構2に接続され、出力軸40Aの回転力により旋回機構2が駆動される。
【0023】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、旋回駆動装置40の具体的な構成について説明する。なお、
図4は、旋回駆動装置40の上面図であり、
図4中の破線は、第1旋回減速機24−1の主要構成部品のかくれ線を表す。また、
図5は、
図4のV−V線断面図である。
【0024】
また、
図5は旋回駆動装置40のうち、第1旋回減速機24−1及びメカニカルブレーキ23を構成する部分の断面図である。本実施形態では、第1旋回減速機24―1を構成する遊星減速機の太陽歯車42が、旋回用電動機21の出力軸21bに固定されている。また、太陽歯車42は、遊星キャリア46により、ベアリング51を介して回転可能に支えられている。また、太陽歯車42は、3つの遊星歯車44のそれぞれに係合している。遊星歯車44のそれぞれは、ピン44aを介して第1旋回減速機24−1の出力軸を構成する遊星キャリア46に回転可能に支持されている。そして、各遊星歯車44は、第1ギヤケース50の内面に形成された内歯歯車48に係合している。
【0025】
内歯歯車48が形成された第1ギヤケース50は、旋回用電動機21のエンドプレート21aに固定されており、自ら回転することはできない。一方、出力軸を構成する遊星キャリア46は、第1ギヤケース50に固定された第2ギヤケース52に対して、ベアリング56を介して回転可能に支えられている。
【0026】
なお、上述の第1旋回減速機24−1は、各歯車を潤滑するための潤滑油が、旋回用電動機21のエンドプレート21a、出力軸21b、第1ギヤケース50、第2ギヤケース52、及び遊星キャリア46によって密閉される構造となっている。
【0027】
以上のような構成の第1旋回減速機24−1において、旋回用電動機21の出力軸21bが回転して太陽歯車42が回転すると、遊星歯車44が回転(自転)する。遊星歯車44は第1ギヤケース50の内面に形成された内歯歯車48に係合しており、遊星歯車44の回転力で内歯歯車48が形成された第1ギヤケース50が回転しようとする。ところが、第1ギヤケース50は旋回用電動機21のエンドプレート21aに固定されているので、回転することはできない。その結果、遊星歯車44を支持しながら自ら回転可能に支持されている遊星キャリア46のほうが回転する。以上のような歯車作用により、旋回用電動機21の出力軸21bの回転が減速されて遊星キャリア46から出力される。
【0028】
次に、メカニカルブレーキ23を構成するディスクブレーキの構造について説明する。ディスクブレーキは固定部である第2ギヤケース52と出力軸である遊星キャリア46との間に形成される。遊星キャリア46の外周から遊星キャリア46の回転半径方向外側に向けてブレーキディスク60が延在する。ブレーキディスク60は、遊星キャリア46に対して回転はできないが、遊星キャリア46の軸方向には移動可能な状態で、例えばスプライン結合のような結合構造を介して遊星キャリア46に結合されている。
【0029】
ブレーキディスク60の上下両側には、ブレーキプレート62が配置されている。ブレーキプレート62は、固定部である第2ギヤケース52に対して回転はできないが、遊星キャリア46の軸方向には移動可能な状態で、例えばスプライン結合のような結合構造を介して第2ギヤケース52の内面側に結合されている。本実施形態では、3枚のブレーキプレート62のそれぞれの間に2枚のブレーキディスク60が挟まれる構成を採用する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、2枚のブレーキプレート62の間に1枚のブレーキディスク60が挟まれる構成であってもよく、4枚以上のブレーキプレート62のそれぞれの間に3枚以上のブレーキディスク60が挟まれる構成であってもよい。
【0030】
最も高い位置にあるブレーキプレート62の上には、ピストン64が、遊星キャリア46の軸方向に移動可能な状態で配置されている。ピストン64はスプリング66により押圧されて最も高い位置にあるブレーキプレート62に押し付けられている。本実施形態では、スプリング66としてコイルスプリングを用いているが、小さな変位で高出力を得ることのできる多段重ねの皿バネを用いることもできる。
【0031】
ブレーキプレート62とブレーキディスク60とは、遊星キャリア46の軸方向に移動可能である。そのため、上側のブレーキプレート62がピストン64により押圧されると、ブレーキディスク60は上下のブレーキプレート62により挟まれて押圧される。ブレーキプレート62とブレーキディスク60の表面は摩擦係数の大きな被膜に覆われている。そして、ブレーキディスク60がブレーキプレート62により挟まれて押圧されることで、ブレーキディスク60の回転を阻止しようとするブレーキ力がブレーキディスク60に作用する。また、ブレーキディスク60は遊星キャリア46に対して回転できないように接続されている。そのため、ブレーキディスク60に作用するブレーキ力が遊星キャリア46に加わるブレーキ力となる。
【0032】
ピストン64と第2ギヤケース52との間には、作動油が供給可能な油圧空間68が形成され、油圧空間68にブレーキ解除ポート69が接続されている。また、ピストン64と第2ギヤケース52との間にはOリング等のシール部材91が配置され、油圧空間68内の作動油が漏れ出ないようにシールしている。パイロットポンプ15から操作装置26、油圧ライン27a(
図2参照。)及びブレーキ解除ポート69を介して油圧空間68に油圧が供給されると、ピストン64が油圧により押し上げられてブレーキプレート62を押圧する力が無くなり、ブレーキは解除される。
【0033】
以上のような構成の第1旋回減速機24−1において、本実施形態では、第1ギヤケース50の上面にリング状の凹部が形成され、リング状の凹部の底面に複数の貫通孔が形成されている。この貫通孔のそれぞれに上述のスプリング66が挿入されている。各スプリング66の下端は、第1ギヤケース50の貫通孔から突出し、ピストン64に形成された穴の底面に当接している。そして、第1ギヤケース50のリング状の凹部には、スプリング押さえ部材90が嵌合している。スプリング押さえ部材90は、複数のボルト92により第1ギヤケース50に締め付けられて固定されている。
【0034】
スプリング押さえ部材90が第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定される前は、各スプリング66の上端はリング状の凹部の底面から上方に突出している。したがって、スプリング押さえ部材90を第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定する際に、各スプリング66はスプリング押さえ部材90により押圧されて圧縮される。スプリング押さえ部材90を第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定すると、各スプリング66は、スプリング押さえ部材90とピストン64との間に挟まれて圧縮された状態となっている。このときの各スプリング66の復元力(スプリング力)が、ピストン64(すなわち、ブレーキプレート62)をブレーキディスク60に押し付ける力となり、遊星キャリア46に加わるブレーキ力となる。
【0035】
スプリング押さえ部材90が第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定された状態では、スプリング押さえ部材90全体がリング状の凹部内に収容される。そのため、スプリング押さえ部材90は、旋回用電動機21のエンドプレート21a(フランジとも称することもある)に当接する第1ギヤケース50の合わせ面から突出することはない。したがって、第1ギヤケース50の合わせ面のみが旋回用電動機21のエンドプレート21aに当接する。ただし、スプリング押さえ部材90の上面にはOリング等のシール部材93が配置され、第1ギヤケース50内の遊星歯車44を潤滑・冷却する潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。また、スプリング押さえ部材90の下面にもOリング等のシール部材94が配置され、スプリング66が収容された部分に充填された潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。同様に、第1ギヤケース50と第2ギヤケース52との間にもOリング等のシール部材95が配置され、スプリング66が収容された部分に充填された潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。
【0036】
次に、
図6を参照しながら、旋回駆動装置40における回転駆動力の伝達について説明する。なお、
図6は
図4のVI−VI線断面図であり、旋回用電動機21の出力軸21bが静止しているときの旋回駆動装置40の状態を示す。
【0037】
図6に示すように、第1旋回減速機24−1は、太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、及び内歯歯車48を含む遊星歯車機構で構成される。また、第2旋回減速機24−2は、太陽歯車82、遊星歯車84、遊星キャリア86、及び内歯歯車88を含む遊星歯車機構で構成される。同様に、第3旋回減速機24−3は、太陽歯車102、遊星歯車104、遊星キャリア106、及び内歯歯車108を含む遊星歯車機構で構成される。
【0038】
第1旋回減速機24−1において、太陽歯車42は、旋回用電動機21の出力軸21bに固定され、遊星歯車44と係合する。遊星歯車44は、第1ギヤケース50の内壁に形成された内歯歯車48と太陽歯車42との間で自転しながら公転する。本実施形態では、第1旋回減速機24−1は、3つの遊星歯車44を有する。3つの遊星歯車44のそれぞれは、自転しながら公転することによって遊星キャリア46を回転させる。なお、遊星キャリア46は、第1旋回減速機24−1の出力軸を構成する。
【0039】
第2旋回減速機24−2において、太陽歯車82は、第1旋回減速機24−1の出力軸としての遊星キャリア46に固定され、遊星歯車84と係合する。遊星歯車84は、第3ギヤケース54の内壁に形成された内歯歯車88と太陽歯車82との間で自転しながら公転する。本実施形態では、第2旋回減速機24−2は、3つの遊星歯車84を有する。3つの遊星歯車84のそれぞれは、ピン84aを介して遊星キャリア86に回転可能に支持され、自転しながら公転することによって遊星キャリア86を回転させる。なお、遊星キャリア86は、第2旋回減速機24−2の出力軸を構成する。
【0040】
第3旋回減速機24−3において、太陽歯車102は、第2旋回減速機24−2の出力軸としての遊星キャリア86に固定され、遊星歯車104と係合する。遊星歯車104は、第3ギヤケース54の内壁に形成された内歯歯車108と太陽歯車102との間で自転しながら公転する。本実施形態では、第3旋回減速機24−3は、3つの遊星歯車104を有する。3つの遊星歯車104のそれぞれは、ピン104aを介して遊星キャリア106に回転可能に支持され、自転しながら公転することによって遊星キャリア106を回転させる。なお、遊星キャリア106は、旋回減速機24の出力軸40Aを構成する。
【0041】
上述の構成により、旋回駆動装置40は、旋回用電動機21の出力軸21bの回転速度を減じて出力軸40Aのトルクを増大させる。
【0042】
具体的には、旋回駆動装置40は、出力軸21bの時計回りの高速・低トルクの回転に応じて、遊星歯車44を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア46を時計回りに回転させる。そして、旋回駆動装置40は、遊星キャリア46の時計回りの回転に応じて、遊星歯車84を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア86を時計回りに回転させる。さらに、旋回駆動装置40は、遊星キャリア86の時計回りの回転に応じて、遊星歯車104を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア106、すなわち、出力軸40Aを時計回りに低速・高トルクで回転させる。出力軸21bが反時計回りに回転する場合も、各歯車の回転方向が逆になることを除き、同様である。
【0043】
また、旋回駆動装置40は、出力軸21b、エンドプレート21a、第1ギヤケース50、第2ギヤケース52、及び遊星キャリア46で密閉される空間SP1を有する。なお、出力軸21bには、図示しないオイルシールが装着される。また、遊星キャリア46には、ベアリング56の下に2つのオイルシール57が装着される。空間SP1は、細かいドットパターンで表される潤滑油LB1で潤滑される太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、ブレーキディスク60、ブレーキプレート62、及びピストン64を収容する。
【0044】
また、旋回駆動装置40は、遊星キャリア46、第2ギヤケース52、第3ギヤケース54、及び遊星キャリア106で密閉される空間SP2を有する。なお、遊星キャリア106には、図示しないオイルシールが装着される。空間SP2は、粗いドットパターンで表される潤滑油LB2で潤滑される太陽歯車82、102、遊星歯車84、104、及び、遊星キャリア86、106を収容する。なお、潤滑油LB2は、オイルシール57によって潤滑油LB1から隔離されている。また、潤滑油LB2は、潤滑油LB1と同じ種類の潤滑油であってもよく、異なる種類の潤滑油であってもよい。例えば、旋回駆動装置40は、高回転用の潤滑油LB1を、低回転用の潤滑油LB2とは異なる種類の潤滑油としてもよい。
【0045】
次に、
図7を参照しながら、第1旋回減速機24−1の出力軸となる遊星キャリア46の詳細について説明する。なお、
図7は、遊星キャリア46の詳細図であり、F7Aが正面図を示し、F7Bが上面図を示す。また、F7Cは、F7Bの一点鎖線で示す紙面に垂直な平面をX方向から見た断面図を示す。
【0046】
図7に示すように、遊星キャリア46は、出力軸を構成する出力軸部46a、及び、3つの遊星歯車44−1、44−2、44−3を回転可能に保持するキャリア部46bを有する。
【0047】
出力軸部46aは、半径方向に延びる円板部46a1、及び、軸方向に延びる円柱部46a2を有する。
【0048】
円板部46a1は、半径方向外端に、ブレーキディスク60を保持するディスク保持部46a1pを有する。本実施例では、ディスク保持部46a1pは、2枚のブレーキディスク60を保持し、半径方向のより内側にある円板部46a1の他の部分よりも肉厚となるように構成される。この構成により、ディスク保持部46a1pは、円板部46a1の他の部分と同じ厚み(軸方向長さ)を有する場合と比べ、制動時にブレーキディスク60から受ける力に対する剛性を高めることができる。また、ディスク保持部46a1pは、取り付けられるブレーキディスク60の枚数を増大させることができる。
【0049】
キャリア部46bは、出力軸部46aから脱着可能に構成される部材である。本実施例では、キャリア部46bは、旋回用電動機21の出力軸21bに固定される太陽歯車42と3つの遊星歯車44―1、44−2、44−3とを収容する円柱状の部材である。また、キャリア部46bは、締結部材である3つのボルト46c−1、46c−2、46c−3(以下、集合的に「ボルト46c」とも称する。)を用いて出力軸部46aに締結される。また、キャリア部46bは、3つのピン44a―1、44a―2、44a―3(以下、集合的に「ピン46a」とも称する。)を用いて遊星歯車44−1、44−2、44−3(以下、集合的に「遊星歯車44」と称する。)を回転可能に支持する。
【0050】
本実施例では、3つのボルト46cは、キャリア部46bの中心軸の周りに120度間隔で形成されるボルト穴に挿入される。そして、出力軸部46aの円板部46a1の上面に形成されるタップ穴(図示せず。)にねじ込まれ、キャリア部46bを出力軸部46aに対して締め付ける。また、3つのピン44aは、キャリア部46bの中心軸の周りに120度間隔に、3つのボルト46cのそれぞれと60度の間隔を空けて形成されるピン穴に挿入される。そして、対応する遊星歯車44を回転可能に支持した状態で固定される。
【0051】
なお、本実施例では、3つのボルト46cのそれぞれの中心軸は、キャリア部46bの中心軸を中心とする同じ1つの円の円周上に配置される。また、3つのピン44aのそれぞれの中心軸は、キャリア部46bの中心軸を中心とする同じ1つの円の円周上に配置される。そして、3つのボルト46cのそれぞれの中心軸と3つのピン44aのそれぞれの中心軸とは、キャリア部46bの中心軸を中心とする同じ1つの円の円周上に配置される。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、3つのボルト46cのそれぞれの中心軸が通る円は、3つのピン44aのそれぞれの中心軸が通る円とは異なる円であってもよい。
【0052】
また、キャリア部46bには、締結部材である3つのボルト46cを締め付け或いは緩める際にキャリア部46bと出力軸部46aとが共に回転するのを防止する2つのタップ穴46d−1、46d−2(以下、集合的に「46d」とも称する。)が形成される。本実施例では、2つのタップ穴46dは、キャリア部46bの中心軸に対して対称な位置に形成される。
【0053】
ここで、
図7及び
図8を参照して、作業者がキャリア部46bを出力軸部46aから取り外す方法について説明する。
【0054】
最初に、作業者は、2つのタップ穴46dのそれぞれに、
図8に示すようなアイボルト80等のジグを取り付ける。
【0055】
その後、作業者は、2つのタップ穴46dのそれぞれに取り付けられた2つのアイボルト80のリングに一本の棒状部材を通す。棒状部材は、例えば、バール等の剛性部材である。
【0056】
その後、作業者は、棒状部材を固定しながら、レンチ等の工具を用いてボルト46cを緩める。棒状部材の固定は、ボルト46cを緩める際にキャリア部46bが出力軸部46aと一緒に回転するのを防止する。
【0057】
なお、上述の説明は、作業者がキャリア部46bを出力軸部46aから取り外す方法に関するものであるが、作業者がキャリア部46bを出力軸部46aに取り付ける場合にも同様に適用される。
【0058】
上述の通り、出力軸部46aは、ブレーキディスク60が結合される円板部46a1と、第2旋回減速機24−2の太陽歯車82に結合される円柱部46a2とが一体的に形成される。そのため、円板部46a1と円柱部46a2との間で摩耗が発生することはない。また、ブレーキ装置による制動時に発生する制動反力に対する耐力を高めることができる。
【0059】
また、キャリア部46bは、スプライン結合、セレーション結合等を用いることなく、締結部材であるボルト46cを用いて出力軸部46aに結合される。そのため、結合部分での摩耗を低減させることができる。
【0060】
また、出力軸部46aとキャリア部46bとは、別個独立の部材であるため、別々の材料で形成され得る。そのため、摩耗しやすい部分を有する出力軸部46aは、キャリア部46bよりも耐摩耗性に優れた材料で形成され得る。なお、出力軸部46aの摩耗しやすい部分は、第2旋回減速機24−2の太陽歯車82にスプライン結合される部分、及び、ブレーキディスク60にスプライン結合される部分を含む。一方で、高い耐摩耗性を要求されないキャリア部46bは、比較的低コストの材料で形成され得る。その結果、遊星キャリア46のこの構造は、出力軸部46aとキャリア部46bとを一体的に形成する場合に比べ、摩耗しやすい部分の耐摩耗性を高めながらも製造コストの増加を抑えることができる。また、耐摩耗性を高めることによって出力軸部46aの交換周期を延長でき、交換コストを抑えることができる。また、出力軸部46aとキャリア部46bとを別個独立の部材とするため、交換周期が比較的短い出力軸部46aの交換に合わせてキャリア部46bを交換する必要がない。また、出力軸部46aを交換する場合であっても、出力軸部46aとキャリア部46bとを分離するだけで済み、遊星歯車44をキャリア部46bから取り外す必要がない。そのため、出力軸部46aの交換作業を簡略化できる。
【0061】
また、キャリア部46bは、その上面にアイボルト80等のジグを取り付け可能なタップ穴46dを備える。そのため、遊星キャリア46の分解性・組立性を向上させることができる。なお、上述の実施例では、タップ穴46dは、キャリア部46bの上面に2つ形成されるが、3つ以上形成されてもよい。この場合、一本の棒状部材は、3つ以上のタップ穴のうちの2つに取り付けられた2つのアイボルト80のリングに通される。
【0062】
また、キャリア部46bは、締結部材である3つのボルト46cを用いて出力軸部46aに締結される。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、キャリア部46bは、1つ、2つ又は4つ以上の締結部材を用いて出力軸部46aに締結されてもよい。
【0063】
また、上述の実施例では、ボルト46cは、キャリア部46bを軸方向に貫通するボルト穴に挿入され、出力軸部46aの円板部46a1の上面に形成されるタップ穴にねじ込まれる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、ボルト46cは、円板部46a1を軸方向に貫通するボルト穴に挿入され、キャリア部46bの下面に形成されるタップ穴にねじ込まれてもよい。この場合、キャリア部46bの上面に形成されるタップ穴46dは、円板部46a1の下面に形成されてもよい。
【0064】
次に、
図9を参照しながら、旋回駆動装置40における潤滑油の排出について説明する。なお、
図9は、
図6の破線で囲んだ領域IXの拡大図である。
【0065】
図9に示すように、第2ギヤケース52は、潤滑油LB1が存在する空間SP1の底面を構成する部分に凹部52rを有する。凹部52rは、上面視で環状の溝を形成する。本実施例では、凹部52rは、遊星キャリア46の出力軸部46aを構成する円板部46a1の半径方向外端にあるディスク保持部46a1pの鉛直下方に形成される。また、凹部52rは、円板部46a1の他の部分に対して鉛直下方に突出するディスク保持部46a1pの下端を受け入れ可能な深さ及び幅(半径方向の長さ)を有する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、凹部52rは、ディスク保持部46a1pの幅より小さい幅を有していてもよい。この場合、凹部52rは、ディスク保持部46a1pの下端を受け入れることはない。また、凹部52rは、ディスク保持部46a1pの真下ではなく、遊星キャリア46の回転軸により近い位置に形成されてもよく、その回転軸からより遠い位置に形成されてもよい。また、第2ギヤケース52は、ディスク保持部46a1pが鉛直下方へ突出しているか否かに関係なく、凹部52rを有していてもよい。
【0066】
また、第2ギヤケース52は、凹部52rの内底面又は内壁面に開口する排出路52bを有する。本実施例では、排出路52bは、凹部52rの内底面から第2ギヤケース52の外面に向かって下方に傾斜しながら、空間SP1と第2ギヤケース52の外部空間とを連通する。なお、空間SP1内の潤滑油を必要に応じて排出できるように、排出路52bの外面側の端部にはプラグが取り付けられる。
【0067】
図10は、第2ギヤケース52の要部断面図であり、凹部52rの別の構成例を示す。
図10左図において、凹部52r−1は、幅方向(半径方向)の中央に向かって下方に傾斜する内底面を有する。また、排出路52b−1は、凹部52r―1の内底面の中央に開口する。
図10中央図において、凹部52r−2は、幅方向(半径方向)の外側に向かって下方に傾斜する内底面を有する。また、排出路52b−2は、凹部52r―2の内底面の半径方向外側に開口する。
図10右図において、凹部52r−3は、幅方向(半径方向)の内側に向かって下方に傾斜する内底面を有する。また、排出路52b−3は、凹部52r―3の内底面の半径方向内側に開口する。
【0068】
次に、
図11を参照しながら、凹部52rによってもたらされる効果について説明する。なお、
図11は、遊星キャリア46と第2ギヤケース52との位置関係を示す断面図であり、左図が凹部52rを有さない場合を示し、右図が凹部52rを有する場合を示す。具体的には、
図11は、遊星キャリア46の出力軸部46a、第2ギヤケース52、ベアリング56、オイルシール57、ブレーキディスク60、及びブレーキプレート62の位置関係を示す断面図である。
【0069】
図11左図において、出力軸部46aは、ディスク保持部46a1pの厚みが他の部分の厚みと同じ厚みD1である円板部46a1を有する。また、第2ギヤケース52は、厚みD2の底板部52aを有する。底板部52aは、空間SP1の底面を形成し、且つ、半径方向内端にベアリング56及びオイルシール57を支持する支持部52apを有する。また、円板部46a1(ディスク保持部46a1p)の下面と底板部52aの上面との間には、厚みD3のクリアランスが形成される。
【0070】
これに対し、
図11の右図では、第2ギヤケース52は、底板部52aのところに下方に凹む凹部52rを有する。そのため、出力軸部46aは、ディスク保持部46a1pを円板部46a1の他の部分から下方に突出させることができ、ディスク保持部46a1の厚みD1を厚みD1Eまで増大させている。その結果、出力軸部46aは、円板部46a1のところに上方に凹む凹部46a1rを形成した状態となっている。
【0071】
図11左図と
図11右図との比較から分かるように、底板部52aの上面に凹部52rを形成した場合、第1旋回減速機24−1は、ディスク保持部46a1pの厚みを距離D4だけ増大できる。その結果、第1旋回減速機24−1は、ディスク保持部46a1pの剛性を高め、ブレーキ装置による制動時に発生する制動反力に対する耐力を高めることができる。また、第1旋回減速機24−1は、ディスク保持部46a1pに取り付けられるブレーキディスク60の枚数を増大させることができる。これにより、ブレーキ装置の保持トルクを増大させることができる。したがって、上部旋回体3の旋回停止状態の保持をより安定させることができる。
【0072】
次に、
図12を参照しながら、凹部46a1r及び凹部52rによってもたらされる効果について説明する。なお、
図12は、
図11と同様、遊星キャリア46と第2ギヤケース52との位置関係を示す断面図であり、左図が凹部52rを有さない場合を示し、右図が凹部52rを有する場合を示す。
【0073】
図12左図において、出力軸部46aは、ディスク保持部46a1pの厚みが他の部分の厚みと同じ厚みD1である円板部46a1を有する。また、第2ギヤケース52は、厚みD2の底板部52aを有する。また、円板部46a1(ディスク保持部46a1p)の下面と底板部52aの上面との間には、厚みD3のクリアランスが形成される。
【0074】
これに対し、
図12右図では、出力軸部46aは、円板部46a1のところに上方に凹む凹部46a1rを有し、円板部46a1の厚みD1を厚みD1Cに低減させている。その結果、ディスク保持部46a1pが円板部46a1の他の部分から下方に突出した状態となっている。また、
図12の右図では、第2ギヤケース52は、底板部52aのところに下方に凹む凹部52rを有し、底板部52aの厚みD2を厚みD2Cに低減させている。その結果、支持部52apが底板部52aの他の部分から上方に突出した状態となっている。
【0075】
図12左図と
図12右図との比較から分かるように、円板部46a1の下面に凹部46a1rを形成し、且つ、底板部52aの上面に凹部52rを形成した場合、第1旋回減速機24−1は、縦方向長さを距離D5だけ短縮できる。この場合、第1旋回減速機24−1は、ディスク保持部46a1p及び支持部52apの厚みを低減することもない。このようにして、第1旋回減速機24−1は、ディスク保持部46a1p及び支持部52apの剛性を維持したまま、縦方向長さを短縮できる。
【0076】
以上の構成により、第2ギヤケース52は、空間SP1の底面を構成する部分に凹部52rを備え、且つ、その凹部52rと外部空間とを連通する排出路52bを備えることによって、潤滑油LB1の交換等の際に潤滑油LB1を効率的に排出できる。
【0077】
また、第2ギヤケース52は、第1旋回減速機24−1における太陽歯車42、遊星歯車44、内歯歯車48、ブレーキディスク60、ブレーキプレート62等で発生する摩耗粉を潤滑油LB1と共に効率的に排出することができる。その結果、第2ギヤケース52は、摩耗粉が旋回減速機24の性能に悪影響を与えるのを防止できる。
【0078】
また、第2ギヤケース52は、凹部52rを備えることによって、出力軸部46aの円板部46a1との間のクリアランスを維持しながら、円板部46a1のディスク保持部46a1pの厚みを増大させることができる。その結果、ディスク保持部46a1pの剛性を高め、ブレーキ装置による制動時に発生する制動反力に対する耐力を高めることができる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0080】
例えば、上述の実施例において、第2ギヤケース52の凹部52rは、上面視で環状の溝を形成し、半径方向の中央、外側、又は内側に向かって傾斜可能とされる。しかしながら、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、凹部52rは、排出路52bの開口の存在位置が最も低くなるよう、周方向に傾斜してもよい。また、凹部52rの幅(半径方向の長さ)及び深さ(軸方向の長さ)は周方向に一様でなくてもよい。また、凹部52rは、環状である必要はなく、円弧状であってもよい。その場合、凹部52rは、周方向に1つ存在する構成であってもよく、周方向に複数存在する構成であってもよい。
【0081】
また、上述の実施例において、第2ギヤケース52の凹部52rには1つの排出路52bが接続されている。しかしながら、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、凹部52rには複数の排出路が接続されていてもよい。